説明

シールド掘進機

【課題】単一のカッタ部により小断面トンネルから大断面トンネルに至るまで掘削し得るシールド掘進機を提供すること。
【解決手段】シールド外筒部にシールド内筒部を固定・引き抜き可能に取り付け、シールド内筒部に、前端部にカッタボスを有するカッタ回転軸を支持し、このカッタ回転軸をカッタ回転駆動装置に連結し、前記カッタボスに伸縮カッタスポークを取り付けたシールド掘進機であって、前記伸縮カッタスポークを、カッタの回転中心より偏心した位置であってカッタボスよりも大径のカッタ円軌跡上に互いに所定の間隔をおいて複数基配置するとともに、各伸縮カッタスポークを前記カッタ円軌跡の接線方向に向けてカッタボスの外側部に取り付けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単一のカッタ部により、小断面トンネルから大断面トンネルに至るまで、掘削するために好適なシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮可能なカッタスポークを備えたシールド掘進機として、例えば特許第3361139号公報に記載の技術がある。
【0003】
前掲特許公報に記載の従来技術では、カッタ回転軸の前端部にカッタボスを設け、このカッタボスの放射方向に、それぞれ固定のカッタスポークと、伸縮可能なカッタスポークとを取り付けている。
【特許文献1】特許第3361139号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のごとく、従来技術では固定のカッタスポークと、伸縮可能なカッタスポークとをカッタボスの放射方向に取り付けているので、カッタボスの径及びシールド外筒径との制約を受け、伸縮可能なカッタスポークとして大ストロークのものを採用できないという課題があった。
【0005】
その結果、シールド外筒部に、シールド内筒部とカッタ部のアセンブリを固定・引き抜き可能に構成したシールド掘進機に、前記従来技術を取り入れた場合、伸縮可能なカッタスポークに大ストロークのものを採用できないため、単一のカッタ部で小断面トンネルから大断面トンネルに至るまで掘削するシールド掘進機には適用できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、単一のカッタ部により小断面トンネルから大断面トンネルに至るまで掘削し得るシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明は、シールド外筒部にシールド内筒部を固定・引き抜き可能に取り付け、シールド内筒部に、前端部にカッタボスを有するカッタ回転軸を支持し、このカッタ回転軸をカッタ回転駆動装置に連結し、前記カッタボスに地山掘削用の伸縮カッタスポークを取り付けたシールド掘進機であって、前記伸縮カッタスポークを、カッタの回転中心より偏心した位置に所定の間隔をおいて複数基配置するとともに、各伸縮カッタスポークをカッタの回転軌跡の接線方向に向けてカッタボスの外側部に取り付けたことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシールド掘進機において、前記伸縮カッタスポークは、カッタスポーク外筒と、その内側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒と、前記カッタスポーク外筒およびカッタスポーク内筒内に設けられ、カッタスポーク内筒を進退させる伸縮自在なジャッキからなることを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1記載のシールド掘進機において、前記伸縮カッタスポークは、カッタスポーク外筒と、その内側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒からなり、前記カッタスポーク内筒はカッタスポーク外筒に固定ピンを介し所定の位置に固定されることを特徴としている。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のシールド掘進機において、前記カッタスポーク内筒には中央部より底部側に位置する第1のピン穴と、中央部より先端部側に位置する第2のピン穴とが設けられ、前記カッタスポーク外筒にはピン挿通孔が設けられ、このピン挿通孔と合わせられた第1または第2のピン穴に固定ピンを挿通して前記カッタスポーク内筒を固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1〜4記載の発明では、各伸縮カッタスポーク17を、カッタの回転中心より偏心した位置であって、カッタ回転軌跡の接線方向に向けてカッタボス16の外側部に取り付けているので、カッタボスの径の制約を受けず、各伸縮カッタスポーク17に大ストロークのものを採用することができる。したがって、これらストロークの大きい伸縮カッタスポーク17を備えた単一のカッタ部により、小断面トンネルから大断面トンネルに至るまで、掘削し得る効果がある。
【0009】
また、請求項1〜4記載の発明によれば、各伸縮カッタスポーク17を縮小させることにより、カッタ部をコンパクトにまとめることができる。したがって、シールド外筒部2からのシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリの引き抜き、シールド外筒部2へのシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリの挿入共、容易に行うことができるので、シールド内筒部8とカッタ部のアセンブリの再利用に当たっての引き抜き・挿入作業を能率良く行い得る効果がある。
【0010】
また、請求項3、4記載の発明によれば、伸縮カッタスポークが簡易構成となるため、その分シールド掘削機の製造が容易となり、かつコストを低減することができる。
【0011】
なお、本発明は密閉型シールドまたは推進工法における推進機のいずれにも適用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1の実施例]
図1〜図5は本発明の第1の実施例を示すもので、図1は切羽掘削状態におけるシールド掘進機の縦断側面図、図2は図1のA−A線一部縦断正面図、図3は図2のB−B線断面図、図4はトンネル掘削後、シールド内筒部とカッタ部のアセンブリを引き抜くときの一部破断側面図、図5は図4のC−C線一部縦断正面図である。
【0014】
これら図1〜図5に示す第1の実施例のシールド掘進機1は、筒状のシールド外筒部2と、これより小径であって同じく筒状のシールド内筒部8と、カッタ回転軸用の第1,第2の軸受14,32と、カッタ回転軸15と、地山掘削用の伸縮カッタスポーク17と、カッタ回転駆動装置29と、掘削土砂を取り込むチャンバ33と、チャンバ33内の土圧を計測する土圧計34と、スイベルジョイント35と、作泥土材配管36と、カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管38と、チャンバ33内の掘削土砂を掘進に伴って排出する排土装置40と、掘進用のシールドジャッキ41と、シールド内筒部とカッタ部のアセンブリ用の引き抜き・押し込みジャッキ(図示せず)等を備えて構成されている。
【0015】
前記シールド外筒部2は、図1(a)および図4に示すように、外筒3と、前端板4と、後端板5と、内筒6と、フード7とを組み合わせて構成されている。前記内筒6には、円周方向に所定の間隔をおいて複数個の袋ナット11が設けられている。
【0016】
前記シールド内筒部8は、図1(a)および図4に示すように、シールド駆動内筒9と、これの前端部に取り付けられた隔壁10とを備えて構成されている。このシールド内筒部8は、前記シールド外筒部2の内側に嵌合し得る直径に形成されている。前記シールド駆動内筒9には、前記袋ナット11に位置を合わせて、ボルト通し孔12が形成されている。
【0017】
シールド掘進機1の使用状態では、各ボルト通し孔12にセットボルト13を通し、そのセットボルト13を袋ナット11にねじ込んで止めた結合構造により、シールド外筒部2にシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリが固定されている。
【0018】
また別の固定方法として、図1(b)に示すように、シールド駆動内筒9の端部に外筒端部5に接するように内筒フランジ9’を設け、シールドジャッキ41と干渉しない場所の外筒端部5にボルト通し孔12を設け、外筒端部5と内筒フランジ9’をセットボルト13で固定することで外筒と内筒を前記と同様に固定できる。また前記固定方法と併用することもできる。
【0019】
カッタ回転軸用の第1の軸受14は、図1(a)および図4に示すように、シールド内筒部8の隔壁10に設けられている。第2の軸受32は、カッタ回転駆動装置29における後述のギヤボックス30の背部に設けられている。
【0020】
カッタ回転軸15は、前記第1,第2の軸受14,32に回転自在に支持されている。このカッタ回転軸15の前端部には、カッタボス16が一体に設けられている。このカッタボス16は、図2に示すように、この実施例では正面から見て例えばほぼ四角形に形成されている。
【0021】
前記伸縮カッタスポーク17は、この実施例では図2および図5に示すごとく、2基配備されている。各伸縮カッタスポーク17は、図2,図3および図5に示すように、有底筒状のカッタスポーク外筒18と、その内側に設けられたカッタスポーク内筒19と、カッタスポーク内筒19の伸縮操作用ジャッキ21とを備えている。前記カッタスポーク内筒19は、カッタスポーク外筒18内に伸縮可能に嵌挿されている。前記伸縮操作用ジャッキ21は、ジャッキシリンダ22と、これに嵌挿されたピストンロッド23とを有している。ジャッキシリンダ22は、ジャッキ支持部20を介してカッタスポーク外筒18内に固定されている。ピストンロッド23のロッドエンドは、ピン24を介してカッタスポーク内筒19にヒンジ結合されている。
【0022】
前記2基の伸縮カッタスポーク17は、図2および図5に示すようにカッタ回転中心より偏心した位置に設けられ、かつカッタボス16の半径よりも大きく、またカッタ回転軸15の回転中心O1を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、互いに反対向きに配置され、しかもカッタスポーク外筒18を介してカッタボス16の各外側部のフラットな面にそれぞれ取り付けられている。
【0023】
そして、各伸縮カッタスポーク17は伸縮操作用ジャッキ21によりピストンロッド23が伸長または縮小されるに伴い、カッタスポーク外筒18に対してカッタスポーク内筒19が伸長または縮小操作されるようになっている。
【0024】
各伸縮カッタスポーク17のカッタスポーク外筒18の外側部には、固定カッタスポーク25が取り付けられている。この固定カッタスポーク25は、シールド外筒部2の内筒6の内部を通過し得る長さに形成されている。
【0025】
前記カッタボス16の前端面には、フィッシュテール状のセンタカッタ26が設けられている。また、各伸縮カッタスポーク17のカッタスポーク外筒18の前面には、複数のカッタビット27が設けられている。さらに、各伸縮カッタスポーク17のカッタスポーク内筒19の前面において、カッタスポーク内筒19を縮小させたときに露出する部分にも、カッタビット27が設けられている。また、前記カッタスポーク内筒19の背面において、カッタスポーク内筒19を縮小させたときに露出する部分の背面には、攪拌翼28が設けられている。前記各固定カッタスポーク25の前面にも、カッタビット27が設けられている。
【0026】
カッタ回転駆動装置29は、図1および図4に示すように、前記シールド内筒部8の隔壁10の背部に固定されたギヤボックス30と、このギヤボックス30の背部に取り付けられたカッタ駆動モータ31と、ギヤボックス30内において前記カッタ駆動モータ31とカッタ回転軸15間に設けられた減速歯車(図示せず)とを備えている。
【0027】
前記カッタ回転軸15と、カッタボス16と、これに取り付けられた複数基としての2基の伸縮カッタスポーク17と、カッタ回転駆動装置29とによりカッタ部が構成されている。
【0028】
掘削土砂を取り込むチャンバ33は、図1に示すように、シールド外筒部2のフード7と、前端板4とシールド内筒部8の隔壁10と、伸縮カッタスポーク17および固定カッタスポーク25に囲まれた空間にて区画形成されている。
【0029】
土圧計34は、チャンバ33に臨ませて、隔壁10の前面側に設けられている。
【0030】
前記隔壁10の下部側には、排土装置用の支持筒39の前端が固定されている。
【0031】
スイベルジョイント35は、カッタ回転軸15の後端部に連結されている。このスイベルジョイント35には、図1および図4に示すように、作泥土材配管36と、カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管38とが接続されている。
【0032】
作泥土材配管36は、カッタ回転軸15の内部を通してカッタボス16の前端部に導かれている。前記カッタボス16の前端部には、図1および図4に示すように、作泥土材噴出口37が設けられており、作泥土材配管36を通じて供給された作泥土材を作泥土材噴出口37から掘削土砂に向かって噴出させるようになっている。
【0033】
液圧配管38は、カッタ回転軸15の内部を通してカッタボス16における伸縮カッタスポーク17の取り付け位置まで導かれ、各伸縮カッタスポーク17の伸縮操作用ジャッキ21のアプローチ側とリターン側とに液圧を供給し得るようになっている。
【0034】
掘削土砂の排土装置40は、図1に示すように、前記隔壁10の下部に固定された支持筒39に挿入・支持され、チャンバ33に土砂取り込み口を臨ませて取り付けられている。
【0035】
シールドジャッキ41は、図1に示すように、シールド外筒部2内の後方部おいて、円周方向に所定の間隔をおいて複数基設置されている。そして、各シールドジャッキ41はシールド外筒部2の後方に組み立てられたセグメント(図示せず)に反力を取ってシールド外筒部2の後端板5を押し、シールド掘進機1全体を推進させるようになっている。
【0036】
前記引き抜き・押し込みジャッキ(図示せず)は、坑内に配備されていて、シールド内筒部8と縮小されたカッタ部のアセンブリをシールド外筒部2から引き抜き、またはシールド外筒部2に押し込むようになっている。
【0037】
前述のごとく構成したシールド掘進機1は、次のように使用され、作用する。
【0038】
まず、シールド外筒部2にシールド内筒部8を組み付ける前の初期状態では、シールド内筒部8にはカッタ部と、スイベルジョイント35と、排土装置用の支持筒39とが取り付けられている。カッタ部の伸縮カッタスポーク17は、縮小された状態で固定されている。
【0039】
この状態からシールド掘進機1を使用できる状態に組み立てるに当たっては、あらかじめ設置されたシールド外筒部2の内筒6に、シールド内筒部8のシールド駆動内筒9を位置合わせし、坑内にあらかじめ配備された引き抜き・押し込みジャッキにより、シールド外筒部2の内筒6内に、シールド内筒部8とカッタ部のアセンブリを押し込む。このとき、シールド外筒部2の内筒6に設けられた各袋ナット11に、シールド内筒部8のシールド駆動内筒9に形成された各ボルト通し孔12を位置合わせしつつ、シールド外筒部2の前端板4に、シールド内筒部8の隔壁10がほぼ同一面になる位置までシールド内筒部8を押し込む。
【0040】
ついで、各ボルト通し孔12にセットボルト13を通し、そのセットボルト13を袋ナット11にねじ込み、シールド外筒部2にシールド内筒部8を組み込み、固定する。また、スイベルジョイント35に作泥土材配管36と、カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管38とを接続する。また、排土装置用の支持筒39に排土装置44を挿入し、固定する。さらに、シールド外筒部2の後端板5の後方に、互いに所定の間隔をおいてシールドジャッキ41を複数基設置する。
【0041】
そして、カッタスポーク伸縮用の液圧配管38から各伸縮カッタスポーク17の伸縮操作用ジャッキ21のアプローチ側に液圧を送り、各伸縮カッタスポーク17を、切羽をシールド外筒部2の直径D1に掘削し得る長さに伸長させる。
【0042】
この状態からシールド掘進機1を発進させるときは、カッタ回転駆動装置29のカッタ駆動モータ31を駆動し、ギヤボックス30内の減速歯車(図示せず)を介してカッタ回転軸15を回転させ、カッタボス16を介して伸縮カッタスポーク17および固定カッタスポーク35を回転させ、カッタボス16に設けられたセンタカッタ26と、伸縮カッタスポーク17および固定カッタスポーク25に設けられた多数のカッタビット27により地山を掘削する。この実施例では掘進が終了する到達部の地山として地盤改良部42(図4参照)を掘削し終った状況を示している。
【0043】
前記地山の掘削中に、作泥土材配管36から作泥土材を供給し、その作泥土材をカッタボス16の前端部に設けられた作泥土材噴出口37から噴出させ、掘削土砂に混入させる。
【0044】
作泥土材を混入させた掘削土砂をチャンバ33に取り込み、伸縮カッタスポーク17のカッタスポーク内筒19に設けられた攪拌翼28及び固定カッタスポーク25に設けられた撹拌翼28により攪拌し、混練する。
【0045】
チャンバ33内の土圧を土圧計34により監視しつつ、チャンバ33内の掘削土砂を排土装置40により取り出し、坑内の後方に搬出し、排土する。
【0046】
このようにして、切羽を所定範囲掘削しながら、複数基のシールドジャッキ41を伸長させ、後方で組み立てられたセグメント(図示せず)に反力を取ってシールド掘進機1全体を推進させる。ついで、シールドジャッキ41を縮小させ、再びセグメントを組み立てる。
【0047】
以上の作業を繰り返して行い、この実施例ではシールド掘進機1により立坑壁43(図4参照)を貫通するトンネルを掘進する。
【0048】
立坑壁43を有する到達立坑内からの作業が制約を受けることが多く、トンネルを掘削後、次のような作業を経て、シールド内筒部8とカッタ部のアセンブリを回収する。
【0049】
まず、カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管38から各伸縮カッタスポーク17の伸縮操作用ジャッキ21のリターン側に液圧を送り、各伸縮カッタスポーク17を、シールド外筒部2の内筒6の内部を通過し得る長さに縮小させ、その長さに固定する。スイベルジョイント35から作泥土材配管36と、液圧配管38を取り外す。また、シールドジャッキ41を取り外す。さらに、排土装置40をその支持筒39から引き抜いて外す。各セットボルト13を袋ナット11から取り外す。
【0050】
図5は、各伸縮カッタスポーク17をシールド外筒部2の内筒6の内部を通過し得る長さに縮小させた状態の一部破断面図である。
【0051】
この状態から、坑内に配備の引き抜き・押し込みジャッキを使って、シールド内筒部8とカッタ部のアセンブリをシールド外筒部2の内筒6から、図4に矢印で示す方向に引き抜き、回収する。
【0052】
そして、回収したシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリを再利用する。
【0053】
以上説明した第1の実施例によれば、各伸縮カッタスポーク17はカッタの回転中心より偏心した位置に設けられ、かつカッタボス16の半径よりも大きく、任意のカッタ回転軌跡の接線方向に配置し、かつカッタボス16の外側部に取り付けているので、カッタボス16の径による制約を受けないため、各伸縮カッタスポーク17は大ストロークのものを採用することができる。その結果、各伸縮カッタスポーク17を、シールド外筒部2の内筒6の内部を通過し得る長さに縮小させた状態から、長大なストロークに伸長させることができる。これにより、シールド内筒部8の外径D2に対して、シールド外筒部2の外径D1を大きく取ることができる。したがって、単一のシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリにより、小断面トンネルから大断面トンネルに至るまで掘削することができ、シールド内筒部8とカッタ部のアセンブリの適用範囲を拡大することができる。
【0054】
なお、図示実施例では各伸縮カッタスポーク17を、図2に示すように、最大直径D1mのトンネルを掘削可能な長さまで伸長させ得るようになっている。
【0055】
また、この第1の実施例によれば、図5に示すように、各伸縮カッタスポーク17を縮小させた状態では、カッタ部をコンパクトにまとめることができる。したがって、シールド外筒部2からのシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリの引き抜き、シールド外筒部2へのシールド内筒部8とカッタ部のアセンブリの挿入を容易に行うことができ、これらの作業を能率良く行うことができる。
【0056】
なお、この第1の実施例において、カッタボス16に伸縮カッタスポーク17を3基以上取り付けても良い。
【0057】
[第2の実施例]
次に、図6および図7は本発明の第2の実施例を示すもので、図6は切羽の掘削状態におけるシールド掘進機の縦断側面図、図7は一部破断正面図である。
【0058】
この実施例では、カッタボス50の外周部に3つのカッタスポーク取付部を形成し、それらにカッタスポークをそれぞれ取付け、掘削効率を高めたことに特徴を有している。
【0059】
カッタボス50の外周には、円周方向に所定の間隔をおいて伸縮カッタスポーク取り付け台51が設けられている。この実施例では、図7に示すように、前記カッタスポーク取り付け台51は互いにほぼ120°の間隔をおいて3個設けられている。
【0060】
伸縮カッタスポーク52は、この実施例では3基配備されている。各伸縮カッタスポーク52は、図7に示すように、カッタスポーク内筒53と、カッタスポーク外筒54と、伸縮操作用ジャッキ55とを備えている。前記カッタスポーク外筒54は、カッタスポーク内筒53に伸縮可能に嵌合されている。前記伸縮操作用ジャッキ55は、ジャッキシリンダ56と、これに嵌挿されたピストンロッド57とを有している。ジャッキシリンダ56は、ジャッキ支持ピン58により、カッタスポーク内筒53にヒンジ結合されている。ピストンロッド57のロッドエンドは、ロッド支持ピン59により、カッタスポーク外筒54にヒンジ結合されている。
【0061】
前記3基の伸縮カッタスポーク52は、図7に示すように、カッタボス50の半径よりも大きいカッタ回転軸49の回転中心O2を中心とするカッタ円軌跡の接線方向に向け、しかも互いにほぼ120°の間隔をおいて配置され、前記カッタスポーク取り付け台51を介してカッタボス50の外側部に取り付けられている。
【0062】
しかして、各伸縮カッタスポーク52は伸縮操作用ジャッキ55によりピストンロッド57が伸長または縮小されるに伴い、カッタスポーク内筒53に対してカッタスポーク外筒54が伸長または縮小操作されるようになっている。
【0063】
前記カッタボス50の前端面には、センタカッタ60が設けられている。また、各伸縮カッタスポーク52のカッタスポーク内筒53の前面において、カッタスポーク外筒54を縮小させた状態で露出する部分には、カッタビット61が設けられている。さらに、伸縮カッタスポーク52のカッタスポーク外筒54の前面には、カッタビット61が複数個設けられている。また、カッタスポーク外筒54の背面には攪拌翼62が設けられている。
【0064】
その他の構成、作用等は前述の実施例と同様であり、説明の重複を避けるために同一部材は同じ符号で示す。
【0065】
この第2の実施例のシールド掘進機44は、次のように使用され、作用する。
【0066】
まず、初期状態では各伸縮カッタスポーク52は直径D4内に納まるように縮小されているものとする。
【0067】
この状態で、カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管38から各伸縮カッタスポーク52の伸縮操作用ジャッキ55のアプローチ側に液圧を送り、各伸縮カッタスポーク52を、切羽をシールド外筒部2の外径とほぼ同じ直径D3に掘削し得る長さに伸長させる。
【0068】
この状態からシールド掘進機44を発進させるときは、カッタ回転駆動装置29のカッタ駆動モータ31を駆動し、ギヤボックス30内の減速歯車を介してカッタ回転軸15を回転させ、カッタボス50を介して伸縮カッタスポーク52を回転させ、カッタボス50に設けられたセンタカッタ60や、伸縮カッタスポーク52に設けられた多数のカッタビット61により地山を掘削する。
【0069】
前記地山の掘削中に、作泥土材配管36から作泥土材を供給し、その作泥土材をカッタボス50の前端部に設けられた作泥土材噴出口71から掘削土砂に対して噴出させ、混入させる。
【0070】
作泥土材を混入させた掘削土砂をチャンバ33に取り込み、伸縮カッタスポーク52のカッタスポーク外筒54に設けられた攪拌翼62により攪拌し、混練する。
【0071】
チャンバ67内の土圧を土圧計34により監視しつつ、チャンバ33内の掘削土砂を排土装置40により取り出し、坑内の後方に搬出し、排土する。
【0072】
前述の作業により、切羽を所定範囲掘削後、複数基のシールドジャッキ41を一斉に伸長させ、坑内の後方で組み立てられたセグメント(図示せず)に反力を取ってシールド掘進機44全体を推進させる。ついで、シールドジャッキ41を縮小させ、再びセグメントを組み立てる。
【0073】
前述のごとき作業を繰り返して行い、地山を掘削し、トンネルを掘進して行く。
なお、この第2実施例においても第1実施例と同様、トンネル掘削後は、各伸縮カッタスポークを縮小するなどし、シールド内筒部8とカッタ部のアセンブリをシールド外筒部2の内筒6から引き抜き、回収し、他へ転用することができ、経済的なものとなっている。
【0074】
以上説明した第2の実施例によれば、3つの各伸縮カッタスポーク52をカッタボス50の半径よりも大きいカッタ円軌跡の接線方向に向けて配置し、カッタスポーク取り付け台51を介してカッタボス50の外側部に取り付けているので、掘削効率が向上し、また、カッタボスの径による制約を受けないため、各伸縮カッタスポーク52として大ストロークのものを採用することができる。したがって、単一のカッタ部を小断面トンネルと大断面トンネルの掘削に兼用できるので、カッタ部の適用範囲を拡大することができる。
【0075】
なお、この第2の実施例において、カッタボス50の形状を変更し、伸縮カッタスポーク52を2基取り付けても良く、4基以上取り付けても良い。
【0076】
また、カッタボス50の外側部に伸縮カッタスポーク52を直接取り付けるようにしても良い。
【0077】
[第3の実施例]
図8〜図10は本発明の第3の実施例を示す。図8は切羽掘削状態におけるシールド掘進機の縦断側面図、図9は図8のD−D線断面図、図10は各伸縮カッタスポークをシールド外筒部の内筒の内部を通過し得る長さに縮小させた状態の一部破断正面図を示す。
【0078】
この実施例は、伸縮カッタスポーク17’を簡易構成としたことに特徴を有する。
【0079】
すなわち、伸縮自在な伸縮カッタスポーク17’は、有底中空状の筒体からなるカッタスポーク外筒18’と、その内側に設けられ、カッタスポーク外筒18’を案内部材として摺動し、進退自在なカッタスポーク内筒19’とを備えている。
【0080】
カッタスポーク外筒18’内には前述の実施例のようにジャッキシリンダは設けられていない。
【0081】
カッタスポーク内筒19’の外形はカッタスポーク外筒18’の内形とほぼ対応した形状をなし、かつ内部にジャッキシリンダを収納しないため、中実の棒鋼として、強固にすることができるので、断面形状を小さくすることができる。
【0082】
また、このシールド掘削機ではカッタスポーク外筒18’に対するカッタスポーク内筒19’の固定を簡易なピン固定手段としている。
【0083】
すなわち、カッタスポーク内筒19’には、その長さ方向に対し直交した方向に貫設された切羽掘削時に使用する第1のピン穴aと、初期状態やカッタ部のアセンブリ回収時に使用する第2のピン穴bが形成されている。第1のピン穴aはカッタスポーク内筒19’の中央部よりやや底部側に形成され、第2のピン穴bは中央部よりやや先端部側に形成されている。これらの第1、第2のピン穴a、bは棒状の固定ピンdを挿通するためのものである。
【0084】
また、カッタスポーク外筒18’の先端部のやや内側には挿通された固定ピンdを固定するための固定ピン挿通孔cが互に対向して対設されている。
【0085】
伸縮カッタスポーク17’はこの実施例でも第1実施例と同様に2基配備されている。
【0086】
そして、これらのカッタスポーク外筒18’は、第1実施例とほぼ同様の構成のカッタボス16’の各フラットな面に互に反対向きに取り付けられている。
【0087】
なお、その他、図中1’はシールド掘進機、2’はシールド外筒部、7’はフード、8’はシールド内筒部、9’は内筒フランジ、10’は隔壁、15’はカッタ回転軸、25’は固定カッタスポーク、26’はセンタカッタ、27’はカッタビット、40’は排土装置であり、この実施例では、伸縮カッタスポーク17’を上述のように簡易構成としたことを除けば、他の基本構成、作用等は第1実施例と同様である。
【0088】
次にこの実施例の伸縮カッタスポーク17’の動作について説明する。
【0089】
図8はカッタスポーク内筒19’を伸長させた状態を示す。これは第1実施例の図2に対応する状態を示す。
【0090】
カッタスポーク内筒19’の伸長にあたっては、カッタスポーク外筒18’からカッタスポーク内筒19’を引き出して伸長させ、第1のピン穴aとピン挿通孔cとを合わせ、例えばカッタボス16’側から固定ピンdを挿通し、反対側から突出した先端部にナットeを螺設すれば良い。この状態で切羽の掘削が行われる。
【0091】
図10は初期状態、または掘削終了後、シールド外筒部2’からシールド内筒部8’等を引き抜く際において、伸縮カッタスポーク17’を縮めた場合を示す。
【0092】
この状態にするには、第1のピン穴aから固定ピンdを外し、第2のピン穴bとピン挿通孔cとを合わせ、固定ピンdを挿通し、ナットeを用いて固定すれば良い。これらの作業は作業員によって行われる。この場合、カッタスポーク内筒19’の底部はカッタスポーク外筒18’の底部付近に位置し、かつ先端部はシールド内筒部8’の内側に位置する。したがって、掘削終了後はこのようにしてシールド外筒部2’からシールド内筒部8’とカッタ部のアセンブリを坑内側へ引き抜くことができる。
【0093】
この実施例では、伸縮カッタスポーク17’は第1実施例で用いたジャッキを不要とし、カッタスポーク内筒19’は簡易なピン固定手段としたため、構成が簡易となり、コストを低減することができる。
【0094】
なお、この伸縮カッタスポーク17’の構造は、図7、図8に示した第2実施例にも適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】(a)は本発明の第1の実施例を示すもので、切羽の掘削状態におけるシールド掘進機の縦断側面図である。(b)は2つの筒の固定手段の他の例を示す。
【図2】図1のA−A線一部縦断正面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】トンネル掘削後、シールド内筒部とカッタ部のアセンブリを引き抜くときの一部破断側面図である。
【図5】図4のC−C線一部縦断正面図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示すもので、切羽の掘削状態におけるシールド掘進機の縦断側面図である。
【図7】図6の一部破断正面図である。
【図8】本発明の第3実施例であって、切羽掘削状態におけるシールド掘進機の縦断側面図を示す。
【図9】図8のD−D線断面図。
【図10】各伸縮カッタスポークをシールド外筒部の内筒の内部を通過し得る長さに縮小させた状態の一部破断正面図を示す。
【符号の説明】
【0096】
1、1’ シールド掘進機
2、2’ シールド外筒部
7、7’ フード
8、8’ シールド内筒部
9、9’ 内筒フランジ
10、10’ 隔壁
11 袋ナット
13 セットボルト
15、15’ カッタ回転軸
16 カッタボス
17、17’ 伸縮カッタスポーク
18、18’ カッタスポーク外筒
19、19’ カッタスポーク内筒
21 伸縮操作用ジャッキ
25、25’ 固定カッタスポーク
26、26’ センタカッタ
27、27’ カッタビット
O1 カッタ回転軸の回転中心
r1 円軌跡の半径
C1 円軌跡
29 カッタ回転駆動装置
33 チャンバ
35 スイベルジョイント
36 作泥土材配管
38 カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管
39 排土装置用の支持筒
40、40’ 排土装置
41 シールドジャッキ
44 シールド掘進機
45 シールド筒
46 隔壁
47 フード
49 カッタ回転軸
50 カッタボス
51 カッタスポーク取り付け台
52 伸縮カッタスポーク
55 伸縮操作用ジャッキ
O2 カッタ回転軸の回転中心
r2 円軌跡の半径
C2 円軌跡
63 カッタ回転駆動装置
67 チャンバ
69 スイベルジョイント
70 作泥土材配管
72 カッタスポーク伸縮操作用の液圧配管
73 排土装置
74 シールドジャッキ
a 第1のピン穴
b 第2のピン穴
c 固定ピン挿通孔
d 固定ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド外筒部にシールド内筒部を固定・引き抜き可能に取り付け、シールド内筒部に、前端部にカッタボスを有するカッタ回転軸を支持し、このカッタ回転軸をカッタ回転駆動装置に連結し、前記カッタボスに地山掘削用の伸縮カッタスポークを取り付けたシールド掘進機であって、
前記伸縮カッタスポークを、カッタの回転中心より偏心した位置に所定の間隔をおいて複数基配置するとともに、各伸縮カッタスポークをカッタの回転軌跡の接線方向に向けてカッタボスの外側部に取り付けたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
請求項1記載のシールド掘進機において、前記伸縮カッタスポークは、カッタスポーク外筒と、その内側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒と、前記カッタスポーク外筒およびカッタスポーク内筒内に設けられ、カッタスポーク内筒を進退させる伸縮自在なジャッキからなることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項3】
請求項1記載のシールド掘進機において、前記伸縮カッタスポークは、カッタスポーク外筒と、その内側に設けられた進退自在なカッタスポーク内筒からなり、前記カッタスポーク内筒はカッタスポーク外筒に固定ピンを介し所定の位置に固定されることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項4】
請求項3記載のシールド掘進機において、前記カッタスポーク内筒には中央部より底部側に位置する第1のピン穴と、中央部より先端部側に位置する第2のピン穴とが設けられ、前記カッタスポーク外筒にはピン挿通孔が設けられ、このピン挿通孔と合わせられた第1または第2のピン穴に固定ピンを挿通して前記カッタスポーク内筒を固定することを特徴とするシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−283546(P2006−283546A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371363(P2005−371363)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】