説明

シール材用ゴム組成物及びシール材

【課題】応力緩和性及び永久圧縮歪み特性に優れ、シール性能の高いシール材用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】シール材用ゴム組成物は、ゴムと、共架橋剤とを含み、共架橋剤の割合は、ゴム100重量部に対して、5〜25重量部程度であってもよい。ゴムは、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムから選択された少なくとも一種のゴムであってもよく、共架橋剤は、1分子中に3つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であってもよい。このゴム組成物は、繊維を実質的に含まなくてよく、長期間に亘り、高いシール性能を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材(特に、配管などの管継手部分に使用されるシートガスケット)に使用されるゴム組成物及びシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種流体を移送する配管類の管継手部分には、シート状のガスケット部材が使用されている。シートガスケットは、長期間に亘って漏水防止性能を維持する必要があり、特に、連続運転される原子力発電所の2次配管設備などに備えられているシートガスケット等には漏水防止に対する高い信頼性が求められる。
【0003】
従来、ゴムを主材料とするシートガスケットは、応力緩和性、永久圧縮ひずみが大きく、長期間に亘るシール性が十分でないため、ゴムに対して、布帛を積層したり、アスベストやアラミド繊維などの繊維を充填剤として配合していた。
【0004】
例えば、特開2008−239766号公報(特許文献1)には、アスベストを除く補強繊維と、ゴムと、ゴム薬品と、廃糖蜜、オリゴ糖、リグニン類及びイミド樹脂からなる群から選択された少なくとも一種の成分とを含有するゴム組成物を加熱圧縮して得られるジョイントシートが開示され、特開2006−194295号公報(特許文献2)には、有機繊維を主繊維とする基材繊維と、ゴムと、黒鉛と、ゴム薬品とを含有するゴム組成物であって、組成物中に有機繊維を15〜30重量%含有する非石綿系シート状ガスケットが開示され、特開2006−71012号公報(特許文献3)には、多数の繊維を組み合わせた多孔性繊維シートの空間に、基材繊維及び/又は無機充填材とゴム材とゴム薬品とを含有するコンパウンド材を充填したシートガスケットが開示されている。
【0005】
しかし、これらのシートガスケットは、ガスケットの内径面と外径面とに繊維の断面が露出しているため、長期間使用すると、ガスケット内部の繊維の隙間や界面を毛細管現象により液が浸透し、内部の流体物が漏出し易い。そのため、シートガスケットを使用するに際には、ガスケットの内周及び外周の断面にシール処理を施してから使用する必要があり、ガスケットの製造工程が複雑なものとなっていた。従って、シール処理が不要で、応力緩和性及び永久圧縮ひずみ特性に優れ、シール性の高いガスケットが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−239766号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2006−194295号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2006−71012号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、応力緩和性及び永久圧縮ひずみ特性に優れ、シール性能の高いシール材用ゴム組成物及びシール材(例えば、シートガスケット)を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、長期間に亘り高いシール性能を発揮できるシール材用ゴム組成物及びシール材(例えば、シートガスケット)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ゴムに対し、共架橋剤(例えば、ポリオールトリ(メタ)アクリレートなど)を特定の割合で配合することにより、シール材としての特性に優れるゴム組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明のゴム組成物は、ゴムと共架橋剤とを含む架橋可能なシール材用ゴム組成物である。共架橋剤の割合は、ゴム100重量部に対して、5〜25重量部(例えば、5〜20重量部)程度であってもよい。
【0011】
ゴムは、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムから選択された少なくとも一種のゴム(特に、オレフィン系単位又は(メタ)アクリル系単位とジエン単位とで構成されたゴム)であってもよい。共架橋剤は、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基から選択された少なくとも一種の官能基を有する化合物であってもよく、1分子中に合計で3以上の前記官能基を有する化合物であってもよく、1分子中に3つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であってもよい。本発明のゴム組成物は、繊維を実質的に含まなくてもよい。
【0012】
本発明には、前記ゴム組成物で形成されたシール材(特に、シートガスケット)も含まれる。
【0013】
なお、本明細書中、アクリレートとメタクリレートとを(メタ)アクリレートと総称し、シアヌレートとイソシアヌレートとを(イソ)シアヌレートと総称する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のゴム組成物で形成されるシール材は、繊維を実質的に含有しなくても、応力緩和性及び永久圧縮ひずみ特性に優れ、シール性能に優れる。また、長期間に亘り、高いシール性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例のシートガスケットについて、雰囲気温度100℃で、応力緩和試験を行った場合の面圧と時間との関係を表すグラフである。
【図2】図2は、実施例のシートガスケットについて、雰囲気温度150℃で、応力緩和試験を行った場合の面圧と時間との関係を表すグラフである。
【図3】図3は、実施例のシートガスケットについて、雰囲気温度100℃で、応力緩和試験を行った場合の面圧と歪みとの関係を表すグラフである。
【図4】図4は、実施例のシートガスケットについて、雰囲気温度150℃で、応力緩和試験を行った場合の面圧と歪みとの関係を表すグラフである。
【図5】図5は、実施例4において雰囲気温度150℃での応力緩和試験後のシートガスケットの形状を示す平面図である。
【図6】図6は、比較例1において雰囲気温度150℃での応力緩和試験後のシートガスケットの形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[シール材用ゴム組成物]
本発明のシール材用ゴム組成物は、ゴムと、共架橋剤とを含み、架橋可能な組成物である。
【0017】
(ゴム)
ゴムとしては、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴムなどが例示できる。
【0018】
オレフィン系ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリオクテニレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)(例えば、ハイパロン(登録商標)など)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)などが例示できる。
【0019】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体ゴム;アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合体ゴム;スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合体ゴム(ランダム又はブロック共重合体)などが例示できる。ジエン系ゴムには、水添ゴム(例えば、水素添加ニトリルゴム(HNBR)など)なども含まれる。
【0020】
アクリル系ゴムとしては、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム[例えば、アクリル酸アルキルエステルと塩素含有架橋性単量体(2−クロロエチルビニルエーテルなど)との共重合体ゴム(ACM)、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体ゴム(ANM)、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体ゴム、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基及び/又はエポキシ基含有単量体との共重合体ゴムなど]などが例示できる。アクリル系ゴムを構成するアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C1−10アルキルエステル(特に、アクリル酸C2−8アルキルエステル)などが例示できる。
【0021】
ウレタン系ゴムとしては、例えば、ポリエステル型ウレタンエラストマー、ポリエーテル型ウレタンエラストマーなどが例示できる。
【0022】
シリコーン系ゴムとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部をビニル基で置換したビニルシリコーンゴム(VMQ)、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部をフェニル基で置換したフェニルシリコーンゴム(PMQ)、ビニルシリコーンゴムのメチル基の一部をフェニル基で置換したゴム(PVMQ)、ビニルシリコーンゴムの側鎖にフッ化アルキル基を導入したフッ化シリコーンゴム(FVMQ)などが例示できる。
【0023】
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンとの共重合体ゴム(FKM)、四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの共重合体ゴム(FFKM)、四フッ化エチレンとプロピレンとの交互共重合体ゴムなどが例示できる。
【0024】
エピクロロヒドリンゴムとしては、例えば、エピクロロヒドリンの単独重合体ゴム(CO)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体ゴム(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体ゴムなどが例示できる。
【0025】
多硫化ゴムとしては、二塩化アルキレン(例えば、二塩化エチレンなど)と多硫化ナトリウムとの縮合体ゴムなどが例示できる。
【0026】
これらのゴムは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのゴムのうち、シール材に必要な弾力性と耐久性とを両立できる点から、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムから選択された少なくとも一種のゴムであることが好ましい。さらに、シール材としての耐久性に優れる観点から、オレフィン単位の重合体ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴムなど)、オレフィン単位又はアクリル単位とジエン単位との共重合体ゴムが好ましく、中でもジエン単位を含むゴム(例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ジエンゴムなど)が特に好ましい。なお、フッ化ビニリデン系のフッ素ゴムでは、一般的に圧縮永久歪み性に問題がある為、シートガスケットとして使用した場合、ガスケットの増し締め等が必要になる。
【0027】
エチレン−プロピレン−ジエンゴムにおいて、エチレン単位とプロピレン単位との割合(モル比)は、前者/後者=50/50〜90/10、好ましくは55/45〜85/15、さらに好ましくは60/40〜80/20程度であってもよい。エチレン−プロピレン−ジエンゴムを構成するジエン成分としては、ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエンなどの共役ジエン類、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの脂環式ジエン化合物が例示できる。これらのジエン成分のうち、エチリデンノルボルネンなどのアルキリデンノルボルネンが好ましい。エチレン−プロピレン−ジエンゴムのヨウ素価は、10〜50、好ましくは15〜45、さらに好ましくは20〜40程度であってもよい。これらのエチレン−プロピレン−ジエンゴムのうち、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴムが汎用される。
【0028】
アクリロニトリル−ジエンゴムにおいて、アクリロニトリルの含有量は、ゴム全体に対して、10〜50モル%程度であってもよい。ジエン成分としては、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類が例示できる。これらのジエン成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジエン成分のうち、ブタジエンが好ましい。また、アクリロニトリル−ジエンゴムは、ジビニルベンゼン、ビニルピリジン、アクリル酸などの共重合性成分を含んでもよい。これらのアクリロニトリル−ジエンゴムのうち、アクリロニトリルブタジエンゴムが汎用される。
【0029】
(共架橋剤)
共架橋剤(又は共加硫剤)は、通常、架橋剤と共に使用され、ゴムの主鎖又は側鎖の間に介在し、架橋点を連結する機能を有する。
【0030】
共架橋剤としては、架橋点を連結する限り、特に制限されず、重合性官能基を有する化合物、マレイミド系化合物[例えば、芳香族ビスマレイミド(例えば、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミドなど)、脂肪族ビスマレイミド(例えば、N,N’-1,2-エチレンビスマレイミドなど)など]、ケトオキシム系化合物(例えば、キノンジオキシム、ジベンゾイルキノンジオキシムなど)などが例示できる。これらの共架橋剤のうち、シール性及びその耐久性(特に、ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン類やエチリデンノルボルネンなどの脂環式ジエン化合物などのジエン成分を含むゴムのシール性)を向上できる観点から、重合性官能基を有する化合物が好ましい。
【0031】
重合性官能基(エチレン性不飽和二重結合を有する基)としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基(クロチル基)などのC2−6アルケニル基、ビニレン基、プロペニレン基などのC2−4アルケニレン基又はこれらの重合性官能基を含む官能基(例えば、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、フマロイル基など)などが挙げられる。これらの重合性官能基のうち、アルケニル基、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0032】
すなわち、重合性官能基を有する化合物は、アルケニル基{例えば、C2−4アルケニル基(特に、ビニル基又はアリル基)}及び(メタ)アクリロイル基から選択された少なくとも一種の官能基を有することが好ましい。
【0033】
重合性官能基の数は、1分子中、2以上(例えば、2〜8)、好ましくは3以上(例えば、3〜6)、さらに好ましくは3〜4程度であってもよい。
【0034】
アルケニル基(ビニル基又はアリル基)を有する化合物は、例えば、1分子中に1つのアルケニル基(ビニル基又はアリル基)を有する化合物(例えば、スチレン、ビニルピリジンなど)であってもよいが、好ましくは1分子中に複数又は2以上(例えば、2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3程度)のアルケニル基を有する化合物である。1分子中に複数のアルケニル基を有する化合物としては、例えば、1分子中に2つのアルケニル基を有する化合物[ビニル基を有する芳香族化合物(例えば、ジビニルベンゼンなど);アリル基を有する化合物(例えば、ジアリルフマレートなどの脂肪族ジカルボン酸ジアリルエステル;例えば、ジアリルフタレートなどの芳香族ジカルボン酸ジアリルエステルなど)など]、分子中に3つのアルケニル基を有する化合物[例えば、トリアリル(イソ)シアヌレートなど]など]が例示できる。
【0035】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、1分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)であってもよいが、1分子中に2以上(例えば、2〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3程度)の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、1分子中に2つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物{例えば、(メタ)アクリル酸金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなど];アルカンジオールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(すなわち、エチレンジ(メタ)アクリレート)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(すなわち、プロピレンジ(メタ)アクリレート)、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルカンジオールジ(メタ)アクリレートなど]、アルカンポリオールジ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレートなどのC3−10アルカンポリオールジ(メタ)アクリレートなど]、ジアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノール類の(メタ)アクリル酸エステル[例えば、ビスフェノールAのC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど]などのジ又はポリオールジ(メタ)アクリレートなど};1分子中に3つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物{例えば、アルカントリオールトリ(メタ)アクリレート[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのC3−10アルカントリオールトリ(メタ)アクリレートなど]、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのポリオールトリ(メタ)アクリレートなど};1分子中に4以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物{例えば、アルカンテトラ乃至ヘキサオールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート[例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのC4−20アルカンテトラ乃至ヘキサオールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート]、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンテトラ(メタ)アクリレートなどのポリオールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど}などが例示できる。
【0036】
アルケニル基(ビニル基又はアリル基)及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、アリル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0037】
これらの共架橋剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、液状の共架橋剤は、取扱性の観点から、シリカなどに吸着させて粉状化した形態で使用してもよい。
【0038】
これらの共架橋剤のうち、加硫ゴムに適度な弾性と強固なシール性及び耐久性とを付与できる点から、1分子中に3以上の重合性官能基(前記アルケニル基及び(メタ)アクリロイル基)を有する化合物、好ましくは1分子中に3つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物、特に、ポリオールトリ(メタ)アクリレート[例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルカントリオール(メタ)アクリレート(例えば、C3−10アルカントリオール(メタ)アクリレートなど)など]が好ましい。なお、複数の共架橋剤を組み合わせて使用する場合、加重平均分子量(加重平均1モル)当たりの重合性官能基(特に、(メタ)アクリロイル基)の平均数を、例えば、2.5〜4程度、好ましくは3以上(例えば、3〜3.5程度)に調整し、共架橋剤組成物を用いてもよい。
【0039】
共架橋剤の割合は、ゴム100重量部に対して、5〜25重量部(例えば、5〜20重量部)、好ましくは6〜24重量部(例えば、6〜20重量部、特に、7〜15重量部)、さらに好ましくは8〜22重量部(例えば、10〜20重量部)程度であってもよい。通常、共架橋剤(特に、トリアリル(イソ)シアヌレートやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの重合性官能基を3以上有する共架橋剤)は、有機過酸化物の加硫促進助剤として、ゴム100重量部に対して、0.5〜2重量部程度の少量の割合で使用され、割合を大きくしても特性の改善が見られないことが知られていた。しかし、本発明では、共架橋剤を常識的な量を超えて多量に使用することにより、シール材用ゴム組成物として特に優れた特性(応力緩和性、永久圧縮ひずみ性、シール性など)を発現できる。ただし、共架橋剤の割合が前記範囲より大きいと、ゴム組成物をシート状に成形することが困難となる。一方、共架橋剤の割合が前記範囲より小さいと、永久圧縮ひずみなどの特性を十分に高めることができなくなる。
【0040】
(架橋剤)
本発明のゴム組成物には、通常、架橋剤(又は加硫剤)も含まれる。架橋剤は、硫黄系架橋剤と非硫黄系架橋剤とに分類できる。
【0041】
硫黄系架橋剤としては、硫黄(例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄など)、塩化硫黄(例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄など)、硫黄含有有機化合物{チウラム類[例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など]、ジチオカルバミン酸塩類[例えば、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸などのジC1−4アルキルジチオカルバミン酸と、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、鉛、テルル、又はセレンとの塩(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)など)など]、チアゾール類[例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)など]、チオウレア類[例えば、エチレンチオウレア(EU)、ジエチルチオウレア(DEU)、トリメチルチオウレア(TMU)など]、グアニジン類[例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)、オルトトリルビグアニド(OTBG)など]など}などが例示できる。
【0042】
非硫黄系架橋剤としては、有機過酸化物{例えば、ジアシルパーオキシド類[例えば、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、4−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシドなど]、ジアルキルパーオキシド類[例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキセン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシドなど]、ヒドロパーオキシド類[例えば、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドなど]、ケトンパーオキシド類[例えば、エチルメチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシドなど]、パーオキシエステル類[過酢酸t−ブチル、過ピバリン酸t−ブチルなど]など}、アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチルニトリルなど)などのラジカル発生剤(ラジカル発生可能な化合物)、有機多価アミン(例えば、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−オルト−クロロアニリンなど)、金属せっけん(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどの脂肪酸塩)などが例示できる。
【0043】
これらの架橋剤は、ゴムの種類に応じて選択でき、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋剤のうち、非硫黄系架橋剤が好ましく、シール特性や耐熱性などに優れる観点から、有機過酸化物(例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシド類など)が特に好ましい。
【0044】
架橋剤の割合は、ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部、さらに好ましくは0.4〜6重量部(例えば、0.5〜5重量部)程度であってもよい。
【0045】
共架橋剤と架橋剤との割合(重量比)は、前者/後者=30/70〜99/1、好ましくは40/60〜95/5、さらに好ましくは50/50〜90/10(例えば、60/40〜85/15)程度であってもよい。架橋剤に対する共架橋剤の割合が大きいと、耐熱性の点からも好ましい。
【0046】
(架橋助剤)
本発明のゴム組成物には、架橋助剤(又は加硫助剤)を含有させてもよい。架橋助剤としては、金属酸化物(酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウム、酸化鉛など)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸などのC8−24脂肪酸など)などが例示できる。これらの架橋助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋助剤のうち、金属酸化物(例えば、亜鉛華と酸化マグネシウムとの組合せなど)が好ましい。
【0047】
架橋助剤の割合は、ゴム100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、さらに好ましくは1〜5重量部程度であってもよい。
【0048】
架橋助剤の割合は、共架橋剤100重量部に対して、10〜90重量部、好ましくは30〜80重量部、さらに好ましくは50〜70重量部程度であってもよい。
【0049】
(他の任意成分)
本発明のゴム組成物は、補強材料としての繊維を実質的に含まなくてもよい。このため、本発明のゴム組成物で形成されるシール材では、末端繊維のシール処理が不要であり、シール性能の劣化も防止できるため、長期間に亘り高いシール性能を発揮できる。
【0050】
また、本発明のゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の任意成分を含んでもよい。他の任意成分としては、充填剤[例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ(無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ゼオライトなど]、可塑剤[例えば、プロセス油や植物油、ファクチス(サブ)、芳香族カルボン酸エステル(例えば、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレートなど)、アジピン酸オクチル、セバシン酸ブチルなどのアルカンジカルボン酸アルキルエステルなど]、発泡剤(例えば、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニル・ヒドラジドなど)、カップリング剤(シラン系、アルミニウム系、チタネート系カップリング剤など)、分散剤(パラフィン及び炭化水素樹脂、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪アルコールなど)、粘着付与剤(クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノールテルペン系樹脂、ジシクロペンタン系樹脂などの石油系炭化水素樹脂、ロジンエステルなどのロジン誘導体など)、消泡剤や吸湿剤(オレイン酸カリ石鹸、ひまし油酸カリ石鹸、酸化カルシウムなど)、難燃剤(リン酸エステルなどの燐系化合物、尿素又はメラミン若しくはこれらの誘導体などの窒素系化合物、塩素系化合物及び臭素系化合物(臭素化ビスフェノールA、臭素化エポキシ樹脂)などのハロゲン系化合物、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、錫酸亜鉛化合物、膨張黒鉛など)、着色剤(例えば、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、有機顔料など)などが例示できる。これらの任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0051】
これらの任意成分のうち、充填剤、可塑剤、及び着色剤などを組み合わせて使用することが好ましい。充填剤の割合は、ゴム100重量部に対して、10〜500重量部、好ましくは50〜200重量部、さらに好ましくは80〜120重量部程度であってもよい。可塑剤の割合は、ゴム100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは5〜10重量部程度であってもよい。着色剤の割合は、ゴム100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、さらに好ましくは10〜20重量部程度であってもよい。
【0052】
[シール材]
本発明のシール材用ゴム組成物は、応力緩和性及び永久圧縮ひずみ性に優れているため、配管などに対する圧縮密着性が高く、各種シール材(特に、シートガスケット、パッキンなど)に好適に利用できる。本発明のゴム組成物は、慣用の方法により、ゴム原料の素練り工程及び添加剤を配合した後の混練り工程を経た練り生地として調製できる。
【0053】
本発明のシール材も、慣用のゴム加工方法により、前記方法で調製されたゴム組成物を各種形状に成形する工程、前記ゴム成形物を加硫(架橋)する工程、加硫ゴム成形物の仕上げ工程を経ることにより得られる。加硫前の成形工程としては、例えば、カレンダー加工、押出加工、生造り加工などが挙げられる。特に、シートガスケットの場合、ロール圧延による分出し、カレンダー加工により分出し、押出成形などを利用した生造り加工(特に、ロール圧延による分出し加工)により、ゴム組成物を所定厚みのシート状に分出してもよい。
【0054】
加硫工程において、加硫方法としても、慣用の方法、例えば、金型による成形加硫、加硫缶加硫、連続加硫などが利用できる。なお、金型による成形加硫を利用する場合は、加硫工程の前の成形工程を経ることなく、練り生地を直接金型に投入して加硫してもよい。
【0055】
加硫(架橋)温度は、ゴムの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、80〜250℃、好ましくは100〜230℃、さらに好ましくは120〜200℃(特に130〜180℃)程度である。加硫時間は、例えば、5分〜5時間、好ましくは10分〜3時間、さらに好ましくは15分〜1時間程度である。加硫に際しては、加圧してもよい。
【0056】
仕上げ工程では、ナイフやハサミなどの工具、又は高速回転のグラインダーを用いる方法、上下に組み合わせた打ち抜き型でプレス打ち抜きする方法などが利用できる。シール材の形状は、用途に応じて選択できるが、特に、シートガスケットの場合、リング状に打ち抜き加工(例えば、刃を用いた打ち抜き加工)してもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0058】
実施例及び比較例で用いた成分の内容、及び組成物の特性の評価方法を以下に示す。
【0059】
(1)各成分の内容
ゴムA:EPDM(エチレンプロピレンエチリデンノルボルネンコポリマー、三井石油化学工業製、EPT3045H)
ゴムB:NBR(ブタジエンアクリロニトリル共重合物、JSR(株)製、N230S)
共架橋剤A:トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルTMP)
共架橋剤B:エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルEG)
架橋剤A:硫黄(細井化学工業(株)製、HK200−1)0.8重量部、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド(大内新興化学工業(株)製、ノクセラーDM)0.9重量部、1,3−ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業(株)製、ノクセラーD)0.2重量部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業(株)製、ノクセラーBZ)1.6重量部、テトラエチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業(株)製、ノクセラーTET)1.1重量部との混合物
架橋剤B:1,1−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日油(株)製、ペロキシモンF40)
充填剤A:タルク(山陽クレー工業(株)製、SMT)
充填剤B:シリカ((株)トクヤマ製、トクシール、平均凝集粒径7〜10μm、SiO:93〜96%)
充填剤C:無水クレー(平均粒径1μm、SiO:51〜53%、Al:42〜44%、TiO:1.6〜2.5%)
着色剤:酸化チタン(古河機械金属(株)製、FA−55W)
可塑剤A:パラフィン系プロセスオイル(富士興産業(株)製、フッコールP−200)
可塑剤B:ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート((株)ジェイプラス製、DOP)
架橋助剤A:亜鉛華(正同化学工業(株)製、活性亜鉛華AZO)
架橋助剤B:酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、キョーワマグ#150)。
【0060】
(2)各特性の評価方法
実施例1〜4及び比較例1及び2のゴム組成物により製造されたシートガスケットの試験サンプルを用いて、TA−LUFT認定を受けたドイツamtec社製のガスケット試験機を使用し、試験規格:EN13555に基づく応力緩和試験及びリーク試験を実施し、評価した。
【0061】
応力緩和試験において、試験サンプルを面圧10MPaで圧縮し、雰囲気温度100℃又は150℃で4時間圧縮した後に徐荷した際の面圧や歪み、変形量を記録し、応力緩和率や永久圧縮ひずみ率を計算した。また、試験前後のガスケットの内径及び外径の変化量を測定した。雰囲気温度100℃及び雰囲気温度150℃の結果を表1及び表2に示す。なお、加圧スピードは0.5MPa/secで試験を行った。
【0062】
リーク試験において、試験サンプルを試験機にセットして、シール面圧が5MPaから10MPaになり、さらに5MPaになるように変化させて、リーク量を測定し、最終的なリーク量を差圧式測定法により測定し記録した。この結果を表3に示す。なお、常温(23℃±5℃)、内圧1MPaの条件下、加圧流体にヘリウムガスを用いて、試験を行った。
【0063】
実施例1〜7及び比較例1〜5
シートガスケットの試験サンプルとして、表1及び表2の配合に従ってそれぞれゴム組成物を調製した。さらに、調製したゴム組成物を混練した後、ロール圧延により分出しして未架橋ゴムシートとして、プレス架橋によって、170℃で20分間、架橋を行い、架橋ゴムシートとした。得られた架橋ゴムシートをトムソン抜き加工により打ち抜き、厚み3mm×外径88mm×内径43mmのリング状のシートガスケットを得た。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
なお、表1及び表2において、シート加工が良好にできたものを○で、シート加工ができなかったものを×で示す。表1及び表2から明らかなように、比較例3では、共架橋剤が過剰であるために、ロールで混練しても未加硫のゴム生地を均一に混練できず、シート状に成形できなかった。実施例1〜7については、特に問題なくシート状に加工できた。
【0067】
表1及び2から明らかなように、比較例1,2,4及び5では、応力緩和率及び永久圧縮ひずみ率が悪化しガスケットとして十分な性能を果たすものが得られなかった。応力緩和率としては30を超えると、また、永久圧縮ひずみ率としては40を超えると、ガスケットのシール性に不調をきたすことが多くなり、シートガスケットとしての性能が不十分となる。一方、実施例1〜7においては、いずれもガスケットとして十分な性能と判断できる応力緩和率と永久圧縮ひずみ率とが測定された。
【0068】
実施例1及び4、比較例1について、図1及び図2に、応力緩和試験における面圧と時間との関係をグラフで示し、図3及び図4に、応力緩和試験における面圧と歪みとの関係をグラフで示す。なお、図1及び図3は雰囲気温度100℃の結果であり、図2及び図4は雰囲気温度150℃の結果である。また、図1〜図4には、比較対象として市販品の布入りゴムガスケット(比較例6)のデータをプロットしている。
【0069】
さらに、図5及び図6に、それぞれ実施例4と比較例1の雰囲気温度150℃における応力緩和試験後のシートガスケットの形状の平面図を示す。平面図の比較から明らかなように実施例4では、変形が見られず、内径、外径共に略真円のリング状ガスケットであるのに対して、比較例1では、クリープ変形が顕著であり、特に内径についての変形が大きく、円形状を保持していない。
【0070】
詳しくは、比較例1及び2(図示せず)の試験終了後のシートガスケットでは、ガスケットの内径側や外径側に、ガスケットをフランジに取り付けて締め付けた際の型の跡が明瞭に残っているなど、クリープ変形が起こった跡が明瞭に認められ、ガスケット径の変化量の比較以上に大きなクリープ変形が起こっていた。一方、実施例2(図示せず)のサンプルは、ガスケットの寸法変形量としては、比較例1及び2に近い変化量が測定されたものの、試験終了後のガスケットには比較例1及び2で顕著であったクリープ変形の痕跡は明瞭には認められず、シートガスケットとして許容しうるレベルの変形であった。なお、比較例1のように内径が大きく変形したシートガスケットでは、配管内部流体の圧力損が生じる。
【0071】
【表3】

【0072】
表3から明らかなように、比較例1のガスケットはリーク量が大きく、シール性が十分でないが、実施例1〜7のガスケットでは、良好なシール性を示した。本試験においては、リーク量が10の−8乗のオーダー以下であればガスケットとして十分なシール性であるといえる。使用した試験機のリーク量の測定下限値は1.7×10−8であり、実施例1及び3〜7については、測定下限値以下のリーク量であった。すなわち、リーク試験については、共架橋剤の割合が、ゴム100重量部に対して10重量部以上で特に良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のシール材用ゴム組成物は、応力緩和性及び永久圧縮ひずみ性に優れ、長期間に亘りシール材のシール性能を維持することができるため、各種シール材{パッキン[例えば、スクイーズパッキン(例えば、Oリング、Xリング、Dリング、Tリングなど)、リップパッキン(例えば、Uパッキン、Vパッキン、Lパッキン、Jパッキンなど)、グランドパッキン、オイルシール、ダイヤフラムシールなど]、ガスケット(例えば、シートガスケット、渦巻型ガスケットなど)など}に利用できる。特に、高度なシール性及び耐久性を有しているため、配管などの継手部分に使用されるシートガスケットに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムと共架橋剤とを含む架橋可能なゴム組成物であって、共架橋剤の割合が、ゴム100重量部に対して、5〜25重量部であるシール材用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴムが、オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムから選択された少なくとも一種のゴムである請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
共架橋剤が、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基から選択された少なくとも一種の官能基を有する化合物である請求項1又は2記載のゴム組成物。
【請求項4】
共架橋剤が、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基から選択された少なくとも一種の官能基を1分子中に合計で3以上有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
共架橋剤が、1分子中に3つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
繊維を実質的に含まない請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物で形成されたシール材。
【請求項8】
シートガスケットである請求項7記載のシール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−285611(P2010−285611A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109284(P2010−109284)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(390015679)ジャパンマテックス株式会社 (19)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】