説明

ジアルキル・スルホスクシナート及びカルバニリド抗菌剤を含んでなる抗菌製剤

(a)ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体、及び(b)トリクロカルバン(TCC)などのカルバニリド抗菌剤を含む抗菌製剤。前記製剤は、細菌性の病態、特に、ニキビ、体臭、又は口腔に影響を及ぼす病態の治療に使用するためのものであってもよい。それは、DAS及びカルバニリドに加えて、(i)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;(ii)有機溶剤;(iii)増粘剤;及び(iv)水を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、抗菌製剤、及び化合物の特定の組み合わせ物の抗菌剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアルキル・スルホスクシナート(DASs)は、公知の陰イオン界面活性剤である。具体的には、ジオクチル・スルホスクシナート(DOS)及びその塩、より特に、DOSナトリウムは、例えば、家庭用洗剤中の、湿潤剤、可溶化剤、分散剤、及び乳化剤として使用される。前記ナトリウム塩はまた、低刺激性の接触下剤としての使用でも知られている。DOSの同義語には、ビス(2-エチルヘキシル)スルホナート;2-スルホ-コハク酸ジオクチル・エステル;1,4-ビス(n-オクチル)スルホブタンジオアート、及び1,4-ビス(オクチルオキシ)-1,4-ジオキソ-2-ブタンスルホン酸が含まれ、そして、その塩が、DocusateやDuosolなどのさまざまな商品名で市販されている。
【0003】
ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムはまた、過酸化ベンゾイルなどの含有過酸化物、及び/又はエリスロマイシンなどの抗生物質を含む抗ニキビ製剤‐GB-2 054 375、US-5,767,098、US-4,497,794、及びUS-2003/0044432を参照のこと‐、並びにレチノイドを含むアンチ・エイジング製薬を含めた、他の作用物質を含む製剤における安定化剤、及び/又は界面活性剤としての使用でも知られている。
【0004】
WO-86/07258では、DASs、具体的にはジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムはまた、ヒト及び動物の細菌感染の治療における使用についても提案されている。その文書には、皮膚の清浄剤として、及びニキビ治療用ローションとしての使用のための局所製剤が記載されている。しかしながら、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムは、実施例において0.2% w/wと比較的に低濃度でしか使用されていない。潜在的に望ましくない副作用が、高濃度を使用することを妨げるものとして挙げられている。
【0005】
そのうえ、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムはまた、水溶性に乏しく、それが水性ベースの製剤中での濃度を制限している。界面活性剤として、前記物質は、1% w/w以下の濃度にて典型的に使用される。皮膚製剤では、それが2又は3% w/wの濃度にて使用される場合、FDAによって不活性成分と見なされる。
【0006】
その他の同義語の中でも特に、3,4,4’-トリクロロカルバニリド;3,4,4’-トリクロロジフェニル尿素;TCC及びN-(4-クロロフェニル)-N’-(3,4-ジクロロフェニル)尿素とも呼ばれるトリクロカルバンは、公知の消毒薬及び抗菌剤である。例えば、それは、具体的には病院において皮膚を清浄及び消毒するために使用され、そして、化粧品とパーソナルケア製品、家庭用品、並びに一部のプラスチック製品及び繊維製品でも使用されている。US-6,224,886はまた、陰イオン界面活性剤の不存在下ではあるが、局所抗ニキビ製剤におけるその使用、そして、洗剤レベルを下げたときに、TCCの抗菌活性に関して改善されることを開示している。
【0007】
WO-02/02073は、5%未満の界面活性剤、且つ、20%未満のアルコールしか含んではならない、TCC自体が約0.001〜約10%、好ましくは2%未満にて存在する、TCCを含む抗皮脂スキンケア組成物をさらに開示している。この文書は、できれば、TCC製剤において、アルコールは避けるべきであると教示しており、陰イオン及び非イオン界面活性剤は避けるべきであるけれども、除外されるべき物質としてDASsがはっきりと列挙されている。
【0008】
US-7,201,914では、TCCはまた、とりわけ、顔のニキビ治療に使用できる局所性制汗剤含有組成物における使用のための潜在的な抗微生物剤としても列挙されている。
【0009】
よって、局所性皮膚治療製剤において、TCCを、特定のタイプの陰イオン界面活性剤を含めた界面活性剤と組み合わせることは知られている。US-6,121,214には、ポリエチレングリコール(PEG)グリセリド可溶化剤と、そして、任意にラウレス・スルホスコハク酸ジナトリウムとも組み合わせた、液状セッケンにおける抗菌剤としてのTCCの使用が記載されている。しかしながら、この文書では、その他のタイプのスルホスクシナート界面活性剤に言及されていない。
【0010】
US-5,883,059には、TCCなどの抗菌剤、陰イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を含む局所抗菌清浄組成物が開示されている。前記陰イオン界面活性剤はDOSであってもよく;好ましくは、それは10〜12% w/wにて存在する。
【0011】
他のハロゲン化カルバニリドもまた、抗微生物剤としての使用で知られている。例には、3-トリフルオロメチル-4,4’-ジクロロカルバニリド及び3,3’,4-トリクロロカルバニリドが含まれる。
【0012】
例えば、US-5,977,049には、水性清浄組成物におけるカルバニリド系抗菌剤、具体的にはTCCの使用が記載されている。カルバニリドは、第一級エトキシ化アルコールを使用することによって可溶化され、且つ、安定化されると言われている。前記組成物はまた、清浄に有効な量で陰イオン界面活性剤も含んでいる;スルホスクシナートは、こうした状況における使用に関して好適な界面活性剤として挙げられていない。
【0013】
US-5,922,768は、水溶性ポリエチレングリコール及び香料と一緒に、抗菌芳香族カルバニリド、この場合もやはり、好ましくはTCCを含む個人向けの清浄組成物が開示されている。アルキル・スルホスクシナートを含めた陰イオン界面活性剤が、潜在的な添加剤として言及されている。
【0014】
DASsのようにTCCもまた、水中、及び多くの水/有機溶媒混合物中に難溶性である。そのため、水性製剤において有効な濃度で処方することが難しい場合もある。
【0015】
ここで、驚いたことに、DASをTCCなどのカルバニリド抗菌剤と併用した場合に、特にプロピオン酸菌に対して、より特に炎症性ニキビに関与する細菌であるプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)に対して、それらの併用レベルの抗菌活性に対する増強効果が観察され得る。これは、先に議論したUS-6,224,886及びWO-02/02073に関する教示を考慮すると特に驚くべきものである。その結果、新規な抗菌薬、及び/又は抗ニキビ製剤は、改良された有効性を有する、及び/又はこれまで必要とされていたのに比べて、より低いレベルの少なくとも1種類の活性成分を含んで、特に局所適用向けに調製される。
【0016】
そのうえ、この新しい活性の組み合わせに関して観察される抗菌相乗効果を効果的に利用するように、DAS及びカルバニリド抗菌剤の両方が局所的な抗菌用途に好適な濃度にて可溶化、且つ、安定化され得る新規製剤が開発された。
【発明の概要】
【0017】
本発明の第1の側面によれば、(a)ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体と、(b)カルバニリド抗菌剤とを含む抗菌製剤が提供される。
【0018】
ある態様において、前記製剤は、両性界面活性剤を含まない。
この製剤は、好ましくは、皮膚(特にヒトの皮膚)への局所適用、及び/又は皮膚との接触に好適である。そのため、前記のDAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤は、皮膚に安全に適用され得る、及び/又はそこに接触させ得る医薬的に許容され得るビヒクル中に含まれことが好ましい。本製剤は、鼻孔、眼、頭皮、及び/又は膣などの領域、及び/又は耳の中の組織表面への局所適用に好適であることが理想的である。それは、口腔内の1又は複数の組織表面への局所適用に好適であり得る。それは、人体内又は人体上のそのような表面への局所適用に特に好適であり得る。
局所適用「に好適である(suitable for)」製剤はまた、局所適用に適合させた製剤であってもよい。
【0019】
口腔内に局所的に適用される製剤は、その普通の使い方で、その中に含まれる物質を全身的に投与する目的のために故意に飲み込まれるのではなく、むしろ、医薬作用、例えば、抗菌効果、及び/又は抗プラーク効果を発揮するのに十分な時間、関連口腔組織、及び/又は歯の表面に接触した状態で口腔内に保持されるだろう。
【0020】
局所製剤のために好適なビヒクルは、局所用のスキンケア又は医薬調剤を調製する分野の当業者にとって周知である。ビヒクルは、通常は流体であり、流体という用語には、クリーム、ペースト、ゲル、ローション、フォーム、軟膏、ワニス(varnish)、又はその他の粘性若しくは半粘性流体、並びに(例えば、鼻腔若しくは経口用途のための)スプレー、(例えば、眼又は耳における使用のための)滴剤、エアゾール、又は口腔内洗浄剤で使用されるものなどのより粘性の低い流体が含まれる。前記のDAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤は、溶液又は懸濁液の形態でそれぞれ独立に存在してもよい。ここで、用語「懸濁液」には、乳濁液、ミセル系、及び他の多相分散液が含まれる。
【0021】
前記のDAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤のどちらか又は両方は、別個か又は一緒かにかかわらず、標的化又は意図された投与部位におけるその放出を制御するのに好適な送達用ビヒクル中又はその上に担持されていてもよい。こうしたビヒクルには、リポソーム及び他のカプセル化物体、例えば、ニオソーム、アスパソーム(aspasomes)、マイクロスポンジ、マイクロエマルジョン、ヒドロゲル、及び固体脂質ナノ粒子などが含まれる。
【0022】
用語「ジアルキル・スルホスクシナート」又は「DAS」は、本明細書中では、スルホン酸基が-S(O)2-OHとして存在しているスルホコハク酸のジアルキル・エステルを意味する。ジアルキル・スルホスクシナートの誘導体には、金属塩やアンモニウム塩(具体的にはNH4+塩)などの塩、及びスルホン酸基がスルホナート-S(O)2-O-として存在している前記化合物のいずれかの形態、並びに溶媒和物、そして、投与時又は投与後の適当な時点でその化合物の活性形態に戻る、いわゆる「プロドラッグ」形態を含むことができる。
【0023】
DASの2つのアルキル基は、例えば、C1〜C18アルキル基であり得、特に、C6〜C10、そして、特にC8などのC2〜C12又はC2〜C10アルキル基であり得る。よって、DASは、先に記載のジオクチル・スルホスクシナートが好適である。アルキル基は、置換されていても、非置換であってもよいが、後者が好ましい。置換されている場合には、それらは、例えば、一、二、又は三置換であってもよく、そして、アミド基及びエーテルから選択される1以上の置換基を含むことができるのが好適である。それらは、直鎖であっても、分岐であってもよい。それらは、1又は複数の不飽和炭素‐炭素結合を含んでもよい。本発明のある態様において、DASのアルキル基は、エーテル基では置換されない。
【0024】
前記のDAS又は誘導体は、スルホン酸基がスルホナート-S(O)2-O-として存在している塩、例えば、金属塩若しくはアンモニウム塩など、の形態で都合よく使用される。好適な金属塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩、特に前者)及びアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩)が含まれる。
前記のDAS又は誘導体は、医薬的に許容し得るものが好適である(その用語は獣医学的用途に好適であることを含んでいる)。
【0025】
本発明のある態様において、前記DASは、そのナトリウム塩、例えば、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム(dioctyl sodium sulphosuccinate)(別名ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム(dioctyl sulphosuccinate sodium)又はドキュセート・ナトリウム)、の形態で使用される。
【0026】
用語「カルバニリド抗菌剤」は、本明細書中では、少なくとも1種類の細菌又は細菌菌株に対して抗菌剤として活性であるカルバニリド又はその誘導体を意味する。
【0027】
カルバニリド自体は、1,3-ジフェニルカルバミド;N,N’-ジフェニル尿素;及びアカルジット(acardite)としても知られている。本発明における使用に関して、カルバニリドは、フェニル基のどちらか又は両方(好ましくは両方)が1又は複数のハロゲンで独立に置換されているハロゲン化カルバニリドが好適である。特に、フェニル基のどちらか又は両方(好ましくは両方)が1又は複数の塩素基で独立に置換されている塩素化カルバニリドであり得る。
【0028】
カルバニリド抗菌剤は、例えば、トリクロカルバン(TCC)、3-トリフルオロメチル-4,4’-ジクロロカルバニリド、及び3,3’,4-トリクロロカルバニリドから選択され得る。
より特に、それは、以下の式:
【0029】
【化1】

【0030】
(CAS受入番号101-20-2)によって表されるTCCである。
カルバニリド又は誘導体は、(獣医学的用途に好適であるものを含めた)医薬的に許容し得るものが好適である。
DAS又はカルバニリドのどちらかの「誘導体」は、(その用語は獣医学的用途のために許容し得るものを含めた)医薬的に許容し得る誘導体であり得る。それは、例えば、塩、複合体、又は溶媒和物、あるいは、投与時若しくは投与後の適当な時点で関連化合物の活性形態に戻る、いわゆる「プロドラッグ」形態又は保護形態であってもよい。DASの場合、誘導体は、スルホスクシナートが誘導され得る遊離酸‐すなわち、アルキル・スルホコハク酸‐であり得る。しかしながら、ある態様において、前記DASは、スルホスクシナートの形態で存在している。ある態様において、前記カルバニリド抗菌剤は、カルバニリド単独(すなわち、1,3-ジフェニルカルバミド)の形態で存在している。
【0031】
本発明による製剤は、2以上のDASs又はその誘導体の混合物を含んでもよい。それは、2以上のカルバニリド抗菌剤の混合物を含んでもよい。
本発明による製剤において、前記のDAS又は誘導体と、カルバニリド抗菌剤との組み合わせ物が、活性な(すなわち、抗菌薬として活性な)作用物質として存在する。前記組み合わせ物は、抗ニキビ剤として(すなわち、(ニキビの症状、及び/又は原因、及び/又はニキビに関連する1又は複数種類の微生物に対することを含めた)ニキビに対して活性である作用物質として)存在し得る。それは、以下により詳細に記載される抗プラーク剤として存在し得る。
前記のDAS又は誘導体は、活性成分などの別の物質のため安定化剤として、又は表面活性剤(界面活性剤)として、又は湿潤剤、可溶化剤、分散剤、若しくは乳化剤として、又は加工助剤として、混ぜ物なしに使用されることなく、主に使用されることさえないことが好適である。
【0032】
驚いたことに、DASと、TCCなどのカルバニリド抗菌剤とが、(プロピオン酸菌のものを含めた)細菌活動を阻害するように、そして、多くの場合、細菌活動を予防するように一緒に作用することがわかった。言い換えれば、それらは、個別のその2つの作用物質の活性の合計と比較して、互いの活性を増強することがわかった。これは、先に議論したように、陰イオン界面活性剤がTCCなどのカルバニリドの抗微生物活性を低減することがあるという教示を考慮すると、特に驚くべきことである。
【0033】
DAS又はDAS誘導体と、カルバニリド抗菌剤との組み合わせ物によるこの抗菌活性の増強は、少なくとも一部には、個々の反応物の抗菌活性の合計に比べて、より優れた抗菌活性を有する反応生成物の形成によるものであり得る。よって、本発明は、DAS又はその誘導体と、カルバニリド抗菌剤、特に、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムやTCCなどのDOSとの間で形成された反応生成物を含む抗菌製剤を包含できる;この反応性生物は、使用直前又は使用時に、現場(in situ)において形成されてもよい。
【0034】
本発明による製剤において、前記のDAS又は誘導体と、カルバニリド抗菌剤、又はそれらの相対比率は、個々の化合物単独での活性と比較して、少なくとも加法的レベルの抗菌活性をもたらすようなものが好ましい。これらの状況において増強された活性レベルは、関連細菌を殺滅するのに必要とされる(単数若しくは複数の)化合物濃度の低下、及び/又は(以下で説明する)ディスク拡散アッセイにおける阻害領域の拡大、及び/又は微生物の阻害若しくは殺滅の速度の上昇によって明らかにされ得る。
【0035】
抗菌活性は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方に対する活性を網羅する。それは、増殖阻害活性であってもよいが、殺菌活性(すなわち、関連生物体に対する致死活性)がより好ましい。それは、付着(sessile)細菌、及び/又はプランクトン性細菌に対する活性を含んでもよい。
【0036】
本願発明の文脈において、細菌の中の特定の種に対する活性が、その種の中の少なくとも1、好ましくは2以上の菌株に対する活性を意味すると理解されてもよい。
【0037】
抗菌活性は、関連生物体によるバイオフィルム形成を妨害する、及び/又は抑制する能力であるか又はそれを含むことができる。
本文脈において、バイオフィルム形成の妨害は、バイオフィルムを形成するか、維持するか、又はそこに存在する細菌の能力、及び/又は細菌によって既に形成されたバイオフィルムに対するあらゆる負の効果を包含する。よって、それは、これまでに形成されたバイオフィルムの量の低減、及び/又はそのようなバイオフィルムの減損を伴ってもよい。それは、バイオフィルム内の付着細菌の殺滅又は抑制を伴ってもよい。
【0038】
前記バイオフィルムは、例えば、プラークの形態であってもよい。前記妨害は、プラーク内の微生物組成をより健全な状況に変えること、例えば、共凝集を阻害することでプラークの量を減らすこと、及び/又はプラークの組織化と全体性を媒介するシグナル分子の産生に干渉することを伴ってもよい。
【0039】
バイオフィルム形成の抑制は、バイオフィルムを形成する細菌の能力、又はより一般的には、共凝集する細菌の能力の(完全な予防を含めた)さまざまな程度の障害を包含する。よって、それは、細菌が形成できるバイオフィルムの量、及び/又は強さ、それがそうすることができる速度を低減することを含めた総合的な又は部分的な障害を包含する。それは、細菌によって形成された既存のバイオフィルムの成長又は成長速度を予防するか、又は低下させることを伴ってもよい。
【0040】
本発明による抗菌製剤は、少なくともグラム陽性細菌に対して、例えば、プロピオニバクテリウム亜種(Propionibacterium spp)、ブドウ球菌(staphylococci)、口腔内の病態に関係する細菌、及び体臭に関係した細菌から選択される1以上の細菌に対して活性であることが好ましい。それは、特に、本発明の第5〜第8の側面に関連して以下で言及された細菌の中の1又は複数に対して活性であり得る。
【0041】
本発明のある態様において、前記製剤は、皮膚又は皮膚媒介性感染症に関連する細菌、特にニキビに対して、及び/又は口腔内の感染症に関連する細菌に対して活性である。それは、ブドウ球菌(及び、腸球菌(enterococci)などの他のグラム陽性球菌の場合)、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に対して、プロピオン酸菌(propionibacteria)に対して、及び/又は歯又は歯周部の病態に関連する細菌、例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、及び/又はS.ミュータンス(S. mutans)に対して活性であり得る。
【0042】
特に好ましい態様において、それは、ニキビに関連する1又は複数の細菌、特にP.アクネス(P. acnes)や場合によってはP.グラヌロサム(P. granulosum)などのプロピオン酸菌に対して活性である。他の好ましい態様において、前記製剤は、口腔に影響を及ぼす病態に関連する1又は複数の細菌、例えば、P.ジンジバリスに対して活性である。他の好ましい態様において、前記製剤は、1以上のブドウ球菌、特にS.アウレウスに対して活性である。他の好ましい態様において、前記製剤は、特に脇の下又は足における体臭に関連する1又は複数の細菌に対して活性である。
【0043】
前記製剤は、例えば一般的な臨床用途である、1又は複数の抗生物質に対して完全に又は部分的に耐性である細菌、特にプロピオン酸菌に対して活性であることが好ましい。それは、マクロライド‐リンコサミド‐ストレプトグラミン(MLS)耐性菌株、及び/又はマクロライド‐リンコサミド‐ストレプトグラミン‐ケトリド(MLSK)耐性菌株に対して活性であることが理想的である。特に、それは、例えば、P.アクネス菌株のエリスロマイシン耐性菌株、クリンダマイシン耐性菌株、及び/又はテトラサイクリン耐性菌株に対して活性であり得、テトラサイクリンという用語は、ここでは、例えば、ミノサイクリン及びドキシサイクリンを含めた抗生物質のクラス、並びにテトラサイクリンとして知られている具体的な抗生物質を指す。
【0044】
例えば、本発明による製剤に関して低感受性の細菌に対して活性を拡張するために、本発明による製剤には、追加の抗微生物剤、特にグラム陰性菌に対して活性な作用物質を含むか、又はそれと組み合わせて使用することができる。その活性範囲は、病原性微小真菌に対して活性な1又は複数の抗微生物剤を含むか、又はそれと組み合わせて使用することによって、さらに拡張することができる。追加の抗微生物剤は、局所的に投与されても、全身的に投与されてもよいが、局所が好適である。
【0045】
抗菌活性は、例えば、以下の実施例に記載の試験を使用して従来の様式で計測することができる。通常、活性に関する試験は、候補抗菌化合物で関連細菌の培養物を処理し、処理した培養物を、通常であればその細菌の増殖を助ける条件下でインキューベートし、候補化合物の存在下で増殖が生じた場合には、その増殖レベルを評価するステップを伴う。
【0046】
本発明に使用されるDAS又は誘導体が、少なくともプロピオン酸菌に対して、125μg/ml以下の最小阻止濃度(MIC)を有することが好ましく、62.5若しくは31.25、又は場合により20μg/ml、例えば、31.25〜3.9μg/mlなどであることがより好ましい。これに対応する最小殺菌濃度(MBC)は、125μg/ml以下であることが好ましく、70μg/ml以下であることが好ましい。DAS又は誘導体は、こうした特徴を、例えば、以下の実施例で試験されるように、脂質及び塩化ナトリウムの少なくとも一方、好ましくはその両方の存在下で示すことがより好ましい‐脂質及び塩化ナトリウムは、皮膚の表面に存在し得る種であるので、この状況における性能は局所皮膚治療製剤における使用への適合の指標となり得る。
【0047】
本発明に使用されるカルバニリド抗菌剤は、少なくともプロピオン酸菌に対して、20μg/ml以下の最小阻止濃度(MIC)を有することが好ましく、5μg/ml以下がより好ましく、そして、1μg/ml以下が最も好ましい。カルバニリドもまた、例えば、以下の実施例で試験されるように、脂質及び塩化ナトリウムの少なくとも一方、好ましくはその両方の存在下でこうした特徴を示すことがより好ましい。
【0048】
本発明に使用されるDAS又は誘導体は、少なくともP.ジンジバリスに対して、10μg/ml以下の最小阻止濃度(MIC)を有することが好ましく、5又は2又は1μg/ml以下、例えば、0.1〜2ng/mlなどであることがより好ましい。それに対応する最小殺菌濃度(MBC)は、20μg/ml以下であることが好ましく、10μg/ml以下であることがより好ましい。DAS又は誘導体はまた、唾液及び歯肉溝浸出液の少なくとも一方、好ましくはその両方の存在下、及び/又はムチン又はアルブミンなどの上述の体液の成分の存在下でこうした特徴も示すことが好適である‐上記の物質は、口腔内に存在している種であるので、この状況における性能は、局所オーラル・ヘルスケア製剤における使用への適合の指標になり得る。
【0049】
本発明に使用されるカルバニリド抗菌剤は、少なくともP.ジンジバリスに対して、10μg/ml以下の最小阻止濃度(MIC)を有することが好ましく、5μg/ml以下であることがより好ましく、そして、2又は1μg/ml以下であることが最も好ましい。それに対応する最小殺菌濃度(MBC)は、20又は10μg/ml以下であることが好ましく、5又は2又は1μg/ml以下であることがより好ましい。カルバニリドはまた、唾液及び歯肉溝浸出液の少なくとも一方、好ましくはその両方の存在下、及び/又はムチン又はアルブミンなどの上述の体液の成分の存在下でこうした特徴も示すことがより好ましい。
MIC及びMBCの値は、例えば、以下の実施例に記載のとおり、従来のアッセイ技術を使用することで計測することができる。
【0050】
前記製剤中のDAS又は誘導体の濃度は、好適には0.1、又は0.2、又は0.5% w/w以上であり、好ましくは1又は1.5% w/w以上であり、より好ましくは2、又は3、又は3.5、又は4% w/w以上であり得る。その濃度は、最大15% w/wであり、好ましくは最大10、又は9、又は8、又は7、又は6、又は5% w/wであり得る。例えば、その濃度は、0.1〜10% w/w、あるいは、1、又は2、又は3、又は3.5〜10% w/w、あるいは、2、又は3、又は3.5〜8% w/wの範囲であり得、より好ましくは3又は3.5〜7% w/w、あるいは、4〜6% w/w %、例えば、約5% w/wなどであり得る。
【0051】
具体的には、前記製剤が、ニキビなどの皮膚又は皮膚構造の病態に対する使用のためのものであるときに、DAS又は誘導体の濃度は、例えば、1〜10% w/w、あるいは、2、又は3、又は3.5〜8% w/wであり得る。具体的には、前記製剤が口腔に影響を及ぼす病態に対する使用のためのものであるときに、DAS又は誘導体の濃度は、0.1〜10% w/wであり得る、例えば、0.2又は0.5〜8又は5% w/wであり得る。具体的には、前記製剤が、P.ジンジバリスに対する使用のためのものであるときに、DAS又は誘導体の濃度は、0.05〜5%であり得、例えば、0.05又は0.1〜5、又は2、又は1% w/wであり得る。
【0052】
前記製剤のカルバニリド抗菌剤の濃度は、好適には0.01% w/w以上であり、好ましくは0.05又は0.1% w/w以上であり得る。その濃度は、最大5% w/wであり、好ましくは最大2又は1% w/wであり、より好ましくは最大0.5、又は0.3、又は0.25、又は0.2% w/wであり得る。例えば、それは、製剤中に0.05〜2% w/wにて、又は0.05〜1又は0.5% w/wにて、又は場合により0.1〜0.3% w/w、例えば、約0.2% w/wなどで存在し得る。
【0053】
具体的には、前記製剤が、ニキビなどの皮膚又は皮膚構造の病態に対する使用のためのものであるときに、カルバニリドの濃度は、例えば、0.05〜2% w/w、あるいは、0.1〜1、又は0.5% w/wであり得る。具体的には、前記製剤が口腔に影響を及ぼす病態に対する使用のためのものであるときに、カルバニリドの濃度は、0.05〜2% w/wであり得る、例えば、0.1〜0.5又は0.2% w/wであり得る。
【0054】
他の化合物の存在によって、その製剤が生体内に適用されるとき、作用部位において、DAS若しくは誘導体又はカルバニリド抗菌剤のいずれかの濃度に関して、その化合物単独のMBCに比べて、又はさらにMICに比べても低くなる場合がある。例えば、この時点で、少なくとも1の化合物の濃度が、そのMBC又はMICの0.8倍以下であり得、例えば、0.5倍以下、0.25倍以下、又は0.125倍以下であり得る。
【0055】
具体的には、前記製剤がニキビなどの皮膚又は皮膚構造の病態の治療における使用のためのものである場合には、好ましくは、その製剤中のDAS又は誘導体対カルバニリド抗菌剤の重量比は、1:50〜50:1、又は1:40〜40:1、又は1:30〜30:1である。それは、1:5〜50:1、又は1:5〜40:1、又は1:5〜30:1であり得る。具体的には、前記製剤が、プロピオン酸菌に対して使用されるべきものである場合に、DAS又は誘導体対カルバニリド抗菌剤の重量比は、1:1又は2:1〜50:1、又は4:1若しくは5:1〜50:1、又は10:1〜40:1、又は10:1〜30:1、例えば、12.5:1又は25:1などであり得る。
【0056】
具体的には、前記製剤がオーラル・ヘルスケアに、より特にP.ジンジバリス、及び/又はストレプトコッカス・ミュータンスに対して使用されるべきものである場合に、DAS又は誘導体対カルバニリド抗菌剤の重量比は、50:1〜1:50であり得る。前記比は、例えば、30:1以下又は25:1以下であり得る。それは、最大1:10、又は最大1:5、若しくは1:2、若しくは1:1であり得る。例えば、前記比は、30:1又は25:1〜1:1又は3:1であり得る。好適な比は、例えば、25:1、10:1、5:1、2.5:1、又は1:1であり得る。具体的には、前記製剤がP.ジンジバリスに対して使用されるべきものである場合に、その比は、10:1〜1:2若しくは1:1のどちらか、又は5:1〜1:1であり得る。
【0057】
先に記載したように、本発明による製剤は、ヒト又は動物、特にヒトの皮膚への局所投与に好適であることが好ましく、それに適合していることがより好ましい。それは、歯、歯茎(gum)、歯肉(gingivae)、歯周部、舌、皮膚、又はヒト若しくは動物の、特にヒトの口腔の他の組織表面への局所投与に好適であり得、そして、それに適合していることがより好ましい。それは、鼻孔、及び/又は耳の中の組織への局所投与に好適であり得、及び/又はそれに適合し得る。
【0058】
こうした製剤は、ローション、クリーム、軟膏、ワニス、フォーム、ペースト、ゲル、坐剤、又はペッサリーの形態、又は、特に、ローション、クリーム、軟膏、ワニス、フォーム、ペースト、又はゲルによる局所投与で知られているいずれかの他の物理的形態をとってもよい。それは、例えば、消毒薬としての使用のための、溶液又は懸濁液の形態をとってもよい。それは、局所投与を容易にする、例えば、スポンジ、綿棒(swab)、ブラシ、ティッシュ、布、拭き取り布(wipe)、皮膚用パッチ、(包帯(bandage)、硬膏(plaster)、皮膚接着剤、又は組織表面、特に損傷への適用のために設計された他の材料を含めた)包帯剤(dressing)、又は歯科用繊維(dental fiber)などの担体に適用されるか、又は適用されてもよい。それには、(例えば、歯周ポケット内に挿入されるチップ;又は歯科充填物、ブリッジ、若しくはキャップ;又は義歯を含めた)インプラント、含浸歯科用繊維、義歯又はチューインガム、タブレット又はチュアブル・カプセルの上又はその中に担持された、又は担持されてもよい製剤は含むことができる。それは、医薬(獣医用のものを含むが、好ましくはヒト)使用、及び/又は化粧用若しくは他の非医療的ケア目的(例えば、一般的な衛生状態若しくは皮膚の清浄、又は歯若しくは歯茎の外観の改善)が意図されてもよい。
【0059】
口腔に影響を及ぼす病態の治療における使用のために、前記製剤は、特に、練り練り歯磨粉、口腔内洗浄剤、歯磨剤、ロゼンジ、又は頬側パッチの形態をとってもよく、又はそれは、歯科用繊維、テープ、又は義歯の中、又はその上に担持されてもよい。
前記製剤は、鼻腔用スプレー、又は点眼薬若しくは点耳薬の形態をとってもよい。
【0060】
DAS又は誘導体とカルバニリド抗菌剤含まれているビヒクルは、局所適用に好適なビヒクル又はビヒクルの混合物であってもよい;選ばれたタイプは、意図された適用の様式、及び適用部位に依存するだろう。こうしたビヒクルの多くが、当業者に知られていて、且つ、容易に商業的に入手可能である。例えば、皮膚への局所適用のための製剤との関連において、例は、例えば、Williamsの「Transdermal and Topical Drug Delivery」Pharmaceutical Press, 2003及びその他の同様の参考書籍の中に見ることができる。局所的な薬物デリバリー戦略の総説についてはまた、Date, A. A. et al, Skin Pharmacol, Physiol., 2006, 19(1): 2-16も参照のこと。
【0061】
口腔内への局所適用のための製剤との関連において、好適なビヒクルの例は、「Oral Hygiene Products and Practice」1988, Morton Prader, Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, NY, USAの中に見ることができる。
【0062】
眼球への使用のための製剤との関連において、好適なビヒクルの例は、「Ocular Therapeutics and Drug Delivery: A Multidisciplinary Approach」1995, Indra K. Reddy, Ed., CRC Press;及び「Ophthalmic Drug Delivery Systems」2003, Ashim K. Mitra, Ed., Informa Healthcareの中に見ることができる。
【0063】
活性物質(actives)のどちらか又は両方が、先に記載したように、懸濁液又は他のタイプの多相分散液の形態で存在していてもよい。
先に記載したように、ビヒクルはまた、前記製剤の所望の部位、及び/又は送達時期を標的とするようなものであってもよい。例えば、それは、前記製剤を皮膚若しくは毛嚢、又は前鼻孔(前記製剤がブドウ球菌に対する予防的な処置として使用されるとき、後者が特に好適である)に向かわせることができ、皮膚又は毛嚢に向かわせることが最も好ましい。それは、前記製剤を、歯茎、歯、又は口腔内のその他の領域に向かわせることができる。それは、特定の期間にわたり、製剤の放出を遅らせるか、又はそうでなければ、制御できる。DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤のどちらか又は両方を、例えば、リポソーム内に、マイクロカプセル封入することができる‐皮膚への局所適用に関して、特に好適なリポソームは、角質層脂質、例えば、セラミド、脂肪酸、若しくはコレステロールから作られたものである。
【0064】
場合によっては、極性のビヒクルも好ましい。前記製剤が皮膚への使用を意図とする場合、そのビヒクルは、主に非水性のものであり得るが、抗ニキビ処置の場合には、水性ビヒクルが使用できる。特に表面処理における使用を意図とする場合、例えば、特にブドウ球菌に対する器具や作業領域の清浄を目的とする場合には、前記ビヒクルは、表面活性であってもよい。それが揮発性であることが好ましい。場合により、前記ビヒクルは、アルコール・ベースのものやシリコン・ベースのものであってもよい。
【0065】
一例として、本発明によるローション又はゲル製剤、特に皮膚への適用を意図したものは、水、アルコール、例えば、エタノール又はフェノキシエタノールなど、及びグリコール、例えば、プロピレングリコールなどの混合物を含むことができる。
【0066】
本発明のある態様において、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤を含む製剤はまた、以下の:
(i)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(ii)有機溶剤、特に、アルコール;
(iii)増粘剤、及び
(iv)水、
を含む。
【0067】
驚いたことに、構成要素のこの特定の組み合わせが、カルバニリド、例えば、TCCなどの水性溶媒混合物中への典型的に低い溶解性にもかかわらず、そして、これまで実現可能と考えられていたよりも高い濃度(例えば、3.5% w/w以上、例えば、3.5〜8% w/wなど)のDAS活性物質でさえ、安定な製剤をもたらすことができることを見つけた。我々が知る限り、DASsとその誘導体は、特に、局所使用のために、こうした高い濃度にてこれまで処方されなかった。
本発明のある態様において、前記製剤は、ゲルの形態である。例えば、それは、25,000〜300,000 cps又は50,000〜200,000 cpsの粘度を有していてもよい。
【0068】
先に規定されたタイプの製剤では、可溶化剤(i)は、ポリオキシアルキレン・ベースであり、例えば、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール、PEG)ベースである。それは、ポリオキシアルキレンの誘導体、例えば、エーテル、又はより特にエステルを含んでいてもよい。それは、例えば、(a)ポリアルコキシル化ソルビタン・エステル以外のポリアルコキシル化エステル、(b)ポリアルコキシル化アルキル・エーテルから選択され得る。より特に、それは、(a)ポリエトキシル化ソルビタン・エステル以外のポリエトキシル化エステル、及び(b)ポリエトキシル化アルキル・エーテルから選択され得る。それは、非イオン性であることが好ましい。
【0069】
ポリアルコキシル化エステルは、ポリアルコキシル化脂肪酸エステルであってもよい。脂肪酸成分は、C10〜C20基又はC12〜C18基、例えば、ステアリン酸(C18)又は12-ヒドロキシステアリン酸であり得る。それは、特に、ヒドロキシル置換されている脂肪酸基であり得る。好適なこうした可溶化剤は、Myrj(商標)45(PEG 400-モノステアラート)及びSolutol(登録商標)HS15(PEG-15-ヒドロキシステアラート、別名PEG660 12-ヒドロキシステアラート及びマクロゴール-PEG-15-ヒドロキシステアラート)として市販されている。
【0070】
Solutol(登録商標)HS15は、BASF AGから入手可能な非イオン性可溶化剤である。それは、主として12-ヒドロキシステアリン酸のポリグリコール・モノ-及びジ-エステル(分子の親油性部分)と、約30%の遊離ポリエチレングリコール(疎水性部位)から成る。それは、15moleのエチレン・オキシドを、15moleの12-ヒドロキシステアリン酸と反応させることによって調製される。
【0071】
この一般的なタイプの可溶化剤は、注射用医薬製剤、及び、場合により、経口的な医薬製剤における使用が知られているが、局所適用が意図される製剤で幅広く使用されているわけではないか、又はそういった製剤への使用は推奨されていない。よって、局所製剤における、こうした作用物質の適切な濃度に関する有効なデータは、わずかしか存在しない。
【0072】
ポリアルコキシル化エステルは、ポリアルコキシル化グリセリル・エステル(別名ポリアルコキシル化グリセリド)であってもよく、それはポリアルキレン・グリコール(一般的にPEG)の中性脂肪エステルである。それは、モノ-、ジ-、トリ-グリセリド、部分グリセリド、又はその混合物を含むことができる。それは、例えば、適切な鎖長を有する中性脂肪オイルを用いたポリアルキレン・グリコールのエステル化によって形成することができる。グリセリド成分は、例えば、6〜20個の、又は8〜18個の炭素原子を含むことができる。好適なこうした可溶化剤は、Glycerox(商標)やLabrasol(商標)として市販されている。例えば、Glycerox(商標)エステルは、PEGの分子量を反映する多くのグレード、例えば、PEG-6、PEG-7、PEG-8(L8)、及びPEG-15(L15)、によりCroda Incから市販されているPEGベースの製品である。これらの中では、PEG6バージョンが好ましい。Glyceroxエステルは、例えば、バス用品、皮膚の清浄剤、及びシャンプー中の皮膚軟化剤として、並びに可溶化剤、過脂肪剤、分散剤、及び乳化剤として使用するために販売されている。
【0073】
グリセリド可溶化剤は、例えば、Glycerox(商標)767(ポリオキシエチレン(6)グリセリル・モノカプリラート/カプラート、PEG-6のカプリリック/カプリック・グリセリドの混合物)であるか、又はGlycerox(商標)HE(PEG-7グリセリル・ココエートである)であり得る。
【0074】
ポリアルコキシル化アルキル・エーテルは、C12〜C20又はC14〜C20アルコールなどの脂肪アルコール、例えば、セチル(C16)、ステアリル(C18)、若しくはオレイル(C18:1)のポリアルコキシル化エーテルであり得る。それは、特に、マクロゴール・エーテルとしても知られているポリエトキシル化アルキル・エーテルであり得る。好適なこうした可溶化剤は、Brij(商標)97(PEG-モノオレイル・エーテル)及びCremophor(商標)A25(ステアリック及びセチル・エーテルの混合物)として市販されている。
【0075】
一般的に、本発明に使用される可溶化剤のポリアルキレン・グリコール要素は、いずれかの適切な分子量も持つことができる。
可溶化剤(i)は、特に、ポリエトキシル化エステルであり得、より特に脂肪酸エステル又はポリエトキシル化グリセリドであり得る。Solutol(登録商標) HS15とGlycerox(商標)767、特に、前者、は本発明における使用のための好適な可溶化剤であることがわかった。
【0076】
本発明の製剤で使用される有機溶剤(ii)は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はフェノキシエタノールが好適である。それは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びその混合物から選択されることができ、そして、メタノール、エタノール、及びその混合物から選択されること好ましい。本発明のある態様において、前記有機溶剤は、エタノールである。
【0077】
増粘剤(iii)は、局所適用に好適なあらゆる増粘剤であってもよい。それは、ゲル化剤であることが好適である。それは、特に、セルロース・ベースの増粘剤、例えば、エチル・セルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、ヒドロキシプロピル・セルロース、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロース、又はカルボキシメチル・セルロースなどであり得る。この場合もやはり、こうした作用物質は、(好ましくは医薬的に許容し得る)塩、例えば、ナトリウム塩などの形態で使用されてもよい。前記増粘剤は、一般的に、アリル・エーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマーであるところの、カルボマーなどの重合体増粘剤であり得る。
【0078】
好ましい増粘剤は、ヒドロキシエチル・セルロースである。
活性成分、すなわち、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤の濃度は、先に記載するとおりのものであり得る。
【0079】
前記可溶化剤は、10% w/w以上の濃度で存在しているのが好ましく、15% w/w以上がより好ましい。それは、最大50% w/wの濃度で存在してもよいが、最大40、又は30、又は25% w/wが好適である。その濃度は、例えば、10〜30% w/w又は15〜25% w/w、例えば、約20% w/wなどであってもよい。
【0080】
前記有機溶剤は、10% w/w以上の濃度で存在しているのが好ましく、15又は17% w/w以上がより好ましい。それは、最大30% w/wの濃度で存在していてもよいが、最大25% w/wが好適である。その濃度は、例えば、10〜30% w/w又は15〜25又は30% w/w、例えば、約20% w/wなどであってもよい。
【0081】
前記増粘剤は、0.2% w/w以上の濃度で存在していることが好ましく、0.5% w/w以上がより好ましい。それは、最大5% w/wの濃度で存在していてもよいが、最大3% w/wが好適である。その濃度は、例えば、0.5〜5% w/w又は0.5〜3% w/w、例えば、約1% w/wなどであってもよい。
【0082】
好ましい態様によると、そのため、本発明は、以下の:
(i)2〜8% w/wのジアルキル・スルホスクシナート又はその誘導体;
(ii)0.05〜0.5% w/wのカルバニリド抗菌剤;
(iii)10〜30% w/wのポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(iv)10〜30% w/wの有機溶剤、特に、アルコール;
(v)0.5〜5% w/wの増粘剤;及び
(vi)秤量水(balance water)、
を含む抗菌製剤を提供する。
【0083】
驚いたことに、これらのタイプの製剤が、DAS又はその誘導体と、TCCなどのカルバニリド抗菌剤との両方を含むときであっても、そのうえ、高濃度のDAS又は誘導体を含むときにも、これまで実現可能であると思われたのに比べて、安定であり得ることがわかった。
【0084】
本発明によって提供されるタイプのDAS及びカルバニリド含有製剤は、それらの用途に関連して、決して、標準的な賦形剤の単純な組み合わせ物ではない。例えば、アルコール/水混合物単独での使用は、TCCなどのカルバニリド活性物質を可溶化するのに不十分である場合がある。しかしながら、多くの一般的に入手可能な可溶化剤のうち、特に、本発明で好まれる比較的高いDAS濃度のときに、DASsとカルバニリドを安定した局所ゲルに処方するのに首尾よく使用できるものは、少数であることがわかった。より伝統的なポロキサマ可溶化剤、例えば、Tween(商標)シリーズのものなどは、こうした製剤における使用に必ずしも好適であるとは限らないことがわかった。局所ゲル製剤との関連における、及び本発明による製剤で好まれることがわかった比較的高い濃度での、局所製剤よりむしろ水性非経口製剤においてより伝統的に使用されるSolutol(登録商標)HS15などの可溶化剤の使用もまた、決して直感的に得られるものではない。
【0085】
特に驚くべきことは、DASの不存在下、前記製剤の残りの構成要素が、安定な混合物を必ずしも形成するとは限らないという事実である。そのため、構成要素の独創的な組み合わせを使用することにより、全体的な製剤の安定性に関して、利益があるように思えるが、その効果を従来技術から予測できなかった。
【0086】
一般的に言えば、本発明による製剤は、医薬又は獣医学的製剤における使用で知られている標準的な賦形剤、及び他の添加剤を含むことができる。例えば、前記製剤が、特に、皮膚及び皮膚構造の病態を治療するために、及び/又は、例えば、ニキビ若しくはアトピー性皮膚炎などの病態を治療するために、皮膚への局所適用が意図される場合、好適な賦形剤及び添加剤の例には、皮膚軟化剤、香料、抗酸化剤、保存料、安定化剤、ゲル化剤、及び界面活性剤が含まれる;その他のものは、Williamsの「Transdermal and Topical Drug Delivery」前掲の中に見ることができる。しかしながら、ニキビの治療に関して、前記製剤が皮膚軟化剤を含まないことが好ましい。
【0087】
こうした製剤は、抗微生物剤(特に、抗菌剤)などの追加の活性物質をさらに含んでもよい。例えば、それは、抗ニキビ剤、角質溶解薬、ニキビ溶解薬(comedolytics)、抗炎症剤、抗増殖性物質、抗生物質、抗アンドロゲン、セボスタティック剤(sebostatic agents)、止痒剤、免疫調節薬、創傷治癒を促進する作用物質、抗微生物剤、及びその混合物から選択される1以上の作用物質を含んでもよい;それは、日焼け止め剤、保湿剤、皮膚軟化剤、及びその混合物から選択される1又は複数の作用物質を代わりに、又は加えて含んでもよい。
【0088】
追加の抗微生物剤は、例えば、殺生物剤(biocides)、消毒薬(disinfectants)、防腐剤、抗生物質、バクテリオファージ、酵素、抗付着因子、免疫グロブリン、及びその混合物から成る群から選択されてもよい;それは、殺菌剤として、特に、プロピオン酸菌に対して活性であることが好ましい。
【0089】
しかしながら、前記製剤中の唯一の活性物質であること、又は少なくとも唯一の坑微生物活性物質又は抗菌活性物質であること、及び/又は唯一の抗ニキビ活性物質であることが、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤にとって好ましい。
【0090】
前記製剤について口腔内での局所適用が意図される場合、好適な賦形剤及び添加剤には、オーラル・ヘルスケア製剤における使用で知られているものが含まれる。例には、着香料、抗酸化剤、保存料、安定化剤、ゲル化剤、及び界面活性剤が含まれる;その他のものは、「Oral Hygiene Products and Practice」1988、前掲で見ることができる。界面活性剤は、微生物バイオフィルムの形成を妨害する、及び/又は予防する助けとなり得る。
【0091】
こうした製剤は、経口的に許容され、且つ、全身的に無毒性のビヒクルを含むべきである。例えば、それが練り歯磨粉の形態を取る場合、代表的なビヒクルは、1又は複数の増粘剤、界面活性剤、及び光沢剤と一緒に、液体基材を提供するための水及び湿潤剤を含むかもしれない。好適な湿潤剤には、グリセロール、ソルビトール、及びポリエチレングリコール、そして、特に、その混合物が含まれる。ポリエチレングリコール湿潤剤は、例えば、200〜1000、又は400〜800の範囲の分子量を持ち得る。
【0092】
練り歯磨粉製剤での使用のための好適な増粘剤には、例えば、カラゲナン、キサンタンガム、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウム、並びにトラガカント・ゴムなどの天然及び合成のゴム及びコロイド;デンプン;ポリビニル・ピロリドン;例えば、ヒドロキシエチル・プロピル・セルロースや、ヒドロキシブチル・メチル・セルロースや、ヒドロキシプロピル・メチル・セルロースや、ヒドロキシエチル・セルロースなどのセルロース系増粘剤、並びに、例えば、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム又はカルボキシメチル・ヒドロキシエチル・セルロース・ナトリウムなどのセルロース・エーテルの水溶性塩;そして、カルボキシビニル・ポリマーが含まれる。好適な無機増粘剤には、コロイド・ケイ酸、コロイド状ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、微粉シリカ、及び合成ヘクトライトが含まれる。増粘剤の混合物もまた使用できる。
【0093】
本発明による練り歯磨粉製剤での使用に好適な界面活性剤は、DAS又は誘導体に加えて、水溶性の洗剤(detergents)を含む。一般的に、それらは、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、双性イオン性、アンホテリック(amphoteric)、又はアンホリティック(ampholytic)なものであり得るが、陰イオン性のものが好ましい。好適な陰イオン界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルキル・スルファートや、1,2-ジヒドロキシ・プロパン・スルホナートの高級脂肪酸エステルが含まれる。好適な水溶性非イオン界面活性剤の例には、親水性アルキレン・オキシド基含有化合物(一般的にエチレン・オキシド)の、有機疎水性化合物(例えば、約12〜20個の炭素原子から成る脂肪族鎖を持つもの)との重合体縮合物が含まれる。こうした生成物には、「エトキサマー(ethoxamers)」が含まれ、且つ、例えば、ポリ(エチレン・オキシド)の、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪アミド、及び他の脂肪残基との、並びにプロピレン・オキシド及びポリプロピレン・オキシド(後者は、例えばPluronic(登録商標)という商品名で入手可能)との縮合物が含まれる。しかしながら、場合により、本発明による製剤中への追加の界面活性剤の含有を避けるのが好ましいこともある。
【0094】
練り歯磨粉は、研磨剤又は光沢剤を含むことが好適であるだろう。好適なこうした作用物質には、(沈降非晶質ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、シリカゲル、及びコロイド状ケイ酸などのゲルと沈殿物を含めた)ケイ質材料;炭酸カルシウムや重炭酸ナトリウムなどの炭酸及び重炭酸塩;メタリン酸ナトリウムや、メタリン酸カリウムや、リン酸三カルシウムや、オルトリン酸ニカルシウム脱水物や、リン酸カルシウム二水和物や、無水リン酸二カルシウムや、ピロリン酸カルシウムや、ポリメタリン酸カルシウムや、オルトリン酸マグネシウムや、リン酸三マグネシウム、及び不溶性ポリメタリン酸ナトリウムなどのホスファート;酸化アルミニウム三水和物;焼成アルミナ;ベントナイト;複合非晶質アルカリ金属アルミノシリケート;並びに尿素とホルムアルデヒドの粒状縮合物などの樹脂性研削材が含まれる。その他のものは、US-3,070,510に開示されている。こうした光沢剤の混合物もまた、使用できる。前記の研磨剤又は光沢剤は、歯エナメル質又は象牙質を過度にすり減らせるべきでない。
シリカ研磨剤は、本発明における使用のために特に好ましいこともある。
【0095】
本発明による製剤が口腔内洗浄剤又は歯磨剤の形態を取る場合に、それは、例えば、水/アルコール(例えば、水/エチルアルコール)溶液、そして、任意に、例えば、必要であれば、着香料、甘味料、湿潤剤、界面活性剤、乳化剤、及びその混合物から選択される1又は複数の他の構成要素を含んでもよい。好適な湿潤剤には、先に記載したもの、特に、グリセロール及びソルビトールが含まれる。1又は複数の追加の抗微生物剤もまた含むことができる。
【0096】
非石鹸界面活性剤(例えば、非イオン性、陽イオン性、又はアンホテリック界面活性剤)を、口腔内洗浄製剤に使用できる。好適な非イオン界面活性剤には、先に記載したように、親水性アルキレン・オキシド基含有化合物の、有機疎水性化合物との縮合物が含まれる。その他の好適な非イオン性合成洗剤には:アルキル・フェノールのポリエチレン・オキシド縮合物;エチレン・オキシドの、酸化プロピレンとエチレンジアミンとの反応から生じた生成物との縮合から得られたもの; 8〜18個の炭素原子がある脂肪族アルコールの、エチレン・オキシドとの縮合生成物;並びにソルビトール無水物の脂肪酸部分エステルのポリオキシエチレン誘導体(例えば、市販のTween(登録商標)製品)が含まれる。
【0097】
好適な陽イオン洗剤には、第四級アンモニウム化合物、特に、約8〜18個の炭素原子から成る1本の長いアルキル鎖を持つもの、例えば、ラウリル・トリメチル塩化アンモニウム、セチル塩化ピリジニウム、セチル・トリメチルアンモニウム・ブロマイド、ジ-イソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウム・クロライド、ココナツアルキルトリメチルアンモニウム・ナイトライト、セチル・ピリジニウム・フルオリド等が含まれる。
【0098】
好適なアンホテリック洗剤には、(脂肪族置換基の1つが約8〜18個の炭素原子を含み、そして、1つが、例えば、カルボキシレート、スルファート、スルホナート、ホスファート、若しくはホスホナートなどの陰イオン水溶性基を含む)脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体が含まれる。
【0099】
本発明による製剤での使用に関して、他の好適な界面活性剤は、McCutcheon's Detergents and Emulsifiers及びUS-4,051,234で見ることができる。しかしながら、この場合もやはり、ある場合には、追加の界面活性剤を避けるのが好ましいこともある。
【0100】
口腔内での局所適用を意図するとき、本発明による製剤は、研磨剤、漂白剤、歯の美白剤(例えば、過酸化物又は過ホウ酸ナトリウム)、先に記載した表面活性剤/洗剤、発泡剤、フッ素イオン若しくは含フッ素イオンの供給源、亜鉛塩、例えば、サッカリン、アスパルテーム、デキストロース、若しくは果糖などの非齲蝕性甘味料、例えば、ペパーミント、スペアミント、若しくはアニスの実などの他の着香料、メンソール、脱感作剤(desensitising agents)、抗歯石剤/金属イオン封鎖剤又は抗結石剤(例えば、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、又は酸化亜鉛などの金属塩;アルカリ金属又はアンモニウム・ピロホスファートなどのピロホスファート;若しくはジホスホナート)、重炭酸ナトリウム、陰イオン性ポリカルボキシラート、ラクトペルオキシダーゼなどの酵素、先に記載した湿潤剤、カルボキシビニル・ポリマーなどの結合剤、pH調整バッファー、保存料、染料/色素(例えば、クロロフィル若しくは二酸化チタン)、植物抽出物、抗プラーク剤、追加の抗微生物剤(例えば、抗真菌薬若しくは抗菌薬、特に抗菌薬)、麻酔剤、並びにその混合物から選択される1又は複数の作用物質を含むことができる。
【0101】
この状況において、追加の抗微生物剤を、殺生物剤、消毒薬、防腐剤、抗生物質、バクテリオファージ、酵素、抗付着因子、免疫グロブリン、及びその混合物から成る群から選択し得る;それは、特に、S.ミュータンス、P.ジンジバリス、及び/又は口腔衛生の問題に関連する他の細菌の1又は複数に対して殺菌剤として活性であることが好ましい。
【0102】
しかしながら、この場合もやはり、製剤中で唯一の活性物質であるか、又は少なくとも、唯一の坑微生物的又は抗菌的な活性物質であるか、及び/又はP.ジンジバリスに対して活性な唯一の作用物質であることが、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤にとって好ましいこともある。
【0103】
フッ化物又は含フッ素イオンの好適な供給源は、水溶性アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属フッ化物などの水溶性フッ化物、例えば、フッ化ナトリウム、カリウム、及びバリウム(特に、アルカリ金属フッ化物);フッ化第一銅などのフッ化銅;フッ化スズ;ケイフッ化ナトリウム若しくはアンモニウムなどのケイフッ化物;フルオロジルコニウム酸ナトリウム若しくはアンモニウムなどのフルオロジルコニウム酸塩;モノフルオロリン酸ナトリウム若しくはカリウムなどのモノフルオロリン酸塩;フルオロリン酸モノ-、ジ-、及びトリ-アルミニウム;並びにフッ素化ピロリン酸ナトリウム・カルシウムなどのフッ素化ピロリン酸である。
【0104】
前記製剤が体臭の処置への使用を意図する場合では、それは、アルミニウム又はアルミニウム‐ジルコニウム塩などの制汗剤、及び/又は防臭剤を含むことが好適であるだろう。それは、適切な伝統的な液体若しくは固体担体及び賦形剤を含む、エアゾール又はロールオン若しくは知られているタイプの「スティック」防臭剤の形態であってもよい。それは、1又は複数の香料を含んでもよい。
【0105】
前記製剤が眼感染症の治療への使用を意図する場合では、それは、クリーム、軟膏、点眼剤、又は眼洗浄液(eye rinse)の形態を取ることができる。こうした製剤は、典型的に、水溶性ベースであり、そして、必要に応じて、増粘剤を含めた伝統的な賦形剤を含むことができる。
【0106】
前記製剤が、例えば、消毒薬として、非生物領域又は表面への適用を意図する場合では、それは、アルコール若しくは水/アルコール混合物などの適切な流体ビヒクル中、DAS又は誘導体及びカルバニリド抗菌剤の溶液又は懸濁液の形態を取ることができる。この場合もやはり、伝統的な賦形剤と他の添加剤が、1又は複数の追加の抗微生物剤(特に、抗菌剤)として含まれうる。
【0107】
特に、前記製剤が細菌性感染症の伝染を制御するのに使用するためのものであるときに、それは、皮膚洗浄剤(例えば、手の洗浄剤)の形態、スプレーなどの表面消毒薬の形態、又は例えば、義歯若しくは(歯科を含めた)外科施設を消毒するのに使用するための清浄液の形態であってもよい。それは、布、拭き取り布、ブラシ、若しくは他の清浄用具、又は調製品表面若しくは道具若しくは包装材料などの基材の中又はその上に担持され得る;こうした場合、アイテムに前記製剤を含浸させるか、又は前記製剤でコーティングされてもよい。
【0108】
一般的に言えば、本発明による製剤は、その製剤中に存在している別の活性物質の活性を上げるか、又はこうした活性の副作用を低減するか、又はその製剤の投与における患者の服薬遵守を改善する1又は複数の作用物質を含んでもよい。それは、微生物バイオフィルム内への、活性物質、特に、DAS又は誘導体、及び/又はカルバニリド抗菌剤の浸透を容易にする1以上の作用物質を含んでもよい。それは、投与後に活性物質の放出の部位、及び/又は速度を制御する1又は複数の作用物質を含んでもよい。
【0109】
ベンジルアルコールを含んでいないことは、本発明による製剤にとって好ましいことであり得る。ベンジルアルコールは、局所医薬製剤の保存料として一般的に使用されるが、場合によっては、本発明による製剤の安定性に有害であることが分かった。
【0110】
場合により、ラウレス・スルホスクシナート、特に、ラウレススルホコハク酸二ナトリウムを含まないことが、本発明による製剤にとって好ましいことであり得る。
場合により、第一級エトキシ化アルコール、例えば、US-5,977,049中に開示されているタイプのものを含まないことが、本発明による製剤にとって好ましいことであり得る。
【0111】
場合により、水溶性ポリエチレングリコール、特に、少なくとも約200の分子量のもの、例えば、US-5,922,768で開示されているものを含まないことが本発明による製剤にとって好ましいことであり得る。
場合により、アンホテリック界面活性剤、例えば、US-5,883,059で開示されているタイプのものを含まないことが、本発明による製剤にとって好ましいことがあり得る。
【0112】
本発明による製剤は、例えば、(屋内又は屋外にかかわらず)床若しくは壁、作業台、又は施設を処理するために、義歯を消毒するために、あるいは、細菌レベルを下げるように髪又は爪を清浄するために、生きている組織を除いた領域又は表面上への使用に好適であり得、そして、それに適合していることがより好ましい。それは、(例えば、保存料としての使用のための)生きていない組織、又は(例えば、病原体の汚染除去のための)衣服への適用に好適であり得る。これらの場合において、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤と共に含まれる賦形剤、ビヒクル、及び/又は他の添加剤は、局所用スキンケア製剤又はオーラル・ヘルスケア製剤に含まれているものと異なるかもしれないが、この場合もやはり、こうした状況における使用で知られている伝統的なものであり得る。特に、前記製剤、2つの活性物質のどちらか又は両方は、使用前に(例えば、先に記載したように)好適な濃度に希釈できる濃縮物の形態で提供されてもよい。
【0113】
本発明による製剤は、化粧品、皮膚又はヘアケア調製品(例えば、肌の清浄剤、トナー若しくは保湿剤、又はシャンプー、コンディショナ、スタイリング・ムース、ゲル若しくはヘア・スプレー)、防臭剤又は制汗剤、歯科又は他のオーラル・ヘルスケア調製品(例えば、練り歯磨粉、口腔内洗浄剤、歯磨剤、デンタル・ゲル、又はデンタルフロス、特に、練り歯磨粉又は口腔内洗浄剤)、清浄用調製品(例えば、患者を治療する前に外科医に使用されるに手の清浄剤)、(獣医用のものを含めた)医薬調製品、美容用調製品、トイレタリー製品(例えば、フロ若しくはシャワーの添加剤、又は石鹸)、ランドリー若しくは他の織物処理製品、又は農業若しくは園芸用製品などの別の製品内に組み込まれ、したがって、その形態で適用され得る。
よって、本発明は、第2の側面により、第1の側面による抗菌製剤を組み込んだ製品を提供する。
【0114】
本発明による製剤は、それが、例えば、本明細書中に言及された病原菌の1又は複数に対する、抗菌活性を有する又は抗菌活性を高めるという適応症を伴って販売されてもよい。こうした製剤のマーケティングには、例えば、(a)関連のある適応症を含んでなるコンテナ又はパッケージ内に前記製剤を入れること;(b)上記適応症を含んでなる添付文書と共に前記製剤を包装すること;(c)前記製剤を説明する広報に適応症を提供すること;及び(d)例えば、ラジオ、テレビ、又はインターネットで放送されるコマーシャルに適応症を提供すること、から選択される活動を含んでもよい。かかる適応症において、前記製剤の抗菌活性は、少なくとも一部がDAS又は誘導体及びカルバニリド抗菌剤の組み合わせ物の存在に起因し得る。
【0115】
本発明は、例えば、本明細書中に言及された病原菌の1又は複数に対して、その調製中又は調製後にその製剤の抗菌活性を評価するステップを伴ってもよい。それは、例えば、DAS又は誘導体、及び/又はカルバニリド抗菌剤の取り込みの前後に、いずれか又は、好ましくは、両方が前記製剤の抗菌活性に貢献することを確認するために、製剤の抗菌活性を評価するステップを伴ってもよい。
【0116】
本発明の製剤は、その使用、例えば、皮膚又は別の表面への適用の時点、又はその直前に、現場において調製されてもよい。よって第3の側面によると、本発明は、第1の側面による製剤などの抗菌製剤を調製するためのキットを提供し、そのキットは、意図された使用の時点又はその前に前記製剤を作るために2つの化合物を組み合わせること、及び/又は皮膚などの表面に上記の2つの化合物を併用投与することに関する取扱説明書と一緒に、DAS又はその誘導体の供給源、並びにカルバニリド抗菌剤の供給源を含んでなる。
前記の2つの化合物は、それぞれ、好適なそれぞれビヒクル中に存在していてもよい。
【0117】
1つの態様によると、本発明の製剤又はキットは、各々が別個の送達ビヒクル中にカプセル封入(例えば、マイクロカプセル封入)されたDAS又はその誘導体、及びカルバニリド抗菌剤の両方を含むことができる;これは、例えば、それらの放出を可能にし、その結果、意図された投与部位だけでの互いのそれらの接触を可能にする。
【0118】
本発明の第4の側面は、抗菌製剤の調製方法であって、好ましくは、医薬的に許容し得るビヒクルと一緒に、DAS又はその誘導体とカルバニリド抗菌剤を一緒に混合するステップを伴う前記方法を提供する。
【0119】
本発明の第5の側面によると、細菌活動によって発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、発生するか若しくは伝染するかのいずれかである)ヒト又は動物の身体に影響を及ぼす病態の治療に使用するためのDAS又はその医薬的に許容し得る誘導体、及びカルバニリド抗菌剤を含む製剤(好ましくは、本発明の第1の側面による製剤)が提供される。前記病態は、例えば、皮膚、皮膚構造、口、眼、耳、鼻、軟組織、又は腟の病態であり得る。
【0120】
本発明の第5、及びそれ以降の側面の目的のために、DAS又は誘導体の2つのアルキル基は、C1〜C12アルキルであることが好適であり、C2〜C10、例えば、C6〜C10など、特にC8であることがより好適である。
【0121】
本発明との関連において、病態の治療は、ヒト又は動物のどちらか、特に、ヒトにおける、感染性又は非感染性の病態のいずれかの治療学的及び予防的処置の両方を網羅する。それは、前記病態の完全な又は部分的な根絶、随伴症状の除去又は改善、前記病態の発症後の阻止、及び/又は前記病態の発生後のその予防若しくは危険度の低減を伴うことができる。それは、一般的に、抗細菌組み合わせ物としてのDAS又は誘導体、及びカルバニリドの使用を伴うだろう。それは、MRSAに関連するものなどのブドウ球菌感染症を含めた細菌感染に対して、体のいずれかの領域、特に、皮膚、又は鼻孔若しくはその他の上皮か粘膜表面の予防的治療を伴ってもよい。
【0122】
病態の治療は、例えば、人から人への、拡散若しくは伝染の予防又はその危険度の低減を包含する。こうした関係において、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤は、例えば、皮膚、及び/又は体のその他の適当な部分の消毒(antisepsis)、又は細菌で汚染されていると考えられるか、又は汚染の危険性が高い領域の表面の全般的な殺菌のために、関連細菌に対する消毒薬として組み合わせて使用されてもよい。よって、本発明による組み合わせ物は、特定の病原菌、例えば、(MRSA、VISA、若しくはGISAなどの耐性株を含めた)S.アウレウス(S. aureus)、E.フェーカリス(E. faecalis)、又はC.ディフィシル(C. difficile)などの院内病原菌、の大発生を処置するのに使用できる。
【0123】
本発明との関連において、病態の治療は、特に、プロピオン酸菌に対する、及び/又は、例えば、ブドウ球菌又は連鎖球菌などのグラム陽性球菌に対する、及び/又は口腔内の感染症に関連する細菌に対する、及び/又は体臭に関連する細菌に対する、前記製剤の使用を伴ってもよい。
【0124】
それは、細菌性バイオフィルム形成に対する前記製剤の使用を伴ってもよい。よって、前記製剤は、細菌性バイオフィルム形成、特に、P.ジンジバリスによって発生若しくは増悪する、又はそれがその他のやり方でかかわる(特に、それによって引き起こされる)バイオフィルム形成、によって発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、それによって発生若しくは伝染する)病態を治療するために使用できる。
【0125】
本発明のこの第5の側面のある態様において、前記製剤は、皮膚又は皮膚媒介性感染に関連する1又は複数の細菌に対して使用するためのものである。それは、グラム陽性細菌に対して、例えば、ブドウ球菌、及び/又はプロピオン酸菌、特に、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)の菌株に対して使用するためのものであってもよい。ある態様において、それは、P.アクネスや、場合によってはP.グラヌロサムなどのニキビに関連する1又は複数の細菌に対して使用するためのものである。
【0126】
本発明の第5の側面のある態様によると、前記製剤は、皮膚又は皮膚構造の病態の治療に使用するためのものである。こうした病態は、一次感染症であっても、二次感染症であってもよい。それは、例えば、局所療法の影響を受けやすい表在性皮膚感染であっても、合併症のない皮膚感染であってもよい。それは、ニキビ又はニキビに関連する感染であってもよい。それは、(MRSAを含めた)S.アウレウス又はベータ溶連菌(S.ピオゲネス(S. pyogenes))に起因する一次感染症であっても、二次感染症であってもよい。
前記製剤は、特に、(すなわち、「抗ニキビ」剤として)ニキビの治療に使用するためのものであってもよい。
【0127】
本発明に従って処理されるかもしれない皮膚及び皮膚構造の病態には、ニキビ、感染性アトピー性湿疹、表在性の感染性外傷病巣、損傷、熱傷、潰瘍、毛嚢炎、真菌症、及び他の一次及び二次の皮膚及び皮膚構造の感染症が含まれる。特に、本発明による製剤は、(例えば、ニキビ関連瘢痕を減らすために)ニキビ又はニキビ病巣に使用するためのものであってもよい。
【0128】
ニキビは、例えば、丘疹、膿疱、小結節、及び開放若しくは閉塞ニキビなどのさまざまな炎症性及び非炎症性病巣を特徴とする顔及び体幹上半部の毛嚢脂腺小胞の多因子病である。そのため、その治療は、これらの症状のいずれかの(予防又は軽減を包含する)治療を網羅するので、従って、抗ニキビ剤としての使用に言及すると解釈されてもよい。
【0129】
特に、ニキビの治療は、ニキビに関連する病巣、及び/又は瘢痕の(予防を含めた)治療を網羅する。それはまた、ニキビ又はその症状を引き起こすか、又はそうでなければ、それに関連するかもしれないプロピオン酸菌の感染の治療、及び/又はプロピオン酸菌活性の阻害も網羅する。
【0130】
一般的に、本発明は、例えば、抗生物質などの他の活性物質を用いたニキビの治療の結果として生じ得る感染よりむしろ、ニキビに直接起因する症状、及び/又はすでにニキビを患っている皮膚において生じ得る日和見病原体によって引き起こされた二次感染症の治療に使用されるだろう。
よって、大まかに言えば、本発明は、ニキビの治療に使用するための、DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤を含有する製剤を提供する。
【0131】
本発明を使用することで同様に治療できるアトピー性皮膚炎又は湿疹(アトピー性湿疹及び皮膚炎症候群AEDS)は、グラム陽性細菌に、最も一般的には、スタフィロコッカス・アウレウス(David TJ, 1989 Journal of the Royal Society of Medicine 82:420-422)に、または、ストレプトコッカス属(Brook I, 2002 Journal of Medical Microbiology 51: 808-812)のメンバーにも感染することが多い。本発明の第5の側面によると、前記製剤は、前述の活性物質の組み合わせ物が、(メチシリン耐性S.アウレウス(MRSA)、流行性メチシリン耐性S.アウレウス(EMRSA)、バンコマイシン中間耐性S.アウレウス(VISA)、及び糖ペプチド中間耐性S.アウレウス(GISA)を含めた)S.アウレウス及びストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に対して活性であることが示されたので、感染性アトピー性皮膚炎の治療に使用するためのものであってもよい。本発明による製剤は、1又は複数のこうした細菌に対して使用するためのものであってもよい。
【0132】
ヒト皮膚は、幅広いグラム陽性細菌による感染に対して感受性を持っている。これらの病態には、これだけに制限されることなく、毛嚢炎、おでき及び吹き出もの、スタフィロコッカス・アウレウスによって最もよく引き起こされた膿痂疹、並びにストレプトコッカス属のメンバーによって引き起こされる丹毒や、ブドウ球菌と連鎖球菌の両方によって引き起こされる紅色陰癬及び蜂窩織炎を含めたその他の感染症が含まれる。バチルス属、クロストリジウム属、及びエンテロコッカス属のメンバーを含めたその他のグラム陽性細菌もまた、これらの感染症にかかわることもある。本発明の第5の側面によると、本発明による製剤は、前述の活性物質の組み合わせ物が、MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めたS.アウレウスに対して、並びにストレプトコッカス・ピオゲネス、(E.フェーカリス(E. faecalis)を含めた)エンテロコッカス(Enterococcus)属のメンバー、及びバチルス(Bacillus)属やクロストリジウム(Clostridium)属のメンバーに対して活性であることが示されたので、感染性皮膚疾患、皮膚感染症、表在性感染創、及び軟組織感染症の治療に使用するためのものであってもよい。
【0133】
感染性皮膚疾患、皮膚感染症、表在性感染創、及び軟組織感染症にはまた、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方によって引き起こされる皮膚の複数菌感染症を含んでもよい。こうした場合、本発明による製剤は、追加の抗微生物剤、例えば、グラム陰性細菌に対して活性である局所又は全身的作用物質のいずれかと組み合わせて使用されてもよい。
【0134】
本発明の第5の側面のある態様において、本発明による製剤は、そうでなければ、例えば、MRSA関連感染症を引き起こすかもしれないブドウ球菌に対する処置として使用するためのものであってもよい。それは、皮膚上、又は、鼻孔、眼、又は耳の中のブドウ球菌に対する治療として使用するためのものであってもよい。前記製剤は、特に、鼻腔保菌中のブドウ球菌(特に、S.アウレウス)に対する予防的治療に使用するためのものであってもよい。
【0135】
健常人の約25〜30%は、鼻孔内にスタフィロコッカス・アウレウスを担持している。生物体はまた、他の身体部位にも担持しており、アトピー性皮膚炎を患っているヒトなどの素因があるヒトにおいて、より高い罹患率で担持している。スタフィロコッカス・アウレウスの抗生物質耐性菌株(例えば、MRSA)もまた、病院環境、及び共同体の両方で広くばら撒かれる。これらの要因は、特に外科手術を受ける患者の院内S.アウレウス感染の危険度の一因となる(Grundmann H, Aires-de-Sousa M, Boyce J, Tiemersma E, 2006 Lancet 368: 874-85; Herwaldt LA, 2003 Surgery 134(5 Suppl):S2-9)。DASsとカルバニリドの組み合わせ物は、S.アウレウスに対して活性物質になり得ることが示されたので、戦術上この生物体による鼻孔及び皮膚への定着を根絶する、及び/又は予防するために予防的に使用され得る。これは、S.アウレウスによって引き起こされる感染症を予防するために、例えば、患者及び病院職員に使用され得る。前記組み合わせ物は、それらがMRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めたS.アウレウスの抗生物質耐性菌株に対して活性であるので、この目的のために特に非常に好適である。
【0136】
本発明の第5の側面のさらなる態様によると、本発明による製剤は、例えば、脇の下又は足における、体臭の(予防を含めた)治療に使用するためのものである。よって、それは、この病態に関係した細菌、特に、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属の好気性ジフテリアに対して使用するためのものであってもよい。
【0137】
ヒトの体臭は、汗腺の無臭の分泌に対する共生皮膚細菌の作用によって形成される。例えば、コリネバクテリウム属のメンバーの作用は、無臭の前駆体から臭気のある化合物3-ヒドロキシ-3-メチルヘキソン酸及び3-ヒドロキシ-2-メチルヘキソン酸を放出することが示されている(Natsch A, Gfeller H, Gygax P et al, 2003 Journal of Biological Chemistry 278 (8): 5718-5727)。よって、本発明による製剤は、前述の化合物の組み合わせ物が、例えば、C.ムシファシエンス(C.mucifaciens)、C.ジェイケイウム(C.jeikeium)、C.ストリアツム(C.striatum)、及びC.キセロシス(C. xerosis)などのヒト起源のコリネバクテリアを含めたコリネバクテリウム属の種に対して活性があることが示されたので、体臭の予防に使用するためのものであってもよい。こうした組み合わせ物はまた、皮膚プロピオン酸菌及び同様にヒトの体臭の一因になるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌などの細菌のヒト皮膚微生物相の他のメンバーに対しても活性であることが示された。本発明の第5の側面によると、前記製剤は、そのため、1又は複数のこうした細菌に対して使用されてもよい。場合により、それは、ミクロコッカス、及び/又は近縁種、例えば、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcw luteus)に対してに使用されてもよい。
【0138】
本発明の第5の側面のある態様において、本発明による製剤は、口腔内の細菌性病態の治療に使用するためのものであってもよい。そのため、それは、口腔、例えば、齲歯、歯肉炎や歯周病などの歯周病、又は口臭に影響を及ぼす病態に関連する1又は複数の細菌に対して使用すてためのものであってもよい。それは、臭くない息を作り、及び/又は維持するために使用されてもよい。それは、口腔内潰瘍の治療に使用されてもよい。
【0139】
よって、例えば、本発明による製剤は、P.ジンジバリスの菌株に対して使用するためのものであってもよい。さらに、前述の化合物の組み合わせ物は、歯肉炎を含めた歯周病の病因に関係するプラーク及びバイオフィルムの形成に関連することが知られているグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対して活性であることがわかった。そのため、前記製剤は、とりわけ、以下のグラム陽性細菌:ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、アクチノマイセス・ナイスランディー(Actinomyces naeslundii)、及び、驚いたことに、以下のグラム陰性細菌:ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivals)及びプレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens)に対して有用であり得、上記細菌のすべてが歯周病にかかわる歯のバイオフィルム内で見られる微生物相の一因である。
前記製剤は、歯周病の治療に、及び/又は抗プラーク剤として使用するためのものであってもよい。
【0140】
本発明を使用することで治療(用語「治療」は、先に規定されるように、治療的方策と、予防的方策の両方を包含する)され得る歯周病には、例えば、歯のプラークにより誘発された歯茎疾患;慢性の(以前の、成人の)歯周病;侵攻性歯周病(以前の早期発症型、思春期前、若年性、又は急速進行性歯周病);壊死性歯周病;歯周部の潰瘍;及び術後の細菌感染(特に、P.ジンジバリスによって発生、伝染、及び/又は増悪するもの)が含まれる。本発明はまた、鵞口瘡などの他の病状のため生じるものを含めた、口腔内の損傷又は他の病巣の微生物感染(特に、P.ジンジバリスによって発生、伝染、及び/又は増悪するもの)を治療するのに使用できる。
【0141】
本発明を使用することで治療できる随伴症状には、口腔内潰瘍、歯痛、不快症状、炎症、出血、膿分泌、口臭、歯牙動揺、歯の脱落、腫脹、又は上記のいずれかによって引き起こされた炎症が含まれる。
歯表面におけるプラーク形成もまた、歯周病を発生するか、増悪するか、又は随伴して起こすので、本発明の第5の側面に従って、前記製剤は、プラーク形成を減少するか又は予防する、及び/又はプラークの微生物組成を(好適に有益になるよう)変更するために使用できる。
【0142】
歯周部の炎症性疾患が、他のより重大な、多くの場合、より全身的な病態につながる(すなわち、場合により、それに対する感受性の上昇、及び/又はその増悪を引き起こす)可能性があることがさらにわかった。例えば、歯周病、及び/又はP.ジンジバリスなどの関連病原菌によって産生された副産物は、冠動脈障害、並びに、例えば、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、及び狭心症など他の心臓血管疾患、並びにが動脈炎又は血液血栓形成、及び早期低体重出産のリスク増加に関連する病態につながった(Gotsman et al, J. Periodontol May 2007, 78(5): 849-858; Noack et al, J. Periodontol 2001, 72: 1221-1227; Seymour et al, Clinical Microbiology and Infection, 13 (Suppl 4): 3-10)。従って、本発明は、前述の病態のいずれかを治療するのに、並びに口腔内感染症及び関連歯周病を治療するのに、間接的に使用できる。
【0143】
歯周病が、例えば、糖尿病や、呼吸器疾患や、骨粗鬆症や、AIDSなどの慢性疾患に罹患しているヒトの健康への脅威を引き起こすこともまた、認められた(Kuo et al, Seymour et al、前掲)。よって、本発明は、実在の又は潜在的な歯周部感染による前述の患者の健康リスクを低減するのに使用できる。
【0144】
代わりに又は加えて、本発明の製剤は、齲歯の治療に使用するためのものであってもよい。それは、例えば、ミュータンス連鎖球菌、例えば、S.ミュータンスの菌株に対して使用するためのものであってもよい。それは、前述の細菌によって発生、増悪、又は伝染する(特に、発生又は伝染する)口腔内の病態に対して使用するためのものであってもよい。
【0145】
ストレプトコッカス・ミュータンスなどのミュータンス連鎖球菌(MS)及び関連細菌(例えば、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus))が、齲歯の起因菌として関与することは、周知である(Loesch WJ, 1986 Microbiological Reviews 50(4): 353-380; Islam B, Khan SN, Khan, 2007 Medical Science Monitor 13(11): 196-203)。これは、子供と、糖の多い食事を摂るその他のヒトに特に当てはまる。
【0146】
MS、特にS.ミュータンスは、酸性許容性があり、且つ、高度に齲蝕原性である。それらは、歯エナメル質と歯質の両方を脱灰して、そして、損害を与える短鎖カルボン酸の産生によって齲歯の形成を引き起こす。この効果は、バイオフィルムの形態でのMSと歯表面の間の密接な関係によって促進される。歯表面へのMSの付着は、糖質代謝の結果としてグルカンなどの細胞外多糖類を産生するそれらの能力によって容易になされる。ストレプトコッカス・ミュータンスの付着は、歯への最初の付着と、さらなる細菌の付着部位の提供の両方に関与する、固有接着タンパク質(多くの場合、PAc、抗原I/II、PI、及びSpa PIと呼ばれる)の産生によってさらに促進される。これらの因子は、歯表面上の多種細菌性バイオフィルムの形成の一因となる。前記バイオフィルムは、まず最初に、唾液と細菌成分を含んでなる後天的なエナメル質薄膜の沈着、その後の(アクチノマイセス・ナイスランディーを含めた)口腔の複数の細菌種の接着及び同時接着、そして、最終的に、これらの生物体の増殖によって形成される。前記バイオフィルムは、齲蝕原性MSがよく増殖する隙間環境を提供する。S.ミュータンスとS.ソブリナスによる歯表面への共定着が、増強された齲食原性に通じることは、注目に値する(Okada M, Soda Y, Hayashi F, 2005 Journal of Medical Microbiology 54:661-665)。
【0147】
本発明は、口腔内でのMSの増殖を抑制し、その結果、これらの生物体の齲蝕原性効果を低減するのに使用できる。さらに、本発明は、歯表面に接着するバイオフィルムの他の細菌成分(例えば、アクチノマイセス・ナイスランディー)を抑制し、よって、バイオフィルムの完全性と、隙間環境を齲蝕原性MS.に提供するその能力を低減するのに使用できる。
【0148】
MSが、他のより重大な、多くの場合、より全身的な病態に関連する可能性がある(すなわち、場合により、それに対する感受性を高める、及び/又は憎悪する)ことがさらにわかった。例えば、MSは、これだけに制限されることなく、急性及び亜急性心内膜炎を含めた菌血症及びその後遺症と関連がある(Verghagen DWM, Vedder AC, Speelman P, van derMeer, 2006 Journal of Antimicrobial Chemotherapy 57: 819-824)。従って、本発明は、前述の病態のいずれかを治療するために、並びに口腔内の感染症及び関連齲歯を治療するために、間接的に使用できる。
【0149】
ある態様において、本発明による製剤は、眼感染の治療に使用するためのものであってもよい。それは、例えば、コリネバクテリウム亜種(Colynebacterium spp)若しくは、特に、S.アウレウスによる結膜炎の治療、又はプロピオニバクテリウム亜種による内眼球炎の治療(特に、予防)に使用できる。
ある態様において、前記製剤は、耳の中の感染症の治療に使用するためのものであってもよい。
【0150】
眼と耳の感染症は、グラム陽性細菌によって一般的に引き起こされる(Kowalski RP, Dhaliwal DK, 2005 Expert Rev Anti Infect Ther. 3(1): 131-9; de Miguel Marti'nez I, Rarnos Macias A, Masgoret Palau E, 2007 Acta Otorrinolaringol Esp. 58(9):408-12)。それらは、多くの場合、ブドウ球菌、連鎖球菌、そして、時々、皮膚プロピオン酸菌によって引き起こされる。本発明の第5の側面によると、本発明による製剤は、前述の化合物の組み合わせ物が起因菌として一般的に同定されている以下のグラム陽性細菌:(MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めた)スタフィロコッカス・アウレウス、S.アウリクラリス(S. auricularis)を含めたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネスなどの連鎖球菌、及びプロピオニバクテリウム・アクネス及びプロピオニバクテリウム・グラヌロサムなどのプロピオン酸菌に対して活性であることが示されたので、眼又は耳の感染症治療に使用するためのものであってもよい。
【0151】
グラム陰性細菌もまた、眼又は耳の感染症を引き起こすことができる。こうした感染症に対して本発明による製剤の活性を拡張するために、それは、他の抗微生物剤、特に、グラム陰性細菌に対して活性な局所性又は全身性の作用物質を含んでなるか、又はそれを組み合わせて使用してもよい。
【0152】
ある態様において、本発明による製剤は、留置手術装置又はインプラント(例えば、カテーテル)に関連する感染症の治療に使用するためのものであってもよい。細菌感染は、こうしたデバイスの使用によって頻繁に発生する(Wenzel RP, 2007 CID 45 (Snppl 1): S85-S88)。特に、スタフィロコッカス・アウレウス、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、連鎖球菌、(例えば、人工股関節の場合)皮膚プロピオン酸菌、及び他の細菌がデバイスに接着し、そして、感染症の原病巣、及び/又はバイオフィルムを形成するときが、この場合に当たる。細菌は、初期の感染部位から剥がれ、そして、菌血症や、例えば、急性及び亜急性心内膜炎を含めたその後遺症などの他の全身症状に関連する(すなわち、場合により、それに対する感受性を高める、及び/又は憎悪する)可能性がある。よって、前記製剤は、こうした感染、及び/又は関連症状の治療に使用するためのものであってもよい。
【0153】
よって、DASs又はその誘導体とカルバニリド抗菌剤の組み合わせ物は、こうした組み合わせ物が、(MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めた)S.アウレウス、(これだけに制限されることなく、S.オーリキュラリス(S. auricularis)、S.カピチス(S. capitis)、S.コーニイ(S. cohnii)、S.エピデルミジス(S. epidermidis)、S.ハエモリチクス(S. haemolyticus)、S.ホミニス(S. hominis)、S.サプロフィチクス(S. saprophyticus)、S.シムランス(S. simulans)、S.ワルネリ(S. warneri)、及びS.キシロスス(S. xylosus)を含めた)コアグラーゼ院生ブドウ球菌、(E.フェーカリスを含めた)エンテロコッカス属のメンバー、(S.ピオゲネスを含めた)ストレプトコッカス属のメンバー、プロピオニバクテリウム・アクネスやプロピオニバクテリウム・グラヌロサムなどのプロピオン酸菌、並びに(C.ムシファシエンスを含めた)コリネバクテリウム属のメンバーに対して活性であることがわかったので、留置手術装置に関連する感染症の治療に使用できる。
【0154】
カテーテルと他の留置手術装置に関連する感染はまた、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の両方によって引き起こされた複数菌感染症でもあってもよい。こうした場合、本発明による製剤は、他の抗微生物剤、特に、グラム陰性細菌に対して活性な局所性又は全身性作用物質と組み合わせて使用できる。
【0155】
ある態様において、本発明による製剤は、損傷(特に、根深い損傷)、熱傷、又は潰瘍の感染症の治療に使用するためのものであってもよい。根深い損傷、熱傷、及び潰瘍は、多くの場合、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、又は両方のタイプの細菌を含む混合種個体群のいずれかに感染している(Hedrick TL, Smith PW, Gazoni LM et al, 2007, Current Problems in Surgery 44(10):635-75; Meara SO, Cullum,N, Majid M et al, 2000 Health Technology Assessment 4(21); Church D, Elsayed S, Reid 0,2006 Clinical Microbiology Reviews 19(2): 403-434; Anderson CA, Roukis TS, 2007 Surgical Clinics of North America 87: 1149-1177)。本発明による化合物の組み合わせ物は、こうした感染にかかわる幅広いグラム陽性細菌に対して、及び同様にこれらの感染にかかわる特定の好気性グラム陰性細菌に対して活性があることがわかった。本発明による製剤は、前述の化合物の組み合わせ物が、感染体として一般的に特定されている以下のグラム陽性細菌:(MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めた)スタフィロコッカス・アウレウス、(これだけに制限されることなく、S.オーリキュラリス、S.カピチス、S.コーニイ、S.エピデルミジス、S.ハエモリチクス、S.ホミニス、S.サプロフィチクス、S.シムランス、S.ワルネリ、及びS.キシロススを含めた)コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ストレプトコッカス属のメンバー(例えば、S.ピオゲネス)、(E.フェーカリスを含めた)エンテロコッカス属のメンバー、バチルス属のメンバー(例えば、B.セレウス(B. cereus))、クロストリジウム属のメンバー、プロピオニバクテリウム・アクネスやプロピオニバクテリウム・グラヌロサムなどのプロピオン酸菌、並びにコリネバクテリウム属のメンバー(例えば、C.ムシファシエンス)に対して活性であることが示されたので、感染した根深い損傷、熱傷、及び潰瘍の治療に使用するためのものであってもよい。
驚いたことに、本発明による製剤はまた、根深い損傷、熱傷、及び潰瘍の感染にかかわる可能性があるグラム陰性嫌気性のポルフィロモナス・ジンジバリスに対しても活性がある。
【0156】
ある態様において、本発明による製剤は、咽喉内の感染症の治療に使用するためのものである。咽喉感染症は、ストレプトコッカス・ピオゲネスなどの連鎖球菌、又は、例えば、(MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めた)スタフィロコッカス・アウレウスなどのブドウ球菌によって引き起こされる。前述の化合物の組み合わせ物がこれらの原因病原菌に対して活性であり得ることが示されたので、それらは本発明による製剤を使用して治療され得る。DAS又は誘導体、及びカルバニリド抗菌剤の組み合わせ物は、例えば、咽喉感染症の予防又はそのリスクを低減する目的のために、口腔内洗浄剤又は(ロゼンジ、芳香錠、又は他のタイプの咽喉「芳香」を含めた)他のオーラル・ヘルスケア製品内に組み込まれてもよい。
【0157】
ある態様において、本発明による製剤は、日和見感染症の治療、特に、予防に使用するためのものであってもよい。例えば、HIV感染、又は他の原疾患、栄養不足、若しくは免疫抑制剤の投与により、そうでなければ感染症に罹患しやすい免疫が低下したヒトは、日和見細菌感染症が生じやすくなっている可能性がある。こうした感染症は、幅広いグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌によって引き起こされる。本発明による組み合わせ物は、こうした感染症にかかわる幅広いグラム陽性細菌に対して、及びこれらの感染症にかかわる特定の嫌気性グラム陰性細菌に対して活性であり得ることがわかった。よって、それらは、こうした組み合わせ物が、感染体として一般的に特定されているグラム陽性細菌、例えば:(MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含めた)スタフィロコッカス・アウレウス、(S.アウリクラリス、S.カピチス、S.コーニイ、S.エピデルミジス、S.ハエモリチクス、S.ホミニス、S.サプロフィチクス、S.シムランス、S.ワルネリ、及びS.キシロススを含めた)コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、(S.ピオゲネス、S.ミュータンス、S.ソブリナス、及びS.ニューモニエ(S. pneumoniae)を含めた)ストレプトコッカス属のメンバー、(E.フェーカリスを含めた)エンテロコッカス属のメンバー、バチルス属のメンバー(例えば、B.セレウス)、クロストリジウム属のメンバー(例えば、C.ディフィシル又はC.スポロゲネス(C.sporogenes))、プロピオニバクテリウム・アクネスやプロピオニバクテリウム・グラヌロサムなどの皮膚プロピオン酸菌、(C.ムシファシエンスを含めた)コリネバクテリウム属のメンバー、及び放線菌(Actinomycetes)ファミリーのメンバー(例えば、アクチノマイセス・ナイスランディー)に対して活性であることが示されたので、日和見感染症の治療に使用するためのものであってもよい。このために、本発明による製剤は、アイテムの使用中又は使用後の細菌感染の危険度を低減するために、例えば、包帯剤、手術器具、インプラント、カテーテル、又は同様のものに適用できる。
【0158】
驚いたことに、DASs又はその誘導体と、カルバニリド抗菌剤の組み合わせ物が、同様に日和見感染症に関与する可能性があるグラム陰性嫌気性のポルフィロモナス・ジンジバリスに対して活性を持ち得ることもまたわかった。
【0159】
ある態様において、本発明による製剤は、食物媒介性細菌性病原体、例えばS.アウレウス、B.セレウス、E.フェーカリス、又はリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)によって引き起こされた感染症の伝染を予防するために使用するためのものであってもよい。そのうえ、以下で議論するように、本発明によると、前記製剤は、食物腐敗を阻害するか、予防するか、又は軽減するために細菌増殖を制御するために使用できる。前述の化合物の組み合わせ物は、食物腐敗体及び食物媒介性病原菌として一般的に特定されている以下のグラム陽性細菌:(MRSA、EMRSA、VISA、及びGISAを含む)黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス属のメンバー、(E.フェーカリスとエンテロコッカス・ファエシウム(Enterococcus faecium)を含めた)エンテロコッカス属のメンバー、バチルス属のメンバー(例えば、B.セレウス)、クロストリジウム属のメンバー(例えば、C.スポロゲネス)、ラクトバチルス属のメンバー、及びリステリア・モノサイトゲネス(単独の種)に対して活性であることが示されたか、又は実験データからの推論によって、活性であると考えられた。
【0160】
ある態様において、本発明による製剤は、皮膚又は他の組織表面の殺菌に使用するためのものであってもよい。そのうえ、以下で記載するように、それは、非生物領域及び表面の殺菌に使用できる。特に、先に言及したタイプのカウンター微生物(counter micro-organisms)に使用できる。例えば、それは、以下のグラム陽性細菌:スタフィロコッカス・アウレウス、(E.フェーカリスとE.ファエシウムを含めた)エンテロコッカス属のメンバー、バチルス属のメンバー(例えば、B.セレウス)、クロストリジウム属のメンバー(例えば、C.スポロゲネス)、及びリステリア・モノサイトゲネスを消毒するのに使用できる。
【0161】
驚いたことに、本発明による化合物の組み合わせ物はまた、グラム陰性嫌気性のポルフィロモナス・ジンジバリスに対して活性であり得ることもわかったので、そのため、この生物体を消毒するのにも使用できる。
ある態様において、本発明による製剤は、例えば、鼻孔、頭皮、膣、眼、耳又は口腔などの上皮又は粘膜表面に影響を及ぼす細菌性の病態の治療に使用するためのものであってもよい。
【0162】
ある態様において、前記製剤は、(好気性又は嫌気性を問わず)グラム陽性細菌によって、及び/又はグラム陽性細菌、P.ジンジバリス、及びプレボテラ・ニグレセンスから成る群から選択される細菌によって、又は場合により、グラム陽性細菌及びP.ジンジバリスから成る群から選択される細菌によって、発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、発生又は伝染する)病態の治療に使用するためのものである。
【0163】
場合により、前記製剤は、好気性グラム陰性細菌によって発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、発生又は伝染する)病態の治療に使用するためのものであってもよい。
ある態様において、前記製剤は、皮膚及び皮膚構造の病態、特に、ブドウ球菌、及び/又は連鎖球菌によるニキビ又は表在性皮膚感染症;体臭;及び歯周病などの口腔内の細菌性の病態から選択される病態の治療に使用するためのものである。
【0164】
ある態様において、前記製剤は、以下の:ブドウ球菌(特に、S.アウレウス、そして、場合により、S.アウリクラリス、S.カピチス、S.コーニイ、S.エピデルミジス、S.ハエモリチクス、S.ホミニス、S.サプロフィチクス、S.シムランス、S.ワルネリ、及びS.キシロススなどのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌)、ストレプトコッカス属のメンバー(特に、S.ピオゲネス)、エンテロコッカス属のメンバー(特に、E.フェーカリス)、皮膚プロピオン酸菌(特に、P.アクネス)、及びコリネバクテリウム属のメンバーから選択される1又は複数の細菌に対して使用するためものである。ある態様において、前記製剤は、ニキビ、体臭、及び口腔に影響を及ぼす病態(特に、歯周病)から選択される病態の治療に使用するためのものである。ある態様において、前記製剤は、ニキビ又は口腔に影響を及ぼす病態のどちらかの治療に使用するためのものである。
【0165】
ある場合には、本発明による製剤は、場合により、グラム陰性細菌にかかわる感染症、及び/又は真菌にかかわる感染症を含めた、多菌性又は混合感染症の治療に使用するためのものではない。ある場合には、それは、グラム陰性細菌に対して使用するためのものではない。ある場合には、それは、ブドウ球菌系細菌、特に、S.アウレウスに対して使用するためのものではない。
【0166】
本発明の第5の側面によると、DAS又は誘導体及びカルバニリド抗菌剤の製剤は、現場において(in situ)、投与時点又はその直前に調製することができる。よって、本発明のこの側面は、細菌性の病態、特に、ニキビの治療における、DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体及びカルバニリド抗菌剤のあらゆる使用にも関係し、上記の2つの化合物は同時又は連続して投与される。
【0167】
第6の側面によると、本発明は、細菌活動によって発生、伝染、及び/又は増悪する病態の治療用医薬品(通常、製剤)の製造における、DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体、及びカルバニリド抗菌剤の使用を提供する。前記病態は、本発明の第1〜第5の側面に関連して列挙されたものから選択できる。それは、皮膚又は皮膚構造の病態、特に、ニキビであってもよい。それは、体臭であってもよい。それは、口腔内の細菌性感染症、特に、歯周病であってもよい。それは、ブドウ球菌などのグラム陽性球菌によって発生、伝染、及び/又は増悪する病態であってもよい。DAS又は誘導体及びカルバニリドは、医薬品の製造において、抗菌性の組み合わせ物として通常使用されるだろう。
【0168】
本発明は、第7の側面により、抗菌製剤の製造において、複合抗菌剤としての又は複合抗ニキビ剤としての、DAS又はその誘導体及びカルバニリド抗菌剤の併用をさらに提供する。
【0169】
第8の側面は、細菌、特に、プロピオニバクテリウムの増殖を制御する方法であって、上記細菌が感染した、又は感染したと疑われる、又は感染する可能性がある領域又は表面に、DAS又はその誘導体及びカルバニリド抗菌剤の組み合わせ物を適用するステップを含んでなる前記方法を提供する。この場合もやはり、前記の2つの化合物は、同時又は連続して適用できる。それらは、先に記載したタイプの製剤で適用されるのが好適であり、局所的であることが好ましい。それらは、特に、関連細菌が感染している領域又は表面に適用できる。
【0170】
この文脈においては、細菌の「増殖を制御する」は、完全であるか、部分的であるかにかかわらず、その増殖を阻害又は予防すること、並びに上記細菌の培養物を完全に若しくは部分的に殺滅することを包含する。それはまた、処理された領域又は表面の中、又はその上における細菌のその後の増殖の危険性を低減することも包含する。それは、処理された領域又は表面から、別の領域又は表面、及び/又は生体への細菌の伝染の危険性を低減することが包含できる。よって、本発明の方法は、既存する細菌の発生を処理するために、又は潜在的なその後の発生を予防するために使用できる。細菌の増殖を制御することはまた、先に記載したように、細菌によるバイオフィルム形成の妨害、及び/又は抑制を包含できる。
【0171】
この場合もやはり、DAS又は誘導体及びカルバニリド抗菌剤が適用された領域又は表面は、一般的に、ヒト又は動物組織、特に、通常、生きているヒト又は動物の皮膚又は口腔内の組織表面などの表面であるだろう。この場合、本発明による組み合わせ物は、治療目的のために、又は非治療目的(例えば、純粋に化粧品)のために適用できる。よって、本発明の第8の側面の方法は、細菌の、特に、プロピオン酸菌の活動によって発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、発生又は伝染する)病態に罹患しているか、又は罹患する危険性が高いヒト又は動物の患者の治療方法であって、上記患者に治療的(その用語は予防的を含む)に有効な量の、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体、及び(b)カルバニリド抗菌剤を含む抗菌製剤を投与するステップを伴う前記方法を網羅する。この場合もやはり、前記細菌性の病態は、本発明の第1〜第7の側面に関して先に言及されたもののいずれかであり得る。前記製剤は、抗菌薬とりて有効な量で投与することが好適である。
【0172】
本発明の第8の側面の方法は、第1の側面による製剤を適用するステップを伴うことが好ましい。
本発明の第9の側面は、その製剤の抗菌、及び/又は抗ニキビ活性を増強する目的、及び/又は抗菌又は抗ニキビ活性の必要以上の損失なしにその製剤中のカルバニリドの量を低減する目的で、カルバニリド抗菌剤と組み合わせた、抗菌又は抗ニキビ製剤におけるDAS又はその誘導体の使用を提供する。
【0173】
抗菌又は抗ニキビ活性の増大は、DAS若しくは誘導体と組み合わせられたときに使用されるのと同じ濃度における、単独のカルバニリド抗菌剤のものと比較できる。この場合もやはり、2つが組み合わせられたときに使用されるのと同じそれぞれの濃度において、個別のDAS又は誘導体と、カルバニリドの活性の合計と比較された場合に、増大があることが理想的である。
【0174】
製剤中のカルバニリドの量の減少は、別の方法で、所望の活性レベルを達成するために、特に、その意図された使用の状況において、許容される有効性を有するように製剤中で使用される量と比較した場合に、存在し得る。前記減少は、別の方法で、その製剤の使用中に観察される軽減された副作用、例えば、カルバニリドの局所刺激、及び/又は望ましくない体内吸収、によって明らかにできる。そのため、本発明によると、DAS又は誘導体は、抗菌又は抗ニキビ活性の必要以上の損失なしに、カルバニリド抗菌剤を含む製剤の望ましくない特性を軽減する二重目的のために使用できる。
【0175】
前記のDAS又は誘導体は、DAS又は誘導体添加前の製剤によって示されたレベルと比較して、抗菌又は抗ニキビ活性の少しの低下なしに使用されることが好ましい。それは、抗菌又は抗ニキビ活性の増大を与えるように使用されることがより好ましい。しかしながら、それは、別の方法でそれが示したレベルに比べて低くとも、その意図された使用の状況においてまだ許容されるレベルに、得られた製剤の抗菌又は抗ニキビ活性を維持すると同時に、存在するカルバニリドの量、及び/又は関連副作用を低減するために使用できる。
【0176】
本発明の第10の側面は、その製剤の抗菌、及び/又は抗ニキビ活性を増強する目的、及び/又は抗菌又は抗ニキビ活性の必要以上の損失なしにその製剤中のDAS又は誘導体の量を低減する目的で、DAS又はその誘導体と組み合わせた、抗菌又は抗ニキビ製剤におけるカルバニリド抗菌剤の使用を提供する。
【0177】
抗菌又は抗ニキビ活性の増大は、カルバニリドと組み合わせられたときに使用されるのと同じ濃度における、単独のDAS又は誘導体のものと比較できる。この場合もやはり、2つが組み合わせられたときに使用されるのと同じそれぞれの濃度において、個別のDAS又は誘導体と、カルバニリドの活性の合計と比較された場合に、増大があることが理想的である。
【0178】
製剤中のDAS又は誘導体の量の減少は、別の方法で、所望の活性レベルを達成するために、特に、その意図された使用の状況において、許容される有効性を有するように製剤中で使用される量と比較した場合に、存在し得る。前記減少は、別の方法で、その製剤の使用中に観察される軽減された副作用、例えば、DAS又は誘導体の局所刺激、及び/又は望ましくない体内吸収、によって明らかにできる。そのため、本発明によると、カルバニリド抗菌剤は、抗菌又は抗ニキビ活性の必要以上の損失なしに、DAS又はその誘導体を含む製剤の望ましくない特性を軽減する二重目的のために使用できる。
【0179】
前記カルバニリドは、カルバニリド添加前の製剤によって示されたレベルと比較して、抗菌又は抗ニキビ活性の少しの低下なしに使用されることが好ましい。それは、抗菌又は抗ニキビ活性の増大を与えるように使用されることがより好ましい。しかしながら、それは、別の方法でそれが示したレベルに比べて低くとも、その意図された使用の状況においてまだ許容されるレベルに、得られた製剤の抗菌又は抗ニキビ活性を維持すると同時に、存在するDAS又は誘導体の量、及び/又は関連副作用を低減するために使用できる。
【0180】
本発明のさらなる側面
本発明の第11の側面によると、ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体を含む抗菌又は抗ニキビ製剤を提供し、ここで、上記のDAS又は誘導体の濃度は、3.5% w/w以上である。前記製剤は、局所施用に好適である、及び/又は適合していることが好ましい。
【0181】
前記のDAS又は誘導体は、本発明の第1〜第10の側面に関連して先に記載されたタイプのものであってもよい。その2つのアルキル基は、、C1〜C12アルキルであることが好適であり、C2〜C10、例えば、C6〜C10などであり、そして、特に、C8であることがより好適である。よって、前記DASは、先に記載したとおり、ジオクチル・スルホスクシナート(DOS)であることが好適である。それは、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩などの塩、より特に、ナトリウム塩の形態で使用できる。
【0182】
前記製剤中のDAS又は誘導体の濃度は、3.5若しくは4〜10% w/w、又は3.5若しくは4〜7% w/w、例えば、5〜7% w/w、であることが好適である。我々が知っている限り、これまで、これらの化合物は、こうした高い濃度にて、特に、局所施用のために、処方されたことがない。
【0183】
先に議論したとおり、ジアルキル・スルホスクシナートは、陰イオン界面活性剤として、そして、湿潤剤、可溶化剤、分散剤、及び乳化剤として知られている。特に、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム(DOS)は、抗ニキビ製剤を含めた、他の作用物質を含む製剤における安定化剤、及び/又は界面活性剤としての使用について知られている。例えば、US-4,497,794に、有機過酸化物とエリスロマイシンの相乗混合物と共に、安定化剤及び界面活性剤として局所抗ニキビ組成物におけるDOSの使用が記載されている。前記組成物中のDOS濃度は、約0.1〜6% w/wであると言われているが、文書の総合的な教示は、より低い濃度に明確な優先を示している:その実施例のすべてが1% w/w以下を使用している。GB-2 054 375は、約0.1〜3% w/w、好ましくは0.1〜1% w/wの濃度にて、過酸化物を含む水性アルコール抗ニキビ・ゲルにおける安定化剤及び界面活性剤としてのDOSの使用を開示している。US-2003/0044432はまた、過酸化ベンゾイルなどの酸化剤と、エリスロマイシンなどの抗生物質を含む抗ニキビ製剤を記載している。この製剤は、0.05〜1% w/wの濃度にて、界面活性剤としてDOSを含み得る;上記界面活性剤は、加工助剤と安定化剤として機能すると言われている。
【0184】
WO-86/07258では、ジアルキル・スルホスクシナート、特に、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムはまた、ヒト及び動物の細菌性感染症の治療における使用についても提案されている。前記文書は、ニキビの治療用の皮膚清浄剤やローションとして使用するための局所製剤を記載している。しかしながら、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムは、実施例において0.2% w/wの、比較的低い濃度でしか使用されていない。潜在的な望ましくない副作用が、高濃度を使用する動機づけを妨げるものとして挙げられている。
【0185】
そのうえ、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムはまた、水可溶性に乏しく、水性製剤においてその濃度を制限することもある。界面活性剤として、その物質は、1% w/w以下の濃度にて一般的に使用される。皮膚製剤において、2又は3% w/wの濃度にて使用される場合には、それは、PDAによって不活性成分と見なされる。そのため、特に、ニキビ及び関連皮膚病態の治療のために‐これまで可能であったよりも高い濃度の活性成分を含み、その高い濃度においてでさえも適当な安定性を有し、なおかつ、使用地点において有効な量の活性物質を放出できるより最適化された製剤によりジアルキル・スルホスクシナートを投与できることが望ましいだろう。本発明の第11の側面は、この要求に対処しようとするものである。
【0186】
本発明の第12の側面は、以下の:
(i)ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体;
(ii)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(iii)有機溶剤、特に、アルコール;
(iv)増粘剤;及び
(v)水、
を含む抗菌又は抗ニキビ製剤を提供する。
【0187】
驚いたことに、この特定の構成要素の組み合わせ物が、実現可能とこれまで考えられていたよりも高い濃度のDAS活性物質であっても安定な製剤をもたらし、その製剤が、特に、皮膚への局所適用に好適であることがわかった。前記製剤は、特に、ニキビなどの皮膚及び皮膚構造病態の治療における使用に好適であり得る。それは、ブドウ球菌感染症の治療における使用に好適であり得る。しかしながら、本発明の第1〜第10の側面に関して先に記載した(医薬的なものと非医薬的なものの両方の)目的のいずれにも使用できる。
【0188】
本発明の第11又は第12の側面のいずれかによる製剤の好ましい特徴は、本発明の第1の側面による製剤に関して先に記載されているとおりのものであり得る。これは、特に、構成要素(i)〜(v)の性質や濃度、(その粘性を含めた)物理的形態、局所施用への適合性、及びそれが含むいずれかの追加材料などの特徴に当てはまる。それはまた、DAS又は誘導体の性質と特性にも当てはまる。
【0189】
前記製剤は、特に、生活組織への、特に、皮膚への、鼻孔若しくは耳の中の組織表面への、及び/又は口腔内の組織表面への、局所投与のために好適である、及び/又はそれに適合している、及び/又はそれを意図するものであり得る。
【0190】
本発明の第12の側面による製剤において、、DAS又は誘導体は、1% w/wを超える濃度にて存在していることが好ましく、1.5、又は2、又は3、又は3.5、又は4% w/w以上であることがより好ましい。それは、最大1.5% w/w、又は最大10% w/wの濃度にて存在し得る。その濃度は、例えば、2若しくは3.5〜8% w/w、3若しくは3.5〜7% w/w、又は4〜6% w/w、例えば、約5% w/wなどであってもよい。
【0191】
好ましい態様によると、そのため、本発明は、以下の:
(i)2〜8% w/wのジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体;
(ii)10〜30% w/wのポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(iii)10〜30% w/wの有機溶剤、特に、アルコール;
(iv)0.5〜5% w/wの増粘剤;及び
(v)秤量水、
を含む抗菌又は抗ニキビ製剤を提供する。
【0192】
本発明の12第の側面によって提供されるDAS含有製剤のタイプは、それらの意図される使用の状況において、決して標準的な賦形剤の分かりやすい組み合わせ物ではない。例えば、多くの一般的に入手可能な可溶化剤のうち、少数のものだけが、特に、本発明で好まれる比較的に高いDAS濃度にて、DASsを安定した局所ゲルに処方するのに首尾よく使用され得ることがわかった。例えば、Tween(商標)シリーズのものなどのより伝統的なポロキサマ可溶化剤が、本発明の製剤における使用に好適でないことがわかった。局所ゲル製剤との関連において、そして、本発明による製剤で好まれることがわかった比較的に高い濃度において、局所製剤よりむしろ水性非経口製剤でより伝統的に使用されるSolutol(登録商標)HS15などの可溶化剤の使用もまた、全く直感的ではない。
【0193】
特に驚くべきことは、DASの不在下、前記製剤の残りの構成要素が、特別に安定した混合物を形成するとは限らないらしいという事実である。そのため、従来技術からその効果を予測できなかった本発明による構成要素の組み合わせ物の使用に起因したこれらは、製剤全体の安定性に関して、利益であると思われる。
【0194】
本発明の第11又は第12の側面のいずれかによる製剤における唯一の活性物質、少なくとも唯一の抗菌活性物質、及び/又は唯一の抗ニキビ活性物質であることが、DAS又は誘導体にとって好ましい。
【0195】
ベンジルアルコールを含んでいないことが、前記製剤にとって好ましいことであり得る。ベンジルアルコールは、局所医薬製剤において保存料として一般的に使用されるが、しかし、場合によっては、本発明によるDAS製剤の安定性に有害であることがわかった。
場合により、過酸化物、特に、有機過酸化物、より特に、過酸化ベンゾイルなどの過酸化ジアシルを含まないことが、前記製剤にとって好ましいことであり得る。
【0196】
場合により、抗生物質、特に、US-5,767,098で開示されているリンコマイシン・ファミリー(最も特に、クリンダマイシン)、及び/又はUS-4,497,794で開示されているエリスロマイシン又はその誘導体から成る抗生物質を含まないことが、前記製剤にとって好ましいことであり得る。
場合により、DAS又は誘導体は、レチノイドの不存在下で使用されてもよい。
【0197】
本発明の第11及び第12の側面によると、前記のDAS又は誘導体は、(すなわち、抗菌剤として活性である、及び/又は皮膚若しくは皮膚構造病態、特に、ニキビ(ニキビの症状、及び/又は原因に対することを含む)に対して活性である、及び/又ニキビに関連する1又は複数の微生物に対して活性である)活性物質として使用される。それは、活性成分などの別の物質の安定化剤として、又は表面活性剤として、又は湿潤剤、可溶化剤、分散剤、若しくは乳化剤として、又は加工助剤として純粋に、又は主にであっても使用されないことが好適である。
【0198】
特に、前記のDAS又は誘導体は、ニキビ、及び/又はニキビ病巣の治療に使用するためのものであり得る。それは、口腔内に影響を及ぼす細菌性の病態、特に、歯周病又は齲歯の治療に使用するためのものであり得る。それは、ブドウ球菌感染症の治療に使用するためのものであり得る。それは、体臭の処置に使用するためのものであり得る。
本発明の第13の側面は、第11又は第12の側面による製剤を含有する製品を提供する。
【0199】
第14の側面によると、本発明は、ヒト又は動物の身体に影響を及ぼす、細菌活動によって発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、発生又は伝染する)ところの病態の治療に使用するための、第11又は第12の側面による製剤を提供する。前記病態は、本発明の第1〜第13の側面に関連して先に記載したタイプの病態であってもよい。特に、それは、皮膚又は皮膚構造病態、及び/又はプロピオン酸菌の活動によって発生、増悪、又は伝染する病態であり得る。それは、ニキビであり得、その場合、前記製剤は、抗ニキビ剤として使用するためのものであってもよい。それは、ブドウ球菌感染症であり得る。それは、口腔に影響を及ぼす病態であり得る。
【0200】
本発明の第15の側面は、細菌活動によって発生、増悪、及び/又は伝染する(特に、発生又は伝染する)病態の治療に使用するための医薬品の製造における、第11又は第12の側面による製剤の使用を提供する。この場合もやはり、前記病態は、本発明の第1〜第14の側面のいずれかに関連して先に記載されたとおりのものであり得る。
【0201】
第16の側面は、細菌活動によって発生、伝染、及び/又は増悪する(特に、発生又は伝染する)病態の治療に使用するための医薬品の製造におけるDAS又は医薬として許容され得るその誘導体の使用を提供し、ここで、上記DAS又は誘導体は、3.5% w/w以上の濃度にて医薬品中に存在する。この場合もやはり、DAS又は誘導体は、本発明の第1〜第15の側面に関連して先に記載したように処方されることが好適である。前記細菌性の病態は、第1〜第15の側面に関連して先に記載したとおりのものであり得る;それは、特に、皮膚又は皮膚構造病態、より特に、ニキビであり得る。
【0202】
本発明の第17の側面によると、細菌、特に、プロピオニバクテリウムの増殖を制御するための方法であって、上記細菌が感染した、又は感染が疑われる、又は感染するようになる可能性がある領域又は表面に、本発明の第11又は第12の側面による製剤を適用するステップを含んでなる前記方法を提供する。
【0203】
第18の側面は、細菌、特に、プロピオン酸菌の活動によって発生、伝染、及び/又増悪する(特に、発生又は伝染する)病態に罹患している又は罹患する危険性があるヒト又は動物の患者の治療方法であって、上記患者に治療的(その用語は予防的を含む)に有効な量の本発明の第11又は第12の側面による製剤を投与するステップを伴う前記方法を提供する。この場合もやはり、前記細菌性の病態は、本発明の第1〜第17の側面に関連して先に言及したもののいずれかであり得る。前記製剤は、抗菌として有効な量で投与されることが好適である。
【0204】
驚いたことに、先に記載したタイプの製剤が、カルバニリド又はDAS活性物質のいずれかの不存在下でさえ、それ自体で抗ニキビ剤として活性であり得ることもわかった。
【0205】
よって、本発明の第19の側面は、DASsとその誘導体、及びTCCの両方の不存在下、以下の:
(i)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(ii)有機溶剤、特に、アルコール;
(iii)増粘剤;及び
(iv)水、
を含む抗ニキビ製剤を提供する。
【0206】
この製剤は、1又は複数の抗微生物剤、及び/又は抗ニキビ剤、特に、抗菌剤を含んでもよい。しかしながら、場合により、他の活性物質、特に、抗微生物剤(特に、抗菌剤)、及び抗ニキビ剤を含まなくてもよい。場合により、それは、カルバニリド抗菌剤を含まなくてもよい。
この製剤の構成要素の性質と濃度、並びにその物理的形態、及び/又は局所適用への適合性は、本発明の第1〜第18の側面に関連して先に記載したとおりのものであり得る。
【0207】
本発明の第20の側面は、抗ニキビ剤としての、第19の側面による製剤の使用を提供する。前記製剤は、特に、非炎症性ニキビ病巣の治療に使用するためのものであり得る。それは、局所適用に好適であることが好ましい。ある態様において、前記製剤は、抗微生物剤、特に、抗菌剤として使用するためのものではない。しかしながら、ある態様において、それは、抗微生物剤、特に、抗菌剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0208】
本発明の第21の側面は、ニキビの治療に使用するための医薬品(通常、製剤)の調製における、第19の側面による製剤の使用を提供する。この場合もやはり、前記医薬品は、特に、非炎症性ニキビ病巣の治療に使用するためのものであり得、そして、局所適用に好適である、及び/又は適合している、及び/又はそれを意図していることが好ましい。
【0209】
本発明の第22の側面は、第19の側面による製剤を組み込んだ製品、例えば化粧品又はトイレタリー製品を提供する。
第23の側面は、ニキビ、特に、非炎症性ニキビ病巣、に罹患している、又は罹患する危険性がある患者の治療方法であって、上記患者に治療的(その用語は予防的を含む)に有効な量の、本発明の第19の側面による抗ニキビ製剤を投与するステップを伴う前記方法を提供する。前記製剤は、局所的に投与されることが好適である。
【0210】
この明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、単語「含んでなる(comprise)」及び「含む(contain)」、並びにその単語の変化形、例えば、「comprising」及び「comprises」は、「それだけに制限することなく含むこと」を意味しているので、他の部分(moieties)、添加剤、成分、整数、又はステップを排除しない。
【0211】
この明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数形を網羅する。特に、不定冠詞が使用されている場合には、本明細書では、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数であること、並びに単独であることを想定すると理解されるべきである。
【0212】
本発明のそれぞれの側面の好ましい特徴は、他の側面のいずれかに関連して記載したとおりのものであり得る。
本発明の他の特徴は、以下の実施例から明らかになるだろう。一般的に言えば、本発明は、(添付の特許請求の範囲及び図面を含めた)本明細書中に開示された特徴のうち、あらゆる新規の特徴、或いはあらゆる新規の特徴の組合せにも及ぶものとする。よって、本発明に関する特定の側面、態様、又は実施例に関連して記載した特徴、整数、特徴、化合物、化学部分、又は基は、それによる矛盾がない限り、明細書中に記載した他の側面、態様、又は実施例のいずれかに適用できることは理解される。
【0213】
そのうえ、別段の記載がない限り、本明細書中に開示したいずれの特徴も、同一又は類似の目的を果たす代替の特徴によって置き換えることができる。
本発明は、以下の制限されることのない実施例を参照してここでさらに説明されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0214】
【実施例】
【0215】
詳細な説明
本発明による製剤の抗菌活性を測定するために実験的試験を実施した。
試験微生物
使用した試験微生物の1つは、プロピオニバクテリウム・アクネスNCTC 737である。これは、プロピオン酸菌株であり、且つ、その属の基準株であもある;抗生物質に対して十分な感受性を有する。
【0216】
プロピオン酸菌は、ニキビに関与していることから、臨床的に重要である。ニキビは大変よく見られる、複雑、且つ、多因子性の皮膚疾患であり、P.アクネスや他のプロピオン酸菌亜種(例えばP.グラヌロサム)が重要な役割を果たしている。これらはまた、易感染性宿主における日和見病原体でもある。よって、これらの微生物に対して観察される活性は、ニキビに対する活性についての良い予測因子であると思われる。
【0217】
以下の実施例3及び12に記載したとおり、他のプロピオン酸菌株についても試験した。それらには、特定の抗生物質耐性プロピオン酸菌、例えば、それぞれ、マクロライド‐リンコサミド‐ストレプトグラミン‐ケトライド(MLSK)に対して、並びにマクロライド‐リンコサミド‐ストレプトグラミン(MLS)及びテトラサイクリンに対して耐性を示す2種のP.アクネス菌株PRP-010、並びにPRP-039が含まれる‐言い換えれば、PRP-010は、エリスロマイシン及びクリンダマイシンに対して耐性を示し、そして、PRP-039は、エリスロマイシン、クリンダマイシン、及びテトラサイクリンに対して耐性を示す。
【0218】
加えて、ニキビに関与する別の細菌である、P.グラヌロサムの特定の菌株もまた、実施例3及び12で試験した。
プロピオン酸菌を、pH6.0のWilkins-Chalgren Anaerobe Medium(寒天及びブロス)上で培養し、そして、維持した;すべての培養物を、37℃にて72時間、嫌気的にインキュベートした。
【0219】
他の微生物試験種を、口腔に影響を及ぼす病態の治療のための本発明による製剤の適合性を実証するのに使用した。最初の種は、ポルフィロモナス・ジンジバリスであり、それは、ポルフィロモナス属に属する黒色素性グラム陰性嫌気性細菌である。P.ジンジバリスは、通常、歯周部の病巣、感染症、及び成人歯周病に関連する口腔病原菌である。歯肉炎(出血、そして歯の基部の露出を引き起こす歯肉の炎症)は、P.ジンジバリスが歯根付近の領域に感染し、そして、齲食と感染症が引き起こされることよる歯周病の前兆である。
【0220】
この微生物に対して観察される活性は、歯周部の病巣及び感染症、並びに歯周病に関与する微生物に対する抗微生物活性の合理的な定性的予測因子になると思われる。使用する主要な試験微生物は、Por. ジンジバリスNCTC 11834及びPor.ジンジバリス381である(後者は、H Kuramitsu教授State University of Buffalo, Buffalo, NY, USAから入手した)。
【0221】
P.ジンジバリス菌株を、pH7.0のWilkins-Chalgren Anaerobe Medium(寒天及びブロス)上で培養し、そして、維持した;すべての培養物を、37℃にて5〜7日間、嫌気的にインキュベートした。
【0222】
ストレプトコッカス・ミュータンスも試験した‐これは、グラム陽性であり、ヒト口腔に主に関係する微好気性菌である。臨床的には、S.ミュータンスは、齲歯及び感染性心内膜炎において重要な役割を果たしている。その細菌は、正常な代謝の副産物として乳酸を産生し、そして、また、細胞外デキストラン・ベース多糖を作り出すためにショ糖を利用する酵素(デキストランスクラーゼ)も産生する。この多糖は、細菌がプラークを形成するために歯の表面上で互いに付着するのを可能にする。それは、齲食をもたらすこともある、プラークと乳酸の組み合わせ物である。より深刻なことに、例えば、抜歯後に、前記細菌が血流中に入った場合には、それが、心臓の中の心内膜に結合し、そして、無処置のまま放置すると、命にかかわることもある。
【0223】
よって、この微生物に対して観察される活性は、齲歯及び感染性心内膜炎に関与する微生物に対する抗菌活性の合理的な定性的予測因子になると思われる。試験を、菌株Strep. ミュータンスATCC 25175で実施した。
S.ミュータンスを、1g/Lのグルコースを補った、pH7.0のWilkins-Chalgren Anaerobe Medium(寒天及びブロス)上で培養し、そして、維持した;すべての培養物を、5%のCO2を含む雰囲気中、37℃にて48時間、インキューベートした。
【0224】
いくつかのコリネバクテリウム試験種、すなわち、C.ムシファシエンスATCC 700355、C.ストリアツムNCTC 764、C. キセロシスNCTC 11861、及びC.ジェイケイウムNCTC 11915もまた、この研究に使用した。これらのグラム陽性病原菌は、体臭を引き起こす生物体(コリネバクテリウム属の好気性ジフテリア)の近縁種である。C.ムシファシエンス及びC.ストリアツムを、Mueller-Hinton Medium(寒天及びブロス)上で培養し、維持し、そして、それを37℃24時間、好気的にインキューベートした。C.キセロシス及びC.ジェイケイウムを、5%(v/v)の溶解ウマ血液を含むMueller-Hinton Medium(寒天及びブロス)上で培養し、維持し、そして、それを37℃にて72時間、好気的にインキューベートした。
以下の追加の試験生物も使用した:
【0225】
【表1】

【0226】
前記の病原菌の中で、B.セレウスは食中毒に関係する;E.フェーカリスは食物媒介性病原菌であり、熱傷及び創傷感染症に関与する;そして、Clost.ディフィシルはまた、汚染された食物によって蔓延することもある。Bact.フラギリス(Bact. fragilis)は腸管共生菌であるが、例えば、腹膜の感染症において日和見病原体となることもある。
前記試験生物に対する抗菌活性を評価するために、以下の試験を実施した。
【0227】
(a)最小阻止濃度(MIC)アッセイ
これは、液体培地中において化合物の抗微生物活性を定量的に評価するための国際的な標準法である。本方法には、各ウェルに約200μlの液体を保持し得る96ウェル・マイクロタイタープレートを使用した。これらのウェルに液体培地を入れ、関連する試験化合物を2倍希釈して、希薄側に広がる濃度分布を作成した(例えば、1000、500、250、125...μg/ml等、最小値0.49μg/ml)。培地は、先に記載したとおりである。
【0228】
これらのウェルに、新たに増殖させた微生物の懸濁液を接種し、先に記載した条件下でインキュベートした。インキュベーション後、微生物の増殖の指標となるウェルの濁化について、マイクロタイタープレートを(ライトボックスを用いて)目視で観察した。微生物の増殖を阻害するのに必要な試験化合物の最小濃度、即ち、ウェル内の液体を清澄に維持するための最小濃度を、MIC値として記録した。
【0229】
前記アッセイには、負の対照(微生物を含まない培地)及び正の対照(培地、希釈溶媒、及び微生物)の双方が含まれた。
微生物細胞の阻害は必ずしも微生物細胞の殺滅を示すわけではなく、肉眼で視認し得る増殖が阻害されたことを表わすに過ぎない場合もあるので、さらなる試験(後述するMBCアッセイ)を行なうことにより、試験生物を殺滅するのに必要な試験化合物の濃度を確認することが望ましい。
【0230】
(b)最小殺細菌濃度(MBC)アッセイ
本アッセイは、試験対象の微生物を死に至らしめる化合物の最小濃度を決定するために、MICアッセイの後に通常実施される。
MICアッセイの後、正の増殖を示した最初のマイクロタイター・ウェルと、増殖を示さなかったすべてのウェルから5μlのサンプルを採取した。続いて、これらのサンプルを上述の培養条件下、非選択的寒天培地で個別に継代培養した。培養後、細菌の増殖を目視で調べた。増殖を示さなかったインキュベート・サンプルにおける試験化合物の最小濃度をMBCとした。
【0231】
MIC対MBCの比率は、できるだけ1に近いことが理想的である。これによって、可能な限り最小の試験化合物の有効濃度を、容易に選択することができるとともに、耐性を促進するかもしれない、若しくは標的微生物集団の回復を許す、亜致死濃度を選択してしまう危険性を減らすことができる。
【0232】
(c)寒天希釈MICアッセイ
これは、量的に固形培地における化合物の抗微生物活性を評価するための国際的な標準法である。試験化合物を、40×必要とされる最高濃度(例えば、250μg/mlの終濃度のために10mg/ml)に調製し、そして、一連の2倍希釈物を、好適な溶剤中に完成させた。その後、規定量の抗微生物原液を、溶融状態の寒天培地(約55℃)に加え、十分に混合し、無菌のペトリディッシュに注ぎ、そして、冷まし/静置した。培地は、先に記載したとおりのものであった。
【0233】
(1スポットあたり105CFU(コロニー形成単位)をもたらす)1スポットあたり約1〜2μlをデリバリーするMultipoint(商標)Inoculator(AQS Manufacturing Ltd、UK)を、寒天の表面に種菌をスポット配置することによるプレートの接種に使用した。
【0234】
次に、そのプレートを、先に記載した条件下でインキュベートし、それに続いて、それらを、細菌増殖の徴候を目視で調べた。対照プレートでの増殖のそれと比較して、最低濃度にて試験プレート上の増殖の顕著な減少があるか、又は完全喪失があるとき、MIC値が確認された。
前記アッセイは、二重反復試験で行い、且つ、正の対照(培地、希釈溶媒、及び種菌)を含む。
【0235】
(d)ディスク拡散アッセイ(DDA)
これは、化合物の抗微生物活性を定性的に評価するための、国際的に認められている標準法である。
無菌の紙ディスクに、好適な溶媒中の試験化合物のサンプルを含浸させ、そして、30分間、上記溶媒を(可能であれば)留去させた。その後、試験微生物を培養しておいた寒天プレート上にそのディスクを載置した。次いで、プレートを上述の条件下で培養した後、細菌増殖の徴候を目視で調べた。試験化合物が抗微生物活性を有する場合には、ディスク周囲に円状の非増殖領域が生じるはずである。この「阻害」領域の直径を、ProtoCOL(登録商標)自動ゾーンサイザー(Synbiosis、Cambridge, UK)を用いて測定した。一般には、阻害領域の直径、及び/又は面積が大きいほど、関連する試験化合物における抗微生物活性が大きいことを示しているが、寒天ゲルを通り抜ける試験化合物の可動性などの他の因子も、結果に影響を与える可能性がある。
【0236】
(e)相乗ディスク拡散アッセイ(SDDA)
これはDDA法の変法であり、併用抗微生物活性について2種の化合物を一緒に試験するものである。
2種の試験化合物A及びBを単一の紙ディスク上に乗せ、そして、上述のDDAの手順を繰り返した。これら2種の化合物各々の前記領域の直径のうち大きい方の直径と比較して、阻害領域の直径が増加していれば、抗菌相乗効果の可能性があるものと判断した。実際の問題として、5mmを超える増加を有意とした。
【0237】
(f)補充ディスク拡散アッセイ
ヒトの皮膚に存在する主要成分の一部をまねるため、且つ、試験化合物について観察される抗微生物活性がそれらの物質によって低減されるか否かを評価するために、DDA及びSDDA試験の双方を、脂質、及び/又は塩を補充した寒天ゲルを用いて実施することができる。これらの条件下における性能は、局所適用における活性についての、より信頼性の高い指標を提供し得る。以下の実施例1、11、12、及び13で使用した補充成分は、脂質(1% v/vのTween(商標)80(実施例1)又は1% v/vのトリオレイン(実施例11、12、及び13)のいずれか)及び塩化ナトリウム(100mM)である。
【0238】
(g)バイオフィルム妨害アッセイ
ヒドロキシアパタイト(HA)ディスク上に試験生物によって形成されるバイオフィルムを妨害する(事実上、殺滅する)ための試験化合物の相対力価を量的に測定するために、このアッセイを設計した。
【0239】
直径7mm×厚さ1.8mmの無菌の緻密質セラミックHAディスク(Clarkson Chromatography)上に、試験生物を接種した(先に記載した)適切な液体培地(0.5×108cfu/ml)中に上記ディスクを置くことによって、バイオフィルムを形成した。その後、HAディスクを、(Strep.ミュータンスATCC 25175のために)5%CO2雰囲気中、37℃にて〜48時間、又は(Por.ジンジバリス381のために)嫌気条件下、〜96時間、インキュベートした。インキュベーション期間後に、、HAディスクが入っているウェルから上清を取り除き、そして、新鮮な培地でディスクを3回洗浄して、すべての浮遊細胞を確実に取り除いた。その後、必要な濃度の試験化合物を加えた、1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の入った無菌のbijouxボトルにHAディスクを移した。一定時間(通例、2、及び/又は5分)の後に、1mlの新鮮な増殖培地が入った別の無菌のbijouxにHAディスクを移した。そして、接着細胞を、2分間の激しいボルテックス処理によって集菌した。その後、サンプルを、取り出し、新鮮な増殖培地中、連続的に10倍希釈し、そして、三重反復試験で寒天プレート上に接種した。未処理のHAディスク、及び試験化合物を溶解するのに使用した溶媒だけを含むPBSに加えたHAディスクが、対照の役割を果たした。
【0240】
その後、前記プレートを、先に記載したようにインキュベートし、それに続いて、増殖について目視で調べた。コロニーを、(5〜50個のコロニーが目に見える)適切な段階希釈にて、コロニー・カウンターを用いてカウントした。次に、これらの測定値を、以下の式を使用して、コロニー形成単位(cfu)の数値に変換した:cfu/ml=コロニー数×段階希釈係数×100(10μlのサンプルしか取っていないので)。
【0241】
これらのcfu値を、次に、log10値に変換して、そして、サンプル除去の時間に対してグラフにプロットした。
それぞれの時点で、サンプルを、三重反復試験で評価した;最終的なcfu/ml値は3つの測定値の平均(mean)であった。
【0242】
(h)ウェル拡散アッセイ
これは、化合物の抗微生物活性を定性的に評価するための代替法である。
直径8mmの穴を、無菌の「コルク」穴あけ器(サイズNo.4)を使用して、試験微生物を接種した(塗った)寒天プレートの中央にくり抜いた。その後、処方された又は好適な溶剤中の、ある体積(別段の記載のない限り100μl)の(単数若しくは複数の)試験化合物を、あけた穴の中に入れた。プレートを上述の条件下で培養した後、細菌増殖の徴候を目視で調べた。試験化合物が抗微生物活性を有する場合には、あけた穴の周囲に円状の非増殖領域が生じるはずである。この「阻害」領域の直径を、ProtoCOL(登録商標)自動ゾーンサイザー(Synbiosis、Cambridge, UK)を用いて測定した。一般には、阻害領域の直径、及び/又は面積が大きいほど、関連する試験化合物における抗微生物活性が大きいことを示しているが、寒天ゲルを通り抜ける試験化合物の可動性、及び化合物が製剤から放出される程度などの他の因子も、結果に影響を与える可能性がある。
【0243】
実施例1‐P.アクネスに対する活性(MIC、MBC、及びディスク拡散アッセイ)
以下の実験はすべて、試験生物としてP.アクネスNCTC 737を使用した。
先に記載したとおり、MIC、MBC、及びDDAアッセイを、エタノール中に溶解した(a)ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム塩(DOSS)、及びDMSO中に溶解した(b)トリクロカルバン(TCC)を試験化合物として使用して実施した。両試験化合物を、Sigma Aldrich、UKから供給された。
補充DDAアッセイもまた、塩と脂質の存在下で実施した。
【0244】
そして、2種類の試験化合物の混合物を、塩と脂質の存在下を含めて、先に記載したとおり、SDDAアッセイに供した。領域直径(mm)の増大を、事前の個々のディスク拡散アッセイ中により広い阻害領域を示した化合物であるTCCに関して計測した。
【0245】
補充バージョンを含めた(S)DDA実験について、50μgのDOSS、及び200μgのTCCを、各ディスク上に添加した。すべての(S)DDA実験を、三重反復試験で実施した。
MIC及びMBCの結果を以下の表1に、そして、(S)DDAの結果を表2(非補充アッセイ)及び3(塩及び脂質を補充したアッセイ)に示した。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0246】
【表2】

【0247】
【表3】

【0248】
【表4】

【0249】
これらのデータは、DASとカルバニリドの両方が、P.アクネNCTC 737に対してそれら自体は活性であるが、補充ディスク拡散アッセイにおいて、使用した濃度では、活性ではないことを示している。
しかしながら、驚いたことに、2種類の化合物を組み合わせた場合に、そのデータは、いずれかの化合物単独で示したものを超える領域直径及び領域の有意な増大を伴う、それらの間の相乗的な抗菌相互作用を示している。この相乗効果はまた、補充条件下でも観察され、個々の試験化合物単独では提供しなかった抗菌効果を提供している。
【0250】
実施例2‐P.アクネスに対する活性(他のDASs)
実施例1の一般的方法を、2種類のさらなるDASs、ジオクチル・スルホスクシナート(DOS)のカルシウム及びカリウム塩を使用して繰り返した。両者を、Badrivishal Chemicals & Pharmaceuticals、Indiaから入手した。これらを、P. アクネス NCTC 737に対して、単独及びTCCと組み合わせて試験した。前記DOS塩をエタノール中に、そして、TCCをDMSO中に溶解した。
【0251】
(S)DDA実験について、200μgのそれぞれの試験化合物を各ディスク上に添加した。
MIC及びMBCの結果を以下の表4に、そして、(S)DDAの結果を表5に示す。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0252】
【表5】

【0253】
【表6】

【0254】
表4及び5のデータは、P.アクネス NCTC 737に対する相乗的なレベルの抗菌活性を提供するために他のDASsをカルバニリド抗菌剤と組み合わせることができることを示している。これは、抗ニキビ剤としての使用に関して、こうした組み合わせ物の可能性を示している。
【0255】
実施例3‐他のプロピオン酸菌に対する活性
試験化合物としてDOSS及びTCCを使用して、単独及び組み合わせ物の状態でのそれぞれの化合物の活性を、抗生物質耐性で知られている数種類を含めた他の多数のプロピオニバクテリウム亜種菌株に対して測定した。
(S)DDA実験において、50μgのDOSS、及び/又は200μgのTCCを各ディスク上に添加した。すべての(S)DDA実験を、三重反復試験で実施した。
結果を、以下の表6に示す;それぞれの試験菌株の耐性表現型も示す。
【0256】
【表7】

【0257】
【表8】

【0258】
DOSSとTCCを組み合わせた場合、P. アクネス NCTC 737で最初に観察された相乗的な相互作用が、P.グラヌロサム PRP-005を除いた、試験したプロピオン酸菌のすべてに対して同様に観察された。これは、処理するか、又はこうした細菌に関連する感染症、特に、ニキビを治療する、又は予防するための前記組み合わせ物の有用性を示している。前記結果は、抗生物質耐性試験菌株に関して特別な臨床的価値がありそうである。
【0259】
実施例4‐S.アウレウスに対する活性
S.アウレウスATCC 29213及びEMRSA 15に対するDOSS及びTCCの活性を、先に記載したとおり、(S)DDAsを使用することで測定した。200μgのDOSS、及び/又はTCCを、各ディスクに添加した。すべての実験を、三重反復試験で実施した。
結果を、以下の表7に示す。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0260】
【表9】

【0261】
これらのデータは、S.アウレウスの抗生物質感受性株及び抗生物質耐性株の両方に対して相乗的な活性レベルを付与するために、DASをカルバニリド抗菌剤と組み合わせることができることを示している。前記データは、MRSAなどのブドウ球菌感染症の治療、及び/又は予防における前記組み合わせ物の有望な有用性を示している。
【0262】
実施例5‐口腔衛生病態に関連する細菌に対する活性
DOSS及びTCCの活性を、Pro.ジンジバリス NCTC 11834及びStrep.ミュータンス ATCC 25175に対して(S)DDAsを使用して測定した。加えて、オクチル・スルホスクシナート(DOS)のカルシウム及びカリウム塩もまた、Por.ジンジバリスに対して試験した。(S)DDA実験において、Por.ジンジバリス実験のために、200μgのDOS塩、及び/又はTCCを各ディスクに添加した。Strep.ミュータンス実験のために、200μgのTCC及び50μgのDOSSを各ディスク上に使用した。すべての実験を三重反復試験で実施した。
Por.ジンジバリス及びStrep.ミュータンスに関する(S)DDAの結果を、以下の表8及び9にそれぞれ示す。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0263】
【表10】

【0264】
【表11】

【0265】
表8及び9は、Por.ジンジバリスNCTC 11834及びStrep.ミュータンスATCC 25175の両方に対して相乗的な活性レベルを付与するために、DASをカルバニリド抗菌剤と組み合わせることができることを示している。これは、今度は、口腔内の細菌性感染症、特に、歯周病と齲歯の治療における、及び/又はプラークの蓄積の低減における、こうした組み合わせ物の有望な有用性を示している。
【0266】
実施例6‐コリネバクテリウム亜種に対する活性
DOSS及びTCCの活性を、試験生物C.ムシファシエンスATCC 700355、C. ストリアツムNCTC 764、C.キセロシスNCTC 11861、及びC.ジェイケイウムNCTC 11915に対して(S)DDAsを使用して測定した。200μgのDOSS、及び/又はTCCを各ディスクに添加した。すべての実験を三重反復試験で実施した。
結果を、以下の表10に示す。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0267】
【表12】

【0268】
表10は、試験したすべてのコリネバクテリウム種に対して相乗的な活性レベルを付与するために、DASをカルバニリド抗菌剤と組み合わせることができることを示している。これは、今度は、特に、脇の下又は足における、体臭に関連する細菌性感染症の治療における、こうした組み合わせ物の有望な有用性を示しいる。そのため、こうした組み合わせ物は、体臭を治療(予防を含む)するために使用できる。それらは、例えば、防臭剤若しくは制汗剤、散剤、又は他のスキンケア製剤の形態で、局所的に適用されることが好適であり得る。それらは、インソールなどの靴の挿入物若しくは靴下に組み込まれるか、又はその上にコーティングされてもよい。
【0269】
実施例7‐他の微生物に対する活性
DOSS及びTCCの活性を、追加の試験微生物のパネル、すなわち、B.セレウスATCC 11778、Bact.フラギリスATCC 25285、Clost.ディフィシルATCC 7000057、及びE.フェーカリスATCC 29212に対して(S)DDAsを使用して測定した。200μgのDOSS、及び/又はTCCを各ディスクに添加した。すべての実験を三重反復試験で実施した。
結果を、以下の表11に示す。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0270】
【表13】

【0271】
表11のデータは、臨床的に重要なグラム陽性(好気性及び嫌気性)細菌、並びにグラム陰性(これらの試験では、嫌気性のみ)細菌に対して相乗的な活性レベルを付与するために、DASをカルバニリド抗菌剤と組み合わせることができることを示している。これは、今度は、これらの微生物によって引き起こされた細菌性感染症の治療における、こうした組み合わせ物の有望な有用性を示している。
【0272】
実施例8‐局所抗ニキビ製剤
実施例1〜3の結果は、ジアルキル・スルホスクシナートとTCCなどのカルバニリド抗菌剤の組み合わせ物が、特に、ニキビに関連する細菌に対して、個々の化合物単独の場合と比べて、組み合わせ物の抗微生物活性に相乗的な影響を与える、効果的な抗微生物剤であり得ることを示している。これは、こうした細菌が推定される感染源として関与していると考えられるあらゆる状況において、予防又は治療用途のための、特に皮膚への局所適用のための抗微生物製剤の調製に有用であり得る。より詳しく述べると、それは、この場合もやはり、局所施用に好適な、抗ニキビ製剤を調製する際に有用であり得る。
【0273】
DAS又はその誘導体と、カルバニリド抗菌剤の組み合わせ物が、個々の化合物と比較して、相乗的ではなく、相加的な抗微生物活性しか有さない場合でも、局所用途の製剤を調製する場合に、これは、相当に有効なことであり得る。前記化合物の一方は他方の一部を置き換えるのに利用でき、それにより、抗微生物活性を過度に損なうことなく、前記組み合わせ物のいずれかの副作用、及び/又はその他の望ましくない特性を軽減する。
【0274】
ニキビの治療に使用される局所用製剤は、好適な流体ビヒクル中、DOSなどのDAS、又はジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムなどの医薬として許容されるその塩を、TCC若しくは医薬として許容されるその塩などのカルバニリド抗菌剤と、そして、任意により、伝統的な添加剤と共に、組み合わせることによって調製できる。こうしたビヒクル及び添加剤は、例えばWilliamsの「Transdermal and Topical Drug Delivery」、Pharmaceutical Press、2003や、他の同様の参考文献、及び/又は、Rolland A et al., "Site-specific drug delivery to pilosebaceous structures using polymeric microspheres", Pharm. Res. 1993; 10: 1738-44、Mordon S et al., "Site-specific methylene blue delivery to pilosebaceous structures using highly porous nylon microspheres: an experimental evaluation", Lasers Surg. Med. 2003; 33: 119-25、及び、Alvarez-Roman R et al, "Skin penetration and distribution of polymeric nanoperticules", J. Controlled Release 2004; 99: 53-62中に挙げられている。
【0275】
前記製剤の調製及び投与は、既知の手法を用いて行なうことができる。例えば、それは、クリーム、ローション、又は、特に、ゲルの形態とすることができる。
前記の2種類の活性物質の濃度は、先に記載の範囲内であればよく、その製剤の意図する用途、意図する投与の様式、及び特定の選択した活性剤の活性に基づいて決定されるであろう。
【0276】
一例として、ニキビの局所処置に使用するためのゲル製剤を、以下の構成要素を使用することで調製することができる(示したすべての数字は、重量パーセンテージである)。
【0277】
【表14】

【0278】
これらの製剤は、標準的な化学製剤技術を使用することで調製することができる。例えば、以下の一般的な製造法が使用できる。
1. 連続的に(例えば、プロペラ(propeller))混合しながら、必要な量の増粘剤を水に加える。
2. 別の容器で、DAS又は誘導体と、好適には、脱水型の、有機溶剤とを混合し、そしてDAS又は誘導体が完全に溶解するまで、例えば、マグネチック・スターラーを使用して、撹拌する。
【0279】
3. 3つ目の容器で、可溶化剤とカルバニリドを混合する。可溶化剤が溶け、且つ、カルバニリドが完全に溶解するまで、必要ならば、連続的に撹拌しながら、加熱する。例えば、先の実施例で使用されるSolutol(登録商標)HS15は、それを液化するために50℃±5℃まで加熱できる。その後、他の構成要素を混合するために適切な温度に上記混合物を冷まし、それが液体の形態を維持しているのが好適である(例えば、Solutol(登録商標)HS15では、30〜35℃に)。
4. ステップ3の冷ましたカルバニリド溶液を、ステップ2で形成したDAS溶液と、例えば、マグネチック・スターラーを使用して、混合する。
5. ステップ4で形成した混合物を、ステップ1で形成した水/増粘剤混合物に加える。例えば、プロペラを使用して、よく混合する。
【0280】
上記の製剤のすべてで、メタノール又はイソプロパノール、特に、メタノールを、エタノールの代わりに使用でき、同様に、2種類以上のこうしたアルコールの混合物、又は実際には、いかなる他の好適な有機溶剤、若しくはその混合物を使用できる。代替の増粘(好ましくは、ゲル化)剤、好適には、別のセルロース材料又はカルボマーが、ヒドロキシエチル・セルロース又はカルボキシメチル・セルロース・ナトリウムに代えて使用できる。Solutol(登録商標)HS15又はGlycerox(商標)767に代えて、代替のポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤を使用できる。ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムに代えて、代替のDAS又は誘導体を使用できる。TCCに代えて、代替のカルバニリド抗菌剤を使用できる。
【0281】
例えば、先に記載したとおり、さらなる構成要素を、前記製剤に組み入れることができる。
前記製剤を、ニキビに罹患している皮膚に局所的に投与してもよい。
【0282】
実施例9‐安定性試験
実施例B製剤の安定性を、周囲湿度下、3つの異なった温度にて6週間、密閉ガラス・シンチレーション・バイアル内でサンプルを保存することによって評価した。保存期間の開始時及び終了時に、それぞれのサンプルの物理的な外観とpHを記録し、そして、DAS及びTCCの含有量をHPLCによって測定した。
結果を、以下の表13に示す。
【0283】
【表15】

【0284】
これらのデータは、DAS、併せて、カルバニリド補助活性物質の普通の濃度に比べてはるかに高い濃度の含有にもかかわらず、本発明によるDAS/カルバニリド・ゲル製剤の長期間の安定性を示している。
【0285】
実施例10‐局所抗ブドウ球菌製剤
実施例4からの結果は、DASsとカルバニリドの組み合わせ物が効果的な抗ブドウ球菌剤であることを示している。これは、例えば、鼻孔若しくは耳、又は実際には手の、こうした細菌が予想される感染源として関与していると思われるあらゆる状況における、予防又は治療用途のための、特に、皮膚への局所適用のための、抗菌製剤を調製するために有用であり得る。
【0286】
S.アウレウスなどのブドウ球菌に対して使用するための製剤は、DOSSなどのDAS、又は(好ましくは医薬的に許容し得る)その誘導体を、TCCなどのカルバニリド抗菌剤と組み合わせることによって、実施例8の抗ニキビ製剤について記載したものと同じような様式で調製することができる。この場合、前記構成要素を、例えば、加工物の表面又は手術器具への適用のための、スプレーとして;例えば、手洗いのための清浄ゲル又はローションとして;前鼻孔への適用のための鼻腔用スプレーとして;点耳剤又は点眼剤として;あるいは、多くの他の適切な形態で処方できる。こうした製剤は、例えば、MRSA又は同様の感染症の大発生の危険性を低減するために、特に、予防的に使用できる。
【0287】
実施例11‐P.アクネスに対する活性‐DOSS単独
以下の実験はすべて、試験生物としてP. アクネス NCTG737を使用した。
液相MICアッセイ、並びにMBC及びDDAアッセイを、先に記載したとおり、エタノール中に溶解したジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム塩(DOSS、Sigma Aldrich、UKから購入)を試験化合物として使用することで実施した。
【0288】
そして、DDAアッセイを、脂質及び塩の存在下で繰り返した。
DDA実験において、エタノール中に溶解した200μgの試験化合物を、各ディスクに添加した。これらのアッセイを、pH 6.0にて実施した。すべてのDDA実験を、単反復試験として実施した。
結果を以下の表14に示す。いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0289】
【表16】

【0290】
ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム塩が、P.アクネスNCTC 737に対して抗菌剤として高活性であることが、表14からわかった。これは、プロピオン酸菌がニキビに関係することで、その有望な抗ニキビ剤としての活性を示している。
抗菌活性は、塩及び脂質の両方の存在下でも維持され、ニキビの局所処置のための前記試験化合物の適合性を示している。
【0291】
実施例12‐他のプロピオン酸菌に対する活性
(MBCアッセイを除いて)実施例11を、公知の抗生物質耐性を有するいくつかを含む、他の多くのプロピオニバクテリウム亜種菌株に対して繰り返した。この場合もやはり、DOSSを試験化合物として使用した。MICsを寒天希釈によって測定し、そして、DDAアッセイを、先に記載したとおり、それぞれの菌株について実施した。
結果を以下の表15に示す;いずれの結果も数回の実験から収集された。その表にはまた、それぞれの試験菌株についての耐性表現型も示す。
【0292】
【表17】

【0293】
【表18】

【0294】
表15は、ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム塩がさまざまな異なったプロピオニバクテリウム亜種菌株に対して活性であることを示している。これは、こうした細菌に関連する感染症、特に、ニキビを治療又は予防するための有用性を示している。前記結果は、抗生物質耐性試験菌株に関して特別な臨床価値がありそうである。
【0295】
実施例13‐P.アクネスに対する活性‐他のDASs
実施例11を繰り返したが、試験化合物としてジオクチル・スルホスクシナートのカルシウム及びカリウム塩(共にSigma Aldrich、UKから購入)を使用した。結果を、以下の表16に示す。
【0296】
【表19】

【0297】
表16は、他のDASsもまたP.アクネスNCTC 737に対して活性であるので、そのため、抗ニキビ剤としても潜在的に有用性なものであることを示している。
【0298】
実施例14‐他の微生物に対する活性
実施例11を、試験化合物としてジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、カルシウム、及びカリウムを使用して、他の多くの試験生物に対して繰り返した。
【0299】
DDA実験において、200μgの試験化合物を各ディスクに添加した。DOS塩をエタノール中にすべて溶解した。単反復試験であったS.ミュータンスに対するカルシウム及びカリウムDOSを除いて、DDA実験を三重反復試験で実施した。
結果を、以下の表17に示す;いずれの結果も数回の実験から収集された。
【0300】
【表20】

【0301】
これらの結果は、ジアルキル・スルホスクシナートをPor.ジンジバリス、Strep.ミュータンス、及びC.ストリアツムに対して抗菌剤として使用できることを示している。これはまた、口腔内の細菌性感染症、特に、歯周病と齲歯を治療する際の、及び/又はプラークの蓄積を低減する際の、及び/又は体臭に関連する細菌性感染症を治療する際のそれらの有望な有用性を示している。
【0302】
実施例15‐Por.ジンジバリス及びStrep.ミュータンスに対する活性(バイオフィルム妨害アッセイ)
以下の実験を、試験生物としてPor.ジンジバリス381及びStrep.ミュータンスATCC 25175を使用することで実施した。
【0303】
バイオフィルム妨害アッセイを、先に記載したとおり、試験化合物としてDOSSを使用し、そして、正の対照としてクロルヘキシジン(CHX)を使用して実施した。これらの実験において、DOSSを、Por.ジンジバリスに対して0.5% w/vにて、そして、Strep. mutatisに対して1% w/vにて試験した。クロルヘキシジンを、両微生物に対して0.2% w/vの濃度にて試験した。DOSSをエタノール中に溶解し、そして、クロルヘキシジンを蒸留水中に溶解した。すべての実験が三重反復試験で実施した。
Por.ジンジバリスについての結果を表18に、そして、Strep.ミュータンスについての結果を表19に示す。
【0304】
【表21】

【0305】
【表22】

【0306】
表にまとめたデータは、両試験生物に対する、つまり、付着細菌(すなわち、バイオフィルムに存在する細菌)に対するDOSSの活性を実証している。それらはまた、その活性が、より伝統的に使用されているオーラル・ヘルスケア活性物質であるクロルヘキシジンの活性に比べて、有意に高いことも示している。
これらの結果は、生体内におけるPor.ジンジバリス又はStrep.ミュータンス感染症のいずれかの治療のための試験化合物の有望な適合性を示している。そのため、それは、関連細菌によるバイオフィルム形成を妨害させる、及び/又は抑制するために、そして/あるいは、例えば、口腔内における、バイオフィルム中に樹立された細菌コロニーを減少、殺滅、又は少なくとも、抑制するために使用されてもよい。
【0307】
実施例16‐局所抗ニキビ製剤
実施例11〜13の結果は、DASが、特に、ニキビに関連する細菌に対して有効な抗菌剤であり得ることを示している。これは、こうした細菌が推定される感染源として関与していると考えられるあらゆる状況において、予防又は治療用途のための、特に皮膚への局所適用のための抗微生物製剤の調製に有用であり得る。より詳しく述べると、それは、この場合もやはり、局所施用に好適な、抗ニキビ製剤を調製する際に有用であり得る。
ニキビの局所治療に使用するためのゲル製剤を、以下の構成要素を使用することで調製することができる(示したすべての数字は、重量パーセンテージである)。
【0308】
【表23】

【0309】
これらの製剤は、標準的な化学製剤技術を使用することで調製することができる。例えば、以下の一般的な製造法が使用できる。
1. 連続的に(例えば、プロペラ(propeller))混合しながら、必要な量の増粘剤を水に加える。
2. 別の容器で、DAS又は誘導体と、好適には、脱水型の、有機溶剤とを混合し、そしてDAS又は誘導体が完全に溶解するまで、例えば、マグネチック・スターラーを使用して、撹拌する。
【0310】
3. 3つ目の容器で、可溶化剤を、それが完全に溶けるまで、必要ならば、連続的に撹拌しながら、加熱する。例えば、先の実施例で使用されるSolutol(登録商標)HS15は、それを液化するために50℃±5℃まで加熱できる。その後、他の構成要素を混合するために適切な温度に上記可溶化剤を冷まし、それが液体の形態を維持しているのが好適である(例えば、Solutol(登録商標)HS15では、30〜35℃に)。
【0311】
4. ステップ3の冷ましたカルバニリド溶液を、ステップ2で形成したDAS溶液と、例えば、マグネチック・スターラーを使用して、混合する。
5. ステップ4で形成した混合物を、ステップ1で形成した水/増粘剤混合物に加える。例えば、プロペラを使用して、よく混合する。
【0312】
上記の製剤のすべてで、メタノール又はイソプロパノール、特に、メタノールを、エタノールの代わりに使用でき、同様に、2種類以上のこうしたアルコールの混合物、又は実際には、いかなる他の好適な有機溶剤、若しくはその混合物を使用できる。代替の増粘(好ましくは、ゲル化)剤、好適には、別のセルロース材料又はカルボマーが、ヒドロキシエチル・セルロース又はカルボキシメチル・セルロース・ナトリウムに代えて使用できる。Solutol(登録商標)HS15又はGlycerox(商標)767に代えて、代替のポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤を使用できる。ジオクチル・スルホコハク酸ナトリウムに代えて、代替のDAS又はその誘導体を使用できる。
【0313】
例えば、先に記載したとおり、さらなる構成要素を、前記製剤に組み入れることができる。前記製剤を、ニキビに罹患している皮膚に局所的に投与してもよい。
【0314】
実施例17‐安定性試験
実施例II製剤の安定性を、周囲湿度下、3つの異なった温度にて6週間、密閉ガラス・シンチレーション・バイアル内でサンプルを保存することによって評価した。保存期間の開始時及び終了時に、それぞれのサンプルの物理的な外観とpHを記録し、そして、DAS含有量をHPLCによって測定した。
結果を、以下の表21に示す。
【0315】
【表24】

【0316】
これらのデータは、ジアルキル・スルホコハク酸塩の通常濃度よりはるかに高い濃度の含有にもかかわらず、本発明によるゲル製剤の安定性を示している。
実施例18‐P.アクネスに対する処方されたDOSSの活性
【0317】
(a)5% w/wのジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム、20% w/wのSolutol(商標)HS15、20% w/wのエタノール、1% w/wのヒドロキシエチル・セルロース、及び秤量水を含む実施例16(II)の製剤;(b)上記のとおりであるがDOSSを含まない「プラシーボ」;及び(c)エタノール中にDOSSのみを溶かした(5% w/v)、の活性を、先に記載したウェル拡散アッセイを使用してP.アクネスNCTC 737に対して決定した。
結果を、以下の表22に示す。値は、三重反復試験の平均を表す。
【0318】
【表25】

【0319】
エタノール中に5% w/wに溶解されると、DOSSがそれ自体でP. アクネス NCTC 737に対して活性であることがわかった。しかしながら、同じ濃度のDOSSにもかかわらず、本発明による製剤(a)中に含まれると、顕著に増強されたレベルの活性であることを実証している。これは、ニキビの治療における、本発明による製剤の有望な有用性を示している。
【0320】
実施例19‐局所オーラル・ヘルスケア製剤
実施例5、14、及び15は、DASsが単独又はカルバニリド抗菌剤と組み合わせて、口腔衛生の問題に関連する細菌、特に、Por.ジンジバリス及びStrep.ミュータンスに対して活性であることを示している。これは、関連試験生物によって引き起こした感染症、特に、口腔内の感染症、例えば、プラーク形成や、歯肉炎や、歯周病や、齲歯などの治療におけるこうした活性物質又は組み合わせ物の有用性を示している。こうした活性物質及び組み合わせ物はまた、全般的なオーラル・ヘルスケア、例えば、臭くない息を作り、及び/又は維持するために使用されてもよい。それらはまた、Strep.ミュータンス又はPor.ジンジバリス感染症に関連するより全身的な病態、例えば、感染性心内膜炎又は心血管疾患、を治療するために使用されてもよい。
【0321】
例えば、S.ミュータンス、及び/又はPor.ジンジバリスに対する、このような使用のための局所製剤は、先に記載したとおり、好適な流体ビヒクル中、DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体、例えば、ジオクチル・スルホスクシナートを、単独で、又はTCCなどのカルバニリド抗菌剤と共に処方し、そして、任意に、伝統的な添加剤を一緒に処方することによって調製することができる。
【0322】
前記製剤を、公知の技術を使用することによって調製し、そして、投与することができる。局所適用のために、それは、例えば、ペースト、クリーム、ゲル、ロゼンジ、頬側パッチ、スプレー、口腔内洗浄剤、又は歯磨剤の形態をとってもよく、あるいは、それは、歯科用繊維又はテープの中若しくは上に担持されてもよい。それは、活性成分を特定の部位、例えば、歯肉、歯、又は歯茎下部領域、に向ける、及び/又は関連部位において(単数若しくは複数の)活性物質の放出を制御する添加剤を含むこともできる。
【0323】
実施例20−局所抗BO製剤
実施例6及び14は、DASsが、単独で及びカルバニリド抗菌剤と組み合わせて、体臭に関連する細菌に対して活性であることを示している。これは、こうした細菌が推定される感染源として関与していると考えられるあらゆる状況において、予防又は治療用途のための、特に皮膚への局所適用のための抗微生物製剤の調製に有用であり得る。より詳しく述べると、それは、この場合もやはり、局所施用に好適な、体臭に対して、特に、脇の下、及び/又は足で使用するための製剤を調製する際に有用であり得る。
【0324】
DAS又はその誘導体と、カルバニリド抗菌剤の組み合わせ物が、個々の化合物と比較して、相乗的ではなく、相加的な抗微生物活性しか有さない場合でも、局所用途の製剤を調製する場合に、これは、相当に有効なことであり得る。前記化合物の一方は他方の一部を置き換えるのに利用でき、それにより、抗微生物活性を過度に損なうことなく、前記組み合わせ物のいずれかの副作用、及び/又はその他の望ましくない特性を軽減する。
【0325】
体臭の処置に使用される局所用製剤は、先に記載のとおり、好適な流体ビヒクル中、DAS又は医薬として許容されるその誘導体、例えば、ジオクチル・スルホスクシナートを、TCCなどのカルバニリド抗菌剤と、そして、任意により、伝統的な添加剤と共に、組み合わせることによって調製できる。
前記製剤は、公知の技術を使用することによって調製し、そして、投与できる。例えば、それは、ロールオン、スプレー、又は「スティック」制汗剤若しくは消臭剤の形態、又はタルカム・パウダーなどの粉剤の形態、又はゲル、クリーム、若しくは軟膏の形態をとってもよい。それは、制汗剤、及び/又は防臭剤、及び/又は香料を含んでもよい。それは、靴下若しくは靴、又は靴の中敷き上にコートされるか、又はその中に組み込まれてもよい。
【0326】
実施例21‐さらなるDAS/カルバニリド製剤
DOSSとTCC(ともにSigma Aldrichから購入)の溶液を、さまざまな濃度の2種類の活性物質を使用することで調製した。すべての製剤が、DOSS及びTCCに加えて(i)20% w/wのSolutol(商標)HS15(BASFから購入)及び(ii)20% w/wの無水エチルアルコール(Sigma Aldrich)を含み、そして、精製水(Sigma Aldrich)で100%に調整した。
【0327】
これらの溶液を、20% w/wのSolutol(商標)HS15、20% w/wの無水エチルアルコール、及び秤量精製水を含む(すなわち、DAS又はカルバニリド活性物質が存在しない)プラシーボ溶液を使用して1:2に希釈した。次に、それらを、先に記載したとおり、ディスク拡散アッセイ(DDAs)及び相乗ディスク拡散アッセイ(SDDAs)により、P.アクネスNCTC 737に対するそれらの抗菌能について三重反復試験で試験した。10μlの各試験溶液を、各ペーパーディスク上に添加した。
結果を、以下の表23に示す。相互作用の欄の「+」は、抗菌相乗効果が観察されたことを示している。
【0328】
【表26】

【0329】
これらのデータは、この特定の製剤において、DOSSとTCCの両方がそれ自体で、P.アクネスNCTC 737に対して活性であるが、DOSSに関して2.5% w/w以下、そして、TCCに関して0.2% w/w以下の濃度にて活性ではないことを示している。
【0330】
しかしながら、驚いたことに、2種類の化合物を組み合わせた場合、そのデータは、どちらかの化合物単独で示されたものを超える領域直径の有意な増大を伴う、それらの間の相乗的な抗菌相互作用を示している。この効果は、さまざまなTCC:DOSS濃度比にわたって観察されている。特に強い相乗作用は、0.2% w/wのTCCと2.5% w/wのDOSSとの組み合わせ物について見られる。
【0331】
実施例22‐P.アクネスに対するゲル製剤中のDOSS(+TCC)の活性
本発明によるゲル製剤を、DOSS若しくはTCC単独(ともにSigma Aldrichから購入)、又はその2つの組み合わせ物のいずれかを使用して調製した。前記ゲルは、前記の2種類の活性成分に加えて、(i)20% w/wのSolutol(商標)HS15(BASF)、(ii)20% w/wの無水エチルアルコール(Sigma Aldrich)、及び(iii)1%のヒドロキシエチル・セルロース(Sigma Aldrich)を含んでおり、そして、それを精製水(Sigma Aldrich)で100%に調整した。
【0332】
そして、これらのゲルを、実施例18にあるプラシーボ・ゲルを使用して1:2に希釈し、そして、先に記載したウェル拡散アッセイにより、P.アクネスNCTC 737に対するそれらの抗菌能について、三重反復試験で試験した。結果を、以下の表24に示す。
【0333】
【表27】

【0334】
この特定の製剤中に5% w/wにて存在しているとき、DOSSがそれ自体でP.アクネスNCTC 737に対して活性であることがわかった。しかしながら、0.2% w/wの濃度にて、TCCは、このアッセイを使用したのでは前記細菌に対して活性を示さなかった。これはまた、TCCもDOSSも含まないプラシーボ・ゲルについてもそうである。
【0335】
しかしながら、驚いたことに、前記の2種類の化合物を前記ゲル製剤中で組み合わせた場合、そのデータは、どちらかの化合物単独によって示されたものを超える領域直径の有意な増大を伴う、それらの間に相乗的な抗菌相互作用を示している。
この実験はまた、使用地点においてDAS又は併用DAS/カルバニリド活性物質を放出する本発明によるゲル製剤の能力を例証している。
【0336】
実施例23‐治験データ
本発明による製剤の抗ニキビ活性を評価するために、ヒト患者において治験を実施した。4種類の試験製剤は以下のとおりであった。
A 5% w/wのジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム、20% w/wのSolutol(商標)HS15、20% w/wのエタノール、1% w/wのヒドロキシエチル・セルロース、及び秤量水を含む実施例16(II)の製剤。
B 5% w/wのジオクチル・スルホコハク酸ナトリウム、0.2% w/wのTCC、20% w/wのSolutol(商標)HS15、20% w/wのエタノール、1% w/wのヒドロキシエチル・セルロース、及び秤量水を含む実施例8(B)の製剤。
【0337】
C 20% w/wのSolutol(商標)HS15、20% w/wのエタノール、1% w/wのヒドロキシエチル・セルロース、及び秤量水を含む(すなわち、DAS又はカルバニリド活性物質を含まない)実施例8(B)製剤で使用したものに類似した賦形剤組み合わせ物。
D 正の対照として、市販の抗ニキビ製品(L’Oreal(商標)Pure Zone Deep Control Moisturiser、EUで購入)。これは、非炎症性ニキビ病巣に対して有効であることが知られているサリチル酸を含む。
【0338】
前記治験は、無作為化された、4つの治験群を用いて対照臨床試験であり、試験治療に関しては二重盲検で、正の対照に関しては単盲検で実施した。その主要目的は、ニキビを患っている対象において4種類の試験製剤の有効性を比較することであった。
【0339】
前記治験を、ドイツの中の6つのセンターで実施した;Allen & Smithの8段階等級[Allen BS, Smith JG, "Various parameters for grading acne vulgaris", Arch Dermatol. 1982, 118: 23-25]で少なくとも3等級のニキビを患っている男女が、組み入れに適格であった。治療(約0.5g)が、顔全体に対して、1日1回、8週間、参加者によって適用された。どんな併用抗ニキビ剤も許可せず、そして、事前の治療はベースライン来院の少なくとも4週間前に停止した。4つの試験群のそれぞれには27〜31名の患者がおり、そして、各群を4種類の試験製剤のうちの1つに割り当てた。
【0340】
炎症性及び非炎症性病巣を、治療開始後8、15、29、及び57日間カウントした。「製剤成功率」もまた、(a)「医師の全体的評価」及び(b)参加者自体によって割り当てられた「全体的な満足度スコア」を使用して、これらの機会のそれぞれで評価した。(a)を、当初のニキビの重症度を考慮に入れて、先に言及したAllen & Smithの等級を使用して開業医によって実施した。(b)を、6段階のLikert様等級(1=非常に不満である、そして、6=非常に満足している)を使用して評価した。この等級についての参考文献は、Rapp DA et al, "Anger and Acne: Implication for Quality of Life, Patient Satisfaction and Clinical Care", Br J Dermatol 2004, 151:183-89である。参加者は、扱った関連製品がどれくらいよかったか、その使いやすさ、及びそれを使用するのに費やした時間を評定した。
【0341】
平均した炎症性病巣カウント(INFL)、平均した非炎症性病巣カウント(NINFL)、平均した総病巣カウント(LES)、平均した医師の全体的評価スコア(PGA)、及び平均した対象の全体的満足度スコア(SGSS)に関する結果を、以下の表25に示す。示した数字は、それぞれの評価来院のときの平均スコアを表すSGSS値は別として、ベースライン(すなわち、治療開始前のベースライン来院のときの平均カウント又はスコア)からの変化率(パーセンテージ)である。
【0342】
【表28】

【0343】
表25は、以下のことを示している:
・本発明によるDAS含有試験製剤(製剤A及びB)は、正の対照(製剤D)に比べて、治験終了時までに炎症性病巣カウントのより大きい減少を実現した。DASのカルバニリドとの組み合わせ物が、この点で最も効果的であるように見えた。
・本発明による3種類の製剤すべてが、正の対照に比べて、治験終了時までに、非炎症性病巣カウントの顕著に大きな減少を実現した。これに関連して、DASもカルバニリドも含まない本発明の第19の側面による製剤Cが最も効果的であるように見えた。
【0344】
・総病巣カウント(ベースラインからの、炎症性か否かに関係なく、すべての病巣数における平均変化)に関して、本発明による3種類の製剤すべてが、8週間の治験期間終了時までに、陽性の対照に比べて、優れていたとはいかないまでもよく働いた。
・医師の全体的評価スコアは、正の対照による性能、及び対照の性能に少なくとも匹敵する無DAS製剤Cの性能に比べて、DAS含有試験製剤の2つ、A及びBによるより良好な全般的性能を示している。
・治験終了時まで、対象満足度スコアは、本発明によるすべての製剤、特に、DAS含有製剤について高く、正の対照のそれらに比べても遜色がなかった。
【0345】
治験終了時変化対ベースラインは、すべての転帰を通じて、DAS含有製剤の2つA及びBに関して統計的に有意であり、それは、炎症性病巣カウント以外のすべての転帰に関する製剤Cのそれのようであった。
異なった転帰を通じて、4つの試験製剤を、有効性に関して、1が各ケースで最良を表し、そして、4が最悪を表すように格付けした。結果を、以下の表26にまとめる。
【0346】
【表29】

【0347】
DAS含有製剤の2つが、有効性と患者満足度の両方を含めた計測した転帰のすべてを通じて、対照に比べて、より好意的に格付けされているのがわかる。DASとカルバニリドの両方を含む製剤Bは、この点で特にうまくいった。本発明の第19の側面による製剤Cは、非炎症性病巣カウントに関連して対照より高く格付けされた。
【0348】
これらのデータは、ニキビの局所処置における本発明による製剤の有用性を実証している。特に、それらは、驚いたことに、本発明の第19の側面による製剤が、DAS又はカルバニリド抗菌剤の不存在にもかかわらず、且つ、その一見すると低い抗菌活性にもかかわらず、非炎症性ニキビ病巣の治療に有効であることを示している(プロピオン酸菌は炎症性ニキビ病巣に関連するが、非炎症性ニキビ病巣に関連しなかった)。この点において、本発明による製剤は、少なくとも市販のサリチル酸含有製品と同様によく機能するように見える。
【0349】
治験参加者により、4つの試験治療のすべてについて、治療に関連する局所的副作用が報告されずに、本発明による製剤が良好な耐容性を示すことが示されたことは注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体、及び(b)カルバニリド抗菌剤を含む抗菌製剤。
【請求項2】
局所適用に好適である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
ヒト皮膚への局所適用に好適である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
口腔内表面への局所適用に好適である、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
前記のDAS又は誘導体が、スルホン酸基がスルホナート-S(O)2-O-として存在する塩の形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記のDAS又は誘導体が、金属塩の形態である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記金属塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記金属塩が、ナトリウム塩である、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記DASが、C2〜C10ジアルキル・スルホスクシナートである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記DASが、ジオクチル・スルホスクシナートである、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記カルバニリド抗菌剤がTCCである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
前記のDAS又は誘導体の濃度が、1.5% w/w以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
前記のDAS又は誘導体の濃度が、最大10% w/wである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
前記のDAS又は誘導体の濃度が、2〜8% w/wである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
前記カルバニリド抗菌剤の濃度が、0.05% w/w以上である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
前記カルバニリド抗菌剤の濃度が、最大2% w/wである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
前記カルバニリド抗菌剤の濃度が、0.1〜0.3% w/wである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
前記のDAS又は誘導体対カルバニリド抗菌剤の重量比が、1:50〜50:1である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
抗ニキビ剤、角質溶解薬、ニキビ溶解薬、ケラチン生成細胞、及び/又は脂腺細胞の機能を正常化する作用物質、抗炎症剤、抗増殖性物質、抗生物質、抗アンドロゲン、セボスタティック/セボサプレッシブ剤、止痒剤、免疫調節薬、創傷治癒を促進する作用物質、追加の抗微生物剤、及びその混合物から選択される1又は複数の作用物質をさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
研磨剤、漂白剤、歯の美白剤、表面活性剤/洗剤、発泡剤、フッ素イオン若しくは含フッ素イオンの供給源、亜鉛塩、非齲蝕性甘味料、例えば、ペパーミント、スペアミント、若しくはアニスの実などの他の着香料、メンソール、脱感作剤、抗歯石剤/金属イオン封鎖剤若しくは抗結石剤、重炭酸ナトリウム、陰イオン性ポリカルボキシラート、酵素、湿潤剤、結合剤、pH調整バッファー、保存料、染料/色素、植物抽出物、抗プラーク剤、追加の抗微生物剤、麻酔剤、及びその混合物から選択される1又は複数の作用物質をさらに含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
防臭剤、及び/又は制汗剤をさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
クリーム、ペースト、ゲル、ローション、フォーム、軟膏、ワニス、又はその他の粘性流体若しくは半粘性流体の形態で存在する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項23】
溶液、スプレー、エアゾール、又は口腔内洗浄剤の形態で存在する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項24】
練り歯磨粉、口腔内洗浄剤、歯磨剤、ロゼンジ、又は頬側パッチの形態で存在するか、あるいは、歯科用繊維若しくはテープ、又は義歯の中又はその上に担持される、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項25】
エアゾール、ロールオン若しくはスティック防臭剤若しくは制汗製剤、又は粉剤の形態で存在するか、あるいは、靴、靴下、若しくはインソール上にコートされるか又はそれらの中に組み込まれる、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項26】
以下の:
(i)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(ii)有機溶剤;
(iii)増粘剤;及び
(iv)水、
をさらに含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項27】
前記可溶化剤が、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール、PEG)ベースである、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記可溶化剤が、ポリオキシアルキレン・エーテル又はエステルを含んでなる、請求項26又は27に記載の製剤。
【請求項29】
前記可溶化剤が、(a)ポリエトキシル化ソルビタン・エステルを除くポリエトキシル化エステル、及び(b)ポリエトキシル化アルキル・エーテルから選択される、請求項26〜28のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項30】
前記ポリエトキシル化エステルが、ポリエトキシル化脂肪酸エステルである、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記エステルの脂肪酸成分が、C12〜C18基である、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記エステルの脂肪酸成分が、ヒドロキシル置換した脂肪酸基である、請求項30又は31に記載の製剤。
【請求項33】
前記可溶化剤が、Solutol(登録商標)HS15である、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
前記ポリエトキシル化エステルが、ポリエトキシル化グリセリル・エステルである、請求項29に記載の製剤。
【請求項35】
前記エステルのグリセリド成分が、8〜18個の炭素原子を含む、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
前記可溶化剤が、Glycerox(商標)エステルである、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記ポリエトキシル化アルキル・エーテルが、C14〜C20脂肪族アルコールのエーテルである、請求項29に記載の製剤。
【請求項38】
前記有機溶剤が、アルコールである、請求項26〜37のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項39】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、フェノキシエタノール、及びその混合物から選択される、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
前記アルコールが、エタノールである、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
前記増粘剤が、ゲル化剤である、請求項26〜40のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項42】
前記増粘剤が、セルロース・ベースのゲル化剤又はカルボマーである、請求項26〜41のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項43】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチル・セルロースである、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
前記可溶化剤が、10% w/w以上の濃度にて存在する、請求項26〜43のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項45】
前記可溶化剤が、最大50% w/wの濃度にて存在する、請求項26〜44のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項46】
前記有機溶剤が、10% w/w以上の濃度にて存在する、請求項26〜45のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項47】
前記有機溶剤が、最大30% w/wの濃度にて存在する、請求項26〜46のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項48】
前記増粘剤が、0.2% w/w以上の濃度にて存在する、請求項26〜47のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項49】
前記増粘剤が、最大5% w/wの濃度にて存在する、請求項26〜48のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項50】
実質的に本明細書中に記載したとおりのものである抗菌製剤。
【請求項51】
請求項1〜50のいずれか1項に記載の抗菌製剤を含む製品。
【請求項52】
化粧品、スキンケア調製品、防臭剤若しくは制汗剤、歯科若しくはその他のオーラル・ヘルスケア調製品、清浄調製品、医薬若しくは美容用調製品、又はトイレタリー製品である、請求項51に記載の製品。
【請求項53】
抗菌製剤を製造するためのキットであって、DAS又はその誘導体の供給源、及びカルバニリド抗菌剤の供給源を、意図した適用地点若しくはその前に製剤ができるように上記の2種類の化合物を組み合わせるため、及び/又は表面への上記の2種類の化合物の同時投与のための取扱説明書と一緒に含んでなる前記キット。
【請求項54】
DAS又はその誘導体と、カルバニリド抗菌剤とを一緒に混合するステップを伴う抗菌製剤の製造方法。
【請求項55】
細菌活動によって発生、増悪、及び/又は伝染する、ヒト又は動物の身体に影響を及ぼす病態の治療に使用するための、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体と(b)カルバニリド抗菌剤とを含む製剤。
【請求項56】
請求項55に記載の使用のための、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体と(b)カルバニリド抗菌剤とを含む製剤であって、ここで、前記病態が、1又は複数のプロピオン酸菌によって発生、増悪、及び/又は伝染する前記製剤。
【請求項57】
請求項56に記載の使用のための、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体と(b)カルバニリド抗菌剤とを含む製剤であって、ここで、前記プロピオン酸菌が、細菌の中の1又は複数種類のP.アクネス菌株を含む前記製剤。
【請求項58】
請求項56又は57に記載の使用のための、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体と(b)カルバニリド抗菌剤とを含む製剤であって、ここで、前記プロピオン酸菌が、細菌の中の1又は複数種類のマクロライド‐リンコサミド‐ストレプトグラミン(MLS)耐性株、及び/又はマクロライド‐リンコサミド‐ストレプトグラミン‐ケトリド(MLSK)耐性株を含む前記製剤。
【請求項59】
請求項55〜58のいずれか1項に記載の使用のための、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体と(b)カルバニリド抗菌剤とを含む製剤であって、ここで、前記病態が、ニキビ、及び/又はニキビ病巣である前記製剤。
【請求項60】
請求項55〜59のいずれか1項に記載の治療又は予防的処置における使用のための製剤であって、ここで、投与時点若しくはその直前に現場で製造される、及び/又はDAS又は誘導体とカルバニリドが同時に又は連続して投与される前記製剤。
【請求項61】
細菌活動によって発生、増悪、及び/又は伝染する病態の治療のための医薬品の製造における、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体、及び(b)カルバニリド抗菌剤の使用。
【請求項62】
前記病態が、1又は複数種類のプロピオン酸菌によって発生、増悪、及び/又は伝染する、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
前記プロピオン酸菌が、細菌の中の1又は複数種類のP.アクネス菌株を含む、請求項62に記載の使用。
【請求項64】
前記病態が、ニキビ、及び/又はニキビ病巣である、請求項62又は63に記載の使用。
【請求項65】
細菌活動によって発生、増悪、及び/又は伝染する病態に罹患しているか又は罹患する危険性があるヒト又は動物の患者の治療方法であって、治療的(その用語は予防的を含む)に有効な量の、(a)DAS又は医薬的に許容し得るその誘導体と(b)カルバニリド抗菌剤を含む抗菌製剤を上記患者に投与するステップを伴う前記方法。
【請求項66】
前記病態が、ニキビ、及び/又はニキビ病巣である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
カルバニリド抗菌剤と組み合わせた抗菌又は抗ニキビ製剤におけるDAS又はその誘導体の使用であって、上記製剤の抗菌又は抗ニキビ活性を増強する目的、及び/又は抗菌又は抗ニキビ活性の必要以上の損失なしに上記製剤中のカルバニリドの量を低減する目的のための前記使用。
【請求項68】
DAS又はその誘導体と組み合わせた抗菌又は抗ニキビ製剤におけるカルバニリド抗菌剤の使用であって、上記製剤の抗菌又は抗ニキビ活性を増強する目的、及び/又は抗菌又は抗ニキビ活性の必要以上の損失なしに上記製剤中のDAS又は誘導体の量を低減する目的のための前記使用。
【請求項69】
請求項26又は請求項27〜49のいずれか1項に記載の抗菌製剤の製造方法であって、以下のステップ:
(a)増粘剤を水と混合し;
(b)有機溶剤中にDAS又は誘導体を溶解し;
(c)必要ならば、可溶化剤を溶かし;
(d)上記可溶化剤中にカルバニリド抗菌剤を溶かし;
(e)ステップ(d)で形成されたカルバニリド溶液を、ステップ(b)で形成されたDAS溶液と混合し;そして
(f)ステップ(e)で形成された混合物を、ステップ(a)で形成された水/増粘剤混合物と混合する、
を伴う前記方法。
【請求項70】
ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体を含む抗菌又は抗ニキビ製剤であって、上記DAS又は誘導体の濃度が3.5% w/w以上である前記製剤。
【請求項71】
以下の:
(i)ジアルキル・スルホスクシナート(DAS)又はその誘導体;
(ii)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(iii)有機溶剤、特に、アルコール;
(iv)増粘剤;及び
(v)水、
を含む抗菌又は抗ニキビ製剤。
【請求項72】
細菌活動によって発生、増悪、又は伝染するヒト又は動物の身体に影響を及ぼす病態の治療に使用するための、請求項70又は71に記載の製剤。
【請求項73】
細菌活動によって発生、増悪、及び/又は伝染する病態に罹患しているか又は罹患する危険性があるヒト又は動物の患者の治療方法であって、治療的(その用語は予防的を含む)に有効な量の、請求項70又は71に記載の製剤を上記患者に投与するステップを伴う前記方法。
【請求項74】
DASsとその誘導体、及びTCCの両方の不存在下、以下の:
(i)ポリオキシアルキレン・ベースの可溶化剤;
(ii)有機溶剤、特に、アルコール;
(iii)増粘剤;及び
(iv)水、
を含む抗ニキビ製剤。
【請求項75】
抗ニキビ剤として使用するための、請求項74に記載の製剤。
【請求項76】
ニキビ、特に非炎症性ニキビ病巣に罹患しているか又は罹患する危険性がある患者の治療方法であって、治療的(その用語は予防的を含む)に有効な量の、請求項74に記載の抗ニキビ製剤を上記患者に投与するステップを伴う前記方法。

【公表番号】特表2010−528098(P2010−528098A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509899(P2010−509899)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001896
【国際公開番号】WO2008/146030
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509326027)シントピックス グループ パブリック リミティド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】