説明

ジェルスプレー用エアゾール組成物

【課題】本発明は、油性液体や親油性有効成分などの油成分を含み、広範囲に均等に噴霧することができ、皮膚に付着した後で粘度の戻りが速いため垂れ落ちることがなく、かつ塗布面での付着量が多いジェルスプレータイプのエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】油成分、アルカリ剤、1価の低級アルコール、架橋型増粘剤および水を含有する原液ならびに噴射剤からなるジェルスプレー用エアゾール組成物であって、架橋型増粘剤がメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体であるジェルスプレー用エアゾール組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェルスプレー用エアゾール組成物に関する。詳細には、油性液体や親油性有効成分などの油成分を含み、広範囲に均等に噴霧することができるジェルスプレータイプのエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性液体や親油性の有効成分を皮膚の広い範囲に均等に付与するために、油性液体や親油性の有効成分をエタノールなどの低級アルコールに配合した原液を用い、これに液化ガスを配合してこれらが相溶した均一なエアゾール組成物が製造されていた。このようなエアゾール組成物は、大気中に噴射されると液化ガスが気化してその容積が増大し、原液が微細化されて霧状になるものであった。そのため、皮膚などの噴射対象面に広範囲にわたって均等に付与することができ、塗り伸ばす必要がなく、さらに液化ガスの気化熱により噴射対象面が冷却され、優れた使用感が得られるものであった。このようなメリットを利用して、消炎鎮痛剤、害虫忌避剤などの人体に使用する製品に多く用いられている。その一方、液化ガスの配合量を多くすると冷却感は強くなるが、噴射粒子が細かくなりすぎ使用者が吸引しやすくなる、噴射対象面で飛散して付着性が悪くなる、などの問題があった。
【0003】
噴射粒子を粗くして付着性を向上させる手段として、原液中にヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系増粘剤や、原液のpHを特定の範囲に調整することにより架橋して粘度が上昇する架橋型増粘剤を配合したエアゾール組成物が知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、架橋型増粘剤としてはカルボキシビニルポリマー(カルボキシル基含有ビニルポリマー)等が用いられている。
【0004】
しかし、セルロース系増粘剤を使用すると、液化ガスを充填してエアゾール組成物の粘度が低下しても噴射物が拡がりにくくミスト状になりにくいという問題があった。また、カルボキシビニルポリマーを使用すると、噴射物が噴射通路内を通過するときに加わるせん断応力により粘度がさらに低下するためミスト状にはなるが、皮膚に付着した後で粘度の戻りが遅いため、垂れ落ちが生じるといった問題があった。
【0005】
また液化ガスの配合量を少なくすると、増粘剤を配合しない場合であっても、噴射物の拡がりが小さく、垂れ落ちが多くなるという問題があった。
【0006】
したがって、油性液体や親油性有効成分などの油成分を含み、広範囲に均等に噴霧することができ、皮膚に付着した後の粘度の戻りが速いため垂れ落ちがないジェルスプレータイプのエアゾール組成物については未だないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平7−101851号公報
【特許文献2】特開平4−89423号公報
【特許文献3】特開平9−2946号公報
【特許文献4】特開平11−279522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、油性液体や親油性有効成分などの油成分を含み、広範囲に均等に噴霧することができ、皮膚に付着した後で粘度の戻りが速いため垂れ落ちることがなく、かつ塗布面での付着量が多いジェルスプレータイプのエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、油成分、アルカリ剤、1価の低級アルコール、架橋型増粘剤および水を含有する原液ならびに噴射剤からなるジェルスプレー用エアゾール組成物であって、架橋型増粘剤がメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体であるジェルスプレー用エアゾール組成物に関する。
【0010】
原液が、油成分、アルカリ剤および1価の低級アルコールを含有するアルコール相と、架橋型増粘剤および水を含有する水相とからなり、該アルコール相と水相を混合することにより粘度が増加するジェル状原液であることが好ましい。
【0011】
ジェル状原液が均一であることが好ましい。
【0012】
ジェル状原液の粘度が1,000〜1,000,000mPa・sであることが好ましい。
【0013】
原液中に、油成分0.1〜15重量%、1価の低級アルコール5〜60重量%、架橋型増粘剤0.05〜3重量%および水30〜90重量%を含有することが好ましい。
【0014】
原液と噴射剤の配合比が、80/20〜40/60(重量比)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のジェルスプレータイプのエアゾール組成物は、架橋型増粘剤としてメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を用いることで、ミスト状に噴射できるため広い範囲に噴射することができ、皮膚に付着した後の粘度の戻りが速いため垂れ落ちがなく、噴射粒子が大きいため使用者が吸引する恐れがなく、塗布面での付着量を多くすることができる。さらに、油性液体や親油性有効成分などの油成分を含有しているにも関わらず、均一な原液が得られやすく、噴射して噴射剤が揮発しても塗布面上で有効成分が分離しないため、均一な組成物を塗布することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、油成分、アルカリ剤、1価の低級アルコール、架橋型増粘剤および水を含有する原液ならびに噴射剤からなるジェルスプレー用エアゾール組成物であって、
架橋型増粘剤がメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体であるジェルスプレー用エアゾール組成物に関する。
【0017】
油成分は、エアゾール組成物を人体に噴射したときに皮膚表面に付着してその効果を発揮することができるものである。油成分は、皮膚へのなじみやすさの点から水に不溶性もしくは難溶性であり、原液が均一になり安定化しやすい点から低級アルコールに溶解するものが好ましい。
【0018】
前記油成分としては、上述の溶解性を有する親油性有効成分または油分があげられる。
【0019】
前記有効成分としては、例えば、l−メントール、カンフルなどの清涼化剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナクなどの消炎鎮痛剤、クロトリマゾール、硝酸オキシコナゾールなどの抗真菌剤、グリチルレチン酸などの抗炎症剤、クロタミトンなどの抗ヒスタミン剤、レチノール、DL−α−トコフェロール、酢酸トコフェロールなどのビタミン類、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤、N,N−ジエチルトルアミド(ディート)などの害虫忌避剤、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、サリチル酸エチレングリコールなどの紫外線吸収剤、パラオキシ安息香酸エステルなどの防腐剤、香料などがあげられる。これらは、ジェルスプレーの用途により適宜選択することができる。
【0020】
前記油分は皮膚表面に付着して保護する、乾燥を防止(保湿)する、すべりを良くするなどの効果を得るために用いられ、例えば、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチルなどの脂肪酸エステル、カプロン酸、カプリル酸などの炭素数6〜9の脂肪酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、アミルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコールなどの炭素数5〜12の飽和1価アルコール、オレイルアルコールなどの不飽和1価アルコール、などの常温(25℃)で液状である液体油分や、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数10〜18の脂肪酸、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの炭素数が13〜22の飽和1価アルコール、などの常温(25℃)で固体である固体油分があげられ、これらを単独で用いてもよく、また、2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、塗布した後で析出などにより塗布面が白くなるなどの問題がない点から、液体油分が好ましく、シリコーンオイル、脂肪酸エステルがより好ましい。
【0021】
油成分としては、前記有効成分、油分のいずれかを含むものであってもよく、有効成分と油分のいずれをも含むものであってもよい。
【0022】
前記油成分の配合量は、原液中0.1〜15重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましい。前記油成分の配合量が0.1重量%未満の場合は噴射物に含まれる油成分が少なくなり所望の効果が得られにくい傾向があり、15重量%を超えると原液および噴射物が分離しやすくなり、油成分を均一に付与しにくくなる傾向がある。
【0023】
アルカリ剤は、原液のpHを調整して後述する架橋型増粘剤を中和して増粘させる目的で用いられる。
【0024】
前記アルカリ剤としては、例えば、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミン(MEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−アミノ−2−メチル−1、3−プロパンジオール(AMPD)などの有機アルカリ、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリなどがあげられる。これらの中でも、低級アルコールへの溶解性に優れ原液が均一になりやすい点から、有機アルカリを用いることが好ましく、トリエタノールアミンを用いることがより好ましい。
【0025】
前記アルカリ剤の配合量としては、特に限定されないが、原液のpHが4〜9となる量添加することが好ましく、pH5〜8となる量添加することがより好ましい。原液のpHが4未満の場合は架橋型増粘剤の架橋が不充分であり、原液の粘度が高くなりにくい傾向があり、pHが9を超えると原液の粘度が低下しやすくなり、さらに皮膚への刺激が生じやすくなる傾向があり、さらにエアゾール容器を腐蝕しやすくなるものである。
【0026】
1価の低級アルコールは、油成分やアルカリ剤の溶媒として用いられ、原液の溶解性を調整して原液を均一にする、噴射剤を溶解しやすくし均一なエアゾール組成物を得る、噴射物の乾燥性を調整して使用感を向上させる、などの目的で用いられる。
【0027】
1価の低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数が2〜3の1価アルコールがあげられる。これらの中でも、溶解性や乾燥性に優れている点からエタノールが好ましい。
【0028】
1価の低級アルコールの配合量は、原液中5〜60重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましい。低級アルコールの配合量が5重量%未満であると、油成分が分離しやすくなる傾向があり、60重量%を超えると噴射剤により後述する架橋型増粘剤メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体が析出しやすくなり、さらに、皮膚に付着した後の粘度上昇が遅くなり垂れやすくなる傾向がある。
【0029】
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体は、エアゾール組成物の粘度を高くするが、噴射物が広範囲に拡がり均等に付着するために、噴射粒子を粗くして使用者が吸引しないように、さらには噴射面での飛び散りを防止して付着しやすくする、などの目的で用いられる。
【0030】
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体は、例えば、スタビリーゼQM(商品名、アイエスピー・ジャパン(株)製)などがあげられる。
【0031】
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体の配合量は、原液中0.05〜3重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましく、0.1〜1重量%であることがさらに好ましい。メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体の配合量が0.05重量%未満であると増粘効果が得られにくく、噴射粒子が細かくなって使用者が吸引しやすくなる、噴射面で飛散しやすくなって付着性が低下しやすくなる傾向があり、3重量%を超えると原液に溶解しにくくなる、噴射剤を充填すると析出しやすくなる傾向がある。
【0032】
水は、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を溶解する溶媒として用いられる。水を配合することにより原液の粘度を高く保つことができ、さらに火気への安全性も高くなるものである。
【0033】
水としては特に限定されるものではないが、例えば、精製水、イオン交換水、海洋深層水、生理食塩水などを用いることができる。
【0034】
水の配合量は、特に限定されるものではないが、原液中30〜90重量%であることが好ましく、40〜80重量%であることがより好ましい。水の配合量が30重量%未満であると皮膚に付着した後で粘度上昇が遅くなり垂れやすくなる傾向があり、90重量%を超えると原液が均一になりにくくなる傾向がある。
【0035】
原液には、前記成分以外にも、水に溶解する水溶性の有効成分、パウダーを配合することができる。
【0036】
水溶性の有効成分としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、1、3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、乳酸ナトリウム、d,l−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの殺菌・防腐剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;アスコルビン酸などの酸化防止剤、クエン酸、乳酸などの収斂剤、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤、塩酸ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤などがあげられる
水溶性有効成分を配合する場合の配合量は、原液中0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜8重量%であることがより好ましい。水溶性有効成分の配合量が0.1重量%未満の場合は噴射物に含まれる有効成分が少なくなり所望の効果が得られにくい傾向があり、10重量%を超えると有効成分の濃度が高く皮膚に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0037】
パウダーは、有効成分を担持する担体、皮膚の保護剤、付着剤、すべりを良くする、サラサラ感を付与するなどの目的で用いられる。
【0038】
パウダーとしては、例えば、無水ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、マイカ、ゼオライト、セラミックパウダー、窒化ホウ素などがあげられる。
【0039】
パウダーを配合する場合の配合量は、特に限定されるものではないが、原液中0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜15重量%であることがより好ましい。パウダーの配合量が0.1重量%未満であるとパウダーを配合する効果が得られにくくなる傾向があり、20重量%を超えるとエアゾール組成物中で凝集したり、バルブや吐出部材で詰まりやすくなる傾向がある。
【0040】
原液を調製する方法としては、特に限定されないが、前記油成分とアルカリ剤を低級アルコールに配合してアルコール相を形成し、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を水に配合して水相を形成し、次いで、アルコール相と水相とを混合し、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体をアルカリ剤と反応させて所望の粘度にすることができる。アルカリ剤の添加量を前記pHになるように調整することで、架橋型増粘剤であるメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体が架橋し、原液の粘度が増加し、均一なジェル状原液とすることができる。なお水相には、適宜前記水溶性有効成分を配合することができる。
【0041】
得られるジェル状原液の粘度(20℃)は1,000〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、2,000〜500,000mPa・sであることがより好ましく、3,000〜300,000mPa・sであることが特に好ましい。粘度が1,000mPa・s未満であるとミストが細かくなりやすいが、皮膚に付着した後に垂れ落ちやすくなる傾向があり、1,000,000mPa・sよりも高くなると広範囲に拡がるミスト状に噴射できなくなる傾向がある。
【0042】
噴射剤は原液と溶解して粘度を低下させ、噴射物を広範囲に拡げてミスト状に噴射する、気化熱により皮膚を冷却するなどの目的で用いられる。
【0043】
噴射剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、およびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物などの液化ガスがあげられる。なお、冷却感の持続性、ミストの大きさなどを調整するために、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭素数が5である脂肪族炭化水素、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルを配合しても良い。前記液化ガスの中でも、均一なエアゾール組成物が得られやすい点からジメチルエーテルを用いることが好ましい。
【0044】
前記原液と液化ガスの配合比は、80/20〜40/60(重量比)であることが好ましく、70/30〜45/55(重量比)であることがより好ましい。配合割合が80/20よりも大きい場合は液化ガス量が少なくなり、広範囲に広がるミスト状に噴射できなくなる傾向があり、40/60よりも小さい場合は液化ガス量が多くなり、架橋型増粘剤が析出しやすくなる傾向がある。
【0045】
本発明のジェルスプレー用エアゾール組成物の製造方法としては、原液を耐圧容器内に充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを載置する。なお、原液は予めアルコール相と水相を混合して増粘させてジェル状にしたものを充填してもよく、アルコール相と水相を別々に耐圧容器に充填し耐圧容器内で増粘させてゲル化してもよい。次いで液化ガスをアンダーカップ充填により充填し、エアゾールバルブを耐圧容器の開口部にクリンプなどにより固着する。さらに容器を振るなどの操作によりエアゾール容器内部で原液と噴射剤とを混合し両者を相溶させる。
【0046】
かくして得られる本発明のジェルスプレー用エアゾール組成物は、粘度の高い原液をミスト状に噴射して広範囲に付着させることができ、さらに皮膚に付着した後の粘度上昇が速く垂れ落ちないものである。また、噴射して噴射剤が揮発しても塗布面上で有効成分が分離しないため、均一な組成物を塗布することができ、噴射粒子が大きいため使用者が吸引する恐れもなく、塗布面での付着量が多くすることができるものである。そのため、収斂剤、消炎鎮痛剤、害虫忌避剤などの人体に使用する製品に好適に用いられる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1(シリコーンジェルスプレー)
下記のアルコール相と水相をそれぞれ調製し、水相にアルコール相を添加して原液を調製した(原液のpH:7.0)。原液60g(60重量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填し、容器の開口部にエアゾールバルブを載置した。次いで噴射剤としてジメチルエーテル40g(40重量%)をアンダーカップ充填し、バルブを固着した。容器を上下に数回振り、原液とジメチルエーテルを混合してエアゾール組成物を製造した。なお、エアゾールバルブは、ステム孔がφ0.4mm、ハウジングの下孔がφ1.5mm、ベーパータップ孔を備えていないものを用い、押しボタンは噴射孔がφ0.6mmでありメカニカルブレークアップ機構を備えているものを用いた。
【0049】
<アルコール相>
デカメチルシクロペンタシロキサン(*1) 8.0
トリエタノールアミン 0.7
メチルパラベン 0.1
エタノール 45.0
合計 53.8(重量%)

<水相>
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(*2) 0.7
精製水 45.5
合計 46.2(重量%)

*1:SH245(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)
*2:STABILEZE QM(商品名、アイエスピー・ジャパン(株)製)
【0050】
実施例2
下記のアルコール相と水相をそれぞれ調製し、水相にアルコール相を添加して原液を調製し(原液のpH:7.0)、原液の配合量を50g(50重量%)、ジメチルエーテルの配合量を50g(50重量%)とした以外は、実施例1と同様にしてエアゾール組成物を製造した。

<アルコール相>
ミリスチン酸イソプロピル 5.0
トリエタノールアミン 0.7
メチルパラベン 0.1
エタノール 30.0
合計 35.8(重量%)

<水相>
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(*2) 0.7
精製水 63.5
合計 64.2(重量%)
【0051】
実施例3(害虫忌避用ジェルスプレー)
下記のアルコール相と水相をそれぞれ調製し、水相にアルコール相を添加して原液を調製し(原液のpH:6.8)、原液の配合量を65g(65重量%)、ジメチルエーテルの配合量を35g(35重量%)とした以外は、実施例1と同様にしてエアゾール組成物を製造した。

<アルコール相>
N,N−ジエチルトルアミド 3.7
トリエタノールアミン 0.5
メチルパラベン 0.1
エタノール 25.7
合計 30.0(重量%)

<水相>
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(*2) 0.5
精製水 69.5
合計 70.0(重量%)
【0052】
比較例1
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体の代わりにカルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール981、NOVEON製)を用いた以外は実施例3と同様にしてエアゾール組成物を調製した。
【0053】
比較例2
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体の代わりにヒドロキシエチルセルロース(商品名:HEC−SE850、ダイセル化学工業(株)製)を用いた以外は実施例3と同様にしてエアゾール組成物を調製した。
【0054】
比較例3
メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を用いず、精製水を70重量%とした以外は実施例3と同様にしてエアゾール組成物を調製した。
【0055】
実施例1〜3、比較例1〜3で得られたエアゾール組成物を以下の評価方法により評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0056】
<評価方法>
1.原液
(外観)
アルコール相と水相とを混合して増粘させた原液を20℃に調整し、原液の外観を評価した。
○:わずかに濁りが確認できるが、分離していない。
×:2層に分離している。
【0057】
(粘度)
アルコール相と水相とを混合して増粘させた原液を20℃に調整し、粘度を測定した。なお、粘度測定はB型粘度計(型式BL、東京計器工業(株)製)を用いて行った。
【0058】
2.エアゾール組成物
(スプレーパターン)
エアゾール製品を25℃の恒温水槽中に1時間保持し、噴射方向に対して距離15cmの位置に垂直に設けたガラス板にエアゾール組成物1gを噴射したときの付着物の直径を測定した。
○:8cm以上(噴射角30°より大きい)
△:5〜8cm(噴射角20〜30°)
×:5cm以下(噴射角20°より小さい)
【0059】
(付着性)
エアゾール製品を25℃の恒温水槽中に1時間保持し、噴射方向に対して距離15cmの位置に垂直に設けたガラス板にエアゾール組成物1gを噴射したときの付着状態を評価し、付着率を算出した。なお付着率は、噴射したエアゾール組成物からジメチルエーテルの含有量を差し引いた量を100%として、噴射後5秒後に付着量を測定し、付着率を算出した。
○:跳ね返りが無く、付着率が90%より高い。
△:一部跳ね返りがあり、付着率が70〜90%。
×:跳ね返りが多く、付着率が70%未満。
【0060】
(垂れ落ち)
エアゾール製品を25℃の恒温水槽中に1時間保持し、噴射方向に対して垂直に設けたガラス板にエアゾール組成物1gを噴射し、付着した噴射物の垂れ落ちを評価した。
○:噴射直後の垂れ落ちがなく、付着したままであった。
△:付着直後は垂れ落ちが認められたが、しばらくすると止まった。
×:付着直後から垂れ落ちが生じ、止まらない。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油成分、アルカリ剤、1価の低級アルコール、架橋型増粘剤および水を含有する原液ならびに噴射剤からなるジェルスプレー用エアゾール組成物であって、
架橋型増粘剤がメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体であるジェルスプレー用エアゾール組成物。
【請求項2】
原液が、油成分、アルカリ剤および1価の低級アルコールを含有するアルコール相と、架橋型増粘剤および水を含有する水相とからなり、該アルコール相と水相を混合することにより粘度が増加するジェル状原液である請求項1記載のジェルスプレー用エアゾール組成物。
【請求項3】
ジェル状原液が均一である請求項2記載のジェルスプレー用エアゾール組成物。
【請求項4】
ジェル状原液の粘度が1,000〜1,000,000mPa・sである請求項2または3記載のジェルスプレー用エアゾール組成物。
【請求項5】
原液中に、油成分0.1〜15重量%、1価の低級アルコール5〜60重量%、架橋型増粘剤0.05〜3重量%および水30〜90重量%を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のジェルスプレー用エアゾール組成物。
【請求項6】
原液と噴射剤の配合比が、80/20〜40/60(重量比)である請求項1〜5のいずれかに記載のジェルスプレー用エアゾール組成物。

【公開番号】特開2008−214277(P2008−214277A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54707(P2007−54707)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】