説明

ジョイント保護用キャップ

【課題】金属製のジョイントの保護に適用される場合にも情報の送受信が阻害されず、また該ジョイントを備えた機器のメンテナンス情報を活用することが可能なICタグ付保護キャップを提供する。
【解決手段】配管端部に接続するジョイント60を保護するためのプラスチック製保護キャップであって、両端開口の筒状体21と、筒状体21の上端に破断可能なブリッジ35を介して設けられたシール蓋23と、筒状体21を取り囲むように環状連結部38を介して筒状体21に連結された筒状バンド25とからなり、筒状体21の内面にはジョイント60の外面と係合する係合部材30が形成されており、筒状バンド25には、ICタグ10が取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管の端部に接続するためのジョイントを保護するための保護キャップに関するものであり、より詳細には、製品情報等が記憶されたICタグを備えた保護キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の製品には、製造年月日、製造・販売者名、使用期限などの製品情報を表示したバーコードが広く利用されている。ところで、バーコードは、コード化された情報をリーダーで読取るため、バーコードの印刷面を平面とする必要があり、このため、ボトルやキャップなどの包装材料の分野では、バーコードの印刷面が制限され、また、コード化できる情報量も限られたものとなってしまうという問題がある。
【0003】
そこで、最近では、ICタグを用いた情報表示の技術が利用されるようになってきた。ICタグとは、RFID(Radio Frequency Identification)とも呼ばれるものであり、所定の情報が記憶されたICチップを無線アンテナとともに樹脂やガラス等の誘電体材料に埋め込んでタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末である。このようなICタグは、無線通信により、ICチップに記憶された製品情報を読取るものであり、例えばICチップのメモリには、数百バイトのデータを記録することができ、多くの製品情報を記録できるという利点がある。また、ICタグは、非接触で記録された情報を読取ることができ、接触による摩耗などの問題もなく、さらには、商品の形態に併せた形状に加工したり、小型化、薄型化なども可能であるという利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂フィルムにICチップ及びアンテナを設けたICタグが開示されている。
【0005】
また、ガス管、水道管などの各種配管には、ガス湯沸し器、ガスコンロ、ガスメーター、水道メーターなどの各種機器が接続されるが、これらの機器には、配管の端部に接続するためのジョイント(継ぎ手)を備えている。このジョイントには、例えばジョイントの螺子を保護したり、或いはジョイントの内部へのホコリなどの異物の侵入を保護するためのプラスチック製保護キャップが取り付けられる(例えば特許文献3参照)。即ち、上記の各種機器の販売時など、機器が配管に取り付けられていない状態では、ジョイントに保護キャップを取り付けておき、各種配管に接続する際には、保護キャップを取り外し、必要により、カプラーを用いて接続が行なわれる。
【0006】
ところで、上記のようなガス管などに接続される各種機器にも、製品情報を記憶したICタグを取り付けることが考えられるが、この場合には、各種機器について、ICタグを取り付ける部分をプラスチック製にしなければならないなどの制約を受け(金属部分にICタグを取り付けると、ICチップに対しての情報の送受信に不都合を生じる)、またICタグを取り付けるための製造工程が1工程増えてしまい、コストが増大するという問題がある。このため、ジョイントの保護キャップにICタグを取り付けることが望まれている。この場合には、各種機器の製造工程に1工程加えるなどの必要はなく、製品コストの増大を回避することができるからである。
【特許文献1】特開2002−236896号公報
【特許文献2】特開2006−48016号公報
【特許文献3】特開昭60−217960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プラスチック製保護キャップにICタグを取り付ける場合にも、解決すべき問題がある。即ち、各種機器に取り付けられているジョイントの多くは金属製であり、単に保護キャップにICタグを取り付けたのでは、ICチップへの情報の送受信が妨害されてしまう。また、各種機器に必要な情報は、製品出荷時の情報に限らず、各種機器が配管に取り付けられた後の情報、例えばメンテナンス情報があるが、保護キャップは、各種機器を配管に接続させる際に取り除かれてしまうため、保護キャップにICタグを取り付けた場合には、このようなメンテナンス情報を活用することが出来ない。
【0008】
従って、本発明の目的は、金属製のジョイントの保護に適用される場合にも情報の送受信が阻害されず、また該ジョイントを備えた機器のメンテナンス情報を活用することが可能なICタグ付保護キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、配管端部に接続するジョイントを保護するためのプラスチック製保護キャップであって、両端開口の筒状体と、該筒状体の上端に破断可能なブリッジを介して且つ上端の開口を覆うように設けられたシール蓋と、該筒状体を取り囲むように環状連結部を介して該筒状体に連結された筒状バンドとからなり、
前記筒状体の内面には前記ジョイントの外面と係合する係合部材が形成されており、
前記筒状バンドには、ICタグが取り付けられていることを特徴とする保護キャップが提供される。
【0010】
本発明の保護キャップにおいては、以下の態様が好適である。
(1)前記ICタグは、前記筒状バンドの周方向に延びている帯状形状を有していると共に、前記ICタグは、前記筒状バンドの内面に設けられていること。
(2)前記筒状バンドの内面には、軸方向に延びているリブが設けられており、該リブは、前記ICタグの少なくとも一部分を間に挟んで該筒状バンド内面と一体に形成されていること。
(3)前記リブは、複数形成されていること。
(4)前記筒状バンドは、透明乃至半透明に形成されていること。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラスチック製保護キャップでは、ジョイントに直接接触する筒状体と離隔して設けられている筒状バンドにICタグが設けられている。このため、ジョイントが金属製であったとしても、該ジョイントとICタグとの間に、情報の送受信を確実に行い得るに十分な間隔を確保でき、金属製ジョイントによる妨害を有効に回避することができる。
【0012】
また、機器のジョイントに配管を接続する場合には、シール蓋を筒状体の上端から剥ぎ取り、残った筒状体を押し下げれば、筒状バンドが連結されている筒状体が装着されたままの状態でジョイントの上部に配管を接続させることが出来る。従って、配管に接続された機器の安全検査などのメンテナンス情報を筒状バンドに取り付けられているICタグに入力し、そのメンテナンス情報を次回のメンテナンス等に活用することができる。
【0013】
さらに、筒状体に設けられている筒状バンドは、クッションなどの機能も有しているため、この保護キャップは、保護効果が高く、外力によるジョイントの破損などを効果的防止することができる。
【0014】
さらには、筒状バンドは、筒状体よりも大径であるため、長いアンテナ線を有しているICタグを取り付けることができ、情報の送受信を確実に行なう上でも効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を、以下、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の保護キャップに取り付けるICタグの構造を示す概略断面図であり、
図2は、本発明の保護キャップの半断面側面図であり、
図3は、図2の保護キャップのA−A断面を示す平面断面図であり、
図4は、図3のB部における側断面を拡大して示す図であり、
図5は、図3のC部における側断面を拡大して示す図であり、
図6(a)〜(c)は、本発明の使用方法を説明するための図である。
【0016】
<ICタグ>
本発明の保護キャップに取り付けるICタグの概略断面図を示す図1において、全体として10で示すこのICタグは、樹脂フィルム1を備えており、この樹脂フィルム1の表面に金属製アンテナ3とICチップ5が固定されている。
【0017】
樹脂フィルム1は、金属製アンテナ3やICチップ5の固定を効果的に行なうことが可能な耐熱性、強度等を有するものであり、一般に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂からなるが、場合によっては、このICタグ10が取り付けられる保護キャップを構成する樹脂基材と同様の樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂から形成されていてもよい。また、この樹脂フィルム1の表面には、金属製アンテナ3や後述する保護キャップの筒状バンドなどに対して熱接着性を有する接着性樹脂などがコーティングされていてもよい。このような樹脂フィルム1の厚みは、一般に10乃至1000μm程度である。特に10乃至100μm程度の範囲が好ましい。
【0018】
アンテナ3は、通常、アルミニウム、銅、銀、金などの低抵抗金属の薄膜(厚みが5乃至50μm程度)からなるものであり、所定のパターン形状を有しており、信号の送受信に使用される。
【0019】
ICチップ5は、フリップチップ実装などにより、上記のアンテナ3に導通するように設けられるものであり、このICタグ10が取り付けられるプラスチック成形品に関する情報が記憶されるものであり、上記のアンテナ3を介しての信号の送信により、所定の情報が記憶され、またアンテナ3を介してICタグ10に記憶された情報が読み取られるものである。
【0020】
また、図1に示されているように、上記のICチップ5は、一般に、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂などの封止剤7により、封止されて保護されている。
【0021】
さらに、図1から理解されるように、上記のようなICタグ10においては、アンテナ3やICタグ5で覆われておらず、樹脂フィルム1が露出した表面(図1において9で示されている)が、アンテナ3が形成されていない端部やアンテナ3の間に形成されている。即ち、この露出面9を利用しての熱溶着を利用してICタグ10は以下に述べる保護キャップに取り付けられる。
【0022】
<保護キャップ>
本発明において、上記のICタグ10は、ガス管や水道管などの配管に接続されるガス湯沸かし器、ガスコンロ或いは各種メーターなどの機器に設けられているジョイントを保護するための保護キャップに取り付けられる。
【0023】
即ち、本発明の保護キャップの構造を示す図2及び図3において、全体として20で示すこの保護キャップは、両端開口の筒状体21と、該筒状体21の上端に設けられたシール蓋23と、筒状体21を取り囲むように設けられており、従って筒状体21よりも大径の筒状バンド25とからなっている。
【0024】
筒状体21の内面には、後述するジョイント(60)の外面に形成されている螺条と係合する周状突起(アンダーカット)30が形成されている。即ち、この保護キャップ20は、この筒状体21の内部にジョイントを押し込むことにより周状突起30とジョイント外面の螺条とが係合し、保護キャップ20がジョイントにがっちりと固定され、ジョイントの外面は、筒状体21により保護される。
【0025】
また、シール蓋23は、円形の天板部31と、天板部31の内面から下方に延びている長さの短い環状足部33とからなっており、この環状足部33の下端が、破断可能なブリッジ35を介して筒状体21の上端に接続されている。このシール蓋23により、筒状体21の上端の開口が覆われた構造となっている。即ち、ジョイントに筒状体21を押し込んだとき、このシール蓋23により、ジョイント内へのホコリ等の異物の侵入が防止される。
【0026】
尚、図2から理解されるように、筒状体21の上端には、適当な間隔で切欠き部37が形成されており、この切欠き部37内に、シール蓋23を繋ぐブリッジ35が位置している。このような構造とすることにより、ブリッジ35が保護され、外力によるブリッジ35の偶発的な破断を効果的に防止できるばかりか、シール蓋23と筒状体21との間に不必要な空隙が形成されることを防止でき、見映えの低下を防止することができる。
【0027】
また、シール蓋23の天板部31の外周部31aは、筒状体21の上端よりも外方に突出している。これにより、ジョイントに筒状体21が固定されている状態でシール蓋23を上方に押し上げて、ブリッジ35を破断させ、シール蓋23を筒状体21から切り離すことができる。
【0028】
一方、筒状体21の外面の下方部分からは環状連結部38が外方に延びており、この環状連結部38の外周縁に筒状バンド25の上端が連なっている。本発明においては、この筒状バンド25に前述したICタグ10が取り付けられる。尚、このICタグ10については、前述したICチップ5やアンテナ3は省略されている。
【0029】
筒状バンド25へのICタグ10の取り付けは、先にも述べたように、ICタグ10が備えている樹脂フィルム1との熱溶着を利用して行われるものであり、図3〜図5に示されているように、筒状バンド25の内面に、帯状のICタグ10が取り付けられている。筒状バンド25の外面にICタグ10を取り付けることも可能であるが、外力等によるICタグ10の破損を防止するために、このように筒状バンド25の内面にICタグ10を取り付けることが好適である。
【0030】
また、筒状バンド25の内面に取り付けられているICタグ10は、ICチップ5及びアンテナ3が設けられている側が筒状バンド25の内面に面しており、ICチップ5及びアンテナ3は外部に露出していない。即ち、ICチップ5及びアンテナ3が設けられている側の樹脂フィルム1の露出面9(図1参照)を筒状バンド25の内面に熱溶着させることにより、ICタグ10が取り付けられているのであり、これにより、ICチップ5やアンテナ3を有効に保護することができる。
【0031】
また、筒状バンド25の内面には、軸方向に延びているリブ39が周方向に間隔を置いて多数形成されており、このリブ39によって、ICタグ10が部分的に挟まれている。即ち、図4及び図5から理解されるように、リブ39が設けられていない領域では、ICタグ10は、その一方の面(樹脂フィルム1のICチップ5等が設けられていない側の面、即ち裏面)が露出しているが(図4参照)、リブ39が設けられている領域では、ICタグ10が筒状バンド25に埋め込まれた状態となっており(図5参照)、ICタグ10における樹脂フィルム1の裏面にはリブ39が溶着している。このようなリブ39を形成することにより、ICタグ10はがっちりと筒状バンド25に固定され、その脱落を確実に防止することができる。
【0032】
本発明において、上記のようにしてICタグ10が取り付けられた保護キャップ20は、所定の樹脂材料(例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂)を用い、成形型内にICタグ10を位置固定した状態でのインサート成形により成形される。この場合、リブ39を形成しない場合には、予め成形された保護キャップ20の筒状バンド25の内面に、ヒートシールによりICバンド10を熱接着することにより製造することができる。
【0033】
図6(a)〜(c)を参照して、上記の保護キャップ20は、ガス湯沸かし器などの機器に設けられているジョイント60に装着される。即ち、このジョイント60は、通常、金属製であり、両端開口の中空筒形状を有しており、その内部は、機器内部の所定の流体流路に連通している。また、ジョイント60の下端部にはボス61が形成されており、ボス61の上方部分の外面には、上端まで延びている螺条63が形成されている。かかるジョイント60の螺条63に、カプラーを装着し、家屋などに設けられているガス管や水道管などの配管の端部が接続されることとなる。
【0034】
即ち、本発明の保護キャップ20は、上記のジョイント60に被せ、保護キャップ20(筒状体21)の内部にジョイント60を押し込むことにより、前述した筒状体21の内面に形成されている環状突起30が螺条63と係合し、従って、保護キャップ20ががっちりとジョイント60に固定されることとなる(図7(a)参照)。これにより、ジョイント60の外面(螺条63)は保護キャップ20により保護され、またジョイント60の内部への異物の侵入が有効に防止されることとなる。
【0035】
この段階では、保護キャップ20に取り付けられているICタグ10(ICチップ5)には、例えばジョイント60を備えている機器の情報(製造年月日など)が記憶されている。
【0036】
上記のように保護キャップ20が取り付けられているジョイント60を備えた機器が販売され、一般家庭等で使用に供されるときには、保護キャップ20を取り外し、ジョイント60に所定の配管の端部が接続され、機器の使用が開始されることとなるが、本発明の保護キャップ20においては、シール蓋23のみを切り離し、残った部分は、そのままジョイント60側に残存させる。即ち、保護キャップ20がジョイント60に固定されている状態で、シール蓋23の天板部31の外周部31aを押し上げてブリッジ35を破断させ、シール蓋23を筒状体21から切り離し、シール蓋23をジョイント60から取り外す(図6(b)参照)。次いで、保護キャップ20の残存部20’を下方に押し下げ(図6(c)参照)、これにより、ジョイント60の螺条63の上部分が開放され、カプラー等を用いて、このジョイント60に家屋内のガス管などの配管等を接続することができる。また、保護キャップ20の残存部20’では、環状突起30がジョイント60の下方部分のボス61の外面に係合するため、ガタツクことなく、しっかりとジョイント60に固定することとなる。
【0037】
このような本発明の保護キャップ20では、ジョイント60を介して各種機器を所定の配管に接続した状態においても、ICバンド10を備えた残存部20’がジョイント60に取り付けられているため、ICタグ10を効果的に利用することができる。即ち、機器を所定の配管に接続したときに、取り付け時等の情報をICタグ10(ICチップ5)に入力することができ、この情報を機器のメンテナンスのときに読み取り、これを利用することができる。また、メンテナンスを行ったときには、その日付等の情報をICタグ10に入力することができ、次のメンテナンス等に際して、この情報を利用することができる。特にガス湯沸かし器などのガス器具は、所定期間毎にガス洩れ、機器疲労などの点検が必要であり、上述した情報の利用は、極めて有用である。
【0038】
また、本発明においては、筒状体21を取り囲むように設けられている筒状バンド25にICタグが設けられていることから、上記以外にも種々の利点が達成される。
【0039】
例えば、筒状バンド21が筒状体21の下方部分を覆っているため、該筒状バンド25がクッションとして機能し、従って、本発明の保護キャップ20は、極めて保護効果が高く、ジョイント60の外面(特に螺条63)の破損等を有効に防止することができる。しかも、この筒状バンド25は、ジョイント60に配管が接続されたときにもジョイント60に残存している残存部20’に存在している。このため、本発明の保護キャップ20は、常時、ジョイント60の保護部材として高い保護機能を示す。
【0040】
また、筒状バンド25は、環状連結部38の長さの分だけジョイント60に直接接触している筒状体21と離隔している。このため、一般に金属製であるジョイントと、筒状バンド25の内面に取り付けられているICタグ10との間に、情報の送受信を確実に行い得るに十分な間隔を確保でき、金属による送受信妨害を有効に回避することができる。即ち、保護キャップ20(或いは残存部20’)がジョイント60に取り付けられたままの状態でのICタグ10(ICチップ5)への情報の入力及び読取りを、金属により妨害されることなく、有効に行うことができる。
【0041】
さらに、筒状バンド25は、筒状体21よりも大径であるため、ICバンド10の長さを長くすることができ、ICタグ10中のアンテナ3の長さを長く設定できるため、情報の送受信(入力或いは読取り)を確実に行なうことができる。例えば、図3から理解されるように、この例では、筒状バンド25の内面の180度の領域にICタグ10が存在しているが、このような長さのICタグ10を筒状体21に設けた場合には、ICタグ10は、筒状体21のほぼ全周にわたって存在していることとなり、この結果、ICタグ10中のアンテナ3が効果的に機能しなくなってしまい、ICチップ5への情報の入力或いは読み取りが困難となってしまう。即ち、本発明では、筒状バンド25が大径であるため、ICタグ10の長さ(アンテナ3の長さ)を長くすることにより生じる不都合を有効に回避することができる。
【0042】
上述した本発明の保護キャップ20において、筒状体21の径などは、ジョイント60の外径に応じて決定されるが、筒状バンド25の内径(環状連結部38の長さ)は、筒状バンド25の内面に取り付けられるICタグ10とジョイント60との間に、情報の送受信が妨害されない程度の間隔(通常、3mm以上)が保持されるように設定される。また、筒状バンド25の内面の180度以下の領域にICタグ10が存在するように、筒状バンド25の径を設定するのがよい。この領域が180度を超えると、ICタグ10への情報の入力や読み取りが困難となるおそれがあるからである。
【0043】
また、本発明では、ICタグ10への情報の読み取りや情報の入力をスムーズに行うために、ICタグ10が存在する領域を外部から明確に認識し得るようにすることが好ましい。このために、筒状バンド25の外面にICタグ10の存在を示すマークを設けることも考えられるが、この場合には、成形時にICタグ10の位置決めをしなければならないなどの面倒な作業が必要となってしまう。従って、本発明では、この保護キャップ20(特に筒状バンド25)を、例えば着色剤やフィラーが配合されていない透明乃至半透明の樹脂材料により形成することが好適である。
【0044】
さらに本発明においては、筒状体21の内面に形成されている環状突起30は、螺条とすることも可能である。但し、この場合には、ジョイント60の外面に十分な長さで螺条63が形成されていることが必要である。螺条63の長さが短いと、シール蓋23を切り離した後の筒状体21を十分な長さで降下させることができず、螺条63の開放部分が短くなってしまい、カプラー等による配管の接続が制限されてしまうおそれがあるからである。
【0045】
さらに、上述した例では、ICタグ10をしっかりと保持するためのリブ39が多数設けられており、筒状バンド25の内面の全周にわたって分布しているが、かかるリブ39は、ICバンド10が取り付けられる領域に限定して設けることも勿論可能である。但し、成形上の観点からは、筒状バンド25の内面の全周にわたって、多数のリブ39が均等に分布していることが好ましい。
【0046】
上記で説明したように、本発明の保護キャップは、ICタグの機能を効果的に利用することができ、ジョイントを備えた機器のメンテナンスなどを有効に行うことが可能となるばかりか、ジョイントに対する保護機能も極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明で用いるICタグの概略断面を示す図。
【図2】本発明の保護キャップの半断面側面図。
【図3】図2の保護キャップのA−A断面を示す平面断面図。
【図4】図3のB部における側断面を拡大して示す図。
【図5】図3のC部における側断面を拡大して示す図。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の使用方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
10:ICタグ
20:保護キャップ
21:筒状体
23:シール蓋
25:筒状バンド
35:ブリッジ
39:リブ
60:ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管端部に接続するジョイントを保護するためのプラスチック製保護キャップであって、両端開口の筒状体と、該筒状体の上端に破断可能なブリッジを介して且つ上端の開口を覆うように設けられたシール蓋と、該筒状体を取り囲むように環状連結部を介して該筒状体に連結された筒状バンドとからなり、
前記筒状体の内面には前記ジョイントの外面と係合する係合部材が形成されており、
前記筒状バンドには、ICタグが取り付けられていることを特徴とする保護キャップ。
【請求項2】
前記ICタグは、前記筒状バンドの周方向に延びている帯状形状を有していると共に、前記ICタグは、前記筒状バンドの内面に設けられている請求項1に記載の保護キャップ。
【請求項3】
前記筒状バンドの内面には、軸方向に延びているリブが設けられており、該リブは、前記ICタグの少なくとも一部分を間に挟んで該筒状バンド内面と一体に形成されている請求項2に記載の保護キャップ。
【請求項4】
前記リブは、複数形成されている請求項3に記載の保護キャップ。
【請求項5】
前記筒状バンドは、透明乃至半透明に形成されている請求項3に記載の保護キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−73551(P2009−73551A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246804(P2007−246804)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】