説明

ジンセノサイドF1または化合物Kを含有する皮膚外用剤組成物

本発明は、人参の主要な代謝産物であるジンセノサイド(Ginsenoside)F1(20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサトリオール;以下、「ジンセノサイドF1」という)または化合物K(20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサダイオール;以下、「化合物K」という)を有効成分とするゼラチナーゼの生合成抑制剤;及びこれを含有する優れた表皮真皮境界部の分解抑制及び生成促進効果と保護効果を有する皮膚老化防止用化粧料及び医薬料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人参の主要な代謝産物であるジンセノサイド(Ginsenoside)F1(20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサトリオール)または化合物K(20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサジオール)を主要な有効成分とするゼラチナーゼ生合成抑制剤;及びこれを含む表皮と真皮の境界部(以下、「表皮真皮境界部」という)の分解抑制及び生成促進効果に優れた皮膚老化防止用化粧料及び医薬料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の一次防御膜であって、体内の諸器官を温度及び湿度変化や紫外線、公害物質など外部環境の刺激から保護し、且つ、体温調節などの生体恒常性の維持に重要な役割をしている。しかし、外部から受ける過度な物理的・化学的刺激、紫外線、ストレス及び栄養欠乏などは、皮膚の正常機能を低下させ、弾力損失、角質化、シワ生成などの皮膚老化現象を促進させるようになるが、特に、表皮真皮境界部は、紫外線により激しく損傷を受ける。
【0003】
人間の皮膚において、老化による変化に関して検討した結果によれば、紫外線露出部皮膚では、境界部が分解され、多重となる多重化、又は断たれる断裂などの表皮真皮境界部の構造変化が20代後半から既に発生すると言われている。また、紫外線Bの長期照射により誘導されたマウスシワモデルを使用した研究では、紫外線Bの照射により表皮で生成されたゼラチナーゼが表皮真皮境界部の損傷、真皮の損傷、そしてシワの形成を引き起こす可能性があることが明らかにされた。但し、紫外線を多く受けない非露出部皮膚では、高齢者の場合にも、このような変化がほとんど観察されないと報告されている。したがって、このような既存の検討結果によって、人間の紫外線露出部皮膚の表皮では、ゼラチナーゼ (gelatinase、MMP−2、−9)の生成が誘導され、表皮真皮境界部の傷害に関与されるものと予測することができる。
【0004】
ゼラチナーゼ(MMP−2、−9)は、表皮真皮境界部の構成成分である4型コラーゲン、7型コラーゲン及びその他の細胞外基質成分を分解する酵素である。ゼラチンザイモグラフィ法(Gelatin zymography)及び酵素免疫法(ELISA)を用いた既存の分析結果によれば、MMP−2とMMP−9の両方が紫外線露出部表皮で検出されたと言われる。また、前記分析で、額の凍結皮膚では、皮膚中のゼラチナーゼ活性が表皮基底層及び有棘層の付近に存在し、顔面などの紫外線露出部皮膚の表皮でも、ゼラチナーゼが存在することが明らかにされた。したがって、紫外線が表皮基底細胞でのゼラチナーゼ生成を誘導し、その一部が真皮境界部の破壊に作用し、残りが表皮まで到達するという事実を予想できる。
【0005】
マウスに紫外線を長期照射して製作したシワモデルにおいてシワ形成機作に関して検討した結果をみれば、紫外線Bを長期照射した皮膚では、ゼラチナーゼ活性が表皮全層で検出された。表皮真皮境界部の傷害は、紫外線Bを照射してから5週目で観察され始め、7週目、10週目でその程度が高くなった。特に、10週目には、真皮境界部の断裂と一部での多重化が観察された。また、真皮乳頭部のコラーゲン繊維では、紫外線Bの長期照射により繊維密度の低下が観察された。したがって、誘導されたゼラチナーゼが表皮真皮境界部の傷害と乳頭真皮のコラーゲン分解に関与する可能性が示唆された(第96回FJセミナー集12−15、2002)。
【0006】
表皮真皮境界部が損傷される場合、境界部の扁平化、多重化、断裂などが生じ、シワが生成され、皮膚が垂れ、容易に傷が生じる可能性が高くなり、障壁(barrier)としての本然の機能が喪失されれば、外部環境の汚染物質を表皮真皮境界部で濾すことができないため、有害物質が真皮まで侵入する可能性が高くなり、皮膚が容易に損傷され得る。損傷された表皮真皮境界部を回復させたり、健康な状態に維持するためには、まず、その構成成分が正しく維持され得るようにしなければならない。年齢が増加するにつれて、生合成が減少すると知られた成分は、4型コラーゲン、7型コラーゲン、ラミニン10/11であり、変化がないものは、ラミニン5、生合成が増加するものは、分解に関連した酵素であるゼラチナーゼ(MMP−2、MMP−9)である(LavkerなどJ. Invest. Derm. 1979, 73:59-65, PouliotなどExp. Dermatol. 2002, 11:387-397)。
【0007】
このような紫外線や外部ストレスによる皮膚老化現象を防止し、健康で且つ弾力ある皮膚を維持するために、従来、各種動物、植物、微生物などから得た生理活性物質が強化された化粧品を使用することによって、皮膚の固有機能を維持させ、皮膚細胞を活性化させて、皮膚老化を効果的に抑制するための努力がなされてきた。
【0008】
化粧品の原料には、皮膚への副作用を誘発することなく、皮膚老化防止効果を有するものが適当であり、これらのうち人参抽出物に対する関心が非常に高くて、継続的な研究が進行されている。今までの人参抽出物に対する研究方向をみれば、人参抽出物(ginseng extract)から人参サポニン(ginseng saponin)の抽出、人参アグリコン(ginseng aglycon)の製造及び人参サポニンの精製を通じて人体内部での主要な代謝産物であるジンセノサイドF1または化合物Kを製造、分離、精製する方向に展開された。
【0009】
人参サポニンは、ダマラン(dammaran)タイプのトリテルペン(triterpene)である非糖部のR1、R2、R3位置のアルコール性OH基にグルコース(glucose)、ラムノース(rhamnose)、キシロース(xylose)及びアラビノース(arabinose)のような糖類がエーテル結合された構造を有し、現在まで人参で合計29種が明らかにされた。前記人参サポニンの各成分は、1964年Shibataが人参に含有された配糖体という意味でジンセノサイド(ginsenoside)と命名し、薄層クロマトグラフィー(TLC)により分離された移動距離の順にオレアナン(oleanane)系サポニンであるジンセノサイド−Roとジンセノサイド−Ra、−Rb1、−Rb2、−Rc、−Rd、−Re、−Rf、−Rg1、−Rg2、−Rg3及びRhなどと命名した。
【0010】
このような人参サポニンは、750余種の植物に含有された他の植物のサポニンとは化学構造が異なるだけでなく、薬理効能も異なるものであることが判明された。特に、人参サポニンは、薬性が非常に温和であり、過量投与による毒性がないだけでなく、溶血作用もほとんどないことが明らかにされた。また、人参サポニンを老化抑制剤の原料として応用するために、人参サポニンの効能を維持し、特に皮膚透過性を増加させた生物切換(bioconversion)された人参アグリコン(aglycon)の皮膚での効能が確認された。
【0011】
前述したような人参抽出物及び人参サポニンを利用した事例として、化粧料(米国特許第5,565,207号、第5,567,419号、第5,578,312号、第5,663,160号、第5,626,868号、第5,753,242号、第5,747,300号、第5,853,705号、第6,027,728号、第6,063,366号、第6,221,372号、及び第6,228,378号)、医薬原料(米国特許第5,569,459号、第5,571,516号、第5,587,167号、第5,674,488号、第5,665,393号、第5,629,316号、第5,776,460号、第5,739,165号、第5,916,555号、第6,071,521号、第6,083,512号、及び第6,255,313号)及び分離、精製技術(米国特許第5,591,611号、第5,591,612号、第5,736,380号、第5,789,392号、第5,780,620号、第5,922,580号、第5,935,636号、第6,132,726号、第6,156,817号、及び第6,207,164号)などに関する多くの研究結果が報告された。
【0012】
しかし、人参サポニンは、ダマランタイプにR1、R2及びR3位置のアルコール性OH基に糖類がエーテル結合で連結された構造を有していて、親水性が大きく、分子量が大きくなるにしたがって、皮膚透過性及び吸水性が低くなり、人参サポニン自体の親水性性質に起因して皮膚の角質層を通過せず、人参サポニンが皮膚の内部に流入しがたいという問題点があった。一方、最近、サポニンの代謝物に関する研究が進行されつつ、サポニン自体よりは、サポニンが腸内細菌により分解された腸内細菌代謝物が人参サポニンの効能を示す活性本体であることが示唆されていて、また、人参のサポニン成分のうちアグリコンに糖(グルコース)が1つ付いた構造よりなるジンセノサイドRh1、Rh2及びF1と化合物Kなどが癌細胞増殖抑制作用、腫よう増殖抑制作用、抗ガン剤の抗癌活性増大作用などの薬理作用があるものと知られている。
【0013】
したがって、人参サポニンから糖の一部を除去することによって得られたジンセノサイドF1及び化合物Kを皮膚に効果的に導入させるための剤型化についての研究が行われ、それによる細胞増殖効果、コラーゲン生合成効果などの皮膚老化防止効果が証明された(韓国公開特許第2003−0060017号、第2003−0060018号)。
【0014】
一方、表皮真皮境界部に対する特許をみれば、“老化防止用化粧料組成物(韓国公開特許第2003−0066912号)”においてヌスビトハギ抽出物、“皮膚基底膜形成促進剤、人工皮膚形成促進剤及び人工皮膚の製造方法(韓国公開特許第2002−0019920号)”、“ラミニン−5生成促進剤及びインテグリン−α6β4生成促進剤を含有する組成物(日本公開特許第2003−226655号)”、“皮膚基底膜部活用組成物(日本国特許公開第2003−183121号、第2002−338460号)”、“皮膚基底膜形成促進剤、人工皮膚形成促進剤及び人工皮膚の製造方法(日本国特許公開第2001−269398号)”、“ラミニン−5及び基底膜構造の形成(日本国特許公開第2000−513220号)”などが公開されている。すなわちヌスビトハギ抽出物、米糠油、フェニルプロパノイドなどを表皮真皮境界部の再生用に使用した。しかし、人参成分に対しては、表皮真皮境界部に対する分解抑制及び生成促進効能と、皮膚シワ及び弾力の改善の用途として全然知られていない。
【非特許文献1】LavkerなどJ. Invest. Derm. 1979, 73:59-65, PouliotなどExp. Dermatol. 2002, 11:387-397
【特許文献1】米国特許第5,565,207号
【特許文献2】米国特許第5,567,419号
【特許文献3】米国特許第5,578,312号
【特許文献4】米国特許第5,663,160号
【特許文献5】米国特許第5,626,868号
【特許文献6】米国特許第5,753,242号
【特許文献7】米国特許第5,747,300号
【特許文献8】米国特許第5,853,705号
【特許文献9】米国特許第6,027,728号
【特許文献10】米国特許第6,063,366号
【特許文献11】米国特許第6,221,372号
【特許文献12】米国特許第6,228,378号
【特許文献13】米国特許第5,569,459号
【特許文献14】米国特許第5,571,516号
【特許文献15】米国特許第5,587,167号
【特許文献16】米国特許第5,674,488号
【特許文献17】米国特許第5,665,393号
【特許文献18】米国特許第5,629,316号
【特許文献19】米国特許第5,776,460号
【特許文献20】米国特許第5,739,165号
【特許文献21】米国特許第5,916,555号
【特許文献22】米国特許第6,071,521号
【特許文献23】米国特許第6,083,512号
【特許文献24】米国特許第6,255,313号
【特許文献25】米国特許第5,591,611号
【特許文献26】米国特許第5,591,612号
【特許文献27】米国特許第5,736,380号
【特許文献28】米国特許第5,789,392号
【特許文献29】米国特許第5,780,620号
【特許文献30】米国特許第5,922,580号
【特許文献31】米国特許第5,935,636号
【特許文献32】米国特許第6,132,726号
【特許文献33】米国特許第6,156,817号
【特許文献34】米国特許第6,207,164号
【特許文献35】韓国公開特許第2003−0060017号
【特許文献36】韓国公開特許第2003−0060018号
【特許文献37】韓国公開特許第2003−0066912号
【特許文献38】韓国公開特許第2002−0019920号
【特許文献39】日本公開特許第2003−226655号
【特許文献40】日本公開特許第2003−183121号
【特許文献41】日本公開特許第2002−338460号
【特許文献42】日本公開特許第2001−269398号
【特許文献43】日本公開特許第2000−513220号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような状況下で、本発明者らは、皮膚老化に影響を及ぼすいろいろな要因を効果的にコントロールする方法を研究し、人参ジンセノサイドF1または化合物Kを含有する外用剤を使用する場合、自然老化と光老化により発生する表皮真皮境界部の変性、断裂、多重化などの変化を防止したり、回復させることができることを発見した。すなわち、ジンセノサイドF1と化合物Kによる表皮真皮境界部の分解抑制及び生成促進作用は、表皮と真皮の結合力を強化させることができるので、このような成分を含むことによって、皮膚老化防止用化粧料及び医薬料を提供できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、ジンセノサイドF1と化合物Kを含有する皮膚老化防止用外用剤を提供する。また、本発明は、前記ジンセノサイドF1及び化合物Kを用いて皮膚の表皮真皮境界部の分解を抑制し、表皮と真皮の結合力を強化させることによって、皮膚老化を防止できる方法を提供する。
【0017】
具体的に、本発明は、人参の主要な代謝産物であるジンセノサイド(Ginsenoside)F1(20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサトリオール;以下、「ジンセノサイドF1」という)または化合物K(20−O−β−D−グルコピラノシル−20(S)−プロトパナキサダイオール;以下、「化合物K」という)を有効成分として含有するゼラチナーゼの生合成抑制剤;及びこれを含有する優れた表皮真皮境界部分解抑制及び生成促進効果と保護効果を有する皮膚老化防止用化粧料及び医薬料組成物を提供する。
【0018】
本発明は、ジンセノサイドF1、化合物K、またはこれらの混合物を含有する外用剤組成物を提供する。
【0019】
本発明は、ジンセノサイドF1及び化合物Kのうち少なくとも1種以上を含有するゼラチナーゼ生合成抑制剤を提供する。前記ゼラチナーゼは、好ましくは、MMP−2またはMMP−9である。
【0020】
本発明に係る前記ゼラチナーゼ抑制剤を含有する外用剤は、皮膚に使用する場合、皮膚の表皮真皮境界部を保護することができる。前記皮膚の表皮真皮境界部の保護効果によって皮膚老化防止及びシワ改善の効果を得ることができ、皮膚弾力の増進を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ジンセノサイドF1または化合物Kは、抑制剤または組成物の総重量に対して0.001〜10重量%が含有されることができる。好ましくは、0.01〜5重量%の量で含有される。
【0022】
本発明に使われたジンセノサイドF1及び化合物Kの構造は、下記化学式1及び化学式2で表現される。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
本発明で使われたジンセノサイドF1及び化合物Kは、人参精製サポニンを酸、アルカリまたは酵素などで加水分解し、人参サポニンから糖を除去した後、反応液をシリカコラムに通過して製造することができる。ここで、使用可能な酵素には、サポニンの糖結合を分解するβ−グルコース分解酵素(β−glucosidase)、α、β−アラビノース分解酵素(α、β−arabinosidase)、α、β−ラムノース分解酵素(α、β−rhamnosidase)などエキソ糖結合分解酵素及びこれらを含有している複合酵素剤などを挙げることができる。
【0026】
本発明では、ジンセノサイドF1及び化合物Kを用いて表皮真皮境界部を保護することによって、皮膚シワ、弾力など皮膚の老化につれて発生する諸症状を効果的に改善することができる。ジンセノサイドF1及び化合物Kの使用量は、in vitro実験及びin vivo実験を根拠にして、組成物の総重量に対して0.001〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%が適当である。
【0027】
本発明の外用剤組成物は、シワ及び弾力を改善させる目的で使われるもので、その剤型において特に限定されるものではなく、例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ジェルまたは皮膚粘着タイプ化粧料の剤型を有する化粧料組成物であることができ、また、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤のような経皮投与型剤型であることができる。
【0028】
また、各剤型の外用剤組成物において、前述のような必須成分以外の他の成分は、その他の外用剤の剤型または使用目的などに応じて当業者が困難性無しに適宜選定して配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び試験例により本発明の構成及び作用効果を具体的に説明する。しかし、本発明がこれらの例に限定されるわけではない。
【0030】
[参考例1]人参精製サポニンの調製
紅参(KT&G;韓国タバコ人参公社−6年根紅参)2Kgに、水を含むエタノール4Lを入れ、77℃で3回還流抽出した後、15℃で6日間沈積させた。その後、濾過布を用いた濾過と遠心分離を通じて残渣と濾液を分離し、分離された濾液を減圧濃縮して得られたエキスを水に懸濁した後、エーテル1Lで5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500mlで3回抽出した。得られた1−ブタノール層を5%KOHで処理した後、蒸留水で洗浄し、減圧濃縮して1−ブタノールエキスを得、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加して、生成された沈殿物を乾燥することによって、人参精製サポニン100g(収率:5%)を得、同一操作を10回繰り返して1Kgの人参精製サポニンを準備した。
【0031】
下記実施例のジンセノサイドF1及び化合物Kの抽出及び確認は、韓国特許出願第2001−67964号(公開番号10-2003-0037005)を参考にした。
【0032】
[実施例1]酸加水分解方法によるジンセノサイドF1の調製
参考例1で得た人参精製サポニン100gに20倍(v/w)の硫酸/50%エタノール溶液(v/w)を加え、100℃水浴槽で6時間加熱還流させて、人参サポニンに結合された糖結合を加水分解させた。反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣に蒸留水(1,000ml)を加えて懸濁させた後、同量のエーテルで3回抽出した。得られたエーテル層を蒸留水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)で脱水、濾過、濃縮して、粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノールの比率を9:1から4:1に変化させる方法で極性を増加させながら分離)により分離し、各分画に対して薄膜クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/水=65/35/10、Rf=0.65)を用いてジンセノサイドF1の分画を分離、回収し、最終的に、ジンセノサイドF12400mg(収率2.4%)を得た。
【0033】
[実施例2]酵素分解方法を用いた化合物Kの調製
参考例1で得られた人参精製サポニン100gを1,000mlのシトレート緩衝溶液(pH5.5)に溶解させ、これにペニシリウム属から分離したナリンジナーゼ酵素1gを添加し、40℃水浴上で48時間攪拌させながら反応させた。薄層クロマトグラフィーにより周期的に確認し、基質が完全に消失されれば、熱水中で10分間加熱して反応を終了させた後、反応液は、同量のエーテルで3回抽出、濃縮した。得られた生成物をシリカゲルコラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノールの比率を9:1から4:1に変化させる方法で極性を増加させながら分離)により分離し、各分画に対して薄膜クロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール/水=65/35/10、Rf=0.73)を用いて化合物Kの分画を分離、回収し、最終的に、化合物K4400mg(収率4.4%)を得た。
【0034】
[試験例1]紫外線によるゼラチナーゼA(MMP−9)とゼラチナーゼB(MMP-2)の生合成抑制効能測定
人体の角質形成細胞を104/wellの濃度で24孔平板培養器に培養し、24時間後に紫外線Bを30mJ/cm2で照射した後、実施例1及び実施例2で分離した化合物を各々0.1ppm、1ppm、10ppm含む培地に交替した。培養2日目、上澄み液を収穫し、ゼラチンゼルを利用したザイモグラフィ(zymography)を行った後、生成されたMMP−2とMMP−9の量をデンシトメータで測定し定量した。その結果は、実施例1及び実施例2で分離した化合物を含まない対照群培地(以下、「対照群」という)でのMMP−2とMMP−9の量を100にして比較値を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から、ジンセノサイドF1及び化合物Kを含有する本発明の組成物は、皮膚基質である4型コラーゲンと7型コラーゲンを分解する酵素であるMMP−2とMMP−9の生合成を減少させることができ、表皮真皮境界部の分解を防止できる成分であることが分かる。
【0037】
[試験例2]皮膚細胞の4型コラーゲン生合成効能測定
人体の角質形成細胞を5X104/wellの濃度で24孔平板培養器に培養した後、実施例1及び実施例2で分離した化合物を各々0.1pp、1ppm、10ppm含む培地に交替した。培養24時間後、上澄み液を収穫(harvest)し、ドットブロット(Dot Blot)方法を用いて生成された4型コラーゲンの量を定量した。その結果は、対照群を100にして比較値を表2に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2から、ジンセノサイドF1及び化合物Kを含有する本発明の組成物は、4型コラーゲン生合成を濃度依存的に増加させることが分かる。
【0040】
[試験例3]皮膚細胞の7型コラーゲン生合成効能測定
人体の繊維芽細胞を104/wellの濃度で24孔平板培養器に培養した後、実施例1及び実施例2で分離した化合物を各々0.1pp、1ppm、10ppm含む培地に交替した。培養24時間後、上澄み液を収穫(harvest)し、ドットブロット(Dot Blot)方法を用いて生成された7型コラーゲンの量を定量した。その結果は、対照群を100にして比較値を表3に示した。
【0041】
【表3】

【0042】
[試験例4]皮膚細胞のラミニン10/11生合成効能測定
人体の角質形成細胞を5X104/wellの濃度で24孔平板培養器に培養した後、実施例1及び実施例2で分離した化合物を各々0.1pp、1ppm、10ppm含む培地に交替した。培養24時間後、上澄み液を収穫(harvest)し、ウェスタンブロット(Western Blot)方法を用いて生成されたラミニン10/11の量を定量した。その結果は、対照群を100にして比較値を表4に示した。
【0043】
【表4】

【0044】
[試験例5]無毛マウスで表皮真皮境界部の変化測定
本発明の組成物により紫外線による表皮真皮境界部の変化を確認するために、下記表5の組成比に基づいて外用剤を栄養クリームの剤型で製造し、各々剤型例1〜3と命名した。
【0045】
【表5】

【0046】
試験のために、無毛マウスの背中部位に前記剤型例1〜3及び比較剤型例1を2週間に亘って1週間に5回塗布し、その後、12週間は、1週間に紫外線を3回照射しながら、剤型例1〜3及び比較剤型例1を5回塗布した後、生検し、皮膚真皮境界部の変化を電子顕微鏡を用いて測定した。
その結果、紫外線を照射しながら、ジンセノサイドF1とKを塗布した場合、比較剤型例1に比べて表皮真皮境界部の変形、分裂、単離、多重化症状がほとんど生じないことを観察することができるので、ジンセノサイドF1と化合物Kが皮膚のシワを減少させ、弾力を強化させることができたことを確認することができ、その結果を下記表6に示した。
【0047】
【表6】

【0048】
[試験例6]人間でのシワ改善効果(画像分析)
前記表5の比較剤型例1と剤型例1〜3に対してシワ改善効果を確認するために、次のように評価した。30代女性80人を各々比較剤型例1及び剤型例1、2及び3群として20人ずつ4組みに分けて毎日1回8週間塗布するようにした後、シリコンを用いてレプリカを取ってシワの状態をvisiometer(SV600, Courage and Khazaka Electronic GmbH, Germany)で測定して画像分析し、表7に塗布8週後の各々のパラメータ値から塗布前パラメータ値を引き抜いたものの平均を示した。
【0049】
【表7】

【0050】
前記表6に示されるように、剤型例1〜3の外用剤組成物は、皮膚シワ改善効果に非常に優れていることが分かり、特に剤型例3の場合、その効果が最も優れていた。
【0051】
[試験例7]人体で皮膚弾力改善測定
前記表5に基づいて製造した栄養クリームの皮膚弾力改善効果を測定した。温度24−26℃、湿度75%条件で30才以上の健康な女性40人を4組みに分け、各組みに比較剤型例1と剤型例1〜3の栄養クリームを毎日2回ずつ12週間顔面に塗布した後、皮膚弾力測定機(Cutometer SEM 575, Courage and Khazaka Electronic GmbH, Germany)を用いて皮膚弾力を測定し、その結果を表8に示した。表8の結果は、Cutometer SEM 575のΔR8(R8(左側)−R8(右側))値に記載したが、R8値は、皮膚粘弾性(viscoelasticity)の性質を示す。これと別途に試験を終了した時点に、試験対象者にとってアンケート用紙を作成するようにし、機器的な評価と同時に、主観的な効能評価をも実施した。
【0052】
【表8】

【0053】
表8のように、ジンセノサイドF1及び化合物Kが含有された剤型例1、2及び3の物質を塗布した群では、比較剤型例1を塗布した群に比べて皮膚弾力性がさらに増加し、特に、剤型例3の場合、優れた弾力増加を示した。
【0054】
これと同時に、アンケート調査を通じて、剤型例1〜3を塗布した場合、皮膚弾力性が改善されることを確認することができ、特に、剤型例3の場合、アンケートでも優れた結果を示した。結果を下記表9に示した。
【0055】
【表9】

【0056】
以下、本発明の他の剤型例を説明するが、本発明に係るジンセノサイドF1、化合物Kを含有する外用剤の剤型がこれらの例に限定されるものではなく、これらは、いずれもゼラチナーゼ の生合成を抑制する効能を有する。
【0057】
【表10】

【0058】
【表11】

【0059】
【表12】

【0060】
【表13】

【0061】
【表14】

【0062】
以上、説明したように、ジンセノサイドF1と化合物Kのうち1種以上を含有することによって、ゼラチナーゼ (MMP−2、MMP−9)の生合成を減少させ、4型コラーゲン、7型コラーゲン、ラミニン10/11の生合成を増加させ、表皮真皮境界部の分解を抑制し、生成を促進させ、皮膚老化の諸症状であるシワ及び弾力を改善する抗老化効能を有する皮膚外用剤組成物として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンセノサイドF1及び化合物Kのうち1種以上を有効成分として含有するゼラチナーゼの生合成抑制剤。
【請求項2】
前記ゼラチナーゼは、MMP−2またはMMP−9であることを特徴とする請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のゼラチナーゼの生合成抑制剤を含有する皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
前記皮膚外用剤は、表皮真皮境界部の分解抑制または生成促進用であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記皮膚外用剤は、皮膚シワ改善または皮膚弾力改善用であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−518795(P2007−518795A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550920(P2006−550920)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001305
【国際公開番号】WO2005/070436
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】