説明

スイッチ制御装置及びこれを用いたモータ駆動装置

【課題】本発明は、コストの低減や信頼性の向上を実現することが可能なスイッチ制御装置、及び、これを用いたモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るスイッチ制御装置1は、入力信号INに基づいてスイッチ制御信号を生成するコントローラが集積化された第1半導体チップ10と、前記スイッチ制御信号に基づいてスイッチNUの駆動制御を行うドライバが集積化された第2半導体チップ20と、第1半導体チップ10と第2半導体チップ20との間を直流的に絶縁しながら前記スイッチ制御信号などの受け渡しを行う直流絶縁素子が集積化された第3半導体チップ30と、を一のパッケージに封止して成る構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ制御装置及びこれを用いたモータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、スイッチ制御装置の一従来例を示すブロック図である。
【0003】
図8(a)、(b)に示す通り、従来のスイッチ制御装置は、入力信号INに基づいてスイッチ制御信号を生成するコントローラが集積化されたコントローラチップ110と、前記スイッチ制御信号に基づいてスイッチNUの駆動制御を行うドライバが集積化されたドライバチップ210と、を一のパッケージ100に封止して成り、コントローラチップ110側、もしくは、ドライバチップ120側の配線層にトランスを形成することで、両チップの直流耐圧を確保する構成とされていた。
【0004】
図9は、トランスが形成される半導体チップ(図8(a)であればコントローラチップ110、図8(b)であればドライバチップ120)の上面図(a)、及び、X−X’断面図(b)である。
【0005】
なお、上記に関連する従来技術の一例として、特許文献1、2を挙げることができる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0081280号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0230837号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来構成を採用した場合には、トランスが形成される半導体チップを一般の低耐圧プロセス(数[V]耐圧〜数十[V]耐圧)で作成することができず、専用の高耐圧プロセス(数[kV]耐圧)を用いる必要があった。
【0007】
また、トランスが形成される半導体チップでは、トランス非形成領域について、トランス形成領域と同一の耐圧を確保しておかなければならず、トランス非形成領域に敷設される配線層の高耐圧化が必要となるため、製造コストの増大が招かれていた。
【0008】
また、トランスが形成される半導体チップには、トランス形成領域下にも、トランジスタや抵抗などの回路素子を形成するレイヤが必要であるため、製造コストの増大が招かれていた。
【0009】
また、トランスが形成される半導体チップでは、トランス形成領域の厚みと整合するように、トランス非形成領域にも分厚い配線層や絶縁膜を形成しなければならないため、応力などの影響を受けて、回路素子の信頼性が低下するおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑み、コストの低減や信頼性の向上を実現することが可能なスイッチ制御装置、及び、これを用いたモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るスイッチ制御装置は、入力信号に基づいてスイッチ制御信号を生成するコントローラが集積化された第1半導体チップと、前記スイッチ制御信号に基づいてスイッチの駆動制御を行うドライバが集積化された第2半導体チップと、第1半導体チップと第2半導体チップとの間を直流的に絶縁しながら前記スイッチ制御信号などの受け渡しを行う直流絶縁素子が集積化された第3半導体チップと、を一のパッケージに封止して成る構成(第1の構成)とされている。
【0012】
なお、上記第1の構成から成るスイッチ制御装置において、前記パッケージは、相対する2辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ、第2半導体チップ、及び、第3半導体チップは、前記ピンの配列方向に対して平行に並べられている構成(第2の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1の構成から成るスイッチ制御装置において、前記パッケージは、相対する2辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ、第2半導体チップ、及び、第3半導体チップは、前記ピンの配列方向に対して垂直に並べられている構成(第3の構成)にしてもよい。
【0014】
また、上記第1の構成から成るスイッチ制御装置において、前記パッケージは、4辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ、第2半導体チップ、及び、第3半導体チップは、前記パッケージの対角線方向に対して平行に並べられている構成(第4の構成)にしてもよい。
【0015】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成るスイッチ制御装置において、第3半導体チップは、前記直流絶縁素子として、第1半導体チップから第2半導体チップに前記スイッチ制御信号を伝達する第1直流絶縁素子のほか、第2半導体チップから第1半導体チップにウォッチドッグ信号を伝達する第2直流絶縁素子と、第2半導体チップから第1半導体チップに第1フォルト信号を伝達する第3直流絶縁素子と、第1半導体チップから第2半導体チップに第2フォルト信号を伝達する第4直流絶縁素子と、が集積化されている構成(第5の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成るスイッチ制御装置において、第1半導体チップ及び第2半導体チップは、それぞれ、半導体基板と、前記半導体基板上に集積化された回路素子と、前記回路素子上に形成された配線層及び絶縁膜と、を有して成り、第3半導体チップは、半導体基板と、前記半導体基板上に集積化された直流絶縁素子と、を有して成る構成(第6の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成るスイッチ制御装置において、第1半導体チップ及び第3半導体チップは、第1アイランド上に搭載されており、第2半導体チップは、第2アイランド上に搭載されている構成(第7の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記第7の構成から成るスイッチ制御装置において、第1アイランド及び第2アイランドは、いずれも非磁性素材から成る構成(第8の構成)にするとよい。
【0019】
また、上記第1〜第8いずれかの構成から成るスイッチ制御装置において、前記直流絶縁素子は、トランスである構成(第9の構成)にするとよい。
【0020】
また、本発明に係るモータ駆動装置は、モータ駆動電圧の印加端とモータコイルの一端との間に接続されるハイサイドスイッチの制御手段として、上記第1〜第9いずれかの構成から成るスイッチ制御装置を有して成る構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスイッチ制御装置、及び、これを用いたモータ駆動装置であれば、コストの低減や信頼性の向上を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明に係るスイッチ制御装置の一構成例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本発明に係るスイッチ制御装置1は、第1半導体チップ10と、第2半導体チップ20と、第3半導体チップ30と、を一のパッケージに封止して成る。
【0024】
第1半導体チップ10は、直流電圧源E1から第1電源電圧VCC1(GND1基準で5[V]や3.3[V]など)の供給を受けて駆動され、入力信号INに基づいてスイッチ制御信号を生成するコントローラが集積化されたコントローラチップである。なお、第1半導体チップ10の耐圧は、第1電源電圧VCC1(GND1基準)を考慮して、適切な耐圧(例えば7[V]耐圧)に設計すればよい。
【0025】
第2半導体チップ20は、直流電圧源E2から第2電源電圧VCC2(GND2基準で10〜30[V])の供給を受けて駆動され、第1半導体チップ10から第3半導体チップ30を介して入力される前記スイッチ制御信号に基づいて、一端に数[kV]の高電圧が印加されるスイッチNUの駆動制御を行うドライバが集積化されたドライバチップである。なお、第2半導体チップ20の耐圧は、第2電源電圧VCC2(GND2基準)を考慮して、適切な耐圧(例えば40[V]耐圧)に設計すればよい。
【0026】
第3半導体チップ30は、第1半導体チップ10と第2半導体チップ20との間を直流的に絶縁しながら前記スイッチ制御信号の受け渡しを行うトランスが集積化されたトランスチップである。なお、トランスに代えて他の直流絶縁素子(フォトカプラなど)を用いても構わない。
【0027】
スイッチNUとしては、Nチャネル型のMOS[Metal Oxide Semiconductor]電界効果トランジスタ、若しくは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT[Insulated Gate Bipolar Transistor])などを用いることができる。
【0028】
上記したように、本発明に係るスイッチ制御装置1は、コントローラが集積化される第1半導体チップ10やドライバが集積化される第2半導体チップ20とは別に、トランスのみを搭載する第3半導体チップ03を独立に有して成り、これらを一のパッケージに封止して成る構成とされている。
【0029】
このような構成とすることにより、第1半導体チップ10、及び、第2半導体チップ20については、いずれも一般の低耐圧プロセス(数[V]耐圧〜数十[V]耐圧)で作成することが可能となるので、専用の高耐圧プロセス(数[kV]耐圧)を用いる必要がなくなり、製造コストを低減することが可能となる。
【0030】
また、第1半導体チップ10、及び、第2半導体チップ20については、いずれも実績のある既存プロセスで作成することが可能であり、新たに信頼性試験を行う必要がないので、開発期間の短縮や開発コストの低減に貢献することができる。
【0031】
また、トランス以外の直流絶縁素子を用いる場合であっても、第3半導体チップ30のみを載せ換えることにより、容易に対応することが可能となるので、コントローラチップやドライバチップまで開発し直す必要がなくなり、開発期間の短縮や開発コストの低減に貢献することができる。
【0032】
図2は、第1半導体チップ10、第2半導体チップ20、及び、第3半導体チップ30の断面図である。
【0033】
図2に示す通り、本発明に係るスイッチ制御装置1において、第1半導体チップ10、及び、第2半導体チップ20は、それぞれ、半導体基板と、前記半導体基板上に集積化された回路素子と、前記回路素子上に形成された配線層及び絶縁膜と、を有して成り、第3半導体チップ30は、半導体基板と、前記半導体基板上に集積化されたトランス(直流絶縁素子)と、を有して成る構成とされている。
【0034】
このように、本発明に係るスイッチ制御装置1であれば、トランスが形成される第3半導体チップ30には、トランス形成領域下にトランジスタや抵抗などの回路素子を形成するレイヤが不要であり、配線層や絶縁膜のレイヤのみを形成すれば足りるため、製造コストを低減することが可能となる。
【0035】
また、本発明に係るスイッチ制御装置1であれば、第1半導体チップ10、及び、第2半導体チップ20のいずれにおいても、回路素子上に不要に分厚い高耐圧の配線層や絶縁膜を形成する必要がないので、応力などの影響を受けて、回路素子の信頼性が低下するおそれを回避することが可能となる。
【0036】
次に、パッケージ内におけるチップ配列について、図3〜図5を参照しながら、詳細に説明する。
【0037】
図3は、パッケージ内におけるチップ配列の第1例を示すブロック図である。図3に示すように、本発明に係るスイッチ制御装置1において、パッケージは、相対する2辺にそれぞれ複数のピンが配列されるもの(例えば、SOP[Small Outline Package]パッケージ)であり、第1半導体チップ10、第2半導体チップ20、及び、第3半導体チップ30は、前記ピンの配列方向に対して平行(紙面の縦方向)に並べられている。
【0038】
このようなチップ配列を採用することにより、第1半導体チップ10や第2半導体チップ20が大型化した場合であっても、パッケージの長辺サイズを適切に延長することにより、パッケージの短辺サイズを変えることなく、第1半導体チップ10、第2半導体チップ20、及び、第3半導体チップ30をパッケージに収めることができるので、スイッチ制御装置1の多機能化や高機能化に伴って、パッケージの規格を変更せずに済む。
【0039】
なお、上記のチップ配列を採用する場合、第1半導体チップ10に接続されるピンT1と第2半導体チップ20に接続されるピンT2との間のピン間隔d1は、ピンT1相互間(或いはピンT2相互間)のピン間隔d2よりも長く設計することが望ましい。このようなピン設計を行うことにより、ピンT1とピンT2との短絡を防止することができる。
【0040】
図4は、パッケージ内におけるチップ配列の第2例を示すブロック図である。図4に示すように、本発明に係るスイッチ制御装置1において、パッケージは、先述の第1例と同じく、相対する2辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ10、第2半導体チップ20、及び、第3半導体チップ30は、前記ピンの配列方向に対して垂直(紙面の横方向)に並べられている。
【0041】
このようなチップ配列を採用することにより、第1半導体チップ10に接続されるピンT1と第2半導体チップ20に接続されるピンT2を相対する2辺に分配して配列することができるので、ピン間隔を最小限に維持したまま、ピンT1とピンT2との短絡を防止することが可能となる。
【0042】
図5は、パッケージ内におけるチップ配列の第3例を示すブロック図である。図5に示すように、本発明に係るスイッチ制御装置1において、パッケージは、4辺にそれぞれ複数のピンが配列されるもの(例えばQFP[Quad Flat Package]パッケージ)であり、第1半導体チップ10、第2半導体チップ20、及び、第3半導体チップは、パッケージ1の対角線方向に対して平行(紙面の斜め方向)に並べられている。
【0043】
このようなチップ配列を採用することにより、第1半導体チップ10に接続されるピンT1と第2半導体チップ20に接続されるピンT2を相対する2辺ずつに分配して配列することができるので、ピン間隔を最小限に維持したまま、ピンT1とピンT2との短絡を防止することが可能となる。
【0044】
また、図3〜図5で示すように、本発明に係るスイッチ制御装置1において、第1半導体チップ10及び第3半導体チップ30は、第1アイランド40上に搭載されており、第2半導体チップ20は、第2アイランド50上に搭載されている。このような構成とすることにより、第1アイランド40を低圧側アイランド、第2アイランド50を高圧側アイランドというように、互いに電源系を分離して用いることが可能となる。なお、第1アイランド40及び第2アイランド50は、いずれも非磁性素材(例えば銅)から成るが、磁性素材(例えば鉄)を用いても構わない。
【0045】
次に、ハイブリッド自動車に搭載されるモータ駆動装置に本発明を適用した構成を例に挙げて詳細な説明を行う。
【0046】
図6は、本発明に係るモータ駆動装置の一構成例を示すブロック図である。
【0047】
図6に示すように、本発明に係るモータ駆動装置は、ハイサイドスイッチNUの制御手段としてスイッチ制御装置1を有するほか、エンジンコントロールユニット2(以下ではECU[Engine Control Unit]2と呼ぶ)と、駆動回路3と、直流電圧源E1及びE2と、キャパシタC1及びC2と、抵抗R1〜R4と、を有して成る。
【0048】
スイッチ制御装置1は、先にも述べたように、第1半導体チップ10と、第2半導体チップ20と、第3半導体チップ30と、を一のパッケージに封止して成る。
【0049】
ECU2は、エンジン運転及びモータ運転における電気的な制御を総合的に行うための手段であり、スイッチ制御装置1との間で、各種信号(IN、RST、RDY、FLT)のやり取りを行うマイクロコントローラである。
【0050】
駆動回路3は、出力信号OUTにハイサイドスイッチNUの駆動能力を持たせるべく、出力信号OUTの立上がり/立下がり時間(スルーレート)を調整するインピーダンス回路である。
【0051】
ハイサイドスイッチUH、及び、ローサイドスイッチULは、それぞれ、第1モータ駆動電圧VD1の印加端とモータコイルの一端との間、及び、第2モータ駆動電圧VD2の印加端とモータコイルの一端との間に接続され、各々のオン/オフ制御に応じて、モータ駆動電流の供給制御を行う手段である。なお、ハイブリッド自動車への搭載を鑑みると、ハイサイドスイッチUH、及び、ローサイドスイッチULとしては、Si半導体よりも消費電力が小さく、耐熱温度が高いSiC[Silicon Carbide]半導体を用いたMOS電界効果トランジスタを採用することが望ましい。ただし、ハイサイドスイッチNU、及び、ローサイドスイッチULの構成はこれに限定されるものではなく、Si半導体を用いたMOS電界効果トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタを採用しても構わない。
【0052】
第1半導体チップ10は、第1送信部11と、第1受信部12と、第2受信部13と、第2送信部14と、ロジック部15と、第1低電圧ロックアウト部16(以下では第1UVLO[Under Voltage Lock Out]部16と呼ぶ)と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタNa及びNbと、を有して成る。第2半導体チップ20は、第3受信部21と、第3送信部22と、第4送信部23と、第4受信部24と、ドライバ部25と、異常検知部26と、第2低電圧ロックアウト部27(以下では第2UVLO部27と呼ぶ)と、過電流保護部28(以下ではOCP[Over Current Protection]部28と呼ぶ)と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタP1と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN1〜N3と、を有して成る。第3半導体チップ30は、第1トランス31と、第2トランス32と、第3トランス33と、第4トランス34と、を有して成る。
【0053】
第1送信部11は、ロジック部15から入力されるスイッチ制御信号S1を第1トランス31経由で第3受信部21に送信する手段である。第1受信部12は、第3送信部22から第2トランス32経由で入力されるウォッチドッグ信号S2を受信してロジック部15に伝達する手段である。第2受信部13は、第4送信部23から第3トランス33経由で入力される第1フォルト信号S3を受信してロジック部15に伝達する手段である。第2送信部14は、ロジック部15から入力される第2フォルト信号S4を第4トランス34経由で第4受信部24に送信する手段である。
【0054】
ロジック部15は、ECU2との間で、各種信号(IN、RST、RDY、FLT)のやり取りを行うとともに、第1送信部11、第1受信部12、第2受信部13、及び、第2送信部14を用いて、第2半導体チップ20との間で、各種信号(S1〜S4)のやり取りを行う手段である。
【0055】
なお、ロジック部15は、入力信号INがハイレベルであるときには、出力信号OUTをハイレベルとするようにスイッチ制御信号S1を生成し、逆に、入力信号INがローレベルであるときには、出力信号OUTをローレベルとするようにスイッチ制御信号S1を生成する。
【0056】
また、ロジック部15は、リセット信号RSTがローレベルであるときには、出力信号OUTの生成動作をディセーブルとするように、すなわち、出力信号OUTをローレベルで固定するようにスイッチ制御信号S1を生成し、逆に、リセット信号RSTがハイレベルであるときには、出力信号OUTの生成動作をイネーブルとするように、すなわち、出力信号OUTを入力信号INに応じた論理レベルとするようにスイッチ制御信号S1を生成する。なお、リセット信号RSTが所定時間(例えば500[ns])にわたってローレベルに維持された場合、ロジック部15は、OCP部28による保護動作を復帰させるようにスイッチ制御信号S1を生成する。
【0057】
また、ロジック部15は、スイッチ制御装置1の通常時には、トランジスタNaをオフとして、レディ信号RDYをオープン(抵抗R1によるプルアップ状態)とし、スイッチ制御装置1の異常時(第1半導体チップ10側での低電圧異常やスイッチ制御信号S1のトランス伝達異常が検出された時)には、トランジスタNaをオンとして、レディ信号RDYをローレベルとする。このような構成であれば、ECU2は、レディ信号RDYを監視することにより、スイッチ制御装置1の状態を把握することが可能となる。なお、第1半導体チップ10側での低電圧異常については、第1UVLO部16での検知結果に基づいて判断すればよく、また、スイッチ制御信号S1のトランス伝達異常については、スイッチ制御信号S1とウォッチドッグ信号S2との比較結果に基づいて判断すればよい。
【0058】
また、ロジック部15は、スイッチ制御装置1の通常時には、トランジスタNbをオフとして、外部フォルト信号FLTをオープン(抵抗R2によるプルアップ状態)とし、スイッチ制御装置1の異常時(第2半導体チップ20側での低電圧異常やハイサイドスイッチNUに流れるモータ駆動電流の過電流が検出された時)には、トランジスタNbをオンとして、外部フォルト信号FLTをローレベルとする。このような構成であれば、ECU2で外部フォルト信号FLTを監視することにより、スイッチ制御装置1の状態を把握することが可能となる。なお、第2半導体チップ20側での低電圧異常やハイサイドスイッチNUに流れるモータ駆動電流の過電流については、第1フォルト信号S3に基づいて判断すればよい。
【0059】
第1UVLO部16は、第1電源電圧VCC1が低電圧状態であるか否かを監視し、その監視結果をロジック部15に伝達する手段である。
【0060】
第3受信部21は、第1送信部11から第1トランス31経由で入力されるスイッチ制御信号S1を受信してドライバ部25及び異常検知部26に各々伝達する手段である。第3送信部22は、異常検知部26から入力されるウォッチドッグ信号S2を第2トランス32経由で第2受信部12に送信する手段である。第4送信部23は、異常検知部26から入力される第1フォルト信号S3を第3トランス33経由で第2受信部13に送信する手段である。第4受信部24は、第2送信部14から第4トランス34経由で入力される第2フォルト信号S4を受信して異常検知部26に伝達する手段である。
【0061】
ドライバ部25は、第3受信部21から入力されるスイッチ制御信号S1に基づいて、トランジスタP1とトランジスタN1のオン/オフ制御を行い、トランジスタP1とトランジスタN1との接続ノードから出力信号OUTを出力する手段である。出力信号OUTがハイレベルであるときには、ハイサイドスイッチNUがオンとされ、逆に、出力信号OUTがローレベルであるときには、ハイサイドスイッチNUがオフとされる。
【0062】
なお、ドライバ部25は、出力信号OUTの電圧レベル(GND2基準)が所定値(例えば2[V])以下となったときに、ハイサイドスイッチNUのゲートからCLAMP端子を介して電荷(ミラー電流)を吸い込むように、トランジスタN2をオンとする。このような構成とすることにより、ハイサイドスイッチNUをオフする際には、駆動回路3で設定されるスルーレートに依ることなく、トランジスタN2を介してハイサイドスイッチNUのゲート電位を速やかにローレベルへ立ち下げることが可能となる。
【0063】
また、ドライバ部25は、異常検知部26から入力される異常検知信号S5に基づいて保護動作を行う必要があると判断した場合、トランジスタP1及びトランジスタN1、N2をいずれもオフとする一方、トランジスタN3をオンとする。このようなスイッチ制御により、保護動作時には、ハイサイドスイッチNUのゲートから抵抗R3を介して通常動作時よりも緩やかに電荷を引き抜くことができる。このような構成とすることにより、保護動作時にモータ電流が瞬断されることを回避できるので、モータコイルの逆起電力によって生じるサージを抑制することが可能となる。なお、抵抗R3の抵抗値を適宜選択することにより、保護動作時の立ち下がり時間を任意に調整することができる。
【0064】
異常検知部26は、第2UVLO部27及びOCP部28での検知結果に基づいて、低電圧異常や過電流が生じていると判断した場合、その旨を異常検知信号S5でドライバ部25に伝達するとともに、第1フォルト信号S3でロジック部15にも伝達する。このような構成とすることにより、ドライバ部25では、第2半導体チップ20に異常が生じた 場合であっても、速やかに先述の保護動作を行うことが可能となり、また、ロジック部15では、ECU2への異常通知動作(外部フォルト信号FLTのローレベル遷移)を行うことが可能となる。
【0065】
また、異常検知部26は、第4受信部24から入力される第2フォルト信号S4に基づいて、第1半導体チップ10側での低電圧異常やスイッチ制御信号S1のトランス伝達異常、或いは、スイッチ制御装置1外部での異常(例えば、スイッチ制御装置1と連携して動作している他のスイッチ制御装置の異常)が生じていると判断した場合にも、その旨を異常検知信号S5でドライバ部25に伝達する。このような構成とすることにより、ドライバ部25では、第2半導体チップ20に異常が生じた場合だけでなく、第1半導体チップ10や第3半導体チップ30、或いは、スイッチ制御装置1外部に異常が生じた場合であっても、速やかに先述の保護動作を行うことが可能となる。
【0066】
また、異常検知部26は、第3受信部21から入力されるスイッチ制御信号S1をそのままウォッチドッグ信号S2として第3送信部22に出力する。このように、第2半導体チップ20から第1半導体チップ10に向けてウォッチドッグ信号S2を返信する構成であれば、ロジック部15において、第1半導体チップ10から送信されたスイッチ制御信号S1と、これに対して第2半導体チップ20から返信されたウォッチドッグ信号S2を比較することにより、トランス伝達異常の有無を判定することが可能となる。
【0067】
第2UVLO部27は、第2電源電圧VCC2が低電圧状態であるか否かを監視し、その監視結果を異常検知部26に伝達する手段である。
【0068】
OCP部28は、OCPIN信号(ハイサイドスイッチNUに流れるモータ駆動電流を抵抗R4で電圧変換した信号)を監視し、その監視結果を異常検知部26に伝達する手段である。なお、OCP部28は、OCPIN信号の電圧レベル(GND2基準)が所定の閾値(例えば0.5[V])に達したときに、ハイサイドスイッチNUに流れるモータ電流が過電流状態であると判定する。また、抵抗R4の抵抗値を適宜選択することにより、過電流判定の閾値を任意に調整することができる。
【0069】
第1トランス31は、第1半導体チップ10から第2半導体チップ20にスイッチ制御信号S1を伝達するための直流絶縁素子である。第2トランス32は、第2半導体チップ20から第1半導体チップ10にウォッチドッグ信号S2を伝達するための直流絶縁素子である。第3トランス33は、第2半導体チップ20から第1半導体チップ10に第1フォルト信号S3を伝達するための直流絶縁素子である。第4トランス34は、第1半導体チップ10から第2半導体チップ20に第2フォルト信号S4を伝達するための直流絶縁素子である。
【0070】
このように、第1半導体チップ10と第2半導体チップ20との間で、スイッチ制御信号S1だけでなく、ウォッチドッグ信号S2、第1フォルト信号S3、及び、第2フォルト信号S4をやり取りする構成であれば、ハイサイドスイッチNUのオン/オフ制御だけでなく、種々の保護機能を適切に実現することが可能となる。
【0071】
次に、第3半導体チップ30におけるトランス配列について、図7を参照しながら詳細に説明する。図7は、第3半導体チップ30の一構成例を示す上面図である。
【0072】
第1トランス31を形成する一次側コイルの一端は、第1送信部11の信号出力端に接続されており、他端は第1半導体チップ10側のコモン電圧印加端(COM1)に接続されている。第1トランス31を形成する二次側コイルの一端は、第3受信部21の信号入力端に接続されており、他端は第2半導体チップ20側のコモン電圧印加端(COM2)に接続されている。第4トランス34を形成する一次側コイルの一端は、第2送信部14の信号出力端に接続されており、他端は第1半導体チップ10側のコモン電圧印加端(COM1)に接続されている。第4トランス34を形成する二次側コイルの一端は、第4受信部24の信号入力端に接続されており、他端は第2半導体チップ20側のコモン電圧印加端(COM2)に接続されている。第1ガードリング35は、接地端などの低インピーダンス配線に接続されている。
【0073】
第2トランス32を形成する一次側コイルの一端は、第3送信部22の信号出力端に接続されており、他端は第2半導体チップ20側のコモン電圧印加端(COM2)に接続されている。第2トランス32を形成する二次側コイルの一端は、第1受信部12の信号入力端に接続されており、他端は第1半導体チップ10側のコモン電圧印加端(COM1)に接続されている。第3トランス33を形成する一次側コイルの一端は、第4送信部23の信号出力端に接続されており、他端は第2半導体チップ20側のコモン電圧印加端(COM2)に接続されている。第3トランス33を形成する二次側コイルの一端は、第2受信部13の信号入力端に接続されており、他端は第1半導体チップ10側のコモン電圧印加端(COM1)に接続されている。第2ガードリング36は、接地端などの低インピーダンス配線に接続されている。
【0074】
ここで、第1トランス31〜第4トランス34は、図7に示すように、各々の信号伝達方向毎にカップリングして並べられている。より具体的に述べると、第1半導体チップ10から第2半導体チップ20に向けて信号を伝達する第1トランス31と第4トランス34が第1ガードリング35によって第1のペアとされており、また、第2半導体チップ20から第1半導体チップ10に向けて信号を伝達する第2トランス32と第3トランス33が第2ガードリング36によって第2のペアとされている。このようなカップリングを行った理由は、第1トランス31〜第4トランス34を各々形成する一次側コイルと二次側コイルを第3半導体チップ30の基板上下方向に積み重ねる形で積層形成した場合に、一次側コイルと二次側コイルとの間で耐圧を確保するためである。ただし、第1ガードリング35、及び、第2ガードリング36については、必ずしも必須の構成要素ではない。
【0075】
なお、上記の実施形態では、ハイブリッド自動車に搭載されるモータ駆動装置に本発明を適用した構成を例示して説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他の用途に供されるスイッチ制御装置(例えば、スイッチングレギュレータのハイサイドスイッチ制御装置)にも広く適用することが可能である。
【0076】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば、ハイブリッド自動車、エアコン等の家電製品、及び、産業機械などに搭載されるモータ駆動装置等のハイサイドスイッチ制御手段に関して、コストの低減や信頼性の向上を実現する上で利用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】は、本発明に係るスイッチ制御装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】は、第1半導体チップ10、第2半導体チップ20、及び、第3半導体チップ30の断面図である。
【図3】は、パッケージ内におけるチップ配列の第1例を示すブロック図である。
【図4】は、パッケージ内におけるチップ配列の第2例を示すブロック図である。
【図5】は、パッケージ内におけるチップ配列の第3例を示すブロック図である。
【図6】は、本発明に係るモータ駆動装置の一構成例を示すブロック図である。
【図7】は、第3半導体チップ30の一構成例を示す上面図である。
【図8】は、スイッチ制御装置の一従来例を示すブロック図である。
【図9】は、トランスが形成される半導体チップの上面図(a)、及び、X−X’断面図(b)である。
【符号の説明】
【0079】
1 スイッチ制御装置
2 エンジンコントロールユニット(ECU)
3 駆動回路
10 第1半導体チップ(コントローラチップ)
11 第1送信部
12 第1受信部
13 第2受信部
14 第2送信部
15 ロジック部
16 第1低電圧ロックアウト部(第1UVLO部)
20 第2半導体チップ(ドライバチップ)
21 第3受信部
22 第3送信部
23 第4送信部
24 第4受信部
25 ドライバ部
26 異常検知部
27 第2低電圧ロックアウト部(第2UVLO部)
28 過電流保護部(OCP部)
30 第3半導体チップ(トランスチップ)
31 第1トランス
32 第2トランス
33 第3トランス
34 第4トランス
35 第1ガードリング
36 第2ガードリング
40 第1アイランド(低圧側アイランド)
50 第2アイランド(高圧側アイランド)
NU ハイサイドスイッチ
NL ローサイドスイッチ
Na、Nb、N1〜N3 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
P1 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
E1、E2 直流電圧源
C1、C2 キャパシタ
R1〜R4 抵抗
T1、T2 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に基づいてスイッチ制御信号を生成するコントローラが集積化された第1半導体チップと、前記スイッチ制御信号に基づいてスイッチの駆動制御を行うドライバが集積化された第2半導体チップと、第1半導体チップと第2半導体チップとの間を直流的に絶縁しながら前記スイッチ制御信号などの受け渡しを行う直流絶縁素子が集積化された第3半導体チップと、を一のパッケージに封止して成ることを特徴とするスイッチ制御装置。
【請求項2】
前記パッケージは、相対する2辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ、第2半導体チップ、及び、第3半導体チップは、前記ピンの配列方向に対して平行に並べられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ制御装置。
【請求項3】
前記パッケージは、相対する2辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ、第2半導体チップ、及び、第3半導体チップは、前記ピンの配列方向に対して垂直に並べられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ制御装置。
【請求項4】
前記パッケージは、4辺にそれぞれ複数のピンが配列されるものであり、第1半導体チップ、第2半導体チップ、及び、第3半導体チップは、前記パッケージの対角線方向に対して平行に並べられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ制御装置。
【請求項5】
第3半導体チップは、前記直流絶縁素子として、第1半導体チップから第2半導体チップに前記スイッチ制御信号を伝達する第1直流絶縁素子のほか、第2半導体チップから第1半導体チップにウォッチドッグ信号を伝達する第2直流絶縁素子と、第2半導体チップから第1半導体チップに第1フォルト信号を伝達する第3直流絶縁素子と、第1半導体チップから第2半導体チップに第2フォルト信号を伝達する第4直流絶縁素子と、が集積化されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスイッチ制御装置。
【請求項6】
第1半導体チップ及び第2半導体チップは、それぞれ、半導体基板と、前記半導体基板上に集積化された回路素子と、前記回路素子上に形成された配線層及び絶縁膜と、を有して成り、第3半導体チップは、半導体基板と、前記半導体基板上に集積化された直流絶縁素子と、を有して成ることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスイッチ制御装置。
【請求項7】
第1半導体チップ及び第3半導体チップは、第1アイランド上に搭載されており、第2半導体チップは、第2アイランド上に搭載されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスイッチ制御装置。
【請求項8】
第1アイランド及び第2アイランドは、いずれも非磁性素材から成ることを特徴とする請求項7に記載のスイッチ制御装置。
【請求項9】
前記直流絶縁素子は、トランスであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のスイッチ制御装置。
【請求項10】
モータ駆動電圧の印加端とモータコイルの一端との間に接続されるハイサイドスイッチの制御手段として、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のスイッチ制御装置を有して成ることを特徴とするモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−232637(P2009−232637A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77651(P2008−77651)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】