説明

スイッチ構造

【課題】特殊な接着剤を用いる必要なく、組付け作業性に優れたスイッチ構造とする。
【解決手段】ゴムマット3の押しボタン部31に樹脂製のロッド6を一体的に保持固定し、ロッド6の先端に可動接点部63を形成した。樹脂製のロッド6に可動接点部63を形成したので、特殊な接着剤が不要となる。またロッド6の組付け工数を大きく低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子機器などに用いられるプッシュ式スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば近年の自動車のステアリングホイールには、各種のプッシュ式スイッチが設けられ、ステアリングホイールから手を離すことなく手指で各種の電子機器を操作できるようになっている。このプッシュ式スイッチは、例えば特開平09−286044号公報、特開2003−123581号公報、特開2008−016285号公報などに記載されたように、逆有底筒状の押しボタン部をもつゴムマットをプリント配線基板の表面に載置したものを基本構造としている。
【0003】
このプッシュ式スイッチでは、プリント配線基板の表面に固定接点部を形成し、押しボタン部のプリント配線基板に対向する表面に可動接点部を形成し、プッシュロッドなどを介して押しボタン部をプリント配線基板に向かって押圧することで可動接点部と固定接点部とを導通させ、押圧を解除し押しボタン部の弾性反力によって可動接点部と固定接点部との導通を遮断する。
【0004】
従来のプッシュ式スイッチは、例えば図6に示すように、筐体 100と、プリント配線基板 200と、シリコンゴム製のゴムマット 300と、樹脂製のプッシュロッド 400と、樹脂製のガイド 500と、樹脂製のカバー 600とからなる。筐体 100の左右側壁には、それぞれ係合孔 101が形成されている。
【0005】
プリント配線基板 200には隣接する一対の接点からなる固定接点部 201が形成されている。ゴムマット 300には、逆有底筒状の押しボタン部 301が形成され、押しボタン部 301のプリント配線基板 200に対向する表面には可動接点部 302が形成されている。ガイド 500には貫通孔 501が形成され、貫通孔 501にプッシュロッド 400が挿通されている。カバー 600には、シーソー型スイッチ 601が揺動自在に保持され、左右一対の係止爪 602が下方に向かって突出している。
【0006】
このプッシュスイッチを組み立てるには、先ず筐体 100にプリント配線基板 200とゴムマット 300をこの順に積層する。次いでガイド 500の貫通孔 501にプッシュロッド 400を挿通したものをゴムマット 300の表面に載置し、最後にカバー 600の係止爪 602を筐体 100の係合孔 101に係合させて全体を固定する。
【0007】
このプッシュスイッチによれば、シーソー型スイッチ 601の左右の一方側を手指で押圧すると、押圧された側のプッシュロッド 400が下降して押しボタン部 301を押圧する。すると可動接点部 301が下方へ移動し、固定接点部 201と接触するため、固定接点部 201の一対の接点どうしが導通する。シーソー型スイッチ 601の押圧を解除すると、自身の弾性によって押しボタン部 301が元の形状となり、可動接点部 301と固定接点部 201とが離間して導通が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−286044号公報
【特許文献2】特開2003−123581号公報
【特許文献3】特開2008−016285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように従来のプッシュスイッチにおいては、シリコンゴム製のゴムマットに可動接点部を形成している。可動接点部は、金などの導電性金属から形成される。ところがシリコンゴムと金などからなる可動接点部とを強固に接合するためには、特殊な接着剤が必要となるという問題があった。
【0010】
またプッシュロッドは直径が3mm程度の小さな部品であり、それをガイドの貫通孔に下側から挿入して組付けなければならず、組付け作業性の向上が求められている。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、特殊な接着剤を用いる必要なく、組付け作業性に優れたスイッチ構造とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明のスイッチ構造の特徴は、固定接点部をもつ回路基板と、回路基板の表面に載置され、平坦なシート部と固定接点部の位置で回路基板から離れる方向へシート部から突出する逆有底筒状の押しボタン部とを有するゴムマットと、押しボタン部の上底部に一体的に保持固定され少なくとも固定接点部に向かってゴムマットから突出する樹脂製のロッドと、固定接点部に対向するロッドの表面に形成された可動接点部と、からなることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスイッチ構造によれば、樹脂製のロッドの表面に可動接点部が形成されている。したがって可動接点部とロッドとは接合強度が高いため、特殊な接着剤が不要となりコストを低減することができる。またロッドが押しボタン部に一体的に保持固定されているので、組付け時にロッドが脱落するような不具合がなく、組付け作業性が格段に向上する。そして押しボタン部の形状は従来と同等とすることができるので、操作性が変化することもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るスイッチ構造の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るスイッチ構造の断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るスイッチ構造の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るスイッチ構造において、ゴムマットの成形時に用いた金型の要部断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係るスイッチ構造の断面図である。
【図6】従来のスイッチ構造の組付け方法を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のスイッチ構造の最少構成要素は、回路基板と、ゴムマットと、ロッドとからなる。従来と同様に、全体を収容する筐体を用いてもよいし、ハンドルなどに配置する場合にはハンドル本体に組付けることもできる。またゴムマットの押しボタン部を表出させ、その表面をスイッチとして用いてもよいし、従来のようにスイッチを保持するカバーを設けることもできる。
【0016】
回路基板は、一般のプリント配線基板を用いることができる。その表面には、導電性金属からなる固定接点部が形成されている。
【0017】
ゴムマットは、絶縁性とシール性と弾性を有するものであり、さらに耐久性の観点からシリコンゴムを用いることが望ましい。このゴムマットは、平坦なシート部と、シート部から突出する逆有底筒状の押しボタン部とを有している。押しボタン部は上底部を有し、樹脂製のロッドが上底部に一体的に保持固定されている。
【0018】
ロッドを押しボタン部の上底部に保持固定するには、それぞれ形成された押しボタン部とロッドとを組付けて嵌合などにより保持固定することも可能であるが、予め形成されたロッドをゴムマットの成形時にインサートして一体成形することで、ゴムマットと一体的に保持固定することが望ましい。このようにすれば、複数の押しボタン部を有するゴムマットを成形する際に、それぞれの押しボタン部に同時にロッドを一体化することができるので、組付け作業性が著しく向上する。
【0019】
押しボタン部の上底とロッドとの接合強度をさらに高くするために、接合面積を大きくすることが望ましい。このようにするには、ロッドの表面にローレット加工を施したり、凹凸を形成したり、フランジ部を形成したりする方法がある。
【0020】
固定接点部に対向するロッドの表面には、可動接点部が形成されている。この可動接点部は金などの導電性金属から形成され、金属板を接合してもよいが、めっきによって薄膜状に形成するのが望ましい。例えば無電解めっきによってNiめっき層を形成し、その後電解めっきによって金めっき層を形成することができる。ロッドは樹脂製であるので、特殊な接着剤を用いる必要なく、高い接合強度でめっき被膜を形成することができる。
【0021】
以下、図面を参照しながら実施例によって本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1に本実施例に係るスイッチ構造の分解斜視図を、図2にその断面図を示す。このスイッチ構造は、自動車のステアリングホイールに配設されるものであり、筐体1と、プリント配線基板2と、ゴムマット3と、ガイド4と、カバー5と、ロッド6と、シーソー型スイッチ7と、から構成されている。
【0023】
箱状の筐体1はPPから形成され、左右側壁にそれぞれ係合孔10が形成されている。筐体1内には、プリント配線基板2と、ゴムマット3と、ガイド4とがこの順に積層されて配置され、カバー5が筐体1の上部開口を覆って筐体1に固定されている。
【0024】
プリント配線基板2のゴムマット3に対向する表面にはプリント配線が形成され、その6箇所にそれぞれ一対の接点からなる固定接点部20が表出して形成されている。
【0025】
ゴムマット3はシリコンゴムから形成され、平坦なシート部30と、プリント配線基板2から離れる方向へシート部30から突出する逆有底筒状の押しボタン部31と、を備えている。ゴムマット3の全体形状は、プリント配線基板2と同じ大きさに形成されている。押しボタン部31は固定接点部20に対向する位置にそれぞれ形成され、押しボタン部31にはそれぞれPP製のロッド6が一体的に保持固定されている。
【0026】
押しボタン部31は、図3に拡大して示すように、厚肉の上底部32と、上底部32とシート部30とを接続するスカート部33と、から構成され、上底部32にロッド6が保持固定されている。
【0027】
ロッド6は、図3に拡大して示すように円柱形状の大径部60と、大径部60の中心から同軸に延びる円柱形状のロッド部61と、大径部60及びロッド部61にそれぞれ同軸に形成された円板形状のフランジ部62とからなり、大径部60の先端表面には金めっき層からなる可動接点部63が形成されている。そして大径部60の先端部とロッド部61の先端部とがそれぞれ上底部32の両側へ突出し、フランジ部62をもつ中央部分が上底部32内に埋設されている。
【0028】
このゴムマット3は、以下のようにして製造された。先ずロッド6を射出成形によって形成し、大径部60の先端に無電解Niめっきと電解金めっきによって可動接点部63を形成する。可動接点部63をもつロッド6を、図4に示すように、上型70と下型71とからなる成形金型にインサートし、キャビティ72に液状のシリコンゴムを射出し硬化させてゴムマット3を形成する。これによりロッド6は押しボタン部31に一体的に保持固定され、フランジ部62の形状効果によって押しボタン部31から脱落するのが防止されている。
【0029】
PP製のガイド4は、プリント配線基板2及びゴムマット3より一回り大きな外周形状をもつ略逆箱状に形成され、その内部にはリブ40が形成されている。そして周縁部とリブ40の先端がゴムマット3のシート部30に当接することで、ゴムマット3及びプリント配線基板2が固定されている。またガイド4の上底には、ロッド6のロッド部61が挿通される3対の貫通孔41が形成され、ロッド部61を安定して上下動するように案内する。
【0030】
PP製のカバー5は、筐体1の開口を覆う大きさの略板状に形成され、長方形状の3個の取付穴50が貫通形成されている。また取付穴50の近傍にはそれぞれブラケット51が形成されている。この取付穴50には、ブラケット51と金属棒52を介して、それぞれシーソー型スイッチ7が揺動可能に保持されている。
【0031】
シーソー型スイッチ7の裏面の中央部には中心孔をもつ軸部70が形成され、ブラケット51と共に金属棒52で枢軸連結されることで、シーソー型スイッチ7は揺動可能に保持されている。また軸部70の両側には、それぞれ突条71が形成されている。
【0032】
またカバー5の左右側壁からは筐体1へ向かって延びる係止爪53が形成され、この係止爪53が筐体1の係合孔10と係合することで、カバー5が筐体1に固定されている。この状態では、一対の突条71の先端がロッド6のロッド部61の先端にそれぞれ当接している。またカバー5のガイド4に対向する表面には図示しないリブが形成され、このリブがガイド4の表面に当接することでガイド4の浮き上がりを規制するとともに、ガイド4によるゴムマット3及びプリント配線基板2の固定を確実なものとし、シール性も確保されている。
【0033】
本実施例のスイッチ構造を組付けるには、プリント配線基板2と、複数のロッド6が保持固定されたゴムマット3と、ガイド4とをこの順に筐体1内に積層し、シーソー型スイッチ7が保持されたカバー5を筐体1に向かって押圧して係止爪53を係合孔10に係合させるだけでよい。したがって組付けを極めて容易に行うことができ、組付け作業性が大きく向上する。
【0034】
上記のように構成された本実施例のスイッチ構造では、手指でシーソー型スイッチ7の一方を押すと、シーソー型スイッチ7が揺動して一方の突条71がロッド部61を下方へ向かって押圧する。するとロッド6が押しボタン部31を下方へ押圧し、スカート部31が弾性変形することでロッド6と共に上底部32が下降する。これにより可動接点部63と固定接点部20とが接触してプリント配線基板2の配線の一部が導通する。
【0035】
手指による押圧を解除すると、スカート部31は自身の弾性で元の形状に戻り、上底部32と共にロッド6が上昇することで、可動接点部63と固定接点部20との導通が解除される。
【実施例2】
【0036】
図5に本実施例に係るスイッチ構造の断面図を示す。このスイッチ構造は、ロッド6と押しボタン部31との固定構造が異なること、それに伴ってガイド4を用いなかったこと以外は実施例1と同様の構成であるので、実施例1と同様の符合を付けて説明する。
【0037】
ゴムマット3の押しボタン部31には、インサート成形によりロッド6が一体的に保持固定されている。このロッド6は、実施例1と同様の大径部60と、大径部60から軸方向へ延び大径部60より小径の軸部64と、軸部64の先端に形成されたフランジ部65とからなる。大径部60の一部と、軸部64の全部と、フランジ部65の全部とが押しボタン部31の上底部32に埋設されている。そして大径部60の先端は押しボタン部31からプリント配線基板2の固定接点部20へ向かって突出し、その先端表面には可動接点部63が形成されている。
【0038】
カバー5はシーソー型スイッチ7を揺動可能に保持し、筐体1に固定されている。その状態で、シーソー型スイッチ7の突条71が押しボタン部31の上底部32の表面と当接している。またカバー5にはリブ54が突出形成され、リブ54の先端がゴムマット3のシート部30に当接することで、ゴムマット3及びプリント配線基板2が固定されている。
【0039】
本実施例のスイッチ構造によれば、ガイドを用いていないため実施例1に比べて部品点数を低減でき、組付け作業性がさらに向上する。さらにゴムマット3の表面にはシリコンゴム層のみが表出しているので、シール性が高く信頼性がさらに向上する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のスイッチ構造は、ステアリングホイールに設けられるスイッチばかりでなく、ゲームコントローラーのボタンスイッチ、キーボードのキーなどにも利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:筐体
2:プリント配線基板(回路基板)
3:ゴムマット
4:ガイド
5:カバー
6:ロッド
7:シーソー型スイッチ
20:固定接点部
30:シート部
31:押しボタン部
63:可動接点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点部をもつ回路基板と、
該回路基板の表面に載置され、平坦なシート部と該固定接点部の位置で該回路基板から離れる方向へ該シート部から突出する逆有底筒状の押しボタン部とを有するゴムマットと、
該押しボタン部の上底部に一体的に保持固定され少なくとも該固定接点部に向かって該ゴムマットから突出する樹脂製のロッドと、
該固定接点部に対向する該ロッドの表面に形成された可動接点部と、からなることを特徴とするスイッチ構造。
【請求項2】
前記ロッドは、前記ゴムマットの成形時にインサート成形されることで前記ゴムマットと一体化されている請求項1に記載のスイッチ構造。
【請求項3】
前記ロッドは前記押しボタン部の前記上底の厚さ方向両側へ突出し、前記可動接点部と反対側の端部を出没可能に保持するガイドを有する請求項1又は請求項2に記載のスイッチ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−225482(P2010−225482A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73062(P2009−73062)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】