説明

スキーラ付きガスタービン動翼の補修方法

【課題】ニッケル基超合金からなるスキーラ付きガスタービン動翼の損耗部分に対して、溶接法によって同じニッケル基超合金からなる肉盛部を形成して補修する際に、ひずみ時効割れの発生を抑制する。
【解決手段】スキーラの損傷部を切削除去した後、当該部分にニッケル基超合金から肉盛部を溶接によって形成する。次いで、肉盛部を、この肉盛部を構成するニッケル基超合金の融点m℃の1/2以上の温度であって、融点以下の温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で加熱する。次いで、肉盛部に冷却ガスを吹き付け急冷し、その後、肉盛部に対して溶体化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキーラ付きガスタービン動翼の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジンや発電用ガスタービン等に用いられるタービン動翼の先端部には、ケーシングと接触したときのケーシングの摩耗低減及び燃焼ガスの漏洩防止を目的として、外方に隆起した縁部分を設ける場合がある。このような縁部分は一般にスキーラと呼ばれ、このようなスキーラを有するガスタービン動翼はスキーラ付きガスタービン動翼と呼ばれる。
【0003】
ガスタービンはガスの燃焼温度の高温化により、ガスの使用効率の向上を図ることができる。そのため、1990年代は翼入口ガス温度が1100℃のものが主流であったが、2000年代に入り1300℃、1500℃の機種が開発されてきている。したがって、ガスタービン動翼の先端に備え付けられたスキーラは、このような燃焼ガスに晒されることになり、高温酸化やエロージョンなどの損耗を受けやすい。
【0004】
従来、上記スキーラにおいて上述のような損耗が生じると、当該箇所に溶接によって肉盛部を形成し補修していた。しかしながら、ガスタービン翼材として使用されているニッケル基超合金は、ニッケルマトリックス中にγ’相と呼ばれるNiAl相を析出させて強化した析出強化型のニッケル基超合金が用いられており、溶接は非常に困難である。
【0005】
すなわち、溶接時に高温で膨張していた上記ニッケル基超合金からなる肉盛部が、冷却時に収縮することによって基材(スキーラ)と肉盛部との間に残留応力が生じ、溶接割れが生じるようになる。また、上記肉盛部は、後に溶体化処理等が行われることにより、上記残留応力に起因して、比較的強度の低い粒界部に変形が集中しひずみ時効割れと呼ばれる溶接割れが生ずる問題があった。
【0006】
近年では、このような溶接割れを抑制するため、航空機用ガスタービンを中心にレーザ肉盛溶接など、従来のTIG溶接に比較して入熱の少ない溶接手法による補修技術の開発が行われてきている。このような手法によれば、肉盛部を形成する際の溶接割れは大分抑制できるものの、溶体化熱処理を行なうと溶接残留応力のためと考えられるひずみ時効割れが生じるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】溶接学会編「溶接・接合技術便覧」産報出版 197頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ニッケル基超合金からなるスキーラ付きガスタービン動翼の損耗部分に対して、溶接法によって同じニッケル基超合金からなる肉盛部を形成して補修する際に、ひずみ時効割れの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ニッケル基超合金からなるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法であって、前記スキーラの損傷部を切削除去するステップと、前記スキーラの切削除去した部分において、ニッケル基超合金から肉盛部を溶接によって形成するステップと、前記肉盛部を、この肉盛部を構成する前記ニッケル基超合金の融点をm℃としたとき、当該融点の1/2m℃以上であって、前記融点以下の温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で加熱するステップと、前記肉盛部に冷却ガスを吹き付け急冷するステップと、前記肉盛部に対して溶体化処理を行うステップと、を具えることを特徴とする、スキーラ付きガスタービン動翼の補修方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニッケル基超合金からなるスキーラ付きガスタービン動翼の損耗部分に対して、溶接法によって同じニッケル基超合金からなる肉盛部を形成して補修する際に、ひずみ時効割れの発生を抑制するができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための斜視図である。
【図2】第1の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための図1のI−I断面図である。
【図3】第1の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための斜視図である。
【図4】第1の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための図3のI−I断面図である。
【図5】第1の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための斜視図である。
【図6】第1の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための図5のI−I断面図である。
【図7】第2の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための断面図である。
【図8】第3の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための概略斜視図である。
【図9】第4の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための概略斜視図である。
【図10】第5の実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1〜図6は、本実施形態におけるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための工程図である。なお、図1,図3及び図5は、ガスタービン動翼の先端のスキーラを含む領域を拡大して示す斜視図であり、図2,図4及び図6は、それぞれ図1,図3及び図5におけるI−I断面図である。
【0013】
最初に、図1及び図2に示すように、ガスタービン動翼11の先端部に形成されたスキーラ12の、高温燃焼ガスとの接触による酸化やエロージョン等によって生じた損耗部12Aをグラインダーなどを使用して切削除去し、図3及び図4に示すように平坦化する。
【0014】
次いで、平坦化後のスキーラ12上に、一層の厚さが約0.8mmとなるように粉末肉盛溶接を行う。粉末肉盛溶接の条件として、基材であるスキーラ12と同等組成の粉末であるPlaxair社製NI-417(Cr:14質量%、Co:9質量%、Al:3質量%、Ti:4.9質量%、Ta:3質量%、W:3.7質量%、Mo:1.5質量%、Ni:60.9質量%;、平均粒子径95μm)、及び融点約1300℃を使用し、例えば、YAGレーザにてレーザ出力を400W、波形をCW、溶接速度を150mm/分、粉末供給速度を2.5g/分とし、上記粉末肉盛溶接を行う。
【0015】
なお、YAGレーザの代わりにファイバーレーザでも問題なく同一出力にて溶接することは可能である。また、例えば300W〜500Wの範囲内でレーザ出力の調整を行なえば、半導体レーザ、COレーザを用いても問題なく溶接することが可能である。
【0016】
以上のような条件で5層の粉末肉盛溶接を行い、スキーラ12上に肉盛部14を形成する(図5及び図6参照)。次いで、図5及び図6に示すスキーラ付きガスタービン動翼11を図示しない小型電気炉内に入れ、好ましくはアルゴンガス中にて上記融点の1/2以上融点以下、より好ましくは約900〜1000℃の温度範囲まで15℃/分以上、好ましくは20℃/分以上の昇温速度で加熱し、例えば60分間〜120分間保持した後、冷却ガスとしてのアルゴンガスを吹き付け室温まで急速に冷却する。なお、この際の降温速度は、約100℃/分程度である。その後、上記温度範囲、例えば約1120℃で1時間の溶体化処理を行う。
【0017】
なお、上記昇温速度は500℃/分以下であることが必要であり、好ましくは50℃/分以下であることが必要である。昇温速度が500℃/分を超えて大きくなると、一般の電気炉、誘導加熱炉ではオーバーシュートを起こし被溶接物の局部溶融温度を超え、肉盛部14が部分的に溶融してしまい、スキーラ12を所望の形態となるようにする補修することが困難になる。
【0018】
本実施形態においては、スキーラ12付きガスタービン動翼11のスキーラ12を補修するに際して、上述のように基材(スキーラ12)と同組成のニッケル基超合金からなる肉盛部14を形成した後、肉盛部14をその合金の融点1300℃の1/2の温度から融点までの温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で急速に加熱し、上記温度範囲に所定時間保持した後、冷却ガスを吹き付けて室温にまで急冷するようにしている。
【0019】
上述した温度範囲は、肉盛部14内にγ’相が生成しない温度範囲である。また、上記昇温速度及び冷却に伴う降温速度は、肉盛部14内にその合金組成に起因してγ’相が析出する温度範囲であっても、γ’相の析出速度よりも十分に大きい。したがって、肉盛部14に対する上述した加熱操作の過程において、肉盛部14内にはγ’相が生成されない。この結果、肉盛部14の強度増大による溶接部境界(スキーラ12と肉盛部14との境界)で溶接残留応力の緩和が集中して起こることがないので、後の溶体化処理において、上記溶接部境界を起点としてひずみ時効割れが生じるのを抑制することができる。
【0020】
なお、上記においては、ニッケル基超合金としてPlaxair社製NI-417を用いたが、本実施形態は、インコネルやハステロイなどのその他汎用のニッケル超合金に対しても適用することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図7は、本実施形態のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための工程図である。本実施形態において、肉盛部14の形成までは、第1の実施形態の図1〜図6に示す工程に基づいて実施する。その後、図7に示すように、肉盛部14を、小型電気炉内に配置する代わりに高周波コイル21内に配置し、このコイル21に例えば150kHz〜400kHzの高周波を印加することにより、肉盛部14を誘導加熱する。
【0022】
この場合も、15℃/分以上、好ましくは20℃/分以上であり、さらに500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で加熱し、例えば60分間〜120分間保持した後、冷却ガスとしてのアルゴンガスを吹き付け室温まで急速に冷却する。なお、この際の降温速度は、約100℃/分程度である。その後、上記温度範囲、例えば約1120℃で1時間の溶体化処理を行う。
【0023】
本実施形態においては、スキーラ12付きガスタービン動翼11のスキーラ12を補修するに際して、上述のように基材(スキーラ12)と同組成のニッケル基超合金からなる肉盛部14を形成した後、肉盛部14をその合金の融点約1300℃の1/2の温度から融点までの温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で急速に加熱し、上記温度範囲に所定時間保持した後、冷却ガスを吹き付けて室温にまで急冷するようにしている。
【0024】
上述した温度範囲は、肉盛部14内にγ’相が生成しない温度範囲であって、上記昇温速度及び冷却に伴う降温速度は、肉盛部14内にその合金組成に起因してγ’相が析出する温度範囲であっても、γ’相の析出速度よりも十分に大きい。したがって、肉盛部14に対する上述した加熱操作の過程において、肉盛部14内にはγ’相が生成されない。この結果、肉盛部14の強度増大による溶接部境界(スキーラ12と肉盛部14との境界)で溶接残留応力の緩和が集中して起こることがないので、後の溶体化処理において、上記溶接部境界を起点としてひずみ時効割れが生じるのを抑制することができる。
【0025】
(第3の実施形態)
図8は、本実施形態のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための工程図である。本実施形態においても、肉盛部14の形成までは、第1の実施形態の図1〜図6に示す工程に基づいて実施する。その後、図8に示すように、肉盛部14を、小型電気炉内に配置する代わりにハロゲンランプ22を用い、このハロゲンランプ22から発せられた光を放物面鏡23によって、肉盛部14と同程度の光束幅となるようにする。
【0026】
この場合も、例えば、ハロゲンランプ22の出力を1000W/cm〜2000W/cmとすることにより、15℃/分以上、好ましくは20℃/分以上であり、さらには500℃/分以下、好ましくは50℃/分以下の昇温速度で加熱し、冷却ガスとしてのアルゴンガスを吹き付け室温まで急速に冷却する。なお、この際の降温速度は、約100℃/分程度である。その後、上記温度範囲、例えば約1120℃で1時間の溶体化処理を行う。
【0027】
本実施形態においても、スキーラ12付きガスタービン動翼11のスキーラ12を補修するに際して、上述のように基材(スキーラ12)と同組成のニッケル基超合金からなる肉盛部14を形成した後、肉盛部14をその合金の融点約1300℃の1/2の温度から融点までの温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で急速に加熱し、上記温度範囲に所定時間保持した後、冷却ガスを吹き付けて室温にまで急冷するようにしている。
【0028】
上述した温度範囲は、肉盛部14内にγ’相が生成しない温度範囲であって、上記昇温速度及び冷却に伴う降温速度は、肉盛部14内にその合金組成に起因してγ’相が析出する温度範囲であっても、γ’相の析出速度よりも十分に大きい。したがって、肉盛部14に対する上述した加熱操作の過程において、肉盛部14内にはγ’相が生成されない。この結果、肉盛部14の強度増大による溶接部境界(スキーラ12と肉盛部14との境界)で溶接残留応力の緩和が集中して起こることがないので、後の溶体化処理において、上記溶接部境界を起点としてひずみ時効割れが生じるのを抑制することができる。
【0029】
(第4の実施形態)
図9は、本実施形態のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための工程図である。本実施形態においても、肉盛部14の形成までは、第1の実施形態の図1〜図6に示す工程に基づいて実施する。その後、図9に示すように、肉盛部14を、小型電気炉内に配置する代わりにレーザ25を用い、このレーザ25から発せられたレーザ光をそのビーム径が肉盛部14と同程度の幅となるようにする。
【0030】
レーザ25としてYAGレーザを用いた場合、例えば、その出力を1000W/cm〜2000W/cmとすることにより、15℃/分以上、好ましくは20℃/分以上であり、さらには500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で加熱し、冷却ガスとしてのアルゴンガスを吹き付け室温まで急速に冷却する。なお、この際の降温速度は、約100℃/分程度である。その後、上記温度範囲、例えば約1120℃で1時間の溶体化処理を行う。
【0031】
本実施形態においても、スキーラ12付きガスタービン動翼11のスキーラ12を補修するに際して、上述のように基材(スキーラ12)と同組成のニッケル基超合金からなる肉盛部14を形成した後、肉盛部14をその合金の融点約1300℃の1/2の温度から融点までの温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で急速に加熱し、上記温度範囲に所定時間保持した後、冷却ガスを吹き付けて室温にまで急冷するようにしている。
【0032】
上述した温度範囲は、肉盛部14内にγ’相が生成しない温度範囲であって、上記昇温速度及び冷却に伴う降温速度は、肉盛部14内にその合金組成に起因してγ’相が析出する温度範囲であっても、γ’相の析出速度よりも十分に大きい。したがって、肉盛部14に対する上述した加熱操作の過程において、肉盛部14内にはγ’相が生成されない。この結果、肉盛部14の強度増大による溶接部境界(スキーラ12と肉盛部14との境界)で溶接残留応力の緩和が集中して起こることがないので、後の溶体化処理において、上記溶接部境界を起点としてひずみ時効割れが生じるのを抑制することができる。
【0033】
(第5の実施形態)
図10は、本実施形態のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法を説明するための工程図である。本実施形態においては、最初に、第1の実施形態の図1〜図6に示す工程に基づいて、第1の実施形態で形成した肉盛部14よりも厚さの小さい第1の肉盛部34を形成する(図10参照)。
【0034】
第1の肉盛部34を形成する際の条件は、例えば、YAGレーザにてレーザ出力を400W、波形をCW、溶接速度を150mm/分、粉末供給速度を1.0g/分とし、一層の厚さが約0.2mm〜0.3mmとなるようにする。このような条件で3パスの粉末肉盛溶接を行い、スキーラ12上に第1の肉盛部34を形成する。
【0035】
次いで、第1の肉盛部34上に、同様の条件で肉盛溶接を行って第2の肉盛部35を形成する。第2の肉盛部35は、第1の肉盛部34との合計厚さが4mmとなるように形成する。すなわち、第2の肉盛部35の厚さが3mmとなるように3パス3層の粉末肉盛溶接を行う(図10参照)。
【0036】
肉盛溶接の際の肉盛部直下の温度は融点近傍であり、900℃〜1300℃の温度範囲となるので、第2の肉盛部35を形成する際に、第1の肉盛部34は、15℃/分以上、好ましくは20℃/分以上であり、さらには500℃/分以下、好ましくは50℃/分以下の昇温速度で、基材(スキーラ12)と同組成のニッケル基超合金の融点1300℃の1/2の温度から融点までの温度範囲に急速に加熱されて、例えば冷却ガスとしてのアルゴンガスを吹き付け500℃程度まで急速に冷却する。なお、この際の降温速度は、約100℃/分程度である。
【0037】
上述した温度範囲は、第1の肉盛部34内にγ’相が生成しない温度範囲であって、上記昇温速度及び冷却に伴う降温速度は、第1の肉盛部34内にその合金組成に起因してγ’相が析出する温度範囲であっても、γ’相の析出速度よりも十分に大きい。したがって、第1の肉盛部34に対する上述した加熱操作の過程において、第1の肉盛部34内にはγ’相が生成されない。
【0038】
この結果、第1の肉盛部34の強度増大による溶接部境界(スキーラ12と第1の肉盛部34との境界)で溶接残留応力の緩和が集中して起こることがないので、後の溶体化処理において、上記溶接部境界を起点としてひずみ時効割れが生じるのを抑制することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、第2の肉盛部35に対しては上述のような急速加熱及び急速冷却を行わないので、内部に溶接残留応力が残留するが、第2の肉盛部35はスキーラ12に直接接しないので、上記溶接部境界で溶接残留応力の緩和が集中して生じることがない。すなわち、後の溶体化処理においてもひずみ時効割れの原因とはならない。
【0040】
(第6の実施形態)
本実施形態では、特に図示しないものの、上記第1の実施形態から第5の実施形態において、肉盛部14(24)を急速加熱及び急速冷却する前に、肉盛部14(24)に対してピーニング処理を行うことができる。この場合、肉盛部14(24)の溶接割れの原因となる残留応力を予め低減しておくことができるので、後の急速加熱及び急速冷却を経た後の、溶接部境界(スキーラ12と肉盛部14(24)との境界)での溶接残留応力の緩和の度合いを低減させることができる。したがって、後の溶体化処理におけるひずみ時効割れをより効果的に抑制することができる。
【0041】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
11 ガスタービン動翼
12 スキーラ
14 肉盛部
21 高周波コイル
22 ハロゲンランプ
23 放物面鏡
25 レーザ
34 第1の肉盛部
35 第2の肉盛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル基超合金からなるスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法であって、
前記スキーラの損傷部を切削除去するステップと、
前記スキーラの切削除去した部分において、ニッケル基超合金から肉盛部を溶接によって形成するステップと、
前記肉盛部を、この肉盛部を構成する前記ニッケル基超合金の融点をm℃としたとき、当該融点の1/2m℃以上であって、前記融点以下の温度範囲に15℃/分以上500℃/分以下の昇温速度で加熱するステップと、
前記肉盛部に冷却ガスを吹き付け急冷するステップと、
前記肉盛部に対して溶体化処理を行うステップと、
を具えることを特徴とする、スキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。
【請求項2】
前記肉盛部の加熱は、電気炉を用いた熱輻射によって行うことを特徴とする、請求項1に記載のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。
【請求項3】
前記肉盛部の加熱は、高周波コイルを用いた誘導加熱によって行うことを特徴とする、請求項1に記載のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。
【請求項4】
前記肉盛部の加熱は、レーザを用いたレーザ光照射によって行うことを特徴とする、請求項1に記載のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。
【請求項5】
前記肉盛部の加熱は、ランプを用いた光照射によって行うことを特徴とする、請求項1に記載のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。
【請求項6】
前記肉盛部の加熱は、前記肉盛部上に追加の肉盛部を溶接によって形成する際の、当該溶接時に発生する熱を用いて行うことを特徴とする、請求項1に記載のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。
【請求項7】
前記肉盛部の形成後であって前記肉盛部の加熱前において、前記肉盛部に対してピーニング処理を行うステップを具えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のスキーラ付きガスタービン動翼の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68085(P2013−68085A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205035(P2011−205035)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】