スタンパー、凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法
【課題】所望の開口長の凹部を有する凹凸パターンを高精度で形成し得るスタンパーを提供する。
【解決手段】凸部5aに対する凹部5bの面積比が相違する各領域に対して面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5が形成されている。この場合、一例として、情報記録媒体製造用のスタンパー1においては、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりもバーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように凹凸パターン5を形成すると共にデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1よりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2が浅くなるように形成する。
【解決手段】凸部5aに対する凹部5bの面積比が相違する各領域に対して面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5が形成されている。この場合、一例として、情報記録媒体製造用のスタンパー1においては、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりもバーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように凹凸パターン5を形成すると共にデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1よりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2が浅くなるように形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体等の製造時に用いるスタンパー、基材の表面に形成した樹脂層にスタンパーを押し付けてその凹凸形状を転写する凹凸パターン形成方法、および樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体等を製造する工程において基材の表面に形成したレジスト層(樹脂層)に微細な凹凸パターン(レジストパターン)を形成する凹凸パターン形成方法として、光リソグラフィ法が従来から知られている。この光リソグラフィ法では、基材上に形成したレジスト層に光を照射して露光パターンを形成した後にレジスト層を現像処理することによって基材の上に凹凸パターンを形成する。また、近年では、情報記録媒体の大容量化に対応するための技術として、光に代えて電子ビームを照射することでナノメートルサイズのパターンを描画して凹凸パターンを形成する電子ビームリソグラフィ法が開発されている。しかし、この電子ビームリソグラフィ法では、レジスト層に対するパターンの描画に長時間を要するため、大量生産が困難であるという問題点が存在する。
【0003】
この問題点を解決する凹凸パターン形成方法として、ナノメートルサイズの凹凸パターンを形成したスタンパーを基材上の樹脂層に押し付けてスタンパーの凹凸形状を樹脂層に転写することによって基材の上にナノメートルサイズの凹凸パターンを形成するナノインプリントリソグラフィ法(ナノメートルサイズの凹凸パターンを形成するインプリント方法:以下、「インプリント方法」ともいう)が米国特許5772905号明細書に開示されている。このインプリント方法では、まず、同明細書のFig.1Aに示すように、その転写面にナノメートルサイズ(一例として、最小幅が25nm程度)の凹凸パターンが形成されたスタンパー(mold)10x(以下、米国特許5772905号明細書に開示されている構成要素については、符号の末尾に「x」を付加して表記する)を製造する。具体的には、シリコン基板(silicon substrate )12xの表面に形成された酸化シリコン等の薄膜(molding layer )14xを覆うようにして形成された樹脂層に電子ビームリソグラフィ装置を用いて所望のパターンを描画した後に、反応性イオンエッチング装置によって樹脂層をマスクとして薄膜14xをエッチング処理することにより、複数の凸部(features)16axを有する凹凸パターン16x(図24参照)を薄膜14xの厚み内に形成する。これにより、スタンパー10xが製造される。
【0004】
次いで、例えば、シリコン製の基材(substrate )18xの表面にポリメチルメタクリレート(PMMA:樹脂材料)をスピンコートして厚み55nm程度の樹脂層(薄膜:thin film layer )20xを形成する。続いて、基材18xおよび樹脂層20xの積層体、並びにスタンパー10xの双方を200℃程度となるように加熱した後に、同明細書のFig.1Bに示すように、13.1MPa(133.6kgf/cm2)の圧力で基材18x上の樹脂層20xにスタンパー10xの各凸部16axを押し付ける。この際には、図24に示すように、各凸部16axを押し込んだ部位の樹脂材料が凸部16axの周囲に形成されている凹部16bx内に向けて移動する。次いで、スタンパー10xを押し付けた状態の積層体を室温となるまで放置した後に(冷却処理した後に)、樹脂層20xからスタンパー10xを剥離する。これにより、同明細書のFig.1Cおよび図27に示すように、スタンパー10xの凹凸パターン16xが樹脂層20xに転写されて各凸部16axを押し込んだ部位に各凹部(regions )24bxが形成されると共に各凹部16bxの部位に各凸部24axが形成され、基材18xの上(樹脂層20x)にナノメートルサイズの凹凸パターン24xが形成される。
【特許文献1】米国特許5772905号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のインプリント方法には、以下の問題点がある。すなわち、このインプリント方法では、同明細書のFig.1A,1Bおよび図24に示すように、凹凸パターン16xにおける各凹部16bxの深さが全域において均一となるように形成したスタンパー10xを樹脂層20xに押し付けることで凹凸パターン24xを形成している。この場合、例えば、図28に示す情報記録媒体100xを製造するためのスタンパー10xには、データトラックパターンを形成するための凹凸パターン16xが形成されたデータトラックパターン形成領域Atsx(図24参照)や、サーボパターンを形成するための凹凸パターン16xが形成されたサーボパターン形成領域Assx(図24参照)などの各領域毎に、凸部16axに対する凹部16bxの面積比が相違するように凹凸パターン16xが形成されている。
【0006】
具体的には、例えば、サーボパターンにおけるバーストパターンの単位バースト領域(バーストパターンを構成する複数の略平行四辺形の領域、または、複数の略楕円形(円形を含む)の領域)に対応する領域が凸部16axで構成された凹凸パターン16xを有するスタンパー10xでは、バーストパターンを形成するためのバーストパターン形成領域Absx(図24参照)内における凸部16axに対する凹部16bxの面積比が、データトラックパターン形成領域Atsx内における凸部16axに対する凹部16bxの面積比よりも大きくなっている。したがって、図24に示すように、インプリント処理に際して、例えば、データトラックパターン形成領域Atsx内の各凸部16axとバーストパターン形成領域Absx内の各凸部16axとを互いに等しい長さだけ樹脂層20xに対して押し込んだときに、データトラックパターン形成領域Atsx内においては、凸部16axの押し込みによって移動した樹脂材料によって凹部16bx内が満たされた状態となる。これに対して、バーストパターン形成領域Absx内においては、凸部16axの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないため(押し込みによって移動する樹脂材料の量に対して凹部16bxの容積が大きいため)、凹部16bx内が樹脂材料によって満たされずに、樹脂層20xの上面と凹部16bxの底面との間に隙間が生じた状態となる。
【0007】
この場合、データトラックパターン形成用の凹凸パターン16xやサーボパターン形成用の凹凸パターン16xなどが形成されている凹凸パターン形成領域A1x(図26参照)内では、押し付け時にスタンパー10xや基材18xに生じた撓みに起因して、例えば、外周部Aoxの凸部16axが矢印Coで示すように内周側に向けて移動すると共に、内周部Aixの凸部16axが矢印Ciで示すように外周側に向けて移動することがある。一方、前述したように、例えばバーストパターン形成領域Absx内においては、凸部16axを樹脂層20xに押し込んだ状態において、図24に示すように凹部16bx内が樹脂材料によって満たされずに、樹脂層20xの上面と凹部16bxの底面との間に隙間が生じた状態となる。この状態において、スタンパー10xの例えば外周部Aoxが上記の撓みに起因して基材18xに対して矢印Coの向きで内周に向けて移動したときには、図25に示すように、バーストパターン形成領域Absxにおける外周部Aoxに形成された凹部16bx内の樹脂材料が凹部16bx内を移動して凸部16axの内周側の壁面に貼り付いた状態となる。
【0008】
したがって、図27に示すように、樹脂層20xに転写された凹凸パターン24xでは、バーストパターン形成領域Absxにおける外周部Aoxに対応する部位(同図における左側の断面図)において、バーストパターン形成用の凸部16axにおける径方向の長さL11x(情報記録媒体における径方向に対応する長さ:図25参照)よりも、上記の矢印Coの向きでスタンパー10xの外周部Aoxが移動した距離だけ凹部24bxの径方向の長さL13xが長くなる。この結果、この凹凸パターン24xをマスクとして用いて基材18xをエッチング処理して情報記録媒体100xを製造したときには、図28に示すように、基材18xに形成された凹凸パターン105xにおけるバーストパターンの外周側(同図における左側)において、その凹部105bxの径方向の長さL15xが本来の長さL14x(スタンパー10xにおける凸部16axの径方向の長さL11xに対応する長さ)よりも長くなる事態が生じる。
【0009】
これに対して、図25に示すように、データトラックパターン形成領域Atsx内においては、インプリント処理時に凸部16axを樹脂層20xに押し込んだ際に樹脂材料によって凹部16bx内が満たされた状態となる。このため、スタンパー10xの例えば外周部Aoxが上記の撓みに起因して基材18xに対して矢印Coの向きで内周に向けて移動したとしても、凹部16bx内の樹脂材料が凹部16bxと相補的な形状を保った状態が維持される。したがって、図27に示すように、樹脂層20xに転写された凹凸パターン24xでは、データトラックパターン形成領域Atsxにおける外周部Aoxに対応する部位(同図における右側の断面図)において、凹部24bxの径方向の長さL12xがスタンパー10xにおけるデータトラックパターン形成用の凸部16axにおける径方向の長さL11x(図25参照)と同じ長さとなる。この結果、この凹凸パターン24xをマスクとして用いて基材18xをエッチング処理した情報記録媒体100xでは、図28に示すように、基材18xに形成された凹凸パターン105xにおけるデータトラックパターンの外周側(同図における右側)において、その凹部105bxの径方向の長さL14xが本来の長さ(スタンパー10xにおける凸部16axの径方向の長さL11xに対応する長さ)となる。
【0010】
この場合、情報記録媒体100xに対するトラッキングサーボ制御に際しては、バーストパターンの単位バースト領域における径方向の端部の位置、すなわち、スタンパー10xにおけるバーストパターン形成領域Absx内の凹凸パターン16xの押し付け部位に形成された凹部105bxにおける径方向の端部の位置と、データトラックパターンのデータ記録トラックにおける径方向の中心の位置、すなわち、スタンパー10xにおけるデータトラックパターン形成領域Atsx内の凹凸パターン16xの押し付け部位に形成された凸部105ax(図28参照)における径方向の中心の位置との位置関係が非常に重要となる。しかし、従来のインプリント方法によって形成した凹凸パターン24xをマスクとして用いて製造した情報記録媒体100xでは、そのバーストパターンに対応する領域の内周部および外周部において各凹部105bの径方向の長さL15xが本来の長さL14xよりも長くなるのに対し、そのデータトラックパターンに対応する領域においては、その内周部から外周部までの全域において各凹部105bの径方向の長さL14xが本来の長さとなるように凹凸パターン105xが形成される。このため、単位バースト領域における径方向の端部の位置とデータ記録トラックにおける径方向の中心の位置との関係が情報記録媒体100xの内周部および外周部において本来の位置関係とは相違する状態となる。この結果、内周部および外周部において正確なトラッキング制御が困難となるおそれがある。
【0011】
なお、樹脂層20xに対する押し付け時にスタンパー10xや基材18xに生じた撓みに起因して、径方向においてパターンのずれ(凹部の拡がり)が生じる例について説明したが、スタンパー10xや基材18xに生じる撓みの向きによっては、周方向においてパターンのずれ(凹部の拡がり)が生じることもある。このように、従来のインプリント方法には、基材18x上に凹凸パターン24xを形成する際に、各凹部24bxの径方向の長さ、または、周方向の長さ(開口長)を所望の長さに形成するのが困難であるという問題点が存在する。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、所望の開口長の凹部を有する凹凸パターンを高精度で形成し得るスタンパー、凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく本発明に係るスタンパーは、凸部に対する凹部の面積比が相違する各領域に対して当該面積比が大きい前記領域ほど前記凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンが形成されている。なお、本明細書における「凸部に対する凹部の面積比」とは、凹部の面積を凸部の面積で除した値を意味する。また、本明細書における「凹部の深さ」とは、凹部の周囲に形成された凸部の突端と凹部の底面との間の距離を意味する。
【0014】
また、本発明に係るスタンパーは、少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0015】
また、本発明に係るスタンパーは、少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0016】
また、本発明に係るスタンパーは、データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0017】
さらに、本発明に係るスタンパーは、前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0018】
また、本発明に係るスタンパーは、データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0019】
さらに、本発明に係るスタンパーは、前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0020】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、基材の表面に樹脂材料を塗布して形成した樹脂層に上記のいずれかのスタンパーにおける前記スタンパー側凹凸パターンを押し付けるスタンパー押付け処理と、前記樹脂層から前記スタンパーを剥離するスタンパー剥離処理とをこの順で実行して、前記スタンパー側凹凸パターンの凹凸形状を前記樹脂層に転写する。
【0021】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法は、上記の凹凸パターン形成方法によって前記樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るスタンパーによれば、凸部に対する凹部の面積比が大きい領域ほど凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、凹凸パターンの形成処理時におけるスタンパー押付け処理に際して各凸部を樹脂層に押し込んだときに、凸部の押し込みによって凹部内に移動する樹脂材料の量が凹部の面積に対して少ない領域であっても、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、スタンパーや基材の撓みに起因して例えばスタンパーの内周部や外周部が中周部側に移動したとしても、凹部内における樹脂材料の移動量を十分に小さくする、または、凹部内における樹脂材料の移動を回避することができる。これにより、スタンパー側凹凸パターンを転写して形成した凹凸パターンにおいて凹部の径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して所望の開口長の凹部を有する凹凸パターンを高精度で形成することができる。
【0023】
また、本発明に係るスタンパーによれば、プリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、プリアンブルパターン形成領域内の凹部の深さよりもバーストパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部で構成したことで凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域について、プリアンブルパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0024】
また、本発明に係るスタンパーによれば、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、プリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域内の凹部の深さよりもプリアンブルパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域内よりも少ないプリアンブルパターン形成領域について、バーストパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、プリアンブルパターンに対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0025】
また、本発明に係るスタンパーによれば、データトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、データトラックパターン形成領域内の凹部の深さよりもバーストパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部で構成したことで凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域について、データトラックパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0026】
さらに、本発明に係るスタンパーによれば、データトラックパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1の条件を満たすようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、データトラックパターン形成領域およびバーストパターン形成領域の双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部内を樹脂材料で満たすことができる。
【0027】
また、本発明に係るスタンパーによれば、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、データトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域内の凹部の深さよりもデータトラックパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域内よりも少ないデータトラックパターン形成領域について、バーストパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、ガードバンド部(またはデータ記録トラック)に対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0028】
さらに、本発明に係るスタンパーによれば、データトラックパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2の条件を満たすようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、データトラックパターン形成領域およびバーストパターン形成領域の双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部内を樹脂材料で満たすことができる。
【0029】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、上記のいずれかのスタンパーを用いたスタンパー押付け処理と、スタンパー剥離処理とをこの順で実行して、スタンパー側凹凸パターンの凹凸形状を樹脂層に転写することにより、スタンパー押付け処理に際して、スタンパーの全域において樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、各凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、樹脂層の全域において凹部の径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して、高精度で凹凸パターンを形成することができる。
【0030】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法によれば、上記の凹凸パターン形成方法によって樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造することにより、例えば、バーストパターンにおける単位バースト領域の径方向の端部とデータ記録トラックの中心との位置関係を情報記録媒体の全域において所望の位置関係とすることができる。したがって、この情報記録媒体では、正確なトラッキングサーボ制御が可能となる結果、記録再生エラーの発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスタンパー、凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法の最良の形態について説明する。
【0032】
最初に、本発明に係るスタンパーについて、図面を参照して説明する。
【0033】
図1に示すスタンパー1は、本発明に係る情報記録媒体製造方法に従って図21に示す情報記録媒体40を製造可能に構成されたインプリント用の原盤であって、全体として円板状に形成されている。この場合、情報記録媒体40は、データトラックパターンおよびサーボパターンの双方が凹凸パターン41で形成されたディスクリートトラック型の磁気記録媒体であって、データトラックパターン領域およびサーボパターン領域が回転方向(周方向)において交互に並ぶように規定されている。
【0034】
一方、図1,2に示すように、スタンパー1は、データトラックパターンを形成するための凸部5aおよび複数の凹部5b(図2参照)を有する凹凸パターン5t(本発明における「スタンパー側凹凸パターン」の一例)が形成されたデータトラックパターン形成領域Atsと、サーボパターンを形成するための複数の凸部5aおよび複数の凹部5b(図2参照)を有する凹凸パターン5s(本発明における「スタンパー側凹凸パターン」の他の一例)が形成されたサーボパターン形成領域Assとが情報記録媒体40における回転方向(周方向)に対応する向き(図1に示す矢印Rの向き)おいて交互に並ぶように規定されている。この場合、このスタンパー1の凹凸パターン5t,5s(以下、「凹凸パターン5」ともいう)は、情報記録媒体40における凹凸パターン41の各凹部41bに対応して各凸部5aが形成されると共に、凹凸パターン41の各凸部41aに対応して各凹部5bが形成されている。なお、図2では、本発明についての理解を容易とするために、各凸部5aおよび各凹部5bの長さや形状を実際とは異なる長さや形状で図示している。また、本明細書では、情報記録媒体の回転方向に対応する向きにおいて並ぶ2つのデータトラックパターン形成領域Atsによって挟まれた領域(1つのデータトラックパターン形成領域Atsにおける回転方向に対して下流側の端部から、他の1つのデータトラックパターン形成領域Atsにおける回転方向に対して上流側の端部までの間の領域)をサーボパターン形成領域Assとする。
【0035】
この場合、図3に示すように、データトラックパターン形成領域Atsに形成された凸部5aは、所定の配列ピッチで互いに分割された同心円状の数多くのガードバンド部を形成するための凸部であって、情報記録媒体40の周方向(回転方向:矢印Rの向き)に対応する向きに沿って連続的に形成されて周方向に長い帯状に形成されている。この凸部5aは、スタンパー1の内周部Aiから外周部Aoまで情報記録媒体40の径方向に沿った各凸部5aの長さ(以下、「径方向の長さ」ともいう)L1aが互いに等しくなるように形成されている。また、データトラックパターン形成領域Atsに形成された凹部5bは、所定の配列ピッチで互いに分割された同心円状の数多くのデータ記録用トラックを形成するための凹部であって、一例として、スタンパー1の内周部Aiから外周部Aoまで径方向の各凹部5bの長さL1bが互いに等しく、かつ凸部5aの長さL1aと等しくなるように形成されている。したがって、このスタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Ats内の凹凸パターン5tでは、内周部Aiにおける領域A1i、中周部Acにおける領域A1c、および外周部Aoにおける領域A1oの各領域(一例として、その周方向の長さがプリアンブルパターンにおける一組の凸部および凹部の周方向の長さで、その径方向の長さが1トラックピッチに対応する長さの平面視平行四辺形の領域)内において、凸部5aに対する凹部5bの面積比が互いに等しくなっている。
【0036】
また、図2に示すように、サーボパターン形成領域Assには、プリアンブルパターンを形成するための凹凸パターン5sが形成されたプリアンブルパターン形成領域Apsと、アドレスパターンを形成するための凹凸パターン5sが形成されたアドレスパターン形成領域と(図示せず)、バーストパターンを形成するための凹凸パターン5sが形成されたバーストパターン形成領域Absとが規定されている。さらに、バーストパターン形成領域Abs内には、情報記録媒体40のバーストパターンにおける各信号領域に対応する領域Ab1s〜Ab4sの4つの領域が規定されている。
【0037】
この場合、図4に示すように、プリアンブルパターン形成領域Apsに形成された凸部5aは、プリアンブルパターン(凹凸パターン41)における凹部41bを形成するための凸部であって、情報記録媒体40の径方向に対応する向きに沿って連続的に形成されて径方向に長い帯状に形成されている。この凸部5aは、情報記録媒体40における周方向に沿った長さ(以下、「周方向の長さ」ともいう)L2ai,L2ac,L2ao(以下、区別しないときには「長さL2a」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。また、プリアンブルパターン形成領域Apsに形成された凹部5bは、プリアンブルパターン(凹凸パターン41)における凸部41aを形成するための凹部であって、情報記録媒体40における周方向に沿った長さ(以下、「周方向の長さ」ともいう)L2bi,L2bc,L2bo(以下、区別しないときには「長さL2b」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。この場合、凸部5aの長さL2aと、凹部5bの長さL2bとは、一例として、同一半径位置において互いに等しくなるように規定されている。したがって、このスタンパー1におけるプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹凸パターン5sでは、内周部Aiにおける領域A2i、中周部Acにおける領域A2c、および外周部Aoにおける領域A2oの各領域(一例として、その周方向の長さがプリアンブルパターンにおける一組の凸部および凹部の周方向の長さで、その径方向の長さが2トラックピッチに対応する長さの平面視平行四辺形の領域)内において、凸部5aに対する凹部5bの面積比が互いに等しくなっている。
【0038】
また、図5に示すように、バーストパターン形成領域Absに形成された凸部5aは、バーストパターン(凹凸パターン41)における凹部41b(単位バースト領域)を形成するための凸部であって、情報記録媒体40における周方向に沿った長さ(以下、「周方向の長さ」ともいう)L3ai,L3ac,L3ao(以下、区別しないときには「長さL3a」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。また、バーストパターン形成領域Absに形成された凹部5bは、バーストパターン(凹凸パターン41)における凸部41aを形成するための凹部であって、周方向において隣り合う2つの凸部5aの間の周方向の長さL3bi,L3bc,L3bo(以下、区別しないときには「長さL3b」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。この場合、凸部5aの長さL3aと、凹部5bの長さL3bとは、一例として、同一半径位置において互いに等しくなるように規定されている。したがって、このスタンパー1におけるバーストパターン形成領域Abs内の凹凸パターン5sでは、内周部Aiにおける領域A3i、中周部Acにおける領域A3cおよび外周部Aoにおける領域A3oの各領域(一例として、その周方向の長さが単位バースト領域に対応する凸部の周方向の長さと、その凸部の周方向における間の凹部の周方向の長さとの合計長で、その径方向の長さが2トラックピッチに対応する長さの平面視平行四辺形の領域)内において、凸部5aに対する凹部5bの面積比が互いに等しくなっている。
【0039】
この場合、図6に示すように、このスタンパー1では、凹凸パターン5を構成する各凸部5aの突端部がほぼ面一になるように形成されている。なお、同図および後に参照する図7〜16,18〜21では、本発明についての理解を容易とするために、各凸部や各凹部について、その長さ、高さ(深さ)および形状を実際とは相違する長さ、高さ(深さ)および形状で図示している。また、このスタンパー1では、凸部5aに対する凹部5bの面積比(以下、単に「面積比」ともいう)が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなり、面積比が等しい領域同士では凹部5bの深さが互いに等しい深さとなるように形成されている。具体的には、データトラックパターン形成領域Ats内では、領域A1i,A1c,A1oのすべてにおいて面積比が1となっている。また、プリアンブルパターン形成領域Aps内では、領域A2i,A2c,A2oのすべてにおいて面積比が1となっている。したがって、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1と、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さ(図示せず)とは互いに等しい深さに規定されている。一方、バーストパターン形成領域Abs内では、領域A3i,A3c,A3oのすべてにおいて面積比が3となっている。したがって、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2は、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1やプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりも浅くなるように規定されている。
【0040】
次に、スタンパー1の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明についての理解を容易とするために、サーボパターン形成領域Assのうちのプリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs、並びにデータトラックパターン形成領域Atsについてのみ説明し、その他のパターン形成領域についての説明を省略する。
【0041】
まず、図7に示すように、表面が平坦となるように研磨したシリコン製の基材11にレジスト(一例として、日本ゼオン株式会社製:ZEP520A)をスピンコートすることにより、基材11の表面のレジスト層12を形成する。なお、スタンパー1の製造に際して用いる基材はシリコン製の基材に限定されず、ガラス基材やセラミック基材等の各種基材を用いることができる。また、レジスト層12を形成するためのレジストについても上記のレジストに限定されず、任意のレジスト材を用いることができる。次いで、電子ビームリソグラフィ装置を用いてレジスト層12に電子線を照射して所望の露光パターン(この例では、バーストパターン形成領域Abs内の各凹部5bに対応するパターン)を描画する。続いて、この状態のレジスト層12を現像処理することによって潜像12aの部位を消失させる。これにより、図8に示すように、潜像12aの部位に凹部13bが形成され、基材11の上に凹凸パターン13が形成される。次いで、凹凸パターン13が形成されたレジスト層12をマスクとして用いて凹部13bの底面においてレジスト層12から露出している基材11をエッチング処理することにより、図9に示すように、基材11に複数の凹部14bを有する凹凸パターン14を形成する。この際には、凹部14bの深さD12(基材11の表面と凹部14bの底面との間の距離)が製造目標のスタンパー1におけるバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2と等しくなるようにエッチング処理を行う。
【0042】
次いで、基材11上に残存しているレジスト層12を除去した後に、凹凸パターン14の形成が完了した基材11にレジストをスピンコートすることにより、図10に示すように、基材11の表面にレジスト層15を形成する。続いて、電子ビームリソグラフィ装置を用いてレジスト層15に電子線を照射して所望の露光パターン(この例では、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5b、およびプリアンブルパターン形成領域Aps内の各凹部5bに対応するパターン)を描画する。次いで、この状態のレジスト層15を現像処理することによって潜像15aの部位を消失させる。これにより、図11に示すように、潜像15aの部位に凹部16bが形成され、基材11の上に凹凸パターン16が形成される。続いて、凹凸パターン16が形成されたレジスト層15をマスクとして用いて凹部16bの底面においてレジスト層15から露出している基材11をエッチング処理することにより、図12に示すように、基材11に複数の凹部17bを有する凹凸パターン17を形成する。この際には、凹部17bの深さD11(基材11の表面と凹部17bの底面との間の距離)が製造目標のスタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1およびプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さと等しくなるようにエッチング処理を行う。この後、基材11上に残存しているレジスト層15を除去することにより、図13に示すように、スタンパー1を製造するための原盤18が完成する。
【0043】
続いて、原盤18における凹凸パターン14,17の形成面にニッケルを蒸着処理することによって導電膜を形成した後に(図示せず)、この導電膜を電極として使用して電鋳処理を実行することにより、図14に示すように、基材11の凹凸パターン形成面(同図における上面)にニッケル層19を形成する。次いで、電極膜およびニッケル層19の積層体を基材11(原盤18)から剥離する。これにより、図15に示すように、原盤18の凹凸パターン14,17が電極膜およびニッケル層19に転写されて凹凸パターン21,22を有する原盤20が形成される。この場合、この原盤20における凹凸パターン21,22では、原盤18における各凸部14a,17a(図13参照)に対応して各凹部21b,22bが形成され、原盤18における各凹部14b,17b(図13参照)に対応して各凸部21a,22aが形成されている。したがって、凸部21aの高さH2は、原盤18における凹部14bの深さD12と等しく、凸部22aの高さH1は、原盤18における凹部17bの深さD11と等しくなっている。
【0044】
次いで、原盤20における凹凸パターン21,22の形成面に対して電鋳処理を実行することにより、図16に示すように、原盤20の凹凸パターン形成面(同図における下面)にニッケル層25を形成する。続いて、ニッケル層25を原盤20から剥離する。この後、ニッケル層25における凹凸パターン形成面の裏面側を研磨処理することにより、図6に示すように、スタンパー1が完成する。この場合、スタンパー1における凹凸パターン5では、原盤20における各凸部21aに対応してバーストパターン形成領域Abs内に各凹部5bが形成されると共に、原盤20における各凸部22aに対応してデータトラックパターン形成領域Atsおよびプリアンブルパターン形成領域Aps内に各凹部5bが形成されている。また、この凹凸パターン5では、原盤20における各凹部21bに対応してバーストパターン形成領域Abs内に各凸部5aが形成されると共に、原盤20における各凹部21bに対応してデータトラックパターン形成領域Atsおよびプリアンブルパターン形成領域Aps内に各凸部5aが形成されている。したがって、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2は、原盤20における凸部21aの高さH2と等しく、データトラックパターン形成領域Atsおよびプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さD1は、原盤20における凸部22aの高さH1と等しくなっている。
【0045】
続いて、本発明に係る凹凸パターン形成方法に従い、上記したスタンパー1を用いて情報記録媒体40を製造するための中間体30の上に凹凸パターンを形成する工程について、図面を参照して説明する。
【0046】
まず、図17に示すように、一例として、アルミナ、シリコン、ガラスまたはセラミック等で円板状に形成された基材31の上に磁性層32を形成した中間体30の上に樹脂材料を塗布することにより、中間体30の上に樹脂層33を形成する。この際には、後述するスタンパー押付け処理時に樹脂層33にスタンパー1の凹凸パターン5を押し付けた際に、凹凸パターン5の全域において各凹部5b内が樹脂材料で満たされ(スタンパー1の全域において樹脂材料で各凹部5b内が満たされる厚み)、かつ、データトラックパターン形成領域Atsやプリアンブルパターン形成領域Apsのように凸部5aに対する凹部5bの面積比が小さい領域において厚手の残渣が生じない程度の厚みとなるように樹脂材料の塗布量を調整する。この場合、樹脂層33を形成する樹脂材料については、後述するようにスタンパー1を剥離した際に形成される凹凸パターン34,35(図19参照)の凹凸形状が良好となることから、一例として、ポリスチレン系樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂およびノボラック系樹脂などを用いるのが好ましい。なお、樹脂層33を形成する中間体30には、実際には、基材31と磁性層32との間に軟磁性層や配向層等の各種機能層が存在するが、本発明についての理解を容易とするために、これらについての説明および図示を省略する。また、この例では、基材31および磁性層32によって本発明における基材が構成されている。
【0047】
次いで、樹脂層33が形成された中間体30およびスタンパー1をプレス機(図示せず)にセットする。具体的には、樹脂層33の形成面を上向きにして中間体30をプレス機に取り付けると共に、凹凸パターン5の形成面を下向きにしてスタンパー1をプレス機に取り付ける。この際に、後述するように、樹脂層33からの剥離に際してスタンパー1に対する樹脂材料の付着を防止するために、スタンパー1における凹凸パターン5の表面に例えばフッ素系材料のコーティング処理を施して密着力軽減膜を形成するのが好ましい。なお、密着力軽減膜を形成する材料については、フッ素系材料のコーティング材に限定されず、樹脂層33との密着力を軽減し得る各種材料を採用することができる。続いて、中間体30(樹脂層33)およびスタンパー1の双方を加熱する。この際には、樹脂層33およびスタンパー1の双方が、樹脂層33を形成しているノボラック系樹脂のガラス転移点(この例では、約70℃)よりも100℃程度高温の170℃程度となるように加熱処理する。これにより、樹脂層33が軟化して容易に変形可能な状態となる。この場合、樹脂材料のガラス転移点に対して70℃以上120℃以下の範囲内で高温となるように加熱するのが好ましく、100℃以上高温となるように加熱するのが一層好ましい。これにより、後述するように、樹脂層33に対するスタンパー1の押し付けを容易に行うことができる。
【0048】
次いで、図18に示すように、プレス機を作動させて中間体30における樹脂層33にスタンパー1の凹凸パターン5を押し付ける(本発明におけるスタンパー押付け処理)。この際には、一例として、スタンパー1の全域に亘って34kNの荷重をかけた状態を5分間に亘って維持する。また、プレス機によってスタンパー1を中間体30(樹脂層33)に押し付けている間に、樹脂層33およびスタンパー1の温度が低下しないように加熱処理を継続して実行するのが好ましい。具体的には、スタンパー押付け処理の実行中において、170℃±1℃の範囲内の温度に(一例として、温度変化が±0.2℃の範囲内の温度に)維持するのが好ましい。続いて、加熱処理を継続しつつ(170℃±1℃の範囲内の温度を維持しつつ)、中間体30(樹脂層33)からスタンパー1を剥離する(本発明におけるスタンパー剥離処理)。これにより、図19に示すように、スタンパー1における凹凸パターン5の凹凸形状が中間体30上の樹脂層33に転写されることで樹脂層33に凹凸パターン34,35が形成される。この場合、凹凸パターン34,35における凸部34a,35aは、スタンパー1における凹凸パターン5の凹部5bに対応して形成され、凹部34b,35bは、凸部5aに対応して形成されている。以上により、インプリント処理が完了する。
【0049】
この場合、このインプリント処理時に用いるスタンパー1は、前述したように、凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5が形成されている。具体的には、凹凸パターン5は、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように形成され、かつ、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs域内の凹部5bの深さが浅くなるように形成されている。また、凹凸パターン5は、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように形成され、かつ、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さが浅くなるように形成されている。
【0050】
したがって、図18に示すように、樹脂層33に対する各凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ない領域(例えば、バーストパターン形成領域Abs)内においても、各凸部5aの押し込みによって移動させられた樹脂材料によって各凹部5b内が満たされた状態となる。このため、スタンパー押付け処理時におけるスタンパー1や基材31の撓みに起因してスタンパー1の外周部Aoや内周部Aiが図1に示す矢印Co,Ciの向きに移動したとしても、凹部5b内の樹脂材料が凸部5aの側面に貼り付くようにして凹部5b内を移動する事態が回避される。この結果、図19に示すように、凹凸パターン34(バーストパターン形成領域Abs内の凹凸パターン5を転写した凹凸パターン)における各凹部34bが径方向に拡がる事態が回避され、各凹部34bの径方向の長さL12sがスタンパー1におけるバーストパターン形成領域Abs内の各凸部5aにおける径方向の長さL11s(図6参照)とほぼ等しい長さ(所望の長さ)となる。なお、凹凸パターン35(データトラックパターン形成領域Ats内の凹凸パターン5を転写した凹凸パターン)における各凹部35bについては、その径方向の長さL12tがスタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Ats内の各凸部5aにおける径方向の長さL11t(図6参照)とほぼ等しい長さ(所望の長さ)となる。
【0051】
この場合、スタンパー押付け処理時においてスタンパー1の凹部5b内に入り込む樹脂材料の量(凹部5b内に形成される凸部34aや凸部35aの高さ)は、樹脂層33に対して凸部5aを押し込んだ深さと、凸部5aの押し込みによって凸部5aの押し込み部位から凹部5b内に移動した樹脂材料によって形成される凸部高さとの和となる。この場合、凸部5aの押し込みによって押し込み部位から凹部5b内に移動した樹脂材料によって形成される凸部の高さは、「凸部5aの押し込み深さ」×「凸部5aの面積」/「凹部5bの面積」となる。したがって、「凸部5aの押し込み深さ」+「凸部5aの押し込み深さ」×「凸部5aの面積」/「凹部5bの面積」と凹部5bの深さとを等しくすることにより、各凹部5b内を樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0052】
具体的には、例えば、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2とし、各凸部5aの押し込み深さをAとしたときに、スタンパー押付け処理時にデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5b、およびバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bを樹脂材料で満たすためには、
D1=A+A×R1、D2=A+A×R2
の条件を満たせばよい。したがって、
D2=(1+R2)/(1+R1)×D1
の条件を満たすようにバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bについてもデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bと同様にして樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0053】
この場合、スタンパー1では、情報記録媒体40におけるデータトラックパターン領域およびサーボパターン領域に対応してデータトラックパターン形成領域Atsおよびサーボパターン形成領域Assが規定されているため、データトラックパターン形成領域Atsの面積がサーボパターン形成領域Assの面積に対して極めて広くなっている。したがって、データトラックパターン形成領域Atsについては、プレス機等によって加えられた力によって例えばスタンパー1に凹部5bの深さ方向の撓みが生じ、各凸部5aが樹脂層33に対して十分に奥深くまで押し込まれる。このため、各凹部5bの深さD1を上記の「A+A×R1」よりも深く規定したとしても、その凹部5b内を樹脂材料で満たすことが可能となっている。これに対して、サーボパターン形成領域Assの面積は、データトラックパターン形成領域Atsの面積に対して極めて狭くなっているため、プレス機等によって加えられた力による凹部5bの深さ方向の撓みが生じ難くなっている。このため、サーボパターン形成領域Ass(バーストパターン形成領域Abs)内の各凹部5bの深さD2を上記の「A+A×R2」よりも深く規定したときには、その凹部5b内を樹脂材料で満たすことが困難となっている。
【0054】
また、サーボパターン形成領域Assの面積がデータトラックパターン形成領域Atsの面積に対して極めて狭いため、データトラックパターン形成領域Ats内の各凸部5aを樹脂層33に対して十分に押し込むことができない状態では、サーボパターン形成領域Ass内の凸部5aについても樹脂層33に対して十分に押し込むことが困難となる。このため、サーボパターン形成領域Ass内の各凸部5aの十分な押し込みが完了するのに先立ってデータトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bが樹脂材料で満たされた時点でスタンパー押し付け処理が完了する事態、つまりサーボパターン形成領域Ass(バーストパターン形成領域Abs)内の各凹部5b内が樹脂材料で満たされることなくスタンパー押し付け処理が完了する事態を回避すべく、バーストパターン形成領域Abs内の各凹部5bの深さD2を上記の「A+A×R2」よりもある程度浅く規定するのが好ましい。したがって、
D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1
の条件を満たすようにバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2を規定することにより、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5b、およびバーストパターン形成領域Abs内の各凹部5b内を樹脂材料で確実に満たすことが可能となる。
【0055】
また、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR3としプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さをD3とし、プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs内の各凸部5aの押し込み深さをAとしたときには、
D3=A+A×R3、D2=A+A×R2
となる。したがって、
D2=(1+R2)/(1+R3)×D3
の条件を満たすようにバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bについても樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0056】
次に、本発明に係る情報記録媒体製造方法に従って情報記録媒体40を製造する工程について、図面を参照して説明する。
【0057】
まず、樹脂層33における凹凸パターン34,35の凹部34b,35bの底面に残存する樹脂材料(残渣)を酸素プラズマ処理によって除去する。次いで、凹凸パターン34,35(凸部34a,35a)をマスクとして用いてエッチング処理を行う。この際には、図20に示すように、凹凸パターン34,35の各凹部34b,35bにおける底面部分の磁性層32が除去されて基材31の上に凹凸パターン41が形成される。続いて、凹凸パターン41における各凸部41aの上に残存している樹脂層33を除去する。これにより、図21に示すように、スタンパー1の凹凸形状を転写した凹凸パターン34,35における各凹部34b,35bに対応する溝(凹部41b)が磁性層32に形成されたデータトラックパターンおよびサーボパターンが形成される。
【0058】
この場合、凹凸パターン41は、スタンパー1を押し付けて凹凸パターン34,35を形成した樹脂層33をマスクとして用いて形成されている。したがって、凹凸パターン41における各凹部41bの径方向の長さL13s,L13tは、凹凸パターン34,35における各凹部34b,35bの径方向の長さL12s,L12t(図19参照)とほぼ等しい長さ(所望の長さ)となる。次いで、表面仕上げ処理を行う。この表面仕上げ処理では、まず、例えば二酸化ケイ素を上記の溝に充填した後に(図示せず)、イオンビームエッチングによって表面を平坦化する。次に、平坦化した表面に例えばDLC(Diamond Like Carbon )で保護膜を形成し、最後に潤滑剤を塗布する。これにより、情報記録媒体40が完成する。この場合、この情報記録媒体40は、その開口幅(径方向の長さ)が所望の幅となるように形成された凹部34b,35b(図19参照)を有する凹凸パターン34,35を用いて製造されているため、この凹凸パターン34,35を用いて形成した凹凸パターン41(データ記録用トラックやサーボパターン等)の各凹部41bもその内周部から外周部までの全域において所望の幅となる。
【0059】
このように、このスタンパー1、およびスタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、凹凸パターンの形成処理時におけるスタンパー押付け処理に際して各凸部5aを樹脂層33に押し込んだときに、凸部5aの押し込みによって凹部5b内に移動する樹脂材料の量が凹部5bの面積に対して少ない領域であっても、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、その凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、スタンパー1や基材31の撓みに起因して例えばスタンパー1の内周部Aiや外周部Aoが中周部Ac側に移動したとしても、凹部5b内における樹脂材料の移動量を十分に小さくする、または、凹部5b内における樹脂材料の移動を回避することができる。これにより、凹凸パターン5を転写して形成した凹凸パターン34,35において凹部34b,35bの径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して所望の開口長の凹部34b,35bを有する凹凸パターン34,35を高精度で形成することができる。
【0060】
また、このスタンパー1、およびスタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部5aで構成したことで凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域Absについて、プリアンブルパターン形成領域Apsと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0061】
さらに、このスタンパー1、およびスタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部5aで構成したことで凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域Absについて、データトラックパターン形成領域Atsと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0062】
この場合、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2としたときに、D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1の条件を満たすように凹凸パターン5を形成したことにより、データトラックパターン形成領域Atsおよびバーストパターン形成領域Absの双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部5b内を樹脂材料で満たすことができる。
【0063】
また、スタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、中間体30上に形成した樹脂層33に上記のスタンパー1を押し付けるスタンパー押付け処理と、樹脂層33からスタンパー1を剥離するスタンパー剥離処理とをこの順で実行して、凹凸パターン5の凹凸形状を樹脂層33に転写することにより、スタンパー押付け処理に際して、スタンパー1の全域において樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、各凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、樹脂層33の全域において凹部34b,35bの径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して、高精度で凹凸パターン34,35を形成することができる。
【0064】
また、本発明に係る情報記録媒体の製造方法によれば、本発明に係る凹凸パターン形成方法によって樹脂層33に転写した凹凸パターン34,35を用いて情報記録媒体40を製造することにより、例えば、バーストパターンにおける単位バースト領域の径方向の端部とデータ記録トラックの中心との位置関係を情報記録媒体40の全域において所望の位置関係とすることができる。したがって、この情報記録媒体40では、正確なトラッキングサーボ制御が可能となる結果、記録再生エラーの発生を回避することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、バーストパターンにおける単位バースト領域に対応する部位を凸部5aで構成したスタンパー1について説明したが、図22,23に示すスタンパー1Aのように、バーストパターンにおける単位バースト領域に対応する部位を凹部5bで構成して凹凸パターン5sを形成することもできる。なお、両図において上記のスタンパー1と共通の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。このスタンパー1Aでは、凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなり、面積比が等しい領域同士では凹部5bの深さが互いに等しい深さとなるように形成されている。具体的には、データトラックパターン形成領域Ats内では、前述したスタンパー1と同様にして、領域A1i,A1c,A1oのすべてにおいて面積比が1となっている。また、プリアンブルパターン形成領域Aps内では、前述したスタンパー1と同様にして、領域A2i,A2c,A2oのすべてにおいて面積比が1となっている。したがって、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1と、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さ(図示せず)とは互いに等しい深さに規定されている。
【0066】
一方、このスタンパー1Aにおけるバーストパターン形成領域Abs内では、図23に示すように、領域A3i,A3c,A3oのすべてにおいて面積比が1/3となっている。したがって、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さは、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さやプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりも深くなるように規定されている。言い換えれば、このスタンパー1Aでは、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さやプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さがバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さよりも浅くなっている。
【0067】
この場合、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2とし、各凸部5aの押し込み深さをAとしたときには、
D1=A+A×R1、D2=A+A×R2
となる。したがって、
D1=(1+R1)/(1+R2)×D2
の条件を満たすようにデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bについても樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0068】
この場合、このスタンパー1Aでは、前述したスタンパー1と同様にして、サーボパターン形成領域Assの面積がデータトラックパターン形成領域Atsの面積に対して極めて狭いため、データトラックパターン形成領域Ats内の各凸部5aを樹脂層33に対して十分に押し込むことができない状態では、サーボパターン形成領域Ass内の凸部5aについても樹脂層33に対して十分に押し込むことが困難となる。このため、サーボパターン形成領域Ass内の各凸部5aの十分な押し込みが完了するのに先立ってデータトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bが樹脂材料で満たされた時点でスタンパー押し付け処理が完了する事態、つまりサーボパターン形成領域Ass(バーストパターン形成領域Abs)内の各凹部5b内が樹脂材料で満たされることなくスタンパー押し付け処理が完了する事態を回避すべく、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bの深さD1を上記の「A+A×R1」よりもある程度深く規定するのが好ましい。したがって、
D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2
の条件を満たすようにデータトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bの深さD1を規定することにより、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5b、およびバーストパターン形成領域Abs内の各凹部5b内を樹脂材料で確実に満たすことが可能となる。
【0069】
また、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR3とし、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さをD3とし、プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs内の各凸部5aの押し込み深さをAとしたときには、
D3=A+A×R3、D2=A+A×R2
となる。したがって、
D3=(1+R3)/(1+R2)×D2
の条件を満たすようにプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さD3を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bについても樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0070】
このように、このスタンパー1Aによれば、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さよりもプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域Abs内よりも少ないプリアンブルパターン形成領域Apsについて、バーストパターン形成領域Absと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、プリアンブルパターンに対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0071】
また、このスタンパー1Aによれば、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さよりもデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域Abs内よりも少ないデータトラックパターン形成領域Atsについて、バーストパターン形成領域Absと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、ガードバンド部(またはデータ記録トラック)に対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0072】
この場合、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2としたときに、D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2の条件を満たすように凹凸パターン5を形成したことにより、データトラックパターン形成領域Atsおよびバーストパターン形成領域Absの双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部5b内を樹脂材料で満たすことができる。
【0073】
さらに、本発明に係るスタンパー1には、上記のスタンパー1の凹凸形状をスタンパー形成材料に転写して製造したスタンパーをマスタースタンパーとして用いて、このマスタースタンパーの凹凸形状を他のスタンパー形成材料に転写することによって、すなわち、上記のスタンパー1の凹凸形状を偶数回だけ転写することによって形成したスタンパーがこれに含まれる。また、上記のスタンパー1の製造工程において製作した原盤18も本発明におけるスタンパーに含まれる。したがって、上記のスタンパー1に代えて、スタンパー1の凹凸形状を偶数回だけ転写して形成したスタンパーや原盤18をスタンパーとして用いて情報記録媒体40を製造することができる。また、平行四辺形状の単位バースト領域が周方向に並ぶバーストパターンを有するスタンパー1について説明したが、略楕円形(円形を含む)の単位バースト領域が周方向に並ぶバーストパターンを形成可能なスタンパーに本発明を適用することができる。
【0074】
さらに、上記のインプリント装置による凹凸パターン形成方法(情報記録媒体40の製造の製造方法)では、中間体30(樹脂層33)に対するスタンパー1の押し付け処理開始前からスタンパー1の剥離処理が完了するまでの間において、樹脂層33およびスタンパー1の双方に対する加熱処理を継続して実行しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、樹脂層33に対してある程度十分にスタンパー1を押し付けた後に、樹脂層33およびスタンパー1に対する加熱処理を終了し、その後にスタンパー1を剥離する工程を採用することもできる。この場合、スタンパー1の剥離に先立ってスタンパー1および中間体30の双方を樹脂層33のガラス転移点以下の温度まで冷却することもできる。また、そのガラス転移点が常温(一例として、25℃程度)よりも低い樹脂材料を用いて本発明における樹脂層を形成し、スタンパー押付け処理からスタンパー剥離処理までの間において加熱処理や冷却処理を実行することなく凹凸パターンを樹脂層に形成する方法を採用することもできる。さらに、本発明における樹脂材料として紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などを使用して樹脂層を形成し、スタンパー押付け処理後に紫外線または電子線を照射して樹脂層硬化(または、半硬化)させてからスタンパー剥離処理を実行することで凹凸パターンを樹脂層に形成する方法を採用することもできる。
【0075】
また、本発明における基材に相当する中間体30(磁性層32)の上に形成した樹脂層33にスタンパー1を押し付けて情報記録媒体40を製造する方法について説明したが、本発明に係る情報記録媒体製造方法は、これに限定されない。例えば、上記の中間体30と樹脂層33との間に1層以上のマスク層を形成すると共に、スタンパー1の押し付けによって樹脂層33に転写した凹凸パターン34,35をエッチング処理等によって下層側のマスク層(中間体30側のマスク層)に順次転写し、中間体30上のマスク層に転写した凹凸パターンをマスクとして用いて磁性層32をエッチング処理して凹凸パターン41を形成する製造方法を採用することができる。
【0076】
さらに、例えば、データトラックパターン形成領域Atsについては、領域A1i,A1c,A1o内(図3参照)における凸部5aに対する凹部5bの面積比を本発明における面積比とし、プリアンブルパターン形成領域Apsについては、領域A2i,A2c,A2o内(図4参照)における凸部5aに対する凹部5bの面積比を本発明における面積比とし、バーストパターン形成領域Absについては、領域A3i,A3c,A3o内(図5参照)における凸部5aに対する凹部5bの面積比を本発明における面積比として、面積比が大きい領域ほど、その領域内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成した例について説明したが、上記の面積比を比較する対象の「領域」については、上記の例示のような狭い範囲に限定されない。例えば、同種のパターン(機能的に同種のパターン、または、形状的に同種のパターン)が形成されている領域を1つの領域とし、相違するパターンが形成されている領域毎の凸部5aに対する凹部5bの面積比を比較し、面積比が大きい領域内の凹部5bの深さを深くするように凹凸パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】スタンパー1の平面図である。
【図2】スタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Atsおよびサーボパターン形成領域Ass(プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs)の一例を示す平面図である。
【図3】スタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Atsの平面図である。
【図4】スタンパー1におけるプリアンブルパターン形成領域Apsの平面図である。
【図5】スタンパー1におけるバーストパターン形成領域Absの平面図である。
【図6】スタンパー1の断面図である。
【図7】スタンパー1の製造工程において基材11上にレジスト層12を形成して潜像12aを形成した状態の断面図である。
【図8】図7に示す状態のレジスト層12を現像処理して凹凸パターン13を形成した状態の断面図である。
【図9】凹凸パターン13が形成されたレジスト層12をマスクとして用いて基材11をエッチング処理して凹凸パターン14を形成した状態の断面図である。
【図10】凹凸パターン14の形成が完了した基材11上にレジスト層15を形成して潜像15aを形成した状態の断面図である。
【図11】図10に示す状態のレジスト層15を現像処理して凹凸パターン16を形成した状態の断面図である。
【図12】凹凸パターン16が形成されたレジスト層15をマスクとして用いて基材11をエッチング処理して凹凸パターン17を形成した状態の断面図である。
【図13】レジスト層15を除去した状態の基材11の断面図である。
【図14】基材11における凹凸パターン14,17の形成面にニッケル層19を形成した状態の断面図である。
【図15】図14に示す状態のニッケル層19(原盤20)から基材11を剥離した状態の断面図である。
【図16】原盤20における凹凸パターン21,22の形成面にニッケル層25を形成した状態の断面図である。
【図17】磁性層32上に樹脂層33を形成した状態の中間体30の断面図である。
【図18】樹脂層33にスタンパー1を押し付けた状態の断面図である。
【図19】図18に示す状態の中間体30(樹脂層33)からスタンパー1を剥離して凹凸パターン34,35を形成した状態の断面図である。
【図20】図19に示す凹凸パターン34,35を用いて磁性層32をエッチングすることによって凹凸パターン41を形成した状態の断面図である。
【図21】図20に示す状態の樹脂層33を除去した情報記録媒体40の断面図である。
【図22】スタンパー1Aにおけるデータトラックパターン形成領域Atsおよびサーボパターン形成領域Ass(プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs)の一例を示す平面図である。
【図23】スタンパー1Aにおけるバーストパターン形成領域Absの平面図である。
【図24】従来のインプリント方法によってスタンパー10xを樹脂層20xに押し込んだ状態の断面図である。
【図25】図24に示す状態のスタンパー10xに撓みが生じた状態の断面図である。
【図26】従来のインプリント方法によってスタンパー10xを樹脂層20xに押し込んだ状態の他の断面図である。
【図27】従来のインプリント方法においてスタンパー10xを樹脂層20xから剥離した状態の断面図である。
【図28】従来のインプリント方法によって形成した凹凸パターン24xをマスクとして用いて製造した情報記録媒体100xの断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1,1A スタンパー
5,5s,5t,34,35,41 凹凸パターン
5a,34a,35a,41a 凸部
5b,34b,35b,41b 凹部
30 中間体
31 基材
32 磁性層
33 樹脂層
40 情報記録媒体
A1i,A1c,A1o,A2i,A2c,A2o,A3i,A3c,A3o 領域
Abs バーストパターン形成領域
Aps プリアンブルパターン形成領域
Ass サーボパターン形成領域
Ats データトラックパターン形成領域
D1,D2 深さ
L1a,L1b,L2ai,L2ac,L2ao,L2bi,L2bc,L2bo,L3ai,L3ac,L3ao,L3bi,L3bc,L3bo,L11s〜L13s,L11t〜L13t 長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体等の製造時に用いるスタンパー、基材の表面に形成した樹脂層にスタンパーを押し付けてその凹凸形状を転写する凹凸パターン形成方法、および樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体等を製造する工程において基材の表面に形成したレジスト層(樹脂層)に微細な凹凸パターン(レジストパターン)を形成する凹凸パターン形成方法として、光リソグラフィ法が従来から知られている。この光リソグラフィ法では、基材上に形成したレジスト層に光を照射して露光パターンを形成した後にレジスト層を現像処理することによって基材の上に凹凸パターンを形成する。また、近年では、情報記録媒体の大容量化に対応するための技術として、光に代えて電子ビームを照射することでナノメートルサイズのパターンを描画して凹凸パターンを形成する電子ビームリソグラフィ法が開発されている。しかし、この電子ビームリソグラフィ法では、レジスト層に対するパターンの描画に長時間を要するため、大量生産が困難であるという問題点が存在する。
【0003】
この問題点を解決する凹凸パターン形成方法として、ナノメートルサイズの凹凸パターンを形成したスタンパーを基材上の樹脂層に押し付けてスタンパーの凹凸形状を樹脂層に転写することによって基材の上にナノメートルサイズの凹凸パターンを形成するナノインプリントリソグラフィ法(ナノメートルサイズの凹凸パターンを形成するインプリント方法:以下、「インプリント方法」ともいう)が米国特許5772905号明細書に開示されている。このインプリント方法では、まず、同明細書のFig.1Aに示すように、その転写面にナノメートルサイズ(一例として、最小幅が25nm程度)の凹凸パターンが形成されたスタンパー(mold)10x(以下、米国特許5772905号明細書に開示されている構成要素については、符号の末尾に「x」を付加して表記する)を製造する。具体的には、シリコン基板(silicon substrate )12xの表面に形成された酸化シリコン等の薄膜(molding layer )14xを覆うようにして形成された樹脂層に電子ビームリソグラフィ装置を用いて所望のパターンを描画した後に、反応性イオンエッチング装置によって樹脂層をマスクとして薄膜14xをエッチング処理することにより、複数の凸部(features)16axを有する凹凸パターン16x(図24参照)を薄膜14xの厚み内に形成する。これにより、スタンパー10xが製造される。
【0004】
次いで、例えば、シリコン製の基材(substrate )18xの表面にポリメチルメタクリレート(PMMA:樹脂材料)をスピンコートして厚み55nm程度の樹脂層(薄膜:thin film layer )20xを形成する。続いて、基材18xおよび樹脂層20xの積層体、並びにスタンパー10xの双方を200℃程度となるように加熱した後に、同明細書のFig.1Bに示すように、13.1MPa(133.6kgf/cm2)の圧力で基材18x上の樹脂層20xにスタンパー10xの各凸部16axを押し付ける。この際には、図24に示すように、各凸部16axを押し込んだ部位の樹脂材料が凸部16axの周囲に形成されている凹部16bx内に向けて移動する。次いで、スタンパー10xを押し付けた状態の積層体を室温となるまで放置した後に(冷却処理した後に)、樹脂層20xからスタンパー10xを剥離する。これにより、同明細書のFig.1Cおよび図27に示すように、スタンパー10xの凹凸パターン16xが樹脂層20xに転写されて各凸部16axを押し込んだ部位に各凹部(regions )24bxが形成されると共に各凹部16bxの部位に各凸部24axが形成され、基材18xの上(樹脂層20x)にナノメートルサイズの凹凸パターン24xが形成される。
【特許文献1】米国特許5772905号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のインプリント方法には、以下の問題点がある。すなわち、このインプリント方法では、同明細書のFig.1A,1Bおよび図24に示すように、凹凸パターン16xにおける各凹部16bxの深さが全域において均一となるように形成したスタンパー10xを樹脂層20xに押し付けることで凹凸パターン24xを形成している。この場合、例えば、図28に示す情報記録媒体100xを製造するためのスタンパー10xには、データトラックパターンを形成するための凹凸パターン16xが形成されたデータトラックパターン形成領域Atsx(図24参照)や、サーボパターンを形成するための凹凸パターン16xが形成されたサーボパターン形成領域Assx(図24参照)などの各領域毎に、凸部16axに対する凹部16bxの面積比が相違するように凹凸パターン16xが形成されている。
【0006】
具体的には、例えば、サーボパターンにおけるバーストパターンの単位バースト領域(バーストパターンを構成する複数の略平行四辺形の領域、または、複数の略楕円形(円形を含む)の領域)に対応する領域が凸部16axで構成された凹凸パターン16xを有するスタンパー10xでは、バーストパターンを形成するためのバーストパターン形成領域Absx(図24参照)内における凸部16axに対する凹部16bxの面積比が、データトラックパターン形成領域Atsx内における凸部16axに対する凹部16bxの面積比よりも大きくなっている。したがって、図24に示すように、インプリント処理に際して、例えば、データトラックパターン形成領域Atsx内の各凸部16axとバーストパターン形成領域Absx内の各凸部16axとを互いに等しい長さだけ樹脂層20xに対して押し込んだときに、データトラックパターン形成領域Atsx内においては、凸部16axの押し込みによって移動した樹脂材料によって凹部16bx内が満たされた状態となる。これに対して、バーストパターン形成領域Absx内においては、凸部16axの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないため(押し込みによって移動する樹脂材料の量に対して凹部16bxの容積が大きいため)、凹部16bx内が樹脂材料によって満たされずに、樹脂層20xの上面と凹部16bxの底面との間に隙間が生じた状態となる。
【0007】
この場合、データトラックパターン形成用の凹凸パターン16xやサーボパターン形成用の凹凸パターン16xなどが形成されている凹凸パターン形成領域A1x(図26参照)内では、押し付け時にスタンパー10xや基材18xに生じた撓みに起因して、例えば、外周部Aoxの凸部16axが矢印Coで示すように内周側に向けて移動すると共に、内周部Aixの凸部16axが矢印Ciで示すように外周側に向けて移動することがある。一方、前述したように、例えばバーストパターン形成領域Absx内においては、凸部16axを樹脂層20xに押し込んだ状態において、図24に示すように凹部16bx内が樹脂材料によって満たされずに、樹脂層20xの上面と凹部16bxの底面との間に隙間が生じた状態となる。この状態において、スタンパー10xの例えば外周部Aoxが上記の撓みに起因して基材18xに対して矢印Coの向きで内周に向けて移動したときには、図25に示すように、バーストパターン形成領域Absxにおける外周部Aoxに形成された凹部16bx内の樹脂材料が凹部16bx内を移動して凸部16axの内周側の壁面に貼り付いた状態となる。
【0008】
したがって、図27に示すように、樹脂層20xに転写された凹凸パターン24xでは、バーストパターン形成領域Absxにおける外周部Aoxに対応する部位(同図における左側の断面図)において、バーストパターン形成用の凸部16axにおける径方向の長さL11x(情報記録媒体における径方向に対応する長さ:図25参照)よりも、上記の矢印Coの向きでスタンパー10xの外周部Aoxが移動した距離だけ凹部24bxの径方向の長さL13xが長くなる。この結果、この凹凸パターン24xをマスクとして用いて基材18xをエッチング処理して情報記録媒体100xを製造したときには、図28に示すように、基材18xに形成された凹凸パターン105xにおけるバーストパターンの外周側(同図における左側)において、その凹部105bxの径方向の長さL15xが本来の長さL14x(スタンパー10xにおける凸部16axの径方向の長さL11xに対応する長さ)よりも長くなる事態が生じる。
【0009】
これに対して、図25に示すように、データトラックパターン形成領域Atsx内においては、インプリント処理時に凸部16axを樹脂層20xに押し込んだ際に樹脂材料によって凹部16bx内が満たされた状態となる。このため、スタンパー10xの例えば外周部Aoxが上記の撓みに起因して基材18xに対して矢印Coの向きで内周に向けて移動したとしても、凹部16bx内の樹脂材料が凹部16bxと相補的な形状を保った状態が維持される。したがって、図27に示すように、樹脂層20xに転写された凹凸パターン24xでは、データトラックパターン形成領域Atsxにおける外周部Aoxに対応する部位(同図における右側の断面図)において、凹部24bxの径方向の長さL12xがスタンパー10xにおけるデータトラックパターン形成用の凸部16axにおける径方向の長さL11x(図25参照)と同じ長さとなる。この結果、この凹凸パターン24xをマスクとして用いて基材18xをエッチング処理した情報記録媒体100xでは、図28に示すように、基材18xに形成された凹凸パターン105xにおけるデータトラックパターンの外周側(同図における右側)において、その凹部105bxの径方向の長さL14xが本来の長さ(スタンパー10xにおける凸部16axの径方向の長さL11xに対応する長さ)となる。
【0010】
この場合、情報記録媒体100xに対するトラッキングサーボ制御に際しては、バーストパターンの単位バースト領域における径方向の端部の位置、すなわち、スタンパー10xにおけるバーストパターン形成領域Absx内の凹凸パターン16xの押し付け部位に形成された凹部105bxにおける径方向の端部の位置と、データトラックパターンのデータ記録トラックにおける径方向の中心の位置、すなわち、スタンパー10xにおけるデータトラックパターン形成領域Atsx内の凹凸パターン16xの押し付け部位に形成された凸部105ax(図28参照)における径方向の中心の位置との位置関係が非常に重要となる。しかし、従来のインプリント方法によって形成した凹凸パターン24xをマスクとして用いて製造した情報記録媒体100xでは、そのバーストパターンに対応する領域の内周部および外周部において各凹部105bの径方向の長さL15xが本来の長さL14xよりも長くなるのに対し、そのデータトラックパターンに対応する領域においては、その内周部から外周部までの全域において各凹部105bの径方向の長さL14xが本来の長さとなるように凹凸パターン105xが形成される。このため、単位バースト領域における径方向の端部の位置とデータ記録トラックにおける径方向の中心の位置との関係が情報記録媒体100xの内周部および外周部において本来の位置関係とは相違する状態となる。この結果、内周部および外周部において正確なトラッキング制御が困難となるおそれがある。
【0011】
なお、樹脂層20xに対する押し付け時にスタンパー10xや基材18xに生じた撓みに起因して、径方向においてパターンのずれ(凹部の拡がり)が生じる例について説明したが、スタンパー10xや基材18xに生じる撓みの向きによっては、周方向においてパターンのずれ(凹部の拡がり)が生じることもある。このように、従来のインプリント方法には、基材18x上に凹凸パターン24xを形成する際に、各凹部24bxの径方向の長さ、または、周方向の長さ(開口長)を所望の長さに形成するのが困難であるという問題点が存在する。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、所望の開口長の凹部を有する凹凸パターンを高精度で形成し得るスタンパー、凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく本発明に係るスタンパーは、凸部に対する凹部の面積比が相違する各領域に対して当該面積比が大きい前記領域ほど前記凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンが形成されている。なお、本明細書における「凸部に対する凹部の面積比」とは、凹部の面積を凸部の面積で除した値を意味する。また、本明細書における「凹部の深さ」とは、凹部の周囲に形成された凸部の突端と凹部の底面との間の距離を意味する。
【0014】
また、本発明に係るスタンパーは、少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0015】
また、本発明に係るスタンパーは、少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0016】
また、本発明に係るスタンパーは、データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0017】
さらに、本発明に係るスタンパーは、前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0018】
また、本発明に係るスタンパーは、データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0019】
さらに、本発明に係るスタンパーは、前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている。
【0020】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、基材の表面に樹脂材料を塗布して形成した樹脂層に上記のいずれかのスタンパーにおける前記スタンパー側凹凸パターンを押し付けるスタンパー押付け処理と、前記樹脂層から前記スタンパーを剥離するスタンパー剥離処理とをこの順で実行して、前記スタンパー側凹凸パターンの凹凸形状を前記樹脂層に転写する。
【0021】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法は、上記の凹凸パターン形成方法によって前記樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るスタンパーによれば、凸部に対する凹部の面積比が大きい領域ほど凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、凹凸パターンの形成処理時におけるスタンパー押付け処理に際して各凸部を樹脂層に押し込んだときに、凸部の押し込みによって凹部内に移動する樹脂材料の量が凹部の面積に対して少ない領域であっても、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、スタンパーや基材の撓みに起因して例えばスタンパーの内周部や外周部が中周部側に移動したとしても、凹部内における樹脂材料の移動量を十分に小さくする、または、凹部内における樹脂材料の移動を回避することができる。これにより、スタンパー側凹凸パターンを転写して形成した凹凸パターンにおいて凹部の径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して所望の開口長の凹部を有する凹凸パターンを高精度で形成することができる。
【0023】
また、本発明に係るスタンパーによれば、プリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、プリアンブルパターン形成領域内の凹部の深さよりもバーストパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部で構成したことで凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域について、プリアンブルパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0024】
また、本発明に係るスタンパーによれば、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、プリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域内の凹部の深さよりもプリアンブルパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域内よりも少ないプリアンブルパターン形成領域について、バーストパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、プリアンブルパターンに対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0025】
また、本発明に係るスタンパーによれば、データトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、データトラックパターン形成領域内の凹部の深さよりもバーストパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部で構成したことで凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域について、データトラックパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0026】
さらに、本発明に係るスタンパーによれば、データトラックパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1の条件を満たすようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、データトラックパターン形成領域およびバーストパターン形成領域の双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部内を樹脂材料で満たすことができる。
【0027】
また、本発明に係るスタンパーによれば、バーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、データトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域内の凹部の深さよりもデータトラックパターン形成領域内の凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、凸部の押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域内よりも少ないデータトラックパターン形成領域について、バーストパターン形成領域と同様にして、樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、ガードバンド部(またはデータ記録トラック)に対応する凹部における径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0028】
さらに、本発明に係るスタンパーによれば、データトラックパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域内の凸部の面積を凹部の面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2の条件を満たすようにスタンパー側凹凸パターンを形成したことにより、データトラックパターン形成領域およびバーストパターン形成領域の双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部内を樹脂材料で満たすことができる。
【0029】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、上記のいずれかのスタンパーを用いたスタンパー押付け処理と、スタンパー剥離処理とをこの順で実行して、スタンパー側凹凸パターンの凹凸形状を樹脂層に転写することにより、スタンパー押付け処理に際して、スタンパーの全域において樹脂層の上面と凹部の底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、各凹部内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、樹脂層の全域において凹部の径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して、高精度で凹凸パターンを形成することができる。
【0030】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法によれば、上記の凹凸パターン形成方法によって樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造することにより、例えば、バーストパターンにおける単位バースト領域の径方向の端部とデータ記録トラックの中心との位置関係を情報記録媒体の全域において所望の位置関係とすることができる。したがって、この情報記録媒体では、正確なトラッキングサーボ制御が可能となる結果、記録再生エラーの発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るスタンパー、凹凸パターン形成方法および情報記録媒体製造方法の最良の形態について説明する。
【0032】
最初に、本発明に係るスタンパーについて、図面を参照して説明する。
【0033】
図1に示すスタンパー1は、本発明に係る情報記録媒体製造方法に従って図21に示す情報記録媒体40を製造可能に構成されたインプリント用の原盤であって、全体として円板状に形成されている。この場合、情報記録媒体40は、データトラックパターンおよびサーボパターンの双方が凹凸パターン41で形成されたディスクリートトラック型の磁気記録媒体であって、データトラックパターン領域およびサーボパターン領域が回転方向(周方向)において交互に並ぶように規定されている。
【0034】
一方、図1,2に示すように、スタンパー1は、データトラックパターンを形成するための凸部5aおよび複数の凹部5b(図2参照)を有する凹凸パターン5t(本発明における「スタンパー側凹凸パターン」の一例)が形成されたデータトラックパターン形成領域Atsと、サーボパターンを形成するための複数の凸部5aおよび複数の凹部5b(図2参照)を有する凹凸パターン5s(本発明における「スタンパー側凹凸パターン」の他の一例)が形成されたサーボパターン形成領域Assとが情報記録媒体40における回転方向(周方向)に対応する向き(図1に示す矢印Rの向き)おいて交互に並ぶように規定されている。この場合、このスタンパー1の凹凸パターン5t,5s(以下、「凹凸パターン5」ともいう)は、情報記録媒体40における凹凸パターン41の各凹部41bに対応して各凸部5aが形成されると共に、凹凸パターン41の各凸部41aに対応して各凹部5bが形成されている。なお、図2では、本発明についての理解を容易とするために、各凸部5aおよび各凹部5bの長さや形状を実際とは異なる長さや形状で図示している。また、本明細書では、情報記録媒体の回転方向に対応する向きにおいて並ぶ2つのデータトラックパターン形成領域Atsによって挟まれた領域(1つのデータトラックパターン形成領域Atsにおける回転方向に対して下流側の端部から、他の1つのデータトラックパターン形成領域Atsにおける回転方向に対して上流側の端部までの間の領域)をサーボパターン形成領域Assとする。
【0035】
この場合、図3に示すように、データトラックパターン形成領域Atsに形成された凸部5aは、所定の配列ピッチで互いに分割された同心円状の数多くのガードバンド部を形成するための凸部であって、情報記録媒体40の周方向(回転方向:矢印Rの向き)に対応する向きに沿って連続的に形成されて周方向に長い帯状に形成されている。この凸部5aは、スタンパー1の内周部Aiから外周部Aoまで情報記録媒体40の径方向に沿った各凸部5aの長さ(以下、「径方向の長さ」ともいう)L1aが互いに等しくなるように形成されている。また、データトラックパターン形成領域Atsに形成された凹部5bは、所定の配列ピッチで互いに分割された同心円状の数多くのデータ記録用トラックを形成するための凹部であって、一例として、スタンパー1の内周部Aiから外周部Aoまで径方向の各凹部5bの長さL1bが互いに等しく、かつ凸部5aの長さL1aと等しくなるように形成されている。したがって、このスタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Ats内の凹凸パターン5tでは、内周部Aiにおける領域A1i、中周部Acにおける領域A1c、および外周部Aoにおける領域A1oの各領域(一例として、その周方向の長さがプリアンブルパターンにおける一組の凸部および凹部の周方向の長さで、その径方向の長さが1トラックピッチに対応する長さの平面視平行四辺形の領域)内において、凸部5aに対する凹部5bの面積比が互いに等しくなっている。
【0036】
また、図2に示すように、サーボパターン形成領域Assには、プリアンブルパターンを形成するための凹凸パターン5sが形成されたプリアンブルパターン形成領域Apsと、アドレスパターンを形成するための凹凸パターン5sが形成されたアドレスパターン形成領域と(図示せず)、バーストパターンを形成するための凹凸パターン5sが形成されたバーストパターン形成領域Absとが規定されている。さらに、バーストパターン形成領域Abs内には、情報記録媒体40のバーストパターンにおける各信号領域に対応する領域Ab1s〜Ab4sの4つの領域が規定されている。
【0037】
この場合、図4に示すように、プリアンブルパターン形成領域Apsに形成された凸部5aは、プリアンブルパターン(凹凸パターン41)における凹部41bを形成するための凸部であって、情報記録媒体40の径方向に対応する向きに沿って連続的に形成されて径方向に長い帯状に形成されている。この凸部5aは、情報記録媒体40における周方向に沿った長さ(以下、「周方向の長さ」ともいう)L2ai,L2ac,L2ao(以下、区別しないときには「長さL2a」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。また、プリアンブルパターン形成領域Apsに形成された凹部5bは、プリアンブルパターン(凹凸パターン41)における凸部41aを形成するための凹部であって、情報記録媒体40における周方向に沿った長さ(以下、「周方向の長さ」ともいう)L2bi,L2bc,L2bo(以下、区別しないときには「長さL2b」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。この場合、凸部5aの長さL2aと、凹部5bの長さL2bとは、一例として、同一半径位置において互いに等しくなるように規定されている。したがって、このスタンパー1におけるプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹凸パターン5sでは、内周部Aiにおける領域A2i、中周部Acにおける領域A2c、および外周部Aoにおける領域A2oの各領域(一例として、その周方向の長さがプリアンブルパターンにおける一組の凸部および凹部の周方向の長さで、その径方向の長さが2トラックピッチに対応する長さの平面視平行四辺形の領域)内において、凸部5aに対する凹部5bの面積比が互いに等しくなっている。
【0038】
また、図5に示すように、バーストパターン形成領域Absに形成された凸部5aは、バーストパターン(凹凸パターン41)における凹部41b(単位バースト領域)を形成するための凸部であって、情報記録媒体40における周方向に沿った長さ(以下、「周方向の長さ」ともいう)L3ai,L3ac,L3ao(以下、区別しないときには「長さL3a」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。また、バーストパターン形成領域Absに形成された凹部5bは、バーストパターン(凹凸パターン41)における凸部41aを形成するための凹部であって、周方向において隣り合う2つの凸部5aの間の周方向の長さL3bi,L3bc,L3bo(以下、区別しないときには「長さL3b」ともいう)がスタンパー1の内周部Aiから外周部Aoに向けて徐々に長くなるように形成されている。この場合、凸部5aの長さL3aと、凹部5bの長さL3bとは、一例として、同一半径位置において互いに等しくなるように規定されている。したがって、このスタンパー1におけるバーストパターン形成領域Abs内の凹凸パターン5sでは、内周部Aiにおける領域A3i、中周部Acにおける領域A3cおよび外周部Aoにおける領域A3oの各領域(一例として、その周方向の長さが単位バースト領域に対応する凸部の周方向の長さと、その凸部の周方向における間の凹部の周方向の長さとの合計長で、その径方向の長さが2トラックピッチに対応する長さの平面視平行四辺形の領域)内において、凸部5aに対する凹部5bの面積比が互いに等しくなっている。
【0039】
この場合、図6に示すように、このスタンパー1では、凹凸パターン5を構成する各凸部5aの突端部がほぼ面一になるように形成されている。なお、同図および後に参照する図7〜16,18〜21では、本発明についての理解を容易とするために、各凸部や各凹部について、その長さ、高さ(深さ)および形状を実際とは相違する長さ、高さ(深さ)および形状で図示している。また、このスタンパー1では、凸部5aに対する凹部5bの面積比(以下、単に「面積比」ともいう)が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなり、面積比が等しい領域同士では凹部5bの深さが互いに等しい深さとなるように形成されている。具体的には、データトラックパターン形成領域Ats内では、領域A1i,A1c,A1oのすべてにおいて面積比が1となっている。また、プリアンブルパターン形成領域Aps内では、領域A2i,A2c,A2oのすべてにおいて面積比が1となっている。したがって、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1と、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さ(図示せず)とは互いに等しい深さに規定されている。一方、バーストパターン形成領域Abs内では、領域A3i,A3c,A3oのすべてにおいて面積比が3となっている。したがって、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2は、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1やプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりも浅くなるように規定されている。
【0040】
次に、スタンパー1の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明についての理解を容易とするために、サーボパターン形成領域Assのうちのプリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs、並びにデータトラックパターン形成領域Atsについてのみ説明し、その他のパターン形成領域についての説明を省略する。
【0041】
まず、図7に示すように、表面が平坦となるように研磨したシリコン製の基材11にレジスト(一例として、日本ゼオン株式会社製:ZEP520A)をスピンコートすることにより、基材11の表面のレジスト層12を形成する。なお、スタンパー1の製造に際して用いる基材はシリコン製の基材に限定されず、ガラス基材やセラミック基材等の各種基材を用いることができる。また、レジスト層12を形成するためのレジストについても上記のレジストに限定されず、任意のレジスト材を用いることができる。次いで、電子ビームリソグラフィ装置を用いてレジスト層12に電子線を照射して所望の露光パターン(この例では、バーストパターン形成領域Abs内の各凹部5bに対応するパターン)を描画する。続いて、この状態のレジスト層12を現像処理することによって潜像12aの部位を消失させる。これにより、図8に示すように、潜像12aの部位に凹部13bが形成され、基材11の上に凹凸パターン13が形成される。次いで、凹凸パターン13が形成されたレジスト層12をマスクとして用いて凹部13bの底面においてレジスト層12から露出している基材11をエッチング処理することにより、図9に示すように、基材11に複数の凹部14bを有する凹凸パターン14を形成する。この際には、凹部14bの深さD12(基材11の表面と凹部14bの底面との間の距離)が製造目標のスタンパー1におけるバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2と等しくなるようにエッチング処理を行う。
【0042】
次いで、基材11上に残存しているレジスト層12を除去した後に、凹凸パターン14の形成が完了した基材11にレジストをスピンコートすることにより、図10に示すように、基材11の表面にレジスト層15を形成する。続いて、電子ビームリソグラフィ装置を用いてレジスト層15に電子線を照射して所望の露光パターン(この例では、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5b、およびプリアンブルパターン形成領域Aps内の各凹部5bに対応するパターン)を描画する。次いで、この状態のレジスト層15を現像処理することによって潜像15aの部位を消失させる。これにより、図11に示すように、潜像15aの部位に凹部16bが形成され、基材11の上に凹凸パターン16が形成される。続いて、凹凸パターン16が形成されたレジスト層15をマスクとして用いて凹部16bの底面においてレジスト層15から露出している基材11をエッチング処理することにより、図12に示すように、基材11に複数の凹部17bを有する凹凸パターン17を形成する。この際には、凹部17bの深さD11(基材11の表面と凹部17bの底面との間の距離)が製造目標のスタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1およびプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さと等しくなるようにエッチング処理を行う。この後、基材11上に残存しているレジスト層15を除去することにより、図13に示すように、スタンパー1を製造するための原盤18が完成する。
【0043】
続いて、原盤18における凹凸パターン14,17の形成面にニッケルを蒸着処理することによって導電膜を形成した後に(図示せず)、この導電膜を電極として使用して電鋳処理を実行することにより、図14に示すように、基材11の凹凸パターン形成面(同図における上面)にニッケル層19を形成する。次いで、電極膜およびニッケル層19の積層体を基材11(原盤18)から剥離する。これにより、図15に示すように、原盤18の凹凸パターン14,17が電極膜およびニッケル層19に転写されて凹凸パターン21,22を有する原盤20が形成される。この場合、この原盤20における凹凸パターン21,22では、原盤18における各凸部14a,17a(図13参照)に対応して各凹部21b,22bが形成され、原盤18における各凹部14b,17b(図13参照)に対応して各凸部21a,22aが形成されている。したがって、凸部21aの高さH2は、原盤18における凹部14bの深さD12と等しく、凸部22aの高さH1は、原盤18における凹部17bの深さD11と等しくなっている。
【0044】
次いで、原盤20における凹凸パターン21,22の形成面に対して電鋳処理を実行することにより、図16に示すように、原盤20の凹凸パターン形成面(同図における下面)にニッケル層25を形成する。続いて、ニッケル層25を原盤20から剥離する。この後、ニッケル層25における凹凸パターン形成面の裏面側を研磨処理することにより、図6に示すように、スタンパー1が完成する。この場合、スタンパー1における凹凸パターン5では、原盤20における各凸部21aに対応してバーストパターン形成領域Abs内に各凹部5bが形成されると共に、原盤20における各凸部22aに対応してデータトラックパターン形成領域Atsおよびプリアンブルパターン形成領域Aps内に各凹部5bが形成されている。また、この凹凸パターン5では、原盤20における各凹部21bに対応してバーストパターン形成領域Abs内に各凸部5aが形成されると共に、原盤20における各凹部21bに対応してデータトラックパターン形成領域Atsおよびプリアンブルパターン形成領域Aps内に各凸部5aが形成されている。したがって、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2は、原盤20における凸部21aの高さH2と等しく、データトラックパターン形成領域Atsおよびプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さD1は、原盤20における凸部22aの高さH1と等しくなっている。
【0045】
続いて、本発明に係る凹凸パターン形成方法に従い、上記したスタンパー1を用いて情報記録媒体40を製造するための中間体30の上に凹凸パターンを形成する工程について、図面を参照して説明する。
【0046】
まず、図17に示すように、一例として、アルミナ、シリコン、ガラスまたはセラミック等で円板状に形成された基材31の上に磁性層32を形成した中間体30の上に樹脂材料を塗布することにより、中間体30の上に樹脂層33を形成する。この際には、後述するスタンパー押付け処理時に樹脂層33にスタンパー1の凹凸パターン5を押し付けた際に、凹凸パターン5の全域において各凹部5b内が樹脂材料で満たされ(スタンパー1の全域において樹脂材料で各凹部5b内が満たされる厚み)、かつ、データトラックパターン形成領域Atsやプリアンブルパターン形成領域Apsのように凸部5aに対する凹部5bの面積比が小さい領域において厚手の残渣が生じない程度の厚みとなるように樹脂材料の塗布量を調整する。この場合、樹脂層33を形成する樹脂材料については、後述するようにスタンパー1を剥離した際に形成される凹凸パターン34,35(図19参照)の凹凸形状が良好となることから、一例として、ポリスチレン系樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂およびノボラック系樹脂などを用いるのが好ましい。なお、樹脂層33を形成する中間体30には、実際には、基材31と磁性層32との間に軟磁性層や配向層等の各種機能層が存在するが、本発明についての理解を容易とするために、これらについての説明および図示を省略する。また、この例では、基材31および磁性層32によって本発明における基材が構成されている。
【0047】
次いで、樹脂層33が形成された中間体30およびスタンパー1をプレス機(図示せず)にセットする。具体的には、樹脂層33の形成面を上向きにして中間体30をプレス機に取り付けると共に、凹凸パターン5の形成面を下向きにしてスタンパー1をプレス機に取り付ける。この際に、後述するように、樹脂層33からの剥離に際してスタンパー1に対する樹脂材料の付着を防止するために、スタンパー1における凹凸パターン5の表面に例えばフッ素系材料のコーティング処理を施して密着力軽減膜を形成するのが好ましい。なお、密着力軽減膜を形成する材料については、フッ素系材料のコーティング材に限定されず、樹脂層33との密着力を軽減し得る各種材料を採用することができる。続いて、中間体30(樹脂層33)およびスタンパー1の双方を加熱する。この際には、樹脂層33およびスタンパー1の双方が、樹脂層33を形成しているノボラック系樹脂のガラス転移点(この例では、約70℃)よりも100℃程度高温の170℃程度となるように加熱処理する。これにより、樹脂層33が軟化して容易に変形可能な状態となる。この場合、樹脂材料のガラス転移点に対して70℃以上120℃以下の範囲内で高温となるように加熱するのが好ましく、100℃以上高温となるように加熱するのが一層好ましい。これにより、後述するように、樹脂層33に対するスタンパー1の押し付けを容易に行うことができる。
【0048】
次いで、図18に示すように、プレス機を作動させて中間体30における樹脂層33にスタンパー1の凹凸パターン5を押し付ける(本発明におけるスタンパー押付け処理)。この際には、一例として、スタンパー1の全域に亘って34kNの荷重をかけた状態を5分間に亘って維持する。また、プレス機によってスタンパー1を中間体30(樹脂層33)に押し付けている間に、樹脂層33およびスタンパー1の温度が低下しないように加熱処理を継続して実行するのが好ましい。具体的には、スタンパー押付け処理の実行中において、170℃±1℃の範囲内の温度に(一例として、温度変化が±0.2℃の範囲内の温度に)維持するのが好ましい。続いて、加熱処理を継続しつつ(170℃±1℃の範囲内の温度を維持しつつ)、中間体30(樹脂層33)からスタンパー1を剥離する(本発明におけるスタンパー剥離処理)。これにより、図19に示すように、スタンパー1における凹凸パターン5の凹凸形状が中間体30上の樹脂層33に転写されることで樹脂層33に凹凸パターン34,35が形成される。この場合、凹凸パターン34,35における凸部34a,35aは、スタンパー1における凹凸パターン5の凹部5bに対応して形成され、凹部34b,35bは、凸部5aに対応して形成されている。以上により、インプリント処理が完了する。
【0049】
この場合、このインプリント処理時に用いるスタンパー1は、前述したように、凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5が形成されている。具体的には、凹凸パターン5は、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように形成され、かつ、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs域内の凹部5bの深さが浅くなるように形成されている。また、凹凸パターン5は、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように形成され、かつ、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さが浅くなるように形成されている。
【0050】
したがって、図18に示すように、樹脂層33に対する各凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ない領域(例えば、バーストパターン形成領域Abs)内においても、各凸部5aの押し込みによって移動させられた樹脂材料によって各凹部5b内が満たされた状態となる。このため、スタンパー押付け処理時におけるスタンパー1や基材31の撓みに起因してスタンパー1の外周部Aoや内周部Aiが図1に示す矢印Co,Ciの向きに移動したとしても、凹部5b内の樹脂材料が凸部5aの側面に貼り付くようにして凹部5b内を移動する事態が回避される。この結果、図19に示すように、凹凸パターン34(バーストパターン形成領域Abs内の凹凸パターン5を転写した凹凸パターン)における各凹部34bが径方向に拡がる事態が回避され、各凹部34bの径方向の長さL12sがスタンパー1におけるバーストパターン形成領域Abs内の各凸部5aにおける径方向の長さL11s(図6参照)とほぼ等しい長さ(所望の長さ)となる。なお、凹凸パターン35(データトラックパターン形成領域Ats内の凹凸パターン5を転写した凹凸パターン)における各凹部35bについては、その径方向の長さL12tがスタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Ats内の各凸部5aにおける径方向の長さL11t(図6参照)とほぼ等しい長さ(所望の長さ)となる。
【0051】
この場合、スタンパー押付け処理時においてスタンパー1の凹部5b内に入り込む樹脂材料の量(凹部5b内に形成される凸部34aや凸部35aの高さ)は、樹脂層33に対して凸部5aを押し込んだ深さと、凸部5aの押し込みによって凸部5aの押し込み部位から凹部5b内に移動した樹脂材料によって形成される凸部高さとの和となる。この場合、凸部5aの押し込みによって押し込み部位から凹部5b内に移動した樹脂材料によって形成される凸部の高さは、「凸部5aの押し込み深さ」×「凸部5aの面積」/「凹部5bの面積」となる。したがって、「凸部5aの押し込み深さ」+「凸部5aの押し込み深さ」×「凸部5aの面積」/「凹部5bの面積」と凹部5bの深さとを等しくすることにより、各凹部5b内を樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0052】
具体的には、例えば、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2とし、各凸部5aの押し込み深さをAとしたときに、スタンパー押付け処理時にデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5b、およびバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bを樹脂材料で満たすためには、
D1=A+A×R1、D2=A+A×R2
の条件を満たせばよい。したがって、
D2=(1+R2)/(1+R1)×D1
の条件を満たすようにバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bについてもデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bと同様にして樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0053】
この場合、スタンパー1では、情報記録媒体40におけるデータトラックパターン領域およびサーボパターン領域に対応してデータトラックパターン形成領域Atsおよびサーボパターン形成領域Assが規定されているため、データトラックパターン形成領域Atsの面積がサーボパターン形成領域Assの面積に対して極めて広くなっている。したがって、データトラックパターン形成領域Atsについては、プレス機等によって加えられた力によって例えばスタンパー1に凹部5bの深さ方向の撓みが生じ、各凸部5aが樹脂層33に対して十分に奥深くまで押し込まれる。このため、各凹部5bの深さD1を上記の「A+A×R1」よりも深く規定したとしても、その凹部5b内を樹脂材料で満たすことが可能となっている。これに対して、サーボパターン形成領域Assの面積は、データトラックパターン形成領域Atsの面積に対して極めて狭くなっているため、プレス機等によって加えられた力による凹部5bの深さ方向の撓みが生じ難くなっている。このため、サーボパターン形成領域Ass(バーストパターン形成領域Abs)内の各凹部5bの深さD2を上記の「A+A×R2」よりも深く規定したときには、その凹部5b内を樹脂材料で満たすことが困難となっている。
【0054】
また、サーボパターン形成領域Assの面積がデータトラックパターン形成領域Atsの面積に対して極めて狭いため、データトラックパターン形成領域Ats内の各凸部5aを樹脂層33に対して十分に押し込むことができない状態では、サーボパターン形成領域Ass内の凸部5aについても樹脂層33に対して十分に押し込むことが困難となる。このため、サーボパターン形成領域Ass内の各凸部5aの十分な押し込みが完了するのに先立ってデータトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bが樹脂材料で満たされた時点でスタンパー押し付け処理が完了する事態、つまりサーボパターン形成領域Ass(バーストパターン形成領域Abs)内の各凹部5b内が樹脂材料で満たされることなくスタンパー押し付け処理が完了する事態を回避すべく、バーストパターン形成領域Abs内の各凹部5bの深さD2を上記の「A+A×R2」よりもある程度浅く規定するのが好ましい。したがって、
D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1
の条件を満たすようにバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2を規定することにより、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5b、およびバーストパターン形成領域Abs内の各凹部5b内を樹脂材料で確実に満たすことが可能となる。
【0055】
また、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR3としプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さをD3とし、プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs内の各凸部5aの押し込み深さをAとしたときには、
D3=A+A×R3、D2=A+A×R2
となる。したがって、
D2=(1+R2)/(1+R3)×D3
の条件を満たすようにバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さD2を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bについても樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0056】
次に、本発明に係る情報記録媒体製造方法に従って情報記録媒体40を製造する工程について、図面を参照して説明する。
【0057】
まず、樹脂層33における凹凸パターン34,35の凹部34b,35bの底面に残存する樹脂材料(残渣)を酸素プラズマ処理によって除去する。次いで、凹凸パターン34,35(凸部34a,35a)をマスクとして用いてエッチング処理を行う。この際には、図20に示すように、凹凸パターン34,35の各凹部34b,35bにおける底面部分の磁性層32が除去されて基材31の上に凹凸パターン41が形成される。続いて、凹凸パターン41における各凸部41aの上に残存している樹脂層33を除去する。これにより、図21に示すように、スタンパー1の凹凸形状を転写した凹凸パターン34,35における各凹部34b,35bに対応する溝(凹部41b)が磁性層32に形成されたデータトラックパターンおよびサーボパターンが形成される。
【0058】
この場合、凹凸パターン41は、スタンパー1を押し付けて凹凸パターン34,35を形成した樹脂層33をマスクとして用いて形成されている。したがって、凹凸パターン41における各凹部41bの径方向の長さL13s,L13tは、凹凸パターン34,35における各凹部34b,35bの径方向の長さL12s,L12t(図19参照)とほぼ等しい長さ(所望の長さ)となる。次いで、表面仕上げ処理を行う。この表面仕上げ処理では、まず、例えば二酸化ケイ素を上記の溝に充填した後に(図示せず)、イオンビームエッチングによって表面を平坦化する。次に、平坦化した表面に例えばDLC(Diamond Like Carbon )で保護膜を形成し、最後に潤滑剤を塗布する。これにより、情報記録媒体40が完成する。この場合、この情報記録媒体40は、その開口幅(径方向の長さ)が所望の幅となるように形成された凹部34b,35b(図19参照)を有する凹凸パターン34,35を用いて製造されているため、この凹凸パターン34,35を用いて形成した凹凸パターン41(データ記録用トラックやサーボパターン等)の各凹部41bもその内周部から外周部までの全域において所望の幅となる。
【0059】
このように、このスタンパー1、およびスタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、凹凸パターンの形成処理時におけるスタンパー押付け処理に際して各凸部5aを樹脂層33に押し込んだときに、凸部5aの押し込みによって凹部5b内に移動する樹脂材料の量が凹部5bの面積に対して少ない領域であっても、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、その凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、スタンパー1や基材31の撓みに起因して例えばスタンパー1の内周部Aiや外周部Aoが中周部Ac側に移動したとしても、凹部5b内における樹脂材料の移動量を十分に小さくする、または、凹部5b内における樹脂材料の移動を回避することができる。これにより、凹凸パターン5を転写して形成した凹凸パターン34,35において凹部34b,35bの径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して所望の開口長の凹部34b,35bを有する凹凸パターン34,35を高精度で形成することができる。
【0060】
また、このスタンパー1、およびスタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部5aで構成したことで凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域Absについて、プリアンブルパターン形成領域Apsと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0061】
さらに、このスタンパー1、およびスタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さよりもバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、単位バースト領域に対応する部位を凸部5aで構成したことで凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量が少ないバーストパターン形成領域Absについて、データトラックパターン形成領域Atsと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、単位バースト領域に対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0062】
この場合、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2としたときに、D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1の条件を満たすように凹凸パターン5を形成したことにより、データトラックパターン形成領域Atsおよびバーストパターン形成領域Absの双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部5b内を樹脂材料で満たすことができる。
【0063】
また、スタンパー1を用いた凹凸パターン形成方法によれば、中間体30上に形成した樹脂層33に上記のスタンパー1を押し付けるスタンパー押付け処理と、樹脂層33からスタンパー1を剥離するスタンパー剥離処理とをこの順で実行して、凹凸パターン5の凹凸形状を樹脂層33に転写することにより、スタンパー押付け処理に際して、スタンパー1の全域において樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、各凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、樹脂層33の全域において凹部34b,35bの径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避して、高精度で凹凸パターン34,35を形成することができる。
【0064】
また、本発明に係る情報記録媒体の製造方法によれば、本発明に係る凹凸パターン形成方法によって樹脂層33に転写した凹凸パターン34,35を用いて情報記録媒体40を製造することにより、例えば、バーストパターンにおける単位バースト領域の径方向の端部とデータ記録トラックの中心との位置関係を情報記録媒体40の全域において所望の位置関係とすることができる。したがって、この情報記録媒体40では、正確なトラッキングサーボ制御が可能となる結果、記録再生エラーの発生を回避することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、バーストパターンにおける単位バースト領域に対応する部位を凸部5aで構成したスタンパー1について説明したが、図22,23に示すスタンパー1Aのように、バーストパターンにおける単位バースト領域に対応する部位を凹部5bで構成して凹凸パターン5sを形成することもできる。なお、両図において上記のスタンパー1と共通の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。このスタンパー1Aでは、凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きい領域ほど凹部5bの深さが浅くなり、面積比が等しい領域同士では凹部5bの深さが互いに等しい深さとなるように形成されている。具体的には、データトラックパターン形成領域Ats内では、前述したスタンパー1と同様にして、領域A1i,A1c,A1oのすべてにおいて面積比が1となっている。また、プリアンブルパターン形成領域Aps内では、前述したスタンパー1と同様にして、領域A2i,A2c,A2oのすべてにおいて面積比が1となっている。したがって、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1と、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さ(図示せず)とは互いに等しい深さに規定されている。
【0066】
一方、このスタンパー1Aにおけるバーストパターン形成領域Abs内では、図23に示すように、領域A3i,A3c,A3oのすべてにおいて面積比が1/3となっている。したがって、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さは、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さやプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さよりも深くなるように規定されている。言い換えれば、このスタンパー1Aでは、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さやプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さがバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さよりも浅くなっている。
【0067】
この場合、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2とし、各凸部5aの押し込み深さをAとしたときには、
D1=A+A×R1、D2=A+A×R2
となる。したがって、
D1=(1+R1)/(1+R2)×D2
の条件を満たすようにデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さD1を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bについても樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0068】
この場合、このスタンパー1Aでは、前述したスタンパー1と同様にして、サーボパターン形成領域Assの面積がデータトラックパターン形成領域Atsの面積に対して極めて狭いため、データトラックパターン形成領域Ats内の各凸部5aを樹脂層33に対して十分に押し込むことができない状態では、サーボパターン形成領域Ass内の凸部5aについても樹脂層33に対して十分に押し込むことが困難となる。このため、サーボパターン形成領域Ass内の各凸部5aの十分な押し込みが完了するのに先立ってデータトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bが樹脂材料で満たされた時点でスタンパー押し付け処理が完了する事態、つまりサーボパターン形成領域Ass(バーストパターン形成領域Abs)内の各凹部5b内が樹脂材料で満たされることなくスタンパー押し付け処理が完了する事態を回避すべく、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bの深さD1を上記の「A+A×R1」よりもある程度深く規定するのが好ましい。したがって、
D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2
の条件を満たすようにデータトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5bの深さD1を規定することにより、データトラックパターン形成領域Ats内の各凹部5b、およびバーストパターン形成領域Abs内の各凹部5b内を樹脂材料で確実に満たすことが可能となる。
【0069】
また、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR3とし、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さをD3とし、プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs内の各凸部5aの押し込み深さをAとしたときには、
D3=A+A×R3、D2=A+A×R2
となる。したがって、
D3=(1+R3)/(1+R2)×D2
の条件を満たすようにプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さD3を規定することにより、スタンパー押付け処理時においてバーストパターン形成領域Abs内の凹部5bが樹脂材料で満たされれば、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bについても樹脂材料で満たすことが可能となる。
【0070】
このように、このスタンパー1Aによれば、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、プリアンブルパターン形成領域Aps内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さよりもプリアンブルパターン形成領域Aps内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域Abs内よりも少ないプリアンブルパターン形成領域Apsについて、バーストパターン形成領域Absと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、プリアンブルパターンに対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0071】
また、このスタンパー1Aによれば、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aに対する凹部5bの面積比よりも、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aに対する凹部5bの面積比が大きくなるように、かつ、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さよりもデータトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成したことにより、凸部5aの押し込みによって移動する樹脂材料の量がバーストパターン形成領域Abs内よりも少ないデータトラックパターン形成領域Atsについて、バーストパターン形成領域Absと同様にして、樹脂層33の上面と凹部5bの底面との間に生じる隙間を十分に小さくする、または、凹部5b内を樹脂材料で満たす(隙間が生じる事態を回避する)ことができる。したがって、ガードバンド部(またはデータ記録トラック)に対応する凹部34bにおける径方向の長さや周方向の長さが過剰に拡がる事態を回避することができる。
【0072】
この場合、データトラックパターン形成領域Ats内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凸部5aの面積を凹部5bの面積で除した値をR2とし、データトラックパターン形成領域Ats内の凹部5bの深さをD1とし、バーストパターン形成領域Abs内の凹部5bの深さをD2としたときに、D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2の条件を満たすように凹凸パターン5を形成したことにより、データトラックパターン形成領域Atsおよびバーストパターン形成領域Absの双方について、スタンパー押付け処理に際して各凹部5b内を樹脂材料で満たすことができる。
【0073】
さらに、本発明に係るスタンパー1には、上記のスタンパー1の凹凸形状をスタンパー形成材料に転写して製造したスタンパーをマスタースタンパーとして用いて、このマスタースタンパーの凹凸形状を他のスタンパー形成材料に転写することによって、すなわち、上記のスタンパー1の凹凸形状を偶数回だけ転写することによって形成したスタンパーがこれに含まれる。また、上記のスタンパー1の製造工程において製作した原盤18も本発明におけるスタンパーに含まれる。したがって、上記のスタンパー1に代えて、スタンパー1の凹凸形状を偶数回だけ転写して形成したスタンパーや原盤18をスタンパーとして用いて情報記録媒体40を製造することができる。また、平行四辺形状の単位バースト領域が周方向に並ぶバーストパターンを有するスタンパー1について説明したが、略楕円形(円形を含む)の単位バースト領域が周方向に並ぶバーストパターンを形成可能なスタンパーに本発明を適用することができる。
【0074】
さらに、上記のインプリント装置による凹凸パターン形成方法(情報記録媒体40の製造の製造方法)では、中間体30(樹脂層33)に対するスタンパー1の押し付け処理開始前からスタンパー1の剥離処理が完了するまでの間において、樹脂層33およびスタンパー1の双方に対する加熱処理を継続して実行しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、樹脂層33に対してある程度十分にスタンパー1を押し付けた後に、樹脂層33およびスタンパー1に対する加熱処理を終了し、その後にスタンパー1を剥離する工程を採用することもできる。この場合、スタンパー1の剥離に先立ってスタンパー1および中間体30の双方を樹脂層33のガラス転移点以下の温度まで冷却することもできる。また、そのガラス転移点が常温(一例として、25℃程度)よりも低い樹脂材料を用いて本発明における樹脂層を形成し、スタンパー押付け処理からスタンパー剥離処理までの間において加熱処理や冷却処理を実行することなく凹凸パターンを樹脂層に形成する方法を採用することもできる。さらに、本発明における樹脂材料として紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などを使用して樹脂層を形成し、スタンパー押付け処理後に紫外線または電子線を照射して樹脂層硬化(または、半硬化)させてからスタンパー剥離処理を実行することで凹凸パターンを樹脂層に形成する方法を採用することもできる。
【0075】
また、本発明における基材に相当する中間体30(磁性層32)の上に形成した樹脂層33にスタンパー1を押し付けて情報記録媒体40を製造する方法について説明したが、本発明に係る情報記録媒体製造方法は、これに限定されない。例えば、上記の中間体30と樹脂層33との間に1層以上のマスク層を形成すると共に、スタンパー1の押し付けによって樹脂層33に転写した凹凸パターン34,35をエッチング処理等によって下層側のマスク層(中間体30側のマスク層)に順次転写し、中間体30上のマスク層に転写した凹凸パターンをマスクとして用いて磁性層32をエッチング処理して凹凸パターン41を形成する製造方法を採用することができる。
【0076】
さらに、例えば、データトラックパターン形成領域Atsについては、領域A1i,A1c,A1o内(図3参照)における凸部5aに対する凹部5bの面積比を本発明における面積比とし、プリアンブルパターン形成領域Apsについては、領域A2i,A2c,A2o内(図4参照)における凸部5aに対する凹部5bの面積比を本発明における面積比とし、バーストパターン形成領域Absについては、領域A3i,A3c,A3o内(図5参照)における凸部5aに対する凹部5bの面積比を本発明における面積比として、面積比が大きい領域ほど、その領域内の凹部5bの深さが浅くなるように凹凸パターン5を形成した例について説明したが、上記の面積比を比較する対象の「領域」については、上記の例示のような狭い範囲に限定されない。例えば、同種のパターン(機能的に同種のパターン、または、形状的に同種のパターン)が形成されている領域を1つの領域とし、相違するパターンが形成されている領域毎の凸部5aに対する凹部5bの面積比を比較し、面積比が大きい領域内の凹部5bの深さを深くするように凹凸パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】スタンパー1の平面図である。
【図2】スタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Atsおよびサーボパターン形成領域Ass(プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs)の一例を示す平面図である。
【図3】スタンパー1におけるデータトラックパターン形成領域Atsの平面図である。
【図4】スタンパー1におけるプリアンブルパターン形成領域Apsの平面図である。
【図5】スタンパー1におけるバーストパターン形成領域Absの平面図である。
【図6】スタンパー1の断面図である。
【図7】スタンパー1の製造工程において基材11上にレジスト層12を形成して潜像12aを形成した状態の断面図である。
【図8】図7に示す状態のレジスト層12を現像処理して凹凸パターン13を形成した状態の断面図である。
【図9】凹凸パターン13が形成されたレジスト層12をマスクとして用いて基材11をエッチング処理して凹凸パターン14を形成した状態の断面図である。
【図10】凹凸パターン14の形成が完了した基材11上にレジスト層15を形成して潜像15aを形成した状態の断面図である。
【図11】図10に示す状態のレジスト層15を現像処理して凹凸パターン16を形成した状態の断面図である。
【図12】凹凸パターン16が形成されたレジスト層15をマスクとして用いて基材11をエッチング処理して凹凸パターン17を形成した状態の断面図である。
【図13】レジスト層15を除去した状態の基材11の断面図である。
【図14】基材11における凹凸パターン14,17の形成面にニッケル層19を形成した状態の断面図である。
【図15】図14に示す状態のニッケル層19(原盤20)から基材11を剥離した状態の断面図である。
【図16】原盤20における凹凸パターン21,22の形成面にニッケル層25を形成した状態の断面図である。
【図17】磁性層32上に樹脂層33を形成した状態の中間体30の断面図である。
【図18】樹脂層33にスタンパー1を押し付けた状態の断面図である。
【図19】図18に示す状態の中間体30(樹脂層33)からスタンパー1を剥離して凹凸パターン34,35を形成した状態の断面図である。
【図20】図19に示す凹凸パターン34,35を用いて磁性層32をエッチングすることによって凹凸パターン41を形成した状態の断面図である。
【図21】図20に示す状態の樹脂層33を除去した情報記録媒体40の断面図である。
【図22】スタンパー1Aにおけるデータトラックパターン形成領域Atsおよびサーボパターン形成領域Ass(プリアンブルパターン形成領域Apsおよびバーストパターン形成領域Abs)の一例を示す平面図である。
【図23】スタンパー1Aにおけるバーストパターン形成領域Absの平面図である。
【図24】従来のインプリント方法によってスタンパー10xを樹脂層20xに押し込んだ状態の断面図である。
【図25】図24に示す状態のスタンパー10xに撓みが生じた状態の断面図である。
【図26】従来のインプリント方法によってスタンパー10xを樹脂層20xに押し込んだ状態の他の断面図である。
【図27】従来のインプリント方法においてスタンパー10xを樹脂層20xから剥離した状態の断面図である。
【図28】従来のインプリント方法によって形成した凹凸パターン24xをマスクとして用いて製造した情報記録媒体100xの断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1,1A スタンパー
5,5s,5t,34,35,41 凹凸パターン
5a,34a,35a,41a 凸部
5b,34b,35b,41b 凹部
30 中間体
31 基材
32 磁性層
33 樹脂層
40 情報記録媒体
A1i,A1c,A1o,A2i,A2c,A2o,A3i,A3c,A3o 領域
Abs バーストパターン形成領域
Aps プリアンブルパターン形成領域
Ass サーボパターン形成領域
Ats データトラックパターン形成領域
D1,D2 深さ
L1a,L1b,L2ai,L2ac,L2ao,L2bi,L2bc,L2bo,L3ai,L3ac,L3ao,L3bi,L3bc,L3bo,L11s〜L13s,L11t〜L13t 長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部に対する凹部の面積比が相違する各領域に対して当該面積比が大きい前記領域ほど前記凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンが形成されているスタンパー。
【請求項2】
少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項3】
少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項4】
データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項5】
前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、
D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1
の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている請求項4記載のスタンパー。
【請求項6】
データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項7】
前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、
D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2
の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている請求項6記載のスタンパー。
【請求項8】
基材の表面に樹脂材料を塗布して形成した樹脂層に請求項1から7のいずれかに記載のスタンパーにおける前記スタンパー側凹凸パターンを押し付けるスタンパー押付け処理と、前記樹脂層から前記スタンパーを剥離するスタンパー剥離処理とをこの順で実行して、前記スタンパー側凹凸パターンの凹凸形状を前記樹脂層に転写する凹凸パターン形成方法。
【請求項9】
請求項8記載の凹凸パターン形成方法によって前記樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法。
【請求項1】
凸部に対する凹部の面積比が相違する各領域に対して当該面積比が大きい前記領域ほど前記凹部の深さが浅くなるようにスタンパー側凹凸パターンが形成されているスタンパー。
【請求項2】
少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項3】
少なくともサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、当該サーボパターンにおけるプリアンブルパターンの領域に対応するプリアンブルパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記プリアンブルパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項4】
データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項5】
前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、
D2≦(1+R2)/(1+R1)×D1
の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている請求項4記載のスタンパー。
【請求項6】
データトラックパターンおよびサーボパターンが凹凸パターンで形成された情報記録媒体を製造可能にスタンパー側凹凸パターンが形成され、
前記スタンパー側凹凸パターンは、前記サーボパターンにおけるバーストパターンの領域に対応するバーストパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比よりも、前記データトラックパターンの領域に対応するデータトラックパターン形成領域内の凸部に対する凹部の面積比が大きくなるように形成され、かつ、前記バーストパターン形成領域内の前記凹部の深さよりも前記データトラックパターン形成領域内の前記凹部の深さが浅くなるように形成されているスタンパー。
【請求項7】
前記データトラックパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR1とし、前記バーストパターン形成領域内の前記凸部の面積を前記凹部の面積で除した値をR2とし、前記データトラックパターン形成領域内の凹部の深さをD1とし、前記バーストパターン形成領域内の凹部の深さをD2としたときに、
D1≧(1+R1)/(1+R2)×D2
の条件を満たすように前記スタンパー側凹凸パターンが形成されている請求項6記載のスタンパー。
【請求項8】
基材の表面に樹脂材料を塗布して形成した樹脂層に請求項1から7のいずれかに記載のスタンパーにおける前記スタンパー側凹凸パターンを押し付けるスタンパー押付け処理と、前記樹脂層から前記スタンパーを剥離するスタンパー剥離処理とをこの順で実行して、前記スタンパー側凹凸パターンの凹凸形状を前記樹脂層に転写する凹凸パターン形成方法。
【請求項9】
請求項8記載の凹凸パターン形成方法によって前記樹脂層に転写した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2007−122802(P2007−122802A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312652(P2005−312652)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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