説明

スチレンが重合される縣濁プロセスへのパーオキシドの配量

【課題】
【解決手段】本発明は、スチレンを含む(コ)ポリマーの製造のための縣濁重合方法において、反応混合物に開始剤を連続的にあるいは半連続的に配量する工程を含み、開始剤が配量される反応混合物の温度において特定の半減期を開始剤が有するところの重合方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレンを含む(コ)ポリマーの製造のための、スチレンモノマーまたはスチレンを含有するモノマー混合物を縣濁で重合する、本質的に塩化ビニルを含まないバッチプロセスにおいて、重合温度にある重合混合物に開始剤を連続的にあるいは半連続的に配量する工程を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンモノマーを重合する方法は、たとえば米国特許第4,363,881号および米国特許第6,153,658号から従来知られている。そこでは、一つの慣用の方法が記載され、パーオキシド(過酸化物)がバッチ縣濁物に二つの時点で加えられる。しかし、パーオキシドは配量され(dosed)ていない。米国特許第5,189,069号は、制御された粒子サイズを持つスチレンビーズを得るためにモノマーに溶解された開始剤を配量することを示唆している。配量温度で1時間より長い半減期を有する慣用の開始剤が使用されている。同様の方法が、EP−A−0 234 705およびEP−A−0 488 025に開示されており、モノマー中の開始剤溶液の連続的添加が開始される前に、別の方法すなわち実質的な量のポリマー種粒子による反応混合物のシード付与が使用される。また、EP−A−0 234 705では、配量される開始剤が、配量温度で1時間より長い半減期を有する。ポリスチレンの縣濁物を製造する別のプロセスは、米国特許第5,905,096号に記載されている。そこでは、パーオキシド及び膨張剤を含むプレポリマーが形成され、これは次に縣濁され、反応させられる。これら方法の総ては、粒子サイズの制御を狙っており、しかしそれらはポリマーの分子量を予め決めることおよび重合速度の制御が、不可能でないとしても、困難である欠点を有する。加えて、これら方法は、長い重合時間を要し、かつ典型的には2以上の反応段階を含み、またしばしば開始剤はモノマー中の溶液として加えられなければならず、これは反応器に加えられる前に望ましくない(前)重合を示し、したがって安全でない。
【特許文献1】米国特許第4,363,881号
【特許文献2】米国特許第6,153,658号
【特許文献3】米国特許第5,189,069号
【特許文献4】EP−A−0 234 705
【特許文献5】EP−A−0 488 025
【特許文献6】米国特許第5,905,096号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スチレンに基づく(コ)ポリマー(本明細書でポリスチレンとも呼ばれる)の調製のためにスチレンモノマーを、分子量および分子量分布の良好な制御を伴って重合する方法であって、慣用のプロセスのポリマーと同等のポリマーが得られ、しかし、より短い重合時間を必要とする方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本方法において、少なくとも一の開始剤が使用され、それは本発明の要件を満たしながら、全てまたは部分的に配量される。より詳しくは、配量される少なくとも一の開始剤は、特定の重合温度プロフィールを所与として、半減期要件が満たされるように選択されなければならない。該開始剤は、本明細書の以下では「開始剤」と呼ばれる。本発明はまた、開始剤の組合せが「開始剤」を含有する限り、開始剤の組合せが配量されるプロセスをも包含する。以後、言葉「開始剤」は、開始剤のそのような組合せを包含することを留意されたい。また、「開始剤」は、追加の開始剤との組合せで使用されうることも留意されたい。その場合、後者は、別途配量されるか、配量されることなく単に加えられることができる。
【0005】
本発明の方法において、重合装置の総体的な空間-時間収率が増加されながら、スチレンモノマーの重合プロセスにおけるポリスチレン分子量および分子量分布が制御されうる。
【0006】
本方法が、前重合プロセスの使用あるいは種粒子の追加を必要としないことを特に述べる。しかし、もし望まれるならば、ポリマー粒子、特に初期の重合バッチから得られた非所望の粒子サイズの粒子がリサイクルされてもよい。もし使用されるならば、反応混合物を重合温度に加熱する間に、粒子は好ましくは、50%より多くモノマーに溶解される。
【0007】
WO 00/17245は、懸濁重合において塩化ビニルがスチレンと共重合されることができ、パーオキシドが配量されるところのプロセスを開示していることが留意される。本質的に塩化ビニルを含まないこと、すなわち塩化ビニルの量が、全てのモノマーの重量に基づいて1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満である点で、本発明方法はWO 00/17245の方法と異なる。好ましくは、本発明方法は、プロセスにおける圧力の蓄積および環境問題を避けるために、塩化ビニルをまったく含まない。従来知られているように、塩化ビニル重合の重合動力学は、エチレン性不飽和モノマーの動力学とは強く異なっている。なぜならば、モノマー反応への連鎖移動が、塩化ビニル含有重合プロセスにおいては普通であるからである。このことは、塩化ビニルポリマーの分子量が重合温度によって大きく決定され、一方、スチレンポリマーが形成される場合にはこれは妥当しないという大きな違いをもたらす。
【0008】
開始剤を配量する過程の間において、重合された生成物が形成されるであろう。すなわち或る期間の後では、開始剤がモノマーおよび重合された生成物の混合物に配量される。好ましくは、開始剤は、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間の期間にわたって、連続的にあるいは半連続的に配量される。大量のポリマーがバッチ様式で作られる場合には、要求される分子量に依存して5時間あるいはそれ以上までの添加時間が可能である。商業的および技術的観点から、開始剤の連続的配量が、半連続的配量よりも好ましい。
【0009】
好ましくは、重合混合物への開始剤の配量は、モノマーの少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも70%が重合される期間、半連続的あるいは連続的である。半連続的操作が選択されるならば、開始剤の小さな割合が配量される、重合温度における多くの(好ましくは4以上の)瞬間がある。もし望まれるならば、半連続的操作と連続的操作とが組合される事ができ、従って開始剤は或る(長いまたは短い)期間にわたって多数回配量される。
【0010】
もっとも好ましくは、開始剤は、モノマーの少なくとも1%、好ましくは少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも0.1%、もっとも好ましくは0%がすでに重合された時点から、モノマーの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは実質的に全てが重合されるまで、連続的にまたは半連続的に配量される。「実質的に全てが重合される」とは、モノマーの1000ppm未満が最終重合生成物中に存在することを意味する。
【0011】
「連続的」とは、変化する速度および変化する時間間隔での連続的添加をも包含する。変化する速度での開始剤の添加は、重合反応の冷却能力を最適な態様で使用し、また重合反応中のいわゆる「暴走」を防ぐために有利である。「半連続的」とは、開始剤の複数の分割が重合混合物に添加される添加方法を言う。多数の分割が短い間隔で加えられるなら、連続的添加方法に近づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ひとつの実施態様において、本発明の方法は、コモノマーをさらに含有するスチレン含有モノマー混合物の重合を包含する。この実施態様において、スチレン含有モノマー混合物が、全てのモノマーの重量に基づいて少なくとも50重量%のスチレンを含むことが好ましい。使用されうるコモノマーは、慣用のタイプのものであり、好ましくは酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、ブタジエン、および(メタ)アクリレートよりなる群(これはエチレン性不飽和ポリマーたとえばポリブタジエンおよびスチレンブタジエンゴムを包含する)から選ばれる。好ましさは低いが、塩化ビニリデンもまた共重合されうる。より好ましくは、重合されるモノマーの少なくとも80重量%がスチレンであり、一方、もっとも好ましいプロセスは、本質的に全てのモノマーがスチレンであるプロセスである。
【0013】
本発明の方法において、開始剤に対する半減期要件は、該開始剤が、重合温度の反応混合物中に存在するときに、60分間未満で50%以上(モル基準で)分解することである。好ましくは、半減期は重合温度にある反応混合物中において50分間未満であり、より好ましくは40分間未満、さらに好ましくは30分間未満、もっとも好ましくは15分間未満である。同時に、半減期は重合温度にある反応混合物中において0.5分超であり、より好ましくは1分超、さらに好ましくは2.5分超、もっとも好ましくは5分超である。最小の半減期は0.5分以上であり、さもなくば開始剤は効果的でない。より短い半減期における該非有効性は、開始剤が分解する前に開始剤が反応混合物を通ってポリマー/モノマー相(不連続である)へと移行しなければならないという事実によるものと考えられる。レドックス開始剤系は典型的にはラジカルのほとんど瞬間的な形成を与える故に、そのような開始剤系は好ましさが低い。
【0014】
配量技術の組合せを使用しかつ適当な開始剤を選択することによって、慣用のスチレン懸濁重合プロセスが改善できたことは、驚きであった。慣用のパーオキシドを使用しかつそれを重合温度上げることによってより早く分解させることだけでは、低下された平均分子量のポリマーが得られた。慣用のパーオキシドを配量することだけでは、より遅い(より早いではなく)重合時間を結果した。しかし、この二つの手段の組合せ(パーオキシドがより早く分解すること、およびそれが配量されることを意味する)は、慣用の生成物と同等の平均分子量を有する生成物を短縮された重合時間でもたらした。
【0015】
好ましくは、重合温度は、170℃以下である。好ましくは、反応温度は、150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0016】
使用される全ての開始剤の半減期は、従来知られているモノクロロベンゼン中の慣用の分解研究によって決定されうる(たとえば、アクゾノーベル社から入手できるコード番号10737を付された「Initiators for high polymers」(高分子量ポリマーのための開始剤)という文献を参照されたい)。
【0017】
一以上の追加の開始剤を使用することによって、開始剤が配量されていず、かつ配量プロセスにおいて最適化されていない点で異なる従来方法と比べて、同じあるいは少ない残留モノマーレベルを達成できることが見出された。
【0018】
従って、開始剤を配量するだけでなく、一以上の追加の開始剤を使用することが好ましい。本方法においてそのような追加の開始剤が使用されるならば、それらの各々の半減期は好ましくは、重合温度にある反応混合物中で、120分間未満であり、より好ましくは60分間未満、さらに好ましくは30分間未満、もっとも好ましくは10分間未満であり、かつ好ましくは0.05分超であり、より好ましくは0.5分超、さらに好ましくは2.5分超、もっとも好ましくは5分超である。該一あるいはそれ以上の開始剤は、一度に重合混合物に添加されるか、重合混合物に配量される。
【0019】
好ましくは、配量される開始剤の本質的に全てが、上記半減期要件を満たす。より好ましくは、本方法で使用される開始剤の本質的に全てが、上記半減期要件を満たす。
【0020】
ここにおいて「開始剤」という言葉は、フリーラジカルを発生し、そしてこれが重合反応を開始するところの化合物を指す古典的意味において使用されている。従って、重合条件を(全体的にまたは部分的に)生き延びさせる目的で或る熱的に不安定な化合物、たとえば難燃剤相乗剤として最終ポリマー中に存在するようなもの、が使用された場合、分解しないこの部分は本発明に従う開始剤としては看做されない。
【0021】
配量されることができかつ開始剤のための半減期要件(実際の重合温度に依存する)を満たす開始剤の適当なクラスの例は、パーオキシジカーボネート、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアシルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、アゾ開始剤、ケトンパーオキシド、及びこれらの混合物である。これらの開始剤は、一分子あたり一以上のパーオキシおよび/またはアゾ部分を有してもよい。任意的に、これら開始剤はさらに、一以上の官能基、たとえばアミン、フォスフェート、エステル、エーテル、および/またはアルコール基で官能化されていてもよい。ポリマーが従来の分子量を持ちながら重合時間における最大の減少が、ジベンゾイル部分または1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン部分を有するパーオキシドおよびアゾ開始剤から選ばれた生成物について見出された。ジベンゾイルパーオキシド部分を有する好ましい化合物、ならびにそれらの半減期を表1に示す。
【0022】



【0023】
表において、T10は化合物の半減期が10時間である温度(℃)であり、T1は化合物の半減期が1時間である温度(℃)であり、Eaは活性化エネルギー(J/モル単位)であり、Aはアレニウス頻度係数(s-1)である。慣用のアレニウス式を用いて、重合温度における半減期を計算できる。
【0024】
置換又は非置換の、ジベンゾイルパーオキシド、1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、およびアゾ開始剤がより好ましい。最も好ましくはジベンゾイルパーオキシド、1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、および2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)である。商業的に入手可能な開始剤は、Trigonox(商標) 99、Trigonox(商標) SBP、Trigonox(商標) EHP、Trigonox(商標) 131、Trigonox(商標) 141、Trigonox(商標) 21S、およびPerkadox(商標) 16、Trigonox(商標) 27、Trigonox(商標) 22、Trigonox(商標) 29、Trigonox(商標) 25、Trigonox(商標) 125、Trigonox(商標) 121、Trigonox(商標) 421、Trigonox(商標) 425、Perkadox(商標) AMBN、Perkadox(商標) AIBN、Perkadox(商標) L W−75、Perkadox(商標) 12、およびLauroxである。本方法で使用される追加の開始剤は、上記開始剤と異なり、しかし化合物の該同じ群から選ばれることができる。
【0025】
反応混合物が重合温度においてまたはその近傍で調製される場合(ウオームスタートプロセスと呼ばれる)、反応混合物を反応温度にもたらす前に或る量の開始剤を加え、反応温度で残部を配量することは必要でない。しかし、ウオームスタートプロセスにおいても、重合の前の反応混合物に、モノマーの合計重量に対して10重量%まで、好ましくは5重量%までの開始剤を一度に加えることが有利でありうる。次に、開始剤は、反応温度で連続的にまたは半連続的に配量されることができる。この手順が用いられる場合、最初の開始剤は、モノマー、溶剤、およびたぶん他の成分が混合さた後に、最後の成分として加えられる。この手順は、もしも或る量の重合禁止剤(ラジカルトラッピング物質)が反応混合物中に存在するならば、特に好ましい。そのようなラジカルスカベンジャーが、たとえば構成成分として(典型的には安定化剤として)モノマー中に含有される故に、存在するならば、当初に配量された開始剤は該スカベンジャーと反応して、重合反応の遅らせられた開始を防ぐであろう。
【0026】
典型的には、追加の開始剤のタイプおよび量は、最終の重合された生成物の残留モノマー含有量がモノマー1kg当り5000mg未満、好ましくはモノマー1kg当り2000mg未満、より好ましくはモノマー1kg当り1000mg未満であるように選ばれる。
【0027】
本発明の方法において使用される開始剤の合計量は、重合プロセスにおいて慣用的に使用される範囲内である。典型的には、重合されるべきモノマーの重量に対して少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%、最も好ましくは少なくとも0.1重量%の合計の開始剤、そして好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、もっとも好ましくは1重量%以下の合計の開始剤を使用することが好ましい。
【0028】
反応器への配量は、典型的には開始剤そのままを(混ぜ物無しで)、一以上の溶剤との混合物または溶液として、または分散物として配量することにより行われる。適当な溶剤は、好ましくは、水、慣用の有機溶剤、モノマー、膨張剤(たとえばペンタン、イソペンタンなど)、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。モノマーとの混合物は、安全性又は品質管理の理由から好まれないであろう。好ましくは、開始剤の分散物、より好ましくは水性分散物が、使用される。最も好ましくは、水中の開始剤の縣濁物、たとえば水中の40重量%ジベンゾイルパーオキシド縣濁物が、使用される。その様な縣濁物は、アクゾノーベルポリマーケミカルズから、商標Perkadox L W−40の下で商業的に入手できる。アルコールのような溶剤が使用される場合には、それらは重合プロセスの後でのポリマーの仕上げの間に除去されることができる。もし使用されるならば、溶剤中の開始剤の半減温度(半減期が1時間である温度)を分析することによって確認できる、溶剤に溶解された開始剤の熱的安定性に悪影響を与えない溶剤が有利に使用される。殆どの開始剤と一緒に使用できる溶剤の例は、イソドデカンである。もしも開始剤の分散物が使用されるなら、該分散物は、開始剤そのもの、分散物、あるいは開始剤の溶液の分散物でありうる。好ましくは、分散物は、水性分散物である。好ましくは、開始剤と重合混合物との迅速な混合を保証し、これは開始剤のより効率的な使用をもたらす、希薄な開始剤溶液又は分散物が使用される。従って、少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.5、最も好ましくは少なくとも2重量%、60重量%以下、より好ましくは25重量%以下、最も好ましくは15重量%以下の開始剤濃度を有する開始剤の混合物、溶液、又は分散物を使用することが好ましい。
【0029】
本重合方法は縣濁プロセスであり、反応混合物は、水を含有する媒体中のモノマー含有相の分散物である。これらのプロセスにおいて、通常の添加物が使用されうる。たとえば、水中の縣濁物のために、一以上の慣用の添加物、たとえば界面活性剤、連鎖移動剤、保護コロイド、防汚剤、pHバッファー、難燃剤、難燃剤相乗剤など、が存在して良い、膨張剤も重合プロセスの開始時にあるいは間に添加されることができる。スチレンモノマー及び膨張剤の存在ゆえに、その様なプロセスは少なくとも部分的に加圧反応器中で実施される。添加物の合計重量は好ましくは、全モノマーの合計重量に対して20重量%以下である。
【0030】
本方法の低減された重合時間の故に、膨張剤が使用されるならば、それを慣用のプロセスにおけるよりも早い段階で加えることが好ましい。より好ましくは、モノマーの重合度が80%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満である時に膨張剤の一部あるいは全てが反応混合物中に導入される。重合の開始から一時間以内に膨張剤が配量されるあるいは添加される場合に、プロセスが好ましいことが見出された。本発明に従う最も好ましい方法は、膨張しうるポリスチレン(EPS)を製造するための膨張剤の使用を含む、バッチ式の縣濁重合法である。
【0031】
変えられる速度での開始剤の配量が重合反応の冷却能力を最適の様式で使用するために有利であるという事実に加えて、重合プロセスの間の開始剤の配量速度の変更は、経済的な重合プロセスを得るためおよび所望の分子量を有する重合生成物を得るために有利であることも見出された。一つの重合実施運転において配量速度を変えることによって、複数モーダル分子量分布を持つポリマー作られうる。たとえば、変化する配量速度を持つ二つの期間を用いることによって、バイモーダル(双峰の)分子量分布が同じ実施運転において作られることができる。その様なバイモーダル分子量分布ポリマーの混合物は、ポリスチレンの膨張性を改善する為に有用な低分子量部分およびポリマーの機械的特性を改善する高分子量部分を有する。
【0032】
更に、慣用の方法からのと本質的に同じ分子量を持つポリマーがより少ない時間で作られうることが観察され、唯一の違いは、開始剤の制御された配量および配量プロセスで使用される開始剤の最適化である。
【0033】
重合の後で、得た(コ)ポリマー(又は樹脂)は好ましくは、従来のように処理される。そのように得たポリマーは、通常のモノマー低減、乾燥、および/または篩い分け工程に付されることができる。これら一以上の工程の次に、たとえば膨張工程を続けることが出来る。従来のEPSプロセスにおけると同様に、ポリマー生成物中の残留モノマー含有量は、通常の様式で、好ましくは第二工程をプロセス(そこでは反応温度が、開始剤が配量された最初の工程で使用された温度よりも高く、典型的には約110〜170℃)に含めることによって、好ましくは上で定義した半減温度を持つ一以上の追加の開始剤、たとえばtert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ジクミルパーオキシド、またはtert-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネートの存在下に、低減されうる。これらの追加の開始剤は、重合プロセスの開始時に、又は間に添加されることができる。得られた樹脂は、好ましくは60℃における1時間の乾燥及び篩分けの直後に50ppm未満、より好ましくは40ppm未満、最も好ましくは25ppm未満の残留開始剤を含有することを特徴とする樹脂である。
【0034】
得られた樹脂は更に、ポリスチレン標準を使用する慣用のゲル透過クロマトグラフィ技術を用いて測定して、それが少なくとも100,000g/モル、より好ましくは少なくとも125,000g/モル、最も好ましくは少なくとも150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を持つこと、およびそれが好ましくは500,000 g/モル以下、より好ましくは450,000 g/モル以下、最も好ましくは350,000 g/モル以下のMwを有することを特徴とする。
【0035】
本発明はさらに、上記の方法で得ることができる、スチレンに基づいた(コ)ポリマー、および発泡物品の製造の為に該(コ)ポリマーを加熱することを含む成形法において該(コ)ポリマーを用いることに関する。
【0036】
本発明を、以下の非制限的な実施例によって例示する。
【実施例】
【0037】
実施例1〜4 及び比較例A〜D
実験1〜4及びA〜Dのための一般的説明
BPO, PxL (Perkadox(商標) L W-75)ジベンゾイルパーオキシド(開始剤)、アクゾノーベル社より
Tx-117 (Trigonox(商標) 117)tert-ブチルパーオキシ-2-エチルへキシルカーボネート(追加の開始剤)、アクゾノーベル社より
Tx-131 (Trigonox(商標) 131)tert-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(追加の開始剤)、アクゾノーベル社より
【0038】
邪魔板、三枚歯攪拌装置、圧力変換装置、開始剤配量管(一又は複数)、及び窒素パージを備えられた、温度制御された、1リットルのステンレス鋼ブッチ(Buchi)反応器に、1.25gの燐酸三カルシウムが入れられた。次に、水の230g、Nacconol(商標)90 G(Stephan Chemie Co.より)の0.1重量%水溶液の20g、およびGohsenol (商標)C500(日本合成より)の0.5重量%水溶液の10gの溶液を加え、約5分間攪拌した。反応器に、スチレン220gを加えた。反応器を数回真空にして酸素を除き、窒素ブランケットを適用し、反応器を閉じ、加圧し、そして重合温度に45分間加熱した。比較例A〜Dのためには、重合温度は90℃であった。90℃で255分間の後に、温度は60分間かけて120℃に上げられた。この温度は、120分間維持された。次に、全体が室温に冷却された。
【0039】
実施例1〜4では、110℃の重合温度で、圧力ポンプを用いて開始剤が配量された。ペンタンが使用されなかった実施例では、Perkadox(商標) L W-75が、スチレン30g中の溶液として90分間で配量された。追加の開始剤は、190分後に15分間かけて5gのスチレン中の溶液として加えられた。ペンタンが使用された実施例では、BPOが、スチレン及びペンタン(30g/15g)中の溶液として加えられ、追加の開始剤が重合時間190分後に15分間かけて5gのペンタン中の溶液として加えられた。実施例1〜4の全てにおいて、温度が増加され、重合時間190分後に110℃、30分かけて120℃とされた。この温度は、80分間維持された。次に、反応器の内容物は、室温に冷却された。
【0040】
結果を下記の表に纏める。開始剤の配量によって(実施例1〜4)、開始剤が配量されずかつ温度がより低い例(比較例A〜D)におけると同じ平均分子量(MwおよびMn)及び多分散を持つEPSが得られることが結論される。ペンタンが使用されなかった配量実験(実施例3〜4)においても、ペンタンが使用されなかった非配量実験(比較例C〜D)におけると同じ低い残留スチレン値が得られた。
【0041】

【0042】
実施例5〜9 及び比較例E
Px-BC (Perkadox(商標) BC-FF)ジクミルパーオキシド、アクゾノーベル社より
【0043】
上記の実施例の手順が繰返されたが、ただし、260gの水が入れられた。実施例5、8及び9において、重合反応の開始後夫々180,160、及び135分後に、追加の開始剤が重合反応に加えられた。実施例6、7及びEにおいて、追加の開始剤は重合の開始の前に一度に加えられた。
【0044】
実施例5及び8において、温度は、110℃での190分の重合時間後に、15分かけて(実施例5)又は30分かけて(実施例8)120℃に上げられた。この温度は、50分間(実施例5)又は80分(実施例8)維持された。
【0045】
実施例7において、温度は、110℃での175分の重合時間後に、60分かけて130℃に上げられた。この温度は、100分間維持された。実施例6において、温度は、110℃での155分の重合時間後に、30分かけて120℃に上げられた。この温度は、65分間維持され、次に15分かけて150℃に増加され、この温度で95分間維持された
【0046】
結果を下記の表に示す。本発明の重合方法において得られたポリスチレンは、従来のプロセスで得られたポリスチレンと分子量及び分子量分布の点で同等であり、しかし本発明の方法はより短い反応時間を要すると結論される。
【0047】

【0048】
実施例10〜11
Px L W40 (Perkadox(商標) L W40-TCP)ジベンゾイルパーオキシド縣濁物、アクゾノーベル社より
【0049】
上記の実施例5の手順が繰返されたが、ただし、追加の開始剤が使用されなかった。実施例10においては、Px L W40が使用された。該パーオキシド縣濁物は、希釈された縣濁物として(30gの水中、反応の開始時点における水の取り入れ量はこの量について矯正された)配量された。Perkadox(商標)LW-75が、実施例11において使用され、30gのスチレン中の溶液として配量された。該スチレン溶液は、溶液自体の重合を避けるために、温度制御されなければならなかった。
【0050】

【0051】
本発明の方法において、BPOの縣濁物の使用は、BPOの溶液の使用より好ましいと結論される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合温度にある反応混合物に開始剤又は開始剤混合物を連続的にあるいは半連続的に配量する工程を含む、スチレンモノマーまたはスチレンを含有するモノマー混合物を重合する、本質的に塩化ビニルを含まない縣濁重合方法において、配量される少なくとも一の開始剤が、該重合温度において60分間以下の半減期を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、ブタジエン、(メタ)アクリレート、及びエチレン性不飽和ポリマーたとえばポリブタジエン、及びスチレンブタジエンゴムよりなる群からえばられるコモノマーをも該組成物が含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマーの少なくとも1%、好ましくは少なくとも0.5%、より好ましくは少なくとも0.1%、最も好ましくは0%がすでに重合されている時点から、モノマーの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくはモノマーの実質的に総てが重合される時点までにおいて、該開始剤が連続的にあるいは半連続的に配量され、「モノマーの実質的に総てが重合される」という語は1000ppm未満のモノマーが出来上がった重合生成物に存在することを意味する、請求項1〜2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
開始剤が、パーオキシジカーボネート、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアシルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、ケトンパーオキシド、アゾ開始剤、ただしこれらの夫々は分子内に一以上の−OO−、及び/又は―NN―部分を有しても良く、かつこれらの夫々はアミン、フォスフェート、エステル、エーテル、又はアルコール部分を有してもよい、並びにこれらの混合物から選ばれ、該開始剤は好ましくは置換又は非置換の、ジベンゾイルパーオキシド、1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、アゾ開始剤、及びこれらの混合物、最も好ましくはジベンゾイルパーオキシド、1,1‐ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、及びこれらの混合物、から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
反応温度が、170℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、最も好ましくは120℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
開始剤の少なくとも一部が、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間の時間をかけて連続的にまたは半連続的に配量される、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
重合されるべきモノマーの重量に対して少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%、最も好ましくは少なくとも0.1重量%の開始剤合計重量、かつ好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも3重量%、最も好ましくは多くとも1重量%の開始剤合計重量が使用される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
モノマーの重合度が80%未満、好ましくは60%未満、最も好ましくは50%未満の時に、反応混合物に膨張剤が加えられるまたは配量される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
開始剤又は開始剤混合物が、分散物、好ましくは水性分散物の形で配量される、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
残留モノマーレベルを低減するために、追加の開始剤が使用される、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
膨張できるポリスチレンを製造する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の方法により得られることができるスチレンに基づく(コ)ポリマーにおいて、60℃における1時間の乾燥及び篩分けの直後に50ppm未満、より好ましくは40ppm未満、最も好ましくは25ppm未満の残留開始剤を有する、スチレンに基づく(コ)ポリマー。
【請求項13】
発泡物品の製造のために、請求項12記載の(コ)ポリマーを加熱することを含む成形方法。

【公表番号】特表2006−522844(P2006−522844A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505020(P2006−505020)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003661
【国際公開番号】WO2004/089999
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】