説明

ストラットマウント

【課題】防振基体がケース部材から脱落することを防止すると共に、ピストンロッドの締結固定時に内側部材がケース部材内で空転することを防止できるストラットマウントを提供すること。
【解決手段】ケース部材30の筒壁部31へ防振基体20を内嵌させ、筒壁部31の突出舌片35を防振基体20の凹部23に係合させる。これにより、ストラットマウント単体を車体へ組み付けるまでの搬送中などに、防振基体20がケース部材30の筒壁部31から脱落することを防止できる。また、ピストンロッドを内側部材10に締結固定する際には、筒壁部31の突出舌片35と防振基体20の凹部23との係合により、防振部材20がケース部材30の筒壁部31内で空転することを防止できる。その結果、その締結作業の作業性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラットマウントに関し、特に、防振基体がケース部材から脱落することを防止すると共に、ピストンロッドの締結固定時に内側部材がケース部材内で空転することを防止できるストラットマウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の懸架装置では、車体とショックアブソーバのピストンロッドとの間にストラットマウントを介設することで、車輪側から車体側への振動の伝達を抑制している。このストラットマウントは、例えば、特許文献1に開示されるように、ショックアブソーバ5のピストンロッド4の上端部が締結固定されるインナーリング2(内側部材)と、そのインナーリング2を囲むアウターリング6との間を、弾性体8(防振基体)により連結し、車両ボディ3(車体)に取り付けられるフランジ部材19(ケース部材)の円筒形状の部分Aにアウターリング6を圧入して構成される。
【0003】
なお、このように、インナーリング2とアウターリング6との間を弾性体8で連結する構成では、弾性体8の加硫成形後、アウターリング6に絞り加工を施して縮径させることが行われる。これにより、弾性体8の熱収縮により発生する内部応力を低減して、耐久性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−82530号公報(図1、段落0014,0018など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した従来のストラットマウントのように、インナーリング2(内側部材)とアウターリング6との間を弾性体8で連結すると共に、アウターリング6をフランジ部材19(ケース部材)に圧入する構成では、アウターリング6の絞り加工が必要となるだけでなく、その絞り加工後の寸法検査も必須となるため、その分、工数が嵩み、製品コストが増加する。
【0006】
そのため、アウターリング6を使用せずにストラットマウントを構成できることが望ましいが、単にアウターリング6を省略するだけでは、次の問題点がある。即ち、上述した従来のストラットマウントのように、フランジ部材19(ケース部材)の一側が開放されており、その一側を、車両ボディ3(車体)側の部材により閉封する構造の場合には、ストラットマウントを車体へ組み付けるまでの搬送工程などにおいて、弾性体8がフランジ部材19内から脱落しないようにする必要がある。
【0007】
しかしながら、この場合、弾性体8をフランジ部材19へ圧入したとしても、弾性体8の弾性力のみでは十分な圧入強度を確保できないため、その脱落を確実に防止することが困難であるという問題点がある。また、同様に、十分な圧入強度が確保できないことから、ピストンロッド4の上端部をインナーリング2(内側部材)に締結固定する際には、その締結トルクにより、インナーリング2が弾性体8と共にフランジ部材19内で空転してしまい、締結作業が阻害されるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、防振基体がケース部材から脱落することを防止すると共に、ピストンロッドの締結固定時に内側部材がケース部材内で空転することを防止できるストラットマウントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
請求項1記載のストラットマウントによれば、防振基体には、内周側に内側部材が加硫接着されると共に、外周面に複数の凹部が周方向に分散配置されつつ凹設され、ケース部材の筒壁部には、その筒壁部に切り曲げ加工を施して形成され筒壁部の軸直角方向内方へ突出する複数の突出舌片が、防振基体の各凹部に対応する位置にそれぞれ配置されるので、ケース部材の筒壁部へ防振基体を内嵌させることで、筒壁部の突出舌片を防振基体の凹部に係合させることができる。
【0010】
これにより、ケース部材の筒壁部に内嵌された防振基体が軸方向一側(締結壁部側の開口側)へ変位することを、筒壁部の突出舌片と防振基体の凹部との係合により規制することができる。その結果、防振基体がケース部材(筒壁部)から脱落することを防止できるという効果がある。同様に、ケース部材の筒壁部に内嵌された防振基体が周方向へ変位(回転)することを、筒壁部の突出舌片と防振基体の凹部との係合により規制することができる。その結果、ピストンロッドを内側部材に締結固定する際に、内側部材がケース部材(筒壁部)内で空転することを防止できるという効果がある。よって、締結作業の作業性の向上を図ることができる。
【0011】
このように、請求項1では、従来品において必要とされたアウターリング(以下「外筒金具」と称す)を省略できる。よって、請求項1によれば、外筒金具に絞り加工を施す必要がなく、その結果、絞り加工後の寸法検査も不要となるので、その分、製造工数を低減して、製品コストの削減を図ることができるという効果がある。また、外筒金具を省略できることで、部品点数の削減に伴う部品コストの低減だけでなく、製品の軽量化も図ることができるという効果がある。
【0012】
また、このように、外筒金具を省略できれば、ケース部材の筒壁部内における限られたスペースにおいて、内側部材および防振基体のためのスペースを確保することができる。よって、内側部材および防振基体の形状の自由度が大きくなるので、設計性を高めて、静的および動的な特性や耐久性の向上を図ることができるという効果がある。
【0013】
更に、請求項1によれば、バウンド側入力時またはリバウンド側入力時の防振基体のたわみ量を抑制して、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。即ち、バウンド側入力時は、内側部材と車体側の部材との間の領域に位置する防振基体の部分が主に機能する(圧縮変形される)と共に、リバウンド側入力時は、内側部材とケース部材の下側壁部との間の領域に位置する防振基体の部分が主に機能する(圧縮変形される)ところ、筒壁部の突出舌片が防振基体の凹部に係合していることで、防振基体の他の部分(突出舌片により変位が規制される部分)も機能(変形)させることができる。よって、入力荷重が同じであれば、防振基体の他の部分が機能する分、防振基体全体を有効に利用して、そのたわみ量を抑制することができる。
【0014】
請求項2記載のストラットマウントによれば、請求項1記載のストラットマウントの奏する効果に加え、筒壁部の突出舌片は、折り曲げ部となる未切断部と反対側の切り曲げ先端部において筒壁部の軸直角方向内方への突出量が最大となると共に、締結壁部側から下側壁部側へ向かう(即ち、筒壁部の締結壁部側の開口から奥側(下側壁部)へ向かう)に従って突出量が増加する形状に形成されるので、防振基体を筒壁部へ挿入して内嵌させる際には、突出舌片の変形性を利用して、挿入作業性の向上を図ることができると共に、防振基体が筒壁部に内嵌された後は、突出舌片が返しとして機能することで、防振基体が筒壁部から脱落することを確実に防止できるという効果がある。
【0015】
請求項3記載のストラットマウントによれば、請求項2記載のストラットマウントの奏する効果に加え、筒壁部の突出舌片は、未切断部が締結壁部側に位置すると共に未切断部から切り曲げ先端部へ向かうに従って筒壁部の軸直角方向内方への突出量が大きくなる縦断面直線状に形成されるので、加工を容易として、製造コストの削減を図ることができると共に、寸法精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0016】
即ち、折り曲げ部となる未切断部を締結壁部側と反対側(下側壁部側)に位置させた場合でも、突出舌片を軸直角方向内方へ折り返すように変形させることで、締結壁部側から下側壁部側へ向かうに従って突出量が大きくなるように、突出舌片を形成することは可能であるが、この場合には、突出舌片を大きく変形させる必要があるため、加工工数が嵩むと共に、寸法精度のばらつきが大きくなる。
【0017】
請求項4記載のストラットマウントによれば、請求項2又は3に記載のストラットマウントの奏する効果に加え、ケース部材の筒壁部に防振基体が内嵌された状態では、突出量が最大となる突出舌片の切り曲げ先端部よりも締結壁部側に内側部材が位置すると共に、筒壁部の軸方向視において、突出舌片と内側部材とが重なるので、リバウンド側入力時の防振基体のたわみ量を効果的に抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができるという効果がある。即ち、リバウンド側入力時に内側部材がケース部材の下側壁部へ向けて変位する際には、その内側部材の変位を、筒壁部の突出舌片により規制させることができるので、防振基体のたわみ量を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施の形態におけるストラットマウントの断面図である。
【図2】(a)は、防振基体の上面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における防振基体の断面図である。
【図3】(a)は、図2(b)の矢印IIIa方向視における防振基体の側面図であり、(b)は、防振基体の部分拡大断面図である。
【図4】(a)は、ケース部材の上面図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるケース部材の断面図である。
【図5】(a)は、図4(b)の矢印Va方向視におけるケース部材の側面図であり、(b)は、ケース部材の部分拡大断面図である。
【図6】(a)は、ストラットマウントの分解断面図であり、(b)は、ストラットマウントの組立断面図である。
【図7】第2実施の形態におけるストラットマウントの断面図である。
【図8】(a)は、第3実施の形態におけるストラットマウントの分解断面図であり、(b)は、ストラットマウントの組立断面図である。
【図9】(a)は、第4実施の形態におけるストラットマウントの分解断面図であり、(b)は、ストラットマウントの組立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照してストラットマウント1の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態におけるストラットマウント1の断面図であって、車体への装着状態を示す図である。なお、図1では、ピストンロッドR及びナットNの断面視が省略されると共に、ケース部材30と車体パネルBPとを締結固定するボルトの図示が省略される。
【0020】
図1に示すように、ストラットマウント1は、ショックアブソーバのピストンロッドRの先端を車体側に支持する防振装置であり、ピストンロッドRの先端が締結固定される内側部材10と、その内側部材10が内周側に加硫接着される防振基体20と、その防振基体20が内嵌されると共に車体パネルBPに締結固定されるケース部材30とを主に備えて構成される。
【0021】
内側部材10は、鉄鋼材料やアルミニウム合金などから上面視円形の円盤状に形成され、その中心部には、ショックアブソーバのピストンロッドRの先端を挿通させるための挿通孔10aが穿設される。この挿通孔10aにピストンロッドRの先端が挿通され、ナットNが締結されることで、内側部材10にショックアブソーバが取り付けられる。
【0022】
防振基体20は、ゴム状弾性体から円環状(ドーナツ状)に形成され、その内周側には、内側部材10が外縁部を埋め込んだ状態で加硫接着される。なお、防振基体20の外周面には、複数の凹部23が凹設され、ケース部材30の突出舌片35がそれぞれ係合可能とされる。
【0023】
ケース部材30は、鉄鋼材料からプレス加工により容器状に形成され、防振基体20を収容するための収容部となる筒壁部31及び下側壁部32と、車体パネルBPへの取り付け部となる締結壁部33とを備える。筒壁部31には、内方へ向けて突出する複数の突出舌片35が切り曲げ加工により形成され、防振基体20の凹部23にそれぞれ係合可能とされる。
【0024】
また、締結壁部33には、内周面にめねじが螺刻された被締結穴33aが形成される。なお、締結壁部33の一部には、下面側(図1下側)へ向けて膨出する部分が形成されており、この膨出部分に被締結穴33aが形成される。これにより、被締結穴33aの締結可能長さが確保される。
【0025】
被締結穴33aには、車体パネルBPの挿通孔hに挿通されたボルトが締結される。これにより、締結壁部33が車体パネルBPに接合固定され、ケース部材30が車体に取り付けられる。なお、ケース部材30が車体パネルBPに取り付けられると、それらケース部材30と車体パネルBPとの間で防振基体20が軸方向(図1上下方向)に挟圧(圧縮)される。
【0026】
車体パネルBPには、ショックアブソーバのピストンロッドRの先端に対応する位置に、開口部mが開口形成されており、この開口部によって、ナットNをピストンロッドRの先端に締結するための作業空間が確保される。
【0027】
次いで、図2及び図3を参照して、防振基体20の詳細構成について説明する。図2(a)は、防振基体20の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における防振基体20の断面図である。また、図3(a)は、図2(b)の矢印IIIa方向視における防振基体20の側面図であり、図3(b)は、防振基体20の部分拡大断面図である。なお、図3(b)は、図2(b)の一部(凹部23近傍)を部分的に拡大した断面図に対応する。
【0028】
図2及び図3に示すように、防振基体20は、ピストンロッドRが挿通可能な円環状に形成され、その軸方向(図2(b)上下方向)略中央となる位置に内側部材10が加硫接着される。なお、内側部材10と防振基体20は同心に配置される。防振基体20の上面および下面(図2(b)上側面および下側面)は、軸に対して垂直な平面として形成されると共に、これら各面には、複数(本実施の形態では片面6個)の窪み部21,22がそれぞれ凹設される。各窪み部21,22は、同形状であり、周方向等間隔に配設される。
【0029】
防振基体20の外周面(図3(a)紙面手前側面)には、複数(本実施の形態では3個)の凹部23が周方向等間隔となる位置であって同じ高さ位置(図3(a)上下方向位置)にそれぞれ凹設される。凹部23は、防振基体20をケース部材30の筒壁部31に内嵌させた際に、突出舌片35を受け入れるための部位であり(図6参照)、正面視略矩形状(図3(a)参照)に形成されると共に、防振基体20の軸を含む断面視において略三角形状(図3(b)参照)に形成される。
【0030】
即ち、凹部23は、防振基体20の外周面から径方向内方へ平行(防振基体20の軸に垂直)に延設される底面23aと、防振基体20の外周面から径方向内方へ下降傾斜しつつ延設され底面23aに接続される傾斜面23bと、それら底面23a及び傾斜面23bを接続する一対の側面23cとから楔状の空間として形成される。なお、一対の側面23cの対向間隔(図3(a)左右方向寸法)は、ケース部材30の筒壁部31に形成される突出舌片35の幅(図5(a)左右方向寸法)よりも大きくされている。
【0031】
底面23aは、内側部材10の下面(図2(b)下側面)よりも防振基体20の軸方向下方(図2(b)下側)に位置すると共に、防振基体20をケース部材30の筒壁部31に内嵌させた状態(図6(b)の状態)では、突出舌片35の先端部(切り曲げ先端部35b、図5(b)参照)が密着する位置に形成される(図6(b)参照)。
【0032】
これにより、防振基体20をケース部材30の筒壁部31に内嵌させる際には、底面23aが内側部材10よりも下方に位置することで、防振基体20の変形性を確保して(即ち、内側部材10により防振基体20の底面23a近傍の変形が阻害されることを抑制して)、突出舌片35を凹部23内へ挿入させやすくしつつ、内嵌させた後は、突出舌片35に底面23aを密着させることで、防振基体20がケース部材30の筒壁部31から脱落することをより確実に抑制できる。
【0033】
傾斜面23bは、防振基体20の軸に対する傾斜角が、突出舌片35の筒壁部31の軸に対する傾斜角(図4(b)参照)と略同一の角度に形成される。これにより、ケース部材30の締結壁部33を車体パネルBPに装着した状態において(図1参照)、傾斜面23b全体を突出舌片35の上面へ均一に密着させることができ、その結果、防振基体20の耐久性の向上を図ることができる。
【0034】
防振基体20の外周面は、凹部23を含む領域Saが防振基体20の軸と平行に形成される一方、その領域Saよりも防振基体20の上面側および下面側における領域Sb,Scが軸に対して縮径方向へ傾斜して形成される。この場合、凹部23は、領域Scから所定間隔離間した位置に形成される、即ち、凹部23の底面23aと領域Scとの間に領域Saが形成される。
【0035】
これにより、防振基体20をケース部材30の筒壁部31に内嵌させる際には、領域Scの傾斜により、突出舌片35を凹部23内へ挿入させやすくしつつ、内嵌させた後は、凹部23の底面23aと領域Scとの間に領域Saを残しておくことで、防振基体20がケース部材30の筒壁部31から脱落することをより確実に抑制できる。
【0036】
なお、防振基体20は、領域Saにおける外径が、ケース部材30の筒壁部31における内径と略同一の寸法に設定される。また、ケース部材30の筒壁部31へ内嵌される前の状態における防振基体20の高さ寸法(図3(a)上下方向寸法)は、車体パネルBPにケース部材30の締結壁部33を締結固定した状態におけるケース部材30の下側壁部32の上面と車体パネルBPの下面との間の対向面間隔(図1上下方向寸法)よりも大きな寸法に設定される。よって、ストラットマウント1の車体への装着状態では、防振基体20は、車体パネルBPとケース部材30の下側壁部32との間で軸方向に挟圧(圧縮)されると共に、ケース部材30の筒壁部31によって縮径方向へ挟圧(圧縮)される(図1参照)。
【0037】
次いで、図4及び図5を参照して、ケース部材30について説明する。図4(a)は、ケース部材30の上面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるケース部材30の断面図である。また、図5(a)は、図4(b)の矢印Va方向視におけるケース部材30の側面図であり、図5(b)は、ケース部材30の部分拡大断面図である。なお、図5(b)は、図4(b)の一部(突出舌片35近傍)を部分的に拡大した断面図に対応する。
【0038】
図4及び図5に示すように、ケース部材30は、防振基体20が内嵌(図6参照)される筒状の筒壁部31と、その筒壁部31の軸方向(図4(b)上下方向)下端から軸直角方向内方へ向けて延設される下側壁部32と、その下側壁部32と筒壁部31を挟んで反対側となる筒壁部31の軸方向上端から軸直角方向外方へ向けて延設され車体パネルBPに締結固定される締結壁部33とを備え、全体として深皿容器状に形成される。
【0039】
筒壁部31には、複数(本実施の形態では3個)の突出舌片35が周方向等間隔となる位置であって同じ高さ位置にそれぞれ形成される。突出舌片35は、筒壁部31に防振基体20を内嵌させた際に、防振基体20の凹部23に挿入される部位であり(図6参照)、正面視略矩形状(図5(a)参照)に形成されると共に、筒壁部31の軸を含む断面視において直線状に延びる舌片(図5(b)参照)として形成される。
【0040】
即ち、突出舌片35は、防振基体20の凹部23に対応する位置において、筒壁部31に切り曲げ加工を施すことで形成される。本実施の形態における突出舌片35は、折り曲げ部となる未切断部35aが締結壁部33側に位置すると共に締結壁部33と平行に配置され、未切断部35aと反対側となる切り曲げ先端部35bが下側壁部32側に位置すると共に下側壁部32と平行に配置され、未切断部35aから切り曲げ先端部35bへ向かうに従って、筒壁部31の軸直角方向内方(図5(b)左方向)への突出量が漸次増加する縦断面直線状に形成される。
【0041】
このように、突出舌片35を縦断面直線状に形成することで、その形成(切り曲げ加工)を容易として、製造コストの削減を図ることができる。また、突出舌片35の寸法精度の向上を図ることができるので、防振基体20の凹部23との係合を確実として、防振基体20が筒壁部31から脱落することをより確実に防止できる。
【0042】
即ち、本実施の形態とは逆に、未切断部35aと切り曲げ先端部35bとの位置を反転させた場合でも、防振基体20の凹部23に係合する突出舌片を形成することは可能であるが(図8参照)、この場合には、突出舌片を大きく変形させる必要があるため、加工工数が嵩むと共に、寸法精度のばらつきが大きくなる。
【0043】
また、このように、突出舌片35が、切り曲げ先端部35bにおいて筒壁部31の軸直角方向内方(図5(b)左方向)への突出量が最大となると共に、締結壁部33側から下側壁部32側へ向かう(即ち、防振基体20の挿入方向である筒壁部31の締結壁部33側の開口から奥側(下側壁部32)へ向かう)に従って、その突出量が増加する形状に形成されることで、防振基体20を筒壁部31へ挿入して内嵌させる際には、突出舌片35の変形性を利用して、その挿入作業性の向上を図ることができると共に、防振基体20が筒壁部31に内嵌された後は、突出舌片35が返しとして機能することで、防振基体20が筒壁部31から脱落することを確実に防止できる。
【0044】
ここで、突出舌片35の切り曲げ先端部35bと下側壁部32との間の軸方向(図5(b)上下方向)における間隔は、防振基体20の凹部23における底面23aと防振基体20の下面との間の軸方向(図3(b)上下方向)における間隔(図2及び図3参照)よりも小さくされる。
【0045】
よって、上述したように、防振基体20をケース部材30の筒壁部31に内嵌させた状態(図6(b)の状態)では、防振基体20における凹部23の底面23aよりも下方の部分を、突出舌片35の切り曲げ先端部35bと下側壁部32の上面との間で軸方向に挟圧(圧縮)して、突出舌片35の切り曲げ先端部35bを凹部23の底面23aに密着させることができる。その結果、防振基体20の凹部23との係合を確実として、防振基体20が筒壁部31から脱落することをより確実に防止できる。
【0046】
下面壁部32の中心部には、正面視円形の挿通孔32aが筒壁部31と同心に穿設され、ショックアブソーバのピストンロッドRが挿通可能とされる。なお、挿通孔32aの内径は、防振基体20(及び内側部材10)の外径よりも小さくされる。また、下面壁部32の上面は、筒壁部31の軸と略直交する平面として形成され、防振基体20の下面を支持する。
【0047】
締結壁部33は、上面視略三角形状に形成され、その三角形の重心が筒壁部31の軸に一致する位置に配設されると共に、筒壁部31の外周面から径方向外方へ向けて離間するに従って下降傾斜する傘状に形成される。また、締結壁部33は、その三角形の各頂部に対応する位置に、被締結穴33aがそれぞれ形成される。即ち、被締結穴33aは、筒壁部31の軸を中心として周方向120度間隔で配置される。
【0048】
ここで、筒壁部31に切り曲げ加工を施して形成される突出舌片35は、筒壁部31の軸を中心として周方向120度間隔で配置されると共に、被締結穴33aに対して、周方向に60度だけ位相をずらした位置に配置される。これにより、パンチ及びダイからなる金型を用いて筒壁部31に切り曲げ加工を施す際には、かかる加工が締結壁部33の膨出部分に阻害されること抑制することができる。その結果、突出舌片35の形成位置の自由度を高めることができる。
【0049】
即ち、本実施の形態では、車体パネルBPの形状に合わせて締結壁部33を傘状(下降傾斜した形状)に形成する必要があり、更に、被締結穴33aの締結長さを確保するために締結壁部33の下面側に膨出部分を形成する必要がある。そのため、筒壁部31に対して切り曲げ加工を施す際に、かかる加工が締結壁部33の膨出部分に阻害されるため、突出舌片35を形成可能な位置が制限される。これに対し、本実施の形態では、上述のように位相をずらすことで、締結壁部33の膨出部分に阻害されずに切り曲げ加工を行うことができる。
【0050】
また、この場合には、切り曲げ加工を施す位置(突出舌片35の形成位置)を、上面視三角形状の締結壁部33の頂部間に位置させることができる(図4(a)参照)。これにより、締結壁部33の外縁から筒壁部31の外周面までの距離を最短とすることができるので、パンチ及びダイからなる金型を、筒壁部31の外周面により近接させて配置することができる。その結果、突出舌片35の歩留まりや寸法精度を高めることができる。
【0051】
次いで、図6を参照して、ストラットマウント1の組立方法および車体への装着方法を説明する。図6(a)は、ストラットマウント1の分解断面図であり、図6(b)は、ストラットマウント1の組立断面図である。
【0052】
図6(a)に示すように、ストラットマウント1の組み立てに際しては、まず、ケース部材30に対する防振基体20の位相(即ち、筒壁部31の突出舌片35の周方向位置と防振基体20の凹部23の周方向位置と)を一致させ、防振基体20をケース部材30の締結壁部33側の開口から軸方向(図6(a)上下方向)に沿って奥側(下面壁部32側)へ挿入することで、図6(b)に示すように、防振基体20をケース部材30の筒壁部31に内嵌させる。これにより、防振基体20の凹部23に筒壁部31の突出舌片35が係合され、ストラットマウント1の組み立てが完了する。
【0053】
図6(b)に示すように、ストラットマウント1を組み立てた後は、かかるストラットマウント1を、組立工程から車体への装着工程(例えば、ストラットマウント1を製造する部品メーカから車両を製造する車両メーカ)へ搬送する。
【0054】
この搬送においては、上述したように、防振基体20の凹部23に筒壁部31の突出舌片35が係合されているので、かかる係合により、防振基体20が筒壁部31から軸方向一側(締結壁部33側の開口側)へ変位することを規制することができる。その結果、ストラットマウント1の搬送中に防振基体20がケース部材30の筒壁部31から脱落することを防止できる。
【0055】
また、突出舌片35が上述したように舌片として傾斜状態で配置されるので、防振基体20を筒壁部31へ挿入して内嵌させる際には、突出舌片35の変形性を利用して、その挿入作業性の向上を図ることができると共に、防振基体20が筒壁部31に内嵌された後は、突出舌片35が返しとして機能することで、防振基体20が筒壁部31から脱落することを確実に防止できる。
【0056】
装着工程では、まず、ケース部材30の締結壁部33を車体パネルBPに接合し、車体パネルBPの挿通孔hから挿通したボルトを締結壁部33の被締結穴33aに締結固定する。次いで、下側壁部32の挿通孔32aを介してショックアブソーバのピストンロッドRの先端を内側部材10の挿通孔10aに相通し、ナットNにて締結固定する。これにより、ストラットマウント1の車体への装着が完了する(図1参照)。
【0057】
この場合、防振基体20の凹部23と筒壁部31の突出舌片35との係合により、ケース部材30の筒壁部31に内嵌された防振基体20が周方向へ変位(回転)することを規制することができる。よって、ピストンロッドRを内側部材10に締結固定する際に、内側部材10がケース部材30の筒壁部31内で空転することを防止できる。その結果、ナットNを締結する際の作業性の向上を図ることができる。
【0058】
以上、説明したように、ストラットマウント1は、従来品において必要とされたアウターリング(外筒金具)を省略することができる(図1参照)。よって、その外筒金具に絞り加工を施す必要がなく、その結果、絞り加工後の寸法検査も不要となるので、その分、製造工数を低減して、製品コストの削減を図ることができる。また、外筒金具を省略できることで、部品点数の削減に伴う部品コストの低減だけでなく、製品の軽量化も図ることができる。
【0059】
また、このように、外筒金具を省略できれば、ケース部材30の筒壁部31内における限られたスペースにおいて、内側部材10及び防振基体20のためのスペースを確保することができる。よって、内側部材10及び防振基体20の形状の自由度が大きくなるので、その分、これらの設計性を高めて、静的および動的な特性や耐久性の向上を図ることができる。
【0060】
更に、ストラットマウント1によれば、バウンド側入力時またはリバウンド側入力時の防振基体20のたわみ量を抑制して、その耐久性の向上を図ることができる。この点について、図1に戻って説明する。
【0061】
即ち、バウンド側入力時は、内側部材10が相対的に上昇移動(図1上方へ移動)することで、内側部材10と車体パネルBPとの間の領域に位置する防振基体20の部分が主に機能する(圧縮変形される)が、従来品では、内側部材10よりも下側壁部32側の領域に位置する部分は機能させられないところ、本実施の形態におけるストラットマウント1では、筒壁部31の突出舌片35が防振基体20の凹部23に係合していることで、防振基体20の他の部分(即ち、内側部材10よりも下側壁部32側の領域に位置する部分であって、突出舌片35により変位が規制される部分)も機能(引張変形)させることができる。よって、入力荷重が同じであれば、防振基体20の他の部分が機能する分、防振基体20全体を有効に利用して、そのたわみ量を抑制することができる。
【0062】
同様に、リバウンド側入力時は、内側部材10が相対的に下降移動(図1下方へ移動)することで、内側部材10と下側壁部32との間の領域に位置する防振基体20の部分が主に機能する(圧縮変形される)が、従来品では、内側部材10よりも車体パネルBP側の領域に位置する部分は機能させられないところ、本実施の形態におけるストラットマウント1では、筒壁部31の突出舌片35が防振基体20の凹部23に係合していることで、防振基体20の他の部分(即ち、内側部材10よりも車体パネルBP側の領域に位置する部分であって、内側部材10の変位に伴い突出舌片35の上面により変位が規制される部分)も機能(圧縮変形およびせん断変形)させることができる。よって、入力荷重が同じであれば、防振基体20の他の部分が機能する分、防振基体20全体を有効に利用して、そのたわみ量を抑制することができる。
【0063】
次いで、図7を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、軸方向視において、内側部材10と突出舌片35とが重ならない場合を例に説明したが、第2実施の形態では、内側部材210と突出舌片235とが軸方向視において重なるように形成される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0064】
図7は、第2実施の形態におけるストラットマウント201の断面図であって、車体への装着状態を示す図である。なお、図7では、ピストンロッドR及びナットNの断面視が省略される。
【0065】
図7に示すように、第2実施の形態におけるストラットマウント201は、第1実施の形態におけるストラットマウント1に対し、内側部材210の外径寸法が大きく(即ち、内側部材210の外縁が突出舌片235側へ延長)されると共に、ケース部材230の筒壁部231に切り曲げ加工を施して形成される突出舌片235の長さ寸法が長く(切り曲げ先端部235bの位置が下側壁部32側へ延長)されている。
【0066】
なお、突出舌片235は、第1実施の形態における突出舌片35と同じ傾斜角を維持しつつ、その長さ寸法のみが延長される。防振基体220の凹部223は、突出舌片235の延長に伴い、第1実施の形態における傾斜面23bと同じ傾斜角を維持しつつ、傾斜面223bが延長され、その分、底面223aの位置が下面側に移動される。また、突出舌片235及び凹部223の形成個数および形成位置は第1実施の形態における突出舌片35及び凹部23と同一である。
【0067】
その結果、第2実施の形態では、ケース部材230の筒壁部231に防振基体220が内嵌された状態において、突出舌片235の切り曲げ先端部235bよりも締結壁部33側(図7上側)に内側部材210が位置すると共に、筒壁部231の軸方向視において、突出舌片235と内側部材210とが重なる。
【0068】
これにより、リバウンド側入力時の防振基体220のたわみ量を効果的に抑制することができ、その結果、耐久性の向上を図ることができる。即ち、リバウンド側入力時において、内側部材210が相対的に下降移動(図7下方へ移動)する際には、その内側部材210の変位を、筒壁部231の突出舌片235により規制させることができるので、防振基体220のたわみ量を効果的に抑制することができる。
【0069】
次いで、図8を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、突出舌片35の未切断部35aが締結壁部33側に位置する場合を説明したが、第3実施の形態では、未切断部335aが下側壁部32側に位置する。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0070】
図8(a)は、第3実施の形態におけるストラットマウント301の分解断面図であり、図8(b)は、ストラットマウント301の組立断面図である。
【0071】
図8に示すように、第3実施の形態におけるケース部材330は、第1実施の形態におけるケース部材30に対し、突出舌片335の未切断部335aの位置が上下反転して形成される。即ち、未切断部335が下面壁部32側に位置する状態で、筒壁部331に切り曲げ加工を施した部分を、筒壁部331の軸直角方向内方(図8(a)左方向)へ切り曲げると共に、その切り曲げた部分を更に下側壁面32側へ折り曲げることで、突出舌片335が形成される。
【0072】
なお、突出舌片335は、第1実施の形態における突出舌片35と同じ傾斜角で直線状に傾斜され、その正面視における幅(図5(a)左右方向寸法)は同じ寸法とされる。また、突出舌片335の形成個数および形成位置は第1実施の形態における突出舌片35と同一である。また、防振基体320は、第1実施の形態における防振基体20に対し、凹部23の底面の位置が下面側(図8(a)下側)に位置する点を除き、他の構成は同一であるので、その説明は省略する。
【0073】
ストラットマウント301の組み立ては、第1実施の形態の場合と同様に、ケース部材330に対する防振基体320の位相(即ち、筒壁部331の突出舌片335の周方向位置と防振基体320の凹部323の周方向位置と)を一致させ、防振基体320をケース部材330の締結壁部33側の開口から軸方向(図8(a)上下方向)に沿って奥側(下面壁部32側)へ挿入することで、図8(b)に示すように、防振基体320をケース部材330の筒壁部331に内嵌させる。これにより、防振基体320の凹部323に筒壁部331の突出舌片335が係合される。
【0074】
よって、防振基体320の凹部323に筒壁部331の突出舌片335が係合されているので、かかる係合により、防振基体320が筒壁部331から軸方向一側(締結壁部33側の開口側)へ変位することを規制することができる。その結果、第1実施の形態の場合と同様に、ストラットマウント301の搬送中に防振基体320がケース部材330の筒壁部331から脱落することを防止できる。
【0075】
また、突出舌片335が第1実施の形態の場合と同様に舌片として傾斜状態で配置されるので、防振基体320を筒壁部331へ挿入して内嵌させる際には、突出舌片335の変形性を利用して、その挿入作業性の向上を図ることができると共に、防振基体320が筒壁部331に内嵌された後は、突出舌片335が返しとして機能することで、防振基体320が筒壁部331から脱落することを確実に防止できる。
【0076】
また、防振基体320の凹部323と筒壁部331の突出舌片335との係合により、ケース部材330の筒壁部331に内嵌された防振基体320が周方向へ変位(回転)することを規制することができる。よって、第1実施の形態の場合と同様に、装着工程において、ピストンロッドRを内側部材10に締結固定する際には、内側部材10がケース部材330の筒壁部331内で空転することを防止して、ナットNを締結する際の作業性の向上を図ることができる。
【0077】
次いで、図9を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、突出舌片35が下面壁部32へ向けて下降傾斜して形成される場合を説明したが、第4実施の形態では、突出舌片435が筒壁部431の軸直角方向に水平に形成される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0078】
図9(a)は、第4実施の形態におけるストラットマウント401の分解断面図であり、図9(b)は、ストラットマウント401の組立断面図である。
【0079】
図9に示すように、第4実施の形態におけるケース部材430は、第1実施の形態におけるケース部材30に対して、筒壁部431に切り曲げ加工を施して形成される突出舌片435の長さ寸法が短くされると共に、その突出舌片435が水平(筒壁部431の軸方向に垂直)に形成される。
【0080】
なお、突出舌片435は、第1実施の形態における突出舌片35の正面視における幅(図5(a)左右方向寸法)と同じ幅とされる。防振基体420の凹部423は、突出舌片435の形状に対応して、断面コ字状の空間として形成される。また、突出舌片435及び凹部423の形成個数および形成位置は第1実施の形態における突出舌片35及び凹部23と同一である。
【0081】
ストラットマウント401の組み立ては、第1実施の形態の場合と同様に、ケース部材430に対する防振基体420の位相(即ち、筒壁部431の突出舌片435の周方向位置と防振基体420の凹部423の周方向位置と)を一致させ、防振基体420をケース部材430の締結壁部33側の開口から軸方向(図9(a)上下方向)に沿って奥側(下面壁部32側)へ挿入することで、図9(b)に示すように、防振基体420をケース部材430の筒壁部431に内嵌させる。これにより、防振基体420の凹部423に筒壁部431の突出舌片435が係合される。
【0082】
よって、防振基体420の凹部423に筒壁部431の突出舌片435が係合されているので、かかる係合により、防振基体420が筒壁部431から軸方向一側(締結壁部33側の開口側)へ変位することを規制することができる。その結果、第1実施の形態の場合と同様に、ストラットマウント401の搬送中に防振基体420がケース部材430の筒壁部431から脱落することを防止できる。
【0083】
また、突出舌片435の長さが短くされているので、防振基体20を筒壁部331へ挿入して内嵌させる際には、ゴム状弾性体からなる防振基体420の変形性を利用して、その挿入作業性の向上を図ることができる。
【0084】
また、突出舌片435と凹部423との係合により、第1実施の形態の場合と同様に、装着工程においては、ピストンロッドRを内側部材10に締結固定する際に、内側部材10がケース部材430の筒壁部431内で空転することを防止して、ナットNを締結する際の作業性の向上を図ることができる。
【0085】
更に、第4実施の形態では、突出舌片435の長さが短くされる分、かかる突出舌片435の切り曲げ加工に伴い筒壁部431に開口される開口部の開口面積を小さくすることができるので、その分、ケース部材430の強度を確保することができる。
【0086】
なお、突出舌片435と下側壁部32との間の軸方向(図9(a)上下方向)における間隔は、防振基体420の凹部423における底面と防振基体420の下面との間の軸方向(図9(a)上下方向)における間隔よりも小さくされる。よって、第1実施の形態の場合と同様に、防振基体420をケース部材430の筒壁部431に内嵌させた状態(図9(b)の状態)では、防振基体420における凹部23の底面よりも下方の部分が、突出舌片435と下側壁部32との間で軸方向に挟圧(圧縮)され、突出舌片435が凹部23の底面に密着される。
【0087】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0088】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記第1実施の形態では、凹部23及び突出舌片35をそれぞれ周方向3ヶ所に配設する場合を説明したが、かかる配設個数は一例であり、2ヶ所以下であっても良く、或いは、4ヶ所以上であっても良い。なお、第2から第4実施の形態においても同様である。
【0089】
上記第1から第3実施の形態では、凹部23,223の底面23a,223aが軸直角方向に平行に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、任意の傾斜角を設けることは当然可能である。任意の傾斜角としては、加硫金型の抜き勾配を考慮した比較的小さな傾斜角に設定する場合、或いは、突出舌片35,235,335の切り曲げ先端部35b,235b,335bにおける先端面に平行となる傾斜に設定する場合などが例示される。なお、後者の場合、切り曲げ先端部35b,235b,335bにおける先端面と底面23a,223aとを面当たりとして、角部の食い込みを抑制することで、その耐久性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1,201,301,401 ストラットマウント
10 内側部材
20,220,320,420 防振基体
23,223,323,423 凹部
30,230,330,430 ケース部材
31,231,331,431 筒壁部
32 下側壁部
33 締結壁部
35,235,335,435 突出舌片
35a,335a 未切断部
35b,235b,335b 切り曲げ先端部
BP 車体パネル(車体の一部、車体側の部材)
R ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバのピストンロッドの上端部が締結固定される内側部材と、前記内側部材の外周を取り囲み車体側に取り付けられるケース部材と、前記内側部材とケース部材との間に介在すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体と、を備えるストラットマウントにおいて、
前記防振基体は、周方向に分散配置されつつ外周面に凹設される複数の凹部を備えると共に前記内側部材が内周側に加硫接着される円環形状に形成され、
前記ケース部材は、前記防振基体が内嵌される筒状の筒壁部と、前記筒壁部の軸方向一端から軸直角方向外方へ向けて延設され前記車体側に締結固定される締結壁部と、前記筒壁部の軸方向他端から軸直角方向内方へ向けて延設され前記締結壁部が前記車体側に締結固定された場合に前記車体側の部材との間で前記防振基体を前記筒壁部の軸方向に挟圧する下側壁部と、を備え、
前記ケース部材の筒壁部は、前記防振基体の各凹部に対応する位置にそれぞれ配置されると共に前記筒壁部に切り曲げ加工を施して形成され前記筒壁部の軸直角方向内方へ突出する複数の突出舌片を備え、
前記防振基体が前記ケース部材の筒壁部に内嵌されると、前記筒壁部の突出舌片が前記防振基体の凹部に係合されることを特徴とするストラットマウント。
【請求項2】
前記筒壁部の突出舌片は、折り曲げ部となる未切断部と反対側の切り曲げ先端部において前記筒壁部の軸直角方向内方への突出量が最大となると共に、前記締結壁部側から下側壁部側へ向かうに従って前記突出量が増加する形状に形成されることを特徴とする請求項1記載のストラットマウント。
【請求項3】
前記筒壁部の突出舌片は、前記未切断部が前記締結壁部側に位置すると共に前記未切断部から前記切り曲げ先端部へ向かうに従って前記筒壁部の軸直角方向内方への突出量が増加する縦断面直線状に形成されることを特徴とする請求項2記載のストラットマウント。
【請求項4】
前記ケース部材の筒壁部に前記防振基体が内嵌された状態では、前記突出量が最大となる突出舌片の切り曲げ先端部よりも前記締結壁部側に前記内側部材が位置すると共に、前記筒壁部の軸方向視において、前記突出舌片と前記内側部材とが重なることを特徴とする請求項2又は3に記載のストラットマウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180870(P2012−180870A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43051(P2011−43051)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】