説明

ストレスタンパク質を含む組成物を使用する免疫応答

【課題】ウイルスに関連する抗原に対する、より効果的なワクチンを提供すること;および腫瘍に関連する抗原に対する、より効果的なワクチンを提供すること。
【解決手段】哺乳動物において抗原に対する細胞媒介細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンであって、上記抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、ワクチン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、1996年11月26日に出願された米国特許出願第08/756,621号の一部継続出願であり、その全体の教示は参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インフルエンザを引き起こすウイルスは、インフルエンザA、B、およびC型として任意に命名されている。これらの型は、抗原的に異なるウイルスを定義する。各型は、いくつかの異なるサブタイプを有する。1つの型内のウイルスは、2つの異なるサブタイプで感染した細胞が、両方のサブタイプからの成分を含む混合されたウイルスを組み立て得る意味で、遺伝的に適合可能である。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルスとして分類される。ウイルスは、80と120nmの間の直径の粒子を形成する。インフルエンザウイルスは、エンベロープを有するウイルスであり、すなわち、その外表面は宿主細胞膜に由来する。2つの主要なウイルスがコードするタンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)は、エンベロープに挿入されそして突出する。インフルエンザウイルスは、非メッセンジャーRNA極性の8RNAセグメントから構成されるゲノムを含む、マイナス鎖RNAウイルスである。ゲノムRNAセグメントは、ウイルスがコードする核タンパク質(NP)とともにRNP複合体に組み立てられる。宿主細胞の感染後、ゲノムRNAセグメントは、第1に、ゲノムRNAを産生するために後に逆転写されるメッセンジャーRNA極性を有するRNAに転写される。これらの工程に寄与し得る転写酵素活性は、校正能力を欠く。したがって、転写および逆転写中に作成される誤りは修復されず、ウイルスゲノムの高頻度の変異を生じる。すべてのウイルス遺伝子は同じ変異プロセスを受けるが、外部タンパク質HAおよびNAについての遺伝子は、その宿主において免疫検出を逃れる変異形態へ進化させる強い選択プロセスを特に受ける。宿主には、ヒトだけでなく、ニワトリ、七面鳥、ブタ、およびウマのような動物も含まれる。
【0003】
インフルエンザは、伝統的に、ヒトの死亡の主要な原因の1つである。インフルエンザの臨床的徴候は、無症候から致死的感染までの範囲で可変である。代表的には、病気の開始は、急速および衰弱性であり、そしてほとんど変わらずに咳、不快、頭痛、および筋痛を伴う。鼻感冒、咽喉炎、および普通ほとんどない胸骨下痛もまた、感染の一次部位が呼吸器系であることを示す。しかし、代表的には、発熱および全身症状が優勢である。代表的には、回復は急速である。病気の重篤度は、非常に宿主依存的であり、そして年齢、生理学的状態、および感染または免疫接種による前免疫接種に関連する。重篤な合併症は肺炎である。易感染性の個体は、肺炎を引き起こす細菌病原体での二次感染を受けることが証明されている。インフルエンザ後に死亡するほとんどの患者は、細菌性肺炎で死亡する。インフルエンザウイルスAおよびB型でのマイナーな抗原変更は毎年起こり、地域的流行を引き起こす。このような毎年の流行からの毎年の死亡率は、米国単独において20,000に近づき得る。10年と30年との間の可変間隔で、全世界的流行病は、毎年の流行をはるかに越える死亡者数を生じる。これらの流行病は、おそらく、ヒトおよび動物インフルエンザAウイルスからの成分の遺伝子再取り合わせによって引き起こされ、ヒト実験とは全体的に全く別の表面構造を有する新しいウイルスを生じる。1918〜19年の流行病の死亡者数は、約500,000のアメリカ人を殺した。(一般的参考文献として:Joshua Lederberg,Encyclopedia of Microbiology,2(D−L):505−520,Academic Press Inc.,San Diego,CA 92101 (1992))。
【0004】
現在認可されたワクチンは、不活性化した精製されたウイルスを含む。ワクチンは、三価であり、そして2つの普及したAサブタイプ、H3N2およびH1Niの代表的株、ならびに単一のB型株を含む。弱毒化生ウイルスワクチンはまた、特に旧ソビエト連邦において、いくらかの成功をともなって使用されてきた。HAおよびNAを含むサブユニットワクチンが開発されている(split fluワクチン;Connaught Lab.)。これらのワクチンは、防御免疫を提供することに完全には効果的ではない。一般的に、インフルエンザワクチンが、主としてウイルス表面タンパク質HAおよびNAに対する抗体応答を誘導することによって、防御免疫を生じると認められている。これは、ワクチンが単に完全に効果的ではない理由を説明し得;これは、これらの表面タンパク質における連続的抗原変更を受けやすい。
【0005】
腫瘍細胞と正常細胞との間の差についての検索は、多くのいわゆる腫瘍関連抗原の単離および特徴づけを導いている(非特許文献1)。これらの抗原は、十分に分化した細胞において、必ずしもすべてではなくまたは少なくとも大量でもなく、腫瘍細胞によって発現される。これらの腫瘍抗原をコードする配列は、ウイルス由来であるか、または宿主のゲノムに正常に存在するかのいずれかである。ウイルス由来腫瘍関連抗原の例は、ほとんどのヒト頸部腫瘍に存在するヒトパピローマウイルストランスフォーミングタンパク質E7である。代表的な宿主ゲノム由来の腫瘍関連抗原は、gp100であり、これはpMel−17ともいい、多くのヒト黒色腫で発現される。腫瘍関連抗原は、宿主免疫応答を誘導することが公知であるが、応答は、代表的には、治療に効果的であるには不十分である。この応答を刺激するためにアプローチの必要がある。
【0006】
単特異的細胞溶解性Tリンパ球(CTL)クローンを使用して、少なくとも5つの腫瘍関連抗原(A、B、C、D、およびEと命名される)の発現は、マウスP815肥満細胞腫腫瘍細胞において同定されている。P1Aと命名されたこれらの抗原の1つは、CTLクローンによって認識される単一エピトープを発現する。分子アプローチを使用して、P1Aの遺伝子をクローニングし、そして正常細胞に存在する非変異遺伝子であるが形質転換された細胞でのみ転写されそして翻訳されることを見いだした(非特許文献2)。さらに、P1A抗原発現をなくしたP815細胞の改変体の実験によって、P1AのMHCクラスI(L)−制限した最小CTLエピトープの配列を同定することが可能であった(非特許文献3)。
【非特許文献1】Henderson,R.A.およびFinn,O.J.,Advances in Immunology(1996)62:217−256
【非特許文献2】Van den Eyndeら,J.Exp.Med.(1991),173:1373
【非特許文献3】Letheら,Eur.J.Immunol.(1992),22:2283
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ウイルスおよび腫瘍に関連する抗原に対する、より効果的なワクチンについての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、哺乳動物において抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答(細胞溶解性T細胞(CTL)応答)を誘導するためのワクチンに関し、これは、抗原、および、ストレスタンパク質(または熱ショックタンパク質(hsp))のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む。1つの実施態様では、抗原は、インフルエンザウイルスの抗原である。他の実施態様では、抗原は、腫瘍関連抗原である。本発明における使用のためのストレスタンパク質は、例えば、マイコバクテリアストレスタンパク質(例えば、hsp65、hsp71)または投与される哺乳動物において抗原に対する免疫応答を誘導するためにマイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。本発明のワクチンの抗原およびストレスタンパク質は、化学結合によってまたは融合タンパク質として連結され得る。哺乳動物において抗原に対する細胞媒介性の細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンはまた、哺乳動物において抗原およびストレスタンパク質配列をコードしその発現を指示するポリヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドは、融合タンパク質として抗原およびストレスタンパク質を発現し得る。
【0009】
本発明はまた、哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンに関し、これは、インフルエンザウイルスの抗原、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む。1つの実施態様では、本発明は、哺乳動物においてインフルエンザウイルスの抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンに関し、これは、哺乳動物においてインフルエンザウイルスの抗原およびストレスタンパク質の発現を指示するポリヌクレオチドを含む。本発明で使用され得るインフルエンザウイルスの抗原には、例えば、ヘマグルチニン、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせが含まれる。
【0010】
1つの実施態様では、哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するためのワクチンは、ストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部に結合した、インフルエンザウイルスの抗原である。
【0011】
他の実施態様では、哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するためのワクチンは、ストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部に融合した、インフルエンザウイルスの抗原を含む組換え融合タンパク質である。
【0012】
本発明はまた、ストレスタンパク質およびインフルエンザウイルスの抗原を含む組成物に関する。1つの実施態様では、組成物は、インフルエンザウイルスの抗原に連結されたストレスタンパク質を含む結合体である。他の実施態様では、組成物は、インフルエンザウイルスの抗原に融合されたストレスタンパク質を含む融合タンパク質(pET65MP/NP−BおよびpET65M/NP−D)である。
【0013】
本発明はまた、哺乳動物においてインフルエンザウイルスを予防または処置するための組成物の使用に関する。
【0014】
本発明はまた、哺乳動物において腫瘍関連抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンに関し、このワクチンは、ストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部に連結した腫瘍関連抗原を含む。本発明で使用され得る抗原は、当該技術分野で現在公知のものを含む任意の哺乳動物の腫瘍関連抗原を含む。CTLエピトープを含むこれらの抗原のフラグメントをも含む。
【0015】
1つの実施態様では、哺乳動物において腫瘍関連抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンは、ストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部に化学的に結合した腫瘍関連抗原である。
【0016】
他の実施態様では、哺乳動物において腫瘍関連抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンは、腫瘍関連抗原、および、ストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む組換え融合タンパク質である。
【0017】
さらなる実施態様では、哺乳動物において腫瘍関連抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンは、腫瘍関連抗原、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部をコードする配列を発現可能形態で含むポリヌクレオチドである。
【0018】
さらに他の実施態様では、哺乳動物において腫瘍関連抗原に対する細胞媒介する細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンはまた、腫瘍関連抗原、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む組換え融合タンパク質をポリヌクレオチドであり得る。
【0019】
本発明はまた、哺乳動物において天然または人工的抗原(アレルゲン)に対するアレルギー性免疫応答を抑制するためのワクチンに関し、このワクチンは、アレルゲン、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、またはアレルギー応答を抑制するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む。ペプチド性であるかどうかにかかわりなく、任意のアレルゲンが使用され得る。
【0020】
1つの実施態様では、哺乳動物において天然または人工的抗原(アレルゲン)に対するアレルギー性免疫応答を抑制するためのワクチンは、ストレスタンパク質のすべてもしくは一部、またはアレルギー応答を抑制するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部に化学的に結合したアレルゲンである。
【0021】
他の実施態様では、哺乳動物において天然または人工的抗原(アレルゲン)に対するアレルギー性免疫応答を抑制するためのワクチンは、アレルゲン、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、またはアレルギー応答を抑制するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む組換え融合タンパク質である。
【0022】
さらなる実施態様では、哺乳動物において天然または人工的抗原(アレルゲン)に対するアレルギー性免疫応答を抑制するためのワクチンは、ペプチド性アレルゲン、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、またはアレルギー応答を抑制するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部をコードする配列を発現可能形態で含むポリヌクレオチドである。
【0023】
さらに他の実施態様では、哺乳動物において天然または人工的抗原(アレルゲン)に対するアレルギー性免疫応答を抑制するためのワクチンはまた、ペプチド性アレルゲン、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、またはアレルギー応答を抑制するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む組換え融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
【0024】
本発明はまた、哺乳動物において抗原に対するTh2応答を抑制するための組成物に関し、これは、抗原、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対するTh2応答を抑制するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む。この組成物は、ワクチン、結合体、または融合タンパク質であり得る。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1) 哺乳動物において抗原に対する細胞媒介細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンであって、上記抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、ワクチン。
・(項目2) 項目1に記載のワクチンであって、ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記ワクチンが投与される上記哺乳動物において上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、ワクチン。
・(項目3) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目1に記載のワクチン。
・(項目4) 上記抗原および上記ストレスタンパク質が化学結合により連結される、項目1に記載のワクチン。
・(項目5) 上記抗原および上記ストレスタンパク質が融合タンパク質として連結される、項目1に記載のワクチン。
・(項目6) 哺乳動物において抗原に対する細胞媒介細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンであって、上記哺乳動物において抗原およびストレスタンパク質配列をコードし、そして上記抗原および上記ストレスタンパク質配列の発現を指向するポリヌクレオチドを含む、ワクチン。
・(項目7) 上記抗原および上記ストレスタンパク質が融合タンパク質として発現される、項目6に記載のワクチン。
・(項目8) 項目6に記載のワクチンであって、上記ストレスタンパク質配列が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記ワクチンが投与される上記哺乳動物において上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質に由来する、ワクチン。
・(項目9) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目6に記載のワクチン。
・(項目10) 哺乳動物においてインフルエンザウイルスの抗原に対する細胞媒介細胞溶解性免疫応答を誘導するためのワクチンであって、上記インフルエンザウイルスの抗原およびストレスタンパク質の上記哺乳動物における発現を指向するポリヌクレオチドを含む、ワクチン。
・(項目11) 項目10に記載のワクチンであって、上記ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記ワクチンが投与される上記哺乳動物において上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、ワクチン。
・(項目12) 上記ストレスタンパク質配列が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目10に記載のワクチン。
・(項目13) 哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するためのワクチンであって、上記インフルエンザウイルスの抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、ワクチン。
・(項目14) 項目13に記載のワクチンであって、上記ストレスタンパク質配列が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記ワクチンが投与される上記哺乳動物において上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、ワクチン。
・(項目15) 上記インフルエンザの抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせからなる群より選択される、項目13に記載のワクチン。
・(項目16) 上記免疫応答が細胞溶解性T細胞応答である、項目13に記載のワクチン。
・(項目17) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目13に記載のワクチン。
・(項目18) 哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するワクチンであって、ストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部に結合された上記インフルエンザウイルスの抗原を含む、ワクチン。
・(項目19) 項目18に記載のワクチンであって、上記ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記ワクチンが投与される個体において免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、ワクチン。
・(項目20) 上記インフルエンザウイルスの抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせからなる群より選択される、項目18に記載のワクチン。
・(項目21) 上記免疫応答が細胞溶解性T細胞応答である、項目18に記載のワクチン。
・(項目22) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目18に記載のワクチン。
・(項目23) 哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導することにおける使用のためのワクチンであって、ストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対する免疫応答を誘導するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部に融合された上記インフルエンザウイルスの抗原を含む、組換え融合タンパク質を含む、ワクチン。
・(項目24) 項目23に記載のワクチンであって、上記ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記ワクチンが投与される個体において免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、ワクチン。
・(項目25) 上記インフルエンザウイルスの抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせからなる群より選択される、項目23に記載のワクチン。
・(項目26) 上記免疫応答が細胞溶解性T細胞応答である、項目23に記載のワクチン。
・(項目27) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目23に記載のワクチン。
・(項目28) ストレスタンパク質およびインフルエンザウイルスの抗原を含む組成物。
・(項目29) 項目28に記載の組成物であって、上記ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記組成物が投与される個体において免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、組成物。
・(項目30) 上記インフルエンザウイルスの抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせからなる群より選択される、項目28に記載の組成物。
・(項目31) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目28に記載の組成物。
・(項目32) インフルエンザウイルスの抗原と結合されたストレスタンパク質を含む結合体。
・(項目33) 項目32に記載の結合体であって、上記ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記結合体が投与される個体において免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、結合体。
・(項目34) 上記インフルエンザウイルスの抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせからなる群より選択される、項目32に記載の結合体。
・(項目35) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目32に記載の結合体。
・(項目36) インフルエンザウイルスの抗原に融合されたストレスタンパク質を含む融合タンパク質。
・(項目37) 項目36に記載の融合タンパク質であって、上記ストレスタンパク質が、マイコバクテリアストレスタンパク質、または上記融合タンパク質が投与される個体において免疫応答を誘導するのに上記マイコバクテリアストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質である、融合タンパク質。
・(項目38) 上記インフルエンザウイルスの抗原が、赤血球凝集素、核タンパク質、ノイラミニダーゼ、M1、M2、PB1、PB2、PA、およびその組み合わせからなる群より選択される、項目36に記載の融合タンパク質。
・(項目39) 上記ストレスタンパク質が、hsp65およびhsp71からなる群より選択される、項目36に記載の融合タンパク質。
・(項目40) pET65MP/NP−BおよびpET65M/NP−Dからなる群より選択される融合タンパク質。
・(項目41) 上記抗原が細胞溶解性T細胞エピトープを含む、項目1に記載のワクチン。
・(項目42) 上記インフルエンザウイルスの抗原が細胞溶解性T細胞エピトープを含む、項目10に記載のワクチン。
・(項目43) 上記インフルエンザウイルスの抗原が細胞溶解性T細胞エピトープを含む、項目15に記載のワクチン。
・(項目44) 上記インフルエンザウイルスの抗原が細胞溶解性T細胞エピトープを含む、項目28に記載の組成物。
・(項目45) 上記インフルエンザウイルスの抗原が細胞溶解性T細胞エピトープを含む、項目32に記載の結合体。
・(項目46) 上記インフルエンザウイルスの抗原が細胞溶解性T細胞エピトープを含む、項目36に記載の融合タンパク質。
・(項目47) 上記抗原が、ウイルス抗原、腫瘍関連抗原、およびアレルゲンからなる群より選択される、項目1に記載のワクチン。
・(項目48) 上記抗原が、ウイルス抗原、腫瘍関連抗原、およびアレルゲンからなる群より選択される、項目32に記載の結合体。
・(項目49) 上記抗原が、ウイルス抗原、腫瘍関連抗原、およびアレルゲンからなる群より選択される、項目36に記載の融合タンパク質。
・(項目50) 哺乳動物においてアレルゲン性抗原に対するTh2応答を抑制するためのワクチンであって、上記抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対するTh2応答を抑制するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、ワクチン。
・(項目51) 哺乳動物においてアレルゲン性抗原に対するTh2応答を抑制するための組成物であって、上記抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対するTh2応答を抑制するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、組成物。
・(項目52) 哺乳動物においてアレルゲン性抗原に対するTh2応答を抑制するための結合体であって、上記抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対するTh2応答を抑制するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、結合体。
・(項目53) 哺乳動物においてアレルゲン性抗原に対するTh2応答を抑制するための融合タンパク質であって、上記抗原、およびストレスタンパク質の全てもしくは一部、または上記抗原に対するTh2応答を抑制するのに上記ストレスタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質の全てもしくは一部を含む、融合タンパク質。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、抗原(1つ以上)、およびストレスタンパク質または熱ショックタンパク質(1つ以上)のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む、哺乳動物(例えば、ヒト)において抗原に対する免疫応答を誘導する、ワクチンおよび組成物に関する。特定の実施態様では、本発明は、抗原(1つ以上)、およびストレスタンパク質(1つ以上)のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む、哺乳動物において細胞媒介性免疫応答を誘導する、ワクチンおよび組成物に関する。
【0026】
特定の実施態様では、本発明は、インフルエンザウイルスの抗原、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは一部を含む、哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導する、ワクチンおよび組成物に関する。本明細書中で記載される場合、インフルエンザ抗原(例えば、CTLエピトープを含むNP配列)、および少なくとも1つのストレスタンパク質を、インフルエンザ抗原とストレスタンパク質との混合物の形態で、インフルエンザ抗原とストレスタンパク質との結合体として、もしくはインフルエンザ抗原およびストレスタンパク質配列を含む融合タンパク質としてのいずれかで含む組成物は、哺乳動物において使用されるインフルエンザ抗原に対する特異的免疫応答(例えば、細胞溶解性T細胞(CTL)応答、T細胞ヘルパー応答、B細胞応答)を刺激することに効果的である。例えば、実施例で証明されるように、本明細書に記載のワクチンでの宿主(脊椎動物(例えば、哺乳動物))の免疫は、インフルエンザ抗原(例えば、NP)を提示する細胞に対する特異的CTL活性の刺激を生じ得る。あるいは、個々のインフルエンザ抗原およびストレスタンパク質は、連続的に投与され得る。
【0027】
さらなる実施態様では、本発明は、腫瘍関連抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘導するワクチンに関し、特定のタイプの予め存在する腫瘍に対する免疫のためまたはこのような腫瘍の発生を予防するために適切な腫瘍関連抗原、およびストレスタンパク質のすべてもしくは一部、または抗原に対する免疫応答を誘導するためにストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有するタンパク質のすべてもしくは部分を含む。これまでの実施態様と類似して、少なくとも1つの腫瘍関連抗原および1つのストレスタンパク質を、腫瘍関連抗原とストレスタンパク質との混合物、腫瘍関連抗原とストレスタンパク質との結合体、または腫瘍関連抗原およびストレスタンパク質配列を含む融合タンパク質の形態のいずれかで含むワクチンは、哺乳動物において腫瘍関連抗原に対する細胞媒介性細胞溶解性免疫応答を刺激し得る。あるいは、抗原およびストレスタンパク質は、継続的に投与され得る。実施例で示されるように、この型のワクチン、最小P1A肥満細胞腫抗原およびストレスタンパク質を含む融合タンパク質は、P1A抗原を提示する細胞に対して細胞媒介性細胞溶解性応答を誘導する。さらに、ワクチンで免疫した哺乳動物は、P1A抗原を発現する腫瘍細胞でのその後のチャレンジに対して免疫性である。
【0028】
本発明では、組成物は2つの部分から構成される:ストレスタンパク質、および免疫応答が所望されるものに対する抗原。2つの部分は、混合、結合、または連結され、そして単一の単位を形成し得る。結合は、当業者に公知の化学的手段によって(例えば、ストレスタンパク質と第2の部分との間の共有結合を介して;還元的アミノ化)、または組換え技法によって、達成され得る。組換え技法が2つの部分を連結または結合するために使用されるならば、その結果は、単一分子におけるストレスタンパク質および抗原を含む組換え融合タンパク質である。これは、ワクチン産生プロセスにおいて単一組換え分子を産生および精製することを可能にする。ストレスタンパク質は、細胞媒介細胞溶解性免疫応答が所望されるものに対する任意の抗原に、あるいは投与される個体における免疫応答を誘導するために十分な抗原の一部に、結合され得る。
【0029】
本明細書中で定義されるように、用語「ワクチン」は、予防的または治療的ワクチンとして使用され得る組成物を含む。1つの実施態様では、ワクチン組成物は、抗原およびストレスタンパク質をコードする1つ以上の核酸である。本発明はまた、哺乳動物において、抗原(例えば、腫瘍抗原)、または抗原を含む病原体(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫)の存在に関連するまたはこれによって引き起こされる病気もしくは症状を予防または処置するための、ストレスタンパク質および/または抗原をコードする核酸である組成物の使用に関する。例えば、本明細書中に記載される組成物は、ウイルスに感染されていない哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するために使用され得る。さらに、本明細書中に記載のワクチンまたは組成物は、インフルエンザウイルスに感染した哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するために使用され得、そして哺乳動物において感染しているインフルエンザウイルスによって引き起こされる病態の回復または除去を生じ得る。本明細書中で使用される場合、「免疫応答の誘導」とは、増加した免疫応答(検出不能より大または以前より大);または比較可能な条件下で抗原単独での免疫によって達成可能な応答よりも優れた応答を意味する。
【0030】
本明細書中に記載のように、抗原(ストレスタンパク質当たり1つ以上)は、好ましくは、ペプチドの種類(すなわち、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである)である。抗原およびストレスタンパク質が混合または化学結合される適用では、抗原はまた、炭水化物、脂質、糖脂質、または有機分子もしくは無機分子であり得る。本明細書中で使用される場合、「抗原」は、少なくとも1つのCTLエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む。CTLエピトープは、I型制限T細胞エピトープ、またはII型制限T細胞エピトープのいずれかとして定義される。本発明における使用のための抗原は、単離、精製(本質的に純粋)、化学合成、または組換え産生され得る。本発明の組成物に有用な他の適切な抗原は、当業者によって決定され得る。
【0031】
ワクチンまたは組成物が、インフルエンザウイルスに対する細胞媒介細胞溶解性免疫応答を誘導する実施態様では、インフルエンザウイルスの抗原は、赤血球凝集素、ウイルス全体(例えば、不活性化または生の弱毒化ウイルス全体)、インフルエンザウイルスの抗原性部分、および組換え産生したウイルスもしくはその一部を含むが、これらに限定されない。インフルエンザウイルスの抗原は、少なくとも1つのB細胞および/またはT細胞(例えば、Tヘルパー細胞、細胞溶解性T細胞)エピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを含む。例えば、インフルエンザウイルスの抗原は、赤血球凝集素(HA(例えば、HA1、HA7))、核タンパク質(例えば、NP(例えば、実施例に記載のNP−bおよびNP−D))、ノイラミニダーゼ(NA)、M1、M2、PB1、PB2、およびPAを含むが、これらに限定されない。本発明の組成物に使用され得るインフルエンザウイルスの他の抗原は、当業者によって決定され得る。
【0032】
ワクチンまたは組成物が腫瘍関連抗原に対する細胞媒介細胞溶解性免疫応答を誘導する実施態様では、抗原は、MAGE1、MAGE3、BAGE、およびGAGEを含むが、これらに限定されない。これらのタンパク質は、正常には精巣で発現される。エピトープ発現は、黒色腫を含む種々の腫瘍を生じる。メラニン形成細胞分化抗原チロシナーゼ、MART−1/MELAN−1、およびgp 100/pMe117、ならびにチロシナーゼ関連タンパク質pg75およびMUM−1はまた、このリストに含まれ、そのすべては黒色腫に関連する。他の有用な腫瘍関連抗原は、乳ガンおよび卵巣ガンで見られるHER2/neu、上皮細胞腫瘍で見られるMUC−1、ならびに頸ガンと強く関連するヒトパピローマウイルスタンパク質E6およびE7である。さらに、抗原は、GnT−V、β−カテニン、CDK4、およびp15を含む。これらのすべての腫瘍関連抗原は、T細胞によって認識される。(Wang,R.−F.およびRosenberg,S.A.,Journal of Leukocyte Biology,60:296−309 (1996);Houghton,A.N.,J.Exp.Med.,180:1−4 (1994);Henderson,R.A.およびFinn,O.J.,Advances of Immunology,62:217−256)。
【0033】
アレルギー性(アトピー性)疾患および喘息疾患における重要な担い手は、好酸球の浸潤に支配されるIgEおよび局所的炎症反応である。慢性炎症による非特異的刺激に対する肺の過剰反応は、喘息の最近の定義である。この炎症は、IgEによって媒介される天然抗原または人工的抗原に対する異常なアレルギー性応答によって引き起こされ、そして好酸球と呼ばれる顆粒細胞の慢性細胞性炎症を導き得る。常駐の肥満細胞ならびに補充された好塩基球および好酸球からのメディエーターの放出は、炎症およびその後の過剰反応性の原因であると考えられる。ヒトでは、他の種におけるように、何らかの炎症性反応が局所的過剰反応性を生じる。しかし、喘息では、炎症は慢性的であり、適切に処置されなければ、生命を脅かす過剰反応性を導く。現在の処置は、炎症を減少させるためのコルチコステロイドおよび迅速な症候の緩和のためのアルブテロール(βアゴニスト)のような気管支拡張薬の使用を含む。
【0034】
ヒトでは、マウスにおけるように、サイトカイン分泌の2つの異なるパターンが、CD4ヘルパーT細胞クローンの中で定義されている(del Prete,G.,Allergy,47:450−455 (1992))。ヒト1型ヘルパー(Th1)細胞(2型ヘルパー(Th2)細胞ではない)は、インターロイキン−2(IL−2)、γインターフェロン、および腫瘍壊死因子βを産生する。Th1ではなくTh2細胞は、IL−4およびIL−5を分泌するがIL−2またはγインターフェロンを分泌しない。IL−3、IL−6、GM−CSF、または腫瘍壊死因子αのような他のサイトカインは、Th1およびTh2細胞の両方によって産生される。異なるサイトカインパターンは、種々の機能に関連する。一般に、Th2細胞は、特にIgEクラスの、B細胞抗体産生についての優れたヘルパー機能を提供する。Th1細胞は、遅延した過敏性反応を担い、そしてB細胞を含む自己抗原提示細胞に対して細胞溶解性である。ほとんどのアレルゲン特異的または蠕虫抗原特異的ヒトCD4T細胞クローンはTh2表現型を示すが、細菌抗原に特異的なほとんどのクローンはTh1プロフィールを示す。アレルゲン特異的Th2細胞は、アトピーで重要な役割を果たすようである。これらの細胞は、IL−4によってIgE産生を誘導し、そしてIL−5によって好酸球の増殖、分化、および活性化を好んで行う。さらに、Th2由来のIL−3、IL−4、およびIL−13は、少なくともインビトロで、相乗的に作用する肥満細胞増殖因子である。アレルゲン特異的Th2細胞が、アレルギー性喘息を有するヒトの気管支粘膜のような、アレルギー性炎症によって提供を受ける組織に、選択的に豊富であるという証拠がある。
【0035】
発展途上国での幼児における抗体の使用の増加につれて、(アレルギー性)喘息の徴候およびこれによる死亡が上昇している。以下の論議は、ストレスタンパク質を含む細菌抗原への慎重な曝露がアレルギー性応答を弱めるという概念を支持するために、ストレスタンパク質を含む細菌タンパク質についての曝露およびT細胞記憶の欠如に、アレルギー性反応の増加した徴候および重篤度を結び付ける、この情報を使用している。
【0036】
多くの科学者らは、環境抗原に対する抵抗性または感受性の発生が、乳児および幼児において初期抗原遭遇中に生成した免疫学的記憶の性質に依存すると考える(Holt P.G.,Toxicol Lett.,86:205−210)。このプロセスは、抗原由来であるようである。選択は、吸入した抗原に対する個体の免疫応答(気道の流通を奪う、局部リンパ節で生じるプロセス)における特異的Th1対Th2様記憶細胞についてである。この選択は、抗原特異的CD4およびCD8T細胞によって産生される種々のサイトカインによって調節されるようである。このT細胞選択プロセスは、理論的には、感染性薬剤によって影響を受け得る:気道粘膜における感染は、局部リンパ節に遊走し、そしてIL−12およびα−インターフェロンのようなTh2阻害サイトカインを分泌する局所組織(肺胞)マクロファージを移動および活性化し得る。さらに、これらは、ナチュラルキラー細胞の活性化によって環境中のγ−インターフェロンレベルに加えられ得る。正味の結果は、CTL(これは主としてCD8細胞である)の産生である。γ−インターフェロンは、Th2細胞の生成、したがって、体液性(IgE)および細胞性(好酸球、好塩基球、および肥満細胞)アレルギー性応答の産生に重要なサイトカインであるIL−4およびIL−5の産生を阻害する(Anderson,G.P.およびCoyle,A.J.,Trends Pharmacol.Sci.,15:324−332 (1995);Stam,W.B.,van Oosterhout,A.J.およびNijkamp,F.P.,Life Sci.,53:1921−1934 (19939))。
【0037】
哺乳動物において、ストレスタンパク質は、体液性および細胞性免疫応答を誘導することが示されている。本明細書中の実施例で示すように、ストレスタンパク質と混合した、ストレスタンパク質に化学結合した、またはストレスタンパク質に融合した可溶性抗原が、哺乳動物に投与される場合、細胞媒介細胞溶解性免疫応答は実質的に増強される。これらの応答は、大部分は、CD8T細胞による。したがって、それ自体による抗原に対するCD4応答の、ストレスタンパク質と混合または結合した抗原に対する応答との比較は、予測されたプロフィールを与える:ストレスタンパク質と混合または連結された可溶性抗原は、前記のTh1経路の刺激の尺度であるCTL(主としてCD8T細胞)の高い割合を得る。なぜなら、これらのCTLは、Th1型の抗原特異的T細胞の誘導の結果として生じたからである。これらのTh1細胞は、γ−インターフェロンを産生し、このサイトカインはTh2細胞を阻害する。したがって、Th2サイトカインであるIL−4およびIL−5は、IgEおよび好酸球の産生を支持するためにもはや利用可能ではない。IgEの力価の減少につれて、肥満細胞および好塩基性細胞の直接的抗原性刺激は衰える。さらに、減少したIL−5産生は、好酸球の減少した産生、分化、および活性化を導く。このパターンは、関連した組織の減少した炎症を引き起こし、そして過剰反応性(喘息)事象をあまり生じない。
【0038】
したがって、公知のアレルギー性抗原(アレルゲン)とストレスタンパク質との混合物、またはストレスタンパク質に化学結合もしくは融合したアレルゲンを含む組成物の投与は、アトピー性患者においてTh1対Th2比に影響を及ぼすばずであり、より正常な平衡を回復させそして減少したアレルギーまたは喘息を導く。このような組成物に使用されるストレスタンパク質は、好ましくは、細菌起源またはマイコプラズマ起源である。アレルゲン−ストレスタンパク質融合タンパク質に使用されるアレルゲンは、必然的にペプチド性質であり;非ペプチド性アレルゲンは、アレルゲンとストレスタンパク質とを含む結合体、またはアレルゲンとストレスタンパク質との混合物で使用され得る。アレルゲンについての非限定的な例には、Fel d 1 (ネコ);Amb a 1(抗原E)、Amb a 2(抗原K)(ブタクサ);Der f 2、Der p 1、Der p 9、Der f 1 (ダニ);Bla g 1、Bla g 2 (ゴキブリ);Bet v 1 (カバノキ);Rat n 1 (ラット);Cha o 1 (ヒノキ);Hev b 5 (ラテックス);gp40 (ヤマスギ(mountain cedar))が挙げられる。刊行時までのアレルゲンの適切な包括的なリストについては、King,T.P.ら,Int.Arch.Allergy Immunol.,105:224−233 (1994)を参照のこと。
【0039】
共有結合したまたは混合されたアレルゲンおよびストレスタンパク質を含む組成物が、過敏性反応の処置の必要な患者に、皮下または筋肉内注射のような適切な経路によって投与されるか、あるいはさらに吸入によって与えられる場合、これらは、例えば、喘息における古典的過剰反応性試験によって測定されるようなアレルギー性症候の減少を生じるべきである。処置後、患者は、非特異的反応性をほとんど示さない。喘息では、または喘息の動物モデルでは、過剰反応性は、気管支狭窄応答を誘導する吸入されたメタコリンの用量を決定することによって測定される。過剰反応性を導く慢性炎症性状態を有する哺乳動物は、メタコリンチャレンジに対してより大きな感受性を示す。これらは、「正常」哺乳動物よりも低い用量で気管支狭窄する。適切なストレスタンパク質含有組成物での処置後、メタコリンに対する用量応答は、あまり感受性でなくなる。
【0040】
任意の適切なストレスタンパク質(熱ショックタンパク質(hsp))は、本発明の組成物において使用され得る。例えば、実施例に記載のように、hsp65および/またはhsp71が使用され得る。ストレスタンパク質に向かって、一般的に、細胞は、普通ストレス遺伝子または熱ショック遺伝子といわれる遺伝子群の発現を増加させることによって、ストレッサー(代表的には、熱ショック処置)に応答する。熱ショック処置は、細胞が適応する温度より数℃上までの温度への、細胞または生物の曝露を包含する。このような遺伝子の誘導と同調して、対応するストレスタンパク質のレベルは、ストレスを受けた細胞で増加する。本明細書中で使用される場合、「ストレスタンパク質」は、「熱ショックタンパク質」または「Hsp」としても公知であり、これは、ストレス遺伝子によってコードされるタンパク質であり、したがって、代表的には生物に対するストレッサーの接触または曝露の際に顕著により大量に産生されるタンパク質である。「熱ショック遺伝子」としても公知である「ストレス遺伝子」は、本明細書中で、熱ショックまたはグルコースの誘導もしくは追加のような、ストレッサーに対する生物(遺伝子を含む)の接触または曝露によって、活性化されるまたは他の検出可能に調節されない遺伝子として、使用される。「ストレス遺伝子」はまた、このような相同遺伝子が、それ自体ストレッサーによって誘導されなくても、Hsp70およびHsp90ストレス遺伝子ファミリー内の特定の遺伝子のような、公知のストレス遺伝子ファミリー内の相同遺伝子を含む。本明細書中で使用される場合、用語ストレス遺伝子およびストレスタンパク質のそれぞれは、内容が他に指示されない限り、他のものを含み得る。Hspの増加した発現の他に、細胞は、特定の他の遺伝子をダウンレギュレートし、シグナル伝達に関与するいくつかのキナーゼを活性化し、特定のタンパク質の細胞内位置を変化し、そしていくつかの状況では、細胞骨格レベルの変化ならびに一過性増殖阻止を経験し得る。
【0041】
特定の実施態様において、本発明における使用のためのストレスタンパク質は、単離されたストレスタンパク質であり、これはストレスタンパク質が、それが産生される宿主細胞から選択および分離されていることを意味する。このような単離は、本明細書中に記載されるように、および当該分野において公知のタンパク質単離の日常的な方法を用いて、行われ得る。(Maniatisら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1982;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989))。単離されたストレスタンパク質はまた、さらに、方法、特に界面活性剤精製法に従って、(本質的に純粋に)精製され得る。
【0042】
細菌において、優勢なストレスタンパク質は、それぞれ、約70kDaおよび約60kDaの分子量サイズを有するタンパク質であり、これはそれぞれ、Hsp70およびHsp60として称される。これらのおよび他の特定のストレスタンパク質、およびそれらをコードする遺伝子は、以下にさらに考察される。細菌において、Hsp70およびHsp60は、典型的に、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動および染料クマシーブルーを用いる染色パターンに基づいて、細胞タンパク質の約1〜3%を示すが、ストレスの多い条件下で25%程の高レベルまで蓄積する。ストレスタンパク質は、重要な細胞プロセス(例えば、タンパク質合成、細胞内輸送、ならびにタンパク質複合体のアセンブリおよび脱アセンブリ(disassembly))に関与するようである。ストレスの間に合成される増加される量のストレスタンパク質は、誘導されたタンパク質がほどける(unfolding)結果を最小にするために主として作用するようである。実際、ストレスタンパク質の合成を誘導する中程度にストレスが多い条件への細胞の予めの曝露は、細胞に対して、その後のより極度のストレスの有害な影響からの防御を与える。
【0043】
主要なストレスタンパク質は、今までのところ、試験されたあらゆる生物および組織タイプにおいて発現されるようである。また、ストレスタンパク質は、今日までに同定されたタンパク質の最も高度に保存された群を表すようである。例えば、広範に多様な生物におけるストレスタンパク質が比較される場合、Hsp90およびHsp70は、アミノ酸レベルで50%以上の同一性を示し、そして非同一性の位置で多くの類似性を共有する。
【0044】
ストレスタンパク質をコードする遺伝子は、細胞または生物のゲノムにおいて、単一のコピー、または複数の、非同一性のコピーで存在し得る。例えば、ヒトゲノムは、少なくとも1つのコピーのHsp100遺伝子、少なくとも2つの異なるHsp90遺伝子、少なくともいくつかが非同一性のコピーである、最大10までのHsp70遺伝子、いくつかのT複合体遺伝子(Tcp遺伝子)、および関連のミトコンドリアタンパク質Hsp60をコードする少なくとも1つの遺伝子、ならびに20〜30kDaの範囲の分子量サイズのタンパク質をコードする、少なくとも3コピーの小Hsp遺伝子を含むことが示されている。ストレス遺伝子のほとんどの群において、その発現レベルが比較的高く、および完全に構成的であるか、またはわずかに中程度に熱ショック誘導性であるかのいずれかである少なくとも1つの遺伝子が存在する。さらに、ストレス遺伝子のいくつかの群は、熱によってアップレギュレートされないが、他のきっかけ(例えば、増加されるカルシウムレベルなど)によってアップレギュレートされるメンバーを含む。
【0045】
ストレスタンパク質、特に、Hsp70、Hsp60、Hsp20〜30、およびHsp10は、Mycobacterium tuberculosisおよびMycobacterium lepraeによる感染に対する免疫応答において、宿主免疫系によって認識される主要な決定因子の中の1つである。Young,R.A.およびElliott,T.J.、ストレスタンパク質、感染、および免疫監視、Cell 50:5−8(1989)。さらに、いくつかのラットのarthritogenicT細胞は、Hsp60エピトープを認識する。Van Eden、W.、Thole,J.、van der Zee,R.、Noordzij,A.、van Embden,J.、Hensen,E.、およびCohen,I.、Nature 331:171−173,(1988)。しかし、マイコバクテリア感染または自己免疫疾患の病歴を有しない、個体(健常な個体を含む)はまた、細菌およびヒトのHsp60エピトープの両方を認識するT細胞を保有し;γ−ΔT細胞レセプターの発現によって特徴付けられる健常な個体におけるT細胞のかなりの画分は、自己のおよび外来性のストレスタンパク質の両方を認識する。O’Brien,R.、Happ,M.、Dallas,A.、Palmer,E.Kubo,R.、およびBorn,W.、Cell 57:644−674(1989)。従って、個体は、健常な個体であっても、外来のおよび自己のストレスタンパク質エピトープの両方を認識するT細胞集団を保有する。
【0046】
ストレスタンパク質エピトープを認識するこの系は、侵入する生物に対する「初期防衛系」を構成する。この系は、宿主細胞にそれら自身のストレス遺伝子をアップレギュレートさせる、細菌およびウイルスによる頻繁な刺激によって維持され得る。しかし、自己応答性T細胞の存在は、正常な健常性と適合性であり、自己免疫疾患を引き起こさない;これはまた、個体内のストレスタンパク質の安全性を実証する。ストレスタンパク質の安全性は、BCG(Bacille Calmette Guerin、Mycrobacterium bovisの株)ワクチン接種(これは、Mycobacteriurn tuberculosisに対してもまた防御的であるストレスタンパク質に対する、免疫応答を誘導する)の成功および比較的な安全性によって、さらに実証されている。
【0047】
本発明における使用のためのストレス遺伝子およびタンパク質は、当該分野において周知であり、そして例えば、Hsp100−200、Hsp100、Hsp90、Lon、Hsp70、Hsp60、TF55、Hsp40、FKBP、シクロフィリン、Hsp20−30、C1pP、GrpE、Hsp10、ユビキチン、カルネキシン、およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼを含む。Macario,A.J.L.、Cold Spring Harbor Laboratory Res.25:59−70 1995;Parsell,D.A.,& Lindquist,S.,Ann.Rev.Genet.27:437−496(1993);米国特許第5,232,833号(Sandersら)。ストレスタンパク質の特定の群は、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp20−30、およびユビキチン、さらに好ましくはHsp70およびHsp60を含む。
【0048】
本発明の方法および組成物におけるストレスタンパク質は、好ましくは、細胞外的な抗原提示ストレスタンパク質から、またはプロセシングされたストレスタンパク質から、好ましくは選択され、そして得られたペプチドフラグメントは、それが細胞外抗原提示タンパク質であるように細胞の表面上に提示される。さらに、本発明における使用のための選択されるストレス遺伝子またはタンパク質は、好ましくは、ストレス遺伝子またはタンパク質が、少なくとも1つの発現(好ましくは、細菌またはヒト)において、1つ以上の形態のストレスに応じて調節されないように選択される。さらに好ましくは、選択されるストレス遺伝子またはタンパク質は、ヒトにおいて調節されない(上記されるようなストレッサー、または形質転換によって調節されないことを含む)。
【0049】
Hsp100−200の例は、Grp170(グルコース調節性のタンパク質について)、プレゴルジ区画における小胞体のルーメンにおけるGrp170残基を含み、そして免疫グロブリンの折り畳みおよびアセンブリにおいて役割を果たし得る。
【0050】
Hsp100の例は、哺乳動物Hsp110、酵母Hsp104、c1pA、c1pB、c1pC、c1pX、およびc1pYを含む。酵母Hsp104およびE.coli c1pAは、ヘキサマーの粒子、およびそのアセンブリがアデニンヌクレオチド結合を必要とするようであるテトラマーの粒子であるE.coli c1pBを形成する。C1pプロテアーゼは、C1pP(タンパク質分解性のサブユニット)およびC1pAからなる750kDaのヘテロオリゴマーを提供する。C1pB−Yは、C1pAに構造的に関連するが、C1pAとは異なり、C1pPと複合体化しないようである。
【0051】
Hsp90の例は、E.coliにおけるHtpG、酵母におけるHsp83およびHsc83、ならびにヒトにおけるHsp90α、Hsp90β、およびGrp94を含む。Hsp90は、タンパク質の群に結合し、このタンパク質は、ステロイドホルモンレセプター(例えば、糖質コルチコイド、エストロゲン、プロゲステロン、およびテストステロン)、転写因子、ならびにシグナル伝達機構において役割を果たすプロテインキナーゼのような代表的には細胞調節分子である。Hsp90タンパク質はまた、他のストレスタンパク質を含む大きな豊富なタンパク質複合体の形成に関与する。
【0052】
Lonは、E.coliにおいてネイティブでないタンパク質を分解する、ATP−依存性プロテアーゼとして機能する、テトラマーのタンパク質である。
【0053】
Hsp70の例は、哺乳動物細胞からのHsp72およびHsp73、細菌、特にマイコバクテリア(例えば、Mycobacterium leprae、Mycobacterium tuberculosis、およびMycobacterium bovis(例えば、Bacille−Calmette Guerin))からのDnaK、Escherichia coli、酵母、および他の原核生物からのDnaK、ならびにBipおよびGrp78を含む。
【0054】
Hsp70は、ATP、ならびにほどけたポリぺプチドおよびペプチドに特異的に結合し得、それによってタンパク質の折り畳みおよび脱折り畳み(unfolding)、ならびにタンパク質複合体のアセンブリおよび脱アセンブリに関与する。
【0055】
Hsp60の例は、マイコバクテリアからのHsp65を含む。細菌Hsp60はまた、一般に、GroEL(例えば、E.coliからのGroEL)としても知られる。Hsp60は、大きな、ホモオリゴマーの複合体を形成し、およびタンパク質折り畳みにおいて重要な役割を果たすようである。Hsp60相同体は、真核生物のミトコンドリアおよび葉緑体に存在する。
【0056】
TF55の例には、Tcp1、TRiC、およびサーモソーム(thermosome)が含まれる。このタンパク質は、代表的には、真核生物の細胞質およびいくつかの始原細菌において生じ、そして多員環を形成して、タンパク質折り畳みを促進する。これらはまた、Hsp60に低度に相同性である。
【0057】
Hsp40の例は、E.coliおよびマイコバクテリアのような原核生物からのDnaJ、およびHSJ1、HDJ1、ならびにHsp40を含む。Hsp40は、細胞活性の中でとりわけ、タンパク質合成、熱耐性、およびDNA複製における分子シャペロンとしての役割を果たす。
【0058】
FKBPの例は、FKBP12、FKBP13、FKBP25、ならびにFKBP59、Fpr1およびNep1を含む。これらのタンパク質は、代表的には、ぺプチジル−プロリルイソメラーゼ活性を有し、および免疫抑制薬(例えば、FK506およびラパマイシン)と相互作用する。これらのタンパク質は、代表的には、細胞質および小胞体において、見出される。
【0059】
シクロフィリンの例には、シクロフィリンA、B、およびCが含まれる。タンパク質は、ぺプチジル−プロリルイソメラーゼ活性を有し、そして免疫抑制薬のシクロスポリンAと相互作用する。タンパク質シクロスポリンAは、カルシニューリン(タンパク質ホスファターゼ)に結合する。Hsp20−30の例には、α−クリスタリンが含まれ、そしてHsp20−30はまた、小Hspと称される。Hsp20−30は、代表的には、大きなホモオリゴマーの複合体において見出され、またはヘテロオリゴマーの複合体(ここでは、生物または細胞タイプは、いくつかの異なるタイプの小Hspを発現する)において見出されることもあり得る。Hsp20−30は、細胞骨格構造と相互作用し、そしてアクチンの重合/解重合において調節的な役割を果たし得る。Hsp20−30は、ストレスにより、または静止細胞の増殖因子への曝露の際に、迅速にリン酸化される。
【0060】
C1pPは、異常なタンパク質の分解に関与するE.coliプロテアーゼである。C1pPの相同体は、葉緑体において見出される。C1pPは、C1pAとヘテロオリゴマーの複合体を形成する。
【0061】
GrpEは、ストレスで障害されたタンパク質の救済、および障害されたタンパク質の分解の両方に関与する約20kDaのE.coliタンパク質である。GrpEは、E.coliにおいてストレス遺伝子の発現の調節において役割を果たす。Hsp10の例は、GroESおよびCpn10を含む。Hsp10は、代表的には、E.coliにおいて、ならびに真核生物細胞のミトコンドリアおよび葉緑体において見出される。Hsp10は、Hsp60オリゴマーと会合する七員環を形成する。Hsp10はまた、タンパク質折り畳みに関与する。
【0062】
ユビキチンは、ATP−依存性の細胞質ゾルのプロテアーゼのタンパク質分解除去と協調して、タンパク質を結合することが見出されている。
【0063】
特定の実施態様において、本発明のストレスタンパク質は、腸内細菌、マイコバクテリア(特に、M.leprae、M.tuberculosis、およびM.bovis、E.coli、酵母、ショウジョウバエ、脊椎動物、鳥類、ニワトリ、哺乳動物、ラット、マウス、霊長類、またはヒトから得られる。
【0064】
ストレスタンパク質は、酸性もしくは塩基性の塩の形態、または中性の形態であり得る。さらに、個々のアミノ酸残基は、酸化または還元によって修飾され得る。さらに、種々の置換、欠失、または付加が、アミノ酸または核酸配列に対してなされ得、その正味の効果は、変異体の増加された生物学的活性を保持すること、またはさらに増強することである。コード縮退に起因して、例えば、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列においてかなりの変化が存在し得る。本発明はまた、ストレスタンパク質から得られる、ストレスタンパク質のフラグメントまたはペプチドを用いる使用に適切である(但し、このようなフラグメントまたはペプチドは、選択される抗原に対する免疫応答を増強することに関与する立体配座エピトープを含む)。ストレスタンパク質フラグメントは、プロテイナーゼを用いるフラグメント化により、または組換え法(例えば、ストレスタンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部の発現(単独でまたは別のタンパク質との融合としてのいずれか))によって得ることができる。ペプチドはまた、このような方法、または化学合成によって生成され得る。本発明はまた、第2のタンパク質に融合または結合されるストレスタンパク質を用いる使用に適切であり、第2のタンパク質は、ストレスタンパク質であってもなくてもよい。ストレスタンパク質は、多様な公知の技術によって、特定の遺伝子座で導入された変異を含み得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版.,Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989; DrinkwaterおよびKlinedinst、PNAS 83:3402−3406、1986;LiaoおよびWise Gene 88:107−111、1990’); Horwitzら、Genome 3:112−117、1989を参照のこと。
【0065】
用語「ストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同性である」とは、タンパク質またはポリぺプチドのアミノ酸配列が、一般に、ストレスタンパク質アミノ酸配列と少なくとも40%の同一性を示すことを意味する;いくつかの場合において、機能的に等価なアミノ酸配列は、ストレスタンパク質のアミノ酸配列と約50%の同一性を示す。
【0066】
ストレス遺伝子またはタンパク質としての考慮のもとに、遺伝子またはタンパク質を同定する方法は、当該分野において周知である。例えば、特定のストレスタンパク質群の遺伝子およびタンパク質の保存は、周知のストレス遺伝子(例えば、DnaK、GroEL、またはDnaJ)を考慮して、例えば、核酸ハイブリダイゼーション、または核酸もしくはアミノ酸配列決定、その後のコンピューター比較解析によって、遺伝子/タンパク質のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の比較を可能にする。Voellmy,R.,ら、PNAS 82:4949−4953(1985)。あるいは、アッセイは、選択されたストレスタンパク質の本質的な構造特徴および/または機能的特性とを、同定および/または区別するために使用され得る。例えば、発現ライブラリーは、抗Hsp抗体および当該分野において周知の他のアッセイを使用して、スクリーニングされ得る。Antibodies:A Laboratory Manual、HarlowおよびLane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、(1988)。さらに、所定のストレスタンパク質群の生物学的活性が開発され得る。Guidon,P.T.、およびHightower,L.E.、Biochem.、25:3231−3239(1986)。例えば、Hsp70は、タンパク質複合体のアセンブリにおいて、ATP、ならびに折り畳まれていないポリぺプチドおよびペプチドに特異的に結合し得る。従って、適切なポリぺプチド、ペプチド、またはATPを含むサンプルを考慮してタンパク質を混合した後の、タンパク質−タンパク質またはタンパク質−核酸複合体の生成の存在または不在の決定は、Hsp70遺伝子またはタンパク質の明白な存在または不在を示し、この存在または不在は、抗体ベースのアッセイのような他のアッセイを利用して確認され得る。
【0067】
ストレスタンパク質、またはストレスタンパク質に結合した物質(例えば、タンパク質もしくはオリゴ糖)に対する特異的な細胞性または体液性の免疫を誘発するための、ワクチンとしての、本発明のストレスタンパク質の有効な投薬量は、1回の注入あたり0.1〜1000μg hspの範囲であり、ストレスタンパク質が投与される個体に依存する(Lussow,A.R.ら、Eur.J.Immun.,21:2297−2302(1991);Barrios,C.ら、Eur.J.Immun.,22:1365−1372(1992))。各個体についてのストレスタンパク質の適切な投薬量は、例えば、投与される特定のストレスタンパク質、ストレスタンパク質が投与される個体のタイプ、個体の年齢および大きさ、処置または予防される状態、ならびに状態の重篤度を考慮して決定される。当業者は、日常的な実験だけを使用して、個体に投与するための適切な投薬量を決定し得る。
【0068】
ワクチンに存在する、ストレスタンパク質、ストレスタンパク質の部分、ストレスタンパク質の機能的等価物、およびストレスタンパク質が混合、融合、または結合される抗原は、公知の技術を用いて生成され得るか、または得ることができる。例えば、インフルエンザウイルスのストレスタンパク質および/または抗原は、それらが天然に生じる供給源から得られ(単離され)得るか、所望のストレスタンパク質もしくは抗原をコードする遺伝子をクローニングおよび発現することによって生成され得るか、または化学的もしくは機械的に合成され得る。
【0069】
本明細書中に記載される組成物は、多様な病原体(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫)に対する免疫応答を誘導するために使用され得る。インフルエンザウイルスの抗原、および1つ以上のストレスタンパク質の全体もしくは部分、または抗原に対する免疫応答を誘導ためのストレスタンパク質のアミノ酸配列に十分相同であるアミノ酸配列を有するタンパク質の全体もしくは部分は、インフルエンザウイルスに感受性の任意の脊椎動物(例えば、哺乳動物、家禽)において、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するために使用され得る。例えば、組成物は、霊長類(例えば、ヒト)、ウマ、ブタ、シチメンチョウ、およびニワトリにおいて、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘導するために使用され得る。
【0070】
本明細書中に記載される組成物は、種々の様式で宿主に投与され得る。投与の経路としては、皮内、経皮(例えば、遅延放出ポリマー)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、および鼻腔内の経路が挙げられる。任意の他の投与の都合の良い経路(例えば、注入もしくはボーラス注射)、または上皮のもしくは粘膜皮膚の内層を介する吸収が使用され得る。さらに、本明細書中で記載される組成物は、他の成分または生物学的に活性な薬剤(例えば、ミョウバン)、薬学的に受容可能な界面活性剤(例えば、グリセリド)、賦形剤(例えば、ラクトース)、キャリア、希釈剤、およびビヒクルとともに投与され得る。
【0071】
さらに、ストレスタンパク質および/またはペプチド(peptidic)抗原は、これらをコードするポリヌクレオチドのインビボ発現によって、哺乳動物被験体に投与され得る。すなわち、ベクターが、抗原およびストレスタンパク質をコードする核酸、または抗原およびストレスタンパク質配列を含む融合タンパク質をコードする核酸を送達するために使用され得る。例えば、ストレスタンパク質および/または抗原は、生きたベクターを用いて宿主(哺乳動物)に投与され得、ここでストレスタンパク質および抗原の核酸配列を含む生きたベクターは、抗原および/またはストレスタンパク質がインビボで発現される条件下で投与される。例えば、哺乳動物は、タンパク質もしくはペプチドの形態でのストレスタンパク質と組合わせて、またはストレスタンパク質をコードし、そしてこれをインビボで発現するベクターと組合わせて、抗原をコードし、そしてインビボでこれを発現するベクターを用いて、注入され得る。あるいは、宿主は、ペプチドもしくはタンパク質の形態での抗原と組合わせて、または抗原をコードし、そしてこれをインビボで発現するベクターと組合わせて、ストレスタンパク質をコードし、そしてこれをインビボで発現するベクターを用いて、注入され得る。タンパク質(ペプチド)抗原をコードする配列を含む単一のベクターはまた、本発明の組成物のために使用され得る。
【0072】
いくつかの発現ベクター系が、市販されているか、または組換えDNAおよび細胞培養技術に従って再生され得る。例えば、酵母もしくはワクシニアウイルスの発現系のようなベクター系、またはウイルスベクターは、本発明の方法および組成物において使用され得る(Kaufman,R.J.、A J.of Meth.Cell and Molec.Biol.,2:221−236(1990))。裸のプラスミドまたはDNA、および標的化リポソームにおいてもしくは赤血球ゴーストにおいてカプセル化されているクローン化遺伝子を使用する他の技術は、ストレスタンパク質および/または抗原ポリヌクレオチドを宿主に導入するために使用され得る(Freidman,T.、Science、244:1275−1281(199);Rabinovich,N.R.ら、Science、265:1401−1404(1994))。発現ベクターの構築、ならびにベクターおよび核酸の種々の宿主細胞への移入は、Molecular BiologyにおけるMolecular CloningおよびCurrent Protocols(これらは、本明細書によって参考として援用される)のような手引書に記載されるように、または、市販のキットを使用することによって、遺伝子操作技術を用いて達成され得る(Sambrook,J.ら、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Press,1989;Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience、1989))。
【0073】
本発明の組成物におけるストレスタンパク質および/または抗原の量は、宿主(哺乳動物のような脊椎動物)において有効な免疫刺激応答を生成する量である。有効量は、投与される場合、投与されない場合の免疫応答に比べて増強された免疫応答を生じるような量である。すなわち、有効量は、抗原またはストレスタンパク質単独の類似の量よりも明白な免疫応答を提供する量である。さらに、宿主に投与されるストレスタンパク質および/または抗原の量は、多様な因子に依存して変化し、これは用いられる抗原、宿主の大きさ、年齢、体重、全体の健常度、性別、および食餌、ならびに投与の時間、持続時間、またはインフルエンザウイルスの特定の特質を含む。確立された用量範囲の調整および操作は、当業者の能力の十分な範囲内である。例えば、ストレスタンパク質および抗原の量は、約100μg〜約1g、好ましくは約1mg〜約1g、および約1mg〜約100mgであり得る。
【0074】
本発明は、ストレスタンパク質の存在が、抗原に対する細胞媒介性の細胞溶解応答を非常に刺激することを教示する。腫瘍関連抗原は同定されているが、これらの抗原に対する免疫応答単独は、治療学的に有効ではない。混合物中での、または抗原に連結されるかのいずれかでの、ストレスタンパク質の同時投与による、これらの抗原に対する細胞応答の増強は、ガン治療において有益である。この予測は、本発明の組成物が、その後の腫瘍チャレンジに対して哺乳動物を免疫するという実施例に詳述される観察によって、支持される。抗原に対する、細胞媒介性の、細胞溶解応答の増強は、同じ抗原に対する、先存の(Th2媒介性の)体液性応答のダウンレギュレーションを生じることが予測される。それゆえ、本発明はまた、アレルギー性応答を抑制するために有用である。最後に、T細胞媒介性免疫はまた、ウイルス、原生動物、および特定の細胞内細菌(例えば、マイコバクテリア)によって引き起こされる感染に対する哺乳動物宿主防御において、重要なエレメントであることが考慮される。実施例において示されるように、ストレスタンパク質およびインフルエンザウイルス抗原を含む本発明の組成物(混合物、結合体、および融合タンパク質)は、ウイルス抗原を発現する哺乳動物細胞に対して、実質的な細胞媒介性の細胞溶解応答を誘発するにおいて有効である。
【0075】
本発明は、以下の実施例によって説明され、これはいかようにも限定されることを意図されない。
【実施例】
【0076】
実施例
実施例1:組換えストレスタンパク質の単離
A.組換えマイコバクテリアHsp70。プラスミドY3111は、発現制御配列の間に機能的に挿入されたM.tuberculosis Hsp70遺伝子を含む。(Mehlert,A.およびYoung,D.B.、Mol.Microbiol.、3:125−130(1989))。短縮型Hsp70遺伝子を含むE.coli株CG2027(C.Georgopoulos、University of Geneva,Switzerlandから得た)を、標準的な手順によって、プラスミドY3111で形質転換した。(Maniatisら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1982))。
【0077】
プラスミドY3111を含有する細菌を、100μg/mlアンピシリンを含有する2×YT培地(1リットル当たり、20gトリプトン、10g酵母抽出物、10g NaCl)中で、37℃で、撹拌しながら(250rpm)、一晩、増殖させた。10%グリセロールストックを、この培養液から調製し、そして−70℃で保存した。凍結したグリセロールストックからのいくつかの削片を、大量培養物を接種するために使用し、これを約48時間になる前まで、インキュベートした。590nmでの光学密度が、2.5〜3.5に達した場合、細胞を遠心分離によって回収した。
【0078】
以下の工程を、4℃で行った。細胞ペレットを、1g当たり3mlの溶解緩衝液中に再懸濁した。溶解緩衝液の組成は、10mM Tris−HCl、2mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、5mM β−メルカプトエタノール、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチン、および1μg/mlペプスタチンであった。リゾチームを、0.14mg/mlの最終濃度になるまで、細胞懸濁液に添加した。次いで、懸濁液を、−70℃で凍結した。
【0079】
細胞懸濁液を解凍し、そして細胞を、超音波処理によって破壊した。超音波処理物を、17,000rpmで、30分間の遠心分離に供した。(JA−17ローター、Beckmann)。固体の(NHSOを、上清溶液が(NHSO4で65%飽和されるまで、上清溶液に添加した。インキュベーションの30分後、混合液を以前のように遠心分離した。ペレットを、Q SEPHAROSE緩衝液Aに溶解した。この溶液に、10μg/mlアプロチン、10μg/mlロイペプチン、および1μg/mlペプスタチンを添加し、そして溶液を65容量のQ SEPHAROSE緩衝液Aに対して、一晩、透析した。Q SEPHAROSE緩衝液Aは、30mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、5mM β−メルカプトエタノールを含んだ。透析した溶液を、以前に記載のように、遠心分離によって澄明化した。
【0080】
透析した溶液を、Q SEPHAROSE緩衝液A中で平衡化したQ SEPHAROSEカラム(Pharmacia)にアプライした。カラムを、2容量の同じ緩衝液で洗浄した。溶出は、0〜600mM NaCl勾配を伴った。画分を、SDS−PAGEおよびクマシーブルー染色によって、主要な71kDaポリぺプチド(すなわち、組換えM.tuberculosis Hsp70タンパク質)の存在について試験した。ポリぺプチドを含む画分をプールし、そしてこのプールを、固体の(NHSO4の添加によって65%飽和にさせた。混合液を、以前に記載のように遠心分離し、ペレットをATP開始緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0)、20mM NaCl、5mM MgCl、15mM β−メルカプトエタノール、および0.1mM EDTA)に溶解し、そして得られたタンパク質溶液を、一晩、65容量の同じ緩衝液に対して透析し、そして遠心分離によって澄明化した。
【0081】
次いで、透析したタンパク質溶液を、ATP開始緩衝液中で平衡化したATP−アガロースカラム(Fluka)にアプライした。カラムを1M NaClを含有する1カラム容量のATP開始緩衝液で洗浄した。溶出を、10mM ATPを補充したATP開始緩衝液を用いて達成した。溶出物を、(NHSO4で65%飽和にさせ、そして沈殿したタンパク質を、以前に記載のように回収した。遠心分離ペレットを、溶解し、そして200容量のBlue SEPHAROSE緩衝液(30mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM MgCl、5mMβ−メルカプトエタノール)に対して透析した。
【0082】
最後の工程からの透析したタンパク質溶液を、Blue SEPHAROSE緩衝液中で平衡化したBlue SEPHAROSEカラム(Pharmacia)にアプライした。カラムを、1.5カラム容量の同じ緩衝液で洗浄した。溶出し、そして画分を、単一のプールとして回収した。
【0083】
最終調製物の純度を、SDS−PAGEおよびクマシーブルー染色によって、マイコバクテリアのHsp70およびE.coli Hsp70にそれぞれ特異的なマウスモノクローナル抗体を用いて、ウエスタンブロット分析によって(Maniatisら、Molecular Cloning、A Laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1982);(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY(1989)を参照のこと))、ならびにATPアーゼ活性のアッセイによって、評価した。調製物は、クマシーブルー染色されたゲル中の調製物の染色パターンに基づいて、代表的に、90%を超えて純粋であり、そして好ましくは95%を超えて純粋であり、ならびに1%未満のE.coli Hsp60を含み、そして検出可能なE.coli Hsp70を含まなかった。
【0084】
B.マイコバクテリアのHsp60
プラスミドRIB1300は、発現制御配列の間に機能的に挿入されたM.bovis BCG Hsp60遺伝子を含む。(Thole,J.E.R.ら、J.Exp.Med.,178:343−348(1993))。E.coli株M1546を、標準的な手順を用いて、プラスミドRIB1300(Tholeら、J.E.R.、上述)で形質転換した。Maniatisら、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY(1982))。
【0085】
プラスミドRIB1300を含有する細菌の接種物を、200μg/mlのアンピシリンを含有するNCZYM培地(1リットル当たり10g N−Z アミンA、5g Bacto 酵母抽出物、1g カサミノ酸(Casamino acid)、5g NaCl、2g (NHSO−7HO))において、28℃で、および撹拌下、飽和に増殖させた。この培養物を、大量培養を接種するために使用し、これを接種培養と同じ条件下で、590nmの光学密度での培養物の光学密度が0.3〜0.6の間になるまで増殖した。組換えタンパク質の生成を、熱水浴におけるインキュベーションによって、培養物の温度を42℃に急速に上昇することによって、開始した。培養を、この温度で、3時間、維持した。次いで、細菌を遠心分離によって回収し、そして細菌ペレットの1重量あたり6容量の溶解緩衝液に再懸濁した。溶解緩衝液は、10mM Tris−JCL(pH8.0)、10mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.1mM PMSF、および0.1% RIVM BA(50mlあたり、0.104g 4−アミノ−ベンズアミジン−2HCl、0.066g ε−アミノカプロン酸)を含んだ。リゾチームを、0.1mg/mlの濃度に添加し、そして懸濁液を−70℃で凍結した。
【0086】
細菌懸濁液を解凍し、そして4℃に置いた。以下の操作をこの温度で行った。細菌の完全な溶解を、超音波処理によって達成した。超音波処理物を、17,000rpmで、30分間、JA−70ローター(Beckman)において遠心分離した。飽和化(NHSOを、20%飽和が達成されるまで、上清溶液に添加した。沈殿物を、遠心分離(上述を参照のこと)によって回収し、そして破棄した。上清溶液を、飽和化(NHSOの添加によって、55%飽和にさせた。上清の遠心分離によって得られるペレットを、TE緩衝液(10mM Tris−HCl(pH8.0)、15mM β−メルカプトエタノール、1mM EDTA)中に溶解した。次いで、TE中のタンパク質溶液を、50容量のTE緩衝液に対して透析した。
【0087】
沈殿された物質を除去するための遠心分離後(上述のように)、透析したタンパク質溶液を、DEAE SEPHAROSE(Pharmacia)カラムにアプライした。TE緩衝液での洗浄後、タンパク質をTE緩衝液中の0〜300mM NaCl勾配で溶出した。M.bovis BCG Hsp60(実際の見かけの分子量は、65kDaに等しい)を含む画分を、SDS−PAGEおよびクマシーブルー染色によって同定し、そしてプールした。10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチン、および1μg/mlペプスタチンを、このプールに添加し、次いでこれを、YM30メンブレンを用いてAmiconセルに濃縮した。
【0088】
濃縮したプールを、S200緩衝液(10mM NaHPO(pH6.8)、150mM NaCl、および15mMβ−メルカプトエタノール)で平衡化したS−200 SEPHACRYL(Pharmacia)カラムにアプライした。溶出は、同じ緩衝液を用いてであった。画分を、以前のようにマイコバクテリアのHsp60の存在について試験し、そして高度に精製されたタンパク質を含有するポジティブな画分をプールし、そしてHAP緩衝液(10mM NaHPO(pH6.8)、15mMβ−メルカプトエタノール)に対して、一晩、透析した。
【0089】
透析したプールを、HAP緩衝液中で平衡化したヒドロキシアパタイト(Bio−Rad;Bio−Gel HTP Gel)カラムにアプライした。カラムを、3カラム容量の1mN MgClおよび15mMβ−メルカプトエタノール、次いで1mM NaHPO(pH6.8)および15mMβ−メルカプトエタノールで洗浄した。タンパク質を、10〜60mM リン酸勾配で溶出した。画分を、以前のように試験し、そしてポジティブな画分をプールし、濃縮し、そしてPD10を介するゲル濾過によって0.85% NaClに交換した。マイコバクテリアのHsp60の純度を、SDS−PAGEおよびクマシーブルー染色によって、ならびにE.coli Hsp70およびHsp60に特異的な抗体を使用するウエスタンブロット分析によって、評価した。調製物は、代表的に、90%を超える純度であり、ならびにそれぞれ、0.5%を超えないE.coli HSP60および0.1〜0.2%のE.coli Hsp70を含んだ。
【0090】
HSP調製物は、DetoxiGel樹脂に対するアフィニティークロマトグラフィーによって、ポリミキシンBを添加して、または(あまり好ましくないが)Triton X−114のような界面活性剤を用いる溶出によってのいずれかで、脱発熱化し得る(depyrogenate)。
【0091】
実施例2:NPペプチドおよびhsp70の混合物を含有する組成物に対するCTL応答
a.hsp70タンパク質およびNPペプチドの調製 Hsp70(ここでは、M.tuberculosis hsp71)を、実施例1に記載のように調製した。完全なNPにおける363−374残基に対応するアミノ酸配列VQLASNENMETM(配列番号1)を有し、そして公知のCTLエピトープ(H−2b制限される)を含む、NPペプチド(本明細書中でNP.Bとして称される;Motal,U.M.A.ら、Eur.J.Immunol.、25:1121−1124(1995)およびそこにおける参考文献)を、αアミノ保護基としてFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)を用い、および固相支持体としてHMP(Wang)樹脂を用いて、Applied Biosystems model 431A ペプチド合成機において、合成的に生成した(0.25mMスケール)。全てのアミノ酸および合成化学薬品は、Applied biosystemsから購入した。
【0092】
NP.Bを、支持体から切断し、そして連続的な撹拌下で、3時間、10mlトリフルオロ酢酸、0.5ml 水、0.75g結晶性フェノール、0.25ml エタンジチオール、および0.5ml トリアニソールを混合することによって調製した2mlの混合物中で、NP.B−樹脂をインキュベートすることによって、側鎖の保護基を除去した。切断混合物を、40mlの氷冷ジエチルエーテルに濾過した。不溶性の物質を、5000×gで、8分間の遠心分離によって回収した。エーテルをデカントし、そしてペレットを、冷却ジエチルエーテルにおける再懸濁、次いで遠心分離によって、3回洗浄した。最後の洗浄後、ペレットを風乾し、蒸留水中にとり、そして凍結乾燥した。
【0093】
b.マウスの免疫およびエフェクター細胞の調製
NP.Bペプチドを、小容量のダルベッコPBS(DPBS;2.7mM KHPO、4.3mM NaHPO、2.7mM KCl、0.137M NaCl)に溶解した。ペプチドNP.Bの、それぞれ、1.89、18.9または189μgのアリコートを、DPBS中のhsp71の100μgのアリコートと混合し、それぞれ、1、10、または100のペプチド:hspのモル比を有する組成物を得た。株C57BL/6の4匹の雌性マウスの群は、免疫されないままであるか(コントロール)または3つの異なるNP.B−hsp71混合物で、頸部の首筋に皮下注射されたかのいずれかであった。7日後、マウスを頸部脱臼によって安楽死させ、それらの脾臓を取り出した。プールした脾臓の単一の細胞懸濁液を調製し、そして「完全培地」(これは、10%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン酸、1mMピルビン酸ナトリウム、50μM 2−メルカプトエタノール、および50μg/mlゲンタマイシン硫酸を補充したRPMI−1640培地であった)中で、1回洗浄した。0.1μmol濃度でのNP.B.ペプチドとともに、5日間、25×10個の生存細胞を培養することによって、リンパ様細胞を再刺激した。培養物を、直立の25cmフラスコ中で、10ml 完全培地とともに、37℃および5% COで、インキュベートした。次いで、培養物(エフェクター細胞)を、下記のCTL活性アッセイにおいて使用した。
【0094】
c.CTL活性アッセイ
EL4細胞(H−2b)を、標的細胞として使用した。細胞を、10細胞当たり150μCi NaCrOおよび10μgNP.Bペプチドとともに、90分間インキュベートした。大量に洗浄して過剰な放射標識を除去した後、10標識化標的細胞を、再刺激したエフェクター細胞とともに、種々のエフェクター:標的細胞比で、同時培養した。インキュベーションの4〜5時間後、培養プレートを、5分間、200×gで遠心分離し、そして細胞から放出された放射標識を含む上清液の100μlアリコートを、Beckman Ready Capsに回収した。放射能を、液体シンチレーションカウンティングによって測定した。自発的に放出された放射能、および放出可能な全放射能を測定するために、標的細胞のみを含む培養物からの上清液、またはTriton X−100の添加によって溶解された標的細胞からの上清液を回収し、そして放射能を以前のように測定した。結果は、特異的溶解%として表され、以下の式に基づいて算定された:
特異的溶解パーセント=100×(cpm試験−cpm自発)/(cpm全体−cpm自発)、
ここでcpm試験は、特定の同時培養から放出された放射能であり、cpm自発は、標的細胞培養物の自発的に放出された放射能であり、およびcpm全体は、標的細胞のTriton X−100溶解によって放出される放射能である。CTLアッセイを、3連で行い、そして平均値を提供した。
【0095】
実験の結果を図1に示す。コントロール反応(すなわち、標的細胞と、免疫されていないマウスから調製されたエフェクター細胞との同時培養のクロミウム放出のアッセイ)は、100のエフェクター:標的細胞比で、約10%の溶解についてのバックグラウンド値を提供する。1:1または10:1のNP.B−hsp71混合物で免疫したマウスからのエフェクター細胞を用いて、バックグラウンドを超える、CTL活性の増強は、何も観察されなかった。非常に増強された溶解は、NP.Bペプチドおよびhsp71の100:1の混合物で免疫したマウスからのエフェクター細胞を用いて見出され、これはNP.Bのようなペプチドと、hsp71のようなhspとの同時免疫は、ペプチドを提示する細胞に対してCTL活性を、強烈に刺激し得ることを実証する。当該分野において周知であるように、DPBS中のNP.Bペプチド単独での免疫は、CTL活性を刺激しないことに注目のこと。
【0096】
実施例3:NPペプチドとhsp70との化学結合体を含む組成物に対するCTL応答
a.hsp70およびNPペプチドの調製
M.tuberculosis hsp71を、実施例1に記載のように調製した。NP.Bペプチドを、ペプチドが過剰のアミノ末端システイン残基を含み、従ってアミノ酸配列CVQIASNENMETM(配列番号2)を有した以外は、実施例2で議論したように合成した。
【0097】
b.hsp70およびジフテリアトキソイドへのNp.Bペプチドの化学結合
結合を、hsp70、およびCTL活性特異的刺激の効力の比較のための標準を提供する、一般的に使用されるキャリアタンパク質ジフテリアトキソイド(DTと省略する;DTを商業的供給源から得た)の両方を用いて行った。
【0098】
b.1.M.tuberculosis hsp71およびDTキャリアタンパク質の活性化
9mgのhsp71を、4.5mlの0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に溶解した。スルホ−MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル)(100μlジメチルスルホキサミン中2.3mg)をタンパク質に添加し、そして反応混合物を、室温で1時間インキュベートした。次いで、pHを6.0に調整し、そして反応混合物を、4℃で一晩、1リットルの20mMリン酸ナトリウムおよび150mM NaCl(pH5.6)に対して透析した。DTを同様に処理した。
【0099】
b.2.結合のためのNP.Bペプチドの調製
各結合反応のために、3mgのペプチドを、100μlの0.1Mβ−メルカプトエタノールに溶解した。ペプチドの還元を可能にする1時間のインキュベーション後、還元剤を、反応混合物をSpeedVac遠心分離器において乾燥することにより除去した。ペプチドを0.5ml蒸留水に再溶解し、これに1N NaOHの5μlアリコートを、ペプチドが完全に溶解するまで添加した。DTとの結合実験のために、6mgのペプチドを還元し、次いで1mlの水に再溶解した。
【0100】
b.3.結合体形成
活性化キャリアタンパク質溶液のpHを、0.1N NaOHを用いて6.8に調整した。3mgの活性化キャリアタンパク質を含む溶液を、連続的に混合しながら室温で3時間、0.5mlの還元されたペプチド溶液(または、DTとの結合体の調製については1mlの還元されたペプチド溶液)と反応させた。未反応ペプチドを除去するために、得られた結合体含有溶液を、4℃で一晩、1リットルの20mMリン酸ナトリウムおよび150mM NaCl(pH7)に対して透析した。タンパク質濃度をBCAアッセイにより決定した。この手順により達成された結合効率は、放射性標識されたNP.Bペプチドを用いる前予備実験(prior pilot experiment)において決定した。ペプチド:タンパク質比は、NP.B−hsp71結合体(71.NP)については17.5、そしてNP.B−DT(DT.NP)については10.1であると見出された。
【0101】
c.マウスの免疫化およびエフェクター細胞の調製
1〜100μgの71.NPおよびDT.NP結合体での免疫化ならびにエフェクター細胞の調製を、実施例2に記載のように行った。
【0102】
d.CTL活性アッセイ
アッセイを実施例2に記載のように行った。
【0103】
結果
得られた結果を図2に示す。DPBSまたは1もしくは10μgのDT.NP結合体を注射したマウスに由来するエフェクター細胞を用いたCTL活性アッセイは、ネガティブな結果を与えた(図2の最も下の線)。100μgのDT.NPを注射したエフェクター細胞のみが、1μgの71.NPで免疫化したマウスに由来するエフェクター細胞のCTL活性に匹敵する、測定可能な(エフェクター:標的細胞比100で5〜10%溶解)CTL活性を生じた。10または100μgの71.NP結合体で免疫化したマウスに由来するエフェクター細胞を用いたアッセイは、実質的に、より大きなCTL活性(すなわち、エフェクター:標的細胞比100で15〜25%の標的細胞溶解)を示した。この実験は、NP.Bペプチドおよびhsp71の例について、ペプチド−hsp結合体での免疫化が、このペプチドを提示する細胞に対して指向される特異的CTL活性を刺激することを証明する。
【0104】
実施例4:hsp−NP融合タンパク質を含む組成物に対するCTL応答
a.hsp−NP融合タンパク質の調製
a.1.マイコバクテリアhsp65カルボキシ末端にNP CTLエピトープを含む融合タンパク質をコードする発現プラスミドの調製
hsp65融合タンパク質の一部として、H−2b CTLエピトープNP.B(上記を参照のこと)またはH−2 CTLエピトープNP.D(NPの残基147〜155;Levi,R.およびArnon,R.,Vaccines,14:85−92(1996)ならびに本明細書中の参考文献)を含むインフルエンザウイルスNP配列を発現するプラスミドを構築した。
【0105】
pET系プラスミド(Novagen)に由来し、そして完全M.bovis BCG hsp65遺伝子およびhsp65遺伝子のカルボキシ末端でのさらなるコード配列の挿入に有用な制限部位を含む、発現ベクターpET65mpを、予め構築した。このベクターの模式図を図3に提供する。
【0106】
プラスミドpcDNA1(Invitrogen)により提供されるサイトメガロウイルスプロモーターの制御下でインフルエンザウイルスA/PR/8/34株のNPのオープンリーディングフレームを含む構築物pNP/cAを、Peter Palese博士(Dept.Of Microbiology,Mount Sinai School of Medicine,New York,NY)から得た。
【0107】
NP.BおよびNP.Dエピトープを含むフラグメントの増幅のための2つのプライマー対を、自動化オリゴヌクレオチド合成機において合成し、そして日常的な手順を用いて精製した。正方向プライマーは、NP配列に相補的な適切な配列に加えてEcoRI制限部位を含み、そして逆方向プライマーはSpeI制限部位を含んでいた。NP.Dフラグメントについての正方向プライマーは、配列5’AAAGAAGAATTCAGGCGAATC(配列番号3)を有し、そして逆方向プライマーは、配列5’GTTCCGATCACTAGTCCCACG(配列番号4)を有した。この対は、NP残基117〜200を含むフラグメントを増幅するように設計された。NP.Bフラグメントについての正方向プライマーは、配列5’CTGCTTGAATTCAGCCAAGTG(配列番号5)を有し、そして逆方向プライマーは、配列5’CTGTTGACTAGTGTTTCCTCC(配列番号6)を有した。後者の対は、NP残基310〜395を含むフラグメントを生成するように設計された。
【0108】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、上記のプライマー対およびDNAテンプレートとしてpNP/cAを用いて行った。PCRフラグメントを、制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびSpeIで2重消化し、そして日常的なサブクローニング手順(Maniatisら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.,Cold Spring Harbor,NY(1989))を用いてEcoRI/SpeI切断pET65mpに連結した。E.coli DH5α株の形質転換コンピテント細胞を連結混合物で形質転換し、そして100μg/mlアンピシリンを含む寒天にプレートした。形質転換された細胞のコロニーを単離し、そしてプラスミドDNAを調製し、そして制限地図作成およびヌクレオチド配列決定により適切なhsp65−NP.BまたはD融合遺伝子配列の存在について分析した。hsp65−NP.B(pET65mp/B)およびhsp65−NP.D(pET65mp/D)融合タンパク質をコードする適切な構築物を同定し、そして細菌における融合タンパク質の発現およびそれらの精製がねらいの後の操作において使用した。融合タンパク質遺伝子構築物(それぞれ、pET65MP/NP−BおよびpET65MP/NP−D)の模式図については図4A〜4Bを参照のこと。
【0109】
a.2.hsp65−NP融合タンパク質の発現および精製
融合タンパク質構築物をE.coli BL21株(DE3;Novagen)に形質転換し、そして融合タンパク質を、供給者の示唆したプロトコルに密接に類似したプロトコルを用いて、後者の株の6リットル培養物において発現させた。細胞を遠心分離により採集し、10mM Tris−HCl、2mM EDTA、および5mM β−メルカプトエタノール(pH7.5)に懸濁し、そして超音波処理により溶解した。不溶性物質を遠心分離により除去した後、硫酸アンモニウムを20%飽和まで添加し、そして沈殿タンパク質を遠心分離により収集した。硫酸アンモニウムペレット中の融合タンパク質の存在を、SDS−PAGE、続いてクマシーブルー染色により確認した。同じアッセイを使用して、後の全ての精製工程をモニターした。タンパク質を、30mM Tris−HCl、2mM EDTA、および5mM β−メルカプトエタノール(pH7.5)に再溶解し、そして溶液を、同じ緩衝液中で平衡化されたDEAE Sepharose(ファーストフロー(fast flow)、Pharmacia Biotech)カラムに適用する前に、同じ緩衝液に対して徹底的に透析した。フロースルー画分(非結合タンパク質)を収集し、これは代表的に約90mgのタンパク質を含んでいた。hsp65−NP.B融合タンパク質をさらに精製するために、60mgの後者の画分を、10mMリン酸ナトリウム(pH6.8)に対して透析し、次いで、同じ緩衝液中で平衡化されたヒドロキシアパタイト(BIORAD)カラムに適用した。溶出を、0〜600mMリン酸カリウム勾配を用いて行った。この手順は、約5mgのタンパク質の回収しかもたらさなかった。次いで、カラムを4M 塩酸グアニジンでさらに溶出し、これによりさらに15mgのタンパク質が取り出された。この画分をDPBSに対して透析し、そしてフロースルー発熱物質除去(depyrogenation)のためにDetoxielカラムに適用する前に、Amicon限外濾過デバイスを用いて濃縮した。hsp65−NP.D融合タンパク質をさらに精製するために、DEAE Sepharoseフロースルー画分を、30mM酢酸ナトリウム、2mM EDTA、および5mM β−メルカプトエタノール(pH5.8〜7.5)に対して透析し、次いで、同じ緩衝液中で平衡化されたSP Sepharose(ファーストフロー、Pharmacia Biotech)カラムに適用した。溶出は、0〜600mM NaCl勾配を用いた。溶出されたhsp65−NP.D融合タンパク質を、hsp65−NP.B融合タンパク質について記載されたように処理した。これらの手順により精製された融合タンパク質は、染色されたSDS−PAGEゲルから評価されたように90%を超えて純粋であり、そして実質的に発熱物質を含まなかった。
【0110】
b.マウスの免疫化およびエフェクター細胞の調製
C57BL/6マウスをhsp65−NP.Bを用いた実験において使用し、そしてBALB/cマウスをhsp65−NP.Dを用いた実験において使用したことを除いて、DPBS(図5および6において0μg 65−NPと呼ぶ)または1〜100μgのhsp65−NP.Bもしくはhsp65−NP.D融合タンパク質を用いた免疫化、ならびにエフェクター細胞の調製を、本質的に実施例2に記載のように行った。インビトロ再刺激を、(一般的に、T細胞増殖を刺激するために)3U/mlの組換えヒトIL−2の非存在下または存在下のいずれかで7日間の期間にわたって行った。
【0111】
c.CTLアッセイ
EL4(H−2b)標的細胞をhsp65−NP.B融合タンパク質を用いた実験において使用し、そしてP815(H−2)標的細胞をhsp65−NP.D融合タンパク質を用いた実験に使用したことを除いて、アッセイを本質的に実施例2に記載のように行った。CTL応答の特異性についてのさらなるコントロールを提供するために、標的細胞を、適切なNPペプチドでパルスしたか(図5A〜5Bおよび図6A〜6Bの黒記号)、HPV16E7タンパク質の配列に由来する無関係な残基49〜57ペプチドでパルスしたか(図5A〜5Bの白記号)、またはパルスしなかった(図6A〜6Bの白記号)。
【0112】
hsp65−NP.B融合タンパク質(65−P.bと標識された)を用いた実験の結果を、図5A〜5Bに示す。図5Aは、エフェクター細胞をIL2の非存在下で再刺激した実験を指し、そして図5Bは、エフェクター細胞をIL2の存在下で再刺激した実験を指す。図5Aから明らかなように、hsp65−NP.B融合タンパク質を用いた免疫化は、エフェクター:標的細胞比100で標的細胞の約20〜40%溶解の範囲にわたる、NP.Bペプチドを提示する標的細胞に対して指向される特異的CTL活性の劇的な刺激をもたらす。本質的に、特異的な溶解は、DPBS「免疫化」動物に由来するエフェクター細胞で観察されなかった。また、E7ペプチドでパルスされた細胞の有意な溶解は明らかでなかった。IL2の存在下で再刺激されたエフェクター細胞を用いる実験において、さらにより高いレベルの標的細胞溶解が、hsp65−NP.B融合タンパク質免疫化マウスに由来するエフェクター細胞で観察された。レベルは、融合タンパク質用量に依存して、エフェクター:標的細胞比100で約25〜60%の範囲にわたった。これらの値は、DPBS注射マウスに由来するエフェクター細胞で観察された10〜15%溶解を大いに越えた。さらに、E7ペプチドでパルスされた標的細胞の有意な(DPBS「免疫化」マウスに由来するエフェクター細胞で観察された特異的溶解より大きな)特異的溶解は観察されなかった。
【0113】
hsp65−NP.D融合タンパク質(65−NP.Dと標識された)を用いた実験の結果を、図6A〜6Bに示す。一般的に、これらの結果は、hsp65−NP.B融合タンパク質を用いた実験において得られた結果に類似する。hsp65−NP.Bを用いた以前の実験とは異なり、免疫化に使用されたhsp65−NP.Dペプチドの用量への明らかな依存がこの実験において観察されたことに留意のこと。全体として、例としてhsp65−NP融合タンパク質を使用するこれらの実験は、hsp外来ペプチド/ポリペプチド融合タンパク質を用いる免疫化が、外来ペプチド/ポリペプチド融合パートナーに含まれるエピトープを提示する適切な標的細胞に対して指向されるCTL活性の激烈な刺激をもたらすことを証明する。
【0114】
実施例5.hsp−P1A融合タンパク質に対するCTL応答
上記の実施例において使用された手順に類似した手順を用いて、M.tuberculosisストレスタンパク質hsp71の完全コード配列、およびhsp71配列のカルボキシ末端に付加された、腫瘍関連抗原P1Aの最小CTLエピトープ(LPYLGWLVP(配列番号7);この配列を本実施例においてP1Aと呼ぶ)をコードする合成配列の4つのタンデムに配置されたコピーを含む融合遺伝子のE.coliにおける発現を可能にする、プラスミドを構築した。Hsp71−P1A融合タンパク質(図7A、7B、8A、8B、および9において71−P1A(4)と呼ぶ)を発現させ、そして上記の実施例において使用された方法に類似した標準的な生化学的方法を用いて精製した。
【0115】
BALB/cまたはDBA/2(H−2)マウスを、塩酸ケタミンの腹腔内注射により麻酔した。次いで、マウスを、0、5、50、または500μgのhsp71−P1A融合タンパク質を用いて首の項部に皮下免疫化した。免疫原を、アジュバントを伴わずにDPBS中で投与した。1週間後、1群あたり4つのプールされた脾臓に由来する単細胞懸濁物を調製し、そして合成ペプチドCKKKLPYLGWLVP(配列番号8)(1μM)を用いて7日間インビトロで再刺激した。CKKK残基はP1A 9量体の水性溶解度(aqueous solubility)を増強するために添加されたことに留意のこと。次いで、再刺激されたエフェクター細胞を、51Cr標識標的細胞と共に4〜5時間培養した。標的は、エフェクター:標的比100、33、または11:1で、P815肥満細胞腫のP1A抗原発現クローンP1(H−2)細胞、または(CKKK)P1AでパルスされたL1210細胞(H−2)、あるいはコントロール標的としてのパルスされていないL1210細胞であった。標的細胞の特異的溶解を、実施例2に記載のように決定した。これらの実験の結果を、図7A〜7B(BALB/cマウス)および図8A〜8B(DBA/2マウス)に示す。これらの実験におけるバックグラウンド溶解は、無関係な標的細胞(パルスされていないL1210細胞)に対して観察された溶解活性により示されるように、5%未満であった。非免疫化マウス(0μg)に由来する再刺激細胞は、P1標的細胞(図7A、8A)に対してもCKKK(P1A)パルスL1210細胞(図7B、8B)に対しても溶解活性を示さなかった。5μgほどの少ないhsp71−P1A融合タンパク質で免疫化したマウスに由来する細胞は、測定可能な溶解活性を示し、最大応答は、50〜500μgで免疫化したマウスに由来する細胞において見られた。
【0116】
実施例6:hsp71−P1A融合タンパク質で免疫化したマウスの腫瘍抗原投与
3回の注射を2週間間隔で与えた以外は、マウスを上記の実施例のように免疫化した。最後の注射の2週間後、1000個の生存可能なP1腫瘍細胞の腹腔内注射により、マウスに抗原投与した。26日後、マウスを安楽死させ、秤量し、そして腹部内容物の全ての塊を解剖し、そして秤量した。この実験の結果を図9に示す。hsp71−P1A融合タンパク質を用いた3回の50μg免疫化を与えたマウスでは、総体重のパーセントとして表される腹部内容物の質量は、非免疫化マウス(0μg、P<0.03)において見出された質量より有意に少なく、そして腫瘍細胞を注射しなかったマウス(コントロール)において観察された質量と同様であったことが観察された。
【0117】
全体として、実施例5および6における実験は、例としてhsp71−P1Aを用いた、hsp−腫瘍関連抗原を用いた免疫化が、無関係なMHCクラスI拘束エピトープを提示する細胞に対して指向されるCTL活性の実質的な刺激をもたらすことを証明する。さらに、このような免疫化は、関連したエフェクター機能の発現、すなわち免疫化された抗原を発現する腫瘍を用いた抗原投与に対する免疫を導く。
【0118】

等価物
当業者は、本明細書中に記載された本発明の特定の実施態様に対する多くの等価物がわかるか、または単に日常的実験を用いてこれらを確かめ得る。これらおよび他の全ての等価物は、以下の請求の範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、エフェクター:標的比対%特異的細胞溶解のグラフであり、核タンパク質(NP)ペプチドおよび熱ショックタンパク質70(hsp70)を含む混合物に対するマウスにおける細胞溶解性T細胞(CTL)応答を示す。
【図2】図2は、エフェクター:標的比対%特異的細胞溶解のグラフであり、NPペプチドおよびhsp70の化学結合体を含む組成物に対するマウスにおけるCTL応答を示す。
【図3】図3は、ベクターpET65MPの模式図である。
【図4A】図4Aは、ベクターpET65MP/NP−Bの模式図である。
【図4B】図4Bは、ベクターpET65MP/NP−Dの模式図である。
【図5】図5A〜5Bは、エフェクター:標的比対%特異的細胞溶解のグラフであり、hsp−NP融合タンパク質のhsp65−NP.Bに対するマウスにおけるCTL応答を示し、ここでエフェクター細胞をIL−2の不在下(図5A)およびIL−2の存在下(図5B)において再刺激した。
【図6】図6A〜6Bは、エフェクター:標的比対%特異的細胞溶解のグラフであり、hsp−NP融合タンパク質のhsp65−NP.Dに対するマウスにおけるCTL応答を示し、ここでエフェクター細胞をIL−2の不在下(図6A)およびIL−2の存在下(図6B)において再刺激した。
【図7】図7A〜7Bは、エフェクター:標的比対%特異的細胞溶解のグラフであり、hsp−P1A融合タンパク質で免疫したBALB/cマウスにおけるCTL応答を示す。
【図8】図8A〜8Bは、エフェクター:標的比対%特異的細胞溶解のグラフであり、hsp−P1A融合タンパク質で免疫したDBA/2(H−2)マウスにおけるCTL応答を示す。
【図9】図9は、hsp−腫瘍関連抗原のhsp71−P1Aでの免疫が、関連のMHCクラス1拘束されたエピトープを提示する細胞に対するCTL活性の刺激を生じることを示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるような、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−214360(P2008−214360A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122787(P2008−122787)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【分割の表示】特願平10−524081の分割
【原出願日】平成9年11月25日(1997.11.25)
【出願人】(508138069)ヌベンタ バイオファーマスティカル コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】