説明

ストレス緩和作用を有する食品、組成物及び薬剤

【課題】
ストレスを緩和できる植物由来の成分を利用する新規な食品、ストレス緩和用組成物、及びストレス緩和剤を提供する。
【解決手段】
ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を少なくとも含有する食品、例えば、日本茶に前記成分を配合した飲料、あるいは前記成分を含み、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状又はカプセル状のいずれかからなる機能性食品を提供する。また、前記成分を有効成分とするストレス緩和用組成物やストレス緩和剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス症候群の緩和又は改善に有用な食品等に関する。より詳しくは、ウルシ科植物チャンチンモドキの果実から得られる成分を含み、ストレス症候群(ストレス障害)の緩和又は改善に有用な食品、組成物及び薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「ストレス」は、何らかの刺激が心身に加わったことによって心身が示す変調である。このストレスの原因となる刺激要素、即ちストレッサーは、温度・騒音・放射線などの物理的ストレッサー、酸素量の過不足・化学物質・栄養不足などの化学的ストレッサー、病原菌などの生物的ストレッサー、人間関係トラブル・精神的な苦痛や緊張又は興奮などの精神的ストレッサーに大別できる。
【0003】
近年、生活環境の中のこれらストレッサーが増加しているため、現代社会は、しばしばストレス社会と称されることがある。このため、ストレスが原因となる病気(ストレス障害又はストレス症候群)も多岐にわたる。この種の病気の一般的な治療方法は、抗鬱剤や精神安定剤を服用することである。
【0004】
天然植物成分を利用した抗ストレス剤や食品も幾つか提案されている。例えば、エンメイソウ、オトギリソウ、サルビア、ボダイジュ、ラカンカから選ばれる一種以上の植物抽出物を用いるもの(特許文献1参照)、カキノキ科植物の溶媒抽出物を有効成分とするもの(特許文献2参照)、羅布麻(らふま)抽出物を用いるもの(特許文献3参照)、キンポウゲ科に属する植物から得られる成分を利用するもの(特許文献4参照)などである。また、カカオポロフェノール類の一種であるエピカテキンとカフェインを組み合わせて抗ストレス効果を有する組成物も提案されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2003−081868号公報。
【特許文献2】特開2000−136143号公報。
【特許文献3】特開2002−201139号公報。
【特許文献4】特開2005−213216号公報。
【特許文献5】特開2002−080363号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストレス症候群に属する多様な病気を改善するために、抗鬱剤や精神安定剤などの薬を日常的に服用した場合、副作用の心配を払拭できない。
【0006】
そこで、本発明は、副作用がなく、できるだけ常用薬の服用量を減らしながらストレスを緩和できる植物由来の成分を新規に見出し、該成分を利用する新規な食品、ストレス緩和用組成物、及びストレス緩和剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一に、ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を少なくとも含有する食品を提供する。
【0008】
本発明に係る食品は、広く飲食物を含み、狭く限定されない。本発明に係る食品の好適例を挙げるならば、日本茶に前記成分を配合した飲料や、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状又はカプセル状のいずれかからなる、いわゆる機能性食品である。なお、「日本茶」とは、日本式の蒸し製法によって作られた茶の総称であり、煎茶、玉露、抹茶、かぶせ茶、玉緑茶、番茶、ほうじ茶、玄米茶、くき茶などを広く包含し、狭く解釈されない。チャンチンモドキの果実成分に他の成分を目的に応じて組み合わせることは自由である。
【0009】
本発明は、第二に、ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を有効成分とするストレス緩和用組成物を提供する。
【0010】
この組成物は、ストレス緩和作用を得ることを主目的又は副目的とする種々の商品に適当量配合されることによって利用される。例えば、本組成物は、食品、化粧品、家畜飼料などのストレス緩和用機能性成分として、あるいは医薬部外品、医薬品などのストレス緩和用薬効成分としても利用できる。
【0011】
本発明は、第三に、ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を含有するストレス緩和剤を提供する。
【0012】
このストレス緩和剤は、副作用がなく、その効果がマイルドであるので、日常的な服用に適している。このため、ストレス緩和を目的として、一般的に用いられる抗鬱剤や精神安定剤などの服用量を減らすことが可能となる。
【0013】
ここで、ウルシ科植物の和名チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries、英名:Nepalese hog plum)は、「香椿擬き」とも記載される落葉高木植物で、センダン科のチャンチン(香椿、Cedrela sinensis)に似ていることから命名されたものと考えられる。このチャンチンモドキは、中国からヒマラヤ周辺に分布し、日本では、九州の山地にのみ自生している。高さは、25mにもなり、その花期は5月頃で、その果実は核果(かくか)であって、黄色から橙色を呈し、11月頃に熟して甘酸っぱく食用にも適する。
【0014】
このチャンチンモドキは、蒙古語ではジャルヘンサバガ(意味:心の棗)と称され、モンゴルでは大昔から心絞痛に対する民間療法に利用されてきた事実がある。今般、本願発明者は、長年の研究の結果、このチャンチンモドキに意外にもストレス緩和作用があることを新規に見出し、上記発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る食品、組成物、薬剤は、ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分によって、副作用の心配をすることなくストレス緩和の作用効果を提供することができる。例えば、日本茶に前記成分を配合すると、日本茶の含有カフェインによる疲労回復作用や覚醒作用など、あるいはアミノ酸による抗ストレス作用などとの相乗効果によって、ストレス緩和作用をより有効に発揮させることができる。本発明によれば、抗鬱剤や精神安定剤などの薬剤の服用量を減らすこともできる。
【実施例】
【0016】
本発明に係る食品、組成物、薬剤のストレス緩和作用を検証するために、以下の試験を行なった。なお、以下の実施例それ自体によって、本発明が狭く限定されることはない。
【0017】
(1)試験で使用する経口物の作製及び服用。
チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries(Roxb)Burtt et Hill)の完熟果実の乾燥物を滅菌処理した後、粉砕した。これにより得られた粉末物をタブレット状に成形し、10名の被験者に対して4週間にわたって、毎日朝晩で計15錠服用させた。服用量は、粉末重量4g/日とした。10名の被験者は、いずれも不安、恐惧、動悸、不眠、目眩、疲労感などの症状を日常的に持っている。なお、試験期間中は、日常利用している抗鬱剤や精神安定剤の服用を禁じた。
【0018】
(2)評価。
服用初日、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後の計5回にわたり、気分、目眩、ふらつき、動悸、不安感、疲労感、不眠、脅迫感、意欲低下の計9項目について、4段階評価を行った。4段階評価は、非常に良好:2点、良好:1点、普通:0点、不良:−1点という内容で点数化した。この評価結果を次の表1〜5に示す。なお、表1〜5のA〜Jは、各被験者に便宜上付した識別のための記号である。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
【表5】

【0024】
前掲した表1〜5に示された評価結果に基づいて、総合点数(初回測定時の評価点から最終測定時の評価点の差)の計算を行った。総合点数の計算の方法について、被験者Aを参考に説明すると、初回測定時の合計点数−2で、最終測定時(4週目)の合計点数は14点であるから、14−(−2)=16点であり、被験者Bを参考に説明すると、初回測定時の合計点数−4で、最終測定時(4週目)の合計点数は13点であるから、13−(−4)=17点である。以下の「表6」に各被験者A〜Jの総合点数をまとめた。
【0025】
【表6】

【0026】
前掲の「表6」に示された結果からわかるように、10名の被験者全員において、総合評価点が10点を越えた(平均点:14.9)。この結果から、本実施例で使用したタブレット経口物、即ち、チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries(Roxb)Burtt et Hill)の完熟果実の乾燥物を滅菌処理した後、粉砕して得た粉末物をタブレットに成形した経口物は、ストレス症候群に見られる気分悪化、目眩、ふらつき、動悸、不安感、疲労感、不眠、脅迫感、意欲低下などの症状の改善に顕著な効果を発揮することを検証することができた。
【0027】
なお、本実施例では、被験者に対してタブレット形態での服用を試みたが、粉末状、顆粒状、液状、カプセル状などの形態で服用した場合も同様の効果があるものと考えられる。上記粉末物に加えて、他の成分、例えば、保形性向上、味覚調整、ストレス緩和機能の補強、安定性向上、他機能付加などの目的の成分を配合することは自由である。また、乾燥果実の粉末物ではなく、目的に応じて、チャンチンモドキの果実抽出液を利用することも可能である。
【0028】
上記粉末物や抽出液は、ストレス緩和のための薬剤成分としてはもちろん、日本茶に上記粉末物を適当量配合することによって、日本茶それ自体が保有するストレス緩和作用やリラクゼーション作用と相乗効果を発揮させることができる。日本茶以外の茶類やその他の様々な食品へ配合することで、日常的な服用の習慣化を促進するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ストレス緩和のための食品、組成物、及び薬剤として利用できる。より具体的には、ストレス症候群にみられる諸症状、例えば、気分改善、目眩、ふらつき、動悸、不安感、疲労感、不眠、脅迫感、意欲低下などの改善に有効に利用できる。
【0030】
本発明は、ストレスが原因となる病気に対して広く有効と考えられる。例えば、甲状腺機能亢進症、過呼吸症候群、神経性嘔吐、自律神経失調症を含む心身症、更年期障害、メニエール病、摂食障害、円形脱毛、緑内障、筋緊張性頭痛、偏頭痛、頚間腕症候群、神経症、適応障害、うつ病、パニック障害(パニック・ディスオーダー)、外傷後ストレス障害(PTSD)などの様々なストレス障害の改善に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を少なくとも含有する食品。
【請求項2】
日本茶に前記成分を配合した飲料であることを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項3】
前記成分を含み、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状又はカプセル状のいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の食品。
【請求項4】
ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を有効成分とするストレス緩和用組成物。
【請求項5】
ウルシ科植物チャンチンモドキ(学名:Choerospondias axillaries)の果実から得られる成分を含有するストレス緩和剤。

【公開番号】特開2007−89510(P2007−89510A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284979(P2005−284979)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(505366478)
【Fターム(参考)】