説明

ストレス緩和及び鎮静効果を有する香料及び化粧料組成物

香料組成物であって、グレープフルーツオイル及びベルガモットオイルを含有し、前記香料組成物は、パインオイル、レモンオイル、サイプレスオイル、ローズオイル及びアルモワーズオイルからなる群より選択される一つ以上を含有することを特徴とする香料組成物が開示される。前記香料組成物は、美容及び化粧品分野等において多様に活用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス緩和及び鎮静効果を有する香料及び化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレスとは、適応しにくい環境にあるときに感じる心理的/身体的な緊張状態をいう。ストレスが長期的に持続すると、心臓病、胃潰瘍、高血圧等といった身体的疾患を引き起こしたり、不眠症、ノイローゼ、鬱病等といった心理的不適応を示したりする。葛藤と競争の激しい産業社会では、社会が構造的又は機能的に複雑に変化するにつれ、これに適応しなければならない現代人のほとんどは、多くの身体的/精神的ストレスを受けるようになる。適切なストレスは、生活の原動力となり、効率性や生産性を高めてくれるので、生きる活力を引き立ててくれる活力源として作用したりもする。しかし、過度のストレスは、病気を引き起こしたり、死に至らしめたりするため、ストレスは、重要な健康上の危険因子として作用し得る。したがって、ストレスを十分に認知して管理することは、健康の維持及び増進のために必ず必要なことである。
【0003】
現在までに効果が実証されているストレスの解消方法には、心理若しくは精神治療療法、バイオフィードバック療法、漸進的弛緩療法又は運動療法等がある。こうした方法は、外的なストレス要因を直接取り除くことはできないとはいえ、個人が各自の生活の中で絶えず訪れる各種ストレスを正しく認識し、これらが健康に及ぼす悪影響をあまり受けないようにして過ごすことができるようにする方法である。こうしたストレス解消方法のうち、芳香療法に対する関心が高まっており、職場や公共の場所での快適な環境を提供するために香りを利用する事例が増加している。特に、香り療法に適用されるアロマエッセンシャルオイルの香り物質がストレスを減少させ、自律神経のバランスを維持させ、疾病や身体の不調和を鎮める免疫機能をさらに強化させる等の効果があるものと知られている。ストレスと関連したアロマ療法についての一部研究においては、数種類のアロマオイルの吸入方法による前後の主観的な評価を通じて、作業環境におけるストレス低減効果が報告されたりもしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2008-0096995号公報
【特許文献2】韓国特許第10-0465971号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-2005-0097668号公報
【特許文献4】国際公開第2005/048964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ストレス緩和効果の効能を有する香料組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、ストレス緩和及び鎮静効果を有する化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る香料組成物は、グレープフルーツオイル及びベルガモットオイルを含有し、前記香料組成物は、パインオイル、レモンオイル、サイプレスオイル、ローズオイル及びアルモワーズオイルからなる群から選択される一つ以上をさらに含むことを特徴とする。また、前記香料組成物を含む化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る香料組成物は、ストレス緩和及び鎮静効果を提供し、これを美容及び化粧品分野等において多様に活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る組成物の使用による脳波の変化を測定した結果を示したグラフである。
【図2】本発明の一実施例に係る組成物の使用による心拍変化率を測定した結果を示したグラフである。
【図3】本発明の一実施例に係る組成物の使用による皮膚温度の変化を測定した結果を示したグラフである。
【図4】本発明の一実施例に係る組成物の使用による皮膚電気抵抗を測定した結果を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施例に係る組成物の使用による主観的評価についての結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、実施例を示す図面を参照しつつ、実施例について詳細に説明することとする。しかし、これらの発明は、多様な他の形態を含めることが可能であり、この明細書に記載された実施例に限定されるものではない。各実施例は、当業者が請求の範囲を完成させ、十分に伝達され得るようにするために提供されるものである。本明細書においては、既知の細部事項及び技術は、不必要に本実施例を曖昧にしないために、省略される場合がある。
【0011】
本明細書において使用されている用語は、特定の実施例を説明するための目的のためのものであり、本発明を限定するものではない。単数形“一つの”及び“その”は、文脈が明確に異なることを指すのでなければ、複数形も含む。また、“一つの”等の用語の使用は、量を限定するものでなく、言及した物品が少なくとも一つ以上存在することを示す。また、本明細書において使用されている“〜含む。”及び/又は“〜含む〜”、又は“〜構成される。”及び/又は“〜構成された〜”といった用語は、特性、地域、ステップ、定数、動作、要素及び/又は構成成分の存在を具体化したり、複数の他の特性、地域、ステップ、定数、動作、要素、構成成分及び/又はこれらのグループの存在及び追加を不可能にしたりするものではない。
【0012】
本明細書において使用されているすべての用語(技術的及び科学的用語を含む。)は、異なる定義がされていない以上、当業者にとって一般的なものと同一の意味を有する。一般的な辞書で定義されているもののような用語は、関連技術及び本発明の文脈において有する意味に相応する意味を有するものと解釈されなければならない。また、本明細書に明示されていない以上、理想化されて、又は過度に形式的に解釈されてはならない。
【0013】
本発明の一実施例に係る香料組成物は、グレープフルーツオイル及びベルガモットオイルを含有し、前記香料組成物は、パインオイル、レモンオイル、サイプレスオイル、ローズオイル及びアルモワーズオイルからなる群より選択される一つ以上をさらに含む。
【0014】
グレープフルーツ(grapefruit)は、柑橘属(Citrus)に属する種のグレープフルーツの木の果実を指し、朱欒とも呼ばれる。また、グレープフルーツオイルは、黄色を帯びた液体で、新鮮な香りを有するシトラス(citrus)系オイルであり、血液の循環を促進し、生活に楽しみを与え、自信の向上、ストレス解消等に効果があるものと知られている。グレープフルーツオイルは、モノテルペン炭化水素であるリモネンを主に含有するシトラス系オイルであり、リモネン(limonene)が約90%を占め、少量のミルセン(myrcene)、デカノール(decanol)等を含有している。それ以外にも、カジネン(cardinene)、ネラール(neral)、シトロネラール(citronellal)等を少量含有している。
【0015】
ベルガモット(bergamot)は、双子葉植物・離弁花類・フウロソウ目・ミカン科の常緑灌木を指し、香料や精油を採取するためにヨーロッパで栽培されており、また、観賞用としても栽培される。ベルガモットオイルは、ベルガモットの実の皮から得られる香油を意味し、リモネン(limonene)、リナリルアセテート(linalyl acetate)が40%以上含まれており、リナロール(linalool)、及び特有成分としてベルガモテン(bergamotene)等を含有している。ベルガモットオイルは無色の液体で、新鮮かつ刺激のある香りを有するシトラス系オイルであり、気持ちを安定させて呼吸機能を助け、精神的なストレスによって緊張した筋肉をほぐす効果がある。
【0016】
パインオイル(pine oil)は、松の葉から抽出されたオイルを総称する概念で、松葉油とも呼ばれる。パインオイルは、例えば、葉(針葉)の部位をスチーム蒸留して抽出することができる。
【0017】
レモンオイル(lemon oil)は、レモンから抽出したオイルを包括する名称である。レモンオイルは、例えば、レモン果実の皮から抽出することができる。
【0018】
サイプレスオイル(cypress oil)は、ヒノキ科であるサイプレスの木の精油を意味し、鎮静作用があり、頭をすっきりさせる効果があることが知られている。
【0019】
ローズオイル(rose oil)は、バラから抽出した精油を総称する概念であり、深く強烈な花の香りで、心身の緊張、疲労やストレスを緩和させる効果がある。
【0020】
また、アルモワーズオイル(armoise oil)は、無色又は薄い黄色の液体で、ヨモギの香りを放ち、生理痛の解消、子宮及び膀胱などの強化、並びに神経の鎮静効果があることが知られている。
【0021】
一実施例において、前記グレープフルーツオイルの含量は、香料組成物全体の重量を基準に30重量%〜70重量%であり、前記ベルガモットオイルの含量は、香料組成物全体の重量を基準に10重量%〜30重量%である。前記範囲は、ストレスを緩和し、優れた嗜好性を確保するための最適範囲を選定したものである。
【0022】
一実施例において、前記パインオイル、レモンオイル、サイプレスオイル、ローズオイル及びアルモワーズオイルからなる群より選択される一つ以上の含量は、香料組成物全体の重量を基準に0.1重量%〜50重量%、より具体的には15重量%〜35重量%とすることができる。他の一実施例において、香料組成物全体の重量を基準に、パインオイルの含量は1重量%〜20重量%、レモンオイルの含量は1重量%〜20重量%、サイプレスオイルの含量は1重量%〜20重量%、ローズオイルの含量は0.1重量%〜5重量%、アルモワーズオイルの含有量は0.1重量%〜5重量%である。前記範囲より低い含量のオイルを添加することになれば十分な効果が得られなくなり、前記範囲よりも高い含量で添加することになれば特定のオイルの香りが強くなって嗜好性が悪化し得る。
【0023】
一実施例において、前記香料組成物は、ストレスの緩和又は心身の安定用組成物とすることができる。グレープフルーツオイル及びベルガモットオイルは、心身を安定させ、弛緩させる効能があり、添加される多様な種類のエッセンシャルオイルは、こうしたストレスの緩和効果を向上させ、嗜好性を高める役割をすることになる。
【0024】
本発明はまた、前記香料組成物を含有する化粧料組成物を提供する。具体的な化粧料組成物の剤型は、特に制限されるわけではなく、例えば、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養ローション、栄養エッセンス、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、ジェル、パウダー、メイクアップベース、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル又はボディーエッセンス等に剤型化することができる。また、ローション、軟膏、ジェル、クリーム、パッチ、又は噴霧剤といった経皮透過型の剤型に製剤化することができる。
【0025】
本発明の一実施例に係る化粧料組成物において、前記香料組成物は、化粧料組成物全体の重量を基準に0.1重量%〜10重量%、具体的には0.001重量%〜1.0重量%の量で含有することができる。香料組成物の含量が、前記範囲未満の場合にはその効果が期待しにくく、前記範囲を超えると強度が強くて添加による効果を低減させ得るためである。香料組成物の含有量は、化粧料組成物の特性に応じ、前記範囲内において調節可能である。
【0026】
一実施例において、前記化粧料組成物は、ヘリクリサム抽出物を含むことができる。他の一実施例において、前記ヘリクリサム抽出物の含量は、化粧料組成物全体の重量を基準に0.001重量%〜1.0重量%、具体的には0.01重量%〜0.5重量%とすることができる。前記ヘリクリサム抽出物の含量は、化粧料組成物のストレス緩和効果を向上させるとともに、嗜好性を低下させない範囲において適切に選択することができる。
【0027】
ヘリクリサム抽出物は、キク科の一年又は二年草であるヘリクリサムから抽出した物質を意味する。ヘリクリサム抽出物は、伝統的に、茶やオイルの形態に加工され、皮膚疾患、喘息、気管支炎若しくは関節炎等、又は、消化不良や頭痛等に対する治癒剤として用いられており、また、回虫を排出する薬剤として使用されたりもする。また、最近では、優れた抗菌、抗炎症効果だけでなく、肌の弾力及び老化と関連したコラーゲンの生成及び線維芽細胞の生成を促進することが知られている。
【0028】
前記化粧料組成物は、ストレスの緩和又は心身の安定用組成物とすることができる。ストレス緩和又は鎮静効果のあるグレープフルーツオイル(grapefruit oil)とベルガモットオイル(bergamot oil)を含有する香料組成物と、鬱病、神経痛、ストレス関連の疾病等の治療に多く利用されるヘリクリサム抽出物を併せて使用することにより、使用者のストレスを緩和させ、心身を安定させる効果が期待できる。
【0029】
本発明による香料組成物及びヘリクリサム抽出物は、香水、化粧品等の皮膚外用剤に配合することができ、配合量は、当業界における通常的な技術に従い、目的とする効果を達成するために適切に選択して配合することができる。前記皮膚外用剤は、その剤型を特に制限するものではなく、当該技術分野において知られている多様な形態の剤型に配合することができる。剤型の例としては、軟膏、ローション、可溶化剤、懸濁液、エマルジョン、クリーム、ジェル、スプレー、パフ剤、硬膏剤、パッチ剤又は塗布剤等がある。
【0030】
以下、実施例及び実験例等を通じて本発明をさらに詳述するが、下記実施例等は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範疇がこれらのみに限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]香料組成物の製造
下記表1の組成により香料組成物を製造した。
【0032】
【表1】

【0033】
[実験例1]香料組成物の生理的/心理的効果の測定
前記実施例1で製造された香料組成物を用いて、中枢神経系の脳波(EEG)アルファ波、自律神経系の平均心拍間隔(平均R−R間隔)、皮膚温度、皮膚電気抵抗等の生理信号を測定した。具体的な実験方法は以下のとおりである。
【0034】
1.被験者
健康で現在薬物の服用をしておらず、かつ臭盲でない20代〜30代の女性20名を対象に実験を実施した。実験の前日には無理な運動や過度の飲酒の摂取を自制させ、実験当日には中枢神経系と嗅覚の感覚に影響を与え得る喫煙、飲料及び薬物、ガムの摂取を控えさせた。成人女性を対象とした実験で、女性の性周期による香りに対する感覚の変化、女性の生理周期と気分に相関関係があるとの報告がなされたところがあるため、調査対象者の生理周期を考慮して実施した。
【0035】
2.実験試料
実験試料としては、表1の香料組成物(実施例1)と、比較例として、グレープフルーツオイル(比較例1、比重:0.845〜0.865、屈折率:1.471〜1.481)及びベルガモットオイル(比較例2、比重:0.862〜0.882、屈折率:1.455〜1.475)を使用し、香を使用しない場合を対照群として設定した。
【0036】
3.実験条件
実験は、本研究院で構築した嗅覚実験室(4.8m×3m×2.4m)で行われ、内部には、嗅覚の順応を軽減するための目的から、吸気及び排気施設となっている。また、被験者の実験参加度を最大化し、実験時に外部環境からの影響を排除するために、防音装置が設置されている。実験時、内部温度(25℃)、湿度(40%〜50%)及び照度(150Lx〜200Lx)は、一定に保たれるようにした。一つの条件に対する実験が終わった後には、被験者が香りに対する順応や疲労に対する影響がないように十分に休ませ、実験室内部を換気させた後、次の実験を実施した。
【0037】
4.実験方法
実験前に脳波及び生理信号センサーを取り付け、2分間の安静をとった後、被験者が目を閉じた状態で、試料を鼻の下1cm〜2cmの距離に置いて1分間提示した。香りに対する順序効果を排除するために、被験者ごとに香りの提示順序は無作為に実施した。香りを使用していない場合を除く3つの香りは、茶色の試薬瓶に汚染されていない清潔な綿を入れ、マイクロピペット(SOCOREX,SWISS)で1mlずつ垂らして使用した。香りを嗅いでいる間の生理的反応を測定し、香りを提示した後、主観的気分感に対する設問項目に回答してもらった。
【0038】
5.測定方法
脳波は、国際10−20電極配置法により、前頭葉、頭頂葉、側頭葉及び後頭葉の部位に脳波測定用電極(GRASS,USA)を付け、GRASS(USA)装置、MP 100 system(USA)、Acqknowledgeプログラム(USA)を利用して測定した。各測定部位間の抵抗値は10kΩ以下とし、Sampling rateは512Hzに設定した。
【0039】
生理信号の測定は、心電図(ECG:Electrocardiogram,CM5誘導法)は胸部に心電図電極を取り付け、皮膚温度(Skin temperature)と皮膚電気抵抗(Galvanic skin response)はそれぞれ左手の小指、左手の中指と薬指にセンサーを取り付けて測定した。生理信号の測定は、MP 100 systemとAcqknowledgeプログラムを利用し、Sampling rateは512Hzに設定している。
【0040】
主観的気分感は、Profile of Moods States(POMS:日本語版、65問)を翻訳して利用し、緊張、憂鬱、憤怒、活気、疲労、混乱の項目で、点数評価法により評価した。
【0041】
6.分析方法
脳波は、FFT法による電力スペクトルにより分析した後、周波数帯域に応じてα/(α+β+θ+δ)、β/(α+β+θ+δ)を求め、脳波マッピングプログラム(BrainMap 3D,(株)Neuromedi、韓国)を利用して、香りを嗅いでいる間の時間による脳波をマッピングした。心拍変化率(HRV)は、心電図で検出されたRポイントから平均R−R間隔を求め、FFT法による電力スペクトル解析により、各周波数帯域に応じてLF(Low frequency:0.04Hz〜0.08Hz),HF(High frequency:0.15Hz〜0.4Hz)の値を求めた。皮膚温度と皮膚電気抵抗は、波形の平均振幅値を求めた。各生理信号は、無香条件に対する各香りの条件の生理信号値を正規化させて(Normalized Sensitivity)比較分析した。
【0042】
実験条件による生理信号分析値と、香りの感性及び主観的な気分感に対する評価項目は、平均と標準偏差を求めた。統計的解析は、SPSSを利用して、ANOVA、t−testで検証した。
【0043】
7.実験結果
7.1.脳波測定結果
前記脳波−アルファ波の測定結果は、下記図1に示したとおりである。香りの種類による中枢神経反応を脳波で測定してアルファ波の活性を比較した結果、比較例1、実施例1においてアルファ波の活性の割合が高く、左脳よりは右脳においてアルファ波の活性度が高いものと示された。特に、実施例1の香料組成物は、全領域において均一にアルファ波の活性を示した。左脳よりも右脳でのアルファ波の活性度が高いということは、被験者に提示された香りが心地良く受け入れられているということであり、アルファ波が高く活性化される香りは、人体に弛緩及び鎮静、快適さを感じさせているということである。
【0044】
7.2.生理信号の測定結果
心拍変化率(平均R−R間隔)、皮膚温度、皮膚電気抵抗の測定結果は、それぞれ図2〜図4に示したとおりである。
【0045】
香りの種類による自律神経反応を比較した結果(図2参照)、平均R−R間隔は、比較例1、実施例1において対照群に比べて増加しているものと示された。特に、実施例1において、その間隔が大きいものと示された。平均R−R間隔が増加することは、心臓がゆっくりと動いているということであり、快適さ、安定感を感じていることを意味する。
【0046】
皮膚温度(図3参照)と皮膚電気抵抗(図4参照)においても、対照群に比べ、比較例及び実施例1において全体的に下がる傾向を見せ、特に、実施例1において最も低いものと示された。皮膚温度と皮膚電気抵抗が低くなるということは、生体活動が鎮静することにより快適さと安定感を感じていることを意味する。
【0047】
7.3.主観的評価
前記主観的評価に対する結果は、下記図5に示したとおりである。香りを3種提示した後に主観的気分感評価を実施した結果、対照群、比較例1、比較例2に比べて、実施例1の香料組成物が、緊張、憤怒、疲労、混乱の項目において点数が有意に低く示された。以上の結果から、実施例1の香料組成物は、ストレス緩和及び鎮静効果を示すことを確認することができる。
【0048】
[実施例2]ヘリクリサム抽出物を配合した化粧料組成物の製造
前記実施例1の香料組成物及びヘリクリサム抽出物を有効成分として含有するエッセンス剤型の化粧料を組成した。剤型の組成は、下記表2に示したとおりである。
【0049】
【表2】

【0050】
[実験例2]ヘリクリサム抽出物を配合した化粧料組成物の生理的/心理的効果の測定
ヘリクリサム抽出物を追加配合した化粧料組成物の生理的/心理的効果を客観的に評価するための実験を実施した。使用した試料と実験方法を除き、具体的な被験者、実験条件、測定及び分析方法等は、前記実験例1と同一である。
【0051】
1.被験者
実験例1と同一の被験者を対象とした。
【0052】
2.実験試料
キク科の一・二年草であるヘリクリサムを、水蒸気蒸留や水又は溶媒抽出等の方法でヘリクリサム抽出物を得た。ヘリクリサム抽出物の追加配合による相乗効果を確認するために、実施例2による化粧料組成物を使用した。
【0053】
3.実験条件
実験例1と同一の条件で実験を実施した。
【0054】
4.実験方法
実験前に脳波及び生理信号センサーを取り付け、2分間の安静をとった後、被験者が実施例2による化粧料組成物を顔に直接塗布した後の生理的反応を測定し、香りを提示した後、主観的気分感に対する設問項目に回答してもらった。
【0055】
5.測定方法
実験例1と同一の測定方法を使用した。
【0056】
6.分析方法
実験例1と同一の分析方法を使用した。
【0057】
7.実験結果
7.1.脳波測定結果
前記脳波−アルファ波の測定結果は、図1に、実施例1の結果と併せて示したとおりである。
【0058】
試料による中枢神経反応を脳波で測定してアルファ波の活性を比較した結果、実施例2が実施例1よりもアルファ波の活性の割合が高いものと示された。また、左脳と右脳の全領域において均一にアルファ波の活性を見せ、左脳よりは右脳においてアルファ波の活性度が高いものと示された。アルファ波が高く活性化される香りは、人体に弛緩及び鎮静、快適さを感じさせているということであり、その活性の割合が実施例2においてより高く測定されていることから見て、ヘリクリサム抽出物を添加することにより、その効果が上昇したことを知ることができる。
【0059】
7.2.生理信号の測定結果
実施例1と同一の方法で、自律神経系の平均心拍間隔(平均R−R間隔)、皮膚温度、皮膚電気抵抗等の生理信号を測定し、その結果を下記図2〜図4に示した。
【0060】
試料による自律神経反応を比較した結果、平均R−R間隔は、実施例2において実施例1に比べ増加している。平均R−R間隔が増加することは、心臓がゆっくりと動いているということであり、快適さ、安定感を感じていることを意味する。
【0061】
皮膚温度と皮膚電気抵抗においても、対照群並びに比較例及び実施例1に比べ、実施例2において低く観察された。皮膚温度と皮膚電気抵抗が低くなるということは、生体活動が鎮静することにより快適さと安定感を感じていることを意味し、実施例1よりも実施例2の内容物が、より快適さ、安定感を感じさせることを知ることができる。
【0062】
7.3.主観的評価
前記主観的評価に対する結果は、下記図5に示したとおりである。香料及びヘリクリサム抽出物が適用された化粧料組成物を提示した後に主観的気分感評価を実施した結果、対照群、比較例1、比較例2及び実施例1の香料組成物よりも実施例2の化粧料組成物が、緊張、怒り、疲労、混乱の項目において点数が有意に低く示され、主観的にも快適さを感じさせる組成物であることを知ることができた。
【0063】
また、下記組成により、多様な剤型の化粧品を製造した。
【0064】
[剤型例1]栄養化粧水(ミルクローション)
下記表3のとおり、実施例1の組成物を含有する栄養化粧水を通常の方法によって製造した。
【0065】
【表3】

【0066】
[剤型例2]柔軟化粧水(スキンローション)
下記表4のとおり、実施例2の組成物を含有する柔軟化粧水を通常の方法によって製造した。
【0067】
【表4】

【0068】
[剤型例3]栄養クリーム
下記表5のとおり、実施例2の組成物を含有する栄養クリームを通常の方法によって製造した。
【0069】
【表5】

【0070】
[剤型例4]マッサージクリーム
下記表6のとおり、実施例2の組成物を含有するマッサージクリームを通常の方法によって製造した。
【0071】
【表6】

【0072】
[剤型例5]パック
下記表7のとおり、実施例2の組成物を含有するパックを通常の方法によって製造した。
【0073】
【表7】

【0074】
[剤型例6]ジェル
下記表8のとおり、実施例2の組成物を含有するジェルを通常の方法によって製造した。
【0075】
【表8】

【0076】
[剤型例7]油中水乳化型メイクアップ化粧料
下記表9のとおり、実施例2の組成物を含有する油中水乳化型メイクアップ化粧料を通常の方法によって製造した。
【0077】
【表9】

【0078】
[剤型例8]2ウェイ、粉末化粧料
下記表10のとおり、実施例2の組成物を含有する2ウェイ、粉末化粧料を通常の方法によって製造した。
【0079】
【表10】

【0080】
前記実施例が図示及び説明されたが、当業者は、請求項に開示された精神及び範囲内から逸脱しないよう、形態及び細部事項において多様な変化を与えることができると理解されなければならない。
【0081】
これに加え、本発明の核心的な範囲を逸脱することなく、本発明の示唆に特別な状況又は材料を適用して多様な変形をすることができる。それゆえ、本発明は、本発明を遂行する最善の形態として開示された特定の実施例に限定されるものではなく、本発明は、請求の範囲に該当するあらゆる実施を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料組成物であって、
グレープフルーツオイル、及び、
ベルガモットオイル
を含有し、
前記香料組成物は、パインオイル、レモンオイル、サイプレスオイル、ローズオイル、及びアルモワーズオイルからなる群より選択される一つ以上をさらに含有する香料組成物。
【請求項2】
前記グレープフルーツオイルの含量は、香料組成物全体の重量を基準に30重量%〜70重量%であり、前記ベルガモットオイルの含量は、香料組成物全体の重量を基準に10重量%〜30重量%であることを特徴とする、請求項1記載の香料組成物。
【請求項3】
前記パインオイル、レモンオイル、サイプレスオイル、ローズオイル及びアルモワーズオイルからなる群より選択される一つ以上の含量は、香料組成物全体の重量を基準に0.1重量%〜50重量%であることを特徴とする、請求項2記載の香料組成物香料組成物。
【請求項4】
前記香料組成物は、組成物全体の重量を基準に、パインオイル1重量%〜20重量%、レモンオイル1重量%〜20重量%、サイプレスオイル1重量%〜20重量%、ローズオイル0.1重量%〜5重量%、及びアルモワーズオイル0.1重量%〜5重量%を含有することを特徴とする、請求項2記載の香料組成物。
【請求項5】
前記組成物は、ストレスの緩和又は心身安定用であること特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の香料組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の香料組成物を含有する化粧料組成物。
【請求項7】
前記香料組成物の含量は、化粧料組成物全体の重量を基準に0.001重量%〜10.0重量%であることを特徴とする、請求項6記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記香料組成物は、ヘリクリサム抽出物をさらに含有することを特徴とする、請求項6記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記ヘリクリサム抽出物の含量は、香料組成物全体の重量を基準に0.001重量%〜1.0重量%であることを特徴とする、請求項8記載の化粧料組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−521416(P2012−521416A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501932(P2012−501932)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001772
【国際公開番号】WO2010/110579
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】