スパークプラグ及びその製造方法
【課題】 釉薬中の含有Pb量を大幅に削減でき、ひいては高まりつつある環境保護への動きにも適合したスパークプラグを提供する。
【解決手段】 スパークプラグ100の釉薬層2dにおいて、アルカリ金属成分の合計含有量範囲を12重量%以下(0重量%を含む)の範囲に留め、また、B成分の含有量範囲をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%に留めつつ、Ti及びZrをそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%の割合で配合する。
【解決手段】 スパークプラグ100の釉薬層2dにおいて、アルカリ金属成分の合計含有量範囲を12重量%以下(0重量%を含む)の範囲に留め、また、B成分の含有量範囲をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%に留めつつ、Ti及びZrをそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%の割合で配合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は本発明はスパークプラグとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグは、一般に、接地電極が取り付けられる主体金具の内側に、アルミナ系セラミック等で構成された絶縁体が配置され、その絶縁体の内側に中心電極が配置された構造を有する。絶縁体は主体金具の後方側開口部から軸方向に突出し、その突出部の内側に端子金具が配置され、これがガラスシール工程により形成される導電性ガラスシール層や抵抗体等を介して中心電極と接続される。そして、その端子金具を介して高圧を印加することにより、接地電極と中心電極との間に形成されたギャップに火花放電が生ずることとなる。
【0003】
ところが、プラグ温度が高くなったり、周囲の湿度が上昇したりするなどの条件が重なると、高圧印加してもギャップに飛火せず、絶縁体突出部の表面を回り込む形で端子金具と主体金具との間で放電する、いわゆるフラッシュオーバ現象が生じることがある。そのため、一般に使用されているほとんどのスパークプラグにおいては、主にこのフラッシュオーバ現象防止のために絶縁体表面に釉薬層が形成されている。他方、釉薬層は、絶縁体表面を平滑化して汚染を防止したり、化学的あるいは機械的強度を高めるといった役割も果たす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁体への釉薬層の形成は、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布し、これを焼成する(「釉焼」と呼ばれる)ことにより行われている。スパークプラグ用のアルミナ系絶縁体の場合、焼成済みの絶縁体に対し釉焼温度1000〜1100℃で後焼付けにより釉薬層の形成を行うので、ケイ酸塩ガラスに比較的多量のPbOを配合して軟化温度を低下させた鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬が従来より使用されている。しかしながら、これには次のような欠点がある。
(1)下地となるアルミナ系絶縁材料と比較して線膨張係数が小さく、得られる釉薬層にヒビ割れ等が生じやすい。
(2)PbOを相当量配合しているにも拘わらず、釉焼温度が依然1000℃以上と高い。スパークプラグの製造工程では、工数削減のためガラスシール工程時に釉焼も同時に行うことが多いが、釉焼温度が上記のように高いと端子金具や中心電極の酸化が進みやすくなる難点がある。なお、釉焼温度をさらに低下させるため、Na2O等のアルカリ金属酸化物を配合することが考えられるが、釉薬中のアルカリ金属成分の含有量が過度に増大すると絶縁性の低下を引き起こし、フラッシュオーバを生じやすくなる問題がある。
(3)環境保護に対する関心が地球規模で高まりつつある近年では、Pbを含有する釉薬は次第に敬遠されるようになってきている。例えばスパークプラグが多量に使用される自動車業界においては、廃棄スパークプラグによる環境への影響を考慮して、Pb含有釉薬を使用したスパークプラグの使用は将来全廃しようとの検討も進められている。
【0005】
本発明の課題の第一は、従来の釉薬と比較して低温で釉焼可能であり、かつ絶縁性も高い釉薬層を絶縁体上に形成したスパークプラグと、その製造方法とを提供することにある。また、課題の第二は、釉薬中の含有Pb量を大幅に削減でき、ひいては高まりつつある環境保護への動きにも適合したスパークプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明のスパークプラグの第一の構成(参考発明)は、中心電極と、その中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて中心電極と対向するように配置された接地電極と、中心電極と主体金具との間において、中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有する。そして、上記課題を解決するために、該釉薬層を構成する釉薬が、被酸化元素成分が主にSi、B、Zn及びBaと、Na、K及びLiから選ばれる2種(以下、この2種の成分を共添加アルカリ金属成分という)とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%含有するとともに、前記共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%含有することを特徴とする。
【0007】
上記第一の構成に使用される表記組成の釉薬は、下地の絶縁体が例えばアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、これとの線膨張係数の差が比較的小さいので、得られる釉薬層にヒビ割れ等が生じにくい。また、アルカリ金属成分の含有量が比較的高めに設定されていることから、従来の鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬よりも軟化温度が低く、釉焼温度を800〜950℃と低温化できる。従って、前述のガラスシール工程と同時に釉焼を行う場合も、中心電極や後述する端子金具等に酸化が生じにくい。
【0008】
また、アルカリ金属成分の含有量が高いにも拘わらず、絶縁性が良好である。これに関しては、1種類のアルカリ金属成分を単独添加するのではなく、Na、K、Liから選ばれる2種類を共添加している点が重要である。すなわち、本発明者の検討によれば、アルカリ金属成分を単独で配合した場合は、その含有量の増大に伴い釉薬の導電率が急増し、絶縁性が著しく損なわれることにつながるが、2種類のものを組み合わせて配合すると、意外にも、その合計含有量がかなり多くなっても釉薬の導電率がそれほど増加せず、良好な絶縁性が確保できることがわかった。その結果、絶縁性をそれほど低下させずにアルカリ金属成分の含有量を増大させることができ、結果として耐フラッシュオーバ性の確保と釉焼温度の低温化という2つの目的を同時に達成することが可能となるのである。なお、アルカリ金属成分の共添加による導電性抑制の効果が損なわれない範囲で、第三成分以降の他のアルカリ金属成分を配合することも可能である。
【0009】
釉薬中のSi成分含有量は、SiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%に設定される。下地の絶縁体がアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、該Si成分含有量が18重量%未満になると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる。他方、該Si成分含有量が40重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が逆に小さくなり過ぎ、釉薬層に貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる。なお、該Si成分含有量は、望ましくは25〜30重量%の範囲で設定するのがよい。
【0010】
また、B成分含有量は、B2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%に設定される。該B成分含有量が25重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度(前述の800〜950℃)での釉焼が不能となる場合がある。他方、B成分含有量が40重量%を超えると、得られる釉薬層中に分相を生じやすくなり、釉薬層が失透したり、絶縁性の低下あるいは下地との線膨張係数不適合といった問題につながる場合がある。なお、該B成分含有量は、望ましくは30〜35重量%の範囲で設定するのがよい。
【0011】
Zn成分含有量は、ZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%の範囲で設定される。該Zn成分含有量が10重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。他方、該Zn成分含有量が25重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる場合がある。なお、該Zn成分の含有量は、望ましくは12〜18重量%の範囲で設定するのがよい。
【0012】
また、Ba成分含有量は、BaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%の範囲で設定される。Ba成分含有量が7重量%未満になると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれることにつながる場合がある。他方、Ba成分含有量が20重量%を超えると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。なお、該Ba成分の含有量は、望ましくは8〜15重量%の範囲で設定するのがよい。
【0013】
次に、釉薬中の共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それらのうちの2種がそれぞれ3〜9重量%含有される。少なくともいずれかの成分の含有量が3重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。また、少なくともいずれかの成分の含有量が9重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる場合がある。
【0014】
また、釉薬中の共添加アルカリ金属成分の合計含有量は、酸化物換算にて6〜14重量%の範囲で調整するのがよい。共添加アルカリ金属成分の合計含有量が6重量%未満になると釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。他方、該合計含有量が14重量%を超えると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。
【0015】
さらに、釉薬中の共添加アルカリ金属成分をなす2種の成分のうち、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oにそれぞれ酸化物換算した場合に、その一方のもののモル含有量をA1、他方のもののモル含有量をA2としたときのA1/A2の値を1.0〜2.0の範囲で調整するのがよい。A1/A2の値がこの範囲を上側ないし下側に外れると、アルカリ金属成分の共添加による導電性抑制の効果を十分達成できず、ひいては釉薬の絶縁性が低下して耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。なお、A1/A2の値は望ましくは1.5〜2.0の範囲で調整するのがよい。
【0016】
なお、アルカリ金属成分含有量の増加に伴う釉薬の導電性上昇を抑えるには、共添加アルカリ金属成分として、NaとKの2種を用いることがとりわけ望ましい。この場合、Na成分をNa2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%、K成分をK2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%含有させるのがよい。
【0017】
また、釉薬中のカチオン成分、すなわちSi成分、B成分、Zn成分、Ba成分及び共添加アルカリ金属成分の、各酸化物換算した値における合計含有量は、95重量%以上となっていることが望ましい。これらの合計含有量が95重量%未満になると釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。なお、該合計含有量は、望ましくは97重量%以上になっているのがよい。
【0018】
次に、釉薬には、補助カチオン成分として、Al、Ca、Fe、Zr、Ti、Sr、Mg、Bi、Ni、Sn、P及びMnの1種又は2種以上を、AlはAl2O3に、CaはCaOに、FeはFe2O3に、ZrはZrO2に、TiはTiO2に、SrはSrOに、MgはMgOに、BiはBi2O3に、NiはNiOに、SnはSnO2に、PはP2O5に、MnはMnOにそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で5重量%以下の範囲で含有させることができる。これらの成分は、各種目的に応じて積極的に添加することもできるし、原料(あるいは、後述する釉薬スラリーの調製時に配合する粘土鉱物)や溶融工程における耐火材等からの不純物(あるいはコンタミ)として不可避に混入する場合もある。なお、釉薬の原料におけるFe成分源としては、Fe(II)イオン系のもの(例えばFeO)とFe(III)イオン系のもの(例えばFe2O3)とのいずれも使用可能であるが、最終的な釉薬層中のFe成分の含有量は、Feイオンの価数に関係なくFe2O3に換算した値で表示するものとする。
【0019】
上記補助カチオン成分の合計含有量が5重量%を超えると、主カチオン成分の合計含有量95重量%以上を確保できなくなる。補助カチオン成分の合計含有量は、望ましくは3.0重量%以下とするのがよい。なお、以下の説明において、主カチオン成分と補助カチオン成分とを総称する場合に、単にカチオン成分と記すことがある。
【0020】
例えばAl成分は、5重量%以下の範囲で配合することで、釉薬の失透を抑制する効果を得ることができる。また、他の成分も、釉薬の軟化温度を調整するために適宜配合することができる。特にBi2O3の配合は、釉薬の軟化温度を下げる上で効果的である。
【0021】
また、釉薬は、Pb成分を実質的に含有しないか(ただし、釉薬原料等から不可避的に混入するものを除く)、含有していてもその含有量がPbO換算にて1.0重量%以下のものとすることができる。例えば、釉薬中にPb成分が価数の低いイオン(例えばPb2+)の形で含有されていると、釉薬層表面からのコロナ放電等によりこれが価数の高いイオン(例えばPb3+)に酸化され、釉薬層の絶縁性が低下して耐フラッシュオーバ性が損なわれる場合がある。他方、最近は環境保護への関心が高まりつつあることから、釉薬についても無鉛系の材料が模索されている。その点、本発明のスパークプラグに使用される釉薬は、前記カチオン成分がPb成分を含まないことから、例えば不可避不純物として含有される1.0重量%程度までのものを除けば、Pbを実質的に含有しないレベルにまで低減しても全く問題を生じないので、好都合であるといえる。すなわち、本発明の第二の課題が解決される。なお、Pbの含有量は望ましくは0.1重量%以下とするのがよい。
【0022】
次に、本発明のスパークプラグの第二の構成は、釉薬層を除くその要部は前記した第一の構成と同様である。そして、釉薬層を構成する釉薬が、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とする。
【0023】
この第二の構成は、次の4つの発明を含む。これら4つの発明は、任意の2以上のものを組み合わせて実施することもできる。
(第一発明)Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜38重量%とする(第二〜第四発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
(第二発明)ZrのZrO2換算重量含有率を3.4重量%以下とする(第一、第三及び第四発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
(第三発明)TiのTiO2換算重量含有率を1.5重量%以上とする(第一、第二及び第四発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
(第四発明)ZrのZrO2換算重量含有率をWZr 、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrを0.2〜10とする(第一〜第三発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
【0024】
上記本発明の第二の構成の作用・効果について、上記の第一〜第四発明の作用・効果を含め、以下に詳しく説明する。本発明の第二の構成のスパークプラグの要部をなす釉薬層においては、アルカリ金属成分の合計含有量範囲を12重量%以下(0重量%を含む)の範囲に留め、また、B成分の含有量範囲をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%に留めつつ、Ti及びZrをそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%の割合で配合した点に特徴がある。アルカリ金属成分の合計含有量及びB成分の含有量を上記の範囲に留めることにより、厚さが均一で気泡等の欠陥の少ない釉薬層をより形成しやすくできる効果を奏する。
【0025】
アルカリ金属成分とB成分との含有量を削減することにより、上記のような効果が得られる理由は、以下のように考えられる。すなわち、後述する本発明の製造方法において、釉薬粉末を釉薬スラリーとして調製する際に、アルカリ金属成分とB成分との配合量が多いと、これら成分が水等のスラリー溶媒中に溶出し、スラリーの粘度を上昇させる場合がある。スラリーの粘度が極端に高くなると(例えば1000mPa・sを超えて高くなると)、均一な釉薬粉末塗布層が得にくくなり、また、気泡等が巻き込まれる可能性も高くなる。しかしながら、上記のようなアルカリ金属成分とB成分との含有量範囲を選択することで、粘度が小さく流動性に富む釉薬スラリーを容易に調製することが可能となり、厚さが均一で欠陥の少ない釉薬層を得やすくなるものと考えられる。
【0026】
なお、アルカリ金属成分及びB成分の含有量が減少すれば、釉薬の軟化温度、すなわち釉焼温度が上昇することにつながるが、すでに説明した通り、この軟化温度の上昇を抑制するために従来は、多量のPbOを釉薬中に配合していた。しかしながら、上記第二の構成では、PbOに代えてTi及びZr系の酸化物成分を配合することで、釉薬の軟化温度上昇を抑制しつつPb成分の含有量を大幅に削減すること、具体的にはPbO換算にて0.1重量%以下とすることに成功している。従って、前記した本発明の第二の課題が解決される。なお、Pb成分は、釉薬原料等から不可避的に混入するものを除いて実質的に含有されないことがさらに望ましい。
【0027】
また、下地の絶縁体が例えばアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、これとの線膨張係数の差が比較的小さいので、得られる釉薬層にヒビ割れ等が生じにくい。そして、従来の鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬よりも軟化温度が低く、釉焼温度を800〜950℃と低温化できる。従って、前述のガラスシール工程と同時に釉焼を行う場合も、中心電極や後述する端子金具等に酸化が生じにくい。さらに、アルカリ金属成分の含有量が削減されるので、釉薬層の絶縁性(ひいては耐フラッシュオーバ性)が良好である。また、Ti及びZr系の酸化物成分を配合することにより、得られる釉薬層の耐水性あるいは耐薬品性が改善され、例えば釉薬層中のアルカリ金属成分が含有されている場合でも、その溶出が抑制されて釉薬層の耐電圧性能向上に寄与する。Zr成分に関しては、釉薬層の耐薬品性改善効果がTi成分に比して一層顕著である。なお、ここで「耐水性が良好」とは、例えば形成された釉薬層からの水への成分溶出が起こりにくいことの他、釉薬フリットを水性スラリーの形で長時間放置した場合に、成分溶出によるスラリーの粘性が高くなる不具合を生じにくくなるということも意味する。
【0028】
第二の構成において、アルカリ金属成分の合計含有量が酸化物換算にて12重量%を超えると、釉薬スラリーの流動性改善効果、ひいては、得られる釉薬層厚さの均一化あるいは欠陥減少といった該第二の構成特有の効果が顕著に達成できなくなる。また、釉薬の絶縁性確保という点においても、上記範囲を超えてアルカリ金属成分を配合することは不利に作用する。一方、釉薬層Ti及びZr系の酸化物成分の配合により軟化点上昇を抑制しているため、上記アルカリ金属成分については、例えば釉薬原料等から不可避的に混入するものを除いて、実質的に含有されないレベルにまで削減することも可能である。例えば、その含有量を6重量%未満、望ましくは5重量%未満とすることで、アルカリ金属成分削減による絶縁性向上効果は一層顕著に達成できるといえる。なお、釉焼温度や溶融釉薬層の流動性改善等のため、ある程度のアルカリ金属成分を配合せざるを得ない場合、前記した第一の構成と同様に、2種以上のアルカリ金属成分を共添加することが、絶縁性向上の上でより有効である。
【0029】
次に、Ti及びZrの合計含有量が酸化物換算した重量にて2重量%未満になると、釉薬の軟化点上昇抑制効果が不足し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。一方、該合計含有量が10重量%を超えると、釉焼により得られる釉薬層が失透しやすくなる不具合を生ずる。また、Ti及びZrの酸化物は、適量配合した場合に、例えば他の酸化物成分との共晶反応等により釉薬の軟化温度低下に寄与するが、これら酸化物は単独では本質的に高融点酸化物であり、合計含有量が10重量%を超えると、釉薬の軟化点が逆に上昇して所期の温度での釉焼が不能となる不具合を招くこともある。Ti及びZrの酸化物換算による合計含有量は、望ましくは3〜8重量%とするのがよい。
【0030】
なお、Zr成分はTi成分よりも溶融釉薬の粘性を増加させる傾向がやや大きいため、溶融釉薬の流動性を高め、より均一で外観に優れた釉薬層を形成する観点においては、前記第二発明のようにZr成分の含有量を、ZrO2換算重量含有率にて3.4重量%以下、望ましくは3.0重量%以下とするのがよい。
【0031】
他方、Ti成分については、Zr成分と比較すれば溶融釉薬の粘性増加の影響が少ないため、前記第三発明のようにTiO2換算重量含有率を1.5重量%以上とすることで、より耐水性あるいは耐薬品性に優れた釉薬層を良好に形成することができる。
【0032】
なお、Ti成分が過剰になると、釉薬層の線膨張係数が低くなり過ぎて、下地の絶縁体が例えばアルミナ系絶縁材料で構成されている場合は、その線膨張係数の差により、釉薬層に貫入(クレージング)等の不具合が発生することもありうる。従って、このような不具合を解消しつつ耐水性あるいは耐薬品性に優れ、かつ溶融釉薬の流動性を高めて均一で外観の良好な釉薬層を得るには、Ti成分とZr成分とを共添加することが望ましい。具体的には、前記した第四発明のように、ZrのZrO2換算重量含有率をWZr 、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrを0.2〜10とするのがよい。WTi/WZrが0.2未満になると、Ti成分の含有量が相対的に不足しやすくなり、耐水性あるいは耐薬品性の向上効果を十分に得ようとした場合にZr成分の含有量を増やさざるを得なくなる。その結果、溶融釉薬の粘性が増大して釉薬層の外観不良を生じやすくなる場合がある。他方、WTi/WZrが10を超えると、耐水性あるいは耐薬品性の向上効果を十分に得ようとした場合に、Ti成分の含有量を増やさざるを得なくなる。その結果、釉薬層の線膨張係数が低くなり過ぎて、クレージング等が発生しやすくなる場合がある。なお、WTi/WZrは、望ましくは0.5〜7とするのがよい。
【0033】
上記第二の構成において、釉薬中のSi成分含有量は、SiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%に設定される。下地の絶縁体がアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、該Si成分含有量が20重量%未満になると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる。他方、該Si成分含有量が40重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が逆に小さくなり過ぎ、釉薬層に貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる。なお、該Si成分含有量は、前記第一発明のように38%重量以下とすることで、釉薬層への貫入等の欠陥発生を一層生じにくくすることができる。なお、Si成分含有量は、より望ましくは、SiO2酸化物換算重量にて、25〜35重量%の範囲で設定するのがよい。
【0034】
また、第二の構成において、B成分含有量は、B2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%に設定される。該B成分含有量が20重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度(前述の800〜950℃)での釉焼が不能となる。他方、B成分含有量が35重量%を超えると、釉薬スラリーの流動性改善効果、ひいては、得られる釉薬層厚さの均一化あるいは欠陥減少といった第二の構成特有の効果が顕著に達成できなくなる。また、得られる釉薬層中に分相を生じて釉薬層が失透したり、絶縁性の低下あるいは下地との線膨張係数不適合といった問題を生じやすくなる点においても、不利に作用する。なお、該B成分含有量は、望ましくは20〜28重量%の範囲で設定するのがよい。
【0035】
なお、釉薬スラリーの流動性改善効果を高める観点において、B成分とアルカリ金属成分の合計含有量(酸化物換算)は42重量%以下、望ましくは35重量%以下とするのがよい。また、釉焼温度の過度の上昇を抑制する観点において、アルカリ金属成分とTi及びZr成分との合計含有量(酸化物換算)は、8重量%以上に確保することが望ましい。
【0036】
次に、第二の構成においてZn成分含有量は、ZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%の範囲で設定される。該Zn成分含有量が15重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇しすぎ、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。他方、該Zn成分含有量が25重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる場合がある。なお、該Zn成分の含有量は、望ましくは15〜20重量%、さらに望ましくは17〜20重量%の範囲で設定するのがよい。
【0037】
また、第二の構成においてBa成分含有量は、BaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%の範囲で設定される。Ba成分含有量が10重量%未満になると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。他方、Ba成分含有量が23重量%を超えると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。なお、該Ba成分の含有量は、望ましくは12〜18重量%の範囲で設定するのがよい。
【0038】
なお、本発明のスパークプラグの第一の構成及び第二の構成においては、釉薬中における上記カチオン成分ないし補助カチオン成分は、主に酸化物の形で含有されることとなるが、非晶質のガラス相を形成するなどの要因により、酸化物による存在形態を直接は同定できないことも多い。この場合は、釉薬層中における、前記酸化物換算した値での元素成分の含有量が前述の範囲のものとなっていれば、本発明の範囲に属するものとみなす。
【0039】
ここで、絶縁体上に形成された釉薬層の各カチオン成分の含有量は、例えばEPMA(電子プローブ微小分析)やXPS(X線光電子分光)等の公知の微小分析方法を用いて同定できる。例えばEPMAを用いる場合、特性X線の測定には、波長分散方式とエネルギー分散方式のいずれを用いてもよい。また、絶縁体から釉薬層を剥離し、これを化学分析あるいはガス分析することにより組成同定する方法もある。
【0040】
また、上記釉薬層を有する本発明のスパークプラグは、絶縁体の貫通孔内において、中心電極と一体に、又は導電性結合層を間に挟んで中心電極と別体に設けられた軸状の端子金具部を備えたものとして構成できる。この場合、該スパークプラグ全体を約500℃に保持し、絶縁体を介して端子金具部と主体金具との間で通電することにより絶縁抵抗値を測定することができる。そして、高温での絶縁耐久性を確保するために、この絶縁抵抗値は200MΩ以上が確保されていることが、フラッシュオーバ等の発生を防止する上で望ましい。
【0041】
図8は、その測定系の一例を示すものである。すなわち、スパークプラグ100の端子金具13側に直流定電圧電源(例えば電源電圧1000V)を接続するとともに主体金具1側を接地し、加熱炉中にスパークプラグ100を配置して500℃に加熱した状態で通電を行う。例えば、電流測定用抵抗(抵抗値Rm)を用いて通電電流値Imを測定する場合を考えると、通電電圧をVSとして、測定すべき絶縁抵抗値Rxは、(VS/Im)−Rmにて求めることができる(図では、通電電流値Imを、電流測定用抵抗の両端電圧差を増幅する差動増幅器の出力により測定している)。
【0042】
また、絶縁体は、Al成分をAl2O3に酸化物換算した重量にて85〜98重量%含有するアルミナ系絶縁材料で構成することができる。この場合、釉薬は、20〜350℃の温度範囲における釉薬の平均の線膨張係数が、50×10−7/℃〜85×10−7/℃の範囲のものとなっていることが望ましい。線膨張係数がこの下限値より小さくなっていると、釉薬層に貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる場合がある。他方、線膨張係数がこの上限値より大きくなっていると、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる。なお、上記線膨張係数は、より望ましくは60×10−7/℃〜80×10−7/℃の範囲のものとなっているのがよい。
【0043】
ここで、釉薬の線膨張係数は、釉薬層と略同一組成となるように原料を配合・溶解して得たガラス質の釉薬バルク体から試料を切り出し、これを用いて公知のディラトメータ法等により測定した値により推定することができる。また、絶縁体上の釉薬層の線膨張係数は、例えばレーザ干渉計や原子間力顕微鏡等を用いて測定することが可能である。
【0044】
次に、上記スパークプラグの第一の構成は、以下の本発明の製造方法の第一により製造することができる。すなわち、該方法は、カチオン成分としてのSi、B、Zn及びBaと、Na、K及びLiから選ばれる2種(共添加アルカリ金属成分)との各成分源となる成分源粉末を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、BaをBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%となるように配合するとともに、共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%配合して混合後、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を絶縁体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉末堆積工程と、その絶縁体を800〜950℃の温度範囲にて焼成することにより、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす釉焼工程と、を含む。
【0045】
また、上記スパークプラグの第二の構成は、以下の本発明の製造方法の第二により製造することができる。すなわち、該方法は、主カチオン成分としてのSi、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の各成分源となる成分源粉末を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有するものとなるように配合して混合後、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を絶縁体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉末堆積工程と、その絶縁体を800〜950℃の温度範囲にて焼成することにより、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす釉焼工程と、を含むことを特徴とする。
【0046】
なお、各成分の成分源粉末(カチオン成分の成分源粉末のほか、補助カチオン成分を含有させる場合には、その成分源粉末も含む)としては、それら成分の酸化物(複合酸化物でもよい)の他、水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の各種無機系材料粉末を使用できる。これら無機系材料粉末は、いずれも加熱・溶融により酸化物に転化できるものを使用する必要がある。また、急冷は、溶融物を水中に投じる方法の他、溶融物を冷却ロール表面に噴射してフレーク状の急冷凝固物を得る方法も採用できる。
【0047】
釉薬粉末は、上記フリットを水又は溶媒中に分散させた釉薬スラリーとして調製可能である。この場合、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布し乾燥することで、釉薬粉末堆積層を該釉薬スラリーの塗布層として形成できる。なお、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布する方法としては、釉薬スラリーを噴霧ノズルから絶縁体表面に噴霧する方法を用いると、均一な厚さの釉薬粉末堆積層を簡単に形成でき、その塗布厚さの調整も容易である。
【0048】
釉薬スラリーには、形成した釉薬粉末堆積層の形状保持力を高める目的で、適量の粘土鉱物や有機バインダーを配合できる。粘土鉱物は、含水アルミノケイ酸塩を主体に構成されるものを使用でき、例えばアロフェン、イモゴライト、ヒシンゲライト、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、バーミキュライト、ドロマイト等(あるいはそれらの合成物)の1種又は2種以上を主体とするものを使用できる。また、含有される酸化物系成分の観点においては、SiO2及びAl2O3に加え、Fe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O及びK2O等の1種又は2種以上を主に含有するものを使用することができる。
【0049】
本発明のスパークプラグは、絶縁体の軸方向に形成された貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が固定され、同じく他方の端部側に中心電極が固定されるとともに、該貫通孔内において端子金具と中心電極との間に、それらを電気的に接合するための、主にガラスと導電性材料との混合物からなる焼結導電材料部(例えば導電性ガラスシール層や抵抗体)が形成されたものとして構成できる。これを製造する場合、次のような工程を含む方法を採用できる。・組立体製造工程:絶縁体の貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が配置され、同じく他方の端部側に中心電極が配置されるとともに、該貫通孔内において端子金具と中心電極との間に、ガラス粉末と導電性材料粉末とを主体とする焼結導電材料原料粉末の充填層を形成した組立体を製造する。・釉焼工程:絶縁体の表面に釉薬粉末堆積層を形成した状態の組立体を、800〜950℃の温度範囲に加熱して、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす工程と、充填層中のガラス粉末を軟化させる工程とを同時に行う。・プレス工程:その加熱された組立体において、貫通孔内にて中心電極と端子金具とを相対的に接近させることにより、充填層をそれら中心電極と端子金具との間でプレスして焼結導電材料部となす。
【0050】
この場合、焼結導電材料部により端子金具と中心電極とが電気的に接合されるとともに、絶縁体貫通孔の内面とそれら端子金具及び中心電極との間が封着(シール)される。従って、上記釉焼工程とプレス工程とがガラスシール工程を形成することになる。該方法では、ガラスシール工程と釉焼工程とが同時になされるので効率的である。また、前述の釉薬を用いるため釉焼温度を800〜950℃と低くできるので、中心電極や端子金具の酸化による製造不良が発生しにくく、スパークプラグの製品歩留まりが向上する。
【0051】
この場合、釉薬の軟化温度は600〜700℃の範囲で調整するのがよい。軟化温度が700℃を超えると、950℃以上の釉焼温度が必要となり、中心電極や端子金具の酸化が進みやすくなる。他方、軟化温度が600℃未満になると、釉焼温度も800℃未満の低温に設定する必要が生ずる。この場合、良好なガラスシール状態が得られるよう、焼結導電材料部に使用するガラスも軟化温度の低いものを使用しなければならなくなる。その結果、完成したスパークプラグが比較的高温の環境下で長時間使用された場合に、焼結導電材料部中のガラスが変質しやすくなり、例えば焼結導電材料部が抵抗体を含む場合には、その負荷寿命特性などの性能の劣化につながる場合がある。
【0052】
なお、釉薬の軟化温度は、次のようにして測定したものをいう。すなわち、原料を配合・溶解して得たガラス質の釉薬バルク体を粉砕し、10μm〜100μm程度の粒径とする。これを再加熱しながら示差熱分析を行い、屈状点を表す最初の吸熱ピークの次に現われるピーク(すなわち第2番目に発生する吸熱ピーク)の温度をもって該軟化温度とする。また、絶縁体表面に形成された釉薬層の軟化温度については、釉薬層中の前記カチオン成分及び前記補助カチオン成分の含有量をそれぞれ分析して酸化物換算した組成を算出し、この組成とほぼ等しくなるように、各被酸化元素成分の酸化物原料を配合・溶解後、急冷してガラス試料を得、そのガラス試料の軟化点をもって当該形成された釉薬層の軟化点を推定するものとする。
【0053】
次に、上記釉薬層を形成すべき絶縁体は、アルミナを主成分とする絶縁材料であって、Na成分をNa2O換算にて0.07〜0.5重量%の範囲で含有する絶縁材料で構成することができる。なお、以下においてNa成分含有量と称した場合は、特に断らない限り全てNa2O換算した含有量を意味するものとする。
【0054】
近年、自動車エンジン等の内燃機関に使用されるスパークプラグにおいては、その絶縁体の材料として耐熱性に優れたアルミナ(Al2O3)系の材料が、古くから使用されている。上記のような絶縁材料の原料アルミナは、一般にはバイヤー(Bayer)法により製造されたもの(以下、バイヤーアルミナともいう)が使用されている。
【0055】
バイヤー法は、アルミニウム原鉱石であるボーキサイトからアルミナを湿式抽出する法であるが、抽出媒として比較的濃度の高い苛性ソーダ(NaOH)水溶液が使用される。そのため、得られるバイヤーアルミナは相当量のNa成分(ソーダ分)を含んだものとなるので、必要に応じて脱ソーダ処理が施された形で使用されている。そして、その脱ソーダの程度に応じて、例えばNa成分の含有量が0.05重量%以下のものを低ソーダアルミナ、同じく0.1〜0.2重量%程度のものを中ソーダアルミナ、それよりもNa成分の多いもの、例えば0.2重量%程度あるいはそれ以上のものを普通ソーダアルミナ等と通称している。
【0056】
ところで、アルミナ中に含有されるNa成分は高いイオン伝導性を示すため、その含有量が過剰になると、絶縁抵抗値、特に500℃以上の高温での絶縁抵抗値を低下させたり、あるいは高温での機械的強度を損ねたりするといった不具合を生ずる。そのため従来より、スパークプラグに使用されているアルミナ系絶縁材料は、なるべくNa成分の含有量の少ないものがよいとされ、そのNa成分含有量は0.05重量%以下の低い値に設定することが常識となっている。
【0057】
ここで、上述のようにNa成分含有量の低いアルミナ系絶縁体を製造するには、使用する原料アルミナも低ソーダ系のものを用いることが不可欠である。低ソーダ系のアルミナは前述の通り脱ソーダ工程が必要な分だけ高価であり、原料コストの観点からは必ずしも望ましいとはいえない側面がある。しかしながら、近年は自動車エンジン等の高出力化に伴い、スパークプラグの絶縁体に対しても、さらに高い耐電圧特性と耐熱性が要求されてきている。その結果、絶縁材料中のNa成分含有量に関する上記常識はますます揺るぎないものとなっており、低ソーダアルミナ使用による多少のコスト高も容認せざるを得ないというのが現状である。
【0058】
しかしながら本発明者は、スパークプラグ用アルミナ系絶縁材料のNa成分含有量について鋭意検討を行ったところ、これまで常識外とみなされていた上記Na成分含有量の高い組成範囲において、高温での絶縁抵抗や機械的強度等が意外にも低下せず、Na成分含有量がこれよりも低い従来の絶縁材料に匹敵する性能の絶縁材料が得られることを見い出したのである。さらに、本発明においては、釉薬層にNa、K、Liから選ばれる2種類が共添加されることで良好な絶縁性が確保されていることから、絶縁体を上記のようなNa成分含有量の高いアルミナ系セラミックで構成する上で有利であるともいえる。
【0059】
そして、Na成分含有量が上記のような範囲に設定されることで、原料となるアルミナ粉末も、Na成分含有量がNa2O換算にて0.07〜0.65重量%と高いものが使用できる(0.65重量%を超えると、得られる絶縁材料中のNa成分含有量を0.5重量%以下に維持できなくなる)。その結果、従来の低ソーダアルミナに代えて、はるかに安価な中ソーダアルミナや普通ソーダアルミナ等を使用することができるようになり、スパークプラグ用絶縁体ひいてはそれを用いたスパークプラグにおける劇的な製造コスト削減が実現される。
【0060】
なお、絶縁材料中のNa成分含有量を0.07重量%未満とするには、低ソーダアルミナ等のNa成分含有量の低いアルミナ粉末を使用しなければならず、従来の絶縁材料に対する原料コスト上の優位性が確保できなくなる。他方、Na成分含有量が0.5重量%を超えると、材料の絶縁抵抗の値が不十分となり、スパークプラグ用絶縁体に要求される耐電圧性能を満足できなくなる。絶縁材料中のNa成分含有量は、より望ましくは0.07〜0.25重量%とするのがよい。また、原料となるアルミナ粉末は、望ましくはNa成分含有量がNa2O換算にて0.07〜0.3重量%のものを使用するのがよい。
【0061】
上記絶縁材料の製造に使用するアルミナ粉末としては、バイヤー法により製造されたものを使用できる。なお、通常のバイヤーアルミナ粉末は、不可避不純物として含有されるものを除けば、Na成分以外のアルカリ金属成分(以下、非Naアルカリ金属成分という)をほとんど含まない。従って、このようなバイヤーアルミナ粉末を使用した場合、得られる絶縁材料中の非Naアルカリ金属成分の合計含有量は、それらの積極的な添加を行わない限り、酸化物換算にて0.05重量%以下のものとなる。
【0062】
また、本発明者がさらに鋭意検討したところ、バイヤー法により得られるアルミナ粉末には、粉末粒子の内部にもNa成分は含まれているが、苛性ソーダの溶液によって処理される関係上、粉末粒子の表層部にNa成分が濃化していることがわかった。そして、このような粉末粒子の表層部のNa成分は、焼成時に焼結助剤成分(後述の添加元素成分)とともに溶融してガラス相を作る。該ガラス相は、Na成分が固溶することで電気比抵抗が低下し、これが導電路として作用しする結果、材料の絶縁抵抗値や絶縁耐電圧の低下につながる問題がある。
【0063】
そして、これに鑑みて本発明者がさらに検討を行った結果、使用するアルミナ粉末は、粒子粉末の表層部に存在するNa成分の含有量が、Na2O換算にて0.01〜0.2重量%であるものを使用するのがよいことがわかった。粉末表層部のNa成分の含有量が0.2重量%を超えるアルミナ粉末を使用すると、得られる絶縁材料の絶縁抵抗値や絶縁耐電圧が不足する場合がある。また、粉末粒子の表層部に存在するNa成分の含有量を0.01重量%未満にするためには、結局は低ソーダアルミナ等のNa成分含有量の低いアルミナ粉末を使用しなければならないか、あるいはNa成分含有量の高いアルミナ粉末を用いる場合でも、粉末粒子表層部のNa成分を洗浄等により除去する工程が必要となり、従来の絶縁材料に対する原料コスト上の優位性が確保できなくなる。なお、粒子粉末の表層部に存在するNa成分の含有量は、より望ましくは0.01〜0.1重量%であるのがよい。
【0064】
ここで、「粉末粒子の表層部に存在するNa成分の含有量」とは、次のようにして測定した値を意味する。まず、測定対象となるアルミナ粉末中のNa成分の総含有量(単位:重量%)をICP分析や化学分析等により測定し、その値をNa2O換算してWNa1とする。次いで、アルミナ粉末100gを、温度90℃に保持した蒸留水1リットル中に攪拌を加えない状態で1hr浸漬する。その後、そのアルミナ粉末を分離回収して再度Na成分含有量(単位:重量%)を測定し、その値をNa2O換算してWNa2とする。そして、先に測定したWNa1からWNa2を減じた値WNa1−WNa2(単位:重量%)を、粉末粒子の表層部に存在するNa成分の含有量とする。
【0065】
この場合、得られる絶縁材料の組織は主に、アルミナ含有量が99重量%であるアルミナ系マトリックス相粒と、そのアルミナ系マトリックス相粒の粒界部に形成されたガラス相とによって構成されるものとなる。ここで、絶縁材料中のNa成分のうちガラス相中に存在するものの含有量WGNaは、Na2O換算にて0.4〜2重量%となっているのがよい。該WGNaが2重量%を超えると絶縁材料の絶縁抵抗値や絶縁耐電圧が不足する場合がある。また、0.4重量%未満とするためには、Na成分含有量の低いアルミナ粉末を使用しなければならず、従来の絶縁材料に対する原料コスト上の優位性が確保できなくなる。
【0066】
なお、上記WGNaは、本明細書においては近似的に以下のようにして算出される値を採用するものとする。まず、材料表面を研磨して、これを走査型電子顕微鏡(SEM)等により組織観察し、その組織画像の解析によりアルミナ系マトリックス相の面積率(材料中の体積率に相当)を測定して、その値をγAとする。次いで、ガラス相中の平均的なNa成分の重量濃度を、公知の微小組成分析法(例えば、EPMA(電子プローブ微小分析)やEDS(エネルギー分散型X線分光)あるいはWDS(波長分散型X線分光)等)により同定し、Na2O換算してNGNaとして求める。そして、材料がアルミナ系マトリックス相とガラス相とのみによって構成されており、かつ焼結によりほぼ完全に緻密化していると仮定する一方、アルキメデス法等により測定された材料の見かけ密度をρ0(単位:g/cm3)、アルミナ系結晶粒の密度をρ1(=3.97g/cm3)とすれば、材料単位体積当りに存在するガラス相の重量MGは、
MG=ρ0−ρ1・γA‥‥‥(1)
として求められるから、WGNaは、
WGNa=MG・NGNa×100
=(ρ0−ρ1・γA)・NGNa×100(重量%)‥‥‥(2)
により計算することができる。
【0067】
なお、ガラス相中の平均的なNa成分の重量濃度NGNaも、上記と同様の理由により、Na2O換算にて0.4〜2重量%となっているのがよい。
【0068】
次に、本発明の絶縁材料においては、Al2O3に換算した重量におけるAl成分含有量(以下、WAlと記す)を85〜98重量%の範囲で調整するのがよい。WAlが85重量%未満になると、材料の高温強度と耐電圧特性が不十分となる場合がある。なお、上記WAlは望ましくは90重量%以上とするのがよい。ただし、WAlが98重量%を超えると焼結助剤成分の量が相対的に少なくなりすぎて焼結体を緻密化させることが困難となり、緻密に焼結させようとすると焼結温度が上昇し、その結果アルミナ粒成長が助長され、却って強度が劣化する等の不具合を生ずる場合がある。それ故、該WAlは98重量%以下の範囲で調整するのがよい。
【0069】
また、本発明の絶縁材料においては、Si、Ca、Mg、Ba、Zn、B及びNaから選ばれる1種又は2種以上の添加元素成分を、SiはSiO2に、CaはCaOに、MgはMgOに、BaはBaOに、ZnはZnOに、BはB2O3に、NaはNa2Oに、それぞれ酸化物換算した重量にて合計で0.1〜15重量%含有させることができる。このような絶縁材料を製造するための原料粉末としては、アルミナ粉末85〜98重量部に対し、Si、Ca、Mg、Ba、Zn及びBを含有する添加元素系原料、SiはSiO2に、CaはCaOに、MgはMgOに、BaはBaOに、ZnはZnOに、BはB2O3に、NaはNa2Oに、それぞれ酸化物換算した場合の重量にて合計で0.1〜15重量部となるように配合したものが使用される。
【0070】
なお、添加元素系原料は、例えばSi、Ca、Mg、Ba及びZnの各成分についてはそれら成分の酸化物(複合酸化物でもよい)の他、水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の各種無機系原料粉末を使用できる。これら無機系原料粉末は、いずれも焼成により酸化物に転化できるものを使用する必要がある。また、B成分については、三酸化二ホウ素(B2O3)の他、オルトホウ酸(H3BO3)をはじめとする各種ホウ酸類、さらには絶縁体の主成分元素たるAlや、Ca、Mg、Ba、Zn等とのホウ酸塩等を使用することができる。
【0071】
上記添加元素成分は、焼成時に溶融して液相を生じ、緻密化を促進する焼結助剤として機能する。絶縁材料中の添加元素成分の、上記酸化物換算した重量での合計含有量(以下、W1と記す)が0.1重量%未満になると、焼結体を緻密化させることが困難となり、材料の高温強度と高温での耐電圧特性が却って不足する。一方、W1が15.0重量%を超えると材料の高温強度が損なわれることにつながる。それ故、添加元素成分の合計含有量W1は0.1〜15.0重量%とするのがよく、より望ましくは3.0〜10.0重量%とするのがよい。
【0072】
このうち、Ba成分とB成分とは、絶縁材料の高温強度を顕著に向上させる効果も有する。そして、Ba成分は、BaOに換算した重量(以下、WBaOと記す)にて0.02〜0.80重量%含有させるのがよい。WBaOが0.02重量%未満になると、BaO配合による高温強度向上の効果が顕著ではなくなる。また、WBaOが0.80重量%を超えると材料の高温強度が損なわれることにつながる。WBaOは望ましくは0.15〜0.50重量%の範囲で調整するのがよい。一方、B成分は、B2O3換算した重量(以下、WB2O3と記す)にて0.01〜0.75重量%含有させるのがよい。WB2O3が0.01重量%未満になると、WB2O3配合による高温強度向上の効果が顕著ではなくなる。また、WB2O3が0.75重量%を超えると材料の高温強度が損なわれることにつながる。WB2O3は望ましくは0.15〜0.50重量%の範囲で調整するのがよい。
【0073】
なお、添加元素成分を焼結助剤としてより有効に機能させるためには、Al2O3よりも低温に設定される所定の焼結温度にて、流動性の良好な液相を過不足なく発生させることが重要である。このためには、各成分を単独で配合するよりも、複数種類取り混ぜて配合することが有効である場合が多い。例えば、上記5種類の第一添加成分を全て酸化物の形で配合する場合は、最終的に得られる材料が、Si成分をSiO2に換算した重量にて1.50〜5.00重量%含有し、Ca成分をCaOに換算した重量にて1.20〜4.00重量%含有し、Mg成分をMgOに換算した重量にて0.05〜0.17重量%含有し、Ba成分をBaOに換算した重量にて0.15〜0.50重量%含有し、B成分をB2O3に換算した重量にて0.15〜0.50重量%含有するものとなっていることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、本発明の実施の形態を図面に示すいくつかの実施例を参照して説明する。(実施例1)図1及び図2は、本発明の第一の構成に係るスパークプラグの一実施例を示す。該スパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0075】
主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。なお、1eは、主体金具1を取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる工具係合部であり、六角状の軸断面形状を有している。
【0076】
次に、絶縁体2の軸方向には貫通孔6が形成されており、その一方の端部側から端子金具13が挿入・固定され、同じく他方の端部側から中心電極3が挿入・固定されている。また、該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層16,17を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。これら抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17とが焼結導電材料部を構成している。なお、抵抗体15は、ガラス粉末と導電材料粉末(及び必要に応じてガラス以外のセラミック粉末)との混合粉末を原料とし、後述のガラスシール工程においてこれを加熱・プレスすることにより得られる抵抗体組成物で構成される。なお、抵抗体15を省略して、一層の導電性ガラスシール層により端子金具13と中心電極3とを一体化した構成としてもよい。
【0077】
絶縁体2は、内部に自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有し、全体が以下の絶縁材料により構成されている。すなわち、該絶縁材料はアルミナを主体に構成され、Al成分を、Al2O3に換算した重量にて85〜98重量%(望ましくは90〜98重量%)含有するアルミナ系セラミック焼結体として構成される。
【0078】
Al以外の成分の具体的な組成としては下記のようなものを例示できる。
Si成分:SiO2換算重量で1.50〜5.00重量%;
Ca成分:CaO換算重量で1.20〜4.00重量%;
Mg成分:MgOに換算重量で0.05〜0.17重量%;
Ba成分:BaOに換算重量で0.15〜0.50重量%;
B成分:B2O3換算重量で0.15〜0.50重量%。
【0079】
図1に示すように、絶縁体2の軸方向中間には、周方向外向きに突出する突出部2eが例えばフランジ状に形成されている。そして、絶縁体2には、中心電極3(図1)の先端に向かう側を前方側として、該突出部2eよりも後方側がこれよりも細径に形成された本体部2bとされている。一方、突出部2eの前方側にはこれよりも細径の第一軸部2gと、その第一軸部2gよりもさらに細径の第二軸部2iがこの順序で形成されている。なお、本体部2bの外周面後端部にはコルゲーション部2cが形成されている。また、第一軸部2gの外周面は略円筒状とされ、第二軸部2iの外周面は先端に向かうほど縮径する略円錐面状とされている。
【0080】
他方、中心電極3の軸断面径は抵抗体15の軸断面径よりも小さく設定されている。そして、絶縁体2の貫通孔6は、中心電極3を挿通させる略円筒状の第一部分6aと、その第一部分6aの後方側(図面上方側)においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第二部分6bとを有する。図1に示すように、端子金具13と抵抗体15とは第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a内に挿通される。中心電極3の後端部には、その外周面から外向きに突出して電極固定用凸部3cが形成されている。そして、上記貫通孔6の第一部分6aと第二部分6bとは、図4(a)の第一軸部2g内において互いに接続しており、その接続位置には、中心電極3の電極固定用凸部3cを受けるための凸部受け面6cがテーパ面あるいはアール面状に形成されている。
【0081】
また、第一軸部2gと第二軸部2iとの接続部2hの外周面は段付面とされ、これが主体金具1の内面に形成された主体金具側係合部としての凸条部1cとリング状の板パッキン63を介して係合することにより、軸方向の抜止めがなされている。他方、主体金具1の後方側開口部内面と、絶縁体2の外面との間には、フランジ状の突出部2eの後方側周縁と係合するリング状の線パッキン62が配置され、そのさらに後方側にはタルク等の充填層61を介してリング状の線パッキン60が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側に押し込み、その状態で主体金具1の開口縁をパッキン60に向けて内側に加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固定されている。
【0082】
図4(a)及び図4(b)は絶縁体2のいくつかの例を示すものである。その各部の寸法を以下に例示する。
・全長L1:30〜75mm。
・第一軸部2gの長さL2:0〜30mm(ただし、突出部2eとの接続部2fを含まず、第二軸部2iとの接続部2hを含む)。
・第二軸部2iの長さL3:2〜27mm。
・本体部2bの外径D1:9〜13mm。
・突出部2eの外径D2:11〜16mm。
・第一軸部2gの外径D3:5〜11mm。
・第二軸部2iの基端部外径D4:3〜8mm。
・第二軸部2iの先端部外径D5(ただし、先端面外周縁にアールないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、該アール部ないし面取部の基端位置における外径を指す):2.5〜7mm。
・貫通孔6の第二部分6bの内径D6:2〜5mm。
・貫通孔6の第一部分6aの内径D7:1〜3.5mm。
・第一軸部2gの肉厚t1:0.5〜4.5mm。
・第二軸部2iの基端部肉厚t2(中心軸線Oと直交する向きにおける値):0.3〜3.5mm。
・第二軸部2iの先端部肉厚t3(中心軸線Oと直交する向きにおける値;ただし、先端面外周縁にアールないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、該アール部ないし面取部の基端位置における肉厚を指す):0.2〜3mm。
・第二軸部2iの平均肉厚tA((t2+t3)/2):0.25〜3.25mm。
【0083】
また、図1において、絶縁体2の主体金具1の後方側に突出している部分2kの長さLQは、23〜27mm(例えば25mm程度)である。さらに、絶縁体2の中心軸線Oを含む縦断面を取ったときに、絶縁体2の突出部分2kの外周面において、主体金具1の後端縁に対応する位置から、コルゲーション2cを経て絶縁体2の後端縁に至るまでの、その断面外形線に沿って測った長さLPは26〜32mm(例えば29mm程度)である。
【0084】
なお、図4(a)に示す絶縁体2における上記各部寸法は、例えば以下の通りである:L1=約60mm、L2=約10mm、L3=約14mm、D1=約11mm、D2=約13mm、D3=約7.3mm、D4=5.3mm、D5=4.3mm、D6=3.9mm、D7=2.6mm、t1=3.3mm、t2=1.4mm、t3=0.9mm、tA=1.15mm。
【0085】
また、図4(b)に示す絶縁体2は、第一軸部2g及び第二軸部2iがそれぞれ、図4(a)に示すものと比較してやや大きい外径を有している。各部の寸法は、例えば以下の通りである:L1=約60mm、L2=約10mm、L3=約14mm、D1=約11mm、D2=約13mm、D3=約9.2mm、D4=6.9mm、D5=5.1mm、D6=3.9mm、D7=2.7mm、t1=3.3mm、t2=2.1mm、t3=1.2mm、tA=1.65mm。
【0086】
次に、図3に示すように、絶縁体2の表面、具体的にはコルゲーション部2cを含む本体部2bの外周面と、第一軸部2gの外周面とに釉薬層2dが形成されている。釉薬層2dの形成厚さは10〜150μm、望ましくは20〜50μmとされる。なお、図1に示すように、本体部2bに形成された釉薬層2dは、その軸方向前方側が主体金具1の内側に所定長入り込む形で形成される一方、後方側は本体部2bの後端縁位置まで延びている。他方、第一軸部2gに形成された釉薬層2dは、主体金具1の内周面との接触領域を包含するように、例えばその軸方向中間位置から、板パッキン63が当接する接続部2hに至る領域に形成されている。
【0087】
次に、釉薬層2dは、主カチオン成分がSi、B、Zn及びBaと、Na、K及びLiから選ばれる2種(共添加アルカリ金属成分)とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%含有するとともに、共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%含有する釉薬にて構成されている。
【0088】
具体的には、該釉薬は、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%、Na成分をNa2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%、K成分をK2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%それぞれ含有し、Si成分、B成分、Zn成分、Ba成分及び共添加アルカリ金属成分の、各酸化物換算した値における合計含有量は95重量%以上とされる。この釉薬は、Pb成分を実質的に含有しないか、含有していてもその含有量がPbO換算にて1.0重量%以下のものとなっている。また、該釉薬には、補助カチオン成分として、Al、Ca、Fe、Zr、Ti、Sr、Mg、Bi、Ni、Sn、P及びMnの1種又は2種以上を、AlはAl2O3に、CaはCaOに、FeはFe2O3に、ZrはZrO2に、TiはTiO2に、SrはSrOに、MgはMgOに、BiはBi2O3に、NiはNiOに、SnはSnO2に、PはP2O5に、MnはMnOにそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で5重量%以下の範囲で含有されていてもよい。
【0089】
次に、中心電極3及び接地電極4の各本体部3a及び4aはNi合金等で構成されている。また、中心電極3の本体部3aの内部には、放熱促進のためにCuあるいはCu合金等で構成された芯材3bが埋設されている。一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、Ir、Pt及びRhの1種又は2種以上を主成分とする貴金属合金を主体に構成される。図2(b)に示すように、中心電極3の本体部3aは先端側が縮径されるとともにその先端面が平坦に構成され、ここに上記発火部を構成する合金組成からなる円板状のチップを重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等により溶接部Wを形成してこれを固着することにより発火部31が形成される。また、対向する発火部32は、発火部31に対応する位置において接地電極4にチップを位置合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部Wを形成してこれを固着することにより形成される。なお、これらチップは、例えば表記組成となるように各合金成分を配合・溶解することにより得られる溶解材、又は合金粉末あるいは所定比率で配合された金属単体成分粉末を成形・焼結することにより得られる焼結材により構成することができる。なお、発火部31及び対向する発火部32は少なくとも一方を省略する構成としてもよい。
【0090】
上記スパークプラグ100は、例えば下記のような方法で製造される。まず、絶縁体2であるが、これは原料粉末として、アルミナ粉末と、Si成分、Ca成分、Mg成分、Ba成分及びB成分の各成分源粉末を、焼成後に酸化物換算にて前述の組成となる所定の比率で配合し、所定量の結合剤(例えばPVA)と水とを添加・混合して成形用素地スラリーを作る。なお、各成分源粉末は、例えばSi成分はSiO2粉末、Ca成分はCaCO3粉末、Mg成分はMgO粉末、Ba成分がBaCO3粉末、B成分がH3BO3粉末の形で配合できる。なお、H3BO3は溶液の形で配合してもよい。
【0091】
成形用素地スラリーは、スプレードライ法等により噴霧乾燥されて成形用素地造粒物とされる。そして、成形用素地造粒物をラバープレス成形することにより、絶縁体の原形となるプレス成形体を作る。図9は、ラバープレス成形の工程を模式的に示している。ここでは、内部に軸方向に貫通するキャビティ301を有するゴム型300が使用され、そのキャビティ301の下側開口部に下パンチ302が嵌め込まれる。また、下パンチ302のパンチ面には、キャビティ301内においてその軸方向に延びるとともに、絶縁体2の貫通孔6(図1)の形状を規定するプレスピン303が一体的に凸設されている。
【0092】
この状態でキャビティ301内に、所定量の成形用素地造粒物PGを充填し、キャビティ301の上側開口部を上パンチ304で塞いで密封する。この状態でゴム型300の外周面に液圧を印加し、キャビティ301の造粒物PGを該ゴム型300を介して圧縮することにより、図10に示すようなプレス成形体305を得る。なお、成形用素地造粒物PGは、プレス時における造粒物PGの粉末粒子への解砕が促進されるよう、該成形用素地造粒物PGの重量を100重量部として、0.7〜1.3重量部の水分が添加された後、上記プレス成形が行われる。成形体305は、外面側がグラインダ切削等により加工されて、図1の絶縁体2に対応した外形形状に仕上げられ、次いで温度1400〜1600℃で焼成されて絶縁体2となる。
【0093】
他方、釉薬スラリーの調製を以下のようにして行う。まず、Si、B、Zn、Ba、Na及びKの各成分源となる成分源粉末(例えば、Si成分はSiO2粉末、B成分はH3BO3粉末、ZnはZnO粉末、Ba成分はBaCO3粉末、NaはNa2CO3粉末、KはK2CO3粉末)を、Si成分はSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分はB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、BaをBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%となるように配合するとともに、前記共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%配合して混合する。次いで、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕することにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリットにカオリン、蛙目粘土等の粘土鉱物と有機バインダーとを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより釉薬スラリーを得る。
【0094】
そして、図10に示すように、この釉薬スラリーSを噴霧ノズルNから絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、釉薬粉末堆積層としての釉薬スラリー塗布層2d’を形成し、これを乾燥する。
【0095】
次に、この釉薬スラリー塗布層2d’を形成した絶縁体2への、中心電極3と端子金具13との組付け、及び抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17との形成工程の概略は以下の通りである。まず、図11(a)に示すように、絶縁体2の貫通孔6に対し、その第一部分6aに中心電極3を挿入した後、(b)に示すように導電性ガラス粉末Hを充填する。そして、(c)に示すように、貫通孔6内に押さえ棒28を挿入して充填した粉末Hを予備圧縮し、第一の導電性ガラス粉末層26を形成する。次いで抵抗体組成物の原料粉末を充填して同様に予備圧縮し、さらに導電性ガラス粉末を充填して予備圧縮を行うことにより、図11(d)に示すように、中心電極3側(下側)から貫通孔6内には、第一の導電性ガラス粉末層26、抵抗体組成物粉末層25及び第二の導電性ガラス粉末層27が積層された状態となる。
【0096】
そして、図12(a)に示すように、貫通孔6に端子金具13を上方から配置した組立体PAを形成する。この状態で炉内に挿入してガラス軟化点以上である800〜950℃の所定温度に加熱し、その後、端子金具13を貫通孔6内へ中心電極3と反対側から軸方向に圧入して積層状態の各層25〜27を軸方向にプレスする。これにより、同図(b)に示すように、各層は圧縮・焼結されてそれぞれ導電性ガラスシール層16、抵抗体15及び導電性ガラスシール層17となる(以上、ガラスシール工程)。
【0097】
ここで、釉薬スラリー塗布層2d’に含まれる釉薬フリットは、前述の組成を採用することでその軟化温度が600〜700℃となっており、Na成分及びK成分の含有量が比較的高めに設定されていることから、従来の鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬よりも軟化温度が低く、釉焼温度を800〜950℃と低温化できる。従って、図12に示すように、釉薬スラリー塗布層2d’は、上記ガラスシール工程における加熱により同時に釉焼されて釉薬層2dとなる。また、見方を変えれば、ガラスシール工程の加熱温度が、従来の900〜1000℃から800〜950℃へ低温化されているので、中心電極3や端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。また、上記組成の釉薬は、絶縁体2を構成するアルミナ系絶縁材料との線膨張係数の差が比較的小さいので、この釉焼工程を兼ねたガラスシール工程の冷却時において、釉薬層2dにヒビ割れ等が生じにくい。
【0098】
こうしてガラスシール工程が完了した組立体PAには、主体金具1や接地電極4等が組み付けられて、図1に示すスパークプラグ100が完成する。スパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。ここで、釉薬層2dを構成する釉薬は、前述の通りアルカリ金属成分の含有量がかなり高くなっているが、NaとKの2種類のアルカリ金属成分を組み合わせて添加しているため導電率がそれほど増加せず、良好な絶縁性が確保されており、耐フラッシュオーバ性に優れる。
【0099】
なお、本発明のスパークプラグは図1に示すタイプのものに限らず、例えば図5に示すように、接地電極4の先端を中心電極3の側面と対向させてそれらの間に火花ギャップgを形成したものであってもよい。この場合、接地電極4は、図6(a)に示すように、中心電極3の両側に各1ずつの計2つ設ける態様の他、同図(b)に示すように、中心電極3の周りに3ないしそれ以上のものを配置することもできる。また、図7に示すように、スパークプラグ100を、絶縁体2の先端部を中心電極3の側面と接地電極4の先端面との間に進入させたセミ沿面放電型スパークプラグとして構成してもよい。この構成では、絶縁体2の先端部の表面に沿う形で火花放電が起こるので、気中放電型のスパークプラグと比べて耐汚損性が向上する。
【0100】
(実施例2)
以下、本発明の第二の構成に係るスパークプラグの実施例について説明する。該実施例2のスパークプラグの構成は、釉薬層の組成を除いて、実施例1と全く同一であり、釉薬層以外の部分についての説明は、図1〜図7を援用してその詳細な説明を省略する。釉薬層2dは、主カチオン成分がSi、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下とした釉薬にて構成されている。
【0101】
具体的には、上記釉薬層の組成は、以下の4つの態様の少なくとも1のものを満足するように調整することができる。(1)Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜38重量%とする。(2)ZrのZrO2換算重量含有率を3.4重量%以下とする。(3)TiのTiO2換算重量含有率を1.5重量%以上とする。(4)ZrのZrO2換算重量含有率をWZr 、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrを0.2〜10とする。
【0102】
上記の釉薬層2dを有するスパークプラグ100の製法は、使用する釉薬スラリーの原料配合組成が異なるのみで、他は実施例1とほぼ同様である。釉薬スラリーの調製は、Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の各成分源となる成分源粉末(例えば、Si成分はSiO2粉末、B成分はH3BO3粉末、ZnはZnO粉末、Ba成分はBaCO3粉末、TiはTiO2粉末、ZrはZrO2粉末)を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有するものとなるように配合して混合する。なお、Na、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として配合する場合は、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下となるように成分源粉末を配合する。次いで、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕することにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリットにカオリン、蛙目粘土等の粘土鉱物と有機バインダーとを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより釉薬スラリーを得る。
【0103】
上記のようなアルカリ金属成分とB成分との含有量範囲を選択することで、粘度が小さく流動性に富む釉薬スラリーを容易に調製することが可能となる。図10を援用して示すように、この釉薬スラリーSを噴霧ノズルNから絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、厚さが均一で気泡巻き込み等の少ない釉釉薬スラリー塗布層2d’を形成できる。以下、乾燥から釉焼を経てスパークプラグを得る工程は、実施例1とほぼ同様であるので詳細な説明は省略する。釉焼により、厚さが均一で欠陥の少ない釉薬層2dを得ることができる。また、実施例1と同様に釉薬軟化温度が600〜700℃と低く、結果としてガラスシール工程の加熱温度が、従来の900〜1000℃から800〜950℃へ低温化されているので、中心電極3や端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。さらに、上記組成の釉薬は、絶縁体2を構成するアルミナ系絶縁材料との線膨張係数の差が比較的小さいので、この釉焼工程を兼ねたガラスシール工程の冷却時において、釉薬層2dにヒビ割れ等が生じにくい。他方、釉薬層2dを構成する釉薬は、アルカリ金属成分の含有量が少ないので、良好な絶縁性が確保され、耐フラッシュオーバ性に優れる。
【0104】
なお、上記実施例1及び実施例2のスパークプラグは、組成の選び方よっては、釉薬層2dが同一のものとなる場合がある。この場合、第一の構成における効果と、第二の構成における効果とを同時に達成できることとなる。
【実験例】
【0105】
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行なった。
(実験例1)
絶縁体2を次のようにして作製した。まず、原料粉末として、アルミナ粉末(アルミナ95重量%、Na含有量(Na2O換算値)0.1重量%、平均粒径3.0μm)に対し、SiO2(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、CaCO3(純度99.9%、平均粒径2.0μm)、MgO(純度99.5%、平均粒径2μm)、BaCO3(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、H3BO3(純度99.0%、平均粒径1.5μm)、ZnO(純度99.5%、平均粒径2.0μm)を所定比率にて配合するとともに、この配合した粉末総量を100重量部として、親水性バインダとしてのPVAを3重量部と、水103重量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作製した。
【0106】
次いで、これら組成の異なるスラリーをそれぞれスプレードライ法により乾燥して、球状の成形用素地造粒物を調製した。なお、造粒物は、ふるいにより粒径50〜100μmに整粒している。そして、この造粒物を図9を用いて説明したラバープレス法により圧力50MPaにて成形し、その成形体の外周面にグラインダ研削を施して所定の絶縁体形状に加工するとともに、温度1550℃で焼成することにより絶縁体2を得た。なお、蛍光X線分析により、絶縁体2は下記の組成を有していることがわかった:
Al成分:Al2O3換算重量で94.9重量%;
Si成分:SiO2換算重量で2.4重量%;
Ca成分:CaO換算重量で1.9重量%;
Mg成分:MgOに換算重量で0.1重量%;
Ba成分:BaOに換算重量で0.4重量%;
B成分:B2O3換算重量で0.3重量%。
【0107】
また、図4(a)を援用して示す絶縁体2の各部寸法は以下の通りである:L1=約60mm、L2=約8mm、L3=約14mm、D1=約10mm、D2=約13mm、D3=約7mm、D4=5.5mm、D5=4.5mm、D6=4mm、D7=2.6mm、t1=1.5mm、t2=1.45mm、t3=1.25mm、tA=1.35mm。さらに、図1を援用して示すと、絶縁体2の主体金具1の後方側に突出している部分2kの長さLQは25mmであり、絶縁体2の中心軸線Oを含む縦断面を取ったときに、絶縁体2の突出部分2kの外周面において、主体金具1の後端縁に対応する位置から、コルゲーション2cを経て絶縁体2の後端縁に至るまでの、その段面外形線に沿って測った長さLPは29mmである。
【0108】
次に、釉薬スラリーを次のようにして調製した。まず、原料としてSiO2(純度99.5%)、H3BO3粉末(純度98.5%)、ZnO粉末(純度99.5%)、BaCO3粉末(純度99.5%)、Na2CO3粉末(純度99.5%)、K2CO3粉末(純度99%)、Al2O3粉末(純度99.5%)、Fe2O3粉末(純度99.0%)、CaCO3粉末(純度99.8%)、TiO2粉末(純度99.5%)、SrCO3粉末(純度99%)、SnO2粉末(純度99%)、FeO粉末(純度99%)を各種比率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらにアルミナ製ポットミルにより粒径50μm以下に粉砕することにより釉薬フリットを作製した。そして、この釉薬フリット100重量部に対し粘土鉱物としてのニュージーランドカオリンを3重量部、及び有機バインダーとしてのPVAを2重量部配合し、さらに水を100重量部加えて混合することにより釉薬スラリーを得た。
【0109】
この釉薬スラリーを、図10のように噴霧ノズルより絶縁体2の表面に噴霧後、乾燥して釉薬スラリー塗布層2d’を形成した。なお、乾燥後の釉薬の塗布厚さは80μm程度である。この絶縁体2を用いて、図11〜図12を用いて既に説明した方法により、図1に示すスパークプラグ100を各種作成した。ただし、ねじ部7の外径は14mmとした。また、抵抗体15の原料粉末としてはB2O3−SiO2−BaO−Li2O系ガラス、ZrO2粉末、カーボンブラック粉末、TiO2粉末、金属Al粉末を、導電性ガラスシール層16,17の原料粉末としてはB2O3−SiO2−Na2O系ガラス、Cu粉末、Fe粉末、Fe−B粉末をそれぞれ用い、ガラスシール時の加熱温度、すなわち釉焼温度は900℃にて行った。なお、各絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの厚さはおおむね50μm程度であった。
【0110】
他方、粉砕せずに塊状に凝固させた釉薬試料も作製した。なお、この塊状の釉薬試料は、X線回折によりガラス化(非晶質化)したものであることを確認した。これを用いて下記の実験を行った。化学組成分析:蛍光X線分析による。各試料毎の分析値(酸化物換算した値による)を表1及び表3に示している。なお、絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの各組成をEPMA法により測定したが、該塊状試料を用いて測定した分析値とほぼ一致していることが確認できた。熱膨張係数:塊状試料から寸法5mm×5mm×10mmの測定試料を切り出し、公知のディラトメータ法により20℃から350℃までの平均値として測定している。また、絶縁体2からも上記寸法の測定試料を切り出し、同様の測定を行ったところ、その値は73×10−7/℃であった。軟化温度:粉末試料50mgを加熱しながら示差熱分析を行い、室温より測定開始し、第2番目の吸熱ピークとなった温度を軟化温度として測定した。
【0111】
また、各スパークプラグについては、500℃での絶縁抵抗測定を、図8を用いて既に説明した方法により通電電圧1000Vにて行った。また、絶縁体2に対する釉薬層2dの形成状態を目視にて観察した。以上の結果を表1〜表4に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
すなわち、本発明の第一の構成の要件を満足する釉薬層を形成したスパークプラグについては、釉薬層にヒビ割れその他の欠陥が生じておらず、800〜950℃の低温の釉焼温度でも良好な釉薬層が得られていることがわかる。また、アルカリ金属成分の含有量が多いにも拘わらず、500℃の絶縁抵抗は200MΩ以上と高く、良好な耐フラッシュオーバ性を有することが示唆されている。
【0117】
(実験例2)
実験例1と全く同様の形状及び材質の絶縁体2を用意した。また、釉薬スラリーを次のようにして調製した。まず、原料としてSiO2(純度99.5%)、H3BO3粉末(純度98.5%)、ZnO粉末(純度99.5%)、BaCO3粉末(純度99.5%)、Na2CO3粉末(純度99.5%)、K2CO3粉末(純度99%)、Li2CO3粉末(純度99%)、Al2O3粉末(純度99.5%)、CaCO3粉末(純度99.8%)、TiO2粉末(純度99.5%)、ZrO2粉末(純度98%)を各種比率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化した後、さらにアルミナ製ポットミルにて平均粒径9〜10μmに粉砕することにより釉薬フリットを作製した。そして、粘土鉱物としてのカオリン(英国カオリン)を10重量%、アクリル系有機バインダーを1重量%、水を35重量%、残部が上記釉薬フリットとなるように配合・混合することにより釉薬スラリーを得た。
【0118】
得られた各スラリーは、釉薬フリットからのB成分及びアルカリ金属成分の溶出状態を安定化させるために、40℃の恒温槽中にて10日間放置した後、B型粘度計(形式:B型、東京計器社製、型番BH)を用いて測定した。
【0119】
そして、上記の釉薬スラリーを用いた点を除いて、他は実験例1と同様の条件により、図1に示すスパークプラグ100を各種作成した(各釉薬組成毎に1000個)。なお、各絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの厚さはおおむね50μm程度であった。こうして得られた各スパークプラグについては、500℃での絶縁抵抗測定を実施例1と同様に行った。また、絶縁体2に対する釉薬層2dの形成状態を目視にて観察した。
【0120】
他方、粉砕せずに塊状に凝固させた釉薬試料も作製した。なお、この塊状の釉薬試料は、X線回折によりガラス化(非晶質化)したものであることを確認した。これを用いて下記の実験を行った。
(1)化学組成分析:蛍光X線分析による。各試料毎の分析値(酸化物換算した値による)を表5に示している。なお、絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの各組成をEPMA法により測定したが、該塊状試料を用いて測定した分析値とほぼ一致していることが確認できた。
(2)軟化温度:粉末試料50mgを加熱しながら示差熱分析を行い、室温より測定開始し、第2番目の吸熱ピークとなった温度を軟化温度として測定した。結果を表6に示している。
(3)釉焼により得られた釉薬層に対し、ヒビ割れもしくはクレージングが発生していないかどうかを目視により判定し、1000個中の発生個数を求めた。結果を表6に示している。
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
すなわち、本発明の第二の構成の要件を満足する釉薬層を形成したスパークプラグについては、釉薬層の溶融状態が良好で、ヒビ割れやクレージングの発生頻度も小さいことがわかる。とりわけ、また、800〜950℃の低温の釉焼温度でも良好な釉薬層が得られている。また、500℃の絶縁抵抗は200MΩ以上と高く、良好な耐フラッシュオーバ性を有することが示唆されている。また、釉薬層形成に使用した釉薬スラリーは、粘度が比較的小さく、均質で欠陥の少ない釉薬層形成に寄与していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明のスパークプラグの一例を示す全体正面断面図。
【図2】図1の要部の正面部分断面図及びその発火部の近傍をさらに拡大して示す断面図。
【図3】絶縁体の外観を釉薬層とともに示す正面図。
【図4】絶縁体のいくつかの実施例を示す縦断面図。
【図5】本発明のスパークプラグの別の例を示す全体正面図。
【図6】図5の発火部近傍の平面図及びそのその変形例の平面図。
【図7】本発明のスパークプラグのさらに別の例を示す全体正面図。
【図8】スパークプラグの絶縁抵抗値の測定方法を示す説明図。
【図9】ラバープレス法の説明図。
【図10】釉薬スラリー塗布層の形成工程の説明図。
【図11】ガラスシール工程の説明図。
【図12】図11に続く説明図。
【符号の説明】
【0125】
1 主体金具
2 絶縁体
2d 釉薬層
2d’ 釉薬スラリー塗布層(釉薬粉末堆積層)
3 中心電極
4 接地電極
13 端子金具
15 抵抗体(焼結導電材料部)
16,17 導電性ガラスシール層(焼結導電材料部)
S 釉薬スラリー
【技術分野】
【0001】
本発明は本発明はスパークプラグとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関の点火用に使用されるスパークプラグは、一般に、接地電極が取り付けられる主体金具の内側に、アルミナ系セラミック等で構成された絶縁体が配置され、その絶縁体の内側に中心電極が配置された構造を有する。絶縁体は主体金具の後方側開口部から軸方向に突出し、その突出部の内側に端子金具が配置され、これがガラスシール工程により形成される導電性ガラスシール層や抵抗体等を介して中心電極と接続される。そして、その端子金具を介して高圧を印加することにより、接地電極と中心電極との間に形成されたギャップに火花放電が生ずることとなる。
【0003】
ところが、プラグ温度が高くなったり、周囲の湿度が上昇したりするなどの条件が重なると、高圧印加してもギャップに飛火せず、絶縁体突出部の表面を回り込む形で端子金具と主体金具との間で放電する、いわゆるフラッシュオーバ現象が生じることがある。そのため、一般に使用されているほとんどのスパークプラグにおいては、主にこのフラッシュオーバ現象防止のために絶縁体表面に釉薬層が形成されている。他方、釉薬層は、絶縁体表面を平滑化して汚染を防止したり、化学的あるいは機械的強度を高めるといった役割も果たす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁体への釉薬層の形成は、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布し、これを焼成する(「釉焼」と呼ばれる)ことにより行われている。スパークプラグ用のアルミナ系絶縁体の場合、焼成済みの絶縁体に対し釉焼温度1000〜1100℃で後焼付けにより釉薬層の形成を行うので、ケイ酸塩ガラスに比較的多量のPbOを配合して軟化温度を低下させた鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬が従来より使用されている。しかしながら、これには次のような欠点がある。
(1)下地となるアルミナ系絶縁材料と比較して線膨張係数が小さく、得られる釉薬層にヒビ割れ等が生じやすい。
(2)PbOを相当量配合しているにも拘わらず、釉焼温度が依然1000℃以上と高い。スパークプラグの製造工程では、工数削減のためガラスシール工程時に釉焼も同時に行うことが多いが、釉焼温度が上記のように高いと端子金具や中心電極の酸化が進みやすくなる難点がある。なお、釉焼温度をさらに低下させるため、Na2O等のアルカリ金属酸化物を配合することが考えられるが、釉薬中のアルカリ金属成分の含有量が過度に増大すると絶縁性の低下を引き起こし、フラッシュオーバを生じやすくなる問題がある。
(3)環境保護に対する関心が地球規模で高まりつつある近年では、Pbを含有する釉薬は次第に敬遠されるようになってきている。例えばスパークプラグが多量に使用される自動車業界においては、廃棄スパークプラグによる環境への影響を考慮して、Pb含有釉薬を使用したスパークプラグの使用は将来全廃しようとの検討も進められている。
【0005】
本発明の課題の第一は、従来の釉薬と比較して低温で釉焼可能であり、かつ絶縁性も高い釉薬層を絶縁体上に形成したスパークプラグと、その製造方法とを提供することにある。また、課題の第二は、釉薬中の含有Pb量を大幅に削減でき、ひいては高まりつつある環境保護への動きにも適合したスパークプラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明のスパークプラグの第一の構成(参考発明)は、中心電極と、その中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて中心電極と対向するように配置された接地電極と、中心電極と主体金具との間において、中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有する。そして、上記課題を解決するために、該釉薬層を構成する釉薬が、被酸化元素成分が主にSi、B、Zn及びBaと、Na、K及びLiから選ばれる2種(以下、この2種の成分を共添加アルカリ金属成分という)とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%含有するとともに、前記共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%含有することを特徴とする。
【0007】
上記第一の構成に使用される表記組成の釉薬は、下地の絶縁体が例えばアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、これとの線膨張係数の差が比較的小さいので、得られる釉薬層にヒビ割れ等が生じにくい。また、アルカリ金属成分の含有量が比較的高めに設定されていることから、従来の鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬よりも軟化温度が低く、釉焼温度を800〜950℃と低温化できる。従って、前述のガラスシール工程と同時に釉焼を行う場合も、中心電極や後述する端子金具等に酸化が生じにくい。
【0008】
また、アルカリ金属成分の含有量が高いにも拘わらず、絶縁性が良好である。これに関しては、1種類のアルカリ金属成分を単独添加するのではなく、Na、K、Liから選ばれる2種類を共添加している点が重要である。すなわち、本発明者の検討によれば、アルカリ金属成分を単独で配合した場合は、その含有量の増大に伴い釉薬の導電率が急増し、絶縁性が著しく損なわれることにつながるが、2種類のものを組み合わせて配合すると、意外にも、その合計含有量がかなり多くなっても釉薬の導電率がそれほど増加せず、良好な絶縁性が確保できることがわかった。その結果、絶縁性をそれほど低下させずにアルカリ金属成分の含有量を増大させることができ、結果として耐フラッシュオーバ性の確保と釉焼温度の低温化という2つの目的を同時に達成することが可能となるのである。なお、アルカリ金属成分の共添加による導電性抑制の効果が損なわれない範囲で、第三成分以降の他のアルカリ金属成分を配合することも可能である。
【0009】
釉薬中のSi成分含有量は、SiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%に設定される。下地の絶縁体がアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、該Si成分含有量が18重量%未満になると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる。他方、該Si成分含有量が40重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が逆に小さくなり過ぎ、釉薬層に貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる。なお、該Si成分含有量は、望ましくは25〜30重量%の範囲で設定するのがよい。
【0010】
また、B成分含有量は、B2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%に設定される。該B成分含有量が25重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度(前述の800〜950℃)での釉焼が不能となる場合がある。他方、B成分含有量が40重量%を超えると、得られる釉薬層中に分相を生じやすくなり、釉薬層が失透したり、絶縁性の低下あるいは下地との線膨張係数不適合といった問題につながる場合がある。なお、該B成分含有量は、望ましくは30〜35重量%の範囲で設定するのがよい。
【0011】
Zn成分含有量は、ZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%の範囲で設定される。該Zn成分含有量が10重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。他方、該Zn成分含有量が25重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる場合がある。なお、該Zn成分の含有量は、望ましくは12〜18重量%の範囲で設定するのがよい。
【0012】
また、Ba成分含有量は、BaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%の範囲で設定される。Ba成分含有量が7重量%未満になると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれることにつながる場合がある。他方、Ba成分含有量が20重量%を超えると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。なお、該Ba成分の含有量は、望ましくは8〜15重量%の範囲で設定するのがよい。
【0013】
次に、釉薬中の共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それらのうちの2種がそれぞれ3〜9重量%含有される。少なくともいずれかの成分の含有量が3重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。また、少なくともいずれかの成分の含有量が9重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる場合がある。
【0014】
また、釉薬中の共添加アルカリ金属成分の合計含有量は、酸化物換算にて6〜14重量%の範囲で調整するのがよい。共添加アルカリ金属成分の合計含有量が6重量%未満になると釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。他方、該合計含有量が14重量%を超えると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。
【0015】
さらに、釉薬中の共添加アルカリ金属成分をなす2種の成分のうち、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oにそれぞれ酸化物換算した場合に、その一方のもののモル含有量をA1、他方のもののモル含有量をA2としたときのA1/A2の値を1.0〜2.0の範囲で調整するのがよい。A1/A2の値がこの範囲を上側ないし下側に外れると、アルカリ金属成分の共添加による導電性抑制の効果を十分達成できず、ひいては釉薬の絶縁性が低下して耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。なお、A1/A2の値は望ましくは1.5〜2.0の範囲で調整するのがよい。
【0016】
なお、アルカリ金属成分含有量の増加に伴う釉薬の導電性上昇を抑えるには、共添加アルカリ金属成分として、NaとKの2種を用いることがとりわけ望ましい。この場合、Na成分をNa2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%、K成分をK2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%含有させるのがよい。
【0017】
また、釉薬中のカチオン成分、すなわちSi成分、B成分、Zn成分、Ba成分及び共添加アルカリ金属成分の、各酸化物換算した値における合計含有量は、95重量%以上となっていることが望ましい。これらの合計含有量が95重量%未満になると釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。なお、該合計含有量は、望ましくは97重量%以上になっているのがよい。
【0018】
次に、釉薬には、補助カチオン成分として、Al、Ca、Fe、Zr、Ti、Sr、Mg、Bi、Ni、Sn、P及びMnの1種又は2種以上を、AlはAl2O3に、CaはCaOに、FeはFe2O3に、ZrはZrO2に、TiはTiO2に、SrはSrOに、MgはMgOに、BiはBi2O3に、NiはNiOに、SnはSnO2に、PはP2O5に、MnはMnOにそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で5重量%以下の範囲で含有させることができる。これらの成分は、各種目的に応じて積極的に添加することもできるし、原料(あるいは、後述する釉薬スラリーの調製時に配合する粘土鉱物)や溶融工程における耐火材等からの不純物(あるいはコンタミ)として不可避に混入する場合もある。なお、釉薬の原料におけるFe成分源としては、Fe(II)イオン系のもの(例えばFeO)とFe(III)イオン系のもの(例えばFe2O3)とのいずれも使用可能であるが、最終的な釉薬層中のFe成分の含有量は、Feイオンの価数に関係なくFe2O3に換算した値で表示するものとする。
【0019】
上記補助カチオン成分の合計含有量が5重量%を超えると、主カチオン成分の合計含有量95重量%以上を確保できなくなる。補助カチオン成分の合計含有量は、望ましくは3.0重量%以下とするのがよい。なお、以下の説明において、主カチオン成分と補助カチオン成分とを総称する場合に、単にカチオン成分と記すことがある。
【0020】
例えばAl成分は、5重量%以下の範囲で配合することで、釉薬の失透を抑制する効果を得ることができる。また、他の成分も、釉薬の軟化温度を調整するために適宜配合することができる。特にBi2O3の配合は、釉薬の軟化温度を下げる上で効果的である。
【0021】
また、釉薬は、Pb成分を実質的に含有しないか(ただし、釉薬原料等から不可避的に混入するものを除く)、含有していてもその含有量がPbO換算にて1.0重量%以下のものとすることができる。例えば、釉薬中にPb成分が価数の低いイオン(例えばPb2+)の形で含有されていると、釉薬層表面からのコロナ放電等によりこれが価数の高いイオン(例えばPb3+)に酸化され、釉薬層の絶縁性が低下して耐フラッシュオーバ性が損なわれる場合がある。他方、最近は環境保護への関心が高まりつつあることから、釉薬についても無鉛系の材料が模索されている。その点、本発明のスパークプラグに使用される釉薬は、前記カチオン成分がPb成分を含まないことから、例えば不可避不純物として含有される1.0重量%程度までのものを除けば、Pbを実質的に含有しないレベルにまで低減しても全く問題を生じないので、好都合であるといえる。すなわち、本発明の第二の課題が解決される。なお、Pbの含有量は望ましくは0.1重量%以下とするのがよい。
【0022】
次に、本発明のスパークプラグの第二の構成は、釉薬層を除くその要部は前記した第一の構成と同様である。そして、釉薬層を構成する釉薬が、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とする。
【0023】
この第二の構成は、次の4つの発明を含む。これら4つの発明は、任意の2以上のものを組み合わせて実施することもできる。
(第一発明)Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜38重量%とする(第二〜第四発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
(第二発明)ZrのZrO2換算重量含有率を3.4重量%以下とする(第一、第三及び第四発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
(第三発明)TiのTiO2換算重量含有率を1.5重量%以上とする(第一、第二及び第四発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
(第四発明)ZrのZrO2換算重量含有率をWZr 、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrを0.2〜10とする(第一〜第三発明の少なくともいずれかと組み合わせが可能である)。
【0024】
上記本発明の第二の構成の作用・効果について、上記の第一〜第四発明の作用・効果を含め、以下に詳しく説明する。本発明の第二の構成のスパークプラグの要部をなす釉薬層においては、アルカリ金属成分の合計含有量範囲を12重量%以下(0重量%を含む)の範囲に留め、また、B成分の含有量範囲をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%に留めつつ、Ti及びZrをそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%の割合で配合した点に特徴がある。アルカリ金属成分の合計含有量及びB成分の含有量を上記の範囲に留めることにより、厚さが均一で気泡等の欠陥の少ない釉薬層をより形成しやすくできる効果を奏する。
【0025】
アルカリ金属成分とB成分との含有量を削減することにより、上記のような効果が得られる理由は、以下のように考えられる。すなわち、後述する本発明の製造方法において、釉薬粉末を釉薬スラリーとして調製する際に、アルカリ金属成分とB成分との配合量が多いと、これら成分が水等のスラリー溶媒中に溶出し、スラリーの粘度を上昇させる場合がある。スラリーの粘度が極端に高くなると(例えば1000mPa・sを超えて高くなると)、均一な釉薬粉末塗布層が得にくくなり、また、気泡等が巻き込まれる可能性も高くなる。しかしながら、上記のようなアルカリ金属成分とB成分との含有量範囲を選択することで、粘度が小さく流動性に富む釉薬スラリーを容易に調製することが可能となり、厚さが均一で欠陥の少ない釉薬層を得やすくなるものと考えられる。
【0026】
なお、アルカリ金属成分及びB成分の含有量が減少すれば、釉薬の軟化温度、すなわち釉焼温度が上昇することにつながるが、すでに説明した通り、この軟化温度の上昇を抑制するために従来は、多量のPbOを釉薬中に配合していた。しかしながら、上記第二の構成では、PbOに代えてTi及びZr系の酸化物成分を配合することで、釉薬の軟化温度上昇を抑制しつつPb成分の含有量を大幅に削減すること、具体的にはPbO換算にて0.1重量%以下とすることに成功している。従って、前記した本発明の第二の課題が解決される。なお、Pb成分は、釉薬原料等から不可避的に混入するものを除いて実質的に含有されないことがさらに望ましい。
【0027】
また、下地の絶縁体が例えばアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、これとの線膨張係数の差が比較的小さいので、得られる釉薬層にヒビ割れ等が生じにくい。そして、従来の鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬よりも軟化温度が低く、釉焼温度を800〜950℃と低温化できる。従って、前述のガラスシール工程と同時に釉焼を行う場合も、中心電極や後述する端子金具等に酸化が生じにくい。さらに、アルカリ金属成分の含有量が削減されるので、釉薬層の絶縁性(ひいては耐フラッシュオーバ性)が良好である。また、Ti及びZr系の酸化物成分を配合することにより、得られる釉薬層の耐水性あるいは耐薬品性が改善され、例えば釉薬層中のアルカリ金属成分が含有されている場合でも、その溶出が抑制されて釉薬層の耐電圧性能向上に寄与する。Zr成分に関しては、釉薬層の耐薬品性改善効果がTi成分に比して一層顕著である。なお、ここで「耐水性が良好」とは、例えば形成された釉薬層からの水への成分溶出が起こりにくいことの他、釉薬フリットを水性スラリーの形で長時間放置した場合に、成分溶出によるスラリーの粘性が高くなる不具合を生じにくくなるということも意味する。
【0028】
第二の構成において、アルカリ金属成分の合計含有量が酸化物換算にて12重量%を超えると、釉薬スラリーの流動性改善効果、ひいては、得られる釉薬層厚さの均一化あるいは欠陥減少といった該第二の構成特有の効果が顕著に達成できなくなる。また、釉薬の絶縁性確保という点においても、上記範囲を超えてアルカリ金属成分を配合することは不利に作用する。一方、釉薬層Ti及びZr系の酸化物成分の配合により軟化点上昇を抑制しているため、上記アルカリ金属成分については、例えば釉薬原料等から不可避的に混入するものを除いて、実質的に含有されないレベルにまで削減することも可能である。例えば、その含有量を6重量%未満、望ましくは5重量%未満とすることで、アルカリ金属成分削減による絶縁性向上効果は一層顕著に達成できるといえる。なお、釉焼温度や溶融釉薬層の流動性改善等のため、ある程度のアルカリ金属成分を配合せざるを得ない場合、前記した第一の構成と同様に、2種以上のアルカリ金属成分を共添加することが、絶縁性向上の上でより有効である。
【0029】
次に、Ti及びZrの合計含有量が酸化物換算した重量にて2重量%未満になると、釉薬の軟化点上昇抑制効果が不足し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。一方、該合計含有量が10重量%を超えると、釉焼により得られる釉薬層が失透しやすくなる不具合を生ずる。また、Ti及びZrの酸化物は、適量配合した場合に、例えば他の酸化物成分との共晶反応等により釉薬の軟化温度低下に寄与するが、これら酸化物は単独では本質的に高融点酸化物であり、合計含有量が10重量%を超えると、釉薬の軟化点が逆に上昇して所期の温度での釉焼が不能となる不具合を招くこともある。Ti及びZrの酸化物換算による合計含有量は、望ましくは3〜8重量%とするのがよい。
【0030】
なお、Zr成分はTi成分よりも溶融釉薬の粘性を増加させる傾向がやや大きいため、溶融釉薬の流動性を高め、より均一で外観に優れた釉薬層を形成する観点においては、前記第二発明のようにZr成分の含有量を、ZrO2換算重量含有率にて3.4重量%以下、望ましくは3.0重量%以下とするのがよい。
【0031】
他方、Ti成分については、Zr成分と比較すれば溶融釉薬の粘性増加の影響が少ないため、前記第三発明のようにTiO2換算重量含有率を1.5重量%以上とすることで、より耐水性あるいは耐薬品性に優れた釉薬層を良好に形成することができる。
【0032】
なお、Ti成分が過剰になると、釉薬層の線膨張係数が低くなり過ぎて、下地の絶縁体が例えばアルミナ系絶縁材料で構成されている場合は、その線膨張係数の差により、釉薬層に貫入(クレージング)等の不具合が発生することもありうる。従って、このような不具合を解消しつつ耐水性あるいは耐薬品性に優れ、かつ溶融釉薬の流動性を高めて均一で外観の良好な釉薬層を得るには、Ti成分とZr成分とを共添加することが望ましい。具体的には、前記した第四発明のように、ZrのZrO2換算重量含有率をWZr 、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrを0.2〜10とするのがよい。WTi/WZrが0.2未満になると、Ti成分の含有量が相対的に不足しやすくなり、耐水性あるいは耐薬品性の向上効果を十分に得ようとした場合にZr成分の含有量を増やさざるを得なくなる。その結果、溶融釉薬の粘性が増大して釉薬層の外観不良を生じやすくなる場合がある。他方、WTi/WZrが10を超えると、耐水性あるいは耐薬品性の向上効果を十分に得ようとした場合に、Ti成分の含有量を増やさざるを得なくなる。その結果、釉薬層の線膨張係数が低くなり過ぎて、クレージング等が発生しやすくなる場合がある。なお、WTi/WZrは、望ましくは0.5〜7とするのがよい。
【0033】
上記第二の構成において、釉薬中のSi成分含有量は、SiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%に設定される。下地の絶縁体がアルミナ系絶縁材料で構成されている場合、該Si成分含有量が20重量%未満になると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる。他方、該Si成分含有量が40重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が逆に小さくなり過ぎ、釉薬層に貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる。なお、該Si成分含有量は、前記第一発明のように38%重量以下とすることで、釉薬層への貫入等の欠陥発生を一層生じにくくすることができる。なお、Si成分含有量は、より望ましくは、SiO2酸化物換算重量にて、25〜35重量%の範囲で設定するのがよい。
【0034】
また、第二の構成において、B成分含有量は、B2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%に設定される。該B成分含有量が20重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度(前述の800〜950℃)での釉焼が不能となる。他方、B成分含有量が35重量%を超えると、釉薬スラリーの流動性改善効果、ひいては、得られる釉薬層厚さの均一化あるいは欠陥減少といった第二の構成特有の効果が顕著に達成できなくなる。また、得られる釉薬層中に分相を生じて釉薬層が失透したり、絶縁性の低下あるいは下地との線膨張係数不適合といった問題を生じやすくなる点においても、不利に作用する。なお、該B成分含有量は、望ましくは20〜28重量%の範囲で設定するのがよい。
【0035】
なお、釉薬スラリーの流動性改善効果を高める観点において、B成分とアルカリ金属成分の合計含有量(酸化物換算)は42重量%以下、望ましくは35重量%以下とするのがよい。また、釉焼温度の過度の上昇を抑制する観点において、アルカリ金属成分とTi及びZr成分との合計含有量(酸化物換算)は、8重量%以上に確保することが望ましい。
【0036】
次に、第二の構成においてZn成分含有量は、ZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%の範囲で設定される。該Zn成分含有量が15重量%未満になると、釉薬の軟化点が上昇しすぎ、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。他方、該Zn成分含有量が25重量%を超えると、釉薬の線膨張係数が大きくなり過ぎ、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる場合がある。なお、該Zn成分の含有量は、望ましくは15〜20重量%、さらに望ましくは17〜20重量%の範囲で設定するのがよい。
【0037】
また、第二の構成においてBa成分含有量は、BaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%の範囲で設定される。Ba成分含有量が10重量%未満になると、釉薬の絶縁性が低下し、耐フラッシュオーバー性が損なわれる場合がある。他方、Ba成分含有量が23重量%を超えると、釉薬の軟化点が上昇し、所期の温度での釉焼が不能となる場合がある。なお、該Ba成分の含有量は、望ましくは12〜18重量%の範囲で設定するのがよい。
【0038】
なお、本発明のスパークプラグの第一の構成及び第二の構成においては、釉薬中における上記カチオン成分ないし補助カチオン成分は、主に酸化物の形で含有されることとなるが、非晶質のガラス相を形成するなどの要因により、酸化物による存在形態を直接は同定できないことも多い。この場合は、釉薬層中における、前記酸化物換算した値での元素成分の含有量が前述の範囲のものとなっていれば、本発明の範囲に属するものとみなす。
【0039】
ここで、絶縁体上に形成された釉薬層の各カチオン成分の含有量は、例えばEPMA(電子プローブ微小分析)やXPS(X線光電子分光)等の公知の微小分析方法を用いて同定できる。例えばEPMAを用いる場合、特性X線の測定には、波長分散方式とエネルギー分散方式のいずれを用いてもよい。また、絶縁体から釉薬層を剥離し、これを化学分析あるいはガス分析することにより組成同定する方法もある。
【0040】
また、上記釉薬層を有する本発明のスパークプラグは、絶縁体の貫通孔内において、中心電極と一体に、又は導電性結合層を間に挟んで中心電極と別体に設けられた軸状の端子金具部を備えたものとして構成できる。この場合、該スパークプラグ全体を約500℃に保持し、絶縁体を介して端子金具部と主体金具との間で通電することにより絶縁抵抗値を測定することができる。そして、高温での絶縁耐久性を確保するために、この絶縁抵抗値は200MΩ以上が確保されていることが、フラッシュオーバ等の発生を防止する上で望ましい。
【0041】
図8は、その測定系の一例を示すものである。すなわち、スパークプラグ100の端子金具13側に直流定電圧電源(例えば電源電圧1000V)を接続するとともに主体金具1側を接地し、加熱炉中にスパークプラグ100を配置して500℃に加熱した状態で通電を行う。例えば、電流測定用抵抗(抵抗値Rm)を用いて通電電流値Imを測定する場合を考えると、通電電圧をVSとして、測定すべき絶縁抵抗値Rxは、(VS/Im)−Rmにて求めることができる(図では、通電電流値Imを、電流測定用抵抗の両端電圧差を増幅する差動増幅器の出力により測定している)。
【0042】
また、絶縁体は、Al成分をAl2O3に酸化物換算した重量にて85〜98重量%含有するアルミナ系絶縁材料で構成することができる。この場合、釉薬は、20〜350℃の温度範囲における釉薬の平均の線膨張係数が、50×10−7/℃〜85×10−7/℃の範囲のものとなっていることが望ましい。線膨張係数がこの下限値より小さくなっていると、釉薬層に貫入(クレージング)等の欠陥が生じやすくなる場合がある。他方、線膨張係数がこの上限値より大きくなっていると、釉薬層にヒビ割れ等の欠陥が生じやすくなる。なお、上記線膨張係数は、より望ましくは60×10−7/℃〜80×10−7/℃の範囲のものとなっているのがよい。
【0043】
ここで、釉薬の線膨張係数は、釉薬層と略同一組成となるように原料を配合・溶解して得たガラス質の釉薬バルク体から試料を切り出し、これを用いて公知のディラトメータ法等により測定した値により推定することができる。また、絶縁体上の釉薬層の線膨張係数は、例えばレーザ干渉計や原子間力顕微鏡等を用いて測定することが可能である。
【0044】
次に、上記スパークプラグの第一の構成は、以下の本発明の製造方法の第一により製造することができる。すなわち、該方法は、カチオン成分としてのSi、B、Zn及びBaと、Na、K及びLiから選ばれる2種(共添加アルカリ金属成分)との各成分源となる成分源粉末を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、BaをBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%となるように配合するとともに、共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%配合して混合後、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を絶縁体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉末堆積工程と、その絶縁体を800〜950℃の温度範囲にて焼成することにより、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす釉焼工程と、を含む。
【0045】
また、上記スパークプラグの第二の構成は、以下の本発明の製造方法の第二により製造することができる。すなわち、該方法は、主カチオン成分としてのSi、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の各成分源となる成分源粉末を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有するものとなるように配合して混合後、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を絶縁体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉末堆積工程と、その絶縁体を800〜950℃の温度範囲にて焼成することにより、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす釉焼工程と、を含むことを特徴とする。
【0046】
なお、各成分の成分源粉末(カチオン成分の成分源粉末のほか、補助カチオン成分を含有させる場合には、その成分源粉末も含む)としては、それら成分の酸化物(複合酸化物でもよい)の他、水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の各種無機系材料粉末を使用できる。これら無機系材料粉末は、いずれも加熱・溶融により酸化物に転化できるものを使用する必要がある。また、急冷は、溶融物を水中に投じる方法の他、溶融物を冷却ロール表面に噴射してフレーク状の急冷凝固物を得る方法も採用できる。
【0047】
釉薬粉末は、上記フリットを水又は溶媒中に分散させた釉薬スラリーとして調製可能である。この場合、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布し乾燥することで、釉薬粉末堆積層を該釉薬スラリーの塗布層として形成できる。なお、釉薬スラリーを絶縁体表面に塗布する方法としては、釉薬スラリーを噴霧ノズルから絶縁体表面に噴霧する方法を用いると、均一な厚さの釉薬粉末堆積層を簡単に形成でき、その塗布厚さの調整も容易である。
【0048】
釉薬スラリーには、形成した釉薬粉末堆積層の形状保持力を高める目的で、適量の粘土鉱物や有機バインダーを配合できる。粘土鉱物は、含水アルミノケイ酸塩を主体に構成されるものを使用でき、例えばアロフェン、イモゴライト、ヒシンゲライト、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、バーミキュライト、ドロマイト等(あるいはそれらの合成物)の1種又は2種以上を主体とするものを使用できる。また、含有される酸化物系成分の観点においては、SiO2及びAl2O3に加え、Fe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O及びK2O等の1種又は2種以上を主に含有するものを使用することができる。
【0049】
本発明のスパークプラグは、絶縁体の軸方向に形成された貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が固定され、同じく他方の端部側に中心電極が固定されるとともに、該貫通孔内において端子金具と中心電極との間に、それらを電気的に接合するための、主にガラスと導電性材料との混合物からなる焼結導電材料部(例えば導電性ガラスシール層や抵抗体)が形成されたものとして構成できる。これを製造する場合、次のような工程を含む方法を採用できる。・組立体製造工程:絶縁体の貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が配置され、同じく他方の端部側に中心電極が配置されるとともに、該貫通孔内において端子金具と中心電極との間に、ガラス粉末と導電性材料粉末とを主体とする焼結導電材料原料粉末の充填層を形成した組立体を製造する。・釉焼工程:絶縁体の表面に釉薬粉末堆積層を形成した状態の組立体を、800〜950℃の温度範囲に加熱して、釉薬粉末堆積層を絶縁体表面に焼き付けて釉薬層となす工程と、充填層中のガラス粉末を軟化させる工程とを同時に行う。・プレス工程:その加熱された組立体において、貫通孔内にて中心電極と端子金具とを相対的に接近させることにより、充填層をそれら中心電極と端子金具との間でプレスして焼結導電材料部となす。
【0050】
この場合、焼結導電材料部により端子金具と中心電極とが電気的に接合されるとともに、絶縁体貫通孔の内面とそれら端子金具及び中心電極との間が封着(シール)される。従って、上記釉焼工程とプレス工程とがガラスシール工程を形成することになる。該方法では、ガラスシール工程と釉焼工程とが同時になされるので効率的である。また、前述の釉薬を用いるため釉焼温度を800〜950℃と低くできるので、中心電極や端子金具の酸化による製造不良が発生しにくく、スパークプラグの製品歩留まりが向上する。
【0051】
この場合、釉薬の軟化温度は600〜700℃の範囲で調整するのがよい。軟化温度が700℃を超えると、950℃以上の釉焼温度が必要となり、中心電極や端子金具の酸化が進みやすくなる。他方、軟化温度が600℃未満になると、釉焼温度も800℃未満の低温に設定する必要が生ずる。この場合、良好なガラスシール状態が得られるよう、焼結導電材料部に使用するガラスも軟化温度の低いものを使用しなければならなくなる。その結果、完成したスパークプラグが比較的高温の環境下で長時間使用された場合に、焼結導電材料部中のガラスが変質しやすくなり、例えば焼結導電材料部が抵抗体を含む場合には、その負荷寿命特性などの性能の劣化につながる場合がある。
【0052】
なお、釉薬の軟化温度は、次のようにして測定したものをいう。すなわち、原料を配合・溶解して得たガラス質の釉薬バルク体を粉砕し、10μm〜100μm程度の粒径とする。これを再加熱しながら示差熱分析を行い、屈状点を表す最初の吸熱ピークの次に現われるピーク(すなわち第2番目に発生する吸熱ピーク)の温度をもって該軟化温度とする。また、絶縁体表面に形成された釉薬層の軟化温度については、釉薬層中の前記カチオン成分及び前記補助カチオン成分の含有量をそれぞれ分析して酸化物換算した組成を算出し、この組成とほぼ等しくなるように、各被酸化元素成分の酸化物原料を配合・溶解後、急冷してガラス試料を得、そのガラス試料の軟化点をもって当該形成された釉薬層の軟化点を推定するものとする。
【0053】
次に、上記釉薬層を形成すべき絶縁体は、アルミナを主成分とする絶縁材料であって、Na成分をNa2O換算にて0.07〜0.5重量%の範囲で含有する絶縁材料で構成することができる。なお、以下においてNa成分含有量と称した場合は、特に断らない限り全てNa2O換算した含有量を意味するものとする。
【0054】
近年、自動車エンジン等の内燃機関に使用されるスパークプラグにおいては、その絶縁体の材料として耐熱性に優れたアルミナ(Al2O3)系の材料が、古くから使用されている。上記のような絶縁材料の原料アルミナは、一般にはバイヤー(Bayer)法により製造されたもの(以下、バイヤーアルミナともいう)が使用されている。
【0055】
バイヤー法は、アルミニウム原鉱石であるボーキサイトからアルミナを湿式抽出する法であるが、抽出媒として比較的濃度の高い苛性ソーダ(NaOH)水溶液が使用される。そのため、得られるバイヤーアルミナは相当量のNa成分(ソーダ分)を含んだものとなるので、必要に応じて脱ソーダ処理が施された形で使用されている。そして、その脱ソーダの程度に応じて、例えばNa成分の含有量が0.05重量%以下のものを低ソーダアルミナ、同じく0.1〜0.2重量%程度のものを中ソーダアルミナ、それよりもNa成分の多いもの、例えば0.2重量%程度あるいはそれ以上のものを普通ソーダアルミナ等と通称している。
【0056】
ところで、アルミナ中に含有されるNa成分は高いイオン伝導性を示すため、その含有量が過剰になると、絶縁抵抗値、特に500℃以上の高温での絶縁抵抗値を低下させたり、あるいは高温での機械的強度を損ねたりするといった不具合を生ずる。そのため従来より、スパークプラグに使用されているアルミナ系絶縁材料は、なるべくNa成分の含有量の少ないものがよいとされ、そのNa成分含有量は0.05重量%以下の低い値に設定することが常識となっている。
【0057】
ここで、上述のようにNa成分含有量の低いアルミナ系絶縁体を製造するには、使用する原料アルミナも低ソーダ系のものを用いることが不可欠である。低ソーダ系のアルミナは前述の通り脱ソーダ工程が必要な分だけ高価であり、原料コストの観点からは必ずしも望ましいとはいえない側面がある。しかしながら、近年は自動車エンジン等の高出力化に伴い、スパークプラグの絶縁体に対しても、さらに高い耐電圧特性と耐熱性が要求されてきている。その結果、絶縁材料中のNa成分含有量に関する上記常識はますます揺るぎないものとなっており、低ソーダアルミナ使用による多少のコスト高も容認せざるを得ないというのが現状である。
【0058】
しかしながら本発明者は、スパークプラグ用アルミナ系絶縁材料のNa成分含有量について鋭意検討を行ったところ、これまで常識外とみなされていた上記Na成分含有量の高い組成範囲において、高温での絶縁抵抗や機械的強度等が意外にも低下せず、Na成分含有量がこれよりも低い従来の絶縁材料に匹敵する性能の絶縁材料が得られることを見い出したのである。さらに、本発明においては、釉薬層にNa、K、Liから選ばれる2種類が共添加されることで良好な絶縁性が確保されていることから、絶縁体を上記のようなNa成分含有量の高いアルミナ系セラミックで構成する上で有利であるともいえる。
【0059】
そして、Na成分含有量が上記のような範囲に設定されることで、原料となるアルミナ粉末も、Na成分含有量がNa2O換算にて0.07〜0.65重量%と高いものが使用できる(0.65重量%を超えると、得られる絶縁材料中のNa成分含有量を0.5重量%以下に維持できなくなる)。その結果、従来の低ソーダアルミナに代えて、はるかに安価な中ソーダアルミナや普通ソーダアルミナ等を使用することができるようになり、スパークプラグ用絶縁体ひいてはそれを用いたスパークプラグにおける劇的な製造コスト削減が実現される。
【0060】
なお、絶縁材料中のNa成分含有量を0.07重量%未満とするには、低ソーダアルミナ等のNa成分含有量の低いアルミナ粉末を使用しなければならず、従来の絶縁材料に対する原料コスト上の優位性が確保できなくなる。他方、Na成分含有量が0.5重量%を超えると、材料の絶縁抵抗の値が不十分となり、スパークプラグ用絶縁体に要求される耐電圧性能を満足できなくなる。絶縁材料中のNa成分含有量は、より望ましくは0.07〜0.25重量%とするのがよい。また、原料となるアルミナ粉末は、望ましくはNa成分含有量がNa2O換算にて0.07〜0.3重量%のものを使用するのがよい。
【0061】
上記絶縁材料の製造に使用するアルミナ粉末としては、バイヤー法により製造されたものを使用できる。なお、通常のバイヤーアルミナ粉末は、不可避不純物として含有されるものを除けば、Na成分以外のアルカリ金属成分(以下、非Naアルカリ金属成分という)をほとんど含まない。従って、このようなバイヤーアルミナ粉末を使用した場合、得られる絶縁材料中の非Naアルカリ金属成分の合計含有量は、それらの積極的な添加を行わない限り、酸化物換算にて0.05重量%以下のものとなる。
【0062】
また、本発明者がさらに鋭意検討したところ、バイヤー法により得られるアルミナ粉末には、粉末粒子の内部にもNa成分は含まれているが、苛性ソーダの溶液によって処理される関係上、粉末粒子の表層部にNa成分が濃化していることがわかった。そして、このような粉末粒子の表層部のNa成分は、焼成時に焼結助剤成分(後述の添加元素成分)とともに溶融してガラス相を作る。該ガラス相は、Na成分が固溶することで電気比抵抗が低下し、これが導電路として作用しする結果、材料の絶縁抵抗値や絶縁耐電圧の低下につながる問題がある。
【0063】
そして、これに鑑みて本発明者がさらに検討を行った結果、使用するアルミナ粉末は、粒子粉末の表層部に存在するNa成分の含有量が、Na2O換算にて0.01〜0.2重量%であるものを使用するのがよいことがわかった。粉末表層部のNa成分の含有量が0.2重量%を超えるアルミナ粉末を使用すると、得られる絶縁材料の絶縁抵抗値や絶縁耐電圧が不足する場合がある。また、粉末粒子の表層部に存在するNa成分の含有量を0.01重量%未満にするためには、結局は低ソーダアルミナ等のNa成分含有量の低いアルミナ粉末を使用しなければならないか、あるいはNa成分含有量の高いアルミナ粉末を用いる場合でも、粉末粒子表層部のNa成分を洗浄等により除去する工程が必要となり、従来の絶縁材料に対する原料コスト上の優位性が確保できなくなる。なお、粒子粉末の表層部に存在するNa成分の含有量は、より望ましくは0.01〜0.1重量%であるのがよい。
【0064】
ここで、「粉末粒子の表層部に存在するNa成分の含有量」とは、次のようにして測定した値を意味する。まず、測定対象となるアルミナ粉末中のNa成分の総含有量(単位:重量%)をICP分析や化学分析等により測定し、その値をNa2O換算してWNa1とする。次いで、アルミナ粉末100gを、温度90℃に保持した蒸留水1リットル中に攪拌を加えない状態で1hr浸漬する。その後、そのアルミナ粉末を分離回収して再度Na成分含有量(単位:重量%)を測定し、その値をNa2O換算してWNa2とする。そして、先に測定したWNa1からWNa2を減じた値WNa1−WNa2(単位:重量%)を、粉末粒子の表層部に存在するNa成分の含有量とする。
【0065】
この場合、得られる絶縁材料の組織は主に、アルミナ含有量が99重量%であるアルミナ系マトリックス相粒と、そのアルミナ系マトリックス相粒の粒界部に形成されたガラス相とによって構成されるものとなる。ここで、絶縁材料中のNa成分のうちガラス相中に存在するものの含有量WGNaは、Na2O換算にて0.4〜2重量%となっているのがよい。該WGNaが2重量%を超えると絶縁材料の絶縁抵抗値や絶縁耐電圧が不足する場合がある。また、0.4重量%未満とするためには、Na成分含有量の低いアルミナ粉末を使用しなければならず、従来の絶縁材料に対する原料コスト上の優位性が確保できなくなる。
【0066】
なお、上記WGNaは、本明細書においては近似的に以下のようにして算出される値を採用するものとする。まず、材料表面を研磨して、これを走査型電子顕微鏡(SEM)等により組織観察し、その組織画像の解析によりアルミナ系マトリックス相の面積率(材料中の体積率に相当)を測定して、その値をγAとする。次いで、ガラス相中の平均的なNa成分の重量濃度を、公知の微小組成分析法(例えば、EPMA(電子プローブ微小分析)やEDS(エネルギー分散型X線分光)あるいはWDS(波長分散型X線分光)等)により同定し、Na2O換算してNGNaとして求める。そして、材料がアルミナ系マトリックス相とガラス相とのみによって構成されており、かつ焼結によりほぼ完全に緻密化していると仮定する一方、アルキメデス法等により測定された材料の見かけ密度をρ0(単位:g/cm3)、アルミナ系結晶粒の密度をρ1(=3.97g/cm3)とすれば、材料単位体積当りに存在するガラス相の重量MGは、
MG=ρ0−ρ1・γA‥‥‥(1)
として求められるから、WGNaは、
WGNa=MG・NGNa×100
=(ρ0−ρ1・γA)・NGNa×100(重量%)‥‥‥(2)
により計算することができる。
【0067】
なお、ガラス相中の平均的なNa成分の重量濃度NGNaも、上記と同様の理由により、Na2O換算にて0.4〜2重量%となっているのがよい。
【0068】
次に、本発明の絶縁材料においては、Al2O3に換算した重量におけるAl成分含有量(以下、WAlと記す)を85〜98重量%の範囲で調整するのがよい。WAlが85重量%未満になると、材料の高温強度と耐電圧特性が不十分となる場合がある。なお、上記WAlは望ましくは90重量%以上とするのがよい。ただし、WAlが98重量%を超えると焼結助剤成分の量が相対的に少なくなりすぎて焼結体を緻密化させることが困難となり、緻密に焼結させようとすると焼結温度が上昇し、その結果アルミナ粒成長が助長され、却って強度が劣化する等の不具合を生ずる場合がある。それ故、該WAlは98重量%以下の範囲で調整するのがよい。
【0069】
また、本発明の絶縁材料においては、Si、Ca、Mg、Ba、Zn、B及びNaから選ばれる1種又は2種以上の添加元素成分を、SiはSiO2に、CaはCaOに、MgはMgOに、BaはBaOに、ZnはZnOに、BはB2O3に、NaはNa2Oに、それぞれ酸化物換算した重量にて合計で0.1〜15重量%含有させることができる。このような絶縁材料を製造するための原料粉末としては、アルミナ粉末85〜98重量部に対し、Si、Ca、Mg、Ba、Zn及びBを含有する添加元素系原料、SiはSiO2に、CaはCaOに、MgはMgOに、BaはBaOに、ZnはZnOに、BはB2O3に、NaはNa2Oに、それぞれ酸化物換算した場合の重量にて合計で0.1〜15重量部となるように配合したものが使用される。
【0070】
なお、添加元素系原料は、例えばSi、Ca、Mg、Ba及びZnの各成分についてはそれら成分の酸化物(複合酸化物でもよい)の他、水酸化物、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の各種無機系原料粉末を使用できる。これら無機系原料粉末は、いずれも焼成により酸化物に転化できるものを使用する必要がある。また、B成分については、三酸化二ホウ素(B2O3)の他、オルトホウ酸(H3BO3)をはじめとする各種ホウ酸類、さらには絶縁体の主成分元素たるAlや、Ca、Mg、Ba、Zn等とのホウ酸塩等を使用することができる。
【0071】
上記添加元素成分は、焼成時に溶融して液相を生じ、緻密化を促進する焼結助剤として機能する。絶縁材料中の添加元素成分の、上記酸化物換算した重量での合計含有量(以下、W1と記す)が0.1重量%未満になると、焼結体を緻密化させることが困難となり、材料の高温強度と高温での耐電圧特性が却って不足する。一方、W1が15.0重量%を超えると材料の高温強度が損なわれることにつながる。それ故、添加元素成分の合計含有量W1は0.1〜15.0重量%とするのがよく、より望ましくは3.0〜10.0重量%とするのがよい。
【0072】
このうち、Ba成分とB成分とは、絶縁材料の高温強度を顕著に向上させる効果も有する。そして、Ba成分は、BaOに換算した重量(以下、WBaOと記す)にて0.02〜0.80重量%含有させるのがよい。WBaOが0.02重量%未満になると、BaO配合による高温強度向上の効果が顕著ではなくなる。また、WBaOが0.80重量%を超えると材料の高温強度が損なわれることにつながる。WBaOは望ましくは0.15〜0.50重量%の範囲で調整するのがよい。一方、B成分は、B2O3換算した重量(以下、WB2O3と記す)にて0.01〜0.75重量%含有させるのがよい。WB2O3が0.01重量%未満になると、WB2O3配合による高温強度向上の効果が顕著ではなくなる。また、WB2O3が0.75重量%を超えると材料の高温強度が損なわれることにつながる。WB2O3は望ましくは0.15〜0.50重量%の範囲で調整するのがよい。
【0073】
なお、添加元素成分を焼結助剤としてより有効に機能させるためには、Al2O3よりも低温に設定される所定の焼結温度にて、流動性の良好な液相を過不足なく発生させることが重要である。このためには、各成分を単独で配合するよりも、複数種類取り混ぜて配合することが有効である場合が多い。例えば、上記5種類の第一添加成分を全て酸化物の形で配合する場合は、最終的に得られる材料が、Si成分をSiO2に換算した重量にて1.50〜5.00重量%含有し、Ca成分をCaOに換算した重量にて1.20〜4.00重量%含有し、Mg成分をMgOに換算した重量にて0.05〜0.17重量%含有し、Ba成分をBaOに換算した重量にて0.15〜0.50重量%含有し、B成分をB2O3に換算した重量にて0.15〜0.50重量%含有するものとなっていることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下、本発明の実施の形態を図面に示すいくつかの実施例を参照して説明する。(実施例1)図1及び図2は、本発明の第一の構成に係るスパークプラグの一実施例を示す。該スパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0075】
主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。なお、1eは、主体金具1を取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合させる工具係合部であり、六角状の軸断面形状を有している。
【0076】
次に、絶縁体2の軸方向には貫通孔6が形成されており、その一方の端部側から端子金具13が挿入・固定され、同じく他方の端部側から中心電極3が挿入・固定されている。また、該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層16,17を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。これら抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17とが焼結導電材料部を構成している。なお、抵抗体15は、ガラス粉末と導電材料粉末(及び必要に応じてガラス以外のセラミック粉末)との混合粉末を原料とし、後述のガラスシール工程においてこれを加熱・プレスすることにより得られる抵抗体組成物で構成される。なお、抵抗体15を省略して、一層の導電性ガラスシール層により端子金具13と中心電極3とを一体化した構成としてもよい。
【0077】
絶縁体2は、内部に自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有し、全体が以下の絶縁材料により構成されている。すなわち、該絶縁材料はアルミナを主体に構成され、Al成分を、Al2O3に換算した重量にて85〜98重量%(望ましくは90〜98重量%)含有するアルミナ系セラミック焼結体として構成される。
【0078】
Al以外の成分の具体的な組成としては下記のようなものを例示できる。
Si成分:SiO2換算重量で1.50〜5.00重量%;
Ca成分:CaO換算重量で1.20〜4.00重量%;
Mg成分:MgOに換算重量で0.05〜0.17重量%;
Ba成分:BaOに換算重量で0.15〜0.50重量%;
B成分:B2O3換算重量で0.15〜0.50重量%。
【0079】
図1に示すように、絶縁体2の軸方向中間には、周方向外向きに突出する突出部2eが例えばフランジ状に形成されている。そして、絶縁体2には、中心電極3(図1)の先端に向かう側を前方側として、該突出部2eよりも後方側がこれよりも細径に形成された本体部2bとされている。一方、突出部2eの前方側にはこれよりも細径の第一軸部2gと、その第一軸部2gよりもさらに細径の第二軸部2iがこの順序で形成されている。なお、本体部2bの外周面後端部にはコルゲーション部2cが形成されている。また、第一軸部2gの外周面は略円筒状とされ、第二軸部2iの外周面は先端に向かうほど縮径する略円錐面状とされている。
【0080】
他方、中心電極3の軸断面径は抵抗体15の軸断面径よりも小さく設定されている。そして、絶縁体2の貫通孔6は、中心電極3を挿通させる略円筒状の第一部分6aと、その第一部分6aの後方側(図面上方側)においてこれよりも大径に形成される略円筒状の第二部分6bとを有する。図1に示すように、端子金具13と抵抗体15とは第二部分6b内に収容され、中心電極3は第一部分6a内に挿通される。中心電極3の後端部には、その外周面から外向きに突出して電極固定用凸部3cが形成されている。そして、上記貫通孔6の第一部分6aと第二部分6bとは、図4(a)の第一軸部2g内において互いに接続しており、その接続位置には、中心電極3の電極固定用凸部3cを受けるための凸部受け面6cがテーパ面あるいはアール面状に形成されている。
【0081】
また、第一軸部2gと第二軸部2iとの接続部2hの外周面は段付面とされ、これが主体金具1の内面に形成された主体金具側係合部としての凸条部1cとリング状の板パッキン63を介して係合することにより、軸方向の抜止めがなされている。他方、主体金具1の後方側開口部内面と、絶縁体2の外面との間には、フランジ状の突出部2eの後方側周縁と係合するリング状の線パッキン62が配置され、そのさらに後方側にはタルク等の充填層61を介してリング状の線パッキン60が配置されている。そして、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側に押し込み、その状態で主体金具1の開口縁をパッキン60に向けて内側に加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2に対して固定されている。
【0082】
図4(a)及び図4(b)は絶縁体2のいくつかの例を示すものである。その各部の寸法を以下に例示する。
・全長L1:30〜75mm。
・第一軸部2gの長さL2:0〜30mm(ただし、突出部2eとの接続部2fを含まず、第二軸部2iとの接続部2hを含む)。
・第二軸部2iの長さL3:2〜27mm。
・本体部2bの外径D1:9〜13mm。
・突出部2eの外径D2:11〜16mm。
・第一軸部2gの外径D3:5〜11mm。
・第二軸部2iの基端部外径D4:3〜8mm。
・第二軸部2iの先端部外径D5(ただし、先端面外周縁にアールないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、該アール部ないし面取部の基端位置における外径を指す):2.5〜7mm。
・貫通孔6の第二部分6bの内径D6:2〜5mm。
・貫通孔6の第一部分6aの内径D7:1〜3.5mm。
・第一軸部2gの肉厚t1:0.5〜4.5mm。
・第二軸部2iの基端部肉厚t2(中心軸線Oと直交する向きにおける値):0.3〜3.5mm。
・第二軸部2iの先端部肉厚t3(中心軸線Oと直交する向きにおける値;ただし、先端面外周縁にアールないし面取りが施される場合は、中心軸線Oを含む断面において、該アール部ないし面取部の基端位置における肉厚を指す):0.2〜3mm。
・第二軸部2iの平均肉厚tA((t2+t3)/2):0.25〜3.25mm。
【0083】
また、図1において、絶縁体2の主体金具1の後方側に突出している部分2kの長さLQは、23〜27mm(例えば25mm程度)である。さらに、絶縁体2の中心軸線Oを含む縦断面を取ったときに、絶縁体2の突出部分2kの外周面において、主体金具1の後端縁に対応する位置から、コルゲーション2cを経て絶縁体2の後端縁に至るまでの、その断面外形線に沿って測った長さLPは26〜32mm(例えば29mm程度)である。
【0084】
なお、図4(a)に示す絶縁体2における上記各部寸法は、例えば以下の通りである:L1=約60mm、L2=約10mm、L3=約14mm、D1=約11mm、D2=約13mm、D3=約7.3mm、D4=5.3mm、D5=4.3mm、D6=3.9mm、D7=2.6mm、t1=3.3mm、t2=1.4mm、t3=0.9mm、tA=1.15mm。
【0085】
また、図4(b)に示す絶縁体2は、第一軸部2g及び第二軸部2iがそれぞれ、図4(a)に示すものと比較してやや大きい外径を有している。各部の寸法は、例えば以下の通りである:L1=約60mm、L2=約10mm、L3=約14mm、D1=約11mm、D2=約13mm、D3=約9.2mm、D4=6.9mm、D5=5.1mm、D6=3.9mm、D7=2.7mm、t1=3.3mm、t2=2.1mm、t3=1.2mm、tA=1.65mm。
【0086】
次に、図3に示すように、絶縁体2の表面、具体的にはコルゲーション部2cを含む本体部2bの外周面と、第一軸部2gの外周面とに釉薬層2dが形成されている。釉薬層2dの形成厚さは10〜150μm、望ましくは20〜50μmとされる。なお、図1に示すように、本体部2bに形成された釉薬層2dは、その軸方向前方側が主体金具1の内側に所定長入り込む形で形成される一方、後方側は本体部2bの後端縁位置まで延びている。他方、第一軸部2gに形成された釉薬層2dは、主体金具1の内周面との接触領域を包含するように、例えばその軸方向中間位置から、板パッキン63が当接する接続部2hに至る領域に形成されている。
【0087】
次に、釉薬層2dは、主カチオン成分がSi、B、Zn及びBaと、Na、K及びLiから選ばれる2種(共添加アルカリ金属成分)とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%含有するとともに、共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%含有する釉薬にて構成されている。
【0088】
具体的には、該釉薬は、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%、Na成分をNa2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%、K成分をK2Oに酸化物換算した重量にて3〜9重量%それぞれ含有し、Si成分、B成分、Zn成分、Ba成分及び共添加アルカリ金属成分の、各酸化物換算した値における合計含有量は95重量%以上とされる。この釉薬は、Pb成分を実質的に含有しないか、含有していてもその含有量がPbO換算にて1.0重量%以下のものとなっている。また、該釉薬には、補助カチオン成分として、Al、Ca、Fe、Zr、Ti、Sr、Mg、Bi、Ni、Sn、P及びMnの1種又は2種以上を、AlはAl2O3に、CaはCaOに、FeはFe2O3に、ZrはZrO2に、TiはTiO2に、SrはSrOに、MgはMgOに、BiはBi2O3に、NiはNiOに、SnはSnO2に、PはP2O5に、MnはMnOにそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で5重量%以下の範囲で含有されていてもよい。
【0089】
次に、中心電極3及び接地電極4の各本体部3a及び4aはNi合金等で構成されている。また、中心電極3の本体部3aの内部には、放熱促進のためにCuあるいはCu合金等で構成された芯材3bが埋設されている。一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、Ir、Pt及びRhの1種又は2種以上を主成分とする貴金属合金を主体に構成される。図2(b)に示すように、中心電極3の本体部3aは先端側が縮径されるとともにその先端面が平坦に構成され、ここに上記発火部を構成する合金組成からなる円板状のチップを重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等により溶接部Wを形成してこれを固着することにより発火部31が形成される。また、対向する発火部32は、発火部31に対応する位置において接地電極4にチップを位置合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部Wを形成してこれを固着することにより形成される。なお、これらチップは、例えば表記組成となるように各合金成分を配合・溶解することにより得られる溶解材、又は合金粉末あるいは所定比率で配合された金属単体成分粉末を成形・焼結することにより得られる焼結材により構成することができる。なお、発火部31及び対向する発火部32は少なくとも一方を省略する構成としてもよい。
【0090】
上記スパークプラグ100は、例えば下記のような方法で製造される。まず、絶縁体2であるが、これは原料粉末として、アルミナ粉末と、Si成分、Ca成分、Mg成分、Ba成分及びB成分の各成分源粉末を、焼成後に酸化物換算にて前述の組成となる所定の比率で配合し、所定量の結合剤(例えばPVA)と水とを添加・混合して成形用素地スラリーを作る。なお、各成分源粉末は、例えばSi成分はSiO2粉末、Ca成分はCaCO3粉末、Mg成分はMgO粉末、Ba成分がBaCO3粉末、B成分がH3BO3粉末の形で配合できる。なお、H3BO3は溶液の形で配合してもよい。
【0091】
成形用素地スラリーは、スプレードライ法等により噴霧乾燥されて成形用素地造粒物とされる。そして、成形用素地造粒物をラバープレス成形することにより、絶縁体の原形となるプレス成形体を作る。図9は、ラバープレス成形の工程を模式的に示している。ここでは、内部に軸方向に貫通するキャビティ301を有するゴム型300が使用され、そのキャビティ301の下側開口部に下パンチ302が嵌め込まれる。また、下パンチ302のパンチ面には、キャビティ301内においてその軸方向に延びるとともに、絶縁体2の貫通孔6(図1)の形状を規定するプレスピン303が一体的に凸設されている。
【0092】
この状態でキャビティ301内に、所定量の成形用素地造粒物PGを充填し、キャビティ301の上側開口部を上パンチ304で塞いで密封する。この状態でゴム型300の外周面に液圧を印加し、キャビティ301の造粒物PGを該ゴム型300を介して圧縮することにより、図10に示すようなプレス成形体305を得る。なお、成形用素地造粒物PGは、プレス時における造粒物PGの粉末粒子への解砕が促進されるよう、該成形用素地造粒物PGの重量を100重量部として、0.7〜1.3重量部の水分が添加された後、上記プレス成形が行われる。成形体305は、外面側がグラインダ切削等により加工されて、図1の絶縁体2に対応した外形形状に仕上げられ、次いで温度1400〜1600℃で焼成されて絶縁体2となる。
【0093】
他方、釉薬スラリーの調製を以下のようにして行う。まず、Si、B、Zn、Ba、Na及びKの各成分源となる成分源粉末(例えば、Si成分はSiO2粉末、B成分はH3BO3粉末、ZnはZnO粉末、Ba成分はBaCO3粉末、NaはNa2CO3粉末、KはK2CO3粉末)を、Si成分はSiO2に酸化物換算した重量にて18〜35重量%、B成分はB2O3に酸化物換算した重量にて25〜40重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて10〜25重量%、BaをBaOに酸化物換算した重量にて7〜20重量%となるように配合するとともに、前記共添加アルカリ金属成分については、NaはNa2O、KはK2Oに酸化物換算した重量にて、それぞれ3〜9重量%配合して混合する。次いで、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕することにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリットにカオリン、蛙目粘土等の粘土鉱物と有機バインダーとを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより釉薬スラリーを得る。
【0094】
そして、図10に示すように、この釉薬スラリーSを噴霧ノズルNから絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、釉薬粉末堆積層としての釉薬スラリー塗布層2d’を形成し、これを乾燥する。
【0095】
次に、この釉薬スラリー塗布層2d’を形成した絶縁体2への、中心電極3と端子金具13との組付け、及び抵抗体15と導電性ガラスシール層16,17との形成工程の概略は以下の通りである。まず、図11(a)に示すように、絶縁体2の貫通孔6に対し、その第一部分6aに中心電極3を挿入した後、(b)に示すように導電性ガラス粉末Hを充填する。そして、(c)に示すように、貫通孔6内に押さえ棒28を挿入して充填した粉末Hを予備圧縮し、第一の導電性ガラス粉末層26を形成する。次いで抵抗体組成物の原料粉末を充填して同様に予備圧縮し、さらに導電性ガラス粉末を充填して予備圧縮を行うことにより、図11(d)に示すように、中心電極3側(下側)から貫通孔6内には、第一の導電性ガラス粉末層26、抵抗体組成物粉末層25及び第二の導電性ガラス粉末層27が積層された状態となる。
【0096】
そして、図12(a)に示すように、貫通孔6に端子金具13を上方から配置した組立体PAを形成する。この状態で炉内に挿入してガラス軟化点以上である800〜950℃の所定温度に加熱し、その後、端子金具13を貫通孔6内へ中心電極3と反対側から軸方向に圧入して積層状態の各層25〜27を軸方向にプレスする。これにより、同図(b)に示すように、各層は圧縮・焼結されてそれぞれ導電性ガラスシール層16、抵抗体15及び導電性ガラスシール層17となる(以上、ガラスシール工程)。
【0097】
ここで、釉薬スラリー塗布層2d’に含まれる釉薬フリットは、前述の組成を採用することでその軟化温度が600〜700℃となっており、Na成分及びK成分の含有量が比較的高めに設定されていることから、従来の鉛ケイ酸塩ガラス系の釉薬よりも軟化温度が低く、釉焼温度を800〜950℃と低温化できる。従って、図12に示すように、釉薬スラリー塗布層2d’は、上記ガラスシール工程における加熱により同時に釉焼されて釉薬層2dとなる。また、見方を変えれば、ガラスシール工程の加熱温度が、従来の900〜1000℃から800〜950℃へ低温化されているので、中心電極3や端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。また、上記組成の釉薬は、絶縁体2を構成するアルミナ系絶縁材料との線膨張係数の差が比較的小さいので、この釉焼工程を兼ねたガラスシール工程の冷却時において、釉薬層2dにヒビ割れ等が生じにくい。
【0098】
こうしてガラスシール工程が完了した組立体PAには、主体金具1や接地電極4等が組み付けられて、図1に示すスパークプラグ100が完成する。スパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。ここで、釉薬層2dを構成する釉薬は、前述の通りアルカリ金属成分の含有量がかなり高くなっているが、NaとKの2種類のアルカリ金属成分を組み合わせて添加しているため導電率がそれほど増加せず、良好な絶縁性が確保されており、耐フラッシュオーバ性に優れる。
【0099】
なお、本発明のスパークプラグは図1に示すタイプのものに限らず、例えば図5に示すように、接地電極4の先端を中心電極3の側面と対向させてそれらの間に火花ギャップgを形成したものであってもよい。この場合、接地電極4は、図6(a)に示すように、中心電極3の両側に各1ずつの計2つ設ける態様の他、同図(b)に示すように、中心電極3の周りに3ないしそれ以上のものを配置することもできる。また、図7に示すように、スパークプラグ100を、絶縁体2の先端部を中心電極3の側面と接地電極4の先端面との間に進入させたセミ沿面放電型スパークプラグとして構成してもよい。この構成では、絶縁体2の先端部の表面に沿う形で火花放電が起こるので、気中放電型のスパークプラグと比べて耐汚損性が向上する。
【0100】
(実施例2)
以下、本発明の第二の構成に係るスパークプラグの実施例について説明する。該実施例2のスパークプラグの構成は、釉薬層の組成を除いて、実施例1と全く同一であり、釉薬層以外の部分についての説明は、図1〜図7を援用してその詳細な説明を省略する。釉薬層2dは、主カチオン成分がSi、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下とした釉薬にて構成されている。
【0101】
具体的には、上記釉薬層の組成は、以下の4つの態様の少なくとも1のものを満足するように調整することができる。(1)Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜38重量%とする。(2)ZrのZrO2換算重量含有率を3.4重量%以下とする。(3)TiのTiO2換算重量含有率を1.5重量%以上とする。(4)ZrのZrO2換算重量含有率をWZr 、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrを0.2〜10とする。
【0102】
上記の釉薬層2dを有するスパークプラグ100の製法は、使用する釉薬スラリーの原料配合組成が異なるのみで、他は実施例1とほぼ同様である。釉薬スラリーの調製は、Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の各成分源となる成分源粉末(例えば、Si成分はSiO2粉末、B成分はH3BO3粉末、ZnはZnO粉末、Ba成分はBaCO3粉末、TiはTiO2粉末、ZrはZrO2粉末)を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有するものとなるように配合して混合する。なお、Na、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として配合する場合は、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下となるように成分源粉末を配合する。次いで、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらに粉砕することにより釉薬フリットを作る。そして、この釉薬フリットにカオリン、蛙目粘土等の粘土鉱物と有機バインダーとを適量配合し、さらに水を加えて混合することにより釉薬スラリーを得る。
【0103】
上記のようなアルカリ金属成分とB成分との含有量範囲を選択することで、粘度が小さく流動性に富む釉薬スラリーを容易に調製することが可能となる。図10を援用して示すように、この釉薬スラリーSを噴霧ノズルNから絶縁体2の必要な表面に噴霧・塗布することにより、厚さが均一で気泡巻き込み等の少ない釉釉薬スラリー塗布層2d’を形成できる。以下、乾燥から釉焼を経てスパークプラグを得る工程は、実施例1とほぼ同様であるので詳細な説明は省略する。釉焼により、厚さが均一で欠陥の少ない釉薬層2dを得ることができる。また、実施例1と同様に釉薬軟化温度が600〜700℃と低く、結果としてガラスシール工程の加熱温度が、従来の900〜1000℃から800〜950℃へ低温化されているので、中心電極3や端子金具13の表面への酸化も生じにくくなる。さらに、上記組成の釉薬は、絶縁体2を構成するアルミナ系絶縁材料との線膨張係数の差が比較的小さいので、この釉焼工程を兼ねたガラスシール工程の冷却時において、釉薬層2dにヒビ割れ等が生じにくい。他方、釉薬層2dを構成する釉薬は、アルカリ金属成分の含有量が少ないので、良好な絶縁性が確保され、耐フラッシュオーバ性に優れる。
【0104】
なお、上記実施例1及び実施例2のスパークプラグは、組成の選び方よっては、釉薬層2dが同一のものとなる場合がある。この場合、第一の構成における効果と、第二の構成における効果とを同時に達成できることとなる。
【実験例】
【0105】
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行なった。
(実験例1)
絶縁体2を次のようにして作製した。まず、原料粉末として、アルミナ粉末(アルミナ95重量%、Na含有量(Na2O換算値)0.1重量%、平均粒径3.0μm)に対し、SiO2(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、CaCO3(純度99.9%、平均粒径2.0μm)、MgO(純度99.5%、平均粒径2μm)、BaCO3(純度99.5%、平均粒径1.5μm)、H3BO3(純度99.0%、平均粒径1.5μm)、ZnO(純度99.5%、平均粒径2.0μm)を所定比率にて配合するとともに、この配合した粉末総量を100重量部として、親水性バインダとしてのPVAを3重量部と、水103重量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作製した。
【0106】
次いで、これら組成の異なるスラリーをそれぞれスプレードライ法により乾燥して、球状の成形用素地造粒物を調製した。なお、造粒物は、ふるいにより粒径50〜100μmに整粒している。そして、この造粒物を図9を用いて説明したラバープレス法により圧力50MPaにて成形し、その成形体の外周面にグラインダ研削を施して所定の絶縁体形状に加工するとともに、温度1550℃で焼成することにより絶縁体2を得た。なお、蛍光X線分析により、絶縁体2は下記の組成を有していることがわかった:
Al成分:Al2O3換算重量で94.9重量%;
Si成分:SiO2換算重量で2.4重量%;
Ca成分:CaO換算重量で1.9重量%;
Mg成分:MgOに換算重量で0.1重量%;
Ba成分:BaOに換算重量で0.4重量%;
B成分:B2O3換算重量で0.3重量%。
【0107】
また、図4(a)を援用して示す絶縁体2の各部寸法は以下の通りである:L1=約60mm、L2=約8mm、L3=約14mm、D1=約10mm、D2=約13mm、D3=約7mm、D4=5.5mm、D5=4.5mm、D6=4mm、D7=2.6mm、t1=1.5mm、t2=1.45mm、t3=1.25mm、tA=1.35mm。さらに、図1を援用して示すと、絶縁体2の主体金具1の後方側に突出している部分2kの長さLQは25mmであり、絶縁体2の中心軸線Oを含む縦断面を取ったときに、絶縁体2の突出部分2kの外周面において、主体金具1の後端縁に対応する位置から、コルゲーション2cを経て絶縁体2の後端縁に至るまでの、その段面外形線に沿って測った長さLPは29mmである。
【0108】
次に、釉薬スラリーを次のようにして調製した。まず、原料としてSiO2(純度99.5%)、H3BO3粉末(純度98.5%)、ZnO粉末(純度99.5%)、BaCO3粉末(純度99.5%)、Na2CO3粉末(純度99.5%)、K2CO3粉末(純度99%)、Al2O3粉末(純度99.5%)、Fe2O3粉末(純度99.0%)、CaCO3粉末(純度99.8%)、TiO2粉末(純度99.5%)、SrCO3粉末(純度99%)、SnO2粉末(純度99%)、FeO粉末(純度99%)を各種比率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化し、さらにアルミナ製ポットミルにより粒径50μm以下に粉砕することにより釉薬フリットを作製した。そして、この釉薬フリット100重量部に対し粘土鉱物としてのニュージーランドカオリンを3重量部、及び有機バインダーとしてのPVAを2重量部配合し、さらに水を100重量部加えて混合することにより釉薬スラリーを得た。
【0109】
この釉薬スラリーを、図10のように噴霧ノズルより絶縁体2の表面に噴霧後、乾燥して釉薬スラリー塗布層2d’を形成した。なお、乾燥後の釉薬の塗布厚さは80μm程度である。この絶縁体2を用いて、図11〜図12を用いて既に説明した方法により、図1に示すスパークプラグ100を各種作成した。ただし、ねじ部7の外径は14mmとした。また、抵抗体15の原料粉末としてはB2O3−SiO2−BaO−Li2O系ガラス、ZrO2粉末、カーボンブラック粉末、TiO2粉末、金属Al粉末を、導電性ガラスシール層16,17の原料粉末としてはB2O3−SiO2−Na2O系ガラス、Cu粉末、Fe粉末、Fe−B粉末をそれぞれ用い、ガラスシール時の加熱温度、すなわち釉焼温度は900℃にて行った。なお、各絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの厚さはおおむね50μm程度であった。
【0110】
他方、粉砕せずに塊状に凝固させた釉薬試料も作製した。なお、この塊状の釉薬試料は、X線回折によりガラス化(非晶質化)したものであることを確認した。これを用いて下記の実験を行った。化学組成分析:蛍光X線分析による。各試料毎の分析値(酸化物換算した値による)を表1及び表3に示している。なお、絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの各組成をEPMA法により測定したが、該塊状試料を用いて測定した分析値とほぼ一致していることが確認できた。熱膨張係数:塊状試料から寸法5mm×5mm×10mmの測定試料を切り出し、公知のディラトメータ法により20℃から350℃までの平均値として測定している。また、絶縁体2からも上記寸法の測定試料を切り出し、同様の測定を行ったところ、その値は73×10−7/℃であった。軟化温度:粉末試料50mgを加熱しながら示差熱分析を行い、室温より測定開始し、第2番目の吸熱ピークとなった温度を軟化温度として測定した。
【0111】
また、各スパークプラグについては、500℃での絶縁抵抗測定を、図8を用いて既に説明した方法により通電電圧1000Vにて行った。また、絶縁体2に対する釉薬層2dの形成状態を目視にて観察した。以上の結果を表1〜表4に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
すなわち、本発明の第一の構成の要件を満足する釉薬層を形成したスパークプラグについては、釉薬層にヒビ割れその他の欠陥が生じておらず、800〜950℃の低温の釉焼温度でも良好な釉薬層が得られていることがわかる。また、アルカリ金属成分の含有量が多いにも拘わらず、500℃の絶縁抵抗は200MΩ以上と高く、良好な耐フラッシュオーバ性を有することが示唆されている。
【0117】
(実験例2)
実験例1と全く同様の形状及び材質の絶縁体2を用意した。また、釉薬スラリーを次のようにして調製した。まず、原料としてSiO2(純度99.5%)、H3BO3粉末(純度98.5%)、ZnO粉末(純度99.5%)、BaCO3粉末(純度99.5%)、Na2CO3粉末(純度99.5%)、K2CO3粉末(純度99%)、Li2CO3粉末(純度99%)、Al2O3粉末(純度99.5%)、CaCO3粉末(純度99.8%)、TiO2粉末(純度99.5%)、ZrO2粉末(純度98%)を各種比率で配合し、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を水中に投じて急冷・ガラス化した後、さらにアルミナ製ポットミルにて平均粒径9〜10μmに粉砕することにより釉薬フリットを作製した。そして、粘土鉱物としてのカオリン(英国カオリン)を10重量%、アクリル系有機バインダーを1重量%、水を35重量%、残部が上記釉薬フリットとなるように配合・混合することにより釉薬スラリーを得た。
【0118】
得られた各スラリーは、釉薬フリットからのB成分及びアルカリ金属成分の溶出状態を安定化させるために、40℃の恒温槽中にて10日間放置した後、B型粘度計(形式:B型、東京計器社製、型番BH)を用いて測定した。
【0119】
そして、上記の釉薬スラリーを用いた点を除いて、他は実験例1と同様の条件により、図1に示すスパークプラグ100を各種作成した(各釉薬組成毎に1000個)。なお、各絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの厚さはおおむね50μm程度であった。こうして得られた各スパークプラグについては、500℃での絶縁抵抗測定を実施例1と同様に行った。また、絶縁体2に対する釉薬層2dの形成状態を目視にて観察した。
【0120】
他方、粉砕せずに塊状に凝固させた釉薬試料も作製した。なお、この塊状の釉薬試料は、X線回折によりガラス化(非晶質化)したものであることを確認した。これを用いて下記の実験を行った。
(1)化学組成分析:蛍光X線分析による。各試料毎の分析値(酸化物換算した値による)を表5に示している。なお、絶縁体2の表面に形成された釉薬層2dの各組成をEPMA法により測定したが、該塊状試料を用いて測定した分析値とほぼ一致していることが確認できた。
(2)軟化温度:粉末試料50mgを加熱しながら示差熱分析を行い、室温より測定開始し、第2番目の吸熱ピークとなった温度を軟化温度として測定した。結果を表6に示している。
(3)釉焼により得られた釉薬層に対し、ヒビ割れもしくはクレージングが発生していないかどうかを目視により判定し、1000個中の発生個数を求めた。結果を表6に示している。
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
すなわち、本発明の第二の構成の要件を満足する釉薬層を形成したスパークプラグについては、釉薬層の溶融状態が良好で、ヒビ割れやクレージングの発生頻度も小さいことがわかる。とりわけ、また、800〜950℃の低温の釉焼温度でも良好な釉薬層が得られている。また、500℃の絶縁抵抗は200MΩ以上と高く、良好な耐フラッシュオーバ性を有することが示唆されている。また、釉薬層形成に使用した釉薬スラリーは、粘度が比較的小さく、均質で欠陥の少ない釉薬層形成に寄与していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明のスパークプラグの一例を示す全体正面断面図。
【図2】図1の要部の正面部分断面図及びその発火部の近傍をさらに拡大して示す断面図。
【図3】絶縁体の外観を釉薬層とともに示す正面図。
【図4】絶縁体のいくつかの実施例を示す縦断面図。
【図5】本発明のスパークプラグの別の例を示す全体正面図。
【図6】図5の発火部近傍の平面図及びそのその変形例の平面図。
【図7】本発明のスパークプラグのさらに別の例を示す全体正面図。
【図8】スパークプラグの絶縁抵抗値の測定方法を示す説明図。
【図9】ラバープレス法の説明図。
【図10】釉薬スラリー塗布層の形成工程の説明図。
【図11】ガラスシール工程の説明図。
【図12】図11に続く説明図。
【符号の説明】
【0125】
1 主体金具
2 絶縁体
2d 釉薬層
2d’ 釉薬スラリー塗布層(釉薬粉末堆積層)
3 中心電極
4 接地電極
13 端子金具
15 抵抗体(焼結導電材料部)
16,17 導電性ガラスシール層(焼結導電材料部)
S 釉薬スラリー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜38重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項2】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつZrのZrO2換算重量含有率が3.4重量%以下とされるととともに、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項3】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつTiのTiO2換算重量含有率が1.5重量%以上とされるととともに、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項4】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつZrのZrO2換算重量含有率をWZr、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrが0.2〜10とされるととともに、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項5】
前記釉薬は、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種と、前記アルカリ金属成分との合計含有量が8重量%以上である請求項1ないし4のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項6】
前記スパークプラグは、前記絶縁体の貫通孔内において、前記中心電極と一体に、又は導電性結合層を間に挟んで前記中心電極と別体に設けられた軸状の端子金具部を備え、かつ該スパークプラグ全体を約500℃に保持し、前記絶縁体を介して前記端子金具部と前記主体金具との間で通電することにより測定される絶縁抵抗値が200MΩ以上である請求項1ないし5のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項7】
前記絶縁体は、Al成分をAl2O3に酸化物換算した重量にて85〜98重量%含有するアルミナ系絶縁材料で構成されており、前記釉薬は、20〜350℃の温度範囲における前記釉薬の平均の線膨張係数が、50×10−7/℃〜85×10−7/℃である請求項1ないし6のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項8】
前記釉薬の軟化温度が600〜700℃である請求項1ないし7のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、前記主カチオン成分としてのSi、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種との各成分源となる成分源粉末を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有するものとなるように配合して混合後、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を前記絶縁体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉末堆積工程と、その絶縁体を800〜950℃の温度範囲にて焼成することにより、前記釉薬粉末堆積層を前記絶縁体表面に焼き付けて前記釉薬層となす釉焼工程と、を含むことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
【請求項10】
前記絶縁体の軸方向に形成された貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が固定され、同じく他方の端部側に中心電極が固定されるとともに、該貫通孔内において前記端子金具と前記中心電極との間に、それらを電気的に接合するための、主にガラスと導電性材料との混合物からなる焼結導電材料部が形成されたスパークプラグを製造するために、前記絶縁体の貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が配置され、同じく他方の端部側に中心電極が配置されるとともに、該貫通孔内において前記端子金具と前記中心電極との間に、ガラス粉末と導電性材料粉末とを主体とする焼結導電材料原料粉末の充填層を形成した組立体を製造する組立体製造工程と、その加熱された組立体において、前記貫通孔内にて前記中心電極と前記端子金具とを相対的に接近させることにより、前記充填層をそれら中心電極と端子金具と間でプレスして前記焼結導電材料部となすプレス工程と、前記絶縁体の表面に前記釉薬粉末堆積層を形成した状態の前記組立体を、前記800〜950℃の温度範囲に加熱して、前記釉薬粉末堆積層を前記絶縁体表面に焼き付けて前記釉薬層となす工程と、前記充填層中の前記ガラス粉末を軟化させる工程とを同時に行う前記釉焼工程と、を含む請求項9記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項1】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜38重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項2】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつZrのZrO2換算重量含有率が3.4重量%以下とされるととともに、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項3】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつTiのTiO2換算重量含有率が1.5重量%以上とされるととともに、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項4】
中心電極と、前記中心電極の外側に配置された主体金具と、その主体金具に一端が結合されて前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、前記中心電極と前記主体金具との間において、前記中心電極の外側を覆うように配置される絶縁体と、その絶縁体の表面の少なくとも一部を覆う形態で形成される釉薬層とを有し、該釉薬層を構成する釉薬は、カチオン成分の主体(以下、主カチオン成分という)Si、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種とからなり、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有し、かつZrのZrO2換算重量含有率をWZr、TiのTiO2換算重量含有率をWTiとして、WTi/WZrが0.2〜10とされるととともに、かつNa、K及びLiから選ばれる少なくとも1種をアルカリ金属成分として、NaはNa2O、KはK2O、LiはLi2Oに酸化物換算した重量にて、その合計含有量を12重量%以下とし、さらにPbの含有量をPbOに酸化物換算した形にて0.1重量%以下としたことを特徴とするスパークプラグ。
【請求項5】
前記釉薬は、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種と、前記アルカリ金属成分との合計含有量が8重量%以上である請求項1ないし4のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項6】
前記スパークプラグは、前記絶縁体の貫通孔内において、前記中心電極と一体に、又は導電性結合層を間に挟んで前記中心電極と別体に設けられた軸状の端子金具部を備え、かつ該スパークプラグ全体を約500℃に保持し、前記絶縁体を介して前記端子金具部と前記主体金具との間で通電することにより測定される絶縁抵抗値が200MΩ以上である請求項1ないし5のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項7】
前記絶縁体は、Al成分をAl2O3に酸化物換算した重量にて85〜98重量%含有するアルミナ系絶縁材料で構成されており、前記釉薬は、20〜350℃の温度範囲における前記釉薬の平均の線膨張係数が、50×10−7/℃〜85×10−7/℃である請求項1ないし6のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項8】
前記釉薬の軟化温度が600〜700℃である請求項1ないし7のいずれかに記載のスパークプラグ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、前記主カチオン成分としてのSi、B、Zn及びBaと、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種との各成分源となる成分源粉末を、Si成分をSiO2に酸化物換算した重量にて20〜40重量%、B成分をB2O3に酸化物換算した重量にて20〜35重量%、Zn成分をZnOに酸化物換算した重量にて15〜25重量%、Ba成分をBaOに酸化物換算した重量にて10〜23重量%含有するとともに、Ti及びZrは、TiはTiO2に、ZrはZrO2にそれぞれ酸化物換算した重量にて合計で2〜10重量%含有するものとなるように配合して混合後、その混合物を1000〜1500℃に加熱して溶融させ、その溶融物を急冷・ガラス化し粉砕したフリットを用いて釉薬粉末を調製する釉薬粉末調製工程と、その釉薬粉末を前記絶縁体の表面に堆積させて釉薬粉末堆積層を形成する釉薬粉末堆積工程と、その絶縁体を800〜950℃の温度範囲にて焼成することにより、前記釉薬粉末堆積層を前記絶縁体表面に焼き付けて前記釉薬層となす釉焼工程と、を含むことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
【請求項10】
前記絶縁体の軸方向に形成された貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が固定され、同じく他方の端部側に中心電極が固定されるとともに、該貫通孔内において前記端子金具と前記中心電極との間に、それらを電気的に接合するための、主にガラスと導電性材料との混合物からなる焼結導電材料部が形成されたスパークプラグを製造するために、前記絶縁体の貫通孔に対し、その一方の端部側に端子金具が配置され、同じく他方の端部側に中心電極が配置されるとともに、該貫通孔内において前記端子金具と前記中心電極との間に、ガラス粉末と導電性材料粉末とを主体とする焼結導電材料原料粉末の充填層を形成した組立体を製造する組立体製造工程と、その加熱された組立体において、前記貫通孔内にて前記中心電極と前記端子金具とを相対的に接近させることにより、前記充填層をそれら中心電極と端子金具と間でプレスして前記焼結導電材料部となすプレス工程と、前記絶縁体の表面に前記釉薬粉末堆積層を形成した状態の前記組立体を、前記800〜950℃の温度範囲に加熱して、前記釉薬粉末堆積層を前記絶縁体表面に焼き付けて前記釉薬層となす工程と、前記充填層中の前記ガラス粉末を軟化させる工程とを同時に行う前記釉焼工程と、を含む請求項9記載のスパークプラグの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−42656(P2007−42656A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246164(P2006−246164)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【分割の表示】特願平11−76409の分割
【原出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【分割の表示】特願平11−76409の分割
【原出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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