説明

スピロキノン化合物及び医薬組成物

【課題】ABCA1安定化効果が高く、低HDL血症を伴う各種疾患の予防及び/又は治療剤としても有用な新規スピロキノン誘導体を得る。
【解決手段】下記式で表される化合物又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化1】


(式中、R1a〜R1dは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル又はアルコキシ基、R2aは水素原子、アルキル基、ヒドロキシ−又はカルボキシ−アルキル基など、R2bは、ヒドロキシ−、アルコキシ−、スルホニル−、アルキルスルホニル−又はカルボキシ−アルキル基、若しくはアルコキシ基を有する複素環基などを示すか、R2aとR2bとは、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩(以下、単にスピロキノン誘導体と総称する場合がある)及びこのスピロキノン誘導体を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ABCA1(ATP-binding cassette transport 1;ATP結合領域輸送体−1)は、肝臓、小腸、胎盤、副腎を始めとする各種臓器の細胞において、主に細胞膜に存在する蛋白質である。また、ABCA1は、脂質、アミノ酸、ビタミン、糖等の様々な物質の膜輸送に関与していると考えられるABC蛋白質ファミリーに属するものの一つである(「Annual Review of Cell Biology」(米国),8,1992年,p67-113(非特許文献1)参照)。
【0003】
さらに、ABCA1は、細胞の脂質から高密度リポ蛋白質(high-density lipoprotein;HDL)が生ずる反応に不可欠な蛋白質であると共に、HDL産生の律速因子でもあり、ABCA1によるHDLの産生は、HDLを含む細胞コレステロールの主要な放出経路でもある。ここで、HDLとは、主に肝臓及び小腸上皮細胞で合成、分泌されるアポタンパク質A−I(apoAI)などのヘリックス型アポリポタンパク質と、細胞膜に存在するタンパク質ABCA1との作用で生成する脂質・タンパク質複合粒子であり、血中で末梢組織から余剰となったコレステロールを引き抜き、これを肝臓に転送する「コレステロール逆転送系」と呼ばれる脂質代謝の中でも極めて重要な役割を果たしており、「善玉コレステロール」と呼ばれることもある。
【0004】
また、血中のHDL量は、HDLコレステロールの濃度を指標として測定され、一般に血中HDLコレステロールの値が40mg/dl未満である場合、「低HDL血症」と診断される。そして、この低HDL血症は、動脈硬化症を始め、高脂血症、脳梗塞、脳卒中、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム等の種々の疾患における危険因子として高頻度で見られるほか、Tangier病を始めとする様々な遺伝的疾患においても見られる。しかし、HDL自体に作用する有用な低HDL血症予防・治療剤は見当たらず、その出現が望まれていた。
【0005】
前述したように、ABCA1は、HDL産生の律速因子であることから、低HDL血症予防又は治療剤の開発においては、ABCA1によりHDL産生を上昇させる試みが種々行われている。例えば、コレステロールの放出及びHDL濃度の上昇を図るため、直接ABCA1をコードする遺伝子を宿主細胞に導入しABCA1の発現量及び活性を高めること(国際公開WO00/78971号(特許文献1)及び国際公開WO00/78972号(特許文献2)参照)、HDLコレステロール及びトリグリセリドの濃度を調節するため、特定の物質が、ABCA1遺伝子の転写・翻訳を亢進させ、ABCA1の発現量及び活性を高めること(国際公開WO01/15676号(特許文献3)参照)が開示されている。また、ビスフェノール型プロブコール化合物の細胞内へのコレステロール取り込みに関する知見も得られている(「Lipids」(米国),29(12),1994年,p819-823(非特許文献2)参照)。しかし、これらの文献には、プロブコールスピロキノン化合物又はビスフェノール型プロブコール化合物などのABCA1の発現及び低HDL血症予防・治療効果については、具体的には記載されていない。
【0006】
WO2005/67904(特許文献4)には、高脂血症治療剤であるプロブコールの代謝物であるプロブコールスピロキノン、プロブコールジフェノキノン及びプロブコールビスフェノールによる低HDL血症予防・治療剤が開示されている。しかし、これらのプロブコール類では、ABCA1の安定かつ継続的な発現、及び低HDL血症の予防・治療効果の点が十分とはいえない。なお、「Bulletin de la Societe Chimique de France」(フランス),7-8(Pt.2),1973年,p2297-2300(非特許文献3)には、シクロヘキセン−2−チオンなどのシクロアルケン−2−チオンとR’(R”)CNとの反応によりスピロ環骨格を有するジチオラン−1,3化合物が得られることが記載されている。
【0007】
また、高脂血症治療剤のプロブコールは、HDLを低下させる副作用があることが分かってきており、臨床上問題となっている。この副作用は、プロブコールが、HDL産生に重要な役割を果たすABCA1を不活性化することが原因である。
【特許文献1】国際公開WO00/78971号
【特許文献2】国際公開WO00/78972号
【特許文献3】国際公開WO01/15676号
【特許文献4】国際公開WO05/67904号
【非特許文献1】「Annual Review of Cell Biology」(米国),8,1992年,p67-113
【非特許文献2】「Lipids」(米国),29(12),1994年,p819-823
【非特許文献3】「Bulletin de la Societe Chimique de France」(フランス),7-8(Pt.2),1973年,p2297-2300
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、優れたABCA1安定化作用を有する新規スピロキノン誘導体及びその製造方法、並びに前記スピロキノン誘導体を含有する医薬組成物及びABCA1安定化剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)が高く、血中HDL濃度を改善することができる新規スピロキノン誘導体及びその製造方法、並びに前記スピロキノン誘導体を含有する医薬組成物及びABCA1安定化剤を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、HDL産生を効果的に向上でき、低HDL血症の予防及び/又は治療に有効な低HDL血症改善剤を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、低HDL血症に起因する各種疾患(動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、高脂血症、メタボリックシンドローム、肝硬変、骨髄腫、糖尿病、肥満、慢性腎不全、甲状腺機能異常又は慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)等)の効果的な予防及び/又は治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の新規スピロキノン誘導体が、ABCA1の分解を抑制して効率よく安定化させること、生体に適用しても高いバイオアベイラビリティを示すこと、さらには血中のHDL濃度を効果的に改善でき、結果として低HDL血症及びそれに基づく各種疾患の予防及び/又は治療に有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のスピロキノン誘導体は、下記式(6)で表される化合物(スピロキノン化合物)又はその薬理学的に許容可能な塩である。なお、下記式(6)で表されるスピロキノン化合物には位置番号を付している。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1a〜R1dは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
2aは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基又はピリジル基を示し、
2bは、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、スルホニルアルキル基、アルキルスルホニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基、環状アミノアルキル基、ピリジル基、N,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基、環状アミノ−カルボニル−アルキル基、又はアルコキシ基を有する複素環基を示すか、若しくはR2aとR2bとは、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成する。)
本発明のスピロキノン誘導体は、(i)全てのR1a〜R1dがt−ブチル基であり、R2aが水素原子であり、かつR2bがヒドロキシメチル基である場合、(ii)全てのR1a〜R1dがアルキル基であり、R2aがアルキル基であり、かつR2bがヒドロキシアルキル基である場合、(iii)全てのR1a〜R1dがアルキル基であり、R2aがアルキル基であり、かつR2bがカルボキシアルキル基である場合、(iv)全てのR1a〜R1dがアルキル基であり、R2aがアルキル基であり、かつR2bがN,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基である場合、及び(v)全てのR1a〜R1dがt−ブチル基であり、R2aがメチル基であり、かつR2bが2−メトキシカルボニルエチル基である場合以外の誘導体であってもよい。
【0016】
なお、前記式(6)で表される化合物又はその塩において、ベンゼン環の4位のカルボニル基はヒドロキシル基を形成してもよい。すなわち、本発明のスピロキノン誘導体は、ケトン体に限らずエノール体も包含する。
【0017】
1a〜R1dは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基又は置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基であってもよい。
【0018】
2aは、水素原子又はC1−6アルキル基であってもよく、R2bは、ポリヒドロキシC1−6アルキル基、5又は6員複素環基を置換基として有するヒドロキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC6−10アリール基、スルホニルC1−6アルキル基、C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル基、N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル基、ベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−6アルキル基、N,N−ジC1−6アルキルアミノ−カルボニルC1−6アルキル基、又はアミノ基の窒素原子以外に環の構成原子としてヘテロ原子を有していてもよい5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基を示すか、若しくはR2aとR2bが互いに結合して、隣接する炭素原子とともに、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む3乃至10員複素環を形成してもよい。なお、この複素環基は、置換基を有していてもよいアルキル基、および置換基を有していてもよいアルコキシ基から選択された少なくとも一種の置換基を有していてもよく、複素環を構成するヘテロ原子が窒素原子の場合、この窒素原子は保護基で保護されていてもよい。
【0019】
本発明の製造方法では、下記式(5)で表されるジチオアセタール化合物を酸化剤で処理することにより、前記式(6)で表される化合物又はその薬理学的に許容可能な塩(スピロキノン誘導体)を製造する。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R1a〜R1d、R2a及びR2bは前記に同じ)
前記式(5)で表されるジチオアセタール化合物は、酸の存在下、下記式(3a)及び/又は(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物と、下記式(4)で表されるカルボニル化合物とを反応させることにより製造できる。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R1a〜R1d、R2a及びR2bは前記に同じ)
なお、式(5)、(3a)及び(3b)において、ベンゼン環の4位置のヒドロキシル基はカルボニル基を形成してもよい。すなわち、式(5)で表されるジチオアセタール化合物、式(3a)及び(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物は、エノール体であってもよくケトン体であってもよい。
【0024】
本発明の医薬組成物は、前記スピロキノン誘導体(前記スピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩)と担体とを含有する。また、前記スピロキノン誘導体を有効成分として含有するABCA1安定化剤、前記スピロキノン誘導体を有効成分として含有する低HDL血症改善剤も本発明に包含される。
【0025】
さらに、本発明には、前記スピロキノン誘導体を有効成分として含有する、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、高脂血症、メタボリックシンドローム、肝硬変、骨髄腫、糖尿病、肥満、慢性腎不全、甲状腺機能異常及び慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)からなる群より選択された疾患の予防及び/又は治療剤も含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスピロキノン誘導体は、特定の構造を有しており、優れたABCA1安定化作用を有する。そのため、前記スピロキノン誘導体をABCA1安定化剤として用いたり、担体とともに、医薬組成物として用いるのに有用である。また、前記スピロキノン誘導体は、その特定の構造に基づいて、高いバイオアベイラビリティを示し、少量の使用でもABCA1安定化作用を効果的に発揮でき、血中HDL濃度の改善に有効である。前記スピロキノン誘導体は、ABCA1安定化作用に優れるため、HDL産生を効果的に向上することができる。そのため、前記スピロキノン誘導体は、低HDL血症の予防及び/又は治療に有効であり、低HDL血症改善剤として用いるのに有用である。さらに、前記スピロキノン誘導体は、低HDL血症に起因する各種疾患(動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、高脂血症、メタボリックシンドローム、肝硬変、骨髄腫、糖尿病、肥満、慢性腎不全、甲状腺機能異常又は慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)等)に対して、優れた予防及び/又は治療効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(スピロキノン誘導体)
本発明のスピロキノン誘導体には、下記式で表される化合物(スピロキノン化合物)又はその薬理学的に許容可能な塩(医薬的又は薬学的に許容可能な塩など)が含まれる。
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、R1a〜R1dは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
2aは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基又はピリジル基を示し、
2bは、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、スルホニルアルキル基、アルキルスルホニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基、環状アミノアルキル基、ピリジル基、N,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基、環状アミノ−カルボニル−アルキル基、又はアルコキシ基を有する複素環基を示すか、若しくはR2aとR2bとは、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成する。)
前記式において、R1a、R1b、R1cおよびR1dで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。
【0030】
また、R1a〜R1dで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、デシル基などのC1−10アルキル基が例示できる。
【0031】
1a〜R1dで表されるアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子など。好ましくはフッ素、塩素、臭素原子)、ヒドロキシル基、アルコキシ基[メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基、さらに好ましくは低級アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)など]、ハロアルコキシ基[前記アルコキシ基に対応するフルオロアルコキシ基(フルオロメトキシ基(トリフルオロメトキシ基など)、フルオロエトキシ基(2,2,2−トリフルオロエトキシ基、パーフルオロエトキシ基など)、パーフルオロプロポキシ基など)、このフルオロアルコキシ基に対応するクロロアルコキシ基、ブロモアルコキシ基及びヨードアルコキシ基など]、アシル基(ホルミル基、アセチル、プロピオニル、ブチリル基などのC1−10アルキルカルボニル基、好ましくはC1−6アルキル−カルボニル基、さらに好ましくはC1−4アルキル−カルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基などのC3−10シクロアルキル−カルボニル基、ベンゾイル基などのC6−10アリール−カルボニル基、ベンジルカルボニル基などのC6−10アリール−C1−4アルキルカルボニル基など)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基などのC2−10アシルオキシ基、好ましくはC2−6アシルオキシ基、さらに好ましくはC2−4アシルオキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基[メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシ−カルボニル基、好ましくはC1−6アルコキシ−カルボニル基、低級アルコキシカルボニル基(C1−4アルコキシ−カルボニル基など)など]、カルバモイル基、N−置換カルバモイル基[前記例示の置換カルバモイル基、例えば、N−モノC1−6アルキルカルバモイル基、N−C1−6アシル−カルバモイル基、N,N−ジC1−6アルキルカルバモイル基、N,N−ジC1−6アシル−カルバモイル基など]、シアノ基及びニトロ基から選択された少なくとも一種の置換基が挙げられる。
【0032】
1a〜R1dで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、s−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、ネオヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、デシルオキシ基などのC1−10アルコキシ基が例示できる。
【0033】
1a〜R1dで表されるアルコキシ基の置換基としては、前記アルキル基の置換基の項で例示の置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0034】
1a〜R1dは水素原子であってもよいが、アルキル基又はアルコキシ基(例えば、C1−6アルキル基又はC1−6アルコキシ基)である場合が多い。これらのアルキル基及びアルコキシ基は直鎖状であってもよいが分岐鎖状である場合が多い。好ましいアルキル基は、分岐鎖状アルキル基、例えば、イソプロピル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、ネオヘキシル基などの分岐鎖C3−6アルキル基である。また、好ましいアルコキシ基は、分岐鎖状アルコキシ基、例えば、イソプロポキシ、s−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソヘキシルオキシ、ネオヘキシルオキシ基などの分岐鎖C3−6アルコキシ基である。
【0035】
前記式において、R1a〜R1dの種類はそれぞれ異なっていてもよいが、通常、R1a=R1c,R1b=R1d、又はR1a=R1b,R1c=R1dである場合が多く、特にR1a=R1c=R1b=R1dである場合が多い。さらに、R1a〜R1dの種類は同一のアルキル基(例えば、t−ブチル基)又はアルコキシ基(例えば、t−ブトキシ基)である場合が多い。
【0036】
前記式において、R2aで表されるアルキル基としては、無置換アルキル基[メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくは低級アルキル基(C1−4アルキル基など)など]が挙げられる。
【0037】
また、R2aで表されるヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基としては、R2aで表されるアルキル基に対応する基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−又は2−ヒドロキシエチル基、1−,2−又は3−ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシC1−10アルキル基、好ましくはヒドロキシC1−6アルキル基、さらに好ましくはヒドロキシC1−4アルキル基などが挙げられる。カルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、1−又は2−カルボキシエチル基、1−,2−又は3−カルボキシプロピル基などのカルボキシC1−10アルキル基、好ましくはカルボキシC1−6アルキル基、さらに好ましくはカルボキシC1−4アルキル基などが挙げられる。N,N−ジアルキルアミノアルキル基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル基、N−メチル−N−エチルアミノメチル基、1−又は2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル基、1−又は2−(N−メチル−N−エチルアミノ)エチル基、1−又は2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基などのN,N−ジC1−10アルキルアミノC1−10アルキル基、好ましくはN,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル基、さらに好ましくはN,N−ジC1−4アルキルアミノC1−4アルキル基などが挙げられる。
【0038】
2aで表されるピリジル基は、2−,3−又は4−ピリジル基のいずれであってもよい。
【0039】
2bで表されるヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−又は2−ヒドロキシエチル基、1−,2−又は3−ヒドロキシプロピル基、1−,2−,3−又は4−ヒドロキシブチル基、ジ乃至テトラヒドロキシブチル基(ジ又はトリヒドロキシブチル基など)、1−,2−,3−,4−又は5−ヒドロキシペンチル基、ジ乃至ペンタヒドロキシペンチル基(トリ又はテトラヒドロキシペンチル基など)などのモノ又はポリヒドロキシアルキル基(モノ又はポリヒドロキシC1−6アルキル基など)、好ましくはモノ乃至ペンタヒドロキシC1−6アルキル基、さらに好ましくはモノ乃至テトラヒドロキシC1−5アルキル基などが挙げられる。また、前記ヒドロキシアルキル基は、さらに酸素、イオウ及び窒素原子から選択された少なくとも一種(好ましくは酸素原子)を、環を構成するヘテロ原子として含む複素環基(例えば、5〜8員複素環、好ましくは5又は6員複素環など)を有していてもよく、この複素環基は、さらに置換基(前記置換基として例示のアルキル基、ヒドロキシル基、前記置換基として例示のアルコキシ基、及び/又はオキソ基など)を有していてもよい。なお、複素環基は、環の構成原子として、複数のヘテロ原子を有していてもよい。また、複素環基は、芳香族性複素環基であってもよいが、通常、非芳香族性複素環基である場合が多い。複素環基の具体例としては、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロフラン−3−オン−2−イル基、ヒドロキシテトラヒドロフラニル基、4−又は5−ヒドロキシテトラヒドロフラン−3−オン−2−イル基、4,5−ジヒドロキシ−2−テトラヒドロフラン−3−オン−イル基などの酸素原子含有複素環基(5又は6員複素環基など);ピロリジニル基、ピペラジニル基などの窒素原子含有複素環基などが挙げられる。
【0040】
好ましい複素環基は、ヒドロキシル基及び/又はオキソ基を有していてもよい5又は6員酸素原子含有複素環基である。R2bで表されるヒドロキシアルキル基としては、このような複素環基を置換基として有するヒドロキシアルキル基(ヒドロキシC1−4アルキル基、好ましくはC1−3アルキル基など)も好ましい。
【0041】
2bで表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、1−又は2−メトキシエチル基、2−メトキシ−1−メチルエチル基、1−,2−又は3−メトキシプロピル基、1−又は2−メトキシブチル基などのメトキシアルキル基(直鎖状又は分岐鎖状メトキシアルキル基など);このメトキシアルキル基に対応するエトキシアルキル、プロポキシアルキル及びブトキシアルキル基などのC1−10アルコキシC1−10アルキル基(例えば、C1−6アルコキシC1−6アルキル基)、好ましくはC1−5アルコキシC1−5アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルコキシC1−4アルキル基などが挙げられる。
【0042】
2bで表されるアルコキシアリール基としては、メトキシフェニル基(2−,3−又は4−メトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基などのモノ又はポリメトキシフェニル基など)、このメトキシフェニル基に対応するエトキシフェニル基、プロポキシフェニル基(n−プロポキシフェニル、i−プロポキシフェニル基など)、ブトキシフェニル基(n−ブトキシフェニル、s−ブトキシフェニル、t−ブトキシフェニル基など)などのアルコキシフェニル基;これらのアルコキシフェニル基に対応するアルコキシナフチル基(例えば、1−又は2−メトキシナフチル基、1,2−、1,3−、1,4−又は1,8−ジメトキシナフチル基など)などのC1−10アルコキシ−C6−14アリール基(例えば、C1−6アルコキシ−C6−10アリール基など)、好ましくはC1−5アルコキシ−C6−10アリール基、さらに好ましくはC1−4アルコキシ−C6−10アリール基などが挙げられる。
【0043】
2bで表されるスルホニルアルキル基としては、R2aの項で例示のアルキル基に対応するスルホニルアルキル基、例えば、スルホニルメチル、1−又は2−スルホニルエチル、1−メチル−1−スルホニルエチル、1,1−ジメチル−2−スルホニルエチル、1−,2−又は3−スルホニルプロピル基などのスルホニルC1−10アルキル基(例えば、スルホニルC1−6アルキル基)、好ましくはスルホニルC1−5アルキル基、さらに好ましくはスルホニルC1−4アルキル基などが挙げられる。
【0044】
2bで表されるアルキルスルホニルアルキル基としては、前記スルホニルアルキル基に対応するアルキルスルホニルアルキル基、例えば、メチルスルホニルメチル、エチルスルホニルメチル、プロピルスルホニルメチル、イソプロピルスルホニルメチル、ブチルスルホニルメチル、s−ブチルスルホニルメチル、t−ブチルスルホニルメチル基などのC1−10アルキルスルホニルメチル基;これらのアルキルスルホニルメチル基に対応するアルキルスルホニルエチル、アルキルスルホニルプロピル、アルキルスルホニルブチル基などのC1−10アルキルスルホニルC1−10アルキル基(例えば、C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル基など)、好ましくはC1−5アルキルスルホニルC1−5アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル基などが挙げられる。
【0045】
2bで表されるカルボキシアルキル基としては、前記R2aの項で例示のカルボキシアルキル基が挙げられる。また、アルコキシカルボニルアルキル基としては、前記カルボキシアルキル基に対応するアルコキシカルボニルアルキル基、例えば、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、イソプロポキシカルボニルメチル、n−ブトキシカルボニルメチル、t−ブトキシカルボニルメチル基などのC1−6アルコキシカルボニルメチル基;これらのアルコキシカルボニルメチル基に対応する1−又は2−(アルコキシカルボニル)エチル基、1−,2−又は3−(アルコキシカルボニル)プロピル基などのC1−6アルコキシ−カルボニル−C1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルコキシカルボニルC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−3アルコキシカルボニルC1−3アルキル基などが挙げられる。
【0046】
2bで表されるN,N−ジアルキルアミノアルキル基としては、N,N−ジメチルアミノメチル、1−又は2−(N−メチル−N−エチルアミノ)エチル、1−又は2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、N,N−ジエチルアミノメチル、1−又は2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、N,N−ジt−ブチルアミノメチル、1−又は2−(N,N−ジt−ブチルアミノ)エチル基などのN,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル基、好ましくはN,N−ジC1−4アルキルアミノC1−4アルキル基、さらに好ましくはN,N−ジC1−3アルキルアミノC1−3アルキル基などが挙げられる。
【0047】
2bで表される環状アミノアルキル基としては、前記R2aの項で例示のアルキル基に対応する環状アミノアルキル基、例えば、1−ピロリジニルメチル、(ピロリジン−2−オン−1−イル)メチル、1−ピペリジニルメチル、(1−インドリニルメチル、(インドリン−2−オン−1−イル)メチル、2−イソインドリニルメチル、(イソインドリン−1,3−ジオン−2−イル)メチル、4−モルホリニルメチル基などの環状アミノメチル基(アミノ基の窒素原子以外に環の構成原子としてヘテロ原子(酸素、イオウ及び/又はチッ素原子など)を有していてもよい環状アミノメチル基など)、この環状アミノメチル基に対応する環状アミノエチル、環状アミノプロピル、環状アミノブチル基などのアレーン環(ベンゼン環などのC6−10アレーン環など)が縮合していてもよい5〜8員環状アミノC1−6アルキル基、好ましくはベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−4アルキル基(環状アミノC1−3アルキル基など)などが挙げられる。
【0048】
2bで表されるピリジル基は、2−、3−又は4−ピリジル基のいずれであってもよい。
【0049】
2bで表されるN,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基としては、前記R2aの項で例示のアルキル基に対応するN,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルメチル、N,N−ジエチルカルバモイルメチル、1−又は2−(N,N−ジメチルカルバモイル)エチル、2−(N,N−ジメチルカルバモイル)−1−メチル−エチル、1−、2−又は3−(N,N−ジメチルカルバモイル)プロピル基などのN,N−ジC1−10アルキル−カルバモイル−C1−10アルキル基(例えば、N,N−ジC1−6アルキルカルバモイル−C1−6アルキル基など)基、好ましくはN,N−ジC1−4アルキル−カルバモイル−C1−4アルキル基、さらに好ましくはN,N−ジC1−4アルキル−カルバモイル−C1−4アルキル基などが挙げられる。
【0050】
2bで表される環状アミノ−カルボニル−アルキル基としては、前記例示の環状アミノアルキル基に対応する基、例えば、1−ピロリジニルカルボニルメチル、1−又は2−(1’−ピロリジニルカルボニル)エチル、(ピロリジン−2−オン−1−イル)カルボニルメチル、1−ピペリジニルカルボニルメチル、(1−インドリニルカルボニルメチル、(インドリン−2−オン−1−イル)カルボニルメチル、2−イソインドリニルカルボニルメチル、(イソインドリン−1,3−ジオン−2−イル)カルボニルメチル、4−モルホリニルカルボニルメチル基、1−又は2−(4−モルホリニルカルボニル)エチル基などのアミノ基の窒素原子以外に環の構成原子としてヘテロ原子(酸素、硫黄及び/又は窒素原子など)を有していてもよい5〜8員環状アミノ基を有するカルボニルC1−10アルキル基、好ましくは5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基、さらに好ましくは環の構成原子として酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−4アルキル基などが挙げられる。
【0051】
2bで表されるアルコキシ基を有する複素環基において、複素環基としては、環を構成するヘテロ原子として、酸素、硫黄及び/又は窒素原子を含む5〜8員複素環基(好ましくは5又は6員複素環基など)が挙げられる。複素環基は、芳香族性であってもよいが、通常、非芳香族性複素環基であってもよい。このような複素環基の具体例としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、フラニル基、1,3−ジオキソラン−2−イル基、1,3−ジオキサン−5−イル基、1,4−ジオキサン−2−イル基、1,3−ジオキセン−4−イル基などの酸素原子含有複素環基;テトラヒドロチエニル、1,3−ジチオラン−2−イル基、チアシクロヘキシル基、チアシクロヘキセニル基などの硫黄原子含有環;ピロリジニル基、ピロリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基などの窒素原子含有環;1,3−オキサチオラン−2−イル基、モルホリニル基などの複数種のヘテロ原子を含む複素環などが挙げられる。また、このような複素環が有するアルコキシ基としては、前記R1a〜R1dの項で例示のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ基などのC1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基、さらに好ましくはC1−4アルコキシ基(特にC1−3アルコキシ基など)などが挙げられる。複素環基は、1つ又は複数(複素環の構成ヘテロ原子の種類及び員数に応じて、例えば、2〜4個、好ましくは2又は3個)のアルコキシ基を有していてもよい。アルコキシ基を有する複素環基のうち、特にアルコキシ基を有し、かつ環を構成するヘテロ原子として、少なくとも酸素原子を含む複素環基が好ましい。このような酸素原子含有複素環の具体例としては、例えば、2−メトキシ−テトラヒドロフラン−3−イル基、4−メトキシ−テトラヒドロフラン−3−イル基、2,5−ジメトキシ−テトラヒドロフラン−3−イル基などのモノ乃至トリC1−6アルコキシ5又は6員複素環、好ましくはモノ又はジC1−4アルコキシ5又は6員複素環などが例示できる。
【0052】
なお、本発明のスピロキノン化合物は、上記式において、(i)全てのR1a〜R1dがt−ブチル基であり、R2aが水素原子であり、かつR2bがヒドロキシメチル基である化合物、(ii)全てのR1a〜R1dがアルキル基であり、R2aがアルキル基であり、かつR2bがヒドロキシアルキル基である化合物、(iii)全てのR1a〜R1dがアルキル基であり、R2aがアルキル基であり、かつR2bがカルボキシアルキル基である化合物、(iv)全てのR1a〜R1dがアルキル基であり、R2aがアルキル基であり、かつR2bがN,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基である化合物、及び(v)全てのR1a〜R1dがt−ブチル基であり、R2aがメチル基であり、かつR2bが2−メトキシカルボニルエチル基である化合物、並びにこれらの誘導体以外の化合物であってもよい。
【0053】
上記式において、R2aとR2bとが互いに結合して、隣接する炭素原子とともに形成する複素環としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む非芳香族性の複素環が挙げられる。複素環の員数は、特に制限されないが、例えば、3〜10員環、好ましくは4〜8員環、さらに好ましくは5又は6員環であってもよい。このような複素環としては、例えば、テトラヒドロフラン、フラン、1,3−ジオキソラン、ジオキサン、ジオキセン基などの酸素原子含有複素環基;テトラヒドロチオフェン、ジチオラン、テトラヒドロチオピラン、チアシクロヘキセンなどの硫黄原子含有複素環;ピロリジン、ピロリン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子含有複素環;1,3−オキサチオラン、モルホリンなどの複数種のヘテロ原子を含む複素環などが挙げられる。複素環は、不飽和複素環であってもよいが、飽和複素環であるのが好ましい。
【0054】
なお、隣接する炭素原子とともに形成する複素環は、通常、スピロキノン化合物の原料である環状ケトンに由来する。そのため、上記複素環は、入手可能な(合成可能な又は市販の)環状ケトン(複素環式ケトン)に対応する複素環であればよい。
【0055】
前記複素環は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、前記R1a〜R1dで表されるアルキル基の置換基の項で例示した置換基などであってもよいが、通常、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基及び置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基から選択された少なくとも一種の基などが挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基としては、前記R1a〜R1dの項で例示のアルキル基及びアルコキシ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシ−カルボニル基、好ましくはC1−6アルコキシ−カルボニル基、低級アルコキシ−カルボニル基(C1−4アルコキシ−カルボニル基など)などが挙げられる。
【0056】
これらのアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基が有していてもよい置換基としては、前記R1a〜R1dで表されるアルキル基の置換基の項で例示した置換基などが挙げられる。
【0057】
なお、前記複素環を構成するヘテロ原子が窒素原子の場合、この窒素原子は保護基で保護されていてもよい。このような保護基としては、イミノ基又はアミノ基の保護基として通常用いられる保護基であればよく、例えば、メチル、エチル、t−ブチル基などのアルキル基(C1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基など);メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのアルコキシ−カルボニル基(例えば、C1−6アルコキシ−カルボニル基、好ましくはC1−4アルコキシ−カルボニル基など)などが挙げられる。これらの保護基のうち、特に、t−ブトキシカルボニル基などの分岐状アルコキシ−カルボニル基が好ましい。
【0058】
スピロキノン化合物の上記式において、R2aとしては、特に、水素原子又はアルキル基が好ましい。また、R2bとしては、ポリヒドロキシアルキル基(ポリヒドロキシC1−6アルキル基、好ましくはジ乃至ペンタヒドロキシC1−6アルキル基など)、5又は6員複素環基を置換基として有するヒドロキシアルキル基(ヒドロキシC1−6アルキル基、好ましくはヒドロキシル基及び/又はオキソ基を有していてもよい5又は6員酸素原子含有環基を置換基として有するヒドロキシC1−4アルキル基など)、アルコキシアルキル基(C1−6アルコキシC1−6アルキル基など)、アルコキシアリール基(C1−6アルコキシC6−10アリール基など)、スルホニルアルキル基(スルホニルC1−6アルキル基など)、アルキルスルホニルアルキル基(C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル基など)、N,N−ジアルキルアミノアルキル基(N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル基など)、環状アミノアルキル基(ベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−6アルキル基など)、N,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基(N,N−ジC1−6アルキルカルバモイルC1−6アルキル基など)、又は環状アミノ−カルボニル−アルキル基(アミノ基の窒素原子以外に環の構成原子としてヘテロ原子を有していてもよい5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基など)などが好ましい。
【0059】
また、R2aとR2bが、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環を形成するのも好ましい。
【0060】
前記式のスピロキノン化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物などが挙げられる
(i)R2aが水素原子であり、R2bがポリヒドロキシアルキル基である化合物:
14−(2,3,4−トリヒドロキシ−n−ブチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(2,3,4,5−テトラヒドロキシ−n−ペンチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−ジ乃至ペンタヒドロキシC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0061】
(ii)R2aが水素原子であり、R2bがヒドロキシル基及び/又はオキソ基を有していてもよい5又は6員酸素原子含有複素環基を置換基として有するヒドロキシアルキル基である化合物:
14−(1−(テトラヒドロフラン−2−イル)−1−ヒドロキシメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(1−(テトラヒドロフラン−5−オン−2−イル)−1−ヒドロキシメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(1−(3−又は4−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)−1−ヒドロキシメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(1−(3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−5−オン−2−イル)−1−ヒドロキシメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−位に5又は6員の酸素原子含有複素環基を置換基として有するヒドロキシC1−6アルキル基を有する2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0062】
(iii)R2aが水素原子であり、R2bがカルボキシアルキル基である化合物:
14−カルボキシメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(2−カルボキシエチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−カルボキシC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0063】
(iv)R2aが水素原子であり、R2bがN,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基である化合物:
14−(N,N−ジメチルカルバモイルメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−(N,N−ジC1−6アルキルカルバモイルC1−6アルキル)−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0064】
(v)R2aが水素原子又はアルキル基であり、R2bがスルホニルアルキル基又はアルキルスルホニルアルキル基である化合物:
14−スルホニルメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−スルホニルC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メチルスルホニルメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン
14−メチル−14−スルホニルメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルキル−14−スルホニルC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メチル−14−メチルスルホニルメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルキル−14−C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0065】
(vi)R2aが水素原子又はアルキル基であり、R2bがアルコキシアルキル基、アルコキシアリール基又はアルコキシ基を有する複素環基である化合物:
14−メトキシメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルコキシC1−6アルキル−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メトキシメチル−14−メチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルコキシC1−6アルキル−14−C1−6アルキル−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メトキシフェニル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルコキシC6−10アリール−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−(2−メトキシ−テトラヒドロフラン−3−イル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(2,5−ジメトキシ−テトラヒドロフラン−3−イル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどのモノ乃至トリスC1−6アルコキシ基が置換した5又は6員酸素原子含有複素環基を、14位に有する2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0066】
(vii)R2aが水素原子又はアルキル基であり、環状アミノ−カルボニル−アルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基、環状アミノアルキル基、又はピリジル基である化合物:
14−(4−モルホリルカルボニルメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(2−(4−モルホリルカルボニル)エチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14位に5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基を有する2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メチル−14−(4−モルホリルカルボニルメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−メチル−14−(2−(4−モルホリルカルボニル)エチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14位に5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基を有する14−C1−6アルキル−2,4,9,11−テトラC1−6アルキル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−(N,N−ジメチルアミノメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(N,N−ジエチルアミノメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−(N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−(N,N−ジメチルアミノメチル)−14−メチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(N,N−ジエチルアミノメチル)−14−メチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−(N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル)−14−C1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−(1−ピロリジニルメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−(イソインドリン−1,3−ジオン−2−イル)メチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどのベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−6アルキル基を14位に有する2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メチル−14−(1−ピロリジニルメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14−メチル−14−(イソインドリン−1,3−ジオン−2−イル)メチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどのベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−6アルキル基を14位に有する14−C1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−(2−又は4−ピリジル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−ピリジル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−メチル−14−(2−又は4−ピリジル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−C1−6アルキル−14−ピリジル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0067】
(viii)R2aが水素原子又はヒドロキシアルキル基であり、R2bがヒドロキシアルキル基である化合物(全てのR1a〜R1dがt−ブチル基であり、R2aが水素原子であり、かつR2bがヒドロキシメチル基である化合物は除く):
14−ヒドロキシメチル−2,4,9,11−テトライソプロピル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−ヒドロキシC1−6アルキル−2,4,9,11−テトライソプロピル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14,14−ジ(ヒドロキシメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14,14−ジ(ヒドロキシC1−6アルキル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
(ix)R2aがカルボキシアルキル基であり、R2bがカルボキシアルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基である化合物:
14,14−ジ(カルボキシメチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン、14,14−ジ(2−カルボキシエチル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14,14−ジ(カルボキシC1−6アルキル)−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン;
14−カルボキシメチル−14−メトキシカルボニルメチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなどの14−カルボキシC1−6アルキル−14−C1−6アルコキシ−カルボニル−C1−6アルキル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオンなど。
【0068】
(x)R2aとR2bとが互いに結合し、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成した化合物:
10,12,16,18−テトラt−ブチル−3−オキサ−7,20−ジチアトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン、3,3−ジメチル−10,12,16,18−テトラt−ブチル−2,4−ジオキサ−7,20−ジチアトリスピロ[5,1,5,0,514,1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン、9,11,15,17−テトラt−ブチル−1−メチル−2−オキサ−6,19−ジチアトリスピロ[4.1.5.0.513.1]ノナデカ−8,11,14,17−テトラエン−10,16−ジオンなどのR2aとR2bとが互いに結合し、隣接する炭素原子とともに酸素原子含有5〜8員複素環を形成した化合物(複素環は、C1−6アルキル基及び/又はC1−6アルコキシ基を有していてもよい);
10,12,16,18−テトラt−ブチル−3,7,20−トリチアトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン、9,11,15,17−テトラt−ブチル−2,6,19−トリチアトリスピロ[4.1.5.0.513.1]ノナデカ−8,11,14,17−テトラエン−10,16−ジオンなどのR2aとR2bとが互いに結合し、隣接する炭素原子とともに硫黄原子含有5〜8員複素環を形成した化合物(複素環は、C1−6アルキル基及び/又はC1−6アルコキシ基を有していてもよい);
2−t−ブトキシカルボニル−9,11,15,17−テトラt−ブチル−6,19−ジチア−2−アザトリスピロ[4.1.5.0.513.1]ノナデカ−8,11,14,17−テトラエン−10,16−ジオン、2−メトキシカルボニル−3−t−ブトキシカルボニル−9,11,15,17−テトラt−ブチル−6,19−ジチア−3−アザトリスピロ[4.1.5.0.513.1]ノナデカ−8,11,14,17−テトラエン−10,16−ジオン、2−t−ブトキシカルボニル−10,12,16,18−テトラt−ブチル−7,20−ジチア−2−アザトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン、2−エチル−10,12,16,18−テトラt−ブチル−7,20−ジチア−2−アザトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン、3−t−ブトキシカルボニル−10,12,16,18−テトラt−ブチル−7,20−ジチア−3−アザトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオンなどのR2aとR2bとが互いに結合し、隣接する炭素原子とともに窒素原子含有5〜8員複素環を形成した化合物(複素環は、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基及び/又はC1−6アルコキシカルボニル基を有していてもよい)など。
【0069】
前記スピロキノン化合物のうち、特に、R2bにアルキルスルホニルアルキル基(アルカンスルホニルアルキル基)、アルコキシアルキル基又はアルコキシアリール基を有する化合物か、若しくはR2aとR2bとが互いに結合し、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成した化合物が好ましい。
【0070】
スピロキノン誘導体には、前記式のスピロキノン化合物の薬理学的に許容可能な塩も含まれる。このような塩としては、前記式のスピロキノン化合物と、酸又は塩基との塩が挙げられる。塩を形成する酸としては、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、有機酸(酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのオキシカルボン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのスルホン酸など)が例示できる。塩基としては、式(1)の化合物の種類に応じて適宜選択でき、例えば、無機塩基(アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩など)、有機塩基(アルキルアミン類、アルカノールアミン類、アルキレンジアミンなどのポリアミン類など)などが挙げられる。これらの酸又は塩基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
なお、前記式のスピロキノン化合物は、無水物又は水和物であってもよく、溶媒和物(エタノールなどの有機溶媒などによる溶媒和物など)などであってもよい。また、前記化合物は、前記式のスピロキノン化合物の官能基(例えば、R1a〜R1d、R2a、R2bなど)が修飾され、生体内で活性を発現するプロドラッグ体であってもよい。プロドラッグ体としては、例えば、加水分解、酸化、還元、エステル交換などの代謝により前記式のスピロキノン化合物に変換し得る化合物(例えば、前記式のスピロキノン化合物のエステル体、エーテル体、アルコール体、アミド体、アミン誘導体など)などが挙げられる。なお、前記式のスピロキノン化合物には、スピロキノン化合物の水和物又は溶媒和物などの他、結晶多形の物質などとして単離されたものも含まれる。また、本発明のスピロキノン誘導体には、前記式のスピロキノン化合物又はその塩の互変異性体、不斉炭素原子を有する光学活性体((R)体,(S)体、ジアステレオマーなど)、ラセミ体、又はこれらの混合物なども含まれる。
【0072】
本発明のスピロキノン化合物は、前記式中のR2b、又はR2a及びR2bに特定の基(R2aとR2bとが結合して隣接する炭素原子とともに複素環を形成する場合も含む)を有するため、R1a〜R1dにt−ブチル基やイソプロピル基などのアルキル基やアルコキシ基などの疎水性基を有する場合であっても、スピロキノン化合物に適度な親水性を付与することができる。そのため、生体への吸収性を高めることができ、バイオアベイラビリティを改善することができる。
【0073】
なお、化合物の疎水性の程度は、logP値で表すことができる。logP値とは、化合物について、水に対して非混和性の有機溶媒(例えば、1−オクタノールなど)中の平衡濃度と、水中の平衡濃度との比を表す分配係数Pを、常用対数logPの形で表した値である。logP値は、有機溶媒及び水を用いて測定してもよく、また、化合物の構造に基づいて、コンピュータ(ClogP法、NlogP法など)などにより算出してもよい。本発明のスピロキノン化合物のClogP値は、例えば、4〜10、好ましくは4.5〜9(例えば、5〜8)、さらに好ましくは5.2〜7(特に5.5又は6.5)程度であってもよい。
【0074】
(製造方法)
前記スピロキノン誘導体(下記式(6)で表されるスピロキノン化合物又はその塩)は、種々の方法で製造でき、例えば、下記の反応工程式に従って製造できる。
【0075】
【化5】

【0076】
(式中、R1a〜R1d、R2a及びR2bは前記に同じ)
すなわち、工程1で示されるように、式(5)で表されるジチオアセタール化合物の分子内カップリング反応により式(6)で表されるスピロキノン化合物又はその塩を得ることができる。また、式(5)で表されるジチオアセタール化合物は、工程2で示されるように、上記式(3a)及び/又は(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物(2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなど)と式(4)で表されるカルボニル化合物とを反応させることにより得ることができる。なお、スピロキノン化合物の塩は、必要により、スピロキノン化合物を慣用の塩形成反応に供することにより生成させてもよい。また、塩は、反応の適当な段階で形成してもよく、例えば、式(5),(3a),(3b)又は(4)で表され、かつ塩を形成した原料を用いて反応させてスピロキノン化合物(6)の塩を生成させてもよく、生成したスピロキノン化合物(6)と酸又は塩基とを反応させて塩を形成してもよい。
【0077】
(工程1)
工程1では、ジチオアセタール化合物(5)の分子内カップリング反応を利用してスピロ環を形成することにより、スピロキノン化合物(6)又はその塩を製造する。
【0078】
基質のジチオアセタール化合物(5)としては、スピロキノン化合物(6)に対応する化合物が使用でき、また、水和物や塩の形態で使用してもよい。なお、ジチオアセタール化合物(5)は、必ずしも上記反応工程式に準じて合成する必要はなく、市販品を用いてもよく、また、慣用の方法又はその変法などにより合成してもよい。
【0079】
上記カップリング反応は、酸化剤の存在下で行うことができる。酸化剤としては、通常、金属酸化物、例えば、酸化セレンなどのアルカリ土類金属酸化物;酸化セリウム、二酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、酸化銅、酸化銀などの遷移金属酸化物;酸化鉛などの周期表第14族金属の酸化物;酸化ビスマスなどの周期表第15族金属の酸化物などが使用できる。これらの金属酸化物のうち、特に、二酸化マンガンなどの周期表第7族金属の酸化物などが好ましい。なお、酸化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、金属酸化物と他の酸化剤(例えば、分子状酸素、過酸化物、クロム酸などの金属酸化物以外の慣用の酸化剤など)とを併用してもよい。
【0080】
酸化剤の割合は、基質であるジチオアセタール化合物(5)1モルに対して、0.5〜20モル、好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは2〜10モル程度である。
【0081】
工程1の反応は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれにおいても行うことができる。溶媒の存在下で反応を行う場合には、溶媒は、反応に対して不活性な溶媒、例えば、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエタンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、セロソルブ類、カルボン酸類(酢酸、プロピオン酸など)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、スルホランなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。上記溶媒のうち、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが好ましい。
【0082】
反応温度は、R1a〜R1d、R2a及びR2bの種類、溶媒の種類などに応じて、例えば、0〜200℃の広い範囲から選択でき、好ましくは10〜180℃、さらに好ましくは室温(20〜25℃程度)〜160℃程度であってもよい。また、反応は、酸化雰囲気(空気などの酸素含有ガスなど)又は不活性ガス雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンガスなど)下で行うことができる。反応は、減圧又は加圧下で行ってもよく、また、大気圧下で行ってもよい。
【0083】
得られる化合物(6)又はその塩は、慣用の分離又は精製(あるいは単離)方法、例えば、ろ過、転溶、塩析、蒸留、溶媒除去、析出(例えば、塩を形成させることによる析出など)、晶析、再結晶、デカンテーション、抽出、乾燥、洗浄、クロマトグラフィー、及びこれらの組み合わせなどにより、分離又は精製してもよい。
【0084】
(工程2)
工程2では、ジチオアセタール化合物(5)を、式(3a)及び/又は(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物(2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなど)と、式(4)で表されるカルボニル化合物とを反応させることにより合成する。
【0085】
式(3a)及び/又は(3b)で表される2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなどのメルカプトフェノール化合物としては、市販品及び慣用の方法又はその変法により製造された化合物のいずれを用いてもよい。式(3a)及び/又は(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物は慣用の方法で調製でき、2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールは、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオシアネートと水とをトリエチルホスフィンの存在下で反応させることにより製造してもよい。式(3a)及び/又は(3b)で表される2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなどのメルカプトフェノール化合物の製造方法の詳細については、例えば、特開昭61−218570号公報などを参照できる。なお、メルカプトフェノール化合物に関し、式(3a)で表される化合物と、式(3b)で表される化合物とはそれぞれ異なっていてもよいが、通常、同じメルカプトフェノール化合物(R1a=R1c,R1b=R1dの化合物、特にR1a=R1c=R1b=R1dの化合物)を用いる場合が多い。
【0086】
カルボニル化合物(4)としては、ジチオアセタール化合物(5)(及びスピロキノン化合物(6)又はその塩)に対応する化合物が使用でき、市販品及び慣用の方法又はその変法により製造された化合物のいずれを用いてもよい。また、カルボニル化合物(4)は、水和物や塩の形態で使用してもよい。
【0087】
カルボニル化合物(4)としては、カルボニル基及びホルミル基から選択された少なくとも一種を有する種々の化合物、例えば、下記の化合物などが例示できる。
【0088】
(i)R2aが水素原子であり、R2bがポリヒドロキシアルキル基であるカルボニル化合物:
グリセルアルデヒド、1,2,3−トリヒドロキシペンタナール、1,2,3,4−テトラヒドロキシ−ヘキサナールなどのポリC2−11アルカナール(ジ乃至ペンタヒドロキシC2−7アルカナール、好ましくはジ乃至テトラヒドロキシC2−5アルカナールなど)など。
【0089】
(ii)R2aが水素原子であり、R2bがヒドロキシル基及び/又はオキソ基を有していてもよい5又は6員酸素原子含有複素環基を置換基として有するヒドロキシアルキル基であるカルボニル化合物:
テトラヒドロフラニルグリコールアルデヒド、テトラヒドロフラン−5−オン−2−イル−グリコールアルデヒド、3−又は4−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル−グリコールアルデヒド、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−5−オン−2−イル−グリコールアルデヒド、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−5−オン−2−イル−ラクタルデヒドなどの5〜8員(例えば、5又は6員など)の酸素原子含有複素環基を置換基として有するヒドロキシC2−11アルカナール(例えば、ヒドロキシC2−7アルカナール、好ましくはヒドロキシC2−5アルカナールなど)など。
【0090】
(iii)R2aが水素原子であり、R2bがカルボキシアルキル基であるカルボニル化合物:
ホルミル酢酸、ホルミルプロピオン酸、ホルミル酪酸、ホルミル吉草酸などのホルミルC1−10アルカン−カルボン酸(例えば、ホルミルC1−6アルカン−カルボン酸、好ましくはホルミルC1−4アルカン−カルボン酸など)など。
【0091】
(iv)R2aが水素原子であり、R2bがN,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基であるカルボニル化合物:
N,N−ジメチルカルバモイルアセトアルデヒド、N,N−ジエチルカルバモイルアセトアルデヒド、N,N−ジメチルカルバモイルプロピオンアルデヒド、N,N−ジメチルカルバモイルブチルアルデヒドなどのN,N−ジC1−6アルキルカルバモイル−C2−7アルカナール(例えば、N,N−ジC1−4アルキルカルバモイル−C2−5アルカナール)など。
【0092】
(v)R2aが水素原子又はアルキル基であり、R2bがスルホニルアルキル基又はアルキルスルホニルアルキル基であるカルボニル化合物:
スルホニルアセトアルデヒド、メチルスルホニルアセトアルデヒド、スルホニルプロピオンアルデヒド、メチルスルホニルプロピオンアルデヒド、メチルスルホニルブチルアルデヒドなどのスルホニル−(又はC1−10アルキルスルホニル−)C2−11アルカナール[例えば、スルホニル−(又はC1−6アルキルスルホニル−)C2−7アルカナール、好ましくはスルホニル−(又はC1−4アルキルスルホニル−)C2−5アルカナールなど];
スルホニルアセトン、スルホニルメチル−エチル−ケトン、スルホニルエチル−エチル−ケトンなどのスルホニルC1−10アルキル−C1−10アルキル−ケトン(例えば、スルホニルC1−6アルキル−C1−6アルキル−ケトン、好ましくはスルホニルC1−4アルキル−C1−4アルキル−ケトン);
メチルスルホニルアセトン(メタンスルホニルアセトン)、エチルスルホニルアセトン、メチルスルホニルメチル−エチル−ケトン、メチルスルホニルエチル−エチル−ケトンなどのC1−10アルキルスルホニルC1−10アルキル−C1−10アルキル−ケトン(例えば、C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル−C1−6アルキル−ケトン、好ましくはC1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル−C1−4アルキル−ケトン)など。
【0093】
(vi)R2aが水素原子又はアルキル基であり、R2bがアルコキシアルキル基、アルコキシアリール基又はアルコキシ基を有する複素環基であるカルボニル化合物:
メトキシアセトアルデヒド、エトキシアセトアルデヒド、メトキシプロピオンアルデヒド、メトキシブチルアルデヒドなどのC1−10アルコキシ−C2−11アルカナール(例えば、C1−6アルコキシ−C2−7アルカナール、好ましくはC1−4アルコキシ−C2−5アルカナール);
メトキシメチル−メチル−ケトン、エトキシメチル−メチル−ケトン、メトキシメチル−エチル−ケトンなどのC1−10アルコキシC1−10アルキル−C1−10アルキル−ケトン(例えば、C1−6アルコキシC1−6アルキル−C1−6アルキル−ケトン、好ましくはC1−4アルコキシC1−4アルキル−C1−4アルキル−ケトンなど);
アニスアルデヒドなどのメトキシベンズアルデヒド、バニリン、エトキシベンズアルデヒドなどのC1−10アルコキシ−ホルミル−C6−10アレーン(C1−6アルコキシ−ホルミル−C6−10アレーンなど);
3−ホルミル−2−メトキシ−テトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシ−3−ホルミルテトラヒドロフランなどのモノ乃至トリスC1−6アルコキシ基が置換した5〜8員酸素原子含有複素環式アルデヒド(例えば、5又は6員酸素原子含有複素環式アルデヒドなど)など。
【0094】
(vii)R2aが水素原子又はアルキル基であり、環状アミノ−カルボニル−アルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基、環状アミノアルキル基、又はピリジル基であるカルボニル化合物:
1−ピペリジニルカルボニルアセトアルデヒド、4−モルホリルカルボニルアセトアルデヒド、2−(4−モルホリルカルボニル)プロピオンアルデヒドなどの5〜8員環状アミノ−カルボニル−C2−11アルカナール(例えば、5又は6員環状アミノ−カルボニル−C2−7アルカナールなど);
メチル−(1−ピペリジニルカルボニルメチル)−ケトン、メチル−(4−モルホリルカルボニルメチル)−ケトン、メチル−(2−(4−モルホリルカルボニル)エチル)−ケトンなどの5〜8員環状アミノ−カルボニルC1−10アルキル−C1−10アルキルケトン(例えば、5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基−C1−6アルキルケトンなど);
N,N−ジメチルアミノアセトアルデヒド、N,N−ジエチルアミノアセトアルデヒド、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピオンアルデヒドなどのN,N−ジC1−10アルキルアミノC1−10アルキルアルデヒド(例えば、N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキルアルデヒドなど);
N,N−ジメチルアミノメチル−メチル−ケトン、N,N−ジエチルアミノメチル−メチル−ケトン、N,N−ジメチルアミノエチル−エチル−ケトンなどのN,N−ジC1−10アルキルアミノC1−10アルキル−C1−10アルキル−ケトン(例えば、N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル−C1−6アルキル−ケトンなど);
1−ピロリジニルアセトアルデヒド、イソインドリン−1,3−ジオン−2−イル−アセトアルデヒドなどのベンゼン環が縮合していてもよい5〜8員環状アミノC2−11アルカナール(例えば、5又は6員環状アミノC1−6アルキル−C2−7アルカナールなど);
メチル−(1−ピロリジニルメチル)−ケトン、メチル−(イソインドリン−1,3−ジオン−2−イル)メチル−ケトンなどのベンゼン環が縮合していてもよい5〜8員環状アミノC1−10アルキル−C1−10アルキル−ケトン(例えば、5又は6員環状アミノC1−6アルキル−C1−6アルキル−ケトンなど);
ニコチンアルデヒド、4−ホルミルピリジンなどのホルミルピリジン;
メチル−(2−又は4−ピリジル)−ケトンなどのC1−10アルキル−ピリジル−ケトン(C1−6アルキル−ピリジル−ケトンなど)など。
【0095】
(viii)R2aが水素原子又はヒドロキシアルキル基であり、R2bがヒドロキシアルキル基であるカルボニル化合物:
グリコールアルデヒドなどのヒドロキシC2−11アルカナール(例えば、ヒドロキシC2−7アルカナール、好ましくはヒドロキシC3−7アルカナールなど);
ジ(ヒドロキシメチル)ケトン、ジ(ヒドロキシエチル)ケトンなどのジ(ヒドロキシC1−10アルキル)ケトン[例えば、ジ(ヒドロキシC1−6アルキル)ケトンなど]など。
【0096】
(ix)R2aがカルボキシアルキル基であり、R2bがカルボキシアルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基であるカルボニル化合物:
ジ(カルボキシメチル)ケトン、ジ(2−カルボキシエチル)ケトンなどのジ(カルボキシC1−10アルキル)ケトン[例えば、ジ(カルボキシC1−6アルキル)ケトンなど];
カルボキシメチル−メトキシカルボニルメチル−ケトンなどのカルボキシC1−10アルキル−(C1−10アルコキシ−カルボニル−C1−10アルキル)ケトン[例えば、カルボキシC1−6アルキル−(C1−6アルコキシ−カルボニル−C1−6アルキル)ケトンなど]など。
【0097】
(x)R2aがアルキル基又はN,N−ジアルキルアミノアルキル基であり、R2bがN,N−ジアルキルアミノアルキルであるカルボニル化合物:
N,N−ジメチルアミノメチル−メチル−ケトン、N,N−ジエチルアミノメチル−メチルケトン、1−又は2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル−メチル−ケトンなどのN,N−ジC1−10アルキルアミノC1−10アルキル−C1−10アルキル−ケトン(例えば、N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル−C1−6アルキル−ケトンなど);
ビス(N,N−ジメチルアミノメチル)ケトン、ビス(N,N−ジエチルアミノメチル)ケトンなどのビス(N,N−ジC1−10アルキルアミノC1−10アルキル)ケトン[例えば、ビス(N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル)ケトンなど];
ビス(2−,3−又は4−ピリジル)ケトンなど。
【0098】
(xi)R2aとR2bとが互いに結合し、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成したカルボニル化合物(複素環式ケトン):
テトラヒドロフラン−2−又は3−オン、2−メチル−テトラヒドロフラン−3−オン、3−メチル−テトラヒドロフラン−2−オン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−オンなどの置換基(C1−6アルキル基及び/又はC1−6アルコキシ基など)を有していてもよい酸素原子含有5〜8員複素環式ケトン(好ましくは酸素原子含有5又は6員複素環式ケトンなど);
テトラヒドロチオフェン−2−又は3−オン、テトラヒドロチアピラン−2−,3−又は4−オンなどの置換基(C1−6アルキル基及び/又はC1−6アルコキシ基など)を有していてもよい硫黄原子含有5〜8員複素環式ケトン;
1−t−ブトキシカルボニル−ピロリジン−2−又は3−オン、1−t−ブトキシカルボニル−2−メトキシカルボニル−ピロリジン−4−オン、1−t−ブトキシカルボニルピペリジン−2−,3−又は4−オン、1−エチルピペリジン−2−,3−又は4−オンなどの置換基(C1−6アルキル基及び/又はC1−6アルコキシ基など)を有していてもよい窒素原子含有5〜8員複素環式ケトンなど。
【0099】
カルボニル化合物(4)の割合は、式(3a)及び/又は(3b)で表される2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなどのメルカプトフェノール化合物の全体1モルに対して、0.1〜10モル程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜5モル(0.1〜2モル)、好ましくは0.2〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1モル程度である。
【0100】
また、上記反応は、通常、酸の存在下で行われる場合が多い。このような酸としては、有機酸(酢酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸など)などであってもよいが、通常、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸が好ましい。酸としては、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのルイス酸のほか、ヘテロポリ酸、陽イオン交換樹脂なども使用できる。
【0101】
酸の割合は、式(3a)及び/又は(3b)で表される2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなどのメルカプトフェノール化合物の全体1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜1モル(例えば、0.05〜0.5モル)程度である。
【0102】
上記反応は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれにおいても行うことができる。また、上記酸及び/又はカルボニル化合物を溶媒として用いてもよい。
【0103】
溶媒としては、反応に対して不活性であればよく、例えば、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエタンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(イソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、セロソルブ類、カルボン酸類(酢酸、プロピオン酸など)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、スルホランなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。上記溶媒のうち、炭化水素類、アルコール類、エーテル類などが好ましい。
【0104】
反応温度は、例えば、0〜100℃程度の範囲から適宜選択でき、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは室温(20〜25℃程度)〜70℃程度である。また、反応は、酸化雰囲気(空気などの酸素含有ガスなど)又は不活性ガス雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンガスなど)下で行うことができる。反応は、減圧下又は加圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。
【0105】
なお、置換基R1a〜R1d、R2a、R2bなどの他、これらの基がさらに有する置換基は、式(5),(3a),(3b)又は(4)で表される原料化合物などに予め導入してもよく、これらの置換基を有しない原料を用いてスピロキノン化合物(6)を調製した後、慣用の方法(酸化、還元、加水分解、置換反応など)を利用して前記の置換基を有しない化合物(6)に、置換基を導入することにより調製してもよい。また、上記置換基のうち、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基などの反応性基は、反応の適当な段階で、必要により保護基で保護してもよく、保護した後、適当な段階で脱保護してもよい。
【0106】
(工程3及び4)
上記ジチオアセタール化合物(5)のうち、下記式(5-2)で表されるジオキサシクロアルカン骨格を有する化合物は、式(3a)及び/又は(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物(2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノールなど)と下記式(7)で表されるジ(ヒドロキシアルキル)ケトンとを反応させて下記式(5-1)で表されるチオアセタール化合物を生成させる工程3と、化合物(5-1)にさらに下記式(8)で表されるジアルキルケトンを反応させる工程4とを経ることにより得てもよい。
【0107】
【化6】

【0108】
(式中、R3a及びR3bは同一又は異なってアルキレン基を示し、R4a及びR4bは同一又は異なってアルキル基を示す。R1a〜R1d、R2a及びR2bは前記に同じ)
上記反応工程式において、R3a及びR3bで表されるアルキレン基(又はアルキリデン基)としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基などのC1−6アルキレン(又はアルキリデン)基、好ましくはC1−4アルキレン(又はアルキリデン)基などが挙げられる。
【0109】
4a及びR4bで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、1−メチル−エチル、プロピル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基などが挙げられる。
【0110】
工程3は、カルボニル化合物(4)に代えて、ジ(ヒドロキシアルキル)ケトン(7)を用いる以外は、工程2と同様に反応を行うことができる。すなわち、反応条件、各成分の割合などは、工程2を参照できる。
【0111】
ジ(ヒドロキシアルキル)ケトン(7)の具体例としては、ジ(ヒドロキシメチル)ケトン、ヒドロキシメチル−ヒドロキシエチル−ケトン、ジ(ヒドロキシエチル)ケトンなどのジ(ヒドロキシC1−6アルキル)ケトン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−6アルキル)ケトンなどが挙げられる。
【0112】
工程4において、ジアルキルケトン(8)の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのジC1−6アルキル−ケトン、好ましくはジC1−4アルキル−ケトンなどが挙げられる。
【0113】
ジアルキルケトン(8)の割合は、化合物(5-1)1モルに対して、0.1〜10モル程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜5モル(0.1〜2モル)、好ましくは0.2〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1.2モル程度である。
【0114】
また、工程4の反応は、通常、酸の存在下で行われる場合が多い。このような酸としては、上記工程2の項で例示の酸が挙げられ、塩酸などの無機酸の他、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのルイス酸を用いるのが好ましい。
【0115】
酸の割合は、化合物(5-1)1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜1モル(例えば、0.05〜0.5モル)程度である。
【0116】
上記反応は、溶媒の存在下又は非存在下のいずれにおいても行うことができる。また、上記酸及び/又はカルボニル化合物を溶媒として用いてもよい。溶媒としては、前記反応工程2の項で例示の溶媒が利用できる。
【0117】
反応温度は、例えば、0℃〜100℃程度の範囲から適宜選択でき、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは室温(20〜25℃程度)である。また、反応は、酸化雰囲気(空気などの酸素含有ガスなど)又は不活性ガス雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンガスなど)下で行うことができる。反応は、減圧下又は加圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。なお、使用する酸の種類によっては、防湿下で反応を行ってもよい。
【0118】
なお、工程2又は4において得られる化合物(5)又は化合物(5-2)は、慣用の方法により分離又は精製した後、工程1において、スピロキノン化合物(6)の合成に供してもよく、分離又は精製することなく、スピロキノン化合物(6)の合成に供してもよい。
【0119】
(用途)
本発明のスピロキノン誘導体は、優れたABCA1安定化作用を有しているため、スピロキノン誘導体を有効成分として含有するABCA1安定化剤として有用である。なお、ABCA1安定化剤とは、肝臓、小腸、胎盤、副腎を始めとする各種臓器の細胞(主に細胞膜)に存在するABCA1をより安定かつ継続的に発現させる薬剤である。
【0120】
また、ABCA1の安定化とは、例えば、スピロキノン誘導体の非存在下で評価した場合と比較して、スピロキノン誘導体の存在下で評価した場合において、ABCA1がより安定で継続的に細胞内(特に、細胞膜)に存在していることを意味しており、ABCA1が安定で継続的に細胞内に存在することにより、HDL産生反応が促進される。ABCA1を細胞内に存在させるには、ABCA1そのものの発現を増大させたり、ABCA1の分解を抑制する方法があるが、本発明のスピロキノン誘導体では、ABCA1そのものの発現を増大するよりは、むしろ、ABCA1の分解を抑制することにより、ABCA1を細胞内に安定に留め、ABCA1を安定化させる。しかも、スピロキノン誘導体は、前記式(前記式(6))において、R2a及び/又はR2bとして特定の基を有するため、生体に適用しても、バイオアベイラビリティが高い。
【0121】
そのため、優れたABCA1安定化作用と高いバイオアベイラビリティとに基づいて、ABCA1が直接的又は間接的に関与する疾患の予防及び/又は治療剤(例えば、低HDL血症改善剤、LDLコレステロール低下剤等)、特に、低HDL血症のようにABCA1の発現低下に起因する疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0122】
特に、前記スピロキノン誘導体は、この誘導体を有効成分として含有する低HDL血症改善剤(予防及び/又は治療剤)として有用である。なお、低HDL血症は、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、高脂血症、メタボリックシンドローム、肝硬変、骨髄種、糖尿病、肥満、慢性腎不全、甲状腺機能異常、及び/又は慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)などの疾患において見られる。前記スピロキノン誘導体は、これらの疾患におけるHDL血症の改善に効果的であり、前記スピロキノン誘導体を有効成分として含有する、これらの疾患の予防及び/又は治療剤として用いることもできる。
【0123】
さらに、本発明のスピロキノン誘導体は、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症、無症候性心筋虚血、冠状動脈硬化症を含む)、アテローム性動脈硬化症、頚動脈硬化症、脳血管障害(脳梗塞、脳卒中を含む)、閉塞性動脈硬化症、高脂血症、メタボリックシンドローム、脂肪肝、肝硬変、骨髄腫、糖尿病、糖尿病合併症、皮膚疾患、黄色腫、関節疾患、増殖性疾患、末梢動脈閉塞症、虚血性末梢循環障害、肥満、脳腱黄色腫(cerebrotendinous xanthomatosis:CTX)、慢性腎不全、糸球体腎炎、甲状腺機能亢進症、動脈硬化性腎症、血管肥厚、インターベンション(経皮的冠動脈形成術、経皮的冠動脈血行再開術、ステント留置、冠動脈内視鏡、血管内超音波、冠注血栓溶解療法を含む)後の血管肥厚、バイパス手術後の血管再閉塞・再狭窄、高脂血症に関連の強い腎症・腎炎および膵炎、高脂血症(家族性高コレステロール血症、食後高脂血症を含む)、慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎を含む)、間欠性跛行、深部静脈血栓症、マラリア脳症、アルツハイマー病、又は創傷もしくは発育不全に伴う疾患の予防及び/又は治療剤としても有用である。
【0124】
前記スピロキノン誘導体は、単独で医薬として用いてもよく、担体(薬理学的又は生理学的に許容可能な担体など)と組み合わせて医薬組成物(又は製剤)として用いてもよい。なお、前記ABCA1安定化剤、低HDL血症改善剤、前記各種疾患の予防及び/又は治療剤も、スピロキノン誘導体を有効成分として含有すればよく、スピロキノン誘導体単独で構成してもよく、また、上記と同様に担体と組み合わせて医薬組成物として構成してもよい。
【0125】
医薬組成物において、担体は、医薬組成物(又は製剤)の形態(すなわち、剤形)、投与形態、用途などに応じて、適宜選択される。剤形は特に制限されず、固形製剤(粉剤、散剤、粒剤(顆粒剤、細粒剤など)、丸剤、ピル、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、座剤など)、半固形製剤(クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、グミ剤、フィルム状製剤、シート状製剤など)、液剤(溶液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、ローション剤、注射剤など)などであってもよい。また、前記粉剤及び/又は液剤などのスプレー剤、エアゾール剤なども含まれる。なお、カプセル剤は、液体充填カプセルであってもよく、顆粒剤などの固形剤を充填したカプセルであってもよい。また、製剤は凍結乾燥製剤であってもよい。さらに、本発明の製剤は、薬剤の放出速度が制御された製剤(徐放性製剤、速放性製剤)であってもよい。なお、吸入剤などで利用されるエアゾール剤において、エアゾールの発生方法は、特に制限されず、例えば、同一密封容器に医薬有効成分と代替フロン等の噴射剤とを充填し、スプレーする方法であってもよく、また、医薬有効成分と別の容器に充填した二酸化炭素や窒素等の圧縮ガスを用いたネブライザーやアトマイザーなどの形態による方法であってもよい。さらに、製剤は経口投与製剤であってもよく、非経口投与製剤(点鼻剤、吸入剤、経皮投与製剤など)であってもよい。さらに、製剤は局所投与製剤(注射剤(水性注射剤、非水性注射剤など)などの溶液剤、懸濁剤、軟膏剤、貼付剤、パップ剤など)であってもよい。本発明の製剤は固形製剤(特に経口投与製剤)である場合が多い。
【0126】
前記担体は、例えば、日本薬局方(局方)の他、(1)医薬品添加物ハンドブック、丸善(株)、(1989)、(2)「医薬品添加物辞典2000」(薬事日報社、2002年3月発行)、(3)「医薬品添加物辞典2005」(薬事日報社、2005年5月発行)、(4)薬剤学、改訂第5版、(株)南江堂(1997)、及び(5)医薬品添加物規格2003(薬事日報社、2003年8月)などに収載されている成分(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤など)の中から、投与経路及び製剤用途に応じて適宜選択できる。例えば、固形製剤の担体としては、賦形剤、結合剤および崩壊剤から選択された少なくとも一種の担体を使用する場合が多く、脂質などの添加剤を用いてもよい。
【0127】
前記賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖類又は糖アルコール類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウムなどの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。結合剤としては、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン;寒天、アラビアゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールなどの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩(カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムなど)、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)など)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0128】
なお、前記コーティング剤としては、例えば、糖類、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、オイドラギット(メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などが用いられる。コーティング剤は、セルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体などの腸溶性成分であってもよく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどの塩基性成分を含むポリマー(オイドラギットなど)で構成された胃溶性成分であってもよい。また、製剤は、これらの腸溶性成分や胃溶性成分を剤皮に含むカプセル剤であってもよい。
【0129】
液剤の担体のうち油性担体としては、動植物系油剤(ホホバ油、オリーブ油、やし油、綿実油などの植物系油剤;スクアランなどの動物系油剤など)、鉱物系油剤(流動パラフィン、シリコーンオイルなど)などが例示できる。水性担体としては、水(精製又は無菌水、注射用蒸留水など)、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、水溶性有機溶媒[エタノール、イソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール;(ポリ)アルキレングリコール類(エチレングリコール、ポリエチレングリコールなど);グリセリンなど]、ジメチルイソソルビド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。また、半固形剤の担体は、前記固形製剤の担体及び/又は液剤の担体から選択してもよい。また、半固形剤の担体は、脂質を含んでいてもよい。
【0130】
脂質としては、ワックス類(蜜ろう、カルナバろう、ラノリン、パラフィン、ワセリンなど)、長鎖脂肪酸エステル(飽和又は不飽和脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸と多価アルコール(ポリC2−4アルキレングリコール、グリセリン又はポリグリセリンなど)とのエステル(グリセライドなど)など)、硬化油、高級アルコール(ステアリルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールなど)、高級脂肪酸(リノール酸、リノレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸など)、金属石鹸類(例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩など)などが例示できる。
【0131】
製剤においては、投与経路や剤形などに応じて、公知の添加剤を適宜使用することができる。このような添加剤としては、例えば、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)、崩壊補助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、乳化剤(例えば、非イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤など)、分散剤、懸濁化剤、溶解剤、溶解補助剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、pH調整剤又は緩衝剤(クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝剤など)、安定剤、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤(安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類など)、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤(例えば、甘味剤など)、着色剤(ベンガラなどの染顔料など)、矯臭剤又は香料(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0132】
例えば、注射剤では、通常、前記添加物として、溶解剤、溶解補助剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤、保存剤などを使用する場合が多い。なお、投与時に溶解あるいは懸濁して使用するための粉末注射剤では、粉末注射剤で使用される慣用の添加剤が使用できる。
【0133】
また、吸入剤、経皮吸収剤などの局所投与剤では、上記添加物として、通常、溶解補助剤、安定剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、保存剤などが使用される場合が多い。
【0134】
本発明の医薬組成物は、有効成分の他、担体成分、必要により添加剤などを用いて、慣用の製剤化方法、例えば、第十五改正日本薬局方記載の製造法又はこの製造方法に準じた方法により調製できる。
【0135】
本発明のスピロキノン誘導体(ABCA1安定化剤、低HDL血症改善剤、各種疾患の予防及び/又は治療剤、医薬組成物も含む)は、ヒト及び非ヒト動物、通常、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し、安全に用いられる。
【0136】
本発明のスピロキノン誘導体の投与量は、投与対象、投与対象の年齢、体重、性別及び状態(一般的状態、病状、合併症の有無など)、投与時間、剤形、投与方法等により、適宜選択することができ、通常、有効量を投与する。また、前記スピロキノン誘導体は、高いバイオアベイラビリティを有するため、投与量が少量であっても、十分な効果を発揮する。なお、投与方法は、投与量と同様に、上記の要件を考慮して選択できる。
【0137】
ヒトに対する投与量は、例えば、経口剤として使用する場合、前記スピロキノン誘導体の使用量を基準に、1日当たり、通常、0.01〜1,000mg程度、好ましくは0.1〜700mg程度、さらに好ましくは0.2〜500mg程度である。また、注射剤として使用する場合、前記投与量は、前記スピロキノン誘導体の量を基準に、1日当たり、通常、0.01〜200mg程度、好ましくは0.05〜100mg程度、さらに好ましくは0.1〜80mg程度である。さらに、局所投与剤として使用する場合、前記投与量は、前記スピロキノン誘導体の使用量を基準に、1日当たり、通常、0.01〜200mg程度、好ましくは0.05〜100mg程度、さらに好ましくは0.1〜80mg程度である。上記投与経路及び投与量を具体的に決定する場面においては、患者の状態(一般的状態、病状、合併症の有無など)、年齢、性別、体重などを考慮してその経路及び最適量が決められる。
【0138】
本発明のスピロキノン誘導体は、作用の増強、投与量の低下および副作用の低減等を目的として、その効果に悪影響を及ぼさない1種以上の他の薬剤と組み合わせて用いることもできる。組み合わせることができる(併用可能な)薬剤は、低分子の薬剤、ポリペプチド、抗体又はワクチン等であってもよく、例えば、「糖尿病治療薬」、「糖尿病合併症治療薬」、「抗肥満薬」、「高血圧治療薬」、「高脂血症治療薬」、「利尿剤」、「抗血栓剤」、「アルツハイマー病治療薬」等が挙げられる。
【0139】
本発明のスピロキノン誘導体と他の薬剤とを組み合わせて用いる場合、投与形態は特に限定されるものではなく、例えば、両者を同時に製剤化して単一の製剤として投与してもよく、両者を別々に製剤化して同一投与経路で同時又は時間差をおいて投与してもよい。また、両者を別々に製剤化して異なる投与経路で同時又は時間差をおいて投与してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明のスピロキノン誘導体は、優れたABCA1安定化作用及び高いバイオアベイラビリティを有しているため、ABCA1安定化剤を始め、ABCA1が関係する低HDL血症の改善剤(低HDL血症の予防及び/又は治療剤)の有効成分として有用である。また、低HDL血症が見られる各種疾患、例えば、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、高脂血症、メタボリックシンドローム、肝硬変、骨髄種、糖尿病、肥満、慢性腎不全、甲状腺機能異常、慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)などからなる群より選択された疾患の予防及び/又は治療剤としても有用である。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0142】
実施例1
(i)4,4−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)テトラヒドロピラン(化合物(5a))の合成
2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノール(2.38g,10.0mmol)をメタノール(10mL)に溶解させた溶液に、テトラヒドロピラン−4−オン(1.05g,10.5mmol)及び触媒量の濃塩酸を加えて、60℃で6時間撹拌した。放冷後、生じた結晶をろ取し、下記式で表される化合物(5a)(2.01g,72%)を得た。
【0143】
【化7】

【0144】
mp:210−212℃
H−NMR(CDCl)δ:1.44(36H,s),1.78(4H,t,J=4.9Hz),3.82(4H,t,J=4.9Hz),5.38(2H,s),7.48(4H,s)。
【0145】
(ii)10,12,16,18−テトラt−ブチル−3−オキサ−7,20−ジチアトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン(化合物(6a))の合成
上記(i)の工程で得られた化合物(5a)(1.12g,2.00mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解した溶液に、二酸化マンガン(アルドリッチ社製,900mg)を加え、室温で2日間撹拌した。反応混合物を、セライトでろ過し、ろ液から溶媒を留去し、化学量論的に下記式で表される化合物(6a)を得た(収量1.12g)。
【0146】
【化8】

【0147】
mp:156−158℃
H−NMR(CDCl)δ:1.19(36H,s),2.34(4H,t,J=4.9Hz),3.81(4H,t,J=4.9Hz),6.82(4H,s)。
【0148】
実施例2
(i)4,4−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)テトラヒドロチオピラン(化合物(5b))の合成
2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノール(1.19g,5.00mmol)をメタノール(5mL)に溶解させた溶液に、テトラヒドロチオピラン−4−オン(581mg,5.00mmol)及び触媒量の濃塩酸を加えて、60℃で24時間撹拌した。放冷後、反応混合物から、生じた結晶をろ取し、下記式で表される化合物(5b)を得た(収量1.14g,収率79%)。
【0149】
【化9】

【0150】
mp:212−214℃
H−NMR(CDCl)δ:1.44(36H,s),2.00(4H,t,J=5.3Hz),2.82(4H,t,J=5.3Hz),5.38(2H,s),7.50(4H,s)。
【0151】
(ii)10,12,16,18−テトラt−ブチル−3,7,20−トリチアトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン(化合物(6b))の合成
上記工程(i)で得られた化合物(5a)(575mg,1.00mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解した溶液に、二酸化マンガン(400mg)を加え、室温で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過し、ろ液から溶媒を留去することにより、下記式で表される化合物(6b)を化学量論的に得た(収量583mg)。
【0152】
【化10】

【0153】
mp:164−165℃
H−NMR(CDCl)δ:1.19(36H,s),2.51−2.55(4H,m),2.80−2.84(4H,m),6.80(4H,s)。
【0154】
実施例3
(i)3,3−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)テトラヒドロチオフェン(化合物(5c))の合成
2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノール(1.19g,5.00mmol)をメタノール(5mL)に溶解させた溶液に、テトラヒドロチオフェン−3−オン(511mg,5.00mmol)及び触媒量の濃塩酸を加えて、60℃で24時間撹拌した。放冷後、反応混合物から、生じた結晶をろ取し、下記式で表される化合物(5c)を得た(収量139mg,収率8%)。
【0155】
【化11】

【0156】
mp:159−161℃
H−NMR(CDCl)δ:1.44(36H,s),2.05(2H,t,J=6.6Hz),2.85(2H,s),2.99(2H,t,J=6.6Hz),5.41(2H,s),7.49(4H,s)。
【0157】
(ii)9,11,15,17−テトラt−ブチル−2,6,19−トリチアトリスピロ[4.1.5.0.513.1]ノナデカ−8,11,14,17−テトラエン−10,16−ジオン(化合物(6c))の合成
上記工程(i)で得られた化合物(5c)(188mg,0.34mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解させた溶液に、二酸化マンガン(126mg)を加え、室温で2日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過した後、ろ液から、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ULTRA PACKTM,山善(株)製)(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(容積比)=50/1)により精製し、下記式で表される化合物(6c)の結晶を得た(収量184mg,収率98%)。
【0158】
【化12】

【0159】
mp:124−126℃
H−NMR(CDCl)δ:1.19(36H,s),2.60(2H,t,J=6.9Hz),3.05(2H,t,J=6.9Hz),3.43(2H,s),6.84−6.87(4H,m)。
【0160】
実施例4
(i)1−t−ブトキシカルボニル−4,4−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)ピペリジン(化合物(5d))の合成
2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノール(1.19g,5.00mmol)をメタノール(5mL)に溶解した溶液に、1−t−ブトキシカルボニル−4−ピペリドン(996mg,5.00mmol)及び触媒量の濃塩酸を加えて、60℃で一夜撹拌した。反応混合物から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ULTRA PACKTM,山善(株)製)(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(容積比)=10/1)により精製し、下記式で表される化合物(5d)を得た(収量95mg,収率6%)。
【0161】
【化13】

【0162】
(式中、Bocは、t−ブトキシカルボニル基を示す)
mp:186−189℃
H−NMR(CDCl)δ:1.40(9H,s),1.44(36H,s),1.69(4H,t,J=5.3Hz),3.54(4H,t,J=5.3Hz),5.39(2H,s),7.49(4H,s)。
【0163】
(ii)3−t−ブトキシカルボニル−10,12,16,18−テトラt−ブチル−7,20−ジチア−3−アザトリスピロ[5.1.5.0.514.1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン(化合物(6d))の合成
上記工程(i)で得られた化合物(5d)(79mg,0.12mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解した溶液に、二酸化マンガン(85mg)を加え、室温で5日間撹拌した。反応混合物をセライトでろ過した後、ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ULTRA PACKTM,山善(株)製)(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(容積比)=30/1)により精製することにより、下記式で表される化合物(6d)の結晶を得た(収量57mg,収率72%)。
【0164】
【化14】

【0165】
(式中、Bocは前記に同じ)
mp:178−179℃
H−NMR(CDCl)δ:1.19(36H,s),1.47(9H,s),2.26(4H,t,J=5.6Hz),3.57(4H,t,J=5.6Hz),6.82(4H,s)。
【0166】
実施例5
(i)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)−1−メタンスルホニルプロパン(化合物(5e))の合成
2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノール(1.00g,4.19mmol)をメタノール(10mL)に溶解した溶液に、メタンスルホニルアセトン(1.15g,8.45mmol)及び濃塩酸(0.05mL)を加えて、60℃で7時間撹拌した。反応混合物から、溶媒が少量残留する程度に溶媒を留去し、一晩放置した。この残留物をメタノール(5mL)に溶解し、この混合物を60℃で4時間撹拌した。得られた反応混合物から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[60N(球状,中性)メッシュ100−210μm,関東化学(株)製](展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(容積比)=7/1〜2/1)により精製し、下記式で表される化合物(5e)を得た(収量696mg,収率78%)。
【0167】
【化15】

【0168】
mp:171−179℃
H−NMR(CDCl)δ:1.45(36H,s),1.69(3H,s),3.09(3H,s),3.45(2H,s),5.46(2H,s),7.46(4H,s)。
【0169】
(ii)14−メタンスルホニルメチル−14−メチル−2,4,9,11−テトラt−ブチル−13,15−ジチアジスピロ[5.0.5.3]ペンタデカ−1,4,8,11−テトラエン−3,10−ジオン(化合物(6e))の合成
上記(i)の工程で得られた化合物(5e)(965mg,1.62mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解した溶液に、二酸化マンガン(964mg)を加え、3日間半撹拌した後、セライトろ過し、ろ液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[60N(球状,中性)メッシュ100−210μm,関東化学(株)製](展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(容積比)=15/1〜4/1)により精製し、目的化合物を含むフラクションをまとめ、溶媒を減圧下で留去した。残渣に少量のヘキサンを加えて懸濁させてろ取し、ヘキサンで洗浄した後、減圧乾燥することにより下記式で表される目的化合物(6e)を得た(収量219mg,収率23%)。
【0170】
【化16】

【0171】
mp: 189−190℃
H−NMR(CDCl)δ:1.19(18H,s),1.20(18H,s),2.31(3H,s),3.11(3H,s),3.91(2H,s),6.75(2H,brd,J=2.3Hz),6.86(2H,d,J=1.9Hz)。
【0172】
実施例6
(i)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)プロパン−1,3−ジオール(化合物(5f))の合成
2,6−ジ−t−ブチル−4−メルカプトフェノール(3.00g,12.6mmol),1,3−ジヒドロキシアセトン(2.27g,25.2mmol),メタノール(15mL)及び濃塩酸(0.075mL)の混合液を60℃で一夜撹拌した。反応混合物から溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[60N(球状,中性)メッシュ100−210μm,関東化学(株)製](展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(容積比)=7/1〜2/1)により精製し、下記式で表される化合物(5f)を得た(収量661mg,収率19%)。
【0173】
【化17】

【0174】
mp:69−80℃
H−NMR(CDCl)δ:1.43(36H,s),2.44(2H,t,J=6.9Hz),3.60(6H,d,J=6.9Hz),5.42(2H,s),7.43(4H,s)。
【0175】
(ii)5,5−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン(化合物(5g))の合成
上記(i)の工程で得られた化合物(5f)(655mg,1.19mmol)と、アセトン(7mL)と、ジエチルエーテル(7mL)とを混合し、防湿下で氷冷した。この混合物に、塩化アルミニウム(373mg,2.80mmol)をジエチルエーテル(7mL)に溶解した溶液を、氷冷下でゆっくり添加した。この混合物を、防湿下で、室温まで昇温し、7時間撹拌した。撹拌後、氷冷し、混合物に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。反応混合物をクロロホルムで抽出処理し、クロロホルム相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄し、クロロホルム相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液から溶媒を減圧下留去し、残渣に少量のヘキサンを加え、減圧下で溶媒を留去し、結晶化した。さらに、少量のヘキサンを加えて、結晶をろ取した。得られた結晶は、ヘキサンで洗浄し、減圧乾燥することにより、下記式で表される化合物(5g)を得た(収量315mg,収率45%)。
【0176】
【化18】

【0177】
H−NMR(CDCl)δ:1.27(6H,s),1.43(36H,s),3.71(4H,s),5.39(2H,s),7.46(4H,s)。
【0178】
(iii)3,3−ジメチル−10,12,16,18−テトラt−ブチル−2,4−ジオキサ−7,20−ジチアトリスピロ[5,1,5,0,514,1]イコサ−9,12,15,18−テトラエン−11,17−ジオン(化合物(6f))の合成
上記工程(ii)で得られた化合物(5g)(309mg,0.525mmol)をジクロロメタン(9mL)に溶解した溶液に、二酸化マンガン(157mg)を加え、2日間半撹拌した。混合物に二酸化マンガン(313mg)及びジクロロメタン(1mL)を追加し、さらに1日間撹拌した後、セライトろ過してろ液を濃縮した。残渣にヘキサンを加え、減圧留去後、再度ヘキサンを加え、生じた結晶をろ取した。結晶をヘキサンで洗浄後、減圧乾燥し、下記式で表される化合物(6f)を得た(収量203mg,収率66%)。
【0179】
【化19】

【0180】
mp:194−195℃
H−NMR(CDCl)δ:1.18(36H,s),1.47(6H,s),4.18(4H,s),6.77(4H,brs)。
【0181】
実施例7〜34
テトラヒドロピラン−4−オンに代えて、表1及び表2に示すカルボニル化合物を用いる以外は、実施例1と同様に反応及び分離等の操作を行い、表1及び表2に示すスピロキノン化合物を得た。
【0182】
また、テトラヒドロフラン−4−オンに代えて、表3及び表4に示すカルボニル化合物を用いる以外は、実施例1と同様に反応を行った。
【0183】
【表1】

【0184】
【表2】

【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
次に、実施例で得られたスピロキノン誘導体の有効性及び安全性に関する薬理試験の方法並びに成績について説明する。
【0188】
試験例1 THP−1細胞を用いたABCA1の上昇作用
<試験法>
PMA(ホルボールミリステートアセテート;3.2×10−7M;和光純薬工業(株)製)の存在下、10%FBS−RPMI1640培地(シグマ社製)を用いて、THP−1細胞(ヒト白血病細胞;アメリカンタイプカルチャーコレクション社製)を24時間培養することによりマクロファージへと分化させた。得られた細胞を、RPMI1640(シグマ社製)を用いて洗浄後、0.2%濃度のBSA(シグマ社製)を含有するRPMI1640培地(シグマ社製)に添加した。この培地に実施例1、6及び10で得られたスピロキノン誘導体をそれぞれ添加し、apoAIの存在下又は非存在下で24時間培養した後、下記の方法に従い、細胞内ABCA1の発現量を測定した。なお、スピロキノン誘導体は、2−ブタノールに溶解後、最終濃度が0.5%となるように添加した。
【0189】
PBS(リン酸緩衝生理食塩水;シグマ社製)を用いて洗浄した細胞を、プロテアーゼ阻害剤(シグマ社製)含有0.5mM Tris−HCl(pH8.5)中に回収し、撹拌後、氷上に15分間静置した。得られた細胞懸濁液を、遠心処理(470×g,5分)することにより、核画分を沈殿させた後、上清を遠心処理(316,000×g,30分)し、膜画分を沈殿させた。膜画分(15μg蛋白)を用いて、SDS−PAGE及びImmunoblottingを行い、得られたABCA1蛋白のバンドを、画像解析ソフト(マイクロソフト社製Photoshop)を用いて数値化した。試験化合物のABCA1発現活性は、プロブコールスピロキノンのABCA1発現量を100%としたとき、この発現量に対する相対比(%)として評価した。
【0190】
<結果>
前記実施例のスピロキノン誘導体を用いて処理したTHP−1細胞では、プロブコールスピロキノンと比較して150〜300%程度の細胞内のABCA1の発現量を示した。
【0191】
試験例2 HDL産生反応促進作用
<試験法>
試験例1においてapoAIの存在下又は非存在下で24時間培養した後の培地を用いて、apoAI依存性のHDL新生反応に基づき培地中に搬出されたコレステロールを解析した。
【0192】
すなわち、上記培地を、1.5mlチューブに回収し、遠心処理(36,000×g,5分)し、上清をガラスチューブに移した。この上清に、クロロホルム/メタノール(容積比)=2/1の混合液(和光純薬工業(株)製)を加え、撹拌し、さらに遠心処理(1,300×g,5分)を行った。遠心処理後、水層を除去し、残りの有機層に、水を添加して、再度撹拌した後、さらに遠心処理(1,300×g,5分)を行った。遠心処理後、水層を除去し、有機層を蒸発乾固させ、ガラスチューブ内に残存するコレステロールを酵素法により定量した。試験化合物を用いた場合のHDLコレステロール搬出量を、プロブコールスピロキノンのHDLコレステロール搬出量を100%としたとき、相対比(%)として評価した。
【0193】
<結果>
前記実施例のスピロキノン誘導体を用いて処理したTHP−1細胞では、プロブコールスピロキノンと比較してapoAI依存性のHDLコレステロール搬出において120〜140%程度の増加が認められた。
【0194】
試験例3 毒性試験
マウスに、スピロキノン誘導体をそれぞれ、1週間経口投与し、異常が見られるか否か検討した。その結果、いずれのマウスにも特に異常と考えられる所見は見られなかった。
【0195】
このように、本発明の化合物は、ABCA1の発現そのものを上昇させるのではなく、ABCA1の分解を抑制することにより、安定かつ継続的にABCA1を発現させ、さらに、HDLの産生反応を大幅に促進し、低HDL血症予防・治療剤として有効であることが上記試験により確認された。
【0196】
製剤例1
下記処方について日局XIVの製剤総則記載の公知方法に従って錠剤を得た。
【0197】
錠剤1錠中の処方例:
本発明のスピロキノン誘導体 50mg
結晶セルロース 100mg
トウモロコシデンプン 28mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 180mg
製剤例2
下記処方について日局XIVの製剤総則記載の公知方法に従ってカプセル剤を得た。
【0198】
カプセル剤1カプセル中の処方例
本発明のスピロキノン誘導体 50mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプン 28mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 180mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】

(式中、R1a〜R1dは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
2aは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基又はピリジル基を示し、
2bは、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、スルホニルアルキル基、アルキルスルホニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基、環状アミノアルキル基、ピリジル基、N,N−ジアルキルカルバモイルアルキル基、環状アミノ−カルボニル−アルキル基、又はアルコキシ基を有する複素環基を示すか、若しくはR2aとR2bとは、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成する。)
で表されるスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項2】
1a〜R1dが、同一又は異なって、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基又は置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルコキシ基であり、
2aが、水素原子又はC1−6アルキル基であり、R2bが、ポリヒドロキシC1−6アルキル基、5又は6員複素環基を置換基として有するヒドロキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC1−6アルキル基、C1−6アルコキシC6−10アリール基、スルホニルC1−6アルキル基、C1−6アルキルスルホニルC1−6アルキル基、カルボキシ−C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ−カルボニル−C1−6アルキル基、N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−6アルキル基、ベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−6アルキル基、N,N−ジC1−6アルキルカルバモイルC1−6アルキル基、又はアミノ基の窒素原子以外に環の構成原子としてヘテロ原子を有していてもよい5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−6アルキル基を示すか、若しくはR2aとR2bが、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む3乃至10員複素環を形成し、この複素環は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基から選択された少なくとも一種の置換基を有していてもよく、複素環を構成するヘテロ原子が窒素原子の場合、この窒素原子は保護基で保護されていてもよい請求項1記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項3】
1a〜R1dが、同一又は異なって、置換基を有していてもよい分岐鎖状C3−6アルキル基又は置換基を有していてもよい分岐鎖状C3−6アルコキシ基であり、
2aが、水素原子又はC1−5アルキル基であり、R2bが、ジ乃至ペンタヒドロキシC1−6アルキル基、ヒドロキシル基及び/又はオキソ基を有していてもよい5又は6員酸素原子含有複素環基を置換基として有するヒドロキシC1−4アルキル基、C1−5アルコキシC1−5アルキル基、C1−5アルコキシC6−10アリール基、スルホニルC1−5アルキル基、C1−5アルキルスルホニルC1−5アルキル基、N,N−ジC1−4アルキルアミノC1−4アルキル基、ベンゼン環が縮合していてもよい5又は6員環状アミノC1−4アルキル基、N,N−ジC1−4アルキルカルバモイルC1−4アルキル基、又は環の構成原子として酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい5又は6員環状アミノ−カルボニル−C1−4アルキル基を示すか、若しくはR2aとR2bが、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む4乃至8員複素環を形成し、この複素環基は、置換基を有していてもよいC1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC1−6アルコキシ基及びC1−6アルコキシ−カルボニル基から選択された少なくとも一種の置換基を有していてもよく、複素環を構成するヘテロ原子が窒素原子の場合、この窒素原子がC1−6アルキル基又はC1−6アルコキシカルボニル基で保護されている請求項1又は2記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項4】
1a〜R1dが、同一又は異なって、置換基を有していてもよい分岐鎖状C3−6アルキル基又は置換基を有していてもよい分岐鎖状C3−6アルコキシ基であり、
2aが、水素原子又はC1−4アルキル基であり、R2bが、スルホニルC1−4アルキル基又はC1−4アルキルスルホニルC1−4アルキル基を示すか、若しくはR2aとR2bが互いに結合して、隣接する炭素原子とともに、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む非芳香族性5又は6員複素環を形成し、この複素環基は、置換基を有していてもよいC1−4アルキル基及び置換基を有していてもよいC1−4アルコキシ基から選択された少なくとも一種の置換基を有していてもよい請求項1〜3のいずれかの項に記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項5】
下記式(5)
【化2】

(式中、R1a〜R1dは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示し、
2aは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基又はピリジル基を示し、
2bは、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、スルホニルアルキル基、アルキルスルホニルアルキル基、N,N−ジアルキルアミノアルキル基、環状アミノアルキル基、ピリジル基、N,N−ジアルキルアミノ−カルボニル−アルキル基、環状アミノ−カルボニル−アルキル基、又はアルコキシ基を有する複素環基を示すか、若しくはR2aとR2bとは、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに置換基を有していてもよい複素環を形成する。)
で表されるジチオアセタール化合物を酸化剤で処理する、下記式(6)
【化3】

(式中、R1a〜R1d、R2a及びR2bは前記に同じ)
で表されるスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩の製造方法。
【請求項6】
酸の存在下、下記式(3a)及び/又は(3b)で表されるメルカプトフェノール化合物と、下記式(4)で表されるカルボニル化合物とを反応させて、式(5)で表されるジチオアセタール化合物を生成させ、このジチオアセタール化合物を酸化剤で処理する請求項5記載の製造方法。
【化4】

(式中、R1a〜R1d、R2a及びR2bは前記に同じ)
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩と担体とを含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有するABCA1安定化剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する低HDL血症改善剤。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のスピロキノン化合物又はその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、動脈硬化症、脳梗塞、脳卒中、高脂血症、メタボリックシンドローム、肝硬変、骨髄腫、糖尿病、肥満、慢性腎不全、甲状腺機能異常及び慢性炎症性腸疾患からなる群より選択された疾患の予防及び/又は治療剤。

【公開番号】特開2009−286712(P2009−286712A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139410(P2008−139410)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(508158207)ハイクス ラボラトリーズ合同会社 (1)
【Fターム(参考)】