説明

スピンコート装置およびスピンコート方法

【課題】スピンコート装置の回転軸と同心円方向に発生する膜厚ムラを低減させることができるスピンコート装置およびスピンコート方法を提供する。
【解決手段】被塗布物9が載置され、被塗布物9と一体化された状態で回転されるテーブル2と、被塗布物9に塗布液を供給する塗布液供給手段4と、テーブル2を回転させる回転手段5とを備え、塗布液供給手段4が、少なくとも被塗布物9全面に対向して設けられ、テーブル2の回転軸2aに近い領域ほど単位面積あたりの供給量を少なくした前記回転軸2aを中心とする同心円状の供給量分布で塗布液を供給するノズル61を有するスピンコート装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンコート装置およびスピンコート方法に関し、特に、スピンコート装置の回転軸と同心円方向に発生する塗膜の膜厚ムラを低減させることができるスピンコート装置および、このスピンコート装置を用いてスピンコートする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄膜を形成する方法の一つとして、スピンコート装置を用いるスピンコート方法が用いられている。スピンコート方法では、基板などの被塗布面に塗布液を供給し、被塗布面を回転させて発生する遠心力で被塗布面に塗布液を塗布することにより、塗膜を形成している。スピンコート方法では、一般に、回転数及び回転保持時間、塗布液の濃度や粘度などによって塗膜の膜厚を制御している。
このようなスピンコート方法は、例えば、有機EL素子を構成する各種薄膜、半導体製造工程等に用いられるフォトレジスト膜、SOG(スピンオングラス)等の層間絶縁膜、液晶装置製造工程等におけるオーバーコート膜(平坦化膜)や配向膜、さらには光ディスク等の製造工程における保護膜などの形成に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、従来のスピンコート方法では、基板を回転させることによって発生する遠心力により、塗布液が内側から外側へと流動するため、外縁近傍の塗膜の膜厚が内側の塗膜の膜厚よりも厚くなる傾向があり、得られた塗膜の膜厚が不均一になるといった不都合があった。
均一な塗膜を形成することができる塗布方法としては、塗布膜の塗布方向と直角方向の膜厚がほぼ中央部で最大となるように塗布を行なう方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−276781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、スリットから塗布液を供給しながら、被塗布基板上を相対的に移動させて、被塗布膜の塗布方向と直角方向の膜厚がほぼ中央部で最大となるように塗布基板への塗布を行なうので、以下に示すような問題があった。
【0005】
すなわち、特許文献1に記載の方法では、被塗布基板全面に塗布液を塗布するためには、スリットを被塗布基板に対して相対的に移動させるための時間が必要であるので、スリットの移動が終了するまでに、スリットの移動を開始した初期の段階に供給された塗布液が流動してしまう。このため、スピン塗布を開始する前に、塗布膜の膜厚がほぼ均一となり、スピン塗布の遠心力に起因する膜厚ムラを十分に低減させることができない場合があった。特に、塗布液の粘度が低い場合、塗布液が流動しやすいため、スピン塗布を開始する前に、塗布膜の膜厚がほぼ均一となってしまうため、問題となっていた。
【0006】
また、スリットの移動が終了するまでに、スリットの移動を開始した初期の段階に供給された塗布液中の溶媒が揮発して、被塗布基板上に塗布された塗布液の濃度が不均一となってしまう場合があった。このため、スピン塗布を行なった際の塗膜形成速度が不均一となり、スピン塗布の遠心力に起因する膜厚ムラを十分に低減させることができない場合があった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の方法では、塗布膜の塗布方向と直角方向の膜厚がほぼ中央部で最大となるように塗布するので、最大となる部分が帯状に形成されることにより、塗布膜の塗布方向と直角方向に膜厚ムラが生じる場合があった。特に、塗布液の粘度が高い場合、塗布液が流動しにくいため、塗布膜の塗布方向と直角方向の膜厚ムラが顕著となってしまう。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、塗布液の粘度にかかわらず、膜厚ムラを低減させることができるスピンコート装置を提供することを目的とする。
また、上記スピンコート装置を用いてスピンコートする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明者は鋭意研究を重ね、被塗布面の全面に均一に塗布液を供給してスピンコートした場合、得られた塗膜の膜厚分布がスピンコート装置の回転軸と同心円状になり、テーブルの回転軸に近い領域ほど膜厚が薄くなることを確認した。そして、本発明者は、膜厚ムラを効果的に低減させるには、被塗布面の全面に均一に塗布液を供給した場合に発生する同心円状の膜厚ムラを相殺するように、被塗布面に塗布液を供給し、スピンコート装置の回転軸と同心円方向に発生する塗膜の膜厚ムラを低減させればよいことを見出し、塗布液の粘度にかかわらず、膜厚ムラを低減させることができる本発明のスピンコート装置およびスピンコート方法を見出した。
【0010】
すなわち、本発明のスピンコート装置は、被塗布物が載置され、前記被塗布物と一体化された状態で回転されるテーブルと、前記被塗布物に塗布液を供給する塗布液供給手段と、前記テーブルを回転させる回転手段とを備え、前記塗布液供給手段が、少なくとも前記被塗布物全面に対向して設けられ、偏りを有する供給量分布で前記塗布液を供給するノズルを有することを特徴とする。
【0011】
このようなスピンコート装置は、塗布液供給手段が、少なくとも前記被塗布物全面に対向して設けられ、偏りを有する供給量分布で前記塗布液を供給するノズルを有するので、被塗布物の全面に均一に塗布液を供給してテーブルを回転させて塗膜を形成したときに発生する同心円状の膜厚ムラを相殺する供給量分布で、被塗布面に塗布液を供給することができる。したがって、スピンコート装置の回転軸と同心円方向に発生する膜厚ムラを低減させることができる。
【0012】
また、本発明のスピンコート装置は、ノズルが少なくとも前記被塗布物全面に対向して設けられたものであるので、従来の塗布方法のように、スリットを移動させることなく、被塗布物全面に塗布液を供給できる。したがって、被塗布物に塗布液の供給を開始してから終了するまでの間の時間を非常に短くでき、塗布液の粘度が低い場合であっても、被塗布物に塗布液の供給を開始してから終了するまでの間に塗布液が流動することを効果的に防止できる。また、被塗布物に塗布液の供給を開始してから終了するまでの間の時間に、塗布液中の溶媒が揮発することも効果的に防止できる。
【0013】
また、本発明のスピンコート装置においては、前記供給量分布が、前記テーブルの半径方向に偏りを有する前記テーブルの回転軸を中心とする同心円状のものであるものとすることができる。
このようなスピンコート装置は、塗布液供給手段が、前記テーブルの半径方向に偏りを有する前記テーブルの回転軸を中心とする同心円状の供給量分布で前記塗布液を供給するので、被塗布物の全面に均一に塗布液を供給してテーブルを回転させて塗膜を形成したときに発生する同心円状の膜厚ムラを効果的に相殺する供給量分布で、被塗布面に塗布液を供給することができる。したがって、スピンコート装置の回転軸と同心円方向に発生する膜厚ムラを効果的に低減させることができる。
さらに、このようなスピンコート装置は、ノズルが回転軸を中心とする同心円状の供給量分布で前記塗布液を供給するものであるので、塗布液の粘度が高い場合であっても、従来の塗布方法のように、塗布膜の塗布方向と直角方向の膜厚ムラが顕著となることはない。
【0014】
また、本発明のスピンコート装置においては、前記供給量分布が、前記回転軸に近い領域ほど単位面積あたりの供給量を少なくしたものであることを特徴とするものとすることができる。
このようなスピンコート装置は、塗布液供給手段が、回転軸に近い領域ほど単位面積あたりの供給量を少なくした供給量分布で前記塗布液を供給するので、被塗布物の全面に均一に塗布液を供給してテーブルを回転させて塗膜を形成したときに発生する同心円状の膜厚ムラを効果的に相殺する供給量分布で、被塗布面に塗布液を供給することができる。したがって、スピンコート装置の回転軸と同心円方向に発生する膜厚ムラを効果的に低減させることができる。
【0015】
また、本発明のスピンコート装置においては、前記ノズルの前記被塗布物に対向する対向面に、複数の供給穴が設けられ、前記対向面における前記供給穴の密度が均一であるものとすることができる。
このようなスピンコート装置とすることで、供給穴毎に塗布液の供給量を制御することにより、所定の供給量分布で塗布液を供給するノズルを備えたスピンコート装置を容易に実現できる。
【0016】
また、本発明のスピンコート装置においては、前記ノズルの前記被塗布物に対向する対向面に、複数の供給穴が設けられ、前記対向面における前記供給穴の密度が前記供給量分布に対応しているものとすることができる。
このようなスピンコート装置では、前記対向面における前記供給穴の密度が前記供給量分布に対応しているので、供給穴毎に前記塗布液の供給量を変えることなく、所定の供給量分布で塗布液を供給するノズルを備えたスピンコート装置を容易に実現できる。したがって、供給穴毎に塗布液の供給量を制御する場合と比較して、塗布液の供給量の制御が容易なものとなる。
【0017】
また、本発明のスピンコート装置においては、前記供給穴毎に前記塗布液の供給量の制御が可能とされているものとすることができる。
このようなスピンコート装置とすることで、被塗布物の形状や大きさ、塗布液の粘度などに応じて、塗布液を供給する領域や供給量分布を容易に変更可能なものとなる。
【0018】
また、上記の目的を達成するために、本発明のスピンコート方法は、上記のいずれかに記載のスピンコート装置を用いてスピンコートする方法であって、被塗布物を、前記被塗布物と一体化された状態で回転されるようにテーブル上に載置する載置工程と、前記ノズルから前記被塗布物に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、前記テーブルを回転させる回転工程とを備え、前記塗布液供給工程を終了すると同時に前記回転工程を開始することを特徴とする。
【0019】
このようなスピンコート方法では、塗布液供給工程を終了すると同時に回転工程を開始するので、塗布液供給工程において上記の供給量分布で塗布液を供給してから、回転工程を開始するまでの間に、塗布液が流動したり塗布液中の溶媒が揮発したりすることがない。したがって、上記供給量分布で塗布液を供給したことによる、回転軸と同心円方向に発生する膜厚ムラを効果的に低減させることができる。
【0020】
また、上記の目的を達成するために、本発明のスピンコート方法は、上記のいずれかに記載のスピンコート装置を用いてスピンコートする方法であって、被塗布物を、前記被塗布物と一体化された状態で回転されるようにテーブル上に載置する載置工程と、前記ノズルから前記被塗布物に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、前記テーブルを回転させる回転工程とを備え、前記塗布液供給工程と前記回転工程とを同時に行なうことを特徴とする。
【0021】
このようなスピンコート方法では、塗布液供給工程と回転工程とを同時に行なうので、塗布液供給工程において上記の供給量分布で塗布液を供給してから、回転工程を開始するまでの間に、塗布液が流動したり塗布液中の溶媒が揮発したりすることがない。したがって、上記供給量分布で塗布液を供給したことによる、回転軸と同心円方向に発生する膜厚ムラを効果的に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
(スピンコート装置)
図1は、本発明のスピンコート装置の一例を模式的に示した図である。
図1に示すスピンコート装置1は、テーブル2と、チャンバー3と、塗布液供給手段4と、回転手段5とを備えたものである。
【0023】
テーブル2は、図1に示すように、密閉可能なチャンバー3内に設置されたものであり、基板などの被塗布物9が載置されるものである。テーブル2は、載置された被塗布物9を吸着手段などで吸着させることによって、被塗布物9をテーブル2上に着脱自在に固定可能とされているものである。また、テーブル2は、テーブル2上に被塗布物9を固定して被塗布物9と一体化された状態で、回転手段5によって回転されるようになっている。また、テーブル2は、回転制御装置(図示略)に回転手段5の回転速度および回転時間を制御させることによって、所定の回転速度および回転時間で回転するようにされている。
【0024】
塗布液供給手段4は、被塗布物9に塗布液を供給するものであり、図1に示すように、チャンバー3内に設けられ、塗布液を吐出するノズル61と、チャンバー3外に設けられ、塗布液を貯留する塗布液タンク63aと、チャンバー3を貫通して設けられ、塗布液タンク63aからノズル61に塗布液を供給する塗布液供給管62と、塗布液タンク63a内の塗布液をノズル61に向かって所定の圧力で圧送するポンプ64aとを備えている。図1に示す塗布液供給手段4においては、塗布液供給管62が、後述する供給穴61b毎に個別に塗布液を供給する個別供給管62aからなり、各個別供給管62aには、それぞれポンプ64aおよび塗布液タンク63aが設けられており、供給穴61b毎に塗布液の供給量の制御が可能とされている。なお、図1においては、図面を見やすくするために、複数のポンプ64aおよび塗布液タンク63aのうちの1つのみを記載している。
【0025】
図1に示すように、ノズル61は、被塗布物9の全面に対向して設けられている。また、図2に示すように、被塗布物9に一様に塗布液を供給した場合、遠心力の差異により同心円方向に膜厚分布が生じる。そこで、ノズル61から供給される塗布液の供給量分布は、テーブル2の回転軸2aに近い領域(中心領域)ほど単位面積あたりの供給量を少なくしたテーブル2の半径方向に偏りを有する供給量分布となっている。
【0026】
また、図3は、図1に示すスピンコート装置1に備えられたノズルを示す図であって、被塗布物9に対向する側から見た平面図である。
図3に示すノズル61の平面形状は、被塗布物9と同じ直径の円形とされている。なお、ノズル61の直径は、被塗布物9と同じとすることができるが、被塗布物9の直径以上の直径であればよく、同じでなくてもよい。また、ノズル61の被塗布物9に対向する対向面61aには、複数の供給穴61bが設けられている。対向面61aにおける供給穴61bの密度は、均一とされている。また、図3に示すノズル61においては、供給穴61b毎に設けられたポンプ64aおよび塗布液タンク63aによって、供給穴61a毎に塗布液の供給量の制御が可能とされている。供給穴61bの形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、直径1mm〜2mmの円形とすることができる。
【0027】
図1に示すスピンコート装置1を用いてスピンコートするには、まず、被塗布物9を、被塗布物9と一体化された状態で回転されるように、テーブル2上に載置する(載置工程)。次いで、チャンバー3内を密閉した状態で、個々の供給穴61aに対応するポンプ64aによって、個々の供給穴61aに対応する塗布液タンク63a内の塗布液をノズル61の個々の供給穴61aに向かって圧送させ、塗布液供給管62を介してノズル61から被塗布物9に塗布液を供給(塗布液供給工程)し、塗布液の供給を終了すると同時に回転手段5によるテーブル2の回転を開始する(回転工程)。その後、テーブル2の回転を終了することによってスピンコートが終了する。
本実施形態において、塗布液供給工程に要する時間は、0.5秒以下である。
【0028】
本実施形態のスピンコート装置1は、塗布液供給手段4が、少なくとも被塗布物9の全面に対向して設けられ、テーブル2の回転軸2aに近い領域ほど単位面積あたりの供給量を少なくした回転軸2aを中心とする同心円状の供給量分布で塗布液を供給するノズル61を有するので、被塗布物9の全面に均一に塗布液を供給してテーブルを回転させて塗膜を形成したときに発生する同心円状の膜厚ムラを相殺する供給量分布で、被塗布面9に塗布液を供給することができる。したがって、スピンコート装置1の回転軸2aと同心円方向に発生する膜厚ムラを低減させることができる。
【0029】
なお、上述した実施形態のスピンコート装置においては、図3に示すノズル61を備えたものを例に挙げて説明したが、ノズル61は図3に示すものに限定されるものではなく、例えば、図4〜図6に示すノズルを備えたものとしてもよい。
図4〜図6は、本発明のスピンコート装置に備えられるノズルの他の例を示す図であって、被塗布物に対向する側から見た平面図である。
【0030】
図4に示すノズル65の平面形状は、被塗布物9の直径と同じ長さの辺を有する正方形とされている。なお、ノズル65の辺の長さは、被塗布物9と同じとすることができるが、被塗布物9の直径以上の長さであればよく、同じでなくてもよい。また、ノズル65の被塗布物9に対向する対向面65aには、複数の供給穴65bが設けられている。対向面65aにおける供給穴65bの密度は、均一とされている。また、図4に示すノズル65においても、図3に示すノズル61と同様に、供給量制御装置(図示略)によって、供給穴65a毎に塗布液の供給量の制御が可能とされている。
【0031】
図5に示すノズル66の平面形状は、図3に示すノズル61と同様に、被塗布物9と同じ直径の円形とされている。なお、ノズル66の直径が、被塗布物9と同じである場合、被塗布物9上に塗布されない塗布液が少なくなり好ましいが、ノズル66の直径は、被塗布物9の直径以上の直径であればよく、同じでなくてもよい。また、ノズル66の被塗布物9に対向する対向面66aには、図3に示すノズル61と同様に、複数の供給穴66bが設けられている。しかし、対向面66aにおける供給穴66bの密度は、図3に示すノズル61とは異なり、均一ではない。図5に示すノズル66においては、供給穴66bが、中心の他は、直径の異なる3つのリング状に配置されており、対向面66aにおける供給穴66bの密度が、供給量分布に対応している。したがって、図5に示すノズル66においては、例えば、図7に示すスピンコート装置10を用い、供給穴66b毎に塗布液の供給量を変えることなく、全ての供給穴66bの供給量を同じにして、テーブル2の回転軸2aに近い領域を、回転軸2aに遠い領域と比較して単位面積あたりの供給量を少なくした回転軸2aを中心とする同心円状の供給量分布であって、供給穴66bの密度に対応する偏りを有する供給量分布で塗布液を供給することができる。
【0032】
図7は、本発明のスピンコート装置の他の例を模式的に示した図であり、全ての供給穴への供給量が同じとなる塗布液供給手段を備えたものである。図7に示すスピンコート装置10を構成する塗布液供給手段4は、図1に示すスピンコート装置1と異なり、塗布液タンク63およびポンプ64を1つのみ備えている。そして、図7に示すスピンコート装置10では、ポンプ64によって、すべての供給穴66aに均一の圧力で塗布液タンク63内の塗布液を圧送し、塗布液供給管62を介してノズル66から被塗布物9に塗布液を供給するようにされている。
【0033】
また、図6に示すノズル67の平面形状は、図3に示すノズル61と同様に、被塗布物9と同じ直径の円形とされている。なお、ノズル67の直径が、被塗布物9と同じである場合、被塗布物9上に塗布されない塗布液が少なくなり好ましいが、ノズル67の直径は、被塗布物9の直径以上の直径であればよく、同じでなくてもよい。また、ノズル67の被塗布物9に対向する対向面67aには、図3に示すノズル61と同様に、複数の供給穴67bが設けられている。しかし、対向面67aにおける供給穴67bの密度は、図3に示すノズル61とは異なり、均一ではない。図6に示すノズル67においては、供給穴67bが、中心から外に向かって延びる8本の螺旋状に配置されており、対向面67aにおける供給穴67bの密度が、供給量分布に対応している。したがって、図6に示すノズル67においては、例えば、図7に示すスピンコート装置10を用い、供給穴67b毎に塗布液の供給量を変えることなく、全ての供給穴67bの供給量を同じにして、供給穴67bの密度に対応する偏りを有する供給量分布で塗布液を供給することができる。
【0034】
また、上記の供給量分布は、上述したように、供給穴毎に塗布液の供給量の制御する方法や、供給穴の密度を供給量分布に対応させる方法によって調節することができるが、例えば、供給穴の大きさを適宜変更することにより調節してもよい。
【0035】
また、上述した実施形態のスピンコート方法においては、塗布液の供給を終了すると同時に回転手段5によるテーブル2の回転を開始したが、塗布液供給工程と回転工程とを同時に行なってもよい。いずれも場合においても、塗布液供給工程において上記の供給量分布で塗布液を供給してから、回転工程を開始するまでの間に、塗布液が流動したり塗布液中の溶媒が揮発したりすることがない。したがって、上記供給量分布で塗布液を供給したことによる、回転軸2aと同心円方向に発生する膜厚ムラを効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明のスピンコート装置の一例を模式的に示した図である。
【図2】図2は、中心からの距離と膜厚との関係を示したグラフである。
【図3】図3は、図1に示すスピンコート装置に備えられたノズルを示す図であって、被塗布物に対向する側から見た平面図である。
【図4】図4は、本発明のスピンコート装置に備えられるノズルの他の例を示す図であって、被塗布物に対向する側から見た平面図である。
【図5】図5は、本発明のスピンコート装置に備えられるノズルの他の例を示す図であって、被塗布物に対向する側から見た平面図である。
【図6】図6は、本発明のスピンコート装置に備えられるノズルの他の例を示す図であって、被塗布物に対向する側から見た平面図である。
【図7】図7は、本発明のスピンコート装置の他の例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0037】
1、10 スピンコート装置、2 テーブル、3 チャンバー、4 塗布液供給手段、5 回転手段、9 被塗布物、61、65、66、67 ノズル、62 塗布液供給管、63、63a 塗布液タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物が載置され、前記被塗布物と一体化された状態で回転されるテーブルと、
前記被塗布物に塗布液を供給する塗布液供給手段と、
前記テーブルを回転させる回転手段とを備え、
前記塗布液供給手段が、少なくとも前記被塗布物全面に対向して設けられ、偏りを有する供給量分布で前記塗布液を供給するノズルを有することを特徴とするスピンコート装置。
【請求項2】
前記供給量分布が、前記テーブルの半径方向に偏りを有する前記テーブルの回転軸を中心とする同心円状のものであることを特徴とする請求項1に記載のスピンコート装置。
【請求項3】
前記供給量分布が、前記回転軸に近い領域ほど単位面積あたりの供給量を少なくしたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピンコート装置。
【請求項4】
前記ノズルの前記被塗布物に対向する対向面に、複数の供給穴が設けられ、
前記対向面における前記供給穴の密度が均一であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスピンコート装置。
【請求項5】
前記ノズルの前記被塗布物に対向する対向面に、複数の供給穴が設けられ、
前記対向面における前記供給穴の密度が前記供給量分布に対応していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスピンコート装置。
【請求項6】
前記供給穴毎に前記塗布液の供給量の制御が可能とされていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスピンコート装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスピンコート装置を用いてスピンコートする方法であって、
前記被塗布物を、前記被塗布物と一体化された状態で回転されるように前記テーブル上に載置する載置工程と、
前記ノズルから前記被塗布物に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、
前記テーブルを回転させる回転工程とを備え、
前記塗布液供給工程を終了すると同時に前記回転工程を開始することを特徴とするスピンコート方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスピンコート装置を用いてスピンコートする方法であって、
前記被塗布物を、前記被塗布物と一体化された状態で回転されるように前記テーブル上に載置する載置工程と、
前記ノズルから前記被塗布物に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、
前記テーブルを回転させる回転工程とを備え、
前記塗布液供給工程と前記回転工程とを同時に行なうことを特徴とするスピンコート方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−275717(P2007−275717A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102916(P2006−102916)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】