説明

スピーカー用エッジ材

【課題】伸縮性に優れ、かつ防水性も高いスピーカー用エッジを提供する。
【解決手段】平均繊維径0.3〜7.0μmの極細繊維の束が絡合してなる不織布に弾性重合体が付着してなるシート状物と、長繊維不織布とが積層してなることを特徴とするスピーカー用エッジ材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー振動板の外周部において振動板を保持、動作制御するためのスピーカー用エッジ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカー用エッジは、スピーカー振動板の保持、ならびにその動作を制御するため、振動板の外周部に用いられるものである。該素材に求められる特性として、タテ・ヨコの異方性がないこと、軽量であること、伸縮性があること、機械的な内部損失(tanδ)が大きいことなどがあげられ、これらの要求特性を満たすものとして、極細繊維からなる不織布に樹脂を付与したシート状物が好適に用いられてきた(特許文献1、2)。
【0003】
しかし、これらの素材は見掛け密度が低いために吸水特性が高く、例えば、水と接触する可能性の高い車載用スピーカーとして用いることが困難であった。当該課題に対し、特許文献3では片面又は両面がゴム等のエラストマーで覆われているスピーカーエッジが開示されている。しかしながら、ゴム状の層を有することにより、本来基材の持つ軽量性や伸縮性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】特開平07−184295号公報
【特許文献2】特開平11−308695号公報
【特許文献3】特開2007−266721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、伸縮性に優れ、かつ防水性も高いスピーカー用エッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、平均繊維径0.3〜7.0μmの極細繊維の束が絡合してなる不織布に弾性重合体が付着してなるシート状物と、長繊維不織布とが積層してなることを特徴とするスピーカー用エッジ材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来達成が困難であった、伸縮性と防水性とを併せ持つスピーカー用エッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のスピーカー用エッジ材は、極細繊維の束が絡合してなる不織布(以下、「極細繊維束不織布」とも呼ぶ。)に弾性重合体が付着してなるシート状物を有する。
【0008】
極細繊維を形成するポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点、耐久性が高いものが多く、より好ましい。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチトリメチレンテレフタレート等を挙げることができ、ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等を挙げることができる。また、ポリマーには他の成分が共重合されていても良い。また、ポリマーには粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させても良い。
【0009】
極細繊維の平均繊維径としては、0.3〜7.0μmとすることが重要である。7.0μm以下、好ましくは5.0μm以下とすることで、良好な表面品位を得ることができる。一方、0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上とすることで、スピーカー用エッジとして必要な内部損失(tanδ)を得ることができ、またスピーカー用エッジとして充分な強度を保持することができる。
【0010】
極細繊維の束の形態としては、単繊維同士バラバラになっていてもよいし、部分的に結合していてもよいし、凝集していてもよい。
【0011】
極細繊維束不織布としては、タテ・ヨコの異方性が小さく、品位も良好であることなどから短繊維不織布が好ましい。
【0012】
本発明のスピーカー用エッジ材のシート状物における弾性重合体は、スピーカー用エッジの形態を保持し、また適度な剛性・クッション性を付与するのに資する。
【0013】
弾性重合体としては例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができる。
【0014】
中でも、ポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。ポリウレタン系エラストマーのポリオール成分としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族系イソシアネートなどを使用することができる。
【0015】
ポリウレタンの重量平均分子量としては50,000〜300,000が好ましい。重量平均分子量を50,000以上、より好ましくは100,000以上、さらに好ましくは150,000以上とすることにより、シート状物ひいてはスピーカー用エッジの強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下、より好ましくは250,000以下とすることで、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて極細繊維束不織布への含浸を行いやすくすることができる。
【0016】
また、弾性重合体には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良い。
【0017】
また、弾性重合体には、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0018】
弾性重合体の含有率としては、極細繊維束不織布に対し、5〜200質量%が好ましい。含有量によってスピーカー用エッジの表面状態、クッション性、硬度、強伸度などを調節することができる。5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上とすることで、繊維脱落を少なくすることができる。一方、200質量%以下、より好ましくは100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下とすることにより、加工性及び生産性が向上するとともに、表面上において極細繊維が充分に分散した状態を得ることができる。
【0019】
本発明のスピーカー用エッジ材において、極細繊維束不織布を含むシート状物の後述する長繊維不織布との積層の反対側の面が極細繊維からなる立毛を有することが好ましい。そうすることで、表面品位を向上させ、またスピーカー用エッジとしての内部損失を向上させることができる。
【0020】
本発明のスピーカー用エッジ材は、上述のような極細繊維束不織布を含むシート状物にさらに長繊維不織布が積層してなることが重要である。長繊維不織布により、極細繊維束不織布を含むシート状物の伸縮性を阻害することなく、スピーカー用エッジに撥水性を付与することが可能となる。
【0021】
長繊維不織布の繊維を形成するポリマーとしては、撥水性を付与する観点から、ポリオレフィンが好ましく用いられる。ポリオレフィンの例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等を採用することができる。
【0022】
長繊維不織布としては、メルトブロー不織布が、適度な伸度を有し極細繊維束不織布の特性を阻害しないこと、目付の均一性に優れ低目付化が容易であること、撥水性を付与するポリマーを採用しやすいことなどから好ましい。
【0023】
長繊維不織布の繊維の平均繊維径としては、0.01〜50μmが好ましい。50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下とすることで、目付の均一性に優れる。一方、0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上とすることで、長繊維不織布の強度を保持することができ、また繊維間の交差点が増加し通気度が低下することにより防水性が向上する。
【0024】
長繊維不織布の目付としては、40〜80g/mが好ましい。40g/m以上とすることで、シートに充分な撥水性を付与することができる。一方、80g/m以下、より好ましくは70g/m以下とすることにより、シートの伸縮特性を保持することができる。
【0025】
本発明のスピーカー用エッジ材の目付としては、100〜600g/mが好ましい。100g/m以上、より好ましくは150g/m以上とすることで、スピーカー用エッジの形態安定性・寸法安定性に優れる。一方、600g/m以下、より好ましくは300g/m以下とすることで、スピーカーへの取り付け加工性に優れる。
【0026】
また、本発明のスピーカー用エッジ材の厚さとしては、0.2〜10mmが好ましい。0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上とすることで、スピーカー用エッジの形態安定性・寸法安定性に優れる。一方、10mm以下、より好ましくは5mm以下とすることで、スピーカーへの取り付け加工性に優れる。
【0027】
本発明のスピーカー用エッジ材は、温度170℃、圧力0.5MPaでプレス処理後の破断点伸度が、タテ方向・ヨコ方向ともに50〜150%であることが好ましい。50%以上とすることで充分な追従性を保持でき、150%以下とすることで、スピーカー用エッジの形態保持特性を確保することができる。
【0028】
本発明のスピーカー用エッジ材は、温度170℃、圧力0.5MPaでプレス処理後のJIS L 1092:1998 6.1.A法による耐水圧が30〜150cmHOであることが好ましい。30cmHO以上とすることで充分な防水性を得ることができる。一方、150cmHO以下とすることで、伸縮性等の基材の特性を保持することができる。
【0029】
次に、本発明のスピーカー用エッジ材を製造する方法について説明する。
【0030】
極細繊維束不織布を得る手段としては、極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維から直接、極細繊維束不織布を製造するのは困難であるが、極細繊維発生型繊維から不織布を製造し、この不織布における極細繊維発生型繊維から極細繊維を発生させることにより、極細繊維束不織布を得ることができる。
【0031】
極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分・島成分とし、海成分を溶剤を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分以上の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
【0032】
海島型繊維には、海島型複合用口金を用い海・島の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがあるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られシート状物の強度にも資する点から、海島型複合繊維がより好ましい。
【0033】
海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分とした共重合ポリエステル、ポリ乳酸、熱可塑性PVA系樹脂などを用いることができる。
【0034】
海成分の溶解除去は、弾性重合体を付与する前、付与した後、起毛処理後、のいずれのタイミングで行っても良い。
【0035】
不織布を得る方法としては、ウェブをニードルパンチやウォータジェットパンチにより絡合させる方法、スパンボンド法、メルトブロー法、抄紙法などを採用することができる。
なかでも、繊維の絡合を上げることで、不織布に充分な強力を付与し、不織布の品位を向上させるうえで、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの処理を経るものが好ましい。
【0036】
ニードルパンチ処理において、バーブの本数としては1〜3本が好ましい。1本以上とすることで効率的な繊維の絡合が可能となる。一方、3本以下とすることで繊維損傷を抑えることができる。
【0037】
ニードルパンチのパンチング本数としては、500〜8000本/cmが好ましい。500本/cm以上とすることで、緻密性が得られ、高精度の仕上げを得ることができる。一方、8000本/cm以下とすることで、加工性の悪化、繊維損傷、及び強度低下を防ぐことができる。
【0038】
また、ウォータージェットパンチ処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。具体的には、直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで水を噴出させると良い。
【0039】
ニードルパンチ処理あるいはウォータージェットパンチ処理後の極細繊維発生型繊維不織布の見掛け密度としては、0.15〜0.30g/cmが好ましい。0.15g/cm以上とすることで、研磨布の形態安定性・寸法安定性に優れ、研磨加工時の研磨布の伸びによる加工ムラ、スクラッチ欠点の発生を抑えることができる。一方、0.30g/cm3以下とすることで、弾性重合体を付与するための充分な空間を維持することができる。
【0040】
このようにして得られた極細繊維発生型繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱もしくは湿熱、またはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
【0041】
極細繊維発生型繊維から易溶解性ポリマー(海成分)を溶解する溶剤としては、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンの場合はトルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、ポリ乳酸や共重合ポリエステルの場合は水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、また、熱可塑性PVA系樹脂の場合は熱水を用いることができる。また極細繊維発生加工(脱海処理)は、溶剤中に極細繊維発生型繊維不織布を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
【0042】
また、極細繊維発生加工は、立毛処理前に行ってもよいし、立毛処理後に行ってもよい。
【0043】
弾性重合体は、極細繊維発生加工の前に付与してもよいし、後に付与してもよい。
【0044】
弾性重合体を付与させる際に用いる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンとしてもよい。
【0045】
溶媒に溶解した弾性重合体溶液に不織布を浸漬する等して弾性重合体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって弾性重合体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布及び弾性重合体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
【0046】
立毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて行うことができる。さらに、スピーカー用エッジ材の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには例えば、バフ段数を3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい。
【0047】
極細繊維束不織布を含むシート状物に長繊維不織布を積層させる方法としては例えば、メルトブロー法により、極細繊維束不織布を含むシート状物上に直接長繊維を捕集させて積層一体化させる方法が、加工性、接着性などの観点から好ましい。
【0048】
スピーカー用エッジ材には使用の際、加熱プレス成型が施されるが、プレス成型の条件はスピーカー用エッジの設計により適宜変更可能である。金型温度は100〜180℃、プレス圧力は0.1〜1.0MPa、加熱時間は5〜40秒間が好ましい。
【実施例】
【0049】
[測定方法・評価用処理方法]
(1)融点
パーキンエルマー社(Perkin Elmaer)製DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0050】
(2)メルトフローレイト(MFR)
試料ペレット4〜5gを、MFR計電気炉のシリンダーに入れ、荷重325gf、温度270℃の条件で、外径9.5mm、内径2.0955mm、高さ8mmの垂直な穴を有するオリフィスから10分間に押し出される樹脂の量(g)を測定した。同様の測定を3回繰り返し、平均値をMFRとした。
【0051】
(3)極細繊維の平均繊維径
不織布の厚さ方向に平行な断面を走査型電子顕微鏡(SEM キーエンス社製VE−7800型)にて3000倍で観察し、30μm×30μmの視野内で無作為に抽出した50本の単繊維直径を測定した。これを3ヶ所で行い、合計150本の単繊維の直径の平均値を算出した。
なお、極細繊維が異形断面の場合、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面積と同面積の円の直径を算出することによって単繊維の直径を求める。
【0052】
(4)目付
JIS L 1906:2000に準じて測定した。
20cm×20cmの試験片を3枚採取し、それぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
【0053】
(5)厚さ
JIS L 1906:2000で準用するJIS L 1096:1999 8.5に準じて測定した。
試料の異なる5か所について厚さ測定機(尾崎製作所製 “ピーコック”(登録商標)H)を用いて、23.5kPaの加圧下、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さを測定し、平均値を算出した。
【0054】
(6)見掛け密度
上記により測定した目付の値を厚さの値で割って、見掛け密度を求めた。
【0055】
(7)プレス処理
スピーカー用エッジ材を、スチール製でロール直径60cmの1対のフラットロールにて、ロール温度170℃、プレス圧力0.5MPa、送り速度0.5m/分でプレス処理した。
【0056】
(8)破断点伸度
JIS L 1906:2000に準じて測定した。
上記プレス処理を施したスピーカー用エッジ材のタテ方向・ヨコ方向のそれぞれについて、幅1cm×長さ20cmの試料片を20枚ずつ採取した。
試料片を、手でたるみが生じない程度に引っ張った状態で定速伸長引張試験機につかみ間隔10cmで取り付け、引張速度10cm/minで試料片が破断するまで荷重を加えて引っ張り、最大伸度を破断点伸度とし、タテ方向・ヨコ方向それぞれについて平均値を算出した。
【0057】
(9)耐水圧(低水圧法)
JIS L 1092:1998 6.1.A法(低水圧法)に準じて測定した。
上記プレス処理を施したスピーカー用エッジ材から15cm×15cmの試験片を5枚採取し、耐水度試験装置に、長繊維不織布を積層したものは長繊維不織布の側が水に当たるように取り付け、水を入れた水準装置を10cm/minの速さで上昇させて水位を上昇させ、試験片の裏側に3か所から水が出たときの水位を測定し、5回の測定結果の平均値を算出した。
【0058】
(10)tanδ
振動リード法により測定した。
【0059】
[実施例1]
(極細繊維束不織布を含むシート状物)
融点263℃、MFR2.5のPETを島成分とし、融点87℃、MFR18のポリスチレンを海成分とした。
上記海成分・島成分を用い、36島/ホールの海島型複合口金を用いて、紡糸温度285℃、島/海質量比率55/45、吐出量1.2/分・ホール、紡糸速度1240m/分にて溶融紡糸した。次いで、90℃の液浴中で3.5倍に延伸し、押し込み型捲縮機にて捲縮を付与し、カットして、繊度2.9dtex、繊維長51mmの海島型複合繊維の原綿を得た。
上記原綿を用い、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウェブを形成した。次いで、トータルバーブデプス0.08mmの1バーブのニードルを植込んだニードルパンチ機にて、針深度7mm、パンチ本数3000本/cmでニードルパンチし、目付595g/m、見掛け密度0.23g/cmの極細繊維発生型繊維不織布を作製した。
上記極細繊維発生型繊維不織布を95℃で熱水収縮させた後、ポリビニルアルコールを繊維質量に対し24質量%付与後、乾燥させた。
この不織布に、ポリマージオールがポリエーテル系75質量%とポリエステル系25質量%とからなるポリウレタンを、繊維質量に対して固形分で23質量%付与し、液温35℃の30%N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。
その後、エンドレスのバンドナイフを有する半裁機により厚み方向に半裁し、非半裁面をJIS#320番のサンドペーパーにて3段研削し、立毛を形成させた。
次いで、液流染色機にて青色分散染料(住化ケムテックス社製“Sumikaron”Blue S−BBL200)20%owfの濃度で、120℃、45分、液流染色機にて染色し、100℃で乾燥させ、極細繊維束不織布を含むシート状物を得た。
当該シート状物は、極細繊維の平均繊維径が2.1μm、厚さ0.51mm、目付172g/m、見かけ密度0.337g/cmであった。
【0060】
(スピーカー用エッジ材)
MFR800のポリプロピレンを溶融させ、直径0.4mmの吐出孔1201ホールを孔ピッチ1mmにて一直線上に配置した幅1200mmのメルトブロー製布装置の口金から、吐出量300g/分、ノズル温度280℃、エア圧力0.05MPaにて噴射し、メルトブロー製布装置の捕集コンベア上に載置され5.5m/分で走行する上記シート状物の上にポリプロピレン繊維を捕集させ、目付45g/mのメルトブロー不織布を積層一体化させ、スピーカー用エッジ材を得た。
【0061】
[実施例2]
(極細繊維束不織布を含むシート状物)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0062】
(スピーカー用エッジ材)
シート状物の走行速度を3.8m/分とすることによりメルトブロー不織布の目付を65g/mとした以外は実施例1と同様にして、スピーカー用エッジ材を作製した。
【0063】
[比較例1]
(極細繊維束不織布を含むシート状物)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0064】
(スピーカー用エッジ材)
長繊維不織布は積層せず、上記極細繊維束不織布を含むシート状物をそのままスピーカー用エッジ材とした。
得られたスピーカー用エッジ材は、耐水圧が低く、防水性の求められる車載用スピーカーには適用できないものであった。
【0065】
[比較例2]
(極細繊維束不織布を含むシート状物)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0066】
(スピーカー用エッジ材)
長繊維不織布は積層せず、代わりに、目付50g/mのSBR(スチレンブタジエンゴム)をカレンダー加工により積層一体化させスピーカー用エッジ材とした。
得られたスピーカー用エッジ材は、破断点伸度が低いために、加工性、振動への追従性が悪く、使用に適さないものであった。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径0.3〜7.0μmの極細繊維の束が絡合してなる不織布に弾性重合体が付着してなるシート状物と、長繊維不織布とが積層してなることを特徴とするスピーカー用エッジ材。
【請求項2】
前記長繊維不織布がメルトブロー不織布である、請求項1に記載のスピーカー用エッジ材。
【請求項3】
前記長繊維不織布がポリオレフィン繊維からなる、請求項1または2に記載のスピーカー用エッジ材。
【請求項4】
前記長繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径が0.01〜50μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のスピーカー用エッジ材。
【請求項5】
温度170℃、圧力0.5MPaでプレス処理後のJIS L 1092:1998 6.1.A法による耐水圧が30〜150cmHOである、請求項1〜4のいずれかに記載のスピーカー用エッジ材。

【公開番号】特開2010−43390(P2010−43390A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209541(P2008−209541)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】