スピーカー装置及び携帯電話機
【課題】低音が得られ、薄型化及びスリム化が可能なスピーカー装置を提供する。
【解決手段】スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、第1の平行部と平行な方向に延在し、第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備えている。特に、第1の平行部及び第2の平行部は各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、第1の平行部は凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、第2の平行部は凹部の上方に位置している。
【解決手段】スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、第1の平行部と平行な方向に延在し、第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備えている。特に、第1の平行部及び第2の平行部は各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、第1の平行部は凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、第2の平行部は凹部の上方に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に好適に用いることが可能なスピーカー装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長方形の振動板を有し、かかる振動板の中央に直線状のボイスコイルを配置して構成されるリッフェル型スピーカーが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この種の構成を有するスピーカーが、例えば特許文献1乃至4に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のスピーカーは、主として、上下2つの平行した且つ磁束方向が逆となる磁気ギャップを設けた磁気回路及び2つの振動板を有し、各振動板の背面側の略中央に上下の2つのボイスコイルが夫々配置されてなる。かかる構成により、口径及び横幅を狭くした細長構造をとっても、最低共振周波数f0を低くすることができ、耐入力及び低音再生と音圧周波数特性の向上を図ることができるとされている。
【0004】
また、特許文献2に記載のスピーカーも上記した特許文献1と略同様の構成を有し、さらに同位相の音波が2つの振動板から放射されるように構成され、これにより背面からの音の干渉を防止することができるとされている。
【0005】
また、特許文献3に記載のスピーカーは、主として、長方形の2つの振動板をドーム状に貼り合わせてなり、各振動板の他辺側に2つの平面状ボイスコイルを設け、その平面状ボイスコイルが磁気空隙内に配置されて構成される。これにより、磁気空隙の空隙幅を非常に小さくでき、安価な比較的磁気の力が小さいマグネットを使用しても、磁気空隙の磁気の力を非常に大きくでき、安価で且つ高音質の高音用のスピーカーが得られるとしている。
【0006】
また、特許文献4に記載のスピーカーは、主として、細長形状の振動板と、振動板に結合されると共に磁気回路の磁気空隙に挿入される板状の駆動力伝達部材と、略S字状のダンパーと、駆動力伝達部材に結合されるボイスコイルとを含んで構成されている。これにより、上下方向の変位差を抑制し、大振幅時の非線形歪みを低減し、低音域再生を可能としている。かかるスピーカーでは、1つ又は2つの磁気空隙が設けられ、かかる磁気空隙内にボイスコイルが配置されている。
【0007】
なお、スピーカーにおける、振動板の所定位置へのボイスコイルの支持方法が、例えば特許文献5及び6に記載されている。
【0008】
特許文献5に記載のスピーカーでは、振動板の外周縁部に断面U字状の凹部がリング状に設けられ、さらに、その凹部の外周縁部にはエッジダンパーが設けられ、その凹部内に円筒状のボイスコイルが接着剤によって接着されている。そして、かかるボイスコイルは、エッジダンパーによって凹部と共に磁気回路の磁気ギャップ内に配され浮遊支持されている。また、特許文献6に記載のスピーカーでは、振動板は、その半球状の主部の端縁部に設けられた短筒部の外周面にボイスコイルを配設している。
【0009】
【非特許文献1】佐伯多門著、「新版スピーカー&エンクロージャー百科」、株式会社 誠文堂新光社、2002年8月1日 第3刷、P40
【特許文献1】特開平11−187484号公報
【特許文献2】特開平11−187485号公報
【特許文献3】特開2000−350284号公報
【特許文献4】特開平10−191494号公報
【特許文献5】特許第3337631号公報
【特許文献6】特許第3334842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に係るスピーカー装置では、それらの構成上、振動板の振動方向に対応するスピーカー装置の厚さが厚くなり、近年、薄型化しつつある携帯電話などに適用し難いという問題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、低音が得られ、薄型化及びスリム化が可能なスピーカー装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、スピーカー装置であって、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、一方向に延在する1つの平行部と、前記1つの平行部と平行な方向に延在し、前記1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記1つの平行部及び前記少なくとも1つの他の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記1つの平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記少なくとも1つの他の平行部は前記振動板の上側に且つ放音側に位置していることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、スピーカー装置であって、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部及び前記第2の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部は前記凹部の上方に且つ前記振動板の放音側に位置していることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、スピーカー装置であって、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し且つ前記磁束の延在方向に対応する前記第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して前記第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は前記振動板の放音側の上面に各々固定されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の1つの実施形態では、スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、一方向に延在する1つの平行部と、前記1つの平行部と平行な方向に延在し、前記1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記1つの平行部及び前記少なくとも1つの他の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記1つの平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記少なくとも1つの他の平行部は前記振動板の上側に且つ放音側に位置している。
【0016】
上記のスピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、その磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束(磁力)の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、一方向に延在する1つの平行部と、その1つの平行部と平行な方向に延在し、その1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備えて構成される。好適な例では、1つの平行部に流れる音声電流の向きと、少なくとも1つの他の平行部に流れる音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定することができる。また、好適な例では、ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルが振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、少なくとも1つの他の平行部が磁気ギャップ内に位置するように、1つの平行部と少なくとも1つの他の平行部との位置関係が規定されているのが好ましい。
【0017】
特に、このスピーカー装置では、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、1つの平行部の全部又は一部は、凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、少なくとも1つの他の平行部は振動板の上側に且つ放音側に位置している。これにより、ボイスコイルの1つの平行部は、音の放射方向と逆側に位置する磁気回路の近傍位置に配置されることになり、当該スピーカー装置の薄型化を図ることができる。また、振動板の凹部は、磁束の延在方向と略直交する方向に延在するように形成され、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、その凹部内には1つの平行部の全部又は一部が配置されているので、当該スピーカー装置のスリム化を図ることができる。よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現するスピーカー装置は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0018】
また、このスピーカー装置では、ボイスコイルの1つの平行部において一定の方向へ音声電流が流れると、当該1つの平行部は、フレミングの左手の法則によって、かかるスピーカー装置の中心軸方向に振動する。これにより、振動板を通じて所定の方向に音波が放射される。しかしながら、このスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルがスピーカー装置の音の放射方向と逆側の磁気回路側に大きく移動して、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部が磁気ギャップ内に位置すると、1つの平行部と少なくとも1つの他の平行部とには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。
【0019】
特に、このスピーカー装置では、少なくとも1つの他の平行部は振動板の上側に且つ放音側に位置しているので、上記のような場合でも、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部と磁気ギャップ内に発生する磁束との相互作用により、即ち、磁気ギャップ内において1つの平行部に働く駆動力と、少なくとも1つの他の平行部に働く、1つの平行部と逆向きの且つ同一の駆動力とが均衡し、少なくとも1つの他の平行部が、その位置からそれ以上ボイスコイルを磁気回路側へ移動させるのを止める役割、即ち、ストッパーとしての役割を果たす。つまり、かかる位置から、ボイスコイルの磁気回路側への移動が規制される。これにより、振動板の凹部付近の部分と、磁気回路とが接触又は衝突するのを回避することができる。この点からもスピーカー装置の薄型化に寄与し得る。なお、振動板は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル等はそのような均衡した位置に止まることはなく、ボイスコイルへ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。
【0020】
本発明の他の実施形態では、スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部及び前記第2の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部は前記凹部の上方に且つ前記振動板の放音側に位置している。
【0021】
上記のスピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、その磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束(磁力)の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備えて構成される。好適な例では、前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定することができる。また、好適な例では、前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と前記第2の平行部との位置関係が規定されているのが好ましい。
【0022】
特に、このスピーカー装置では、第1の平行部及び第2の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、第1の平行部の全部又は一部は、振動板の凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、第2の平行部は、その凹部の上方に且つ振動板の放音側に位置している。これにより、ボイスコイルの第1の平行部は、音の放射方向と逆側に位置する磁気回路側の近傍位置に配置されることになり、当該スピーカー装置の薄型化を図ることができる。また、振動板の凹部は、磁束の延在方向と略直交する方向に延在するように形成され、第1の平行部及び第2の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、その凹部内には第1の平行部の全部又は一部が配置されているので、当該スピーカー装置のスリム化を図ることができる。よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現するスピーカー装置は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0023】
また、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第1の平行部において一定の方向へ音声電流が流れると、当該第1の平行部は、フレミングの左手の法則によって、かかるスピーカー装置の中心軸方向に振動する。これにより、振動板を通じて所定の方向に音波が放射される。しかしながら、このスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルがスピーカー装置の音の放射方向と逆側の磁気回路側に大きく移動して、第1の平行部及び第2の平行部が磁気ギャップ内に位置すると、第1の平行部と第2の平行部とには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。
【0024】
特に、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第2の平行部は凹部の上方に且つ振動板の放音側に配置されているので、上記のような場合でも、第1の平行部及び第2の平行部と磁気ギャップ内に発生する磁束との相互作用により、即ち、磁気ギャップ内において第1の平行部に働く駆動力と、第2の平行部に働く、第1の平行部と逆向きの且つ同一の駆動力とが均衡し、第2の平行部が、その位置からそれ以上ボイスコイルを磁気回路側へ移動させるのを止める役割、即ち、ストッパーとしての役割を果たす。つまり、かかる位置から、ボイスコイルの磁気回路側への移動が規制される。これにより、振動板の凹部付近の部分と、磁気回路とが接触又は衝突するのを回避することができる。この点からもスピーカー装置の薄型化に寄与し得る。なお、振動板は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル等はそのような均衡した位置に止まることはなく、ボイスコイルへ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。
【0025】
本発明の他の実施形態では、スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し且つ前記磁束の延在方向に対応する前記第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して前記第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は前記振動板の放音側の上面に各々固定されている。
【0026】
上記のスピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、その磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、その第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、その第1の平行部と平行な方向に延在し且つその磁束の延在方向に対応する当該第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備えて構成される。好適な例では、前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部及び前記第3の平行部の各々に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定することができる。また、好適な例では、前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と、前記第2の平行部及び前記第3の平行部との位置関係が規定されているのが好ましい。
【0027】
特に、このスピーカー装置では、第1の平行部、第2の平行部及び第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、第1の平行部の全部又は一部は、凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、第2の平行部及び第3の平行部は振動板の放音側の上面に各々固定されている。これにより、ボイスコイルの第1の平行部は、音の放射方向と逆側に位置する磁気回路の背面側の近傍位置に配置されることになり、当該スピーカー装置の薄型化を図ることができる。また、振動板の凹部は、磁束の延在方向と略直交する方向に延在するように形成され、その凹部内には第1の平行部の全部又は一部が配置されているので、当該スピーカー装置のスリム化を図ることができる。よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現するスピーカー装置は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0028】
また、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第1の平行部において一定の方向へ音声電流が流れると、当該第1の平行部は、フレミングの左手の法則によって、かかるスピーカー装置の中心軸方向に振動する。これにより、振動板を通じて所定の方向に音波が放射される。しかしながら、このスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルがスピーカー装置の音の放射方向と逆側の磁気回路側に大きく移動して、第1の平行部、第2の平行部及び第3の平行部が磁気ギャップ内に位置すると、第1の平行部と第2の平行部及び第3の平行部とには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。
【0029】
特に、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第2の平行部及び第3の平行部は振動板の放音側の上面に各々固定されているので、上記のような場合でも、第1の平行部、第2の平行部及び第3の平行部と磁気ギャップ内に発生する磁束との相互作用により、即ち、磁気ギャップ内において第1の平行部に働く駆動力と、第2及び第3の平行部に働く、第1の平行部と逆向きの且つ同一の駆動力とが均衡し、第2及び第3の平行部が、その位置からそれ以上ボイスコイルを磁気回路側へ移動させるのを止める役割、即ちストッパーとしての役割を果たす。つまり、かかる位置から、ボイスコイルの磁気回路側への移動が規制される。これにより、振動板の凹部付近の部分と、磁気回路とが接触又は衝突するのを回避することができる。この点からもスピーカー装置の薄型化に寄与し得る。なお、振動板は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル等はそのような均衡した位置に止まることはなく、ボイスコイルへ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。また、ボイスコイルの第2の平行部及び第3の平行部は振動板の放音側の上面に各々固定されている。そのため、音再生時にボイスコイル及び振動板を含む振動系を円滑に且つ安定的に移動させることができる。
【0030】
上記のスピーカー装置の一つの態様では、前記磁気ギャップは前記磁気回路の略中央位置に形成され、前記振動板は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、当該振動板の前記凹部は、細長い形状に且つU字状の断面形状に形成され、当該振動板の略中央位置及び前記磁気ギャップ内に配置されている。
【0031】
この態様では、磁気ギャップは、磁気回路の略中央位置に形成されている。そして、振動板は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、当該振動板の凹部は、細長い形状に且つU字状の断面形状に形成され、当該振動板の略中央位置及び磁気ギャップ内に配置されている。これにより、スピーカー装置のスリム化を図ることができる。また、ボイスコイルを振動板の略中央位置及び磁気ギャップ内に配置することができる。その結果、音再生時に振動板等を円滑且つ安定的に移動させることができ、振動板及びボイスコイルを含む振動系全体としての強度が十分に確保される。
【0032】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記第1の平行部の全部又は一部は前記凹部内の側面に狭持された状態で固定されている。これにより、ボイスコイルは凹部に安定的に保持され、ボイスコイルの振動方向への撓み易い欠点を補うことができる。即ち、これにより、ボイスコイルがその振動方向に撓み難くなる。よって、第1の平行部を磁気ギャップ内に的確に位置させることができる。
【0033】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が振動板の振動方向に上下逆の位置関係にある一対のマグネットと、直方体状又は平板状の形状を有し、前記一対のマグネットの各々の上面に配置された一対のプレートと、を備え、前記一対のプレートの間には1つの前記磁気ギャップが形成されている。
【0034】
この態様では、磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が振動板の振動方向に上下逆の位置関係にある一対のマグネットと、直方体状又は平板状の形状を有し、一対のマグネットの各々の上面に配置された一対のプレートと、を備えて構成される。そして、一対のプレートの間には1つの磁気ギャップが形成されている。これにより、振動板の凹部内に配置された第1の平行部はヨークの近傍位置に且つ磁気回路の略中央位置に配置されることになり、スピーカー装置の薄型化及びスリム化を図ることができる。また、この態様のスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイル及び振動板がスピーカー装置の音の放射方向と逆方向に大きく振動したような場合でも、第2の平行部が上述したストッパーとしての役割を果たすため、振動板の凹部付近の部分と、プレートとが接触又は衝突するのを回避することができる。
【0035】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記一対の前記プレートのうち少なくとも一方の前記プレートの上面には他のマグネットが配置され、前記他の前記マグネットと、前記プレートを挟んで対向する前記マグネットとのS極及びN極の相対的な着磁状態は振動板の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。
【0036】
この態様では、一対のプレートのうち、少なくとも一方のプレートの上面には他のマグネットが配置されている。そして、他のマグネットと、プレートを挟んで対向するマグネットとのS極及びN極の相対的な着磁状態は振動板の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。なお、他のマグネットは、マグネットと反発し合う位置に配置されるので、一般的に「反発マグネット」と称される。
【0037】
このように、この態様では、一対のマグネットに加え、さらに反発マグネットとしての他のマグネットを設けているので、その分だけ、磁気ギャップ内における磁界中の磁力の大きさを大きくすることができる。これにより、感度(効率)を上げることができる。また、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルが音の放射方向と逆側へ大きく移動した場合に、その方向へのボイスコイルの移動を一時的且つ瞬間的に止めるストッパーとしての機能をより一層高めることができる。
【0038】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、直方体状又は平板状の形状を有し、前記1つの前記マグネットの上面に配置された1つのプレートと、を備え、前記1つの前記マグネットと前記前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されている。
【0039】
この態様では、磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、その1つのマグネットと一定の間隔をおいてヨークの上面に対向配置された、例えば鉄などの金属材料よりなる磁性体と、直方体状又は平板状の形状を有し、その1つのマグネットの上面に配置された1つのプレートと、を備えて構成される。そして、1つのマグネットと磁性体との間には1つの磁気ギャップが形成されている。
【0040】
よって、次のような作用効果を奏する。すなわち、一般的に、マグネット及びプレートの設定数が少なくなると、その分だけ感度が低下することになる。しかし、スピーカー装置を適用する携帯電話などの電子機器などの仕様によっては、必ずしも、高い感度及び効率が必要とされない場合がある。例えば、携帯電話に用いられるスピーカー装置としては、受信用(レシーバー用)と着信用の2種類が存在するが、そのうち、レシーバー用のスピーカー装置の場合には、スペックとして小型化及び最低共振周波数f0の低周波数化(低f0化)の優先順位が高いが、高い感度及び効率はそれほど必要とされない。よって、このようなケースでは、製品コストの観点も考慮すると、例えば携帯電話のレシーバー用として、この態様のスピーカー装置を適用するのが望ましいといえる。つまり、感度及び効率をそれほど必要としない携帯電話用に好適なスピーカー装置としては、上記したスピーカー装置よりもマグネットの設定数が少ない分だけ感度及び効率は若干劣るが、その分だけ製品コストの安い、この態様のスピーカー装置を適用した方が望ましいといえる。
【0041】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が磁束の延在方向に左右逆の位置関係にある一対のマグネットと、を備え、前記一対のマグネットの間には1つの前記磁気ギャップが形成されている。
【0042】
この態様では、磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が磁束の延在方向に左右逆の位置関係にある一対のマグネットと、を備えて構成される。そして、一対のマグネットの間には1つの磁気ギャップが形成されている。
【0043】
つまり、この態様では、磁気回路は一対のプレートを設けていないので、その分だけ上記のスピーカー装置と比較して感度及び効率が若干低下するが、その反面、製品コストを下げることができる。よって、携帯電話などに代表される電子機器の感度及び効率や製品コスト等を考慮すると、この態様に係るスピーカー装置を、例えば携帯電話のレシーバー用として好適に用いることができる。また、一対のプレートを設けていない分だけ、振動板及びボイスコイルの振動方向に対応する、スピーカー装置の高さを小さくすることができ、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。
【0044】
上記のスピーカー装置の他の態様では、感度及び効率並びに製品コストを考慮して、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、を備え、さらに、前記1つのマグネットと前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されるように構成しても構わない。また、これにより、一対のプレートを設けていない分だけ、振動板及びボイスコイルの振動方向に対応する、スピーカー装置の高さを小さくすることができ、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。
【0045】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記第2の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、当該凹部の側面に狭持された状態で固定されている。
【0046】
このように、この態様では、第1の平行部のみならず、第2の平行部の全部又は一部も振動板の凹部に固定されることになるので、ボイスコイル及び振動板を含む振動系の振動時の強度向上及び安定化を図ることができる。また、この態様を採用すれば、振動板及びボイスコイルの振動方向に対応する、スピーカー装置の高さを小さくすることができ、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。
【0047】
上記のスピーカー装置の他の態様では、筒状の形状並びに環状及び長円状又は楕円状の平面形状を有し、前記磁気回路を収容するフレームを備え、前記フレームの上面側の外周部には階段状の形状を有する段部が形成され、前記振動板は、前記凹部の周囲に設けられ、半球状の断面形状を有し、音波を放射する機能を有する放音部と、前記放音部の外周部に設けられ、前記フレームの前記段部と嵌合する階段状の形状を有する段部と、を含み、前記振動板の前記段部は、前記フレームの前記段部に嵌合していると共に、前記凹部は前記フレームの略中央位置に配置されている。
【0048】
この態様では、筒状の形状並びに環状及び長円状又は楕円状の平面形状を有し、磁気回路を収容するフレームを備える。そして、フレームの上面側の外周部には階段状の形状を有する段部が形成されている。また、振動板は、その凹部の周囲に設けられ、半球状の断面形状を有し、音波を放射する機能を有する放音部と、その放音部の外周部に設けられ、フレームの段部と嵌合する階段状の形状を有する段部と、を含んでいる。また、振動板の段部は、フレームの段部に嵌合していると共に、振動板の凹部はフレームの略中央位置に配置されている。これにより、ボイスコイルを、スピーカー装置の略中央位置、即ちフレームの略中央位置に配置することができ、ボイスコイルと振動板との相対的な位置関係を適切な状態に設定することができる。また、音再生時に振動板等を円滑且つ安定的に移動させることができ、ボイスコイル及び振動板を含む振動系全体としての強度が十分に確保される。
【0049】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記放音部は、エッジの機能を有し、前記放音部の短手方向の長さは、前記振動板の短手方向の長さの大半を占めている。
【0050】
一般的に、エッジの幅が大きくなると、それに従いエッジの軟らかさが増すため、スピーカー装置の共振周波数を下げることができると共に、ボイスコイルをスピーカー装置の中心位置に近づけることができる。これにより、最低共振周波数f0を下げることできるので、低音が得られ易くなる。この点、この態様では、放音部は、音再生時に不要な振動を吸収するなどの働きを有するエッジの機能を有し、放音部の短手方向の長さは、振動板の短手方向の長さの大半を占めているので、必然的にエッジの幅が大きくなる。よって、最低共振周波数f0を下げることができ、低音が得られ易くなる。その結果、かかる振動板を有するスピーカー装置は、高い感度が得られ、携帯電話用のスピーカーとして好適に用いることができる。
【0051】
本発明の他の実施形態では、上記のスピーカー装置を備える携帯電話機を構成することができる。これにより、薄型及びスリム型のスピーカー装置が得られる。
【実施例】
【0052】
以下、図面を参照して本発明の好適な各種の実施例について説明する。各実施例に係るスピーカー装置は、携帯電話の着信用(レシーバー用)又は受信用に、或いは、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることが可能な薄型及びスリム型(幅狭型)のスピーカー装置である。
【0053】
[第1実施例]
(スピーカー装置の構成)
図1は、本発明の第1実施例に係るスピーカー装置100の断面構成を概略的に示す。また、図1は、スピーカー装置100をその中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。図2は、図1におけるスピーカー装置100をその中心軸L1で切断したときの、その片側の分解斜視図を示す。以下、本発明の第1実施例に係るスピーカー装置100の構成等について説明する。
【0054】
スピーカー装置100は、主として、ヨーク1と、一対のマグネット2a及び2bと、一対のプレート3a及び3bと、を有する内磁型の磁気回路30と、フレーム4と、振動板5と、ボイスコイル6と、を有する振動系31と、を備えて構成される。なお、以下の説明では、便宜上、各マグネット又は各プレートを区別する場合にはそれぞれマグネット2a又はプレート3aなどと表記すると共に、それらを特に区別しない場合には、マグネット2又はプレート3と表記する。
【0055】
まず、磁気回路30の構成について説明する。
【0056】
ヨーク1は、複数の開口1aを有し、平板状の形状に且つ略長方形状の平面形状に形成されている。各開口1aは、振動板5のヨーク1側への移動時にスピーカー装置100内部の不要な空気を外部へ逃す働きを有する。これにより、スピーカー装置100の内部の圧力(いわゆる、背圧)が高くなるのを防止することができる。
【0057】
一対のマグネット2a及び2bの各々は、直方体状及び角型棒状の形状に形成されている。マグネット2aとマグネット2bとの相対的な大きさ(サイズ)及び磁力の大きさは同一となっている。また、マグネット2aとマグネット2bとは、ヨーク1上において互いに対向する位置に且つ一定の間隔をおいて設けられている。マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁(磁化)の状態は後述する振動板5の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。具体的には、ヨーク1と接する、マグネット2aの下面側はS極に着磁されていると共に、後述するプレート3aと接する、マグネット2aの上面側はN極に着磁されている。これに対応して、ヨーク1と接する、マグネット2bの下面側はN極に着磁されていると共に、後述するプレート3bと接する、マグネット2bの上面側はS極に着磁されている。なお、本発明では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁状態の位置関係は、かかる構成に限定されるものでない。
【0058】
一対のプレート3a及び3bの各々は、平板状の形状に形成されている。プレート3a及び3bの各長手方向の長さは、マグネット2の長手方向の長さと略同一の長さに設定されている。プレート3aはマグネット2a上に取り付けられていると共に、プレート3bはマグネット2b上に取り付けられている。そして、プレート3aとプレート3bとは、一定の間隔をおいて対向しており、その両者の間には一定の間隙が形成されている。
【0059】
以上の構成を有する磁気回路30では、かかる間隙にマグネット2a及び2bの磁束を集中させている。つまり、プレート3aとプレート3bとの間の間隙には1つの磁気ギャップ70が形成されている。また、磁気ギャップ70は、磁気回路30の略中央位置に形成されている。そして、磁気ギャップ70内に生じる磁束(磁力)の方向は矢印Y2方向に設定されている。
【0060】
次に、振動系31の構成について説明する。
【0061】
フレーム4は筒状の形状に形成されている。また、フレーム4を平面的に見ると、当該フレーム4は長円状又は楕円状に且つ環状(リング状)の形状に形成されている。フレーム4の上端面側には、後述する振動板5の外周部を支持する、階段状の形状を有する段部4aが設けられている。フレーム4の下端部側にはヨーク1が取り付けられており、フレーム4は磁気回路30を収容している。
【0062】
振動板5は、長円状又は楕円状の平面形状に形成されている。また、振動板5は、その中央位置に配置され且つその長手方向に延在するように設けられた凹部5aと、その凹部5aの周囲に配置され、半円状の断面形状を有する放音部5bと、その放音部5bの外周部に設けられ、階段状の断面形状を有する段部5cと、を有する。
【0063】
放音部5bは、振動板5の全面積の過半数を占め、音を放射する部分であり、音再生時に不要な振動を吸収するなどのエッジの機能も有する。また、放音部5bの短手方向の長さは、振動板5の短手方向の長さの大半を占めている。凹部5aは、細長い形状に且つ袋状又はU字状の断面形状に形成され、磁束の方向となる矢印Y2方向と、略直交する方向と平行な方向に延在してなる。凹部5aは、スピーカー装置100の中心軸L1付近、即ち磁気回路30内の略中央位置に配置される。凹部5aには、後述するボイスコイル6の第1の平行部6aが配置され、当該凹部5aは、ボイスコイル6を支持する役割を果たす。振動板5の段部5cはフレーム4の段部4aに嵌合する。これにより、振動板5はフレーム4に支持されると共に、振動板5の凹部5a内に配置されたボイスコイル6の第1の平行部6aは、一対のプレート3a及び3bの間に設けられた磁気ギャップ70内に配置される。
【0064】
ボイスコイル6は、1つのプラス/マイナスのリード線(図示略)を有し、長円状に且つリング状の平面形状を形成するように巻回されてなる。プラス側のリード線はL(又はR)チャンネル信号の入力配線であり、マイナス側のリード線はグランド(GND:接地)信号の入力配線である。各リード線は、図示しないアンプ側の各出力配線に電気的に接続されている。このため、ボイスコイル6には、その各リード線を通じてアンプ側から信号及び電力(以下、単に「音声電流」とも称する)が夫々入力される。
【0065】
また、ボイスコイル6は、一方向に延在する第1の平行部6aと、その第1の平行部6aと一定の間隙6dを置いて対向配置され、第1の平行部6aと平行な方向に延在する第2の平行部6bと、第1の平行部6aの各端部と、対応する第2の平行部6bの各端部とを繋ぐ複数の連結部6cと、を有し、振動板5の凹部5a内に配置される。
【0066】
第1の平行部6aの長手方向の長さは、振動板5の凹部5aの長手方向の長さと略同一の長さに設定されている。第1の平行部6aは、振動板5の凹部5a内に配置されており、その凹部5aの側面5abに挟持された状態で固定されている。第2の平行部6bの長手方向の長さは、第1の平行部6aの長手方向の長さと略同一の長さに設定されている。また、第1の平行部6aと第2の平行部6bとの間には一定の間隙6dが形成されており、第2の平行部6bは、当該凹部5aの上方に且つ振動板5の放音側に位置している。好適な例では、ボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル6が振動板5の音の放射方向Y1と逆方向に大きく移動した場合に、第2の平行部6bが磁気ギャップ70内に位置するように、第1の平行部6aと第2の平行部6bとの位置関係が規定されているのが好ましい。
【0067】
かかる構成を有するボイスコイル6では音声電流が周回するように流れるため、図2に示すように、第1の平行部6aに流れる音声電流の方向(向き)と、第2の平行部6bに流れる音声電流の方向(向き)とは相対的に逆向きの関係になる。即ち、図2おいて、第1の平行部6aに音声電流が矢印Y4方向に流れたと仮定した場合には、第2の平行部6bでは音声電流は矢印Y4方向と逆の矢印Y3方向に流れることなる。
【0068】
以上に述べたスピーカー装置100において、アンプ側から出力された音声電流は、ボイスコイル6の各リード線を通じて、当該ボイスコイル6へ入力される。これにより、磁気ギャップ70内でボイスコイル6の第1の平行部6aに駆動力が発生し、第2の平行部6bが磁気ギャップ70内に位置しない範囲内で、第1の平行部6aがプレート3a及び3bの厚さ方向の中心軸L2を基準としてスピーカー装置100の中心軸L1方向に振動する。こうして、スピーカー装置100は、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波を放射する。
【0069】
以上の構成を有する第1実施例では、次のような特有の作用効果を奏する。
【0070】
まず、第1実施例に係るスピーカー装置100では、振動板5の短手方向の中央位置に、袋状又はU字状の断面形状を有し、且つ当該振動板5の長手方向に延在する細長い形状の凹部5aを設け、その凹部5a内にボイスコイル6の第1の平行部6aを配置している。これにより、図1において、ボイスコイル6の幅d3方向の中心と、振動板5の短手方向の中心とを一致させることができ、ボイスコイル6と振動板5との相対的な位置関係を適切な状態に設定することができる。
【0071】
また、かかる構成に加え、第1の平行部6aが配置された凹部5aを、磁気回路30内の略中央位置に収容するように配置し、且つその磁気回路30内に設けられた1つの磁気ギャップ70内に位置させることとしている。これにより、ボイスコイル6の第1の平行部6aは、ヨーク1の近傍位置に配置される。その結果、振動板5及びボイスコイル6の振動方向に対応する、スピーカー装置100の高さd1を小さくすることが可能となり、薄型のスピーカー装置を構成することができる。
【0072】
また、振動板5の凹部5aは、磁束の延在方向Y2と略直交する方向に延在するように形成され、第1の平行部6a及び第2の平行部6bは、各々凹部5aの延在方向と平行な方向に配置されており、その凹部5a内には第1の平行部6aが配置されているので、スピーカー装置100の短手方向の幅d2を小さくすることができ、当該スピーカー装置100のスリム化を図ることができる。また、振動板5は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、振動板5の凹部5aは、細長い形状に且つ袋状又はU字状の断面形状に形成され、振動板5及び磁気回路30の略中央位置に配置されているので、この点からもスピーカー装置100のスリム化を図ることができる。
【0073】
よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現する第1実施例に係るスピーカー装置100は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、上記したモバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0074】
また、ボイスコイル6の第1の平行部6aは、振動板5の凹部5aの側面5abに狭持された状態で固定されている。これにより、ボイスコイル6は凹部5aに安定的に保持され、ボイスコイル6の振動方向、即ちスピーカー装置100の中心軸L1方向への撓み易い欠点を補うことができる。即ち、これにより、ボイスコイル6がその振動方向となる中心軸L1方向に撓み難くなる。よって、第1の平行部6aを1つの磁気ギャップ70内に的確に位置させることができる。加えて、振動板5の外周部に設けられた段部5cをフレーム4の段部4aに嵌合させるようにしているので、振動板5の短手方向の中心、言い換えれば凹部5aの幅方向の中心を、スピーカー装置100の中心軸L1に略一致させることができる。これにより、ボイスコイル6の幅d3方向の中心を、フレーム4、振動板5及び磁気回路30の中心軸、即ちスピーカー装置100の中心軸L1に略一致させることができる。その結果、音再生時に振動板5等を円滑且つ安定的に移動させることができ、振動系31全体としての強度が十分に確保される。
【0075】
また、ボイスコイル6の第2の平行部6bを、一定の間隙6dを保持しつつ第1の平行部6aの上方に且つ凹部5aの上方に且つ振動板5の放音側に配置しているので、スピーカー装置100の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル6及び振動板5がスピーカー装置100の音の放射方向Y1と逆方向に大きく移動したような場合でも、第1の平行部6a及び第2の平行部6bと磁気ギャップ70に形成される磁束との相互作用により、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/又はプレート3bとが接触又は衝突するのを回避することができる。この点について、図1及び図3を参照して詳述する。
【0076】
図3は、図1に対応するスピーカー装置100の断面図であり、当該スピーカー装置100の駆動方法を説明する断面図である。
【0077】
まず、図1のボイスコイル6の第1の平行部6aにおいて紙面奥側又は紙面手前側へ音声電流が流れると、当該第1の平行部6aは、フレミングの左手の法則によって、第2の平行部6bが磁気ギャップ70内に位置しない範囲内で、プレート3a及び3bの厚さ方向の中心軸L2を基準として、スピーカー装置100の中心軸L1方向に振動する。これにより、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波が放射される。
【0078】
しかし、何らかの原因により、ボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、当該ボイスコイル6が音の放射方向と逆側のヨーク1側に大きく移動して、第1の平行部6aと第2の平行部6bの間に設けられた間隙6dの厚さ方向の中心が、プレート3の厚さ方向の中心軸L2に略一致すると、磁気ギャップ70内において、第1の平行部6aと第2の平行部6bとには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。即ち、このとき、第1の平行部6aには紙面奥側に音声電流が流れることになるので、第1の平行部6aには音の放射方向Y1と逆側に駆動力が作用する。一方、第2の平行部6bには紙面手前側に音声電流が流れることになるので、第2の平行部6bには、第1の平行部6aと同一の大きさの駆動力が音の放射方向Y1に作用する。また、かかる状態において、次の瞬間には、第1の平行部6aには紙面手前側に音声電流が流れることになるので、第1の平行部6aには音の放射方向Y1に駆動力が作用する。一方、第2の平行部6bには紙面奥側に音声電流が流れることになるので、第2の平行部6bには、第1の平行部6aと同一の大きさの駆動力が音の放射方向Y1と逆側に作用する。このため、第1の平行部6aに生じる駆動力と、その駆動力と逆向きの且つ同一の、第2の平行部6bに生じる駆動力とが一時的且つ瞬間的に均衡し、ボイスコイル6は、かかる位置からそれ以上ヨーク1側へは移動しなくなる。つまり、かかる位置から、ボイスコイル6のヨーク1側への移動が規制される。なお、振動板5は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル6等はそのような位置に止まることはなく、ボイスコイル6へ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル6等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。このような作用により、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/又はプレート3bとが接触又は衝突するのを防止できる。このため、第2の平行部6bは、ボイスコイル6の音の放射方向Y1と逆側への大振幅時に、当該方向へのボイスコイル6の移動を一時的且つ瞬間的に止める役割、即ちブレーキ(ストッパー)としての役割を果たす。この点からもスピーカー装置100の薄型化に寄与し得る。
【0079】
また、第1実施例に係るスピーカー装置100は、以下に述べる比較例と比較して、振動板5の構成上、最低共振周波数f0を下げることができるため低音が得られ易く、高い感度が要求される携帯電話用のスピーカーとして好適に用いることができるという利点を有する。
【0080】
まず、図4を参照して、比較例に係るスピーカー装置の構成について説明する。図4は、比較例に係るスピーカー装置50の片側斜視図を示す。
【0081】
比較例に係るスピーカー装置50は、長円状又は楕円状の平面形状及び凹状の断面形状を有するヨーク11と、そのヨーク11上の中央位置に取り付けられた直方体状及び角型棒状の形状を有するマグネット21と、そのマグネット21上に取り付けられ、マグネット21の長手方向の長さと略同一の長さを有する平板状のプレート31と、を有する磁気回路と、第1実施例と類似した形状を有するフレーム41と、フレーム41に支持される振動板51と、振動板51に支持されるボイスコイル61と、を有する振動系とを備えて構成される。
【0082】
かかる磁気回路において、ヨーク11の上端部とプレート31とは一定の間隔をおいて対向しており、その両者の間には磁気ギャップ71が形成されている。
【0083】
フレーム41は、ヨーク11の上端部付近に取り付けられている。フレーム41の上端部側の外周部には、階段状の形状を有する段部41aが設けられている。
【0084】
振動板51は、音を放射する機能を有し、半円状の断面形状を有する放音部51bと、放音部51bの周囲に一定の間隔をおいて設けられ、Ω状の断面形状を有するエッジ51cと、放音部51bとエッジ51cとの間に設けられ、凹状の断面形状を有する凹部51aと、エッジ51cの外周縁部に設けられ、階段状の断面形状を有する段部51dと、を有する。振動板51の段部51dは、フレーム41の段部41aに嵌合している。これにより、放音部51bはプレート31を覆う位置に配置されていると共に、凹部51aは磁気ギャップ71内に配置されている。そして、凹部51a内には、リング状に巻回してなるボイスコイル61が配置されている。このため、ボイスコイル61は、磁気ギャップ71内に位置している。かかる比較例では、ボイスコイル71に音声電流が入力されると、磁気ギャップ71内でボイスコイル61に駆動力が生じて、振動板51の放音部51bから音波が放射される。
【0085】
以上の構成を有する比較例では、後述するように、その構成上、エッジの幅が小さくなるので、ボイスコイル61の位置がスピーカー装置50の中心位置から離れ、これにより第1実施例と比較して最低共振周波数f0が高くなり、低音が得られ難いという課題を有する。そのため、比較例は、高い感度が要求される携帯電話用のスピーカーとしては不向きである。以下、この点について、図5を参照して説明する。
【0086】
図5(a)は、比較例に係る振動板51の短手方向に対応する断面図である。一方、図5(b)は、第1実施例に係る振動板5の短手方向に対応する断面図である。
【0087】
比較例の振動板51の短手方向の長さ(幅)と、第1実施例の振動板5の短手方向の長さ(幅)は共に同一の長さd4に設定されていると共に、その両者の厚さは同一の厚さ(図示略)に設定されている。比較例において振動板51のエッジ51cの幅はd5に設定されているのに対して、第1実施例においてエッジの機能を兼ねる放音部5bの幅はd6(>d5)に設定されている。つまり、第1実施例は、比較例と比較してエッジの幅が大きいといえる。また、第1実施例に係る振動板5の放音部5bの短手方向の長さは、振動板5の短手方向の長さの大半を占めており、この観点からもエッジの幅が大きいといえる。ここで、一般的に、エッジの幅が大きくなると、それに従いエッジの軟らかさが増すため、スピーカー装置の共振周波数を下げることができると共に、ボイスコイルをスピーカー装置の中心位置に近づけることができる。これにより、最低共振周波数f0を下げることできるので、低音が得られ易くなる。よって、第1実施例では、比較例と比べ最低共振周波数f0を下げることができ、低音が得られ易くなっている。その結果、第1実施例に係る振動板5を有するスピーカー装置は、高い感度が得られ、携帯電話用のスピーカーとして好適に用いることができる。
【0088】
[第2実施例]
次に、図6を参照して、本発明の第2実施例に係るスピーカー装置200の構成について説明する。図6は、第2実施例のスピーカー装置200を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0089】
第2実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第2実施例は、第1実施例と比較して、マグネット2及びプレート3の設定数が相違している。
【0090】
具体的には、第2実施例に係るスピーカー装置200では、マグネット2b及びプレート3bを設けているが、マグネット2a及びプレート3aを設けていない。その代わりに、第2実施例では、マグネット2a及びプレート3aに対応する位置に磁性体8を設けている。好適な例では、磁性体8は、鉄などの金属材料により形成することができる。磁性体8は、マグネット2aの長手方向の長さと同一の長さを有すると共に、当該磁性体8の厚さ(高さ)は、マグネット2bの厚さ(高さ)とプレート3bの厚さ(高さ)とを合わせた値に設定されている。このため、磁性体8の内壁の上端部付近と、プレート3aとは一定の間隔をおいて対向しており、その両者の間には磁気ギャップ70が形成されている。なお、第2実施例では、磁束の方向は第1実施例と同様に矢印Y2方向に生じている。そして、第2実施例では、第1実施例と同様の原理により、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波を放射する。
【0091】
以上の構成を有する第2実施例では、次のような特有の作用効果を奏する。
【0092】
一般的に、マグネット及びプレートの設定数が少なくなると、その分だけ感度が低下することになる。しかし、スピーカー装置が搭載される電子機器などの仕様によっては、必ずしも、高い感度及び効率が必要とされない場合がある。例えば、携帯電話に用いられるスピーカー装置としては、受信用(レシーバー用)と着信用の2種類が存在するが、そのうち、レシーバー用のスピーカー装置の場合には、スペックとして小型化及び最低共振周波数f0の低周波数化(低f0化)の優先順位が高いが、高い感度及び効率はそれほど必要とされない。よって、このようなケースでは、製品コストの観点も考慮すると、例えば携帯電話のレシーバー用として、第1実施例よりも第2実施例のスピーカー装置を適用するのが望ましいといえる。つまり、感度及び効率をそれほど必要としない携帯電話用に好適なスピーカー装置としては、第1実施例に係るスピーカー装置100よりも、第1実施例と比較してマグネットの設定数が少ない分だけ感度及び効率は若干劣るが、その分だけ製品コストの安い第2実施例に係るスピーカー装置200を適用した方が望ましいといえる。なお、第2実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0093】
[第3実施例]
次に、図7を参照して、本発明の第3実施例に係るスピーカー装置300の構成について説明する。図7は、第3実施例のスピーカー装置300を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0094】
第3実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第3実施例は、第1実施例と比較して、マグネットの設定数が多くなっている。
【0095】
具体的には、第3実施例に係るスピーカー装置300では、一対のマグネット2a及び2bに加えて、さらに、一対のマグネット2c及び2dが設けられている。なお、本発明では、製品コストを考慮し又は仕様に応じて、一対のマグネット2c及び2dのうち、いずれか一方のマグネットを設ける構成としても構わない。マグネット2cはプレート3a上に設けられている一方、マグネット2dはプレート3b上に設けられている。そして、一対のマグネット2c及び2dと、対応するプレート3a及び3bを挟んで対向する一対のマグネット2a及び2bとのS極及びN極の相対的な着磁状態はそれぞれ振動板5の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。
【0096】
具体的には、プレート3aに接する、マグネット2cの下面側はN極に着磁されていると共に、プレート3bに接する、マグネット2dの下面側はS極に着磁されている。このため、N極に着磁されたマグネット2cの下面側と、N極に着磁されたマグネット2aの上面側とはプレート3aを挟んで対向していると共に、S極に着磁されたマグネット2dの下面側と、S極に着磁されたマグネット2bの上面側とはプレート3bを挟んで対向している。このように、マグネット2cは、マグネット2aと反発し合う位置に配置され、また、マグネット2dは、マグネット2bと反発し合う位置に配置されるので、マグネット2c及び2dの各々は、一般的に「反発マグネット」と称される。
【0097】
このように、第3実施例では、一対のマグネット2a及び2bに加え、さらに反発マグネットとしてのマグネット2c及び2dを設けているので、その分だけ、磁気ギャップ70内における磁界中の磁力の大きさを大きくすることができる。これにより、感度及び効率を上げることができる。また、何らかの原因によりボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル6が音の放射方向Y1と逆側へ大きく移動した場合に、その方向へのボイスコイル6の移動を一時的且つ瞬間的に止めるストッパーとしての機能を第1実施例よりも高めることができる。その結果、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/プレート3bとが接触又は衝突するのを第1実施例と比べてより一層防止することができる。なお、第3実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0098】
[第4実施例]
次に、図8を参照して、本発明の第4実施例に係るスピーカー装置400の構成について説明する。図8は、第4実施例のスピーカー装置400を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0099】
第4実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第4実施例は、第1実施例と比較して分かるように、次の構成が相違している。
【0100】
即ち、第4実施例に係るスピーカー装置400では、一対のプレート3a及び3bが設けられていない。また、第1実施例では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁(磁化)の状態は振動板5の振動方向に上下逆の位置関係に設定されていたが、第4実施例では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁(磁化)の状態は磁束の延在方向に左右逆の位置関係に設定されている。
【0101】
具体的には、第4実施例では、フレーム4の内壁と対向する、マグネット2aの外壁はS極に着磁されていると共に、フレーム4の内壁と対向する、マグネット2bの外壁はN極に着磁されている。このため、マグネット2bと対向する、マグネット2aの内壁はN極に着磁されていると共に、マグネット2aと対向する、マグネット2bの内壁はS極に着磁されている。なお、本発明では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁状態の位置関係は、かかる構成に限定されるものでない。そして、マグネット2aの内壁の上端部付近と、マグネット2bの内壁の上端部付近との間には磁気ギャップ70が形成されている。これにより、磁気ギャップ70付近では、磁束の方向は矢印Y3方向に生じている。また、ボイスコイル6の第2の平行部6aが配置された振動板5の凹部5aは、マグネット2aとマグネット2bの間に形成された磁気ギャップ70内に配置されている。以上の構成を有する第4実施例では、第1実施例と同様の原理により、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波を放射する。
【0102】
特に、第4実施例に係るスピーカー装置400では、一対のプレート3a及び3bを設けていないので、その分だけ第1実施例と比較して感度及び効率が若干低下するが、その反面、製品コストを下げることができる。よって、携帯電話などに代表される電子機器の感度及び効率や製品コスト等を考慮すると、第4実施例に係るスピーカー装置400は、例えば携帯電話のレシーバー用として好適に用いることができる。また、本発明では、感度及び効率並びに製品コストを考慮して、上記した第4実施例の構成において、一対のマグネット2a及び2bのうち、いずれか一方を鉄などの金属材料よりなる磁性体に代えても構わない。また、第4実施例では、一対のプレート3a及び3bを設けていないので、第1実施例と比較して、振動板5及びボイスコイル6の振動方向に対応する、スピーカー装置400の高さd7をより一層小さくできる。よって、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。なお、第4実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0103】
[第5実施例]
次に、図9を参照して、本発明の第5実施例に係るスピーカー装置500の構成について説明する。図9は、第5実施例のスピーカー装置500を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0104】
第5実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第5実施例は、第1実施例と比較して分かるように、ボイスコイル6の第1の平行部6aのみならず、ボイスコイル6の第2の平行部6bの一部も振動板5の凹部5a内に配置されている。そして、第2の平行部6bの一部は、凹部5aの側面5abに挟持された状態で固定されている。
【0105】
このように、第5実施例では、第1の平行部6aのみならず、第2の平行部6bも振動板5の凹部5aに固定されることになるので、振動系31の振動時の強度向上及び安定化を図ることができる。なお、かかる構成に限定されず、本発明では、上記同様の目的を実現するべく、第1の平行部6aの全部、及び第2の平行部6bの全部をそれぞれ凹部5a内に配置するようにしても構わない。
【0106】
また、かかる構成を採用すれば、第1実施例と比較して、より一層、スピーカー装置500の薄型化を図ることができる。即ち、第1実施例では、スピーカー装置100の高さは、ヨーク1の背面側からボイスコイル6の第2の平行部6bの上面側までの高さd1に設定されているのに対し、第5実施例では、スピーカー装置500の高さは、ヨーク1の背面側から振動板5の放音部5bの放音側の頂部までの高さd8(<d6)に設定されており、第4実施例は、第1実施例と比較して、より一層、スピーカー装置500の薄型化を図ることができる。なお、第5実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0107】
[第6実施例]
次に、図10及び図11を参照して、本発明の第6実施例に係るスピーカー装置600の構成について説明する。図10は、第6実施例のスピーカー装置600を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。図11(a)は、第6実施例に係るボイスコイル7の構成を概略的に示す斜視図を示す。一方、図11(b)は、図11(a)におけるボイスコイル7の切断線A−A´に沿った断面図であり、特にボイスコイル7の短手方向を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0108】
第6実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第6実施例は、ボイスコイル7の構成が第1実施例と異なっている。
【0109】
具体的には、ボイスコイル7は、1つのマイナス/プラスのリード線を有し、Y字の断面形状をなし、一方向に延在する直方体及び角型棒状の形状を有する第1の平行部を有する第1部分7aと、コの字状の形状を有する第2部分7bと、同じくコの字状の形状を有する第3部分7cと、を含んでなる。なお、第6実施例では、第1部分7aと第1の平行部とは同一なので、以下では、第1部分7aを第1の平行部7aとも称する。
【0110】
第1の平行部7aは、振動板5の凹部5aの長手方向の長さと略同一の長さを有する。第2部分7bは、第1の平行部7aと平行な方向に延在する第2の平行部7baを含み、その第1の平行部7aとの間で環状の形状を形成する。第3部分7cは、第1の平行部7aと平行な方向に延在し且つ且つ磁束の延在方向Y2に対応する、第1の平行部7aの幅方向の中心を通る中心線(図10の中心軸L1及び図11の中心線L3)に対して第2の平行部7baと対称的な位置に配置される第3の平行部7caを含み、その第1の平行部7aとの間で環状の形状を形成する。以上の構成により、第1部分7aと、第2部分7b及び第3部分7cとの間には、略矩形状の開口7dが夫々形成されている。好適な例では、ボイスコイル7に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル7が振動板5の音の放射方向Y1と逆方向に大きく移動した場合に、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caが磁気ギャップ70内に位置するように、第1の平行部7aと、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caとの位置関係が規定されているのが好ましい。
【0111】
このボイスコイル7では、図11(a)に示すように、音声電流が第1の平行部7aにおいて矢印Y5方向に流れたと仮定した場合には、その音声電流は、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caではそれぞれ矢印Y5と逆側の矢印Y6方向に流れることになる(図11(b)も参照)。つまり、このボイスコイル7では、第1の平行部7aに流れる音声電流の方向(向き)と、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caに流れる音声電流の方向(向き)とは相対的に逆向きの関係になっている。
【0112】
図10に戻り、ボイスコイル7の第1の平行部7aは、磁気ギャップ70内に配置された振動板5の凹部5a内に配置されていると共に、当該第1の平行部7aは、凹部5aの側面5abに狭持された状態で固定されている。ボイスコイル7の第2部分7b及び第3部分7cは、振動板5の放音部5b上に夫々固定されている。このように、第6実施例では、ボイスコイル7の全体が振動板5に固定されることになる。その結果、音再生時に振動板5を円滑に且つ安定的に移動させることができ、高品位な低音を得ることができる。また、かかる構成により、スピーカー装置600の高さは、ヨーク1の背面側から振動板5の放音部5bの頂部までの高さd8となる。よって、第6実施例は、第1実施例と比較して、より一層、スピーカー装置600の薄型化を図ることができる。
【0113】
また、第6実施例では、何らかの原因によりボイスコイル7へ過大な音声電流が入力されると、上記した第1実施例と同様に、ボイスコイル7はヨーク1側に近づく方向に大きく移動する。そして、このとき、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caと、第1の平行部7aとの間に設けられた開口7dの中心位置がプレート3a及びプレート3bの各厚さ方向の中心軸L2と略一致すると、第1の平行部7aに生じる駆動力と、その駆動力と逆向きの且つ同一の、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caの各々に生じる駆動力とが一時的且つ瞬間的に均衡し、ボイスコイル7は、かかる位置からそれ以上ヨーク1側へは移動しなくなる。つまり、かかる位置から、ボイスコイル7のヨーク1側への移動が規制される。なお、振動板5は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル7等はそのような位置に止まることはなく、ボイスコイル7へ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル7等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。このような作用により、第1実施例と同様に、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/又はプレート3bとが接触又は衝突するのを防止できる。このため、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caは、ボイスコイル7の音の放射方向Y1と逆側への大振幅時に、当該方向へのボイスコイル7の移動を一時的且つ瞬間的に止める役割、即ちストッパーとしての役割を果たす。この点からも、スピーカー装置600の薄型化に寄与し得る。なお、第6実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0114】
[変形例]
上記の第1実施例〜第6実施例では、ボイスコイル6の第1の平行部6aの全部(全体)を振動板5の凹部5aに配置するようにしたが、これに限らず、本発明では、ボイスコイル6の第1の平行部6aの一部を振動板5の凹部5aに配置するようにしても構わない。
【0115】
また、上記の第1実施例〜第5実施例では、スピーカー装置の形状に合わせるように、ボイスコイル6を長円状に且つリング状の平面形状に形成したが、これに限らず、本発明では、その趣旨を逸脱しない範囲において、スピーカー装置の形状に応じて、ボイスコイル6の形状を種々変形することが可能である。例えば、スピーカー装置の形状に応じて、図12に示すように、ボイスコイル6を角型に且つ長方形状に且つリング状の平面形状を有するように形成してもよい。
[携帯電話機への適用例]
次に、本発明の第1実施例に係るスピーカー装置100を、携帯電話機内の受信部及着信部に適用した例について説明する。なお、本発明では、上記した第2実施例〜第6実施例に係るスピーカー装置200〜600についても、かかる携帯電話機の受信部及び着信部に適用することは勿論可能である。
図13は、この携帯電話機の構成を示す概略平面図である。同図に例示の携帯電話機800は、ケース800gの表側に設けられた、複数の操作ボタン800a、表示部800b、受話口800c及び送話口800dと、ケース800gの裏側に設けられ、着信アラーム音を鳴らす機能を有する着信部800eと、ケース800gの一側面に設けられた送受信アンテナ800fと、を備えて構成される。ここで、受信部800caは、受話口800cの位置に対応するケース800g内に設けられている。以上の構成を有する携帯電話機800では、高感度及び低音が得られ且つ薄型化及びスリム化が可能なスピーカー装置100は、ケース800g内に搭載され、例えば受信部800ca及び着信部800eに対応する位置に各々設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の第1実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図2】第1実施例に係るスピーカー装置の構成を示す片側分解斜視図。
【図3】第1実施例に係るスピーカー装置の駆動原理を説明する断面図。
【図4】比較例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図5】比較例と対比した第1実施例に係る作用効果を説明する振動板の断面図。
【図6】本発明の第2実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第3実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図8】本発明の第4実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図9】本発明の第5実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図10】本発明の第6実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図11】本発明の第6実施例に係るボイスコイルの部分断面図及び斜視図。
【図12】変形例に係るボイスコイルの構成を示す平面図。
【図13】本発明のスピーカー装置を用いた携帯電話機の平面図。
【符号の説明】
【0117】
1 ヨーク
2a、2b、2c、2d マグネット
3a、3b プレート
4 フレーム
4a 段部
5 振動板
5a 凹部
5b 放音部
5c 段部
6、7 ボイスコイル
6a 第1の平行部
6b 第2の平行部
7a 第1の平行部
7b 第2部分
7ba 第2の平行部
7c 第3部分
7ca 第3の平行部
8 磁性体
30 磁気回路
31 振動系
70 磁気ギャップ
100、200、300、400、500、600 スピーカー装置
800 携帯電話機
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に好適に用いることが可能なスピーカー装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長方形の振動板を有し、かかる振動板の中央に直線状のボイスコイルを配置して構成されるリッフェル型スピーカーが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この種の構成を有するスピーカーが、例えば特許文献1乃至4に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のスピーカーは、主として、上下2つの平行した且つ磁束方向が逆となる磁気ギャップを設けた磁気回路及び2つの振動板を有し、各振動板の背面側の略中央に上下の2つのボイスコイルが夫々配置されてなる。かかる構成により、口径及び横幅を狭くした細長構造をとっても、最低共振周波数f0を低くすることができ、耐入力及び低音再生と音圧周波数特性の向上を図ることができるとされている。
【0004】
また、特許文献2に記載のスピーカーも上記した特許文献1と略同様の構成を有し、さらに同位相の音波が2つの振動板から放射されるように構成され、これにより背面からの音の干渉を防止することができるとされている。
【0005】
また、特許文献3に記載のスピーカーは、主として、長方形の2つの振動板をドーム状に貼り合わせてなり、各振動板の他辺側に2つの平面状ボイスコイルを設け、その平面状ボイスコイルが磁気空隙内に配置されて構成される。これにより、磁気空隙の空隙幅を非常に小さくでき、安価な比較的磁気の力が小さいマグネットを使用しても、磁気空隙の磁気の力を非常に大きくでき、安価で且つ高音質の高音用のスピーカーが得られるとしている。
【0006】
また、特許文献4に記載のスピーカーは、主として、細長形状の振動板と、振動板に結合されると共に磁気回路の磁気空隙に挿入される板状の駆動力伝達部材と、略S字状のダンパーと、駆動力伝達部材に結合されるボイスコイルとを含んで構成されている。これにより、上下方向の変位差を抑制し、大振幅時の非線形歪みを低減し、低音域再生を可能としている。かかるスピーカーでは、1つ又は2つの磁気空隙が設けられ、かかる磁気空隙内にボイスコイルが配置されている。
【0007】
なお、スピーカーにおける、振動板の所定位置へのボイスコイルの支持方法が、例えば特許文献5及び6に記載されている。
【0008】
特許文献5に記載のスピーカーでは、振動板の外周縁部に断面U字状の凹部がリング状に設けられ、さらに、その凹部の外周縁部にはエッジダンパーが設けられ、その凹部内に円筒状のボイスコイルが接着剤によって接着されている。そして、かかるボイスコイルは、エッジダンパーによって凹部と共に磁気回路の磁気ギャップ内に配され浮遊支持されている。また、特許文献6に記載のスピーカーでは、振動板は、その半球状の主部の端縁部に設けられた短筒部の外周面にボイスコイルを配設している。
【0009】
【非特許文献1】佐伯多門著、「新版スピーカー&エンクロージャー百科」、株式会社 誠文堂新光社、2002年8月1日 第3刷、P40
【特許文献1】特開平11−187484号公報
【特許文献2】特開平11−187485号公報
【特許文献3】特開2000−350284号公報
【特許文献4】特開平10−191494号公報
【特許文献5】特許第3337631号公報
【特許文献6】特許第3334842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に係るスピーカー装置では、それらの構成上、振動板の振動方向に対応するスピーカー装置の厚さが厚くなり、近年、薄型化しつつある携帯電話などに適用し難いという問題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、低音が得られ、薄型化及びスリム化が可能なスピーカー装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、スピーカー装置であって、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、一方向に延在する1つの平行部と、前記1つの平行部と平行な方向に延在し、前記1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記1つの平行部及び前記少なくとも1つの他の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記1つの平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記少なくとも1つの他の平行部は前記振動板の上側に且つ放音側に位置していることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、スピーカー装置であって、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部及び前記第2の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部は前記凹部の上方に且つ前記振動板の放音側に位置していることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、スピーカー装置であって、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し且つ前記磁束の延在方向に対応する前記第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して前記第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は前記振動板の放音側の上面に各々固定されていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の1つの実施形態では、スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、一方向に延在する1つの平行部と、前記1つの平行部と平行な方向に延在し、前記1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記1つの平行部及び前記少なくとも1つの他の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記1つの平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記少なくとも1つの他の平行部は前記振動板の上側に且つ放音側に位置している。
【0016】
上記のスピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、その磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束(磁力)の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、一方向に延在する1つの平行部と、その1つの平行部と平行な方向に延在し、その1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備えて構成される。好適な例では、1つの平行部に流れる音声電流の向きと、少なくとも1つの他の平行部に流れる音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定することができる。また、好適な例では、ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルが振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、少なくとも1つの他の平行部が磁気ギャップ内に位置するように、1つの平行部と少なくとも1つの他の平行部との位置関係が規定されているのが好ましい。
【0017】
特に、このスピーカー装置では、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、1つの平行部の全部又は一部は、凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、少なくとも1つの他の平行部は振動板の上側に且つ放音側に位置している。これにより、ボイスコイルの1つの平行部は、音の放射方向と逆側に位置する磁気回路の近傍位置に配置されることになり、当該スピーカー装置の薄型化を図ることができる。また、振動板の凹部は、磁束の延在方向と略直交する方向に延在するように形成され、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、その凹部内には1つの平行部の全部又は一部が配置されているので、当該スピーカー装置のスリム化を図ることができる。よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現するスピーカー装置は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0018】
また、このスピーカー装置では、ボイスコイルの1つの平行部において一定の方向へ音声電流が流れると、当該1つの平行部は、フレミングの左手の法則によって、かかるスピーカー装置の中心軸方向に振動する。これにより、振動板を通じて所定の方向に音波が放射される。しかしながら、このスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルがスピーカー装置の音の放射方向と逆側の磁気回路側に大きく移動して、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部が磁気ギャップ内に位置すると、1つの平行部と少なくとも1つの他の平行部とには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。
【0019】
特に、このスピーカー装置では、少なくとも1つの他の平行部は振動板の上側に且つ放音側に位置しているので、上記のような場合でも、1つの平行部及び少なくとも1つの他の平行部と磁気ギャップ内に発生する磁束との相互作用により、即ち、磁気ギャップ内において1つの平行部に働く駆動力と、少なくとも1つの他の平行部に働く、1つの平行部と逆向きの且つ同一の駆動力とが均衡し、少なくとも1つの他の平行部が、その位置からそれ以上ボイスコイルを磁気回路側へ移動させるのを止める役割、即ち、ストッパーとしての役割を果たす。つまり、かかる位置から、ボイスコイルの磁気回路側への移動が規制される。これにより、振動板の凹部付近の部分と、磁気回路とが接触又は衝突するのを回避することができる。この点からもスピーカー装置の薄型化に寄与し得る。なお、振動板は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル等はそのような均衡した位置に止まることはなく、ボイスコイルへ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。
【0020】
本発明の他の実施形態では、スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部及び前記第2の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部は前記凹部の上方に且つ前記振動板の放音側に位置している。
【0021】
上記のスピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、その磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束(磁力)の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備えて構成される。好適な例では、前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定することができる。また、好適な例では、前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と前記第2の平行部との位置関係が規定されているのが好ましい。
【0022】
特に、このスピーカー装置では、第1の平行部及び第2の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、第1の平行部の全部又は一部は、振動板の凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、第2の平行部は、その凹部の上方に且つ振動板の放音側に位置している。これにより、ボイスコイルの第1の平行部は、音の放射方向と逆側に位置する磁気回路側の近傍位置に配置されることになり、当該スピーカー装置の薄型化を図ることができる。また、振動板の凹部は、磁束の延在方向と略直交する方向に延在するように形成され、第1の平行部及び第2の平行部は、各々凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、その凹部内には第1の平行部の全部又は一部が配置されているので、当該スピーカー装置のスリム化を図ることができる。よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現するスピーカー装置は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0023】
また、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第1の平行部において一定の方向へ音声電流が流れると、当該第1の平行部は、フレミングの左手の法則によって、かかるスピーカー装置の中心軸方向に振動する。これにより、振動板を通じて所定の方向に音波が放射される。しかしながら、このスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルがスピーカー装置の音の放射方向と逆側の磁気回路側に大きく移動して、第1の平行部及び第2の平行部が磁気ギャップ内に位置すると、第1の平行部と第2の平行部とには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。
【0024】
特に、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第2の平行部は凹部の上方に且つ振動板の放音側に配置されているので、上記のような場合でも、第1の平行部及び第2の平行部と磁気ギャップ内に発生する磁束との相互作用により、即ち、磁気ギャップ内において第1の平行部に働く駆動力と、第2の平行部に働く、第1の平行部と逆向きの且つ同一の駆動力とが均衡し、第2の平行部が、その位置からそれ以上ボイスコイルを磁気回路側へ移動させるのを止める役割、即ち、ストッパーとしての役割を果たす。つまり、かかる位置から、ボイスコイルの磁気回路側への移動が規制される。これにより、振動板の凹部付近の部分と、磁気回路とが接触又は衝突するのを回避することができる。この点からもスピーカー装置の薄型化に寄与し得る。なお、振動板は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル等はそのような均衡した位置に止まることはなく、ボイスコイルへ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。
【0025】
本発明の他の実施形態では、スピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し且つ前記磁束の延在方向に対応する前記第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して前記第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備え、前記第1の平行部、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は前記振動板の放音側の上面に各々固定されている。
【0026】
上記のスピーカー装置は、磁気ギャップを有する磁気回路と、その磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、その第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、その第1の平行部と平行な方向に延在し且つその磁束の延在方向に対応する当該第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備えて構成される。好適な例では、前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部及び前記第3の平行部の各々に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定することができる。また、好適な例では、前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と、前記第2の平行部及び前記第3の平行部との位置関係が規定されているのが好ましい。
【0027】
特に、このスピーカー装置では、第1の平行部、第2の平行部及び第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、第1の平行部の全部又は一部は、凹部内に配置され、磁気ギャップ内に位置していると共に、第2の平行部及び第3の平行部は振動板の放音側の上面に各々固定されている。これにより、ボイスコイルの第1の平行部は、音の放射方向と逆側に位置する磁気回路の背面側の近傍位置に配置されることになり、当該スピーカー装置の薄型化を図ることができる。また、振動板の凹部は、磁束の延在方向と略直交する方向に延在するように形成され、その凹部内には第1の平行部の全部又は一部が配置されているので、当該スピーカー装置のスリム化を図ることができる。よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現するスピーカー装置は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0028】
また、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第1の平行部において一定の方向へ音声電流が流れると、当該第1の平行部は、フレミングの左手の法則によって、かかるスピーカー装置の中心軸方向に振動する。これにより、振動板を通じて所定の方向に音波が放射される。しかしながら、このスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルがスピーカー装置の音の放射方向と逆側の磁気回路側に大きく移動して、第1の平行部、第2の平行部及び第3の平行部が磁気ギャップ内に位置すると、第1の平行部と第2の平行部及び第3の平行部とには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。
【0029】
特に、このスピーカー装置では、ボイスコイルの第2の平行部及び第3の平行部は振動板の放音側の上面に各々固定されているので、上記のような場合でも、第1の平行部、第2の平行部及び第3の平行部と磁気ギャップ内に発生する磁束との相互作用により、即ち、磁気ギャップ内において第1の平行部に働く駆動力と、第2及び第3の平行部に働く、第1の平行部と逆向きの且つ同一の駆動力とが均衡し、第2及び第3の平行部が、その位置からそれ以上ボイスコイルを磁気回路側へ移動させるのを止める役割、即ちストッパーとしての役割を果たす。つまり、かかる位置から、ボイスコイルの磁気回路側への移動が規制される。これにより、振動板の凹部付近の部分と、磁気回路とが接触又は衝突するのを回避することができる。この点からもスピーカー装置の薄型化に寄与し得る。なお、振動板は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル等はそのような均衡した位置に止まることはなく、ボイスコイルへ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。また、ボイスコイルの第2の平行部及び第3の平行部は振動板の放音側の上面に各々固定されている。そのため、音再生時にボイスコイル及び振動板を含む振動系を円滑に且つ安定的に移動させることができる。
【0030】
上記のスピーカー装置の一つの態様では、前記磁気ギャップは前記磁気回路の略中央位置に形成され、前記振動板は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、当該振動板の前記凹部は、細長い形状に且つU字状の断面形状に形成され、当該振動板の略中央位置及び前記磁気ギャップ内に配置されている。
【0031】
この態様では、磁気ギャップは、磁気回路の略中央位置に形成されている。そして、振動板は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、当該振動板の凹部は、細長い形状に且つU字状の断面形状に形成され、当該振動板の略中央位置及び磁気ギャップ内に配置されている。これにより、スピーカー装置のスリム化を図ることができる。また、ボイスコイルを振動板の略中央位置及び磁気ギャップ内に配置することができる。その結果、音再生時に振動板等を円滑且つ安定的に移動させることができ、振動板及びボイスコイルを含む振動系全体としての強度が十分に確保される。
【0032】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記第1の平行部の全部又は一部は前記凹部内の側面に狭持された状態で固定されている。これにより、ボイスコイルは凹部に安定的に保持され、ボイスコイルの振動方向への撓み易い欠点を補うことができる。即ち、これにより、ボイスコイルがその振動方向に撓み難くなる。よって、第1の平行部を磁気ギャップ内に的確に位置させることができる。
【0033】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が振動板の振動方向に上下逆の位置関係にある一対のマグネットと、直方体状又は平板状の形状を有し、前記一対のマグネットの各々の上面に配置された一対のプレートと、を備え、前記一対のプレートの間には1つの前記磁気ギャップが形成されている。
【0034】
この態様では、磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が振動板の振動方向に上下逆の位置関係にある一対のマグネットと、直方体状又は平板状の形状を有し、一対のマグネットの各々の上面に配置された一対のプレートと、を備えて構成される。そして、一対のプレートの間には1つの磁気ギャップが形成されている。これにより、振動板の凹部内に配置された第1の平行部はヨークの近傍位置に且つ磁気回路の略中央位置に配置されることになり、スピーカー装置の薄型化及びスリム化を図ることができる。また、この態様のスピーカー装置の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイル及び振動板がスピーカー装置の音の放射方向と逆方向に大きく振動したような場合でも、第2の平行部が上述したストッパーとしての役割を果たすため、振動板の凹部付近の部分と、プレートとが接触又は衝突するのを回避することができる。
【0035】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記一対の前記プレートのうち少なくとも一方の前記プレートの上面には他のマグネットが配置され、前記他の前記マグネットと、前記プレートを挟んで対向する前記マグネットとのS極及びN極の相対的な着磁状態は振動板の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。
【0036】
この態様では、一対のプレートのうち、少なくとも一方のプレートの上面には他のマグネットが配置されている。そして、他のマグネットと、プレートを挟んで対向するマグネットとのS極及びN極の相対的な着磁状態は振動板の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。なお、他のマグネットは、マグネットと反発し合う位置に配置されるので、一般的に「反発マグネット」と称される。
【0037】
このように、この態様では、一対のマグネットに加え、さらに反発マグネットとしての他のマグネットを設けているので、その分だけ、磁気ギャップ内における磁界中の磁力の大きさを大きくすることができる。これにより、感度(効率)を上げることができる。また、何らかの原因によりボイスコイルに過大な音声電流が入力され、ボイスコイルが音の放射方向と逆側へ大きく移動した場合に、その方向へのボイスコイルの移動を一時的且つ瞬間的に止めるストッパーとしての機能をより一層高めることができる。
【0038】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、直方体状又は平板状の形状を有し、前記1つの前記マグネットの上面に配置された1つのプレートと、を備え、前記1つの前記マグネットと前記前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されている。
【0039】
この態様では、磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、その1つのマグネットと一定の間隔をおいてヨークの上面に対向配置された、例えば鉄などの金属材料よりなる磁性体と、直方体状又は平板状の形状を有し、その1つのマグネットの上面に配置された1つのプレートと、を備えて構成される。そして、1つのマグネットと磁性体との間には1つの磁気ギャップが形成されている。
【0040】
よって、次のような作用効果を奏する。すなわち、一般的に、マグネット及びプレートの設定数が少なくなると、その分だけ感度が低下することになる。しかし、スピーカー装置を適用する携帯電話などの電子機器などの仕様によっては、必ずしも、高い感度及び効率が必要とされない場合がある。例えば、携帯電話に用いられるスピーカー装置としては、受信用(レシーバー用)と着信用の2種類が存在するが、そのうち、レシーバー用のスピーカー装置の場合には、スペックとして小型化及び最低共振周波数f0の低周波数化(低f0化)の優先順位が高いが、高い感度及び効率はそれほど必要とされない。よって、このようなケースでは、製品コストの観点も考慮すると、例えば携帯電話のレシーバー用として、この態様のスピーカー装置を適用するのが望ましいといえる。つまり、感度及び効率をそれほど必要としない携帯電話用に好適なスピーカー装置としては、上記したスピーカー装置よりもマグネットの設定数が少ない分だけ感度及び効率は若干劣るが、その分だけ製品コストの安い、この態様のスピーカー装置を適用した方が望ましいといえる。
【0041】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が磁束の延在方向に左右逆の位置関係にある一対のマグネットと、を備え、前記一対のマグネットの間には1つの前記磁気ギャップが形成されている。
【0042】
この態様では、磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が磁束の延在方向に左右逆の位置関係にある一対のマグネットと、を備えて構成される。そして、一対のマグネットの間には1つの磁気ギャップが形成されている。
【0043】
つまり、この態様では、磁気回路は一対のプレートを設けていないので、その分だけ上記のスピーカー装置と比較して感度及び効率が若干低下するが、その反面、製品コストを下げることができる。よって、携帯電話などに代表される電子機器の感度及び効率や製品コスト等を考慮すると、この態様に係るスピーカー装置を、例えば携帯電話のレシーバー用として好適に用いることができる。また、一対のプレートを設けていない分だけ、振動板及びボイスコイルの振動方向に対応する、スピーカー装置の高さを小さくすることができ、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。
【0044】
上記のスピーカー装置の他の態様では、感度及び効率並びに製品コストを考慮して、前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、を備え、さらに、前記1つのマグネットと前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されるように構成しても構わない。また、これにより、一対のプレートを設けていない分だけ、振動板及びボイスコイルの振動方向に対応する、スピーカー装置の高さを小さくすることができ、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。
【0045】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記第2の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、当該凹部の側面に狭持された状態で固定されている。
【0046】
このように、この態様では、第1の平行部のみならず、第2の平行部の全部又は一部も振動板の凹部に固定されることになるので、ボイスコイル及び振動板を含む振動系の振動時の強度向上及び安定化を図ることができる。また、この態様を採用すれば、振動板及びボイスコイルの振動方向に対応する、スピーカー装置の高さを小さくすることができ、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。
【0047】
上記のスピーカー装置の他の態様では、筒状の形状並びに環状及び長円状又は楕円状の平面形状を有し、前記磁気回路を収容するフレームを備え、前記フレームの上面側の外周部には階段状の形状を有する段部が形成され、前記振動板は、前記凹部の周囲に設けられ、半球状の断面形状を有し、音波を放射する機能を有する放音部と、前記放音部の外周部に設けられ、前記フレームの前記段部と嵌合する階段状の形状を有する段部と、を含み、前記振動板の前記段部は、前記フレームの前記段部に嵌合していると共に、前記凹部は前記フレームの略中央位置に配置されている。
【0048】
この態様では、筒状の形状並びに環状及び長円状又は楕円状の平面形状を有し、磁気回路を収容するフレームを備える。そして、フレームの上面側の外周部には階段状の形状を有する段部が形成されている。また、振動板は、その凹部の周囲に設けられ、半球状の断面形状を有し、音波を放射する機能を有する放音部と、その放音部の外周部に設けられ、フレームの段部と嵌合する階段状の形状を有する段部と、を含んでいる。また、振動板の段部は、フレームの段部に嵌合していると共に、振動板の凹部はフレームの略中央位置に配置されている。これにより、ボイスコイルを、スピーカー装置の略中央位置、即ちフレームの略中央位置に配置することができ、ボイスコイルと振動板との相対的な位置関係を適切な状態に設定することができる。また、音再生時に振動板等を円滑且つ安定的に移動させることができ、ボイスコイル及び振動板を含む振動系全体としての強度が十分に確保される。
【0049】
上記のスピーカー装置の他の態様では、前記放音部は、エッジの機能を有し、前記放音部の短手方向の長さは、前記振動板の短手方向の長さの大半を占めている。
【0050】
一般的に、エッジの幅が大きくなると、それに従いエッジの軟らかさが増すため、スピーカー装置の共振周波数を下げることができると共に、ボイスコイルをスピーカー装置の中心位置に近づけることができる。これにより、最低共振周波数f0を下げることできるので、低音が得られ易くなる。この点、この態様では、放音部は、音再生時に不要な振動を吸収するなどの働きを有するエッジの機能を有し、放音部の短手方向の長さは、振動板の短手方向の長さの大半を占めているので、必然的にエッジの幅が大きくなる。よって、最低共振周波数f0を下げることができ、低音が得られ易くなる。その結果、かかる振動板を有するスピーカー装置は、高い感度が得られ、携帯電話用のスピーカーとして好適に用いることができる。
【0051】
本発明の他の実施形態では、上記のスピーカー装置を備える携帯電話機を構成することができる。これにより、薄型及びスリム型のスピーカー装置が得られる。
【実施例】
【0052】
以下、図面を参照して本発明の好適な各種の実施例について説明する。各実施例に係るスピーカー装置は、携帯電話の着信用(レシーバー用)又は受信用に、或いは、モバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることが可能な薄型及びスリム型(幅狭型)のスピーカー装置である。
【0053】
[第1実施例]
(スピーカー装置の構成)
図1は、本発明の第1実施例に係るスピーカー装置100の断面構成を概略的に示す。また、図1は、スピーカー装置100をその中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。図2は、図1におけるスピーカー装置100をその中心軸L1で切断したときの、その片側の分解斜視図を示す。以下、本発明の第1実施例に係るスピーカー装置100の構成等について説明する。
【0054】
スピーカー装置100は、主として、ヨーク1と、一対のマグネット2a及び2bと、一対のプレート3a及び3bと、を有する内磁型の磁気回路30と、フレーム4と、振動板5と、ボイスコイル6と、を有する振動系31と、を備えて構成される。なお、以下の説明では、便宜上、各マグネット又は各プレートを区別する場合にはそれぞれマグネット2a又はプレート3aなどと表記すると共に、それらを特に区別しない場合には、マグネット2又はプレート3と表記する。
【0055】
まず、磁気回路30の構成について説明する。
【0056】
ヨーク1は、複数の開口1aを有し、平板状の形状に且つ略長方形状の平面形状に形成されている。各開口1aは、振動板5のヨーク1側への移動時にスピーカー装置100内部の不要な空気を外部へ逃す働きを有する。これにより、スピーカー装置100の内部の圧力(いわゆる、背圧)が高くなるのを防止することができる。
【0057】
一対のマグネット2a及び2bの各々は、直方体状及び角型棒状の形状に形成されている。マグネット2aとマグネット2bとの相対的な大きさ(サイズ)及び磁力の大きさは同一となっている。また、マグネット2aとマグネット2bとは、ヨーク1上において互いに対向する位置に且つ一定の間隔をおいて設けられている。マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁(磁化)の状態は後述する振動板5の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。具体的には、ヨーク1と接する、マグネット2aの下面側はS極に着磁されていると共に、後述するプレート3aと接する、マグネット2aの上面側はN極に着磁されている。これに対応して、ヨーク1と接する、マグネット2bの下面側はN極に着磁されていると共に、後述するプレート3bと接する、マグネット2bの上面側はS極に着磁されている。なお、本発明では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁状態の位置関係は、かかる構成に限定されるものでない。
【0058】
一対のプレート3a及び3bの各々は、平板状の形状に形成されている。プレート3a及び3bの各長手方向の長さは、マグネット2の長手方向の長さと略同一の長さに設定されている。プレート3aはマグネット2a上に取り付けられていると共に、プレート3bはマグネット2b上に取り付けられている。そして、プレート3aとプレート3bとは、一定の間隔をおいて対向しており、その両者の間には一定の間隙が形成されている。
【0059】
以上の構成を有する磁気回路30では、かかる間隙にマグネット2a及び2bの磁束を集中させている。つまり、プレート3aとプレート3bとの間の間隙には1つの磁気ギャップ70が形成されている。また、磁気ギャップ70は、磁気回路30の略中央位置に形成されている。そして、磁気ギャップ70内に生じる磁束(磁力)の方向は矢印Y2方向に設定されている。
【0060】
次に、振動系31の構成について説明する。
【0061】
フレーム4は筒状の形状に形成されている。また、フレーム4を平面的に見ると、当該フレーム4は長円状又は楕円状に且つ環状(リング状)の形状に形成されている。フレーム4の上端面側には、後述する振動板5の外周部を支持する、階段状の形状を有する段部4aが設けられている。フレーム4の下端部側にはヨーク1が取り付けられており、フレーム4は磁気回路30を収容している。
【0062】
振動板5は、長円状又は楕円状の平面形状に形成されている。また、振動板5は、その中央位置に配置され且つその長手方向に延在するように設けられた凹部5aと、その凹部5aの周囲に配置され、半円状の断面形状を有する放音部5bと、その放音部5bの外周部に設けられ、階段状の断面形状を有する段部5cと、を有する。
【0063】
放音部5bは、振動板5の全面積の過半数を占め、音を放射する部分であり、音再生時に不要な振動を吸収するなどのエッジの機能も有する。また、放音部5bの短手方向の長さは、振動板5の短手方向の長さの大半を占めている。凹部5aは、細長い形状に且つ袋状又はU字状の断面形状に形成され、磁束の方向となる矢印Y2方向と、略直交する方向と平行な方向に延在してなる。凹部5aは、スピーカー装置100の中心軸L1付近、即ち磁気回路30内の略中央位置に配置される。凹部5aには、後述するボイスコイル6の第1の平行部6aが配置され、当該凹部5aは、ボイスコイル6を支持する役割を果たす。振動板5の段部5cはフレーム4の段部4aに嵌合する。これにより、振動板5はフレーム4に支持されると共に、振動板5の凹部5a内に配置されたボイスコイル6の第1の平行部6aは、一対のプレート3a及び3bの間に設けられた磁気ギャップ70内に配置される。
【0064】
ボイスコイル6は、1つのプラス/マイナスのリード線(図示略)を有し、長円状に且つリング状の平面形状を形成するように巻回されてなる。プラス側のリード線はL(又はR)チャンネル信号の入力配線であり、マイナス側のリード線はグランド(GND:接地)信号の入力配線である。各リード線は、図示しないアンプ側の各出力配線に電気的に接続されている。このため、ボイスコイル6には、その各リード線を通じてアンプ側から信号及び電力(以下、単に「音声電流」とも称する)が夫々入力される。
【0065】
また、ボイスコイル6は、一方向に延在する第1の平行部6aと、その第1の平行部6aと一定の間隙6dを置いて対向配置され、第1の平行部6aと平行な方向に延在する第2の平行部6bと、第1の平行部6aの各端部と、対応する第2の平行部6bの各端部とを繋ぐ複数の連結部6cと、を有し、振動板5の凹部5a内に配置される。
【0066】
第1の平行部6aの長手方向の長さは、振動板5の凹部5aの長手方向の長さと略同一の長さに設定されている。第1の平行部6aは、振動板5の凹部5a内に配置されており、その凹部5aの側面5abに挟持された状態で固定されている。第2の平行部6bの長手方向の長さは、第1の平行部6aの長手方向の長さと略同一の長さに設定されている。また、第1の平行部6aと第2の平行部6bとの間には一定の間隙6dが形成されており、第2の平行部6bは、当該凹部5aの上方に且つ振動板5の放音側に位置している。好適な例では、ボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル6が振動板5の音の放射方向Y1と逆方向に大きく移動した場合に、第2の平行部6bが磁気ギャップ70内に位置するように、第1の平行部6aと第2の平行部6bとの位置関係が規定されているのが好ましい。
【0067】
かかる構成を有するボイスコイル6では音声電流が周回するように流れるため、図2に示すように、第1の平行部6aに流れる音声電流の方向(向き)と、第2の平行部6bに流れる音声電流の方向(向き)とは相対的に逆向きの関係になる。即ち、図2おいて、第1の平行部6aに音声電流が矢印Y4方向に流れたと仮定した場合には、第2の平行部6bでは音声電流は矢印Y4方向と逆の矢印Y3方向に流れることなる。
【0068】
以上に述べたスピーカー装置100において、アンプ側から出力された音声電流は、ボイスコイル6の各リード線を通じて、当該ボイスコイル6へ入力される。これにより、磁気ギャップ70内でボイスコイル6の第1の平行部6aに駆動力が発生し、第2の平行部6bが磁気ギャップ70内に位置しない範囲内で、第1の平行部6aがプレート3a及び3bの厚さ方向の中心軸L2を基準としてスピーカー装置100の中心軸L1方向に振動する。こうして、スピーカー装置100は、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波を放射する。
【0069】
以上の構成を有する第1実施例では、次のような特有の作用効果を奏する。
【0070】
まず、第1実施例に係るスピーカー装置100では、振動板5の短手方向の中央位置に、袋状又はU字状の断面形状を有し、且つ当該振動板5の長手方向に延在する細長い形状の凹部5aを設け、その凹部5a内にボイスコイル6の第1の平行部6aを配置している。これにより、図1において、ボイスコイル6の幅d3方向の中心と、振動板5の短手方向の中心とを一致させることができ、ボイスコイル6と振動板5との相対的な位置関係を適切な状態に設定することができる。
【0071】
また、かかる構成に加え、第1の平行部6aが配置された凹部5aを、磁気回路30内の略中央位置に収容するように配置し、且つその磁気回路30内に設けられた1つの磁気ギャップ70内に位置させることとしている。これにより、ボイスコイル6の第1の平行部6aは、ヨーク1の近傍位置に配置される。その結果、振動板5及びボイスコイル6の振動方向に対応する、スピーカー装置100の高さd1を小さくすることが可能となり、薄型のスピーカー装置を構成することができる。
【0072】
また、振動板5の凹部5aは、磁束の延在方向Y2と略直交する方向に延在するように形成され、第1の平行部6a及び第2の平行部6bは、各々凹部5aの延在方向と平行な方向に配置されており、その凹部5a内には第1の平行部6aが配置されているので、スピーカー装置100の短手方向の幅d2を小さくすることができ、当該スピーカー装置100のスリム化を図ることができる。また、振動板5は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、振動板5の凹部5aは、細長い形状に且つ袋状又はU字状の断面形状に形成され、振動板5及び磁気回路30の略中央位置に配置されているので、この点からもスピーカー装置100のスリム化を図ることができる。
【0073】
よって、近年、益々薄型化及びスリム化されつつある携帯電話において、その受信用及び/又は着信用のスピーカー装置として好適に用いることが可能となる。また、このような薄型化及びスリム化を実現する第1実施例に係るスピーカー装置100は、携帯電話用のスピーカー装置以外にも、上記したモバイル用又は近接音場用の各種電子機器に好適に用いることができる。
【0074】
また、ボイスコイル6の第1の平行部6aは、振動板5の凹部5aの側面5abに狭持された状態で固定されている。これにより、ボイスコイル6は凹部5aに安定的に保持され、ボイスコイル6の振動方向、即ちスピーカー装置100の中心軸L1方向への撓み易い欠点を補うことができる。即ち、これにより、ボイスコイル6がその振動方向となる中心軸L1方向に撓み難くなる。よって、第1の平行部6aを1つの磁気ギャップ70内に的確に位置させることができる。加えて、振動板5の外周部に設けられた段部5cをフレーム4の段部4aに嵌合させるようにしているので、振動板5の短手方向の中心、言い換えれば凹部5aの幅方向の中心を、スピーカー装置100の中心軸L1に略一致させることができる。これにより、ボイスコイル6の幅d3方向の中心を、フレーム4、振動板5及び磁気回路30の中心軸、即ちスピーカー装置100の中心軸L1に略一致させることができる。その結果、音再生時に振動板5等を円滑且つ安定的に移動させることができ、振動系31全体としての強度が十分に確保される。
【0075】
また、ボイスコイル6の第2の平行部6bを、一定の間隙6dを保持しつつ第1の平行部6aの上方に且つ凹部5aの上方に且つ振動板5の放音側に配置しているので、スピーカー装置100の駆動時に、何らかの原因によりボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル6及び振動板5がスピーカー装置100の音の放射方向Y1と逆方向に大きく移動したような場合でも、第1の平行部6a及び第2の平行部6bと磁気ギャップ70に形成される磁束との相互作用により、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/又はプレート3bとが接触又は衝突するのを回避することができる。この点について、図1及び図3を参照して詳述する。
【0076】
図3は、図1に対応するスピーカー装置100の断面図であり、当該スピーカー装置100の駆動方法を説明する断面図である。
【0077】
まず、図1のボイスコイル6の第1の平行部6aにおいて紙面奥側又は紙面手前側へ音声電流が流れると、当該第1の平行部6aは、フレミングの左手の法則によって、第2の平行部6bが磁気ギャップ70内に位置しない範囲内で、プレート3a及び3bの厚さ方向の中心軸L2を基準として、スピーカー装置100の中心軸L1方向に振動する。これにより、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波が放射される。
【0078】
しかし、何らかの原因により、ボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、当該ボイスコイル6が音の放射方向と逆側のヨーク1側に大きく移動して、第1の平行部6aと第2の平行部6bの間に設けられた間隙6dの厚さ方向の中心が、プレート3の厚さ方向の中心軸L2に略一致すると、磁気ギャップ70内において、第1の平行部6aと第2の平行部6bとには相対的に逆向きの且つ同一の駆動力が作用する。即ち、このとき、第1の平行部6aには紙面奥側に音声電流が流れることになるので、第1の平行部6aには音の放射方向Y1と逆側に駆動力が作用する。一方、第2の平行部6bには紙面手前側に音声電流が流れることになるので、第2の平行部6bには、第1の平行部6aと同一の大きさの駆動力が音の放射方向Y1に作用する。また、かかる状態において、次の瞬間には、第1の平行部6aには紙面手前側に音声電流が流れることになるので、第1の平行部6aには音の放射方向Y1に駆動力が作用する。一方、第2の平行部6bには紙面奥側に音声電流が流れることになるので、第2の平行部6bには、第1の平行部6aと同一の大きさの駆動力が音の放射方向Y1と逆側に作用する。このため、第1の平行部6aに生じる駆動力と、その駆動力と逆向きの且つ同一の、第2の平行部6bに生じる駆動力とが一時的且つ瞬間的に均衡し、ボイスコイル6は、かかる位置からそれ以上ヨーク1側へは移動しなくなる。つまり、かかる位置から、ボイスコイル6のヨーク1側への移動が規制される。なお、振動板5は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル6等はそのような位置に止まることはなく、ボイスコイル6へ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル6等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。このような作用により、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/又はプレート3bとが接触又は衝突するのを防止できる。このため、第2の平行部6bは、ボイスコイル6の音の放射方向Y1と逆側への大振幅時に、当該方向へのボイスコイル6の移動を一時的且つ瞬間的に止める役割、即ちブレーキ(ストッパー)としての役割を果たす。この点からもスピーカー装置100の薄型化に寄与し得る。
【0079】
また、第1実施例に係るスピーカー装置100は、以下に述べる比較例と比較して、振動板5の構成上、最低共振周波数f0を下げることができるため低音が得られ易く、高い感度が要求される携帯電話用のスピーカーとして好適に用いることができるという利点を有する。
【0080】
まず、図4を参照して、比較例に係るスピーカー装置の構成について説明する。図4は、比較例に係るスピーカー装置50の片側斜視図を示す。
【0081】
比較例に係るスピーカー装置50は、長円状又は楕円状の平面形状及び凹状の断面形状を有するヨーク11と、そのヨーク11上の中央位置に取り付けられた直方体状及び角型棒状の形状を有するマグネット21と、そのマグネット21上に取り付けられ、マグネット21の長手方向の長さと略同一の長さを有する平板状のプレート31と、を有する磁気回路と、第1実施例と類似した形状を有するフレーム41と、フレーム41に支持される振動板51と、振動板51に支持されるボイスコイル61と、を有する振動系とを備えて構成される。
【0082】
かかる磁気回路において、ヨーク11の上端部とプレート31とは一定の間隔をおいて対向しており、その両者の間には磁気ギャップ71が形成されている。
【0083】
フレーム41は、ヨーク11の上端部付近に取り付けられている。フレーム41の上端部側の外周部には、階段状の形状を有する段部41aが設けられている。
【0084】
振動板51は、音を放射する機能を有し、半円状の断面形状を有する放音部51bと、放音部51bの周囲に一定の間隔をおいて設けられ、Ω状の断面形状を有するエッジ51cと、放音部51bとエッジ51cとの間に設けられ、凹状の断面形状を有する凹部51aと、エッジ51cの外周縁部に設けられ、階段状の断面形状を有する段部51dと、を有する。振動板51の段部51dは、フレーム41の段部41aに嵌合している。これにより、放音部51bはプレート31を覆う位置に配置されていると共に、凹部51aは磁気ギャップ71内に配置されている。そして、凹部51a内には、リング状に巻回してなるボイスコイル61が配置されている。このため、ボイスコイル61は、磁気ギャップ71内に位置している。かかる比較例では、ボイスコイル71に音声電流が入力されると、磁気ギャップ71内でボイスコイル61に駆動力が生じて、振動板51の放音部51bから音波が放射される。
【0085】
以上の構成を有する比較例では、後述するように、その構成上、エッジの幅が小さくなるので、ボイスコイル61の位置がスピーカー装置50の中心位置から離れ、これにより第1実施例と比較して最低共振周波数f0が高くなり、低音が得られ難いという課題を有する。そのため、比較例は、高い感度が要求される携帯電話用のスピーカーとしては不向きである。以下、この点について、図5を参照して説明する。
【0086】
図5(a)は、比較例に係る振動板51の短手方向に対応する断面図である。一方、図5(b)は、第1実施例に係る振動板5の短手方向に対応する断面図である。
【0087】
比較例の振動板51の短手方向の長さ(幅)と、第1実施例の振動板5の短手方向の長さ(幅)は共に同一の長さd4に設定されていると共に、その両者の厚さは同一の厚さ(図示略)に設定されている。比較例において振動板51のエッジ51cの幅はd5に設定されているのに対して、第1実施例においてエッジの機能を兼ねる放音部5bの幅はd6(>d5)に設定されている。つまり、第1実施例は、比較例と比較してエッジの幅が大きいといえる。また、第1実施例に係る振動板5の放音部5bの短手方向の長さは、振動板5の短手方向の長さの大半を占めており、この観点からもエッジの幅が大きいといえる。ここで、一般的に、エッジの幅が大きくなると、それに従いエッジの軟らかさが増すため、スピーカー装置の共振周波数を下げることができると共に、ボイスコイルをスピーカー装置の中心位置に近づけることができる。これにより、最低共振周波数f0を下げることできるので、低音が得られ易くなる。よって、第1実施例では、比較例と比べ最低共振周波数f0を下げることができ、低音が得られ易くなっている。その結果、第1実施例に係る振動板5を有するスピーカー装置は、高い感度が得られ、携帯電話用のスピーカーとして好適に用いることができる。
【0088】
[第2実施例]
次に、図6を参照して、本発明の第2実施例に係るスピーカー装置200の構成について説明する。図6は、第2実施例のスピーカー装置200を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0089】
第2実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第2実施例は、第1実施例と比較して、マグネット2及びプレート3の設定数が相違している。
【0090】
具体的には、第2実施例に係るスピーカー装置200では、マグネット2b及びプレート3bを設けているが、マグネット2a及びプレート3aを設けていない。その代わりに、第2実施例では、マグネット2a及びプレート3aに対応する位置に磁性体8を設けている。好適な例では、磁性体8は、鉄などの金属材料により形成することができる。磁性体8は、マグネット2aの長手方向の長さと同一の長さを有すると共に、当該磁性体8の厚さ(高さ)は、マグネット2bの厚さ(高さ)とプレート3bの厚さ(高さ)とを合わせた値に設定されている。このため、磁性体8の内壁の上端部付近と、プレート3aとは一定の間隔をおいて対向しており、その両者の間には磁気ギャップ70が形成されている。なお、第2実施例では、磁束の方向は第1実施例と同様に矢印Y2方向に生じている。そして、第2実施例では、第1実施例と同様の原理により、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波を放射する。
【0091】
以上の構成を有する第2実施例では、次のような特有の作用効果を奏する。
【0092】
一般的に、マグネット及びプレートの設定数が少なくなると、その分だけ感度が低下することになる。しかし、スピーカー装置が搭載される電子機器などの仕様によっては、必ずしも、高い感度及び効率が必要とされない場合がある。例えば、携帯電話に用いられるスピーカー装置としては、受信用(レシーバー用)と着信用の2種類が存在するが、そのうち、レシーバー用のスピーカー装置の場合には、スペックとして小型化及び最低共振周波数f0の低周波数化(低f0化)の優先順位が高いが、高い感度及び効率はそれほど必要とされない。よって、このようなケースでは、製品コストの観点も考慮すると、例えば携帯電話のレシーバー用として、第1実施例よりも第2実施例のスピーカー装置を適用するのが望ましいといえる。つまり、感度及び効率をそれほど必要としない携帯電話用に好適なスピーカー装置としては、第1実施例に係るスピーカー装置100よりも、第1実施例と比較してマグネットの設定数が少ない分だけ感度及び効率は若干劣るが、その分だけ製品コストの安い第2実施例に係るスピーカー装置200を適用した方が望ましいといえる。なお、第2実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0093】
[第3実施例]
次に、図7を参照して、本発明の第3実施例に係るスピーカー装置300の構成について説明する。図7は、第3実施例のスピーカー装置300を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0094】
第3実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第3実施例は、第1実施例と比較して、マグネットの設定数が多くなっている。
【0095】
具体的には、第3実施例に係るスピーカー装置300では、一対のマグネット2a及び2bに加えて、さらに、一対のマグネット2c及び2dが設けられている。なお、本発明では、製品コストを考慮し又は仕様に応じて、一対のマグネット2c及び2dのうち、いずれか一方のマグネットを設ける構成としても構わない。マグネット2cはプレート3a上に設けられている一方、マグネット2dはプレート3b上に設けられている。そして、一対のマグネット2c及び2dと、対応するプレート3a及び3bを挟んで対向する一対のマグネット2a及び2bとのS極及びN極の相対的な着磁状態はそれぞれ振動板5の振動方向に上下逆の位置関係に設定されている。
【0096】
具体的には、プレート3aに接する、マグネット2cの下面側はN極に着磁されていると共に、プレート3bに接する、マグネット2dの下面側はS極に着磁されている。このため、N極に着磁されたマグネット2cの下面側と、N極に着磁されたマグネット2aの上面側とはプレート3aを挟んで対向していると共に、S極に着磁されたマグネット2dの下面側と、S極に着磁されたマグネット2bの上面側とはプレート3bを挟んで対向している。このように、マグネット2cは、マグネット2aと反発し合う位置に配置され、また、マグネット2dは、マグネット2bと反発し合う位置に配置されるので、マグネット2c及び2dの各々は、一般的に「反発マグネット」と称される。
【0097】
このように、第3実施例では、一対のマグネット2a及び2bに加え、さらに反発マグネットとしてのマグネット2c及び2dを設けているので、その分だけ、磁気ギャップ70内における磁界中の磁力の大きさを大きくすることができる。これにより、感度及び効率を上げることができる。また、何らかの原因によりボイスコイル6に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル6が音の放射方向Y1と逆側へ大きく移動した場合に、その方向へのボイスコイル6の移動を一時的且つ瞬間的に止めるストッパーとしての機能を第1実施例よりも高めることができる。その結果、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/プレート3bとが接触又は衝突するのを第1実施例と比べてより一層防止することができる。なお、第3実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0098】
[第4実施例]
次に、図8を参照して、本発明の第4実施例に係るスピーカー装置400の構成について説明する。図8は、第4実施例のスピーカー装置400を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0099】
第4実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第4実施例は、第1実施例と比較して分かるように、次の構成が相違している。
【0100】
即ち、第4実施例に係るスピーカー装置400では、一対のプレート3a及び3bが設けられていない。また、第1実施例では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁(磁化)の状態は振動板5の振動方向に上下逆の位置関係に設定されていたが、第4実施例では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁(磁化)の状態は磁束の延在方向に左右逆の位置関係に設定されている。
【0101】
具体的には、第4実施例では、フレーム4の内壁と対向する、マグネット2aの外壁はS極に着磁されていると共に、フレーム4の内壁と対向する、マグネット2bの外壁はN極に着磁されている。このため、マグネット2bと対向する、マグネット2aの内壁はN極に着磁されていると共に、マグネット2aと対向する、マグネット2bの内壁はS極に着磁されている。なお、本発明では、マグネット2aとマグネット2bとの相対的なS極及びN極の着磁状態の位置関係は、かかる構成に限定されるものでない。そして、マグネット2aの内壁の上端部付近と、マグネット2bの内壁の上端部付近との間には磁気ギャップ70が形成されている。これにより、磁気ギャップ70付近では、磁束の方向は矢印Y3方向に生じている。また、ボイスコイル6の第2の平行部6aが配置された振動板5の凹部5aは、マグネット2aとマグネット2bの間に形成された磁気ギャップ70内に配置されている。以上の構成を有する第4実施例では、第1実施例と同様の原理により、振動板5の放音部5bを通じて矢印Y1方向に音波を放射する。
【0102】
特に、第4実施例に係るスピーカー装置400では、一対のプレート3a及び3bを設けていないので、その分だけ第1実施例と比較して感度及び効率が若干低下するが、その反面、製品コストを下げることができる。よって、携帯電話などに代表される電子機器の感度及び効率や製品コスト等を考慮すると、第4実施例に係るスピーカー装置400は、例えば携帯電話のレシーバー用として好適に用いることができる。また、本発明では、感度及び効率並びに製品コストを考慮して、上記した第4実施例の構成において、一対のマグネット2a及び2bのうち、いずれか一方を鉄などの金属材料よりなる磁性体に代えても構わない。また、第4実施例では、一対のプレート3a及び3bを設けていないので、第1実施例と比較して、振動板5及びボイスコイル6の振動方向に対応する、スピーカー装置400の高さd7をより一層小さくできる。よって、より一層、スピーカー装置の薄型化を実現できる。なお、第4実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0103】
[第5実施例]
次に、図9を参照して、本発明の第5実施例に係るスピーカー装置500の構成について説明する。図9は、第5実施例のスピーカー装置500を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0104】
第5実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第5実施例は、第1実施例と比較して分かるように、ボイスコイル6の第1の平行部6aのみならず、ボイスコイル6の第2の平行部6bの一部も振動板5の凹部5a内に配置されている。そして、第2の平行部6bの一部は、凹部5aの側面5abに挟持された状態で固定されている。
【0105】
このように、第5実施例では、第1の平行部6aのみならず、第2の平行部6bも振動板5の凹部5aに固定されることになるので、振動系31の振動時の強度向上及び安定化を図ることができる。なお、かかる構成に限定されず、本発明では、上記同様の目的を実現するべく、第1の平行部6aの全部、及び第2の平行部6bの全部をそれぞれ凹部5a内に配置するようにしても構わない。
【0106】
また、かかる構成を採用すれば、第1実施例と比較して、より一層、スピーカー装置500の薄型化を図ることができる。即ち、第1実施例では、スピーカー装置100の高さは、ヨーク1の背面側からボイスコイル6の第2の平行部6bの上面側までの高さd1に設定されているのに対し、第5実施例では、スピーカー装置500の高さは、ヨーク1の背面側から振動板5の放音部5bの放音側の頂部までの高さd8(<d6)に設定されており、第4実施例は、第1実施例と比較して、より一層、スピーカー装置500の薄型化を図ることができる。なお、第5実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0107】
[第6実施例]
次に、図10及び図11を参照して、本発明の第6実施例に係るスピーカー装置600の構成について説明する。図10は、第6実施例のスピーカー装置600を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。図11(a)は、第6実施例に係るボイスコイル7の構成を概略的に示す斜視図を示す。一方、図11(b)は、図11(a)におけるボイスコイル7の切断線A−A´に沿った断面図であり、特にボイスコイル7の短手方向を通る平面で切断したときの断面図を示す。なお、以下では、第1実施例と共通する要素については同一の符号を付し、その説明は簡略化又は省略する。
【0108】
第6実施例と第1実施例とを比較した場合、その両者の構成は略共通している。しかし、第6実施例は、ボイスコイル7の構成が第1実施例と異なっている。
【0109】
具体的には、ボイスコイル7は、1つのマイナス/プラスのリード線を有し、Y字の断面形状をなし、一方向に延在する直方体及び角型棒状の形状を有する第1の平行部を有する第1部分7aと、コの字状の形状を有する第2部分7bと、同じくコの字状の形状を有する第3部分7cと、を含んでなる。なお、第6実施例では、第1部分7aと第1の平行部とは同一なので、以下では、第1部分7aを第1の平行部7aとも称する。
【0110】
第1の平行部7aは、振動板5の凹部5aの長手方向の長さと略同一の長さを有する。第2部分7bは、第1の平行部7aと平行な方向に延在する第2の平行部7baを含み、その第1の平行部7aとの間で環状の形状を形成する。第3部分7cは、第1の平行部7aと平行な方向に延在し且つ且つ磁束の延在方向Y2に対応する、第1の平行部7aの幅方向の中心を通る中心線(図10の中心軸L1及び図11の中心線L3)に対して第2の平行部7baと対称的な位置に配置される第3の平行部7caを含み、その第1の平行部7aとの間で環状の形状を形成する。以上の構成により、第1部分7aと、第2部分7b及び第3部分7cとの間には、略矩形状の開口7dが夫々形成されている。好適な例では、ボイスコイル7に過大な音声電流が入力され、ボイスコイル7が振動板5の音の放射方向Y1と逆方向に大きく移動した場合に、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caが磁気ギャップ70内に位置するように、第1の平行部7aと、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caとの位置関係が規定されているのが好ましい。
【0111】
このボイスコイル7では、図11(a)に示すように、音声電流が第1の平行部7aにおいて矢印Y5方向に流れたと仮定した場合には、その音声電流は、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caではそれぞれ矢印Y5と逆側の矢印Y6方向に流れることになる(図11(b)も参照)。つまり、このボイスコイル7では、第1の平行部7aに流れる音声電流の方向(向き)と、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caに流れる音声電流の方向(向き)とは相対的に逆向きの関係になっている。
【0112】
図10に戻り、ボイスコイル7の第1の平行部7aは、磁気ギャップ70内に配置された振動板5の凹部5a内に配置されていると共に、当該第1の平行部7aは、凹部5aの側面5abに狭持された状態で固定されている。ボイスコイル7の第2部分7b及び第3部分7cは、振動板5の放音部5b上に夫々固定されている。このように、第6実施例では、ボイスコイル7の全体が振動板5に固定されることになる。その結果、音再生時に振動板5を円滑に且つ安定的に移動させることができ、高品位な低音を得ることができる。また、かかる構成により、スピーカー装置600の高さは、ヨーク1の背面側から振動板5の放音部5bの頂部までの高さd8となる。よって、第6実施例は、第1実施例と比較して、より一層、スピーカー装置600の薄型化を図ることができる。
【0113】
また、第6実施例では、何らかの原因によりボイスコイル7へ過大な音声電流が入力されると、上記した第1実施例と同様に、ボイスコイル7はヨーク1側に近づく方向に大きく移動する。そして、このとき、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caと、第1の平行部7aとの間に設けられた開口7dの中心位置がプレート3a及びプレート3bの各厚さ方向の中心軸L2と略一致すると、第1の平行部7aに生じる駆動力と、その駆動力と逆向きの且つ同一の、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caの各々に生じる駆動力とが一時的且つ瞬間的に均衡し、ボイスコイル7は、かかる位置からそれ以上ヨーク1側へは移動しなくなる。つまり、かかる位置から、ボイスコイル7のヨーク1側への移動が規制される。なお、振動板5は初期の位置に復帰する弾性力を有するため、ボイスコイル7等はそのような位置に止まることはなく、ボイスコイル7へ適正な音声電流が入力されると、次の瞬間にはその弾性力によりボイスコイル7等は上記した適正な振動状態に戻ることになる。このような作用により、第1実施例と同様に、振動板5の凹部5a付近の部分と、プレート3a及び/又はプレート3bとが接触又は衝突するのを防止できる。このため、第2の平行部7ba及び第3の平行部7caは、ボイスコイル7の音の放射方向Y1と逆側への大振幅時に、当該方向へのボイスコイル7の移動を一時的且つ瞬間的に止める役割、即ちストッパーとしての役割を果たす。この点からも、スピーカー装置600の薄型化に寄与し得る。なお、第6実施例に関するその他の作用効果は、第1実施例と略同様である。
【0114】
[変形例]
上記の第1実施例〜第6実施例では、ボイスコイル6の第1の平行部6aの全部(全体)を振動板5の凹部5aに配置するようにしたが、これに限らず、本発明では、ボイスコイル6の第1の平行部6aの一部を振動板5の凹部5aに配置するようにしても構わない。
【0115】
また、上記の第1実施例〜第5実施例では、スピーカー装置の形状に合わせるように、ボイスコイル6を長円状に且つリング状の平面形状に形成したが、これに限らず、本発明では、その趣旨を逸脱しない範囲において、スピーカー装置の形状に応じて、ボイスコイル6の形状を種々変形することが可能である。例えば、スピーカー装置の形状に応じて、図12に示すように、ボイスコイル6を角型に且つ長方形状に且つリング状の平面形状を有するように形成してもよい。
[携帯電話機への適用例]
次に、本発明の第1実施例に係るスピーカー装置100を、携帯電話機内の受信部及着信部に適用した例について説明する。なお、本発明では、上記した第2実施例〜第6実施例に係るスピーカー装置200〜600についても、かかる携帯電話機の受信部及び着信部に適用することは勿論可能である。
図13は、この携帯電話機の構成を示す概略平面図である。同図に例示の携帯電話機800は、ケース800gの表側に設けられた、複数の操作ボタン800a、表示部800b、受話口800c及び送話口800dと、ケース800gの裏側に設けられ、着信アラーム音を鳴らす機能を有する着信部800eと、ケース800gの一側面に設けられた送受信アンテナ800fと、を備えて構成される。ここで、受信部800caは、受話口800cの位置に対応するケース800g内に設けられている。以上の構成を有する携帯電話機800では、高感度及び低音が得られ且つ薄型化及びスリム化が可能なスピーカー装置100は、ケース800g内に搭載され、例えば受信部800ca及び着信部800eに対応する位置に各々設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の第1実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図2】第1実施例に係るスピーカー装置の構成を示す片側分解斜視図。
【図3】第1実施例に係るスピーカー装置の駆動原理を説明する断面図。
【図4】比較例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図5】比較例と対比した第1実施例に係る作用効果を説明する振動板の断面図。
【図6】本発明の第2実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第3実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図8】本発明の第4実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図9】本発明の第5実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図10】本発明の第6実施例に係るスピーカー装置の構成を示す断面図。
【図11】本発明の第6実施例に係るボイスコイルの部分断面図及び斜視図。
【図12】変形例に係るボイスコイルの構成を示す平面図。
【図13】本発明のスピーカー装置を用いた携帯電話機の平面図。
【符号の説明】
【0117】
1 ヨーク
2a、2b、2c、2d マグネット
3a、3b プレート
4 フレーム
4a 段部
5 振動板
5a 凹部
5b 放音部
5c 段部
6、7 ボイスコイル
6a 第1の平行部
6b 第2の平行部
7a 第1の平行部
7b 第2部分
7ba 第2の平行部
7c 第3部分
7ca 第3の平行部
8 磁性体
30 磁気回路
31 振動系
70 磁気ギャップ
100、200、300、400、500、600 スピーカー装置
800 携帯電話機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、
一方向に延在する1つの平行部と、前記1つの平行部と平行な方向に延在し、前記1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、
前記1つの平行部及び前記少なくとも1つの他の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、
前記1つの平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記少なくとも1つの他の平行部は前記振動板の上側に且つ放音側に位置していることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項2】
磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、
環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、
前記第1の平行部及び前記第2の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、
前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部は前記凹部の上方に且つ前記振動板の放音側に位置していることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項3】
磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、
Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し且つ前記磁束の延在方向に対応する前記第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して前記第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備え、
前記第1の平行部、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、
前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は前記振動板の放音側の上面に各々固定されていることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項4】
前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と前記第2の平行部との位置関係が規定されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項5】
前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と、前記第2の平行部及び前記第3の平行部との位置関係が規定されていることを特徴とする請求項3に記載のスピーカー装置。
【請求項6】
前記磁気ギャップは前記磁気回路の略中央位置に形成され、
前記振動板は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、当該振動板の前記凹部は、細長い形状に且つU字状の断面形状に形成され、当該振動板の略中央位置及び前記磁気ギャップ内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記第1の平行部の全部又は一部は前記凹部内の側面に狭持された状態で固定されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項9】
前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部及び前記第3の平行部の各々に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定されていることを特徴とする請求項3に記載のスピーカー装置。
【請求項10】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が前記振動板の振動方向に上下逆の位置関係にある一対のマグネットと、直方体状又は平板状の形状を有し、前記一対のマグネットの各々の上面に対向配置された一対のプレートと、を備え、
前記一対のプレートの間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項11】
前記一対の前記プレートのうち少なくとも一方の前記プレートの上面には他のマグネットが配置され、
前記他の前記マグネットと、前記プレートを挟んで対向する前記マグネットとのS極及びN極の相対的な着磁状態は前記振動板の振動方向に上下逆の位置関係に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項12】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、直方体状又は平板状の形状を有し、前記1つの前記マグネットの上面に配置された1つのプレートと、を備え、
前記1つの前記マグネットと前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項13】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が前記磁束の延在方向に左右逆の位置関係にある一対のマグネットと、を備え、
前記一対のマグネットの間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項14】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、を備え、
前記1つのマグネットと前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項15】
前記第2の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、当該凹部の側面に狭持された状態で固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカー装置。
【請求項16】
筒状の形状並びに環状及び長円状又は楕円状の平面形状を有し、前記磁気回路を収容するフレームを備え、
前記フレームの上面側の外周部には階段状の形状を有する段部が形成され、
前記振動板は、前記凹部の周囲に設けられ、半球状の断面形状を有し、音波を放射する機能を有する放音部と、前記放音部の外周部に設けられ、前記フレームの前記段部と嵌合する階段状の形状を有する段部と、を含み、
前記振動板の前記段部は、前記フレームの前記段部に嵌合していると共に、前記凹部は前記フレームの略中央位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項17】
前記放音部はエッジの機能を有し、
前記放音部の短手方向の長さは、前記振動板の短手方向の長さの大半を占めていることを特徴とする請求項16に記載のスピーカー装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載のスピーカー装置を備えることを特徴とする携帯電話機。
【請求項1】
磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、
一方向に延在する1つの平行部と、前記1つの平行部と平行な方向に延在し、前記1つの平行部との間で環状の形状を形成する少なくとも1つの他の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、
前記1つの平行部及び前記少なくとも1つの他の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、
前記1つの平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記少なくとも1つの他の平行部は前記振動板の上側に且つ放音側に位置していることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項2】
磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、
環状の形状を有し、一方向に延在する第1の平行部と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し、前記第1の平行部と一定の間隔をおいて対向する第2の平行部と、を含むボイスコイルと、を備え、
前記第1の平行部及び前記第2の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、
前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部は前記凹部の上方に且つ前記振動板の放音側に位置していることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項3】
磁気ギャップを有する磁気回路と、
前記磁気ギャップ内に配置され、当該磁気ギャップ内に発生する磁束の延在方向と略直交する方向に延在する凹部を有する振動板と、
Y字の断面形状を有し、一方向に延在する第1の平行部としての第1部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在する第2の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第2部分と、前記第1の平行部と平行な方向に延在し且つ前記磁束の延在方向に対応する前記第1の平行部の幅方向の中心を通る中心線に対して前記第2の平行部と対称的な位置に配置される第3の平行部を含み、前記第1の平行部との間で環状の形状を形成する第3部分と、を有するボイスコイルと、を備え、
前記第1の平行部、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は、各々前記凹部の延在方向と平行な方向に配置されており、
前記第1の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、前記磁気ギャップ内に位置していると共に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部は前記振動板の放音側の上面に各々固定されていることを特徴とするスピーカー装置。
【請求項4】
前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と前記第2の平行部との位置関係が規定されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項5】
前記ボイスコイルに過大な音声電流が入力され、前記ボイスコイルが前記振動板の音の放射方向と逆方向に大きく移動した場合に、前記第2の平行部及び前記第3の平行部が前記磁気ギャップ内に位置するように、前記第1の平行部と、前記第2の平行部及び前記第3の平行部との位置関係が規定されていることを特徴とする請求項3に記載のスピーカー装置。
【請求項6】
前記磁気ギャップは前記磁気回路の略中央位置に形成され、
前記振動板は長円状又は楕円状の平面形状に形成されていると共に、当該振動板の前記凹部は、細長い形状に且つU字状の断面形状に形成され、当該振動板の略中央位置及び前記磁気ギャップ内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記第1の平行部の全部又は一部は前記凹部内の側面に狭持された状態で固定されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項9】
前記第1の平行部に流れる音声電流の向きと、前記第2の平行部及び前記第3の平行部の各々に流れる前記音声電流の向きとは相対的に逆向きの関係に設定されていることを特徴とする請求項3に記載のスピーカー装置。
【請求項10】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が前記振動板の振動方向に上下逆の位置関係にある一対のマグネットと、直方体状又は平板状の形状を有し、前記一対のマグネットの各々の上面に対向配置された一対のプレートと、を備え、
前記一対のプレートの間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項11】
前記一対の前記プレートのうち少なくとも一方の前記プレートの上面には他のマグネットが配置され、
前記他の前記マグネットと、前記プレートを挟んで対向する前記マグネットとのS極及びN極の相対的な着磁状態は前記振動板の振動方向に上下逆の位置関係に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項12】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、直方体状又は平板状の形状を有し、前記1つの前記マグネットの上面に配置された1つのプレートと、を備え、
前記1つの前記マグネットと前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項13】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に一定の間隔をおいて対向配置されると共に、S極及びN極の相対的な着磁状態が前記磁束の延在方向に左右逆の位置関係にある一対のマグネットと、を備え、
前記一対のマグネットの間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項14】
前記磁気回路は、ヨークと、直方体状の形状を有し、前記ヨークの上面に配置された1つのマグネットと、前記1つの前記マグネットと一定の間隔をおいて前記ヨークの前記上面に対向配置された磁性体と、を備え、
前記1つのマグネットと前記磁性体との間には1つの前記磁気ギャップが形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置。
【請求項15】
前記第2の平行部の全部又は一部は、前記凹部内に配置され、当該凹部の側面に狭持された状態で固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカー装置。
【請求項16】
筒状の形状並びに環状及び長円状又は楕円状の平面形状を有し、前記磁気回路を収容するフレームを備え、
前記フレームの上面側の外周部には階段状の形状を有する段部が形成され、
前記振動板は、前記凹部の周囲に設けられ、半球状の断面形状を有し、音波を放射する機能を有する放音部と、前記放音部の外周部に設けられ、前記フレームの前記段部と嵌合する階段状の形状を有する段部と、を含み、
前記振動板の前記段部は、前記フレームの前記段部に嵌合していると共に、前記凹部は前記フレームの略中央位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスピーカー装置。
【請求項17】
前記放音部はエッジの機能を有し、
前記放音部の短手方向の長さは、前記振動板の短手方向の長さの大半を占めていることを特徴とする請求項16に記載のスピーカー装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載のスピーカー装置を備えることを特徴とする携帯電話機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−174232(P2007−174232A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368527(P2005−368527)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
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