説明

スプリングクラッチおよびそれを用いた電動パーキングブレーキ装置

【課題】コイルスプリングの縮径時における負圧の発生に起因する異音の発生を防止できるスプリングクラッチおよびそれを用いた電動パーキングブレーキ装置を提供する。
【解決手段】回転軸線を中心とする扇形の切欠き39が形成された出力カム33と、シリンダ部材31に回転可能に設けられた入力回転部材13に一体的に設けられて切欠き39の円周方向内端面の間に円周方向に隙間をおいて挿入される入力カム32と、シリンダ部材31内に嵌挿され拡径により内周面31aに摩擦係合されるとともに両端部に切欠き39の円周方向内端面と入力カム32の円周方向外端面の間の隙間内に位置される折曲部が形成されたコイルスプリング34とを備え、シリンダ部材31の内周面31aに、固体の潤滑被膜50を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力回転部材の回転は出力回転部材に伝達するが、出力回転部材の回転が入力回転部材に伝達されることを阻止するスプリングクラッチおよびそれを用いた電動パーキングブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された電動パーキングブレーキ装置が知られている。この電動パーキングブレーキ装置は、正逆両方向に回転可能な電動モータと、この電動モータによって正転駆動されればパーキングブレーキを制動状態とし、逆転駆動されればパーキングブレーキを解除状態とする回転伝達機構と、この回転伝達機構の回転伝達経路の一部に設けられ、電動モータ側となる入力回転部材の回転が、パーキングブレーキ側となる出力回転部材に伝達されることは許容するが、出力回転部材の回転が入力回転部材に伝達されることを阻止する一方向クラッチ機能を有するスプリングクラッチとによって構成されている。
【0003】
スプリングクラッチは、円筒状のシリンダ部材と、このシリンダ部材に嵌挿されて、拡径動作によりシリンダ部材との摩擦係合力を増大されて回転を規制され、縮径動作によりシリンダ部材との摩擦係合力を減少されて回転を許容されるコイルスプリングとを備えている。
【特許文献1】特開2005−16600号公報(段落0023〜0025、図3〜5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダ部材とコイルスプリングとの摩擦係合面を流体潤滑するために、シリンダ部材の内周面にグリースを塗布することにより、スプリングクラッチの作動を長期にわたって安定させることができる。しかしながら、グリースによって流体潤滑するスプリングクラッチを備えた電動パーキングブレーキ装置においては、コイルスプリングを拡径してスプリングクラッチをONする場合には特に問題はないが、反対に、コイルスプリングを縮径してスプリングクラッチをOFFする場合に、グーという異音を発生することを知見した。かかる異音は、一般車両においては特に問題となるレベルではないが、高級車両においては異音の低減が必要となる。
【0005】
そこで、上記した異音の発生原因を、本願発明者等が種々検討、分析した結果、パーキングブレーキの解除時には、シリンダ部材とコイルスプリングとの間に介在されたグリースによって負圧が発生し、この負圧の発生によって流体潤滑が境界潤滑に変化し、この境界潤滑が異音の発生に影響しているのではないかと推定するに至った。
【0006】
すなわち、コイルスプリングが拡径してスプリングクラッチをONする場合には、シリンダ部材の内周面に対するコイルスプリングの相対速度が、入力回転部材側に係合するコイルスプリングの一端側の相対速度に対して、コイルスプリングの他端側に向かうに従って相対速度が徐々に小さくなる現象、いわゆるストレッチアクション(ストレッチ効果)が発生し、相対速度に応じた圧力が発生する。
【0007】
同時に、コイルスプリングの一端側と他端側の相対運動により、コイルスプリングが拡径して、シリンダ部材の内周面とコイルスプリングとの隙間が変化するため、スクイズアクション(スクイズ効果)によって隙間に応じた圧力が発生する。
【0008】
これによって、コイルスプリングとシリンダ部材との間の圧力分布は、図5に示すように、上記したストレッチアクションによる圧力分布Pstと、スクイズアクションによる圧力分布Psqとの和Ptが作用し、これらストレッチアクションによる圧力分布Pstと、スクイズアクションによる圧力分布Psqは、共に正圧が発生するため、潤滑上何ら問題はない。なお、図5において、x0は、入力回転部材によって作動されるコイルスプリングの一端側を、xeは、コイルスプリングの他端側を示す。
【0009】
これに対して、コイルスプリングが縮径してスプリングクラッチをOFF(解除)する場合には、上記したストレッチアクションおよびスクイズアクションによる圧力分布は、共に速度比例の圧力分布となることから、図5に示す圧力分布と正負が反転し、スプリングクラッチの解除時には、両効果とも負圧を発生させる方向となる。この負圧の発生によって、流体潤滑が境界潤滑に変化し、この境界潤滑下においては、摩擦係数が大きくなったり、不安定になったりして、スティック、スリップが発生しやすくなり、これが異音を発生する原因であるとの知見を得た。
【0010】
本発明は上記した知見に基づいてなされたものであり、グリース潤滑から固体潤滑方式に変更することにより、コイルスプリングの縮径時における負圧の発生に起因する異音の発生を防止できるスプリングクラッチおよびそれを用いた電動パーキングブレーキ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1に係るスプリングクラッチの特徴は、 円筒状の内周面を有するシリンダ部材と、該シリンダ部材に回転可能に設けられた出力回転部材に一体的に設けられて回転軸線を中心とする扇形の切欠きが形成された出力カムと、前記シリンダ部材に回転可能に設けられた入力回転部材に一体的に設けられて前記切欠きの円周方向内端面の間に円周方向に隙間をおいて挿入される入力カムと、前記シリンダ部材内に嵌挿され拡径により前記内周面に摩擦係合されるとともに両端部に前記切欠きの円周方向内端面と前記入力カムの円周方向外端面の間の隙間内に位置される折曲部が形成されたコイルスプリングとよりなり、前記入力回転部材側から前記出力回転部材側への回転は伝達するが、前記出力回転部材側から前記入力回転部材側への回転の伝達は阻止するスプリングクラッチにおいて、前記シリンダ部材の内周面に、固体の潤滑被膜を形成したことである。
【0012】
請求項2に係るスプリングクラッチの特徴は、請求項1において、前記固体の潤滑被膜は、二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等の固体潤滑剤からなっていることである。
【0013】
請求項3に係る電動パーキングブレーキ装置の特徴は、正逆両方向に回転される出力軸を有する電動モータと、この電動モータにより正方向に回転駆動された場合にはパーキングブレーキを制動状態とし、逆方向に回転駆動された場合にはパーキングブレーキを解除状態とする回転伝達機構と、該回転伝達機構の回転伝達経路の一部に設けられ前記電動モータ側となる入力回転部材の回転が前記パーキングブレーキ側となる出力回転部材に伝達されることは許容するが前記出力回転部材の回転が前記入力回転部材に伝達されることは阻止するスプリングクラッチよりなる電動パーキングブレーキ装置において、前記スプリングクラッチとして、請求項1または請求項2に記載のスプリングクラッチを使用したことである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るスプリングクラッチによれば、シリンダ部材の内周面に、固体の潤滑被膜を形成し、異音の発生原因となるグリース潤滑を廃止したので、コイルスプリング縮径時における異音の発生を防止でき、しかも、固体の潤滑被膜によってスプリングクラッチの耐久性を確保できるようになる。
【0015】
請求項2に係るスプリングクラッチによれば、固体の潤滑被膜は、二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等の固体潤滑剤からなっているので、簡単な被膜処理によって、コイルスプリング縮径時における異音の発生を防止できるとともに、耐久性を確保できるようになる。
【0016】
請求項3に係る電動パーキングブレーキ装置によれば、請求項1または請求項2に係るスプリングクラッチを用いたことにより、パーキングブレーキ保持時におけるブレーキの緩みを確実に阻止でき、電動パーキングブレーキ装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るスプリングクラッチおよびそれを用いた電動パーキングブレーキ装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、図1に基づいて、電動パーキングブレーキ装置10の全体構成を説明する。電動パーキングブレーキ装置10のハウジング11の中間部に設けた仕切壁11aには、後述する構成のスプリングクラッチ12が固定されている。スプリングクラッチ12には、入力回転部材としての入力軸13および入力軸13と同軸的に延在されたねじ軸14が、互いに逆向きに突出され、入力軸13はハウジング11の一方の室内に突入され、ねじ軸14はハウジング11の他方の室内に突入されている。
【0019】
ハウジング11には、正逆両方向に回転可能な電動モータ15が設置され、電動モータ15の出力軸15aには減速小ギヤ16が固定されている。減速小ギヤ16は、入力軸13に固定された減速大ギヤ17に噛合され、電動モータ15の正逆回転によって、スプリングクラッチ12の入力軸13を正逆両方向に減速回転できるようになっている。減速小ギヤ16、減速大ギヤ17およびスプリングクラッチ12によって、電動モータ15の回転をねじ軸14に伝達する回転伝達機構20を構成している。
【0020】
ねじ軸14にはナット21が螺合され、ナット21にはイコライザ22の中央部が、枢支ピン23により揺動可能に取付けられている。ねじ軸14の先端には、ナット21が抜け落ちないように抜け止め14aが設けられている。ねじ軸14の軸線と直交するハウジング11の外壁には、ねじ軸14の中心軸線に対し対称となる位置に、一対のコントロールケーブル25、26の各アウタチューブ25a、26aの一端が取付金具27を介して支持されている。各各アウタチューブ25a、26aに挿通された各インナワイヤ25b、26bの各一端は、イコライザ22の枢支ピン23から等距離となる両端部に、連結ピン28により揺動可能に連結されている。各コントロールケーブル25、26のアウタチューブ25a、26aおよびインナワイヤ25b、26bの各他端は、それぞれ別々のパーキングブレーキ(図示省略)に連結されている。
【0021】
これにより、電動モータ15の出力軸15aが正方向に回転され、回転伝達機構20を介してねじ軸14が正方向に回転されると、ナット21に枢支されたイコライザ22はスプリングクラッチ12側に引寄せられる方向(図1の右方向)に移動され、各パーキングブレーキは同一の引張力で作動される。一方、電動モータ15の出力軸15aが逆方向に回転され、回転伝達機構20を介してねじ軸14が逆方向に回転されると、イコライザ22は抜け止め14a側に戻される方向(図1の左方向)に移動され、各パーキングブレーキが解除される。
【0022】
次に、図2および図3に基づいて、スプリングクラッチ12の構成について説明する。スプリングクラッチ12は主に、シリンダ部材31と、入力軸13に設けられた入力カム32と、ねじ軸14に設けられた出力カム33と、コイルスプリング34とによって構成されている。シリンダ部材31は円筒状の内周面31aを有し、取付ねじ35によってハウジング11の仕切壁11aに固定されている。ねじ軸14と一体的に形成される出力回転部材としての出力軸37は、仕切壁11aに形成した軸受孔11bにより、シリンダ部材31と同軸的に回転可能に支持されている。
【0023】
シリンダ部材31内に位置する出力軸37の一端には、フランジ37aと出力カム33が連続して同軸的に形成されている。出力カム33には、出力軸37の回転軸線を中心とする扇形の切欠き39が外周の一部に形成され、切欠き39の円周方向両端の各内端面39aは半径方向に延在されている。出力軸37の中心部には同軸的に円筒孔37aが形成されている。
【0024】
入力軸13は、シリンダ部材31の頂壁の中心に形成した軸受孔31bによりシリンダ部材31に同軸的に回転可能に支持されている。シリンダ部材31内に位置する入力軸13の一端には、出力カム33の端面と対向するフランジ部13aが同軸的に形成され、このフランジ部13aには、出力軸37の切欠き39内に円周方向両内端面39aとの間に円周方向に隙間をおいて挿入される扇形の入力カム32が一体的に形成されている。この入力カム32の円周方向両外端面32aの半径方向内端部には、出力軸37の切欠き39の円周方向両内端面39aに向けて突出する一対の円弧状の突出部32bが形成されている。入力軸13の先端には、出力軸37に形成した円筒孔37aに回転可能に嵌合する先端軸部13bが設けられている。シリンダ部材31の内周面31aと入力カム32および出力カム33の各外周の間には、以下に述べるコイルスプリング34を収容するのに十分な隙間が設けられている。
【0025】
シリンダ部材31の内周面31aには、巻き数が複数(図示の例では4巻きあまり)のコイルスプリング34が、拡径時にシリンダ部材31の内周面31aに摩擦係合するように嵌挿されている。コイルスプリング34の両端部には、比較的大きい半径で約90度内向きに折曲されて、先端部が入力カム32の円周方向各外端面32aと切欠き39の円周方向各内端面39aの間の各隙間内に位置する折曲部40が形成されている。コイルスプリング34は、実施の形態においては、四角い断面形状の線材を使用しているが、丸い断面形状の線材を使用してもよい。
【0026】
上記したシリンダ部材31の内周面31aには、自己潤滑性を有する、例えば、公知の二硫化モリブデン(MoS2)からなる固体潤滑剤50が被膜処理されている。固体潤滑剤被膜の形成により、シリンダ部材31の内周面31aとコイルスプリング34との間の潤滑性能を向上でき、スプリングクラッチ12の耐久性を向上できるようになる。なお、二硫化モリブデンの場合の被膜厚さ(図4のt)は、1μm〜2μmが好適である。
【0027】
次に、上記した実施の形態における電動パーキングブレーキ装置10の作動について説明する。図1に示す状態においては、コントロールケーブル25、26が戻されており、パーキングブレーキは解除状態となっている。この状態において、運転者が制動スイッチ等を操作すると、電動モータ15の出力軸15aが正方向に回転駆動される。この電動モータ15の出力軸15aの回転駆動力は、減速小ギヤ16および減速大ギヤ17によって減速され、入力軸13に伝達される。
【0028】
入力軸13が回転すると、入力軸13に固定された入力カム32も回転して、円周方向の一方の外端面32aがコイルスプリング34の折曲部40の内側に当接して折曲部40を押圧する。この押圧力によりコイルスプリング34の外径が縮められるため、スプリングクラッチ12がOFFされ、入力カム32の回転に従ってコイルスプリング34は回転される。次いで、入力カム32の突出部32bが切欠き39の円周方向の一方の内端面39aに当接して出力カム33を押圧し、入力軸13の回転を出力軸37に伝達する。このようにして、入力軸13が回転すると、出力軸37を介してねじ軸14が正方向に回転駆動され、ナット21およびナット21に取付けられているイコライザ22が図1の右方向に移動される。イコライザ22の移動により、イコライザ22の両端部に連結されたインナワイヤ25b、26bが引張られることにより、コントロールケーブル25、26が引張られる。これによって、パーキングブレーキが制動状態とされる。
【0029】
一方、パーキングブレーキの制動状態において、運転者が解除スイッチ等を操作すると、電動モータ15の出力軸15aが逆方向に回転駆動される。この電動モータ15の出力軸15aの回転駆動力は、減速小ギヤ16および減速大ギヤ17によって減速され、入力軸13に伝達される。
【0030】
入力軸13が回転すると、入力軸13に固定された入力カム32は、上記したパーキングブレーキの制動時の場合と反対方向に回転して、円周方向の他方の外端面32aがコイルスプリング34の折曲部40の内側に当接して折曲部40を押圧する。この押圧力によりコイルスプリング34の外径が縮められるため、スプリングクラッチ12がOFFされ、入力カム43の回転に従ってコイルスプリング48は回転される。次いで、入力カム32の突出部32bが切欠き39の円周方向の他方の内端面39aに当接して出力カム33を押圧し、入力軸13の回転を出力軸37に伝達する。このようにして、入力軸13が回転すると、出力軸37を介してねじ軸14が逆方向に回転駆動され、ナット21およびナット21に取付けられているイコライザ22が図1の左方向に移動される。イコライザ22の移動により、イコライザ22の両端部に連結されたインナワイヤ25b、26bが戻されることにより、コントロールケーブル25、26が戻される。これによって、パーキングブレーキが解除状態とされる。
【0031】
これに対して、出力軸37が図2の反時計回りに回転して入力軸13側に回転が伝達されようとした場合には、出力軸37に固定された出力カム33は、図2に示す不作動状態から反時計回りに回転し、円周方向内端面39aがコイルスプリング34の折曲部40に作用して、コイルスプリング34の外径が拡大され、シリンダ部材31の内周面31aにコイルスプリング34が摩擦係合され、スプリングクラッチ12がONされる。これにより、出力軸37側から入力軸13側への回転の伝達は、阻止される。
【0032】
ところで、入力軸13側から出力軸37側に回転が伝達される場合には、コイルスプリング34の外径の縮小によって、スプリングクラッチ12がOFFされる。かかるコイルスプリング34の縮径時において、従来のグリースによる流体潤滑においては、負圧が発生し、この負圧の発生による影響によって異音を発生したが、本実施の形態においては、異音の発生の原因となる負圧を発生させるグリース潤滑を廃止して、二硫化モリブデンからなる固体潤滑剤50による固体潤滑に変更したので、コイルスプリング34の縮径時においても、異音の発生を確実に防止できるようになる。
【0033】
上記した実施の形態においては、固体潤滑剤50として、二硫化モリブデンを用いた例について説明したが、固体潤滑剤50は、特に二硫化モリブデンに限定されるものではなく、他にも、自己潤滑性を有する、例えば、グラファイトあるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を用いることができる。
【0034】
また、シリンダ部材31の内周面31aに形成する潤滑被膜は、上記した固体潤滑剤50に限定されるものではなく、シリンダ内周面31aに潤滑を目的とした固体の膜(固体の潤滑被膜)を形成できるものであればよく、例えば、PTFEをコーティングしたり、DLC(Diamond Like Carbon)の膜を形成してもよい。
【0035】
斯様に本発明は、実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すスプリングクラッチを備えた電動パーキングブレーキ装置の平面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】シリンダ部材の内周面に被膜形成した固体潤滑剤を示す図である。
【図5】スプリングクラッチをグリースによって流体潤滑した場合における圧力分布を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10・・・電動パーキングブレーキ装置、11・・・ハウジング、12・・・スプリングクラッチ、13・・・入力回転部材(入力軸)、14・・・ねじ軸、15・・・電動モータ、15a・・・出力軸、20・・・回転伝達機構、21・・・ナット、22・・・イコライザ、25、26・・・コントロールケーブル、31・・・シリンダ部材、31a・・・内周面、32・・・入力カム、32a・・・外端面、33・・・出力カム、34・・・コイルスプリング、37・・・出力回転部材(出力軸)、39・・・切欠き、39a・・・内端面、40・・・折曲部、50・・・固体潤滑剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内周面(31a)を有するシリンダ部材(31)と、該シリンダ部材(31)に回転可能に設けられた出力回転部材(37)に一体的に設けられて回転軸線を中心とする扇形の切欠き(39)が形成された出力カム(33)と、前記シリンダ部材(31)に回転可能に設けられた入力回転部材(13)に一体的に設けられて前記切欠き(39)の円周方向内端面(39a)の間に円周方向に隙間をおいて挿入される入力カム(32)と、前記シリンダ部材(31)内に嵌挿され拡径により前記内周面(31a)に摩擦係合されるとともに両端部に前記切欠き(39)の円周方向内端面(39a)と前記入力カム(32)の円周方向外端面(32a)の間の隙間内に位置される折曲部(40)が形成されたコイルスプリング(34)とからなり、前記入力回転部材(13)側から前記出力回転部材(37)側への回転は伝達するが、前記出力回転部材(37)側から前記入力回転部材(13)側への回転の伝達は阻止するスプリングクラッチ(12)において、
前記シリンダ部材(31)の内周面(31a)に、固体の潤滑被膜(50)を形成したことを特徴とするスプリングクラッチ。
【請求項2】
請求項1において、前記固体の潤滑被膜(50)は、二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等の固体潤滑剤からなっているスプリングクラッチ。
【請求項3】
正逆両方向に回転される出力軸(15a)を有する電動モータ(15)と、この電動モータ(15)により正方向に回転駆動された場合にはパーキングブレーキを制動状態とし、逆方向に回転駆動された場合にはパーキングブレーキを解除状態とする回転伝達機構(20)と、該回転伝達機構(20)の回転伝達経路の一部に設けられ前記電動モータ(15)側となる入力回転部材(13)の回転が前記パーキングブレーキ側となる出力回転部材(37)に伝達されることは許容するが前記出力回転部材(37)の回転が前記入力回転部材(13)に伝達されることは阻止するスプリングクラッチ(12)よりなる電動パーキングブレーキ装置において、前記スプリングクラッチ(12)として、請求項1または請求項2に記載のスプリングクラッチを使用したことを特徴とする電動パーキングブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−144886(P2008−144886A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334085(P2006−334085)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】