説明

スライド扉の開閉装置

【課題】扉の閉動作の最中に釣合手段を作動させることにより扉を確実に停止させることができる、スライド扉の開閉装置を提供する。
【解決手段】スライド式に開閉する扉2を駆動するピストン3と、第一圧力室41と第二圧力室42とにその内部がピストン3により区画されたシリンダー4と、第一圧力室41および第二圧力室42に圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段5と、第一圧力室41が圧縮空気供給手段5に連通するとともに第二圧力室42が外部に連通する閉動作状態と第一圧力室41が外部に連通するとともに第二圧力室42が圧縮空気供給手段5に連通する開動作状態とを切り換える開閉動作切換弁6と、ピストン3に作用する力を釣り合わせる釣合手段7とを備え、釣合手段7を作動させることによって扉2の閉動作を停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライド扉の開閉装置、特に蒸気滅菌装置などの圧力容器の開口部に設けられたスライド扉の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関等で使用される蒸気滅菌器などの圧力容器の開口部を開閉する扉として、空圧で駆動されるスライド扉が用いられている。このスライド扉を閉止する際に手など挟み込んで負傷することを防止するため、スライド扉の開閉装置には、障害物が接触や近接したときに非常停止するような安全機構が設けられている。
【0003】
特許文献1に開示されるように、従来のスライド扉の開閉装置として、手などが挟まれても負傷しないように、スライド扉の閉動作を人力によって停止できるようその閉動作の推力が調整可能なものがある。このスライド扉の開閉装置は、スライド扉の閉動作の推力が所定の荷重以下となるよう、駆動に用いる流体圧を調整するというものである。
【0004】
しかし、調整すべき圧力の範囲が微小であり、推力の調整可能な範囲は機器の圧力調整能力に左右されるという問題があった。また、スライド扉の開閉速度を調整すると、再度開閉動作の推力を調整し直さなければならない等、調整を間違えると安全機構として動作しないという問題があった。さらに、スライド扉の重量や開閉する際に生じる摩擦抵抗などの違いによって圧力を調整する必要があり、すなわち機器ごとに圧力を調整する必要があるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2および特許文献3に開示されるように、電力の供給が停止した時に、スライド扉の開閉を停止させるという安全機構が知られている。しかし、特許文献2に係る装置では、扉の開閉動作を切り換える弁が故障し、さらに電力の供給が停止した場合、扉が停止しないという問題があった。また、特許文献3に係る装置では、電力の供給が停止した場合でも扉が慣性で動き続け、また扉を人力で動かすことができるという問題があった。
【0006】
また、扉の開閉動作を切り換える弁が故障し、さらに扉に障害物が近接したり電力の供給が停止した場合に、扉の動作を確実に停止させることができるスライド扉の開閉装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−240799号公報
【特許文献2】特開2001−65237号公報
【特許文献3】特開平10−159813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、扉の閉動作の最中に釣合手段を作動させることにより扉を確実に停止させることができる、スライド扉の開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、スライド式に開閉する扉を駆動するピストンと、前記扉が閉動作を行うとき拡大する第一圧力室と、前記扉が閉動作を行うとき縮小する第二圧力室とに、その内部が前記ピストンにより区画されたシリンダーと、前記第一圧力室および前記第二圧力室に圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、前記第一圧力室が前記圧縮空気供給手段に連通するとともに前記第二圧力室が外部に連通する閉動作状態と、前記第一圧力室が外部に連通するとともに前記第二圧力室が前記圧縮空気供給手段に連通する開動作状態とを切り換える開閉動作切換弁と、前記閉動作状態において、前記第二圧力室を密閉するかまたは前記第二圧力室を前記圧縮空気供給手段に連通させて、前記ピストンに作用する力を釣り合わせる釣合手段とを備えることを特徴とするスライド扉の開閉装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、閉動作状態において釣合手段が作動するとピストンに作用する力が釣り合うことにより、扉の閉動作が停止するスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記釣合手段が、前記閉動作状態において前記第二圧力室と外部とを連通する排気路に設けられ、前記排気路を閉止する排気停止弁であることを特徴とする請求項1に記載のスライド扉の開閉装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、閉動作状態において排気停止弁が閉止すると第二圧力室が密閉されて、ピストンに作用する力が釣り合うことにより、扉の閉動作が停止するスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記開閉動作切換弁が、圧縮空気が供給される供給ポートと、前記閉動作状態で前記供給ポートと連通する第一出力ポートと、前記開動作状態で前記供給ポートと連通する第二出力ポートと、前記開動作状態で前記第一出力ポートと連通する第一排気ポートと、前記閉動作状態で前記第二出力ポートと連通する第二排気ポートとを有し、前記第一出力ポートが前記第一圧力室に接続されるとともに前記第二出力ポートが前記第二圧力室に接続されており、前記供給ポートが前記圧縮空気供給手段に接続されており、前記第二排気ポートに、外部と連通するとともに前記排気停止弁が設けられた端末路が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のスライド扉の開閉装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、開閉動作切換弁が故障した場合であっても釣合手段の作動により安全に扉を停止することができ、閉動作状態において釣合手段が作動した場合には扉の閉動作は停止し、開動作状態において釣合手段が作動した場合には扉の開動作はそのまま続行するスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記扉の近傍の障害物を検知する障害物検知手段をさらに備え、前記排気停止弁が前記障害物検知手段の作動により前記排気路を閉止することを特徴とする請求項2または3に記載のスライド扉の開閉装置である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、閉動作状態において障害物が検知された場合には排気停止弁が閉止し、第二圧力室が密閉されてピストンに作用する力が釣り合うことにより、扉の動作が停止するスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記排気停止弁が、通電時に前記排気路を開放し、非通電時に前記排気路を閉止することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のスライド扉の開閉装置である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、閉動作状態において排気停止弁への通電が停止した場合には排気停止弁が閉止し、ピストンに作用する力が釣り合うことにより、扉の動作が停止するスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、
前記開閉動作切換弁が、通電が停止された後も通電停止前の状態を保持することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のスライド扉の開閉装置である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、閉動作状態において開閉動作切換弁への通電が停止され、かつ釣合手段が作動した場合には扉の閉動作は停止し、開動作状態において開閉動作切換弁への通電が停止され、かつ釣合手段が作動した場合には扉の開動作はそのまま続行するスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、閉動作状態において釣合手段が作動するとピストンに作用する力が釣り合うことにより、扉の閉動作が停止するスライド扉の開閉装置を提供することができる。また、この発明によれば、開閉動作切換弁が故障した場合であっても釣合手段の作動により安全に扉を停止することができ、停電時にも扉の閉動作を確実に停止することが可能なスライド扉の開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置であって、閉動作状態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置であって、開動作状態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
この発明の第1の実施の形態について図1および図2に基づき説明する。図1は第1の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置であって、閉動作状態を示す概略構成図である。図2は第1の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置の開動作状態を示す概略構成図である。
【0024】
図1に示すスライド扉の開閉装置1は、スライド式に開閉する扉2を駆動するピストン3と、その内部がピストン3により二つの密閉された圧力室に区画されるシリンダー4とを備える。ここで、シリンダー4の内部はピストン3により、扉2が閉動作を行うとき拡大する第一圧力室41と、扉2が閉動作を行うとき縮小する第二圧力室42とに区画される。また、スライド扉の開閉装置1は、第一圧力室41および前記第二圧力室42に圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段5と、扉2の開閉動作を切り換える開閉動作切換弁6を備えている。開閉動作切換弁6は、第一圧力室41が圧縮空気供給手段5に連通するとともに第二圧力室42が外部に連通する閉動作状態(図1参照)と、第一圧力室41が外部に連通するとともに第二圧力室42が圧縮空気供給手段5に連通する開動作状態(図2参照)とを切り換えるよう構成されている。さらにスライド扉の開閉装置1は、閉動作状態において、第二圧力室42を密閉するかまたは第二圧力室42を圧縮空気供給手段5に連通させて、ピストン3に作用する力を釣り合わせる釣合手段7を備える。なお、ピストン3に作用する力には、第一圧力室41内の気体がピストン3に作用する力(第一圧力室41内の圧力とピストン3の圧力作用面の面積との積)、第二圧力室42内の気体がピストン3に作用する力(第二圧力室42内圧力とピストン3の圧力作用面の面積との積)、扉2がピストン3に作用する力(重力など)、およびシリンダー4がピストン3に作用する力(摩擦力など)がある。
【0025】
また、スライド扉の開閉装置1は扉2近傍の障害物を検知する障害物検知手段9を備え、障害物検知手段9が作動した時に発生する検知信号が、釣合手段7に入力されるよう構成されている。さらに、スライド扉の開閉装置1は開閉動作切換弁6を制御する制御器10を備え、制御器10にも障害物検知手段9からの信号が入力されるよう構成されている。
【0026】
扉2はピストン3に接続され、ピストン3により押されるかまたは引っ張られてスライド式に開閉するよう構成されている。本実施の形態では、扉2の移動する方向が図面における上方を閉方向とし、下方を開方向としている。シリンダー4は複動式シリンダーであり、ピストン3によりその内部を第一圧力室41および第二圧力室42の、二つの気密な室に区画されている。またシリンダー4には、第一圧力室41に連通する第一シリンダーポート43と、第二圧力室42に連通する第二シリンダーポート44とが設けられている。
【0027】
開閉動作切換弁6は、開動作状態および閉動作状態の二つの状態を切り換え可能に設けられており、5ポート2位置の複動電磁弁が好適に用いられる。すなわち開閉動作切換弁6は、圧縮空気が供給される供給ポート61と、閉動作状態で供給ポート61と連通する第一出力ポート62と、開動作状態で供給ポート61と連通する第二出力ポート63と、開動作状態で第一出力ポート62と連通する第一排気ポート64と、閉動作状態で第二出力ポート63と連通する第二排気ポート65とを有し、ソレノイド66,67により開動作状態と閉動作状態とが切り換えられるよう構成されている。なお、開閉動作切換弁6には、単動電磁弁やその他の切換弁を使用することもできる。
【0028】
シリンダー4,圧縮空気供給手段5および開閉動作切換弁6の間のラインの接続は、次のようになされている。すなわち、圧縮空気供給手段5と供給ポート61とが供給ライン81により接続されており、第一出力ポート62と第一シリンダーポート43とが第一給排ライン82により接続されており、第二シリンダーポート44と第二出力ポート63とが第二給排ライン83により接続されている。また、一端が第二排気ポート65に接続され、他端が外部に連通する端末路84が設けられている。第二給排ライン83および端末路84は、第二圧力室42と外部とを連通する排気路を構成している。
【0029】
端末路84には、ピストン3に作用する力を釣り合わせる釣合手段7として、端末路84を閉止することができる排気停止弁71が設けられている。排気停止弁71には、通電時に端末路84を開放し非通電時に端末路84を閉止するような、いわゆるノーマルクローズ型の電磁弁が好適に使用される。
【0030】
障害物検知手段9が作動した時に発生する検知信号は、排気停止弁71および制御器10に入力されるよう構成されており、排気停止弁71は検知信号を受信すると閉止するよう構成されている。障害物検知手段9には、赤外線センサーなどが好適に用いられる。
【0031】
制御器10は操作手段(図示省略)からの入力に基づいて開閉動作切換弁6の位置を切り換えるとともに、障害物検知手段9からの検知信号を受信すると開閉動作切換弁6の位置を切り換えて開動作状態にするよう構成されている。そのために、図1および図2に示すスライド扉の開閉装置1では、開閉動作切換弁6のソレノイド66,67が制御器10に接続されている。
【0032】
なお、障害物検知手段9から排気停止弁71に送信される検知信号は、図1および図2に示されるように、制御器10を経由せず排気停止弁71に直接入力されるよう構成すると、制御器10の故障に影響されることなく検知信号が確実に排気停止弁71に送信されるため、好適である。
【0033】
次にスライド扉の開閉装置1の動作について、図1および図2に基づいて説明する。
【0034】
(開閉動作切換弁正常場合)
開閉動作切換弁6が正常に動作する場合には、操作手段により扉2の開閉が操作される。すなわち、操作手段を操作することによって操作手段に接続された制御器10が開閉動作切換弁6のソレノイド66,67を制御し、開動作状態と閉動作状態とが切り換えられる。
【0035】
図1には閉動作状態でのスライド扉の開閉装置1が示されている。閉動作状態では、第一圧力室41は圧縮空気供給手段5と連通しているとともに第二圧力室42は端末路84を介して外部と連通しており、第一圧力室41の圧力の方が第二圧力室42の圧力より高いため、第一圧力室41が拡張するとともに第二圧力室42が縮小するようピストン3が移動することにより、扉2が閉じる方向に移動する。
【0036】
図2には開動作状態でのスライド扉の開閉装置1が示されている。開動作状態では、第二圧力室42は圧縮空気供給手段5と連通しているとともに第一圧力室41は外部と連通しており、第二圧力室42の圧力の方が第一圧力室41の圧力より高いため、第二圧力室42が拡張するとともに第一圧力室41が縮小するようピストン3が移動することにより、扉2が開く方向に移動する。
【0037】
(開閉動作切換弁正常場合での障害物検知)
ここで、開閉動作切換弁6が正常に動作する場合において、障害物検知手段9により障害物が検知された場合の動作について説明する。障害物が検知されると、障害物検知手段9は、制御器10に検知信号を送信する。検知信号を受けた制御器10はソレノイド66,67を制御し、操作手段の操作にかかわらず、開閉動作切換弁6を開動作状態(図2参照)に切り換える。これによって、扉2が閉動作を行っていた場合には開動作に転じ、扉2が開動作を行っていた場合にはそのまま開動作を続行する。なお、障害物が検知されると、障害物検知手段9は、排気停止弁71にも検知信号を送信し、排気停止弁71は検知信号を受信すると端末路84を閉止するが、開閉動作切換弁6は開動作状態に切り換わっているため端末路84は第一圧力室41および第二圧力室42のいずれにも連通しておらず、扉2の動作になんら影響しない。
【0038】
(開閉動作切換弁正常場合での電力供給停止)
次に、開閉動作切換弁6が正常に動作する場合において、電力供給が停止した場合の動作について説明する。
【0039】
閉動作状態(図1参照)において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は複動電磁弁であるため閉動作状態を維持するが、排気停止弁71はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により端末路84を閉止する。すると、端末路84に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が上昇し、ピストン3に作用する力が釣り合うため、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。
【0040】
開動作状態(図2参照)において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は複動電磁弁であるため開動作状態を維持するが、排気停止弁71はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により端末路84を閉止する。しかし、開動作状態では端末路84は第一圧力室41および第二圧力室42のいずれにも連通していないため、動作は妨げられることなくそのまま扉2の開動作を続行する。
【0041】
(開閉動作切換弁故障場合)
次に開閉動作切換弁6が、異物の噛み込みや制御器10とソレノイド66,67とを接続する信号線の断線などの故障により、開動作状態と閉動作状態とを切り換えられなくなった場合の動作について説明する。
【0042】
(開閉動作切換弁故障場合での障害物検知)
障害物検知手段9により障害物が検知された場合の動作について説明する。障害物が検知されると、障害物検知手段9は、制御器10に検知信号を送信する。検知信号を受けた制御器10は開閉動作切換弁6を開動作状態に切り換えようとするが、開閉動作切換弁6は故障しているため切り換わらない。一方、障害物が検知されると、障害物検知手段9は、排気停止弁71にも検知信号を送信し、排気停止弁71は検知信号を受信すると端末路84を閉止する。このとき、扉2が閉動作を行っている場合では開閉動作切換弁6は閉動作状態(図1参照)のまま切り替わらないため、端末路84に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が上昇し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。これに対して、扉2が開動作を行っている場合では開閉動作切換弁6は開動作状態(図2参照)のままであるため、端末路84は第一圧力室41および第二圧力室42のいずれにも連通しておらず、扉2の動作になんら影響しない。
【0043】
(開閉動作切換弁故障場合での電力供給停止)
次に、開閉動作切換弁6が故障した場合において、電力供給が停止した場合の動作について説明する。
【0044】
閉動作状態(図1参照)において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は故障のため切り換わらず閉動作状態を維持するが、排気停止弁71はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により端末路84を閉止する。すると、端末路84に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が上昇し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。
【0045】
開動作状態(図2参照)において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は故障のため切り換わらず開動作状態を維持するが、排気停止弁71はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により端末路84を閉止する。しかし、開動作状態では端末路84は第一圧力室41および第二圧力室42のいずれにも連通していないため、動作は妨げられることなくそのまま扉2の開動作を続行する。
【0046】
なお、上述の第1の実施の形態では障害物検知手段9が設けられている場合について動作を説明したが、障害物検知手段9を備えないように構成することもできる。この構成によると、閉動作状態で電力供給が停止した場合、扉2の閉動作を停止させることができ、また開動作状態で電力供給が停止した場合には、扉2の開動作を続行させることができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次にこの発明の第2の実施の形態について図3に基づき説明する。図3は第2の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置を示す概略構成図である。以下においては、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0048】
図3では、シリンダー4,圧縮空気供給手段5および開閉状態切換弁6の接続については図1と同様となっているが、端末路84には弁が設けられておらず、第二給排ライン83に釣合手段7としての排気停止弁74が設けられている。排気停止弁74には、通電時に第二給排ライン83を開放し非通電時に第二給排ライン83を閉止するような、いわゆるノーマルクローズ型の電磁弁が好適に使用される。
【0049】
次に第2の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置1の動作について、図3に基づいて説明する。
【0050】
(開閉動作切換弁正常場合)
開閉動作切換弁6が正常に動作する場合には、第1の実施の形態と同様に、操作手段(図示省略)により扉2の開閉が操作される。すなわち、操作手段を操作することによって操作手段に接続された制御器10が開閉動作切換弁6のソレノイド66,67を制御し、開動作状態と閉動作状態とが切り換えられる。
【0051】
(開閉動作切換弁正常場合での障害物検知)
ここで、開閉動作切換弁6が正常に動作する場合において、障害物検知手段9により障害物が検知された場合の動作について説明する。障害物が検知されると、障害物検知手段9は、制御器10に検知信号を送信する。検知信号を受けた制御器10はソレノイド66,67を制御し、操作手段の操作にかかわらず、開閉動作切換弁6を開動作状態に切り換えると同時に、障害物検知手段9は排気停止弁74にも検知信号を送信し、排気停止弁74は検知信号を受信すると第二給排ライン83を閉止する。すると、開閉動作切換弁6は開動作状態に切り換わるものの、第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が低下し、ピストン3に作用する力が釣り合う。ピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の動作は停止する。すなわち、扉2が開動作および閉動作のいずれかを行っていた場合でも、障害物が検知されることによって、扉2の動作は停止する。
【0052】
(開閉動作切換弁正常場合での電力供給停止)
次に、開閉動作切換弁6が正常に動作する場合において、電力供給が停止した場合の動作について説明する。
【0053】
閉動作状態において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は複動電磁弁であるため閉動作状態を維持するが、排気停止弁74はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により第二給排ライン83を閉止する。すると、第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が上昇し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。
【0054】
開動作状態において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は複動電磁弁であるため開動作状態を維持するが、排気停止弁74はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により第二給排ライン83を閉止する。すると、第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が低下し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の開動作は停止する。
【0055】
すなわち、扉2が開動作および閉動作のいずれかを行っていた場合でも、電力供給が停止することによって、扉2の動作は停止する。
【0056】
(開閉動作切換弁故障場合)
次に開閉動作切換弁6が、異物の噛み込みや制御器10とソレノイド66,67とを接続する信号線の断線などの故障により、開動作状態と閉動作状態とを切り換えられなくなった場合の動作について説明する。
【0057】
(開閉動作切換弁故障場合での障害物検知)
障害物検知手段9により障害物が検知された場合の動作について説明する。障害物が検知されると、障害物検知手段9は、制御器10に検知信号を送信する。検知信号を受けた制御器10は開閉動作切換弁6を開動作状態に切り換えようとするが、開閉動作切換弁6は故障しているため切り換わらない。一方、障害物が検知されると、障害物検知手段9は、排気停止弁74にも検知信号を送信し、排気停止弁74は検知信号を受信すると端末路84を閉止する。このとき、扉2が閉動作を行っている場合では開閉動作切換弁6は閉動作状態のまま切り替わらないため、第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が上昇し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。扉2が開動作を行っている場合では開閉動作切換弁6は開動作状態のままであるため、第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が低下し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の開動作は停止する。すなわち、扉2が開動作および閉動作のいずれかを行っていた場合でも、障害物が検知されることによって、扉2の動作は停止する。
【0058】
(開閉動作切換弁故障場合での電力供給停止)
次に、開閉動作切換弁6が故障した場合において、電力供給が停止した場合の動作について説明する。
【0059】
閉動作状態において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は故障のため切り換わらず閉動作状態を維持するが、排気停止弁74はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により第二給排ライン83を閉止する。すると、第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が上昇し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。
【0060】
開動作状態において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は故障のため切り換わらず開動作状態を維持するが、排気停止弁74はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により第二給排ライン83を閉止する。第二給排ライン83に連通する第二圧力室42は密閉されて圧力が低下し、ピストン3に作用する力が釣り合う。そしてピストン3に作用する力が釣り合うことによって、ピストン3の移動は止まり、扉2の開動作は停止する。
【0061】
すなわち、扉2が開動作および閉動作のいずれかを行っていた場合でも、電力供給が停止することによって、扉2の動作は停止する。
【0062】
なお、上述の第2の実施の形態では障害物検知手段9が設けられている場合について動作を説明したが、障害物検知手段9を備えないように構成することもできる。この構成によると、閉動作状態または開動作状態で電力供給が停止した場合、扉2の動作を停止させることができる。
【0063】
(第3の実施の形態)
次にこの発明の第3の実施の形態について図4に基づき説明する。図4は第3の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置を示す概略構成図である。以下においては、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0064】
図4に示されるスライド扉の開閉装置1には、第一給排ライン82上の分岐点86と第二給排ライン83上の分岐点87とを接続するバイパスライン85が設けられており、さらに釣合手段7として、第二給排ライン83のうち分岐点87と第二出力ポート63との間に設けられた第一等圧弁72と、バイパスライン85に設けられた第二等圧弁73とが備えられている。また、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なり、障害物検知手段が設けられていない。
【0065】
第一等圧弁72について、通電時に開放し非通電時に閉止するような、いわゆるノーマルクローズ型の弁を適用するとともに、第二等圧弁73について、通電時に閉止し非通電時に開放するような、いわゆるノーマルオープン型の弁を適用するのが好適である。
【0066】
次に第3の実施の形態に係るスライド扉の開閉装置1の動作について、図4に基づいて説明する。
【0067】
(開閉動作切換弁正常場合)
開閉動作切換弁6が正常に動作する場合には、第1の実施の形態と同様に、操作手段により扉2の開閉が操作される。なお、第一等圧弁72および第二等圧弁73への通電により、第二給排ライン83は開放しておりバイパスライン85は閉止している。
【0068】
(開閉動作切換弁正常場合での電力供給停止)
次に、開閉動作切換弁6が正常に動作する場合において、電力供給が停止した場合の動作について説明する。
【0069】
閉動作状態において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は複動電磁弁であるため閉動作状態を維持する。第一等圧弁72はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により第二給排ライン83を閉止する。また第二等圧弁73はノーマルオープン型の電磁弁であるため電力供給の停止によりバイパスライン85を開放する。すると、第一圧力室41と圧縮空気供給手段5との連通は維持されつつ、第二圧力室42も圧縮空気供給手段5と連通する。すなわち、第一圧力室41の圧力と第二圧力室42の圧力とが等しくなる。ここで、扉2がピストン3に作用する力およびシリンダ4がピストン3に作用する力が小さい場合、またはこれらが互いに相殺する場合には、ピストン3に作用する力が釣り合うため、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。
【0070】
(開閉動作切換弁故障場合での電力供給停止)
次に、開閉動作切換弁6が故障した場合において、電力供給が停止した場合の動作について説明する。
【0071】
閉動作状態において電力供給が停止した場合、開閉動作切換弁6は故障のため切り換わらず閉動作状態を維持する。第一等圧弁72はノーマルクローズ型の電磁弁であるため電力供給の停止により第二給排ライン83を閉止する。また第二等圧弁73はノーマルオープン型の電磁弁であるため電力供給の停止によりバイパスライン85を開放する。すると、第一圧力室41と圧縮空気供給手段5との連通は維持されつつ、第二圧力室42も圧縮空気供給手段5と連通する。すなわち、第一圧力室41の圧力と第二圧力室42の圧力とが等しくなる。ここで、扉2がピストン3に作用する力およびピストン3とシリンダ4との摩擦力が小さい場合、またはこれらが互いに相殺する場合には、ピストン3に作用する力が釣り合うため、ピストン3の移動は止まり、扉2の閉動作は停止する。
【0072】
なお、上述の第3の実施の形態では障害物検知手段を設けていない場合について動作を説明したが、障害物検知手段を設け、検知信号が第一等圧弁72および第二等圧弁73に入力されるよう構成し、検知信号が入力された場合第一等圧弁72は第二給排ライン83を閉止し、第二等圧弁73はバイパスライン85を開放するよう構成することも可能である。この構成によると、閉動作状態において障害物が検知された場合、電力供給が停止した場合と同様に扉2の閉動作を停止させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 スライド扉の開閉装置
2 扉
3 ピストン
4 シリンダー
41 第一圧力室
42 第二圧力室
5 圧縮空気供給手段
6 開閉動作切換弁
61 供給ポート
62 第一出力ポート
63 第二出力ポート
64 第一排気ポート
65 第二排気ポート
7 釣合手段
71 排気停止弁
83 第二給排ライン(排気路)
84 端末路(排気路)
9 障害物検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド式に開閉する扉を駆動するピストンと、
前記扉が閉動作を行うとき拡大する第一圧力室と、前記扉が閉動作を行うとき縮小する第二圧力室とに、その内部が前記ピストンにより区画されたシリンダーと、
前記第一圧力室および前記第二圧力室に圧縮空気を供給する圧縮空気供給手段と、
前記第一圧力室が前記圧縮空気供給手段に連通するとともに前記第二圧力室が外部に連通する閉動作状態と、前記第一圧力室が外部に連通するとともに前記第二圧力室が前記圧縮空気供給手段に連通する開動作状態とを切り換える開閉動作切換弁と、
前記閉動作状態において、前記第二圧力室を密閉するかまたは前記第二圧力室を前記圧縮空気供給手段に連通させて、前記ピストンに作用する力を釣り合わせる釣合手段とを備える
ことを特徴とするスライド扉の開閉装置。
【請求項2】
前記釣合手段が、前記閉動作状態において前記第二圧力室と外部とを連通する排気路に設けられ、前記排気路を閉止する排気停止弁である
ことを特徴とする請求項1に記載のスライド扉の開閉装置。
【請求項3】
前記開閉動作切換弁が、
圧縮空気が供給される供給ポートと、
前記閉動作状態で前記供給ポートと連通する第一出力ポートと、
前記開動作状態で前記供給ポートと連通する第二出力ポートと、
前記開動作状態で前記第一出力ポートと連通する第一排気ポートと、
前記閉動作状態で前記第二出力ポートと連通する第二排気ポートとを有し、
前記第一出力ポートが前記第一圧力室に接続されるとともに前記第二出力ポートが前記第二圧力室に接続されており、
前記供給ポートが前記圧縮空気供給手段に接続されており、
前記第二排気ポートに、外部と連通するとともに前記排気停止弁が設けられた端末路が接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載のスライド扉の開閉装置。
【請求項4】
前記扉の近傍の障害物を検知する障害物検知手段をさらに備え、
前記排気停止弁が前記障害物検知手段の作動により前記排気路を閉止する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のスライド扉の開閉装置。
【請求項5】
前記排気停止弁が、通電時に前記排気路を開放し、非通電時に前記排気路を閉止する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のスライド扉の開閉装置。
【請求項6】
前記開閉動作切換弁が、通電が停止された後も通電停止前の状態を保持する
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のスライド扉の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−261155(P2010−261155A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110513(P2009−110513)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】