説明

スライド機構及びそのスライド機構を備えた携帯電子装置

【課題】本発明は、スライド機構が簡略化可能で耐疲労性が優れるスライド機構を提供できる。
【解決手段】ベースプレートと、前記ベースプレートに対してスライド可能に係合されているスライダプレートと、前記ベースプレートとスライダプレートとの間に付勢されており、ループ部を少なくとも4つ有するトーションバネが2つ備えられると共に前記4つのループ部が1つの平面で展開されたものであって、トーションバネの一端部がベースプレートに取り付けられていると共に、他端部がスライダに取り付けられている付勢手段とで構成したスライド機構により、前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド機構に関し、特に携帯電子装置用スライド機構及びそのスライド機構を備えた携帯電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信技術の発展とともに、携帯電話、PDAなどの携帯電子装置が現代人の日常生活において必用な通信手段となっており、そのような携帯電子装置は、使用者の嗜好に合うように、ますます多様化した携帯電子装置が盛んに開発されている。現在、携帯電話を代表とする携帯電子装置は、その全体の形状から主にストレート型の携帯電話、折畳型の携帯電話およびスライド型の携帯電話などに分けることができる。その中で、折畳型の携帯電話はヒンジ装置により重合部を回転するもので、スライド型の携帯電話はスライド装置を介して蓋体を本体に対しスライド可能に結合したものである。
【0003】
携帯電話の様々なデザインの機種の出現とともに、ユーザーからは、携帯電話の重量や体積や使用寿命などにおける高性能な要求が高まっている。その要求を満足するため、携帯電話のメーカーは、機構が簡単で使用寿命が長い方向に従って携帯電話をデザインしなければならない。スライド型携帯電話は蓋体を本体に対してスライドさせて開閉動作を行うことができる。普通の携帯電話のスライド機構では、部品数が多く、組み立てる際に煩雑となるため、携帯電話の製造コストが上がる。
【0004】
携帯電話の体積を小形化することを考慮して、例えばトーションバネからなるスライド機構の付勢部材が金細線で構成される。しかし、小さいサイズの付勢部材は耐疲労性が悪い。現在、普及している携帯電話用のスライド機構の寿命は、一般的に10万回である。その原因は、スライド機構が一定の時間使われた後弾性部材の内部バネが過疲労により変形または破断し、携帯電話が駆動力不足となる現象や、閉状態及び開状態において、蓋体が本体に対してぐらぐらする現象などを起こしている。該現象に対応して、耐疲労性が優れ、かつ小型の付勢部材をデザインしなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一目的は機構が簡略化可能でありながら耐疲労性が優れるスライド機構を提供するものである。
【0006】
本発明の第二目的は前記スライド機構を備える携帯電子装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第一目的を解決するために、本発明に係るスライド機構は、ベースプレートと、前記ベースプレートに対してスライド可能に係合されているスライダプレートと、前記ベースプレートとスライダプレートの間に設けられたスライド付勢手段を含み、該付勢手段は2つのトーションバネを含み、該トーションバネは1つの平面で展開された4つのループ部を有し、該トーションバネの一端部はベースプレートに取り付けられ、他端部はスライダプレートに取り付けられている。
【0008】
前記第二目的を解決するために、本発明に係る携帯電子装置は、本体と、蓋体と、スライド機構を含み、該スライド機構はベースプレートと、前記ベースプレートに対してスライド可能に係合されているスライダプレートと、前記ベースプレートとスライダプレートの間に設けられたスライド付勢手段とを含み、該付勢手段は2つのトーションバネを含み、該トーションバネは1つの平面で展開された4つのループ部を有し、該トーションバネの一端部はベースプレートに取り付けられ、他端部はスライダプレートに取り付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるスライド機構は、ループ部を少なくとも4つ有するトーションバネを2つ備え、且つ該4つのループ部が一つの平面に展開されていて、該スライド機構が簡略化可能でありながら耐疲労性が優れる。
【0010】
本発明による携帯電子装置は、スライダプレートが蓋体に固定され、且つベースプレートが本体に固定されていることにより、スライダ機構が前記携帯電子装置に配設される。更に、前記スライド機構は、ループ部を少なくとも4つ有するトーションバネを2つ備え、且つ該4つのループ部が1つの平面に展開されていて、該スライド機構が簡略化可能でありながら耐疲労性が優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2を参照すると、本実施形態に係わるスライド機構100はベースプレート10と、スライダプレート20と、付勢手段30と、を含んでいる。前記スライダプレート20は付勢手段30を介してベースプレート10に対して半自動的にスライディング移動する。
【0012】
前記ベースプレート10は、矩形板状であるベースプレート部11と、該ベースプレート部11の相対両側に設けられ、且つ該ベースプレートと一体成形された二つのガイドレール12と、を備える。ベースプレート11のガイドレール12の近くの相対両側の略中央に、それぞれ第一螺孔13と第二螺孔14とが形成され、前記ベースプレート部11の四隅にそれぞれ第一固定孔15が開設される。
【0013】
スライダプレート20は、スライダプレート部21と、前記スライダプレート部21の相対両側に設けられ、且つ該スライダプレート部21と一体成形される二つのガイド溝22と、を備える。前記スライダプレート部21は、そのスライド方向において、ベースプレート10と比べて短い矩形板であり、前記ガイド溝22の近くの相対両側の両端には、それぞれ第三螺孔23と第四螺孔24とが形成される。前記カイド溝22と、ベースプレート10のガイドレール12とが線接触として係合されて、ベースプレート10がスライダプレート20に対してガイドされ、スライダプレート20がベースプレート10に対してのスライド摩擦抵抗を低減することができる。前記スライダプレート部21の四隅に第二固定孔25が形成される。
【0014】
前記付勢手段30は第一トーションバネ31と、第二トーションバネ32と、第一固定ネジ33と、第二固定ネジ34と、第三固定ネジ35と、第四ネジ36と、を備える。
【0015】
前記第一トーションバネ31と第二トーションバネ32との材料にはSWP−BまたはSUS301を採用し、かつ前記第一トーションバネ31と第二トーションバネ32との線径は0.45〜0.5mmである。前記第一トーションバネ31と第二トーションバネ32との構成は同じで、4つのループ部及び2つの接続孔をそれぞれ備え、かつ前記4つのループ部はそれぞれ1つの平面に展開されている。
【0016】
前記第一トーションバネ31の両端には、第一接続孔311及び第二接続孔312が設けられており、前記第一接続孔311と第二接続孔312との間に、直径が同じで等間隔で並んでいる少なくとも4つのループ部313を有している。
【0017】
前記第二トーションバネ32の両端には、それぞれ第一接続孔321及び第二接続孔322が設けられており、前記第一接続孔321と第二接続孔322との間に、直径が同じで等間隔で並んでいる少なくとも4つのループ部323を有している。
【0018】
前記ループ部313と前記ループ部323とは同じ構成であって、直径がすべて3.2〜3.4mmである。
【0019】
前記第一固定ネジ33と第二固定ネジ34と第三固定ネジ35と第四固定ネジ36とは同じ構成として、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32をそれぞれベースプレート10及びスライダプレート20に固着するために用いられる。
【0020】
前記スライド機構100を組み立てる際、付勢手段30はベースプレート10とスライダプレート20との間に配設される。
【0021】
前記第一トーションバネ31の両端は、それぞれベースプレート10及びスライダプレート20に結合され、前記第一固定ネジ33が第一トーションバネ31の第一接続孔311を貫通してベースプレート部11の第一螺孔13に螺合することにより、第一トーションバネ31はベースプレートに固定されるようになっている。
【0022】
前記第三固定螺子35が第一トーションバネ31の第二接続孔312を貫通してスライダプレート部21の第三螺孔23に螺合することにより、第一トーションバネ31はスライダプレート20に固定されるようになっている。
【0023】
前記第二トーションバネ32の両端はベースプレート10及びスライダプレート30に結合され、前記第二固定ネジ34が第二トーションバネ32の第三接続孔321を貫通してベースプレート部11の第二螺孔14に螺合することにより、第二トーションバネ32はベースプレート10に固定されるようになっている。
【0024】
前記第四固定螺子36が第二トーションバネ32の第四接続孔322を貫通してスライダプレート部21の第四螺孔24に螺合することにより、第二トーションバネ32をスライダプレート20に固定されるようになっている。
【0025】
組み立てた後、スライダプレート20がベースプレート10の一端に位置するにおいて、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32が微小の変形を生成し、該二者の変形による付勢力が比較的平衡して、安定状態を維持することができる。
【0026】
図5に示されたように、スライド機構100を、複数のキーパッドが設けられる本体200と表面にディスプレイが設けられる蓋体300とを有する携帯電話1に応用している。スライダ機構100のベースプレート10は第一固定孔15により携帯電話1の本体200に固定され、スライダプレート20は第二固定孔25により携帯電話1の蓋体300に固定される。
【0027】
図4に示されたように、スライド機構100が閉状態において、スライダプレート20がベースプレート10の一端に位置され、付勢手段30が初期状態にされ、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32が微小の変形を生成し、該二者の変形による付勢力が比較的平衡して、安定状態を維持する。
【0028】
従って、蓋体300を本体200に重ね合わせた閉状態において、本体200に設けられたキーパッド201を蓋体300で覆い、蓋体300は本体200に対して静止状態となる。
【0029】
蓋体200を本体300に対して開ける際、ユーザーが蓋体300を本体200に沿ってスライドさせると、スライダプレート20をベースプレートに対してスライドさせる。それで、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32が作動し、付勢手段30が弾性変形を始め、その後、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32が圧縮し、付勢手段30が付勢力を積み重ねる。
【0030】
スライダプレート20がベースプレート10の略中央部までスライドされた際、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32の圧縮変形が最も大きく、付勢力の積み重ねも最も大きい。
【0031】
外力によって、スライドプレート20がベースプレート10の中央位置を超えた後、前記外力を解放することで付勢手段30が力を解放され、第一トーションバネ31と第二トーションバネ32とが伸ばされ、スライダプレート20がスライド方向に沿って所定位置まで速くスライディグする。
【0032】
図3及び図5に示されたように、第一トーションバネ31及び第二トーションバネ32の付勢力が比較的平衡し、安定状態を維持し、蓋体300は本体200に対して全開状態にされ、露出されたキーパッド201により携帯電話1のそれぞれの機能を使用することができる。蓋体300が開状態から閉状態になる際は、スライダプレート20のスライダ軌跡が閉状態から開状態になる軌跡が反対で、原理が同じである。
【0033】
前記第一固定螺子33と、第二固定螺子34と、第三固定螺子35と、第四固定螺子36とはそれぞれ第一螺孔13と、第二螺孔14と、第三螺孔23と、第四螺孔24とに螺合されることにより、第一トーションバネ31と第二トーションバネ32とが固定されるようになっている。該固着方式以外、例えば、第一トーションバネ及び第二トーションバネの両端にフック部を設置するにより、ベースプレート及びスライダプレートの螺孔に挿し挟む方式で固定することもできる。
【0034】
また、本発明のスライド機構は特別なデザインを採用して、付勢手段は2つのトーションバネを含んでいる。該個々のトーションバネは4つのループ部を有する簡単な機構であり、耐疲労強度が優れている。該トーションバネは小さい直径の優れた材料を採用して、疲労強度測定の結果は開閉回数が50万回にも達することができる。また、小型化で、使用寿命を延長し、そのスライド機構を備ええることで、携帯電子装置の機構が簡単で、耐疲労性が優れ、取り付けが簡易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施状態のスライド機構の組立図である。
【図2】本発明の実施状態のスライド機構の分解図である。
【図3】本発明の実施状態のスライド機構のベースプレートがスライダベースプレートに対して全開状態の示す図である。
【図4】本発明の実施状態のスライド機構のベースプレートがスライダベースプレートに対して全閉状態の示す図である。
【図5】本発明の実施状態のスライド機構を備えた携帯電子装置の全開状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
100 スライド機構
10 ベースプレート
11 ベースプレート部
12 ガイドレール
13 第一螺孔
14 第二螺孔
15 第一固定孔
20 スライドプレート
21 スライドプレート部
22 ガイド溝
23 第三螺孔
24 第四螺孔
25 第二固定孔
30 付勢装置
31 第一トーションバネ
32 第二トーションバネ
33 第一固定螺子
34 第二固定螺子
35 第三固定螺子
36 第四固定螺子
311 第一接続孔
312 第二接続孔
321 第三接続孔
322 第四接続孔
313 第一単ループ
323 第二単ループ
1 携帯電話
312 本体
300 蓋体
301 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、前記ベースプレートに対してスライド可能に係合されているスライダプレートと、を備えるスライド機構であって、
前記ベースプレートと前記スライドプレートとの間に設けられた付勢手段をさらに含み、該付勢手段は2つのトーションバネを含み、該トーションバネは1つの平面に展開された少なくとも4つのループ部を有し、該トーションバネの一端部が前記ベースプレートに取り付けられ、他端部がスライダに取り付けられていることを特徴とするスライド機構。
【請求項2】
前記2つのトーションバネの材料にはSWP−B或いはSUS301を採用し、2つのトーションバネの線径は0.45〜0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載のスライド機構。
【請求項3】
前記ループ部は一周巻回した構成であり、その直径は3.2〜3.4mmに形成されたことを特徴とする請求項1に記載のスライド機構。
【請求項4】
前記ベースプレートには螺孔が形成され、該螺孔が固定螺子に螺合されることにより2つの前記トーションバネを前記ベースプレートに固着させていることを特徴とする請求項1に記載のスライド機構。
【請求項5】
前記スライダプレートには螺孔が形成され、該螺孔が固定螺子に螺合されることにより2つの前記トーションバネを前記スライダプレートに固着させていることを特徴とする請求項1に記載のスライド機構。
【請求項6】
前記ベースプレートの両側においてガイドレールが形成され、前記スライダプレートの両側において前記ガイドレールに係合されるガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド機構。
【請求項7】
本体と、蓋体と、スライド機構と、を備える携帯電子装置にあって、
該スライド機構は、前記本体に固定されるベースプレートと、前記蓋体に固定されるスライダプレートと、該ベースプレートと該スライダプレートとの間に設けられている付勢手段とを含み、該付勢手段は2つのトーションバネを含み、該トーションバネは1つの平面に展開された少なくとも4つのループ部を有し、該トーションバネの一端部がベースプレートに取り付けられ、他端部がスライダに取り付けられていることを特徴とするスライド機構。
【請求項8】
前記2つのトーションバネの材料にはSWP−B或いはSUS301を採用し、2つのトーションバネの線径は0.45〜0.5mmであることを特徴とする請求項7に記載の携帯電子装置。
【請求項9】
前記ループ部は一周巻回した構成であり、直径は3.2〜3.4mmに形成されたことを特徴とする請求項7に記載の携帯電子装置。
【請求項10】
前記ベースプレートには螺孔が形成され、該螺孔が固定螺子に螺合されることにより2つの前記トーションバネをベースプレートに固着させていることを特徴とする請求項7に記載の携帯電子装置。
【請求項11】
前記スライダプレートには螺孔が形成され、該螺孔が固定螺子に螺合されることにより2つの前記トーションバネをスライダプレートに固着させることを特徴とする請求項7に記載の携帯電子装置。
【請求項12】
前記ベースプレートの両側においてガイドレールが形成され、前記スライダプレートの両側において前記ガイドレールに係合されるガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の携帯電子装置。
【請求項13】
前記ベースプレートと前記スライダプレートとにそれぞれ固定部が設けられ、該ベースプレート及びスライダプレートは、それぞれ前記固定部を介して対応する本体及び蓋体に係合していることを特徴とする請求項7に記載に携帯電子装置。
【請求項14】
前記固定部は固定孔であり、該固定孔はそれぞれベースプレートの四隅の近く及びスライダプレートの四隅の近くに設けてあることを特徴とする請求項7に記載の携帯電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154197(P2008−154197A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147339(P2007−147339)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(505177003)深▲セン▼富泰宏精密工業有限公司 (138)
【出願人】(506422788)スーテック・トレーディング・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】