説明

スラグ処理方法

【課題】精錬工程等で生じたスラグを、風砕スラグのような球形状とすることなく、粉化や水和膨張を生じにくい性状に改質する。
【解決手段】赤熱状態であって且つ板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付け、スラグ成分の一部を酸化させる改質処理を施す。赤熱状態であって且つ比表面積が大きい形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付けることで、スラグ中の鉄分やFeOが酸化されてフェライト相に改質され、これがスラグ中のカルシウムと結合してカルシウムフェライトが生成されることで、粉化原因となるダイカルシウムシリケート相の生成が抑制されるとともに、カルシウムフェライトなどの生成を通じて遊離CaOの量も少なくなるので、粉化や水和膨張が生じにくいスラグを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製造プロセスなどで発生するスラグを改質処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造プロセス等をはじめとする種々のプロセスの溶解工程や精錬工程でスラグが生成する。例えば、鉄鋼製造プロセスで生成する代表的なスラグとして、高炉スラグ、製鋼スラグ、溶融還元スラグ(鉄鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石、Mn鉱石、ダストスラッジ等の溶融還元スラグ)などがあり、その他にも、製鉄以外の金属製錬炉や精錬炉から発生するスラグ、ごみ焼却灰溶融スラグ、廃棄物ガス化溶融スラグなどがある。
ところで、製鋼工程では、石灰を使用して精錬を行うため、発生するスラグはCaOを含有しており、このスラグ中のCaOは、粉化原因となるダイカルシウムシリケート相を形成しやすい。また、塩基度(CaO/SiO)の高い製鋼スラグは、CaOの一部が遊離CaOとして存在し、この遊離CaOが水と接触して水和膨張を起こすという問題がある。
【0003】
このような遊離CaOの水和膨張を防ぐために、従来では、精錬工程で生じた製鋼スラグを散水冷却等によって一旦固化させた後、蒸気エージング等のエージング処理を施している。
遊離CaOの水和膨張を防ぐための蒸気エージングは、通常1〜2m程度の高さに積んだスラグの下層から、常圧で100℃の水蒸気を吹き、スラグの温度を100℃にして処理を行う。
また、オートクレーブ法で5kgf/cm、150℃程度の加圧蒸気を用いて2時間程度でエージングを行う方法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来一般に行われている蒸気エージングでは、塩基度が3以上の製鋼スラグのエージング処理に3日間以上かかり、蒸気原単位も大きい。一方、オートクレーブ方式では、短時間で処理できるものの、圧力の高い蒸気を使用するため、その蒸気製造にエネルギーが必要となり、費用がかかる問題がある。また、これらのエージング処理は、遊離CaOによる膨張抑制には効果があるが、粉化原因となるダイカルシウムシリケート相の生成を抑制できるものではない。
また、溶融スラグを風砕して冷却固化させる方法が知られており、この方法によれば、スラグ中の鉄分やFeOが空気で酸化されてフェライト相となり、これとCaOによりカルシウムフェライトが生成するため、粉化や水和膨張を生じにくいスラグを得ることができる。しかし、この風砕スラグは、スラグ粒子が真球に近い球形状で安息角がきわめて小さいため、ヤードでの保存やトラック等での搬送に支障があり、このため利用が大幅に制限される。
【0005】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、溶解工程や精錬工程等で生じたスラグを、風砕スラグのような球形状とすることなく、粉化や水和膨張を生じにくい性状に改質することができるスラグ処理方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、さらにスラグ顕熱を効率的に回収できるスラグ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]赤熱状態であって且つ板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付け、スラグ成分の一部を酸化させる改質処理を施すことを特徴とするスラグ処理方法。
[2]上記[1]のスラグ処理方法において、酸化性ガスが、酸素、二酸化炭素および水蒸気の中から選ばれる1種以上を含むガス、酸素、二酸化炭素のいずれかであることを特徴とするスラグ処理方法。
【0007】
[3]上記[1]または[2]のいずれかのスラグ処理方法において、スラグとの接触により昇温した酸化性ガスまたは/および冷媒を、熱源用流体として回収することを特徴とするスラグ処理方法。
[4]溶融状態のスラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融状態のスラグを冷却処理し、該冷却処理後の赤熱状態のスラグに対して、上記[1]〜[3]のいずれかの処理を行うことを特徴とするスラグ処理方法。
[5] 溶融状態のスラグを回転する1対の冷却ドラムで圧延しつつ冷却し、板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融状態のスラグを冷却処理し、該冷却処理後の赤熱状態のスラグに対して、上記[1]〜[3]のいずれかの処理を行うことを特徴とするスラグ処理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスラグ処理方法によれば、赤熱状態であって且つ比表面積が大きい形態(板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態)にされたスラグに酸化性ガスを吹き付けることで、スラグ中の鉄分やFeOが酸化されてフェライト相に改質され、これがスラグ中のカルシウムと結合してカルシウムフェライトが生成されることで、粉化原因となるダイカルシウムシリケート相の生成が抑制されるとともに、カルシウムフェライトなどの生成を通じて遊離CaOの量も少なくなるので、粉化や水和膨張が生じにくいスラグを得ることができる。
【0009】
また、酸化性ガスの吹き付けによりスラグを粒状化する場合には、スラグが溶融状態ではないため、ガスを高速でスラグに衝突させても、風砕スラグのようにスラグ粒子が球状化することがなく、安息角が大きい粒状スラグを得ることができる。一方において、酸化性ガスの高速吹き付けにより大きな冷却作用が得られ、スラグは徐冷ではなく急冷されるため、非晶質ないし結晶化度の低いスラグ粒子とすることができる。
また、改質処理後のスラグを、さらに冷媒と接触させて冷却することにより、ダイカルシウムシリケート相や遊離CaO、遊離MgOの晶出を抑制し、スラグ品質をより高めることができる。
また、高温スラグとの接触により昇温した酸化性ガスや冷媒などを、熱源用流体として回収することができるため、スラグ顕熱を効率的に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のスラグ処理方法は、赤熱状態であって且つ板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付け、スラグ成分の一部を酸化させる改質処理を施すものであり、その際に、酸化性ガスの吹付け圧力によりスラグを粒状化してもよい。ここで、本発明においてスラグを粒状化するとは、粒径が数十mm程度の粗大粒とする場合も含まれる。
処理の対象となる赤熱状態のスラグは、鉄鋼製造プロセス等をはじめとする種々のプロセスの溶解工程や精錬工程で生じた際の顕熱を保有した高温状態のスラグである。赤熱状態のスラグとは、表層が凝固または半凝固状態であり、内部が溶融状態にあるようなスラグを指す。この状態をスラグ温度で言うと、一般にスラグ表面温度が700℃以上の状態である。
【0011】
また、スラグの種類に制限はなく、例えば、高炉スラグ、製鋼スラグ(例えば、転炉脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグ、電気炉スラグ、鋳造スラグなど)、溶融還元スラグ(例えば、鉄鉱石、Cr鉱石、Ni鉱石、Mn鉱石などの溶融還元により生じるスラグ)、その他の製錬炉や精錬炉から発生するスラグ、ごみ焼却灰溶融スラグ、廃棄物ガス化溶融スラグなど、種々のスラグを対象とすることができる。これらのなかでも、製鋼スラグはダイカルシウムシリケート相による粉化や、遊離CaO、遊離MgOによる水和膨張を生じやすいので、処理対象として特に好適である。
【0012】
板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付けるのは、スラグの比表面積を大きくした状態で酸化性ガスを吹き付けた方が、酸化性ガスとスラグ成分との反応を促進できるので、より効率的な改質処理を行うことができるからである。
通常、スラグに吹き付ける酸化性ガスとしては、酸素、二酸化炭素および水蒸気の中から選ばれる1種以上を含むガス、酸素、二酸化炭素のいずれかを用いる。具体的には、例えば、空気、酸素富化空気、酸素、二酸化炭素、二酸化炭素含有ガス、水蒸気含有ガスなどの1種以上を用いることができる。本発明では処理対象が高温状態のスラグであるため、二酸化炭素(CO)や水蒸気(HO)を含むガスを用いても、上述したようなスラグの改質作用(酸化作用)が得られる。また、二酸化炭素は、スラグ温度が低下してきた段階で遊離CaOや遊離MgOを炭酸化させることにより、また、水蒸気は遊離CaOや遊離MgOを水酸化物に改質することにより、遊離CaOや遊離MgOを低減させる効果も得られる。
【0013】
さらに、二酸化炭素や水蒸気が金属鉄や酸化鉄に作用すると、下記反応(但し、FeO1.5=1/2・Fe)により可燃性ガスであるCOやHが生成し、
Fe+1/2・O→FeO
Fe+CO→FeO+CO
Fe+HO→FeO+H
FeO+1/4・O→FeO1.5
FeO+1/4・CO→FeO1.5+1/2・CO
FeO+1/2・HO→FeO1.5+1/2・H
これらのガス成分が排出ガス中に含まれることになる。これらのガス成分は周囲の空気で酸化・発熱するので、酸化性ガスから熱回収する場合に、回収熱量を増大させることができる。
また、予熱された酸化性ガスを用いることにより、改質反応をさらに促進させることができる。
【0014】
赤熱状態のスラグに酸化性ガスを吹き付ける方法としては、例えば、溶融スラグをヤードに放流して冷却することにより、或いは適宜な冷却装置で冷却処理することにより赤熱状態とし、この赤熱状態のスラグに対して吹付ノズルなどから酸化性ガスを吹き付ければよい。
また、酸化性ガスを吹き付けることによりスラグを粒状化させるには、例えば、図1の実施形態に示すように、回転式の冷却ドラム11a,11bを備えたスラグ冷却処理装置13で溶融スラグSを冷却して板状等の形態の赤熱状態のスラグSxとし、このスラグSxに対して、吹付ノズル2から酸化性ガスを吹き付ければよい。これによりスラグSxは粉砕されて粒状化し、粒状スラグSyが得られる。なお、この図1の実施形態については、後に詳述する。
【0015】
また、本発明のスラグ処理方法では、上記のように改質処理したスラグをさらに水や水蒸気などの冷媒と接触させ、冷却することが好ましい。
さらに、本発明のスラグ処理方法では、スラグとの接触により昇温した酸化性ガスまたは/および冷媒を、熱源用流体として回収することが好ましく、これによりスラグ顕熱を効率的に回収でき、製鉄所等のエネルギー効率を高め且つCOガス発生量を削減することができる。回収された水蒸気等の流体は、例えば、原料・燃料・副原料・廃棄物等の乾燥・予熱用熱源、給湯機用熱源、蓄熱材への供給熱源、吸着式冷凍機の再生用熱源、炭酸ガスその他の吸着装置の吸着材再生熱源などとして利用することができる。
【0016】
また、冷媒として水や水蒸気を用いる場合、スラグとの接触により発生または昇温した水蒸気が、例えば120℃以上の過熱蒸気であれば、熱源用流体として非常に有用であるので、冷媒が接触することでそのような過熱蒸気を生じさせるような高温スラグを冷却対象とすることが好ましい。具体的には、冷却対象となるスラグは表面温度が200℃以上、望ましくは300℃以上、さらに望ましくは400℃以上であることが好ましい。冷媒として水を用いる場合には、スラグ温度が低いと廃水が出やすく、この観点からはスラグ表面温度は300℃以上、望ましくは400℃以上が好ましい。また、スラグ表面温度が400℃以上であれば、発生する水蒸気温度も高くなるので、スラグのエージング効果も期待できる。
水蒸気などを熱源用流体として回収するには、スラグの冷却処理を気密性のある処理容器内で行うことが好ましく、この処理容器から熱源用流体として水蒸気を取り出す。
【0017】
本発明のスラグ処理法では、赤熱状態であって且つ板状などの比表面積が大きい形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付けることで、スラグ中の鉄分やFeOが酸化されてフェライト相に改質され、これがスラグ中のカルシウムと結合してカルシウムフェライトが形成される。この結果、ダイカルシウムシリケート相の生成が抑制されるとともに、カルシウムフェライトなどの生成を通じて遊離CaOの量も少なくなり、粉化や膨張を生じにくいスラグとなる。
また、酸化性ガスの吹き付けによりスラグを粒状化する場合には、スラグが溶融状態ではないため、ガスを高速でスラグに衝突させても、風砕スラグのようにスラグ粒子が球状化することがなく、安息角が大きい粒状スラグを得ることができる。一方において、酸化性ガスの高速吹き付けにより大きな冷却作用が得られ、スラグは徐冷ではなく急冷されるため、非晶質ないし結晶化度の低いスラグ粒子とすることができる。
【0018】
溶融スラグを冷却して板状等の赤熱状態のスラグとするには、溶融スラグに下記(イ)または(ロ)の冷却処理を施すことが好ましい。したがって、溶融スラグに下記(イ)または(ロ)の冷却処理を施し、この冷却処理後の赤熱状態のスラグに本発明のスラグ処理を施すことが好ましい。
(イ)溶融スラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状、細片状または粒状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融スラグを冷却処理することで赤熱状態のスラグとする。
(ロ)溶融スラグを回転する1対の冷却ドラムで圧延しつつ冷却し、板状、柱状、細片状または粒状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融スラグを冷却処理することで赤熱状態のスラグとする。
【0019】
まず、上記(イ)のスラグの冷却処理法について説明する。
この冷却処理法では、例えば、水平方向で並列し、対向する外周部分が上向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラムを備えたスラグ冷却処理装置を用いる。この方式では、1対の冷却ドラムの上部外周面間に上方から溶融スラグが供給され、スラグ液溜まりが形成される。このスラグ液溜まりから、回転する冷却ドラムの表面に付着することで溶融スラグが持ち出され、この溶融スラグは冷却ドラム面に付着した状態で適度な凝固状態(例えば、半凝固状態または表層のみ凝固した状態)まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から剥離し、板状、柱状または細片状(塊状)等の赤熱状態のスラグとして回収される。
【0020】
図1は、そのようなスラグ冷却処理装置13を用いて溶融スラグを冷却することで、板状、柱状または細片状(塊状)等の赤熱状態のスラグとし、この赤熱状態のスラグに対して本発明のスラグ処理を施す場合の一実施形態を示している。
前記スラグ冷却処理装置13は、水平方向で並列し、対向する外周部分が上向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラム11a,11bを備えている。この冷却ドラム11a,11bは、駆動装置(図示せず)により上記の回転方向に回転駆動する。
【0021】
前記冷却ドラム11a,11bの内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がドラム軸の各端部に各々設けられている。また、通常は、冷却ドラム幅方向の両端側には、冷却ドラム11a,11bの上部外周面間に形成される断面V溝状の凹部(スラグ液溜まりAが形成される凹部)の両端を塞ぐための堰板(図示せず)が、冷却ドラム11a,11bの端面に接するようにして設けられる。
【0022】
前記冷却ドラム11a,11bの上方には、冷却ドラム11a,11bの上部外周面間(断面V溝状の凹部)に溶融スラグSを供給するためのタンディッシュ12が配置される。このタンディッシュ12には、スラグ鍋1から溶融スラグSが供給される。
各冷却ドラム11a,11bの側方(外側)には、冷却されて冷却ドラム面から剥離したスラグSxを受け取り、搬送するための搬送コンベア14が配置されている。冷却ドラム11a,11bの表面に付着して冷却されるスラグは、冷却ドラム面がドラム下方側に回り込み始める回転位置において自重により冷却ドラム面から剥離するので、本実施形態の搬送コンベア14は、このようして剥離するスラグSxを受けられるような高さ位置に配置されている。
【0023】
前記各搬送コンベア14の出側には、それぞれ酸化性ガスの吹き付け機構が設けられている。この各吹き付け機構は、搬送コンベア14から払い出されたスラグSxに対して、上方から酸化性ガスを吹き付けるための吹付ノズル2を有している。各吹き付け機構では、酸化性ガスが供給配管3を通じて吹付ノズル2に供給される。搬送コンベア14から払い出されたスラグSxに対して吹付ノズル2により上方から酸化性ガスが吹き付けられることにより、スラグSxは改質されるとともに、粒状化され且つ冷却され、粒状スラグSyが得られる。図において、15は粒状スラグSyを受け入れるためにバケットである。
【0024】
なお、この実施形態では、上記のように酸化性ガスがスラグSxに吹き付けられるスラグ処理部がカバー6で覆われ、このカバー6に酸化性ガスを回収するためのガス吸引管7が接続されている。このガス吸引管7には熱交換器8、集塵機9、吸引ファン10が設けられ、この吸引ファン10によりカバー6内の酸化性ガスがガス吸引管7を通じて吸引される。酸化性ガスは熱交換器8で熱媒と熱交換されることにより、スラグ顕熱が回収される。例えば、熱媒として水を用い、酸化性ガスとの熱交換により蒸気を得る。酸化性ガスは集塵機9で集塵された後、放散される。なお、図1では、片側のカバー6に関してのみ、これらの構成を図示してある。
【0025】
得られた粒状スラグSyについては、さらに、その顕熱回収を行ってもよく、この顕熱回収は、例えば、図1に示すような熱交換用の筒状処理容器16を用いて行うことができる。この筒状処理容器16は、一端側にスラグ装入部160、他端側にスラグ取出部161と蒸気取出部162を備えるとともに、一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、筒軸を中心に回転可能である。この筒状処理容器16の基本構造は、所謂ローターキルンなどの構造と同様であり、筒状処理容器16内に装入された材料(スラグ)は、長手方向で傾斜した筒状処理容器が回転することにより、容器長手方向で順次移送される。筒状処理容器16内のスラグ移送方向上流部には、冷媒供給機構163が設置されている。この冷媒供給機構163には、図示しない供給管を通じて水や蒸気などの冷媒が供給される。
なお、カバー6により回収されるキャリアガスを、粒状スラグSyとともに筒状処理容器16内に導入してもよい。
【0026】
本実施形態では、対向する外周部分が上向きに回転する冷却ドラム11a,11bの上部外周面間(断面V溝状の凹部)に、タンディッシュ12から溶融スラグSが供給され、スラグ液溜まりAが形成される。溶融スラグSは、回転する冷却ドラム11a,11bの表面に付着することでスラグ液溜まりAから持ち出される。溶融スラグSは冷却ドラム面に付着した状態で適度な凝固状態(赤熱状態)まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から自然に剥離し、この剥離したスラグSxはそのまま搬送コンベア14に受け取られ、搬送される。この搬送コンベア14から払い出されたスラグSxに対して、吹付ノズル2により上方から酸化性ガスが吹き付けられ、本発明によるスラグ処理が行われ、改質され且つ粒状化されたスラグSyが得られる。
【0027】
また、スラグ顕熱回収用の筒状処理容器16が設けられる場合には、粒状スラグSyが筒状処理容器16に装入されるとともに、この筒状処理容器16内には、冷媒供給機構163から水や水蒸気などの冷媒が供給されてスラグSyが冷却される。冷媒が水の場合にはスラグとの接触により水蒸気となる。この水蒸気と容器内を移動するスラグが熱交換することで、スラグSyがさらに冷却されるとともに、スラグSy中に未だ遊離CaOが残存している場合には水蒸気により水和反応を生じるエージング処理がなされる。この際、筒状処理容器16の回転によりスラグが撹拌されるので、水蒸気との接触が促進され、遊離CaOの水和反応が効率的に生じることになる。また、水和反応する際の体積膨張(密度の低下による体積膨張)によりスラグが砕け(崩壊する)、新しい遊離CaOがスラグ表面に露出して水蒸気と接触し、さらに水和反応が進み、スラグはさらに砕けて細粒化が進む。
【0028】
筒状処理容器16内での処理を終えたスラグSyは、スラグ取出部161から取り出されるとともに、水蒸気が蒸気取出部162から取り出され、熱源用流体として利用される。
なお、熱交換用の処理容器としては、本実施形態のような方式のものに限らず、例えば、充填層式、移動床式、流動層式など、適宜な方式のものを用いることができる。
なお、吹付ノズル2によるスラグSxに対する酸化性ガスの吹き付けは、例えば、スラグSxを搬送コンベア14から一旦バケットなどの容器に受け入れ、その後、バケット内や他の設備で行うようにしてもよい。
【0029】
また、スラグ冷却処理装置としては、図2(装置を模式的に示す正面図)に示すような冷却ドラム11a,11bの上方に堰を有する装置を用いてもよい。このスラグ冷却処理装置は、1対の冷却ドラム11a,11bの上方に各々冷却ドラム18a,18bからなる堰17を設け、これら1対の冷却ドラム11a,11bの上部外周面間と1対の冷却ドラム18a,18b(堰17)間にスラグ液溜まり部Gを形成する。前記冷却ドラム18a,18bは、下部外周面が反スラグ液溜まり部G方向に回転する回転方向を有する。各冷却ドラム18a,18bと冷却ドラム11a,11b間には、スラグ液溜まり部G内の溶融スラグSが押し出される開口19を有し、この開口19からスラグが押し出されることにより、赤熱状態のスラグSxが得られる。
【0030】
前記冷却ドラム11a,11bおよび冷却ドラム18a,18b(堰17)の幅方向の両端側には、スラグ液溜まり部Gの両端を塞ぐための堰板22が、冷却ドラム11a,11bおよび冷却ドラム18a,18bの端面に接するようにして設けられている。この堰板22は、適当な支持部材を介して装置本体(基体)に支持される。
なお、前記堰17は、冷却ドラム18a,18bではなく、固定式の壁体で構成してもよい。
【0031】
このような冷却処理装置では、1対の冷却ドラム11a,11bの上部外周面間と1対の冷却ドラム18a,18b(堰17)間にスラグ液溜まり部Gを形成することで、スラグ液溜まり部Gでの溶融スラグの滞留時間を長くできるので、溶融スラグの冷却を効果的に促進させることができ、適切に冷却された赤熱状態のスラグを開口19から押し出すことができる。また、本実施形態のように堰17を、下部外周面が反スラグ液溜まり部G方向に回転する回転方向を有する冷却ドラム18a,18bで構成することにより、溶融スラグの冷却をより効果的に促進することができ、厚肉のスラグをより安定的に得ることができる。
【0032】
また、図2に示すような冷却ドラム18a,18b(堰17)を有する冷却処理装置において、冷却ドラム18a,18bの外周面に溝を設け、柱状または細片状(塊状)の高温スラグが得られるようにしてもよい。図3および図4(装置の一部を模式的に示す正面図および側面図)は、そのような冷却処理装置の一例を示すもので、冷却ドラム18a,18bの外周面に複数の環状溝180をドラム長手方向で間隔的に形成するともに、これら環状溝180の底面をドラム周方向で凹凸状(歯車状)に構成し、冷却ドラム18a,18bの外周面を冷却ドラム11a,11bの外周面に当接させることで、環状溝180により孔型状の開口19が形成されるようにしたものである。この実施形態では、環状溝180の底面の凹部により開口19が間欠的に大きくなる。
【0033】
本実施形態では、環状溝180で形成される複数の孔型状の開口19からスラグSxが押し出される。このスラグSxは、環状溝180の底面の凹部により開口19が間欠的に大きくなるので、塊状部bが数珠状に連なるような形状で押し出される。このような形状のスラグSxは、冷却ドラム11a,11bから剥離した後、自重によって塊状に分離するか、或いは小さい外力により簡単に塊状に分離する。
なお、図4では、環状溝180の底面に形成される凹凸を省略してあるが、底面の凸部位置を仮想線で示してある。
【0034】
また、図5(装置を模式的に示す正面図)に示すように、冷却処理装置は単一の冷却ドラムを備えたものでもよい。この冷却処理装置は、冷却ドラム11と、冷却ドラム径方向の一方の側に配置される樋21を有している。この樋21は、その先端部が冷却ドラム11のドラム面110に接するか若しくは近接するように設けられ、樋21の先端部分とドラム面110とによりスラグ液溜まり部Gを形成し、冷却ドラム11の回転に伴い、スラグ液溜まり部G内の溶融スラグSがドラム面110に付着して持ち出されるようにしてある。スラグ液溜まり部Gを形成するために、樋21の先端部分は上側(水平状)に屈曲ないし湾曲した受け皿状の形態を有するとともに、樋21の先端部が下部ドラム面に接するか若しくは近接している。
【0035】
また、スラグ液溜まり部Gを形成する樋の先端部分の側壁210は、溶融スラグSを保持するために、所定の高さを有している。
前記冷却ドラム11は、駆動装置(図示せず)により、その上部ドラム面が反樋方向に回転するように回転駆動する。冷却ドラム11の内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がドラム軸の各端部に各々設けられている。なお、冷媒には一般に水(冷却水)が用いられるが、他の流体(液体または気体)を用いてもよい。
樋21の先端部は、ドラム面110に接してもよいし、小さい間隙を形成してドラム面110に近接させてもよい。後者の場合には、溶融スラグSが漏れない程度の隙間をもって近接させることが好ましいが、溶融スラグSの漏れを確実に防止するため、その間隙部分に対して樋21の下方に設けられたガス噴射手段30からパージガスを噴射することが好ましい。
【0036】
以上のような冷却処理装置を用いた溶融スラグの冷却処理では、樋21に供給された溶融スラグSはスラグ液溜まり部Gに流入し、ここで適当な時間滞留することで冷却された後、冷却ドラム11のドラム面110に付着して持ち出され、ドラム面110に付着した状態で適度な凝固状態(例えば、半凝固状態または片面若しくは両面の表層のみが凝固した状態)まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から自然に剥離し、冷却ドラム径方向の他方の側に排出される。
【0037】
以上のような単一の冷却ドラム11を有する冷却処理装置では、冷却ドラム11に溶融スラグSによる大きな落下荷重がかからないため、冷却ドラム11を損耗させることなく溶融スラグSを大量処理することができる。また、単一の冷却ドラム11のドラム面110から剥離した冷却処理済みのスラグSxが一方向に排出されるので、冷却処理済みスラグの取り扱い・後処理などが容易である。
なお、単一の冷却ドラム11を有する冷却処理装置は、適当な高さの樋21から冷却ドラム11の上部ドラム面に溶融スラグSを供給する方式、スラグ液溜まり部Gを形成することなく、溶融スラグSが樋21の先端部からドラム面110に直接供給されるようにする方式、などを適用してもよい。
【0038】
次に、上記(ロ)のスラグの冷却処理方法について説明すると、この冷却処理法では、例えば、図6(装置を模式的に示す正面図)に示すように、水平方向で間隙68を有して並列し、対向する外周部分が下向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラム60a,60bを備えた冷却処理装置を用い、1対の冷却ドラム60a,60bの上部外周面間に溶融スラグSを供給してスラグ液溜まりAを形成し、このスラグ液溜まりA内の溶融スラグまたは/およびスラグ液溜まりAに流入途中の溶融スラグSを冷却手段61で冷却するとともに、スラグ液溜まりAから間隙68内に流入する溶融スラグを1対の冷却ドラム60a,60bで冷却しつつ圧延し、少なくとも表層が凝固した赤熱状態のスラグを間隙68から下方に抜き出す。なお、本タイプの冷却処理方法において、1対の冷却ドラム60a,60bでスラグを圧延するとは、冷却ドラム60a,60bの間隙68から少なくとも表面が凝固した状態でスラグを下方に抜き出すことを指す。
【0039】
前記冷却ドラム60a,60bは、駆動装置(図示せず)により上記の回転方向に回転駆動する。前記冷却ドラム60a,60bの内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がドラム軸の各端部に各々設けられている。なお、冷媒には一般に水(冷却水)が用いられるが、他の流体(液体または気体)を用いてもよい。
【0040】
冷却ドラム幅方向の両端側には、冷却ドラム60a,60bの上部外周面間に形成される断面V溝状の凹部(スラグ液溜まりAが形成される凹部)の両端を塞ぐための堰板67が、冷却ドラム60a,60bの端面に接するようにして設けられている。この堰板67は、適当な支持部材を介して装置本体(基体)に支持される。
1対の冷却ドラム60a,60bの下方には、冷却ドラム60a,60bに冷却されつつ圧延されて間隙68から抜き出されたスラグSxを受け取り、搬送するための搬送コンベア64が配置されている。
【0041】
冷却ドラム60a,60bの上側には、スラグ液溜まりA内の溶融スラグSまたは/およびスラグ液溜まりAに流入途中の溶融スラグSを冷却するための冷却手段61が設けられている。この冷却手段61は、例えば、溶融スラグSに流体または/および粉体を供給する手段で構成することができる。
また、必要に応じて、冷却ドラム60a,60bと搬送コンベア64との間に、冷却ドラム60a,60bの間隙68から抜き出されたスラグSxを冷却するための冷却装置65を設けることができる。この冷却装置65は、例えば、スラグSxに水や空気などの冷却用流体を吹き付けるノズルなどにより構成できる。
【0042】
以上のような冷却処理装置を用いた溶融スラグの冷却処理では、対向する外周部分が下向きに回転する冷却ドラム60a,60bの上部外周面間(断面V溝状の凹部)に溶融スラグSが供給され、スラグ液溜まりAが形成される。このスラグ液溜まりA内の溶融スラグSまたは/およびスラグ液溜まりAに流入途中の溶融スラグSが冷却手段61で冷却されるとともに、スラグ液溜まりAから間隙68内に流入する溶融スラグSが1対の冷却ドラム60a,60bで冷却されつつ圧延される。この圧延により、粘性のある溶融スラグSが冷却ドラム幅方向で展伸され、効率的な冷却を行うことができる。
以上のような冷却手段61で冷却され、さらに冷却ドラム60a,60bにより冷却された溶融スラグSは、少なくとも表層が凝固した板状のスラグSxとして間隙68から下方に抜き出される。このスラグSxは、必要に応じて冷却装置65でさらに冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を模式的に示す説明図
【図2】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の他の実施形態を模式的に示す正面図
【図3】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置の他の実施形態の一部を模式的に示す正面図
【図4】図3に示す実施形態の一部を模式的に示す側面図
【図5】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の他の実施形態を模式的に示す正面図
【図6】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の他の実施形態を模式的に示す正面図
【符号の説明】
【0044】
1 スラグ鍋
2 吹付ノズル
3 供給配管
6 カバー
7 ガス吸引管
8 熱交換器
9 集塵機
10 吸引ファン
11,11a,11b 冷却ドラム
12 タンディッシュ
13 スラグ冷却処理装置
14 搬送コンベア
15 バケット
16 筒状処理容器
17 堰
18a,18b 冷却ドラム
19 開口
21 樋
22 堰板
30 ガス噴射手段
60a,60b 冷却ドラム
61 冷却手段
64 搬送コンベア
65 冷却装置
67 堰板
68 間隙
110 ドラム面
160 スラグ装入部
161 スラグ取出部
162 蒸気取出部
163 冷媒供給機構
180 環状溝
200 ドラム面
210 側壁
S 溶融スラグ
Sx スラグ
Sy 粒状スラグ
A スラグ液溜まり
G スラグ液溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤熱状態であって且つ板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態にされたスラグに酸化性ガスを吹き付け、スラグ成分の一部を酸化させる改質処理を施すことを特徴とするスラグ処理方法。
【請求項2】
酸化性ガスが、酸素、二酸化炭素および水蒸気の中から選ばれる1種以上を含むガス、酸素、二酸化炭素のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のスラグ処理方法。
【請求項3】
スラグとの接触により昇温した酸化性ガスまたは/および冷媒を、熱源用流体として回収することを特徴とする請求項1または2に記載のスラグ処理方法。
【請求項4】
溶融状態のスラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融状態のスラグを冷却処理し、該冷却処理後の赤熱状態のスラグに対して、請求項1〜3のいずれかに記載の処理を行うことを特徴とするスラグ処理方法。
【請求項5】
溶融状態のスラグを回転する1対の冷却ドラムを圧延しつつ冷却し、板状、柱状、細片状または粒状のいずれかの形態の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融状態のスラグを冷却処理し、該冷却処理後の赤熱状態のスラグに対して、請求項1〜3のいずれかに記載の処理を行うことを特徴とするスラグ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−227494(P2009−227494A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72677(P2008−72677)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】