説明

スラッシュ成形方法用の粉末状熱可塑性ポリオレフィンエラストマー組成物

本発明は、(i)オレフィンブロックコポリマー、又は(ii)実質的に線状のエチレンポリマー及び/又は線状のエチレンポリマーとプロピレンポリマーとのブレンドを含む粉末状の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー組成物に関する。前記組成物は、周囲温度で良好な粉砕及び流動特性を示す。別の実施態様において、本発明は、前記熱可塑性ポリオレフィンエラストマー粉末の製造方法及び前記粉末を使用するための用途に関する。別の実施態様において、本発明は、前記熱可塑性ポリオレフィンエラストマー組成物を、表皮材、特に自動車の内装用途、例えばインストルメントパネルなどのための表皮材にスラッシュ成形することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照の記述
本願は、引用により本明細書に援用する2009年9月18日に出願された米国仮出願第61/243,608号及び2010年5月3日に出願された米国仮出願第61/330,525号の利益を主張する。
技術分野
本発明は、オレフィンブロックコポリマー、あるいは実質的に線状のエチレンポリマー及び/又は線状エチレンポリマーとプロピレンポリマーとのブレンドを含む粉末状の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー組成物に関する。前記組成物は、周囲温度で良好な粉砕及び流動特性を示す。別の実施形態において、本発明は、前記熱可塑性ポリオレフィンエラストマー粉末の製造方法及び前記粉末を使用する用途に関する。別の実施形態において、本発明は前記熱可塑性ポリオレフィンエラストマー組成物を、表皮材、特に、例えばインストルメントパネルなどの自動車の内装用途用の表皮材にスラッシュ成形することに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品用の表皮材、例えばインストルメントパネルなどの自動車の内装品の表皮材を製造するための幾つかの方法がある。ポジ型熱成形、ネガ型熱成形、吹付ポリウレタン(PU)、及びスラッシュ成形は、かかる内装品のための表皮材を製造するために使用される4つの主要な方法である。スラッシュ成形及び吹付PUは、最も設計自由度が高く、幾つかの加工上の利点を備えている。スラッシュ成形の全体的なシステムコストは、吹付PUよりもかなり低い。
【0003】
スラッシュ成形法において、自由流動性の粉末状ポリマーを上部が開いた容器又はボックス、すなわちスラッシュボックスに入れる。成形すべき物品又は目的物の形状の加熱された金型をスラッシュボックスの上部に固定し、次に、自由流動性ポリマー粉末が熱い金型に接触して粉末が溶融し金型の上を流動するように容器を回転させる。容器を次にその元の位置に戻して、容器から金型を取り外し、金型から物品を取り外す。この方法は、鋭いエッジ部を有し、しぼ保留性に優れた複雑な形状を実現することができる。
【0004】
乗員及びドアエアバッグの導入によって、自動車の内装表皮材についての要件が、主に外観のみの基準から安全性に変化してきた。最近まで、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂が、内装表皮材として一般的に好まれていた材料であり、ポリ塩化ビニル樹脂はスラッシュ成形に理想的に適していた。しかし、PVC配合物には、経時的に可塑剤が移行又は揮発するという問題があり、そして、その結果、PVCは老化するためにPVCの物理的特性の変化と自動車の窓ガラスの曇りの両方をもたらす。PVCには、代替材料よりも重たいという問題もある(自動車の現在の設計において重要な考慮すべき事項であり、自動車の総質量を減らして自動車の燃費効率を向上させるためにより軽い材料が重視される)。さらに、PVCの硬度、貯蔵弾性率及び脆性は、周囲温度の減少とともに増加するため、低温、例えば約−40℃で、インスツルメントパネル表皮材は、エアバッグの展開によって割れることがある。
【0005】
PVCの代替物には、スラッシュ成形に求められる必要な流動特性を有するように加工することのできる熱可塑性ポリウレタン(TPU)がある。TPUは、良好な引掻き傷抵抗性及び擦傷抵抗性とPVCよりも良好な低温特性を有するが、芳香族系TPUは紫外(UV)線抵抗性が不十分である。良好な紫外線抵抗性を有するTPUを製造するために脂肪族イソシアネートを使用できるが、かなりのコストがかかる。
【0006】
ポリプロピレン(PP)とポリオレフィンゴムとのブレンド(熱可塑性ポリオレフィン(TPO)と呼ばれる)は、さらに別の代替物である。TPOは、PVCよりも良好な延性を有する。さらに、TPOは、低分子量の可塑剤を含まないために、時間が経ってもその延性を維持する。PVCよりも、TPOは、自動車内装用途において性能が良い。TPOはTPUよりも安価である。
【0007】
良好なスラッシュ成形性にとって重要な特性は、良好なしぼ外観及び良好なしぼ鮮明度の点で良好な表面の品質を達成するための粉体流である。しかしながら、従来のTPOは、スラッシュTPOの粉体流、ひいては部品の品質に悪影響を及ぼすフック及びテイルを生じうる低温(零度以下)粉砕を必要とする(米国特許第7,037,979号明細書及び米国特許出願公開第2004/0147680号明細書(両方ともそれらの全内容を本明細書に援用する)参照)。さらに、低温粉砕は、粉末TPOの製造に複雑さとコストを加える。粉砕助剤の添加を伴う周囲温度粉砕(ambient temperature pulverizing)が開示された。例えば、米国特許第4,650,126号明細書には、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、クレーなどの粉砕助剤の添加が開示されている。粉砕助剤を用いる周囲粉砕の別の例は米国特許第6,803,417号明細書に開示されている。米国特許第6,803,417号明細書には硬化を必要とする新規なシラングラフト化多成分TPO組成物が開示されているが、かなりのコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,037,979号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0147680号明細書
【特許文献3】米国特許第4,650,126号明細書
【特許文献4】米国特許第6,803,417号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、自動車製造業者などは、良好な引掻き傷抵抗性及び擦傷抵抗性、優れた低温特性、適切な硬度(例えば、ショアーA硬度)を有するとともに良好な粉体流特性及び周囲温度で粉砕される能力を有する自動車内装用途用のポリマー組成物、特にスラッシュ成形作業用のポリマー粉末を開発することを必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物はかかる組成物である。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物はスラッシュ成形方法で使用するのに非常に適する。
【0011】
一実施態様において、本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、1又は2個以上のソフトセグメントと1又は2個以上のハードセグメントを含む1又は2種以上のポリマー材料を含み、当該組成物は、スラッシュ成形による表皮材の製造を意図して粉末状であり、当該組成物は75を超えるショアーA硬度、−45℃未満のTg、及びDSCにより求めた場合に95℃を超える明瞭な溶融ピークを有する。
【0012】
別の実施形態において、本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、
(i)1又は2個以上のハードセグメントと1又は2個以上のソフトセグメントを含むオレフィンブロックコポリマーであって、以下に記載する特徴:
(i.a)約1.7〜約3.5の質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)、摂氏度単位での少なくとも1つの溶融ピーク(Tm)、及びグラム/立方センチメートル(g/cc)単位での密度(d)を有し、ここで、Tm及びdの数値は以下の関係:
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)又はT>−6553.3+13735(d)−7051.7(d)
に対応する;又は
(i.b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱(ΔH)J/g、及び最長の示差走査熱量法(DSC)ピークと最長の結晶化分析分別(CRYSTAF)ピークとの間の温度差として定義される摂氏度でのデルタ量(ΔT)によって特徴付けられ、ここで、ΔT及びΔHの数値は、下記の関係:
ゼロよりも大きくかつ130J/g以下であるΔHについて、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gよりも大きいΔHについて、ΔT≧48℃
を有し、ここで、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を使用して求められ、ポリマーの5%未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合に、CRYSTAF温度は30℃である;又は
(i.c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形されたフィルムで求められた、300%歪み及び1サイクルでの百分率単位での弾性回復率(Re)、及びグラム/立方センチメートル(g/cc)単位での密度(d)を有し、ここで、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まない場合に、下記の関係:
Re>1481−1629(d)
を満足する;又は
(i.d)TREFを使用して分別された場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上(式中、TはTREF画分のピーク溶離温度(℃単位で測定される)の数値である)のモルコモノマー含有量を有することにより特徴付けられる;又は
(i.e)25℃での貯蔵弾性率(G’(25℃))及び100℃での貯蔵弾性率(G’(100℃))を有し、ここで、G’(25℃)とG’(100℃)の比は、約1:1〜約9:1の範囲内である;又は
(i.f)TREFを使用して分別された場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、少なくとも0.5かつ約1以下のブロック指数(block index)及び約1.3よりも大きい分子量分布Mw/Mnを有することにより特徴付けられる;又は
(i.g)ゼロよりも大きくかつ約1.0以下の平均ブロック指数及び約1.3よりも大きい分子量分布Mw/Mnを有する、
のうちの1又は2以上により特徴付けられるオレフィンブロックコポリマーを含む。
【0013】
本発明の別の実施態様において、熱可塑性ポリオレフィン組成物は、
(ii)線状のエチレンポリマー、実質的に線状のエチレンポリマー、又はそれらの混合物であって、
(ii.a)約0.93グラム/cm未満の密度、
(ii.a)約3.0未満の分子量分布M/M、及び
(ii.a)30%を超える組成分布分岐指数(Composition Distribution Branch Index)、
を有するとして特徴付けられる、線状のエチレンポリマー、実質的に線状のエチレンポリマー、又はそれらの混合物と、
(iii)30%以上の結晶化度を有するプロピレンポリマー、
とのブレンドを含む。
【0014】
好ましい一実施態様において、本明細書で先に開示した熱可塑性ポリオレフィン組成物は、前記熱可塑性ポリオレフィン組成物を周囲温度で粉砕することにより得られる。
【0015】
さらに別の実施態様において、本発明は、
(a)前記組成物を、好ましくは周囲温度で、粉末に形成する工程、及び
(b)前記粉末をスラッシュ成形して表皮材にする工程、
を含む、本明細書で先に開示した上記の熱可塑性ポリオレフィン組成物を使用する表皮材の製造方法である、
【0016】
別の実施態様において、本発明は、本明細書で先に開示した熱可塑性ポリマー組成物を含むスラッシュ成形された表皮材により覆われた物品である。
【0017】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書で先に開示した熱可塑性ポリマー組成物を含むスラッシュ成形された表皮材であり、好ましくはこの表皮材はインストルメントパネル、コンソールボックス、アームレスト、ヘッドレスト、ドアトリム、リアパネル、ピラートリム、サンバイザー、トランクルームトリム、トランクリッドトリム、エアバッグカバー、シートバックル、ヘッドライナー、グローブボックス、又はステアリングホイールカバー用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、しばしばソフトセグメントと呼ばれるエラストマー成分と、しばしばハードセグメントと呼ばれる結晶性成分を含む。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、2種のポリマー材料、例えば、エラストマーポリマー(すなわち、ソフトセグメント)と結晶性ポリマー(すなわち、ハードセグメント)を含むことができる。好ましくは、本発明の熱可塑性ポリオレフィンは、その中に1又は2個以上のソフトセグメントと1又は2個以上のハードセグメントを含む単一のポリマー材料を含む。
【0019】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物の成分(i)はオレフィンブロックコポリマー(OBC)である。用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、一般的に、エチレンと、炭素原子数3以上のα−オレフィン、例えばプロピレン、又は他のC〜C20α−オレフィンとのポリマーを指す。好ましいα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−デセン、1−ドデセンであり、最も好ましくは1−オクタンである。好ましくは、エチレンは、ポリマー全体の大部分のモル分率を構成し、すなわち、エチレンは、ポリマー全体の少なくとも約50モル%を構成する。より好ましくは、エチレンは、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、又は少なくとも約80モル%を構成し、ポリマー全体の実質的な残分は、少なくとも1種の他のコモノマーを含み、当該少なくとも1種の他のコモノマーは好ましくは3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンである。多くのエチレン/オクテンコポリマーについて、好ましい組成物は、ポリマー全体の約80モルパーセントを超えるエチレン含有量と、ポリマー全体の約10〜約15モルパーセント、好ましくは約15〜約20モルパーセントのオクテン含有量を有する。
【0020】
用語「マルチブロックコポリマー」は、好ましくは線状に結合された、2個以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」とも呼ばれる)を含むポリマー、すなわち、ペンダント(pendant)様式又はグラフト様式(graft fashion)というよりも、重合したエチレン官能基について端と端とが連結された、化学的に区別される単位を含むポリマーを指す。好ましい実施態様において、これらのブロックは、ブロックに組み込まれたコモノマーの量又は種類、密度、結晶化度の量、かかる組成のポリマーに起因する結晶子サイズ、タクチシティの種類又は程度(アイソタクチック又はシンジオタクチック)、位置規則性又は位置不規則性、分岐の量(長鎖分枝又は超分枝を含む)、均質性、あるいはその他の任意の化学的もしくは物理的特性の点で異なる。マルチブロックコポリマーは、両方の多分散指数(PDI又はM/M)の特有の分布、ブロック長分布、及び/又はコポリマーを製造する特有の方法に起因するブロック数分布により特徴付けられる。より具体的には、連続法で製造された場合、ポリマーは、望ましくは約1.7〜約8、好ましくは約1.7〜約3.5、より好ましくは約1.7〜約2.5、最も好ましくは約1.8〜約2.5、又は約1.8〜約2.1のPDIを有する。回分法又は半回分法で製造された場合、ポリマーは、約1.0〜約2.9、好ましくは約1.3〜約2.5、より好ましくは約1.4〜約2.0、最も好ましくは約1.4〜約1.8のPDIを有する。「ブロック」及び「セグメント」は本明細書において互換的に使用される。
【0021】
本発明のオレフィンブロックコポリマー(i)は、α−オレフィンインターポリマー、具体的には、1又は2個以上のハードセグメントと1又は2個以上のソフトセグメントを含み、以下に記載する特徴:
(i.a)約1.7〜約3.5の質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)、摂氏度単位での少なくとも1つの融点(T)、及びグラム/立方センチメートル(g/cc)単位での密度(d)を有し、ここで、Tm及びdの数値は以下の関係:
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)又はT>−6553.3+13735(d)−7051.7(d)
に対応する;又は
(i.b)約1.7〜約3.5のM/Mを有し、融解熱(ΔH)J/g、及び最長の示差走査熱量法(DSC)ピークと最長の結晶化分析分別(CRYSTAF)ピークとの間の温度差として定義される摂氏度でのデルタ量(ΔT)によって特徴付けられ、ここで、ΔT及びΔHの数値は、下記の関係:
ゼロよりも大きくかつ130J/g以下であるΔHについて、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gよりも大きいΔHについて、ΔT≧48℃
を有し、ここで、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を使用して求められ、ポリマーの5%未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合に、CRYSTAF温度は30℃である;又は
(i.c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形されたフィルムで求められた、300%歪み及び1サイクルでの百分率単位での弾性回復率(Re)、及びグラム/立方センチメートル(g/cc)単位での密度(d)を有し、ここで、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まない場合に、下記の関係:
Re>1481−1629(d)
を満足する;又は
(i.d)TREFを使用して分別された場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上(式中、TはTREF画分のピーク溶離温度(℃単位で測定される)の数値である)のモルコモノマー含有量を有することにより特徴付けられる;又は
(i.e)25℃での貯蔵弾性率(G’(25℃))及び100℃での貯蔵弾性率(G’(100℃))を有し、ここで、G’(25℃)とG’(100℃)の比は、約1:1〜約9:1の範囲内である;又は
(i.f)TREFを使用して分別された場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、少なくとも0.5かつ約1以下のブロック指数(block index)及び約1.3よりも大きい分子量分布M/Mを有することにより特徴付けられる;又は
(i.g)ゼロよりも大きくかつ約1.0以下の平均ブロック指数及び約1.3よりも大きい分子量分布M/Mを有する、
のうちの1又は2以上により特徴付けられる。
【0022】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーを製造する方法は、例えば次の特許出願及び公報:2004年3月17日に出願された米国特許仮出願第60/553,906号;2005年3月17日に出願された米国特許仮出願第60/662,937号;2005年3月17日に出願された米国特許仮出願第60/662,939号;2005年3月17日に出願された米国特許仮出願第60/5662938号;2005年3月17日に出願されたPCT出願番号第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日に出願されたPCT出願番号第PCT/US2005/008915号;2005年3月17日に出願されたPCT出願番号第PCT/US2005/008917号;2005年9月29日に公開された国際公開第2005/090425号;2005年9月29日に公開された国際公開第2005/090426号;及び2005年9月29日に公開された国際公開第2005/090427号に開示されており、それらの内容全てを引用により本明細書に援用する。例えば、1つのかかる方法は、エチレンと、必要に応じてエチレン以外の1又は2種以上の付加重合性モノマーとを、付加重合条件下で、
(A)高いコモノマー取込み指数(comonomer incorporation index)を有する第1のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー取込み指数の90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー取込み指数を有する第2のオレフィン重合触媒、及び
(C)鎖シャトリング剤、
を組み合わせることによってもたらされる混合物又は反応生成物を含む触媒組成物に接触させることを含む。
【0023】
本発明のオレフィンブロックコポリマーを特徴付けるために、下記の試験方法を使用する。この方法は、米国特許第7,355,089号明細書及び米国特許出願公開第2006/0199930号明細書に、更に詳細に記載されている。
「標準的なCRYSTAF方法」又は結晶化分析分別を、分岐分布を決定するために使用する。CRYSTAFは、PolymerChar(スペイン国バレンシア)から市販されているCRYSTAF 200装置を使用して求められる。サンプルを、160℃の1,2,4−トリクロロベンゼン(0.66mg/mL)に1時間かけて溶解させ、95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、0.2℃/分の冷却速度で、95℃から30℃までの範囲である。ポリマー溶液濃度を測定するために、赤外検出器を使用する。累積可溶性濃度(cumulative soluble concentration)を、温度を下げながらポリマーが結晶化するまで測定する。累積プロファイルの分析導関数(analytical derivative)は、ポリマーの短鎖分岐分布を反映する。
【0024】
CRYSTAFのピーク温度及び面積は、CRYSTAFソフトウェア(バージョン2001.b、PolymerChar、スペイン国バレンシア)に含まれるピーク分析モジュールにより同定される。CRYSTAFピーク確認の常套手段は、dW/dT曲線における極大点としてピーク温度を同定し、導き出された曲線における同定されたピークの両側の最大の正の変曲点間の面積を同定するというものである。CRYSTAF曲線を計算するために、好ましいプロセスパラメータは、70℃の温度限界、及び0.1の温度限界よりも高くかつ0.3の温度限界未満の平滑化パラメータである。
【0025】
「曲げ/割線弾性率/貯蔵弾性率(Flexural/Secant Modulus/Storage Modulus)」サンプルを、ASTM D 1928を使用して圧縮成形する。曲げ弾性率及び2%割線弾性率は、ASTM D−790に従って求められる。貯蔵弾性率は、ASTM D 5026−01又は等価な方法により求められる。
【0026】
「メルトインデックス」又はIは、ASTM D 1238に従って、条件190℃/2.16kgで求められる。また、メルトインデックス又はI10は、ASTM D1238に従って、条件190℃/10kgで求められる。比較のための有用な値は、比I10/Iである。
【0027】
「DSC標準方法」又は示差走査熱量測定法の結果は、RCS冷却アクセサリー及びオートサンプラーを取り付けたTAIモデルQ1000 DSCを使用して求められる。50ml/分の窒素パージガス流を使用する。サンプルをプレスして薄いフィルムにし、プレス内で約175℃で溶融させ、次に、室温(25℃)まで空気冷却する。次に、3〜10mgの材料を、直径6mmの円板に切断し、正確に秤量し、軽アルミニウムパン(約50mg)内に置き、次に閉じ込める。サンプルの熱挙動を、下記の温度プロファイルで調べる。サンプルを、180℃まで急速に加熱し、等温で3分間保持して、以前の熱履歴を除去する。次に、このサンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40℃で3分間保持する。次に、このサンプルを、10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。冷却及び第2の加熱曲線を記録する。
【0028】
DSC溶融ピークを、−30℃と溶融の終端との間で描かれた直線基線に対して、熱流速(W/g)における最大値として求める。融解熱は、直線基線を使用して、−30℃と溶融の終端との間の溶融曲線の下方の面積として求める。
【0029】
DSCの較正は、下記のようにして行う。最初に、アルミニウムDSCパンの中に如何なるサンプルも入れないで、−90℃からDSCを稼働させることによって、基線を得る。次に、7ミリグラムの新しいインジウムサンプルを、サンプルを180℃まで加熱し、このサンプルを10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、続いてサンプルを140℃で1分間等温に保ち、続いてサンプルを、10℃/分の加熱速度で140℃から180℃まで加熱することによって解析する。インジウムサンプルの融解熱(ΔH)及び溶融の開始を決定し、溶融の開始について156.6℃から0.5℃以内であること及び融解について28.71J/gから0.5J/g以内であることをチェックする。次に、脱イオン水を、DSCパン内で新しいサンプルの小さい1滴を10℃/分の冷却速度で25℃から−30℃まで冷却することによって解析する。このサンプルを、−30℃で2分間等温に保ち、10℃/分の加熱速度で30℃まで加熱する。溶融の開始を決定し、0℃から0.5℃以内であることをチェックする。
【0030】
2回目の走査で観測された融解熱(ΔHobserved)を記録する。この観測された融解熱は、以下の式:
【0031】
【数1】

【0032】
によって、OBC試料の質量に基づく質量%単位での結晶化度に関係付けられる。ここで、B. Wunderlich, Macromolecular Physics, Volume 3, Crystal Melting, Academic Press, New Your, 1980に報告されているように、アイソタクチックポリプロピレンについての融解熱(ΔHtheoritical PE)はポリマー1g当り292Jである。
【0033】
「GPC方法」は、分子量決定のためのゲル浸透クロマトグラフィーである。このシステムは、Polymer LaboratoriesモデルPL−210又はPolymer LaboratoriesモデルPL−220装置で構成される。カラム及びカルーセルコンパートメントは、140℃で操作する。3本のPolymer Laboratories 10ミクロンMixed−Bカラムを使用する。溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼンである。サンプルは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する溶媒50ml中0.1gのポリマーの濃度で調製する。サンプルは、160℃で2時間、軽く撹拌することによって調製する。使用する注入体積は100μlであり、流量は1.0ml/分である。
【0034】
GPCカラム設定の較正は、個々の分子量の間の少なくとも10個の分離を有する、6個の「カクテル」混合物中に配置された、580〜8,400,000の範囲内の分子量を有する21種の狭い分子量分布ポリスチレン標準物質で実施する。この標準物質は、Polymer Laboratories(英国シュロプシャー(Shropshire))から購入した。このポリスチレン標準物質は、1,000,000以上の分子量の場合に、溶媒50ml中0.025gで、そして1,000,000未満の分子量の場合に、溶媒50ml中0.05gで調製する。ポリスチレン標準物質を、80℃で、ゆっくり撹拌しながら30分間かけて溶解させる。狭い標準物質混合物を最初に通し、そして分解を最低限に抑えるために分子量の最も高い成分から順に通す。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載されているとおりの)次式:Mポリエチレン=0.431(Mポリスチレン
を使用して、ポリエチレン分子量に転換する。
【0035】
ポリエチレン換算分子量計算は、Viscotek TriSECソフトウェア・バージョン3.0を使用して実施される。
【0036】
「密度」測定サンプルは、ASTM D 1928に従って調製される。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、サンプルプレスの1時間以内に行う。
【0037】
「ATREF」は、分析的温度上昇溶離分別分析であり、米国特許第4,798,081号明細書及びWilde, L., Ryle, T.R., Knobeloch, D.C., Peat, I.R.; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers,J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)(それらの全内容を引用により本明細書に援用する)に記載されている方法に従って実施される。分析すべき組成物を、トリクロロベンゼン中に溶解させ、不活性担体(ステンレススチールショット)を含有するカラム内で、温度を20℃まで0.1℃/分の冷却速度でゆっくり下げることにより結晶化させる。このカラムには赤外検出器が取り付けられる。次に、溶離溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を20℃から120℃まで1.5℃/分の速度でゆっくり上昇させることによりカラムから結晶化したポリマーサンプルを溶離させることによって、ATREFクロマトグラム曲線を生じさせる。
【0038】
13C NMR分析」サンプルは、テトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約3gを、10mmのNMRチューブ内のサンプル0.4gに加えることによって調製する。チューブ及びその内容物を150℃に加熱することによりサンプルを溶解させ均質化する。JEOL Eclipse(登録商標)400MHz分光計又はVarian Unity Plus(登録商標)400MHz分光計を使用して、100.5MHzの13C共鳴周波数に相当するデータを集める。データを、6秒間のパルス反復遅延で4000トランジェント/データファイルを使用して得る。定量分析のために最小の信号対ノイズを達成するために、多重データファイルを一緒に加える。スペクトル幅は、32Kデータポイントの最小ファイルサイズで25,000Hzである。サンプルを、130℃で10mmブロードバンドプローブで分析する。コモノマーの取込みは、Randallのトリアド方法(triad method)(Randall, J.C., JMC-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317 (1989))(その全内容を引用により本明細書に援用する)を使用して求められる。
【0039】
「機械的特性−引張、ヒステリシス及び引裂」、一軸張力での応力−歪み挙動は、ASTM D 1708微小引張試験片を使用して求められる。サンプルを、インストロンにより、21℃で、500%分−1で延伸する。引張強度及び破断点伸びを、5個の試験片の平均をとり報告する。
【0040】
100%及び300%ヒステリシスは、Instron(登録商標)装置によりASTM D 1708微小引張試験片を用いて100%歪み及び300%歪みに対するサイクル荷重から決定する。サンプルに、21℃で3サイクル、267%分−1で荷重を負荷及び除荷する。300%及び80℃でのサイクル実験を、環境チャンバを使用して行う。80℃での実験では、試験の前にサンプルを試験温度で45分間平衡させる。21℃、300%歪みのサイクル実験において、最初の除荷サイクルからの150%歪みでの収縮応力を記録する。全ての実験についての回復率(%)を、荷重がベースラインに戻る時点の歪みを用いて最初の除荷サイクルから算出する。回復率(%)は、次の通り定義される:
【0041】
【数2】

【0042】
(式中、εは、サイクル荷重の間に受けた歪みであり、εは、最初の除荷サイクルの間に荷重がベースラインに戻ったときの歪みである。)
【0043】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーの「ブロック指数」は、ゼロより大きくかつ約1.0以下である平均ブロック指数(ABI)及び約1.3より大きい分子量分布M/Mにより特徴付けられる。ABIは、20℃から110℃まで5℃の増分(とはいえ他の温度増分、例えば1℃、2℃、10℃を使用することもできる)で予備的なTREF(preparative TREF)(すなわち昇温溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation)によるポリマーの分別)で得られたポリマー画分のそれぞれについてのブロック指数(「BI」)の質量平均:
【0044】
【数3】

【0045】
(式中、BIは、予備的なTREFで得られた本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーのi番目の画分についてのブロック指数であり、wは、i番目の画分の質量百分率である)である。同様に、平均値を中心とする2次モーメントの平方根(以下、2次モーメント質量平均ブロック指数と呼ぶ)を、次のように定義することができる。
【0046】
【数4】

【0047】
式中、Nはゼロより大きいBIを有する画分の数として定義される。BIは、以下の2つの方程式(両方とも同じBI値を与える)のうちの一方により定義される:
【0048】
【数5】

【0049】
式中、Tはi番目の画分についてのATREF(すなわち分析的(analytical)TREF)溶離温度(好ましくはケルビン単位で表される)であり、Pは、i番目の画分についてのエチレンモル分率であり、後述するようにNMR又はIRによって求めることができる。PABは、エチレン/α−オレフィンインターポリマー全体(分別前)のエチレンモル分率であり、これもNMR又はIRによって求めることができる。T及びPは、純粋な「ハードセグメント」(インターポリマーの結晶質セグメントを指す)についてのATREF溶離温度及びエチレンモル分率である。近似として又は「ハードセグメント」組成物の不明なポリマーについて、T及びP値は、高密度ポリエチレンホモポリマーの値に設定される。
【0050】
ABは、本発明のコポリマーと同じ組成(エチレンモル分率PABを有する)及び分子量のランダムコポリマーのATREF溶離温度である。TABは、エチレンのモル分率(NMRにより測定)から次の式を用いて算出することができる:
【0051】
【数6】

【0052】
(式中、α及びβは、2つの定数であり、これらは、広い組成のランダムコポリマーの十分特徴付けられた予備的なTREF画分及び/又は狭い組成分布の十分特徴付けられたランダムエチレンコポリマーをいくつか用いる較正により求めることができる)。注目すべきは、α及びβが機器によって異なることがあり得ることである。さらに、検量線を作成するために用いる予備的なTREF画分及び/又はランダムコポリマーに適切な分子量範囲及びコモノマー種を使用して、対象のポリマー組成物に対して適切な検量線を作成する必要があり得る。わずかな分子量効果がある。検量線がよく似た分子量範囲から得られる場合、そのような効果は基本的に無視してよい。ランダムエチレンコポリマー及び/又はランダムコポリマーの予備的TREF画分は、次の関係を満たす:
【0053】
【数7】

【0054】
上記の較正式は、狭い組成分布のランダムコポリマー及び/又は広い組成分布のランダムコポリマーの予備的なTREF画分について、エチレンのモル分率Pを、分析的TREF溶離温度TATREFに関係づける。TXOは、エチレンモル分率Pを有する、同じ組成(すなわち同じコモノマータイプ及び含有量)及び同じ分子量のランダムコポリマーについてのATREF温度である。TXOは、測定したPモル分率からLn PX=α/TXO+βにより算出することができる。逆に言えば、PXOは、同じ組成(すなわち、同じコモノマータイプ及び含有量)及び同じ分子量の、TのATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル分率であり、Tの測定値を用いてLn PXO=α/T+βから算出することができる。各予備的なTREF画分についてのブロック指数(BI)が得られれば、ポリマー全体の質量平均ブロック指数ABIを計算することができる。ブロック指数の決定は、引用により本明細書に援用する米国特許出願公開第2006/019930号明細書にも記載されている。
【0055】
本発明のオレフィンブロック共重合体は、0よりも大きくかつ約1.0以下、好ましくは0.15〜0.8、より好ましくは0.2〜0.7、さらに好ましくは0.4〜0.6のブロック指数(質量平均)を有する。
【0056】
本発明の組成物における成分(ii)は、1若しくは2種以上の実質的に線状のエチレンポリマー、又は1若しくは2種以上の線状のエチレンポリマー(S/LEP)、あるいはそれらの混合物を含む。実質的に線状のエチレンポリマー及び線状のエチレンポリマーの両方が知られている。実質的に線状のエチレンポリマー及びそれらの製造方法は、米国特許第5,272,236号及び米国特許第5,278,272号に詳しく記載されている。線状のエチレンポリマー及びそれらの製造方法は、米国特許第3,645,992号、米国特許第4,937,299号、米国特許第4,701,432号、米国特許第4,937,301号、米国特許第4,935,397号、米国特許第5,055,438号、欧州特許第129,368号、欧州特許第260,999号、及び国際公開第90/07526号に詳細に開示されている。
【0057】
好適なS/LEPは、25℃未満、好ましくは0℃未満、最も好ましくは−25℃未満のTを有する1又は2種以上の重合した形態のC〜C20α−オレフィンを含む。当該S/LEPが選択されるポリマーの種類の例としては、α−オレフィンのコポリマー、例えば、エチレンとプロピレンのコポリマー、エチレンと1−ブテンのコポリマー、エチレンと1−ヘキセンのコポリマー、又はエチレンと1−オクテンのコポリマー、並びにエチレンとプロピレンとジエンコモノマー、例えばヘキサジエン若しくはエチリデンノルボルネンなどとのターポリマーが挙げられる。
【0058】
本明細書において「線状のエチレンポリマー」は、エチレンのホモポリマー、あるいは、線状の主鎖(すなわち、架橋なし)を有し、長鎖分岐がなく、狭い分子量分布を有し、そして、α−オレフィンコポリマーの場合には狭い組成分布を有する、エチレンと1又は2種以上のα−オレフィンコモノマーとのコポリマーを意味する。さらに、本明細書において、「実質的に線状のエチレンポリマー」は、エチレンのホモポリマー、あるいは、線状の主鎖を有し、特定の限られた量の長鎖分岐を有し、狭い分子量分布を有し、そして、α−オレフィンコポリマーの場合には狭い組成分布を有する、エチレンと1又は2種以上のα−オレフィンコモノマーとのコポリマーを意味する。
【0059】
線状のコポリマーにおける短鎖分岐は、意図的に加えられたC〜C20α−オレフィンコモノマーの重合によりもたらされたペンダントアルキル基に起因する。狭い組成分布は、しばしば、均一な短鎖分岐とも呼ばれる。狭い組成分布及び均一な短鎖分岐は、α−オレフィンコモノマーが、エチレンとα−オレフィンコモノマーとの所与のコポリマー中にランダムに分布しており、コポリマー分子の全てが見掛け上同じエチレン対コモノマー比を有することを意味する。組成分布の狭さは、組成分布分岐指数(Composition Distribution Branch Index)(CDBI)の値により示され、時には、短鎖分岐分布指数(Short Chain Branch Distribution Index)とも呼ばれる。CDBIは、メジアンモルコモノマー含有量の50%以内のコモノマー含有量を有するポリマー分子の質量として定義される。CDBIは、例えば、Wild, Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition, Volume 20, page 441 (1982)又は米国特許第4,798,081号明細書に記載されているような温度上昇溶離分別を使用することにより容易に計算される。本発明における実質的に線状のエチレンコポリマー及び線状のエチレンコポリマーについてのCDBIは、約30%より大きく、好ましくは約50%より大きく、より好ましくは約90%より大きい。
【0060】
実質的に線状のエチレンポリマーにおける長鎖分岐は、短鎖分岐以外のポリマー分岐である。典型的には、長鎖分岐は、成長しているポリマー鎖におけるβ−水素化物脱離を介してオリゴマーα−オレフィンの現場生成によって形成される。得られる化学種は、重合によって大きなペンダントアルキル基を生じる比較的高分子量のビニル末端炭化水素である。長鎖分岐は、さらに、炭素数でnから2を引いた数(「n−2」)よりも多い鎖長を有する、ポリマー主鎖への炭化水素分岐と定義することもできる。ここで、nは反応器に意図的に加えられた最も大きなα−オレフィンコモノマーの炭素数である。エチレンのホモポリマー、又はエチレンと1又は2種以上のC〜C20のα−オレフィンコモノマーとのコポリマーにおける好ましい長鎖分岐は、炭素数が少なくとも20で、より好ましくはその分岐がぶら下がっているポリマー主鎖中の炭素の数以下である。長鎖分岐は、13C核磁気共鳴法だけを使用して、又は13C核磁気共鳴法とゲル透過クロマトグラフィー・レーザー光散乱(GPC−LALS)とを使用して、あるいは類似の分析法を使用して識別することができる。実質的に線状のエチレンポリマーは、炭素1000個につき少なくとも0.01個の長鎖分岐、好ましくは炭素1000個につき0.05個の長鎖分岐を含む。一般的に、実質的に線状のエチレンポリマーは、炭素1000個につき3個以下の長鎖分岐、好ましくは炭素1000個につき1個以下の長鎖分岐を含む。
【0061】
好ましい実質的に線状のエチレンポリマーは、プロセス条件下で高分子量α−オレフィンコポリマーを容易に重合することができるメタロセン系触媒を使用することにより製造される。本明細書において、コポリマーとは2又は3種以上の意図的に加えられたコモノマーのポリマーを意味し、例えば、エチレンを少なくとも1種の他のC〜C20コモノマーと重合させることにより製造されたものを意味する。好ましい線状のエチレンポリマーは、例えば、反応器に意図的に加えられたモノマー以外のモノマーの重合を許さない条件下で、メタロセン又はバナジウム系触媒を使用して、同様の方法で製造することができる。実質的に線状のエチレンポリマー又は線状エチレンポリマーの他の基本的な特徴としては、低い残留物含有量(すなわち、ポリマーを製造するために使用された触媒、未反応のコモノマー及び重合中に生成した低分子量オリゴマーの濃度が低い)、及び分子量分布が従来のオレフィンポリマーに比べて狭くても良好な加工性を提供する制御された分子構造が挙げられる。
【0062】
本発明の実施に使用される実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーとしては、実質的に線状のエチレンホモポリマー又は線状のエチレンホモポリマーが挙げられるが、好ましくは、実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーは、約50〜約95質量%のエチレンと、約5〜約50質量%、好ましくは約10〜約25質量%の少なくとも1種のα−オレフィンコモノマーを含む。実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマー中のコモノマー含有量は、一般的に、反応器に加えられる量を基準として計算され、ASTM D−2238の方法Bに従って赤外分光法を使用して求めることができる。典型的には、実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーは、エチレンと1又は2種以上のC〜C20のα−オレフィンとのコポリマー、好ましくはエチレンと1又は2種以上のC〜C10のα−オレフィンコモノマーとのコポリマー、より好ましくは、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンタン及び1−オクテンからなる群から選ばれる1又は2種以上のコモノマーとのコポリマーである。最も好ましくは、コポリマーは、エチレンと1−オクテンのコポリマーである。
【0063】
これらの実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーの密度は、1立方センチメートル当たり0.850グラム(g/cm)以上、好ましくは0.860g/cm以上である。一般的に、これらの実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーの密度は、約0.93g/cm以下であり、好ましくは約0.900g/cm以下である。I10/Iとして求められる実質的に線状のエチレンポリマーのメルトフロー比は、約5.63以上であり、好ましくは約6.5〜約15であり、より好ましくは約7〜約10である。Iは、ASTM記号D 1238に従って、190℃及び質量2.16キログラム(kg)の条件を使用して測定される。I10は、ASTM記号D 1238に従って、190℃及び質量10.0kgの条件を使用して測定される。
【0064】
実質的に線状のエチレンポリマーの分子量分布(M/M)は、質量平均分子量(M)を数平均分子量(M)で割ったものである。MとMはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって求められる。実質的に線状のエチレンポリマーについては、I10/I比は、長鎖分岐の程度を示す。すなわち、I10/I比が大きいほど、より多くの長鎖分岐がポリマー中に存在する。好ましい実質的に線状のエチレンポリマーでは、M/Mは次式:
/M≦(I10/I)−4.63
によってI10/Iに関係づけられる。一般的に、実質的に線状のエチレンポリマーについてのM/Mは少なくとも約1.5、好ましくは少なくとも約2.0であり、そして約3.5以下、より好ましくは約3.0以下である。最も好ましい実施態様において、実質的に線状のエチレンポリマーは、単一のDSC溶融ピークによっても特徴付けられる。
【0065】
これらの実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーについての好ましいIメルトインデックスは、約0.01g/10分〜約100g/10分、より好ましくは約0.1g/10分〜約10g/10分である。
【0066】
これらの実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーについての好ましいMは、約180,000以下、好ましくは約160,000以下、より好ましくは約140,000以下、最も好ましくは約120,000以下である。これらの実質的に線状のエチレンポリマー又は線状エチレンポリマーについての好ましいMは、約40,000以上、好ましくは約50,000以上、より好ましくは約60,000以上、さらに好ましくは約70,000以上、最も好ましくは約80,000以上である。
【0067】
実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーは、本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物において、加工性と耐熱性と靱性との望ましいバランスを提供するのに十分な量で使用される。一般的に、実質的に線状のエチレンポリマー又は線状のエチレンポリマーは、全組成物の質量を基準にして、少なくとも約70質量部、好ましくは少なくとも約75質量部、より好ましくは少なくとも約80質量部の量で使用される。一般的に、実質的に線状のエチレンポリマー及び/又は線状のエチレンポリマーは、全組成物の質量を基準にして、約95質量部以下、好ましくは約90質量部以下、より好ましくは約85質量部以下の量で使用される。
【0068】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物における成分(iii)は、1又は2種以上のプロピレンポリマー、好ましくは30%以上の結晶化度を有するプロピレンポリマーである。本発明において使用するのに好適なプロピレンポリマーは文献でよく知られており、周知の方法により製造できる。一般的に、このプロピレンポリマーはアイソタクチック形態をとるが、他の形態も使用できる(例えばシンジオタクチック又はアタクチック)。本発明において使用されるプロピレンポリマーは、好ましくは、ポリプロピレンのホモポリマー、又はより好ましくはコポリマー、例えばプロピレンとα−オレフィン、好ましくはC又はC〜C20α−オレフィンのランダム又はブロックコポリマーである。α−オレフィンは本発明のプロピレンコポリマー中に、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下の量で存在する。
【0069】
プロピレンとα−オレフィンとのコポリマーを構成するためのC及びC〜C20α−オレフィンの例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、ジエチル−1−ブテン、トリメチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジメチル−1−ペンテン、メチルエチル−1−ペンテン、ジエチル−1−ヘキセン、トリメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ヘプテン、ジメチルオクテン、エチル−1−オクテン、メチル−1−ノネン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン及びビニルノルボルネンが挙げられる。ここで、アルキル分岐位置は特定されず、アルキル分岐位置は一般的にアルケンの3以上の位置にある。
【0070】
本発明のプロピレンポリマーは、種々の方法、例えば一段階又は多段階で、スラリー重合、気相重合、塊状重合、溶液重合又はこれらの組合せのような重合方法により、メタロセン触媒又はいわゆるチーグラー−ナッタ触媒(通常、チタンを含む固体遷移金属成分を含んでなるものである)を使用することによって製造することができる。特に、遷移金属/固体成分として、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分として含有する三塩化チタンの固体組成物、有機金属成分として有機アルミニウム化合物、並びに必要に応じて電子供与体からなる触媒。好ましい電子供与体は、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ケイ素原子又はホウ素原子を含有する有機化合物であり、これらの原子を含有する、ケイ素化合物、エステル化合物又はエーテル化合物が好ましい。
【0071】
ポリプロピレンは、一般的に、適切な分子量調節剤を用いて重合反応器内でプロピレンを触媒的に反応させることにより製造される。結晶形成を促進するために、反応が完了したら、核形成剤を加える。重合触媒は、高い活性を有するべきであり、また、高度に立体規則性のあるポリマーを生成することができるものであるべきである。反応温度及び圧力を適切に制御できるように、反応器系は、反応物から重合熱を除くことができるものでなくてはならない。
【0072】
種々のプロピレンポリマーの良好な検討は、Modern Plastics Encyclopedia/89、1988年10月中旬発行、第65巻、第11号、第86〜92頁(その全開示内容を引用により本明細書に援用する)中に含まれている。本発明において使用するプロピレンポリマーの分子量は、ASTM D 1238に従って、230℃及び2.16キログラム(kg)の適用荷重での、メルトフロー測定値(しばしば、メルトフローレート(MFR)又はメルトインデックス(MI)と呼ばれる)を使用して好都合に示される。メルトフローレートはポリマーの分子量に反比例する。従って、分子量がより高くなるほど、メルトフローレートがより低いが、この関係は直線的ではない。本発明において有用なプロピレンポリマーについてのメルトフローレートは、一般的に、約0.1グラム/10分(g/10分)よりも大きく、好ましくは約0.5g/10分よりも大きく、さらに好ましくは約1g/10分よりも大きく、よりいっそう好ましくは約10g/10分よりも大きい。本発明において有用なプロピレンポリマーについてのメルトフローレートは、一般的に、約200g/10分未満、好ましくは約100g/10分未満、さらに好ましくは約75g/10分未満、さらに好ましくは約50g/10分未満である。
【0073】
本発明において使用するのに好適なプロピレンポリマーの結晶化度は、プロピレンポリマーの質量を基準にして、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。本発明において使用するのに好適なプロピレンポリマーの結晶化度は、プロピレンポリマーの質量を基準にして、100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、最も好ましくは75質量%以下である。
【0074】
特に断らない限り、本発明のプロピレンポリマーの結晶化度は以下のDSC法により求められる。プロピレンポリマーの小さな試料(ミリグラムサイズ)をアルミニウムDSCパン中に密封する。試料を、毎分25センチメートル窒素パージしながら、DSCセルに入れ、約−100℃に冷却する。試料について、標準的な熱履歴は、毎分10℃で225℃まで加熱することによって確立される。次に、試料を約−100℃に冷却し、毎分10℃で225℃に再加熱する。2回目の走査で観測された融解熱(ΔH(実測))を記録する。観測された融解熱は、次式:
【0075】
【数8】

【0076】
によって、ポリプロピレン試料の質量を基準として質量%単位での結晶化度と関係づけられる。ここで、B. Wunderlich, Macromolecular Physics, Volume 3, Crystal Melting, Academic Press, New Your, 1980, p. 48に報告されているように、アイソタクチックポリプロピレンについての融解熱(ΔHtheoritical PP)はポリマー1g当り165Jである。
【0077】
本発明の一実施態様において、プロピレンポリマーはグラフト変性されていない。
【0078】
本発明の別の実施態様において、本発明のプロピレンポリマーの一部又は全てがグラフト変性されていてもよい。ポリプロピレンの好ましいグラフト変性は、少なくとも1つのエチレン性不飽和(例えば少なくとも1つの二重結合)に加えて少なくとも1つのカルボニル基(−C=O)を含みかつ上記のようなポリプロピレンにグラフトする任意の不飽和有機化合物によって達成される。少なくとも1つのカルボニル基を含む不飽和有機化合物の代表例は、カルボン酸、酸無水物、エステル及びそれらの塩(金属塩及び非金属塩の両方)である。好ましくは、有機化合物は、カルボニル基と共役したエチレン性不飽和を含む。代表的な化合物としては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルクロトン酸及び桂皮酸、並びにもしあればそれらの酸無水物、エステル及び塩誘導体が挙げられる。無水マレイン酸は、少なくとも1つのエチレン性不飽和及び少なくとも1つのカルボニル基を含む好ましい不飽和有機化合物である。
【0079】
グラフト化ポリプロピレンの不飽和有機化合物含有量は、ポリプロピレンと有機化合物の合計質量を基準にして、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも約0.1質量%、より好ましくは少なくとも約0.5質量%、最も好ましくは少なくとも約1質量%である。不飽和有機化合物含有量の最大量は都合に応じて様々な値をとり得るが、典型的には、不飽和有機化合物含有量の最大量は、ポリプロピレンと有機化合物の合計質量を基準にして、約10質量%を超えず、好ましくは5質量%を超えず、より好ましくは約2質量%を超えず、最も好ましくは約1質量%を超えない。
【0080】
プロピレンポリマーは、望ましい加工性と、剛性と靭性の良好なバランスを提供するのに十分な量で、本発明の熱可塑性ポリオレフィンポリマーにおいて使用される。一般的に、プロピレンポリマーは、全組成物の質量を基準にして、少なくとも約5質量部、好ましくは少なくとも約10質量部、より好ましくは少なくとも約15質量部の量で使用される。一般的に、プロピレンポリマーは、全組成物の質量を基準にして、約30質量部以下、好ましくは約25質量部以下、より好ましくは約20質量部以下の量で使用される。
【0081】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、0.87以上、好ましくは0.875以上、より好ましくは0.88以上、より好ましくは0.885以上、さらに好ましくは0.89以上の密度を好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、0.895グラム/cc以下の密度を有する。
【0082】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、75以上、好ましくは80以上、より好ましくは85以上、さらに好ましくは90以上のショアーA硬度を好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、95以下のショアーA硬度を好ましくは有する。
【0083】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、7以下、好ましくは6.95以下、より好ましくは6.9以下、より好ましくは6.85以下、さらに好ましくは6.8以下のI10/Iを好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、1.3以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上のM/Mを有する。
【0084】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、8以上、好ましくは9以上、より好ましくは9以上、より好ましくは10以上のコモノマーのモル%を有するコポリマーを含む。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、12.5モル%以下、より好ましくは12モル%以下、より好ましくは11.5モル%以下、最も好ましくは11モル%以下のコポリマーを含む。
【0085】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、77.5質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは72.5質量%以下、より好ましくは70質量%以下、より好ましくは67.5質量%以下のソフトセグメント含有量を好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、40質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは60質量%以下、より好ましくは65質量%以下のソフトセグメント含有量を好ましくは有する。
【0086】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下のハードセグメント含有量を好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、22.5質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは27.5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは32.5質量%以上のハードセグメント含有量を好ましくは有する。
【0087】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、0℃以下、好ましくは−25℃以下、より好ましくは−45℃以下、より好ましくは−60℃以下のガラス転移温度(T)を好ましくは有する。Tは、ポリマー物質がその物理的性質(例えば機械的強さなど)の急な変化を示す温度又は温度範囲である。Tは、上記のDSC法により求めることができる。
【0088】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、95℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上の、本明細書に開示したDSC法により求めた場合の溶融ピーク(T)を好ましくは有する。
【0089】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、40J/g以上、好ましくは50J/g以上、より好ましくは55J/g以上、より好ましくは60J/g以上、より好ましくは70J/g以上の、本明細書に開示したDSC法により求めた場合の融解熱を好ましくは有する。
【0090】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、19%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは22%以上、より好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上の、本明細書に開示したDSC法により求めた場合の結晶化度(%)を好ましくは有する。
【0091】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、15g/10分以下、好ましくは14g/10分以下、より好ましくは12g/10分以下、より好ましくは10g/10分以下のIメルトインデックス(190℃/2.16kg)を好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、0.01g/10分以上、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2.5g/10分以上、より好ましくは5g/10分以上のIメルトインデックスを好ましくは有する。
【0092】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、100g/10分以下、好ましくは90g/10分以下、より好ましくは80g/10分以下、より好ましくは75g/10分以下の、I10メルトインデックス(190℃/10kg)を好ましくは有する。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、1g/10分以上、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、より好ましくは15g/10分以上、より好ましくは20g/10分以上のI10メルトインデックスを好ましくは有する。
【0093】
必要に応じて、本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、充填剤、例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、雲母、ウォラストナイト、中空ガラスビーズ、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維又はチタン酸カリウムなどを含んでもよい。好ましい充填剤は、タルク、ウォラストナイト、クレー、単層のカチオン交換層状シリケート物質、又はそれらの混合物である。タルク、ウォラストナイト及びクレーは様々なポリマー樹脂について一般的に知られている充填剤である。例えば米国特許第5,091,461号明細書及び米国特許第3,424,703号明細書、欧州特許出願公開第639,613号明細書並びに欧州特許第391,413号明細書を参照されたい。それらには、これらの物質及びそれらのポリマー樹脂用充填剤としての適合性が概説されている。
【0094】
本発明のプロピレンポリマー組成物において、靭性と剛性の最適化された組み合わせを得るために、充填剤を使用できる。存在する場合、充填剤は、組成物の全質量を基準として、少なくとも約1質量部、好ましくは少なくとも約3質量部、より好ましくは少なくとも約5質量部、さらに好ましくは少なくとも約10質量部、最も好ましくは少なくとも約15質量部の量で用いられる。通常、組成物の全質量を基準として、約50質量部以下、好ましくは約40質量部以下、より好ましくは約30質量部以下、より好ましくは約25質量部以下、より好ましくは約20質量部以下、最も好ましくは約15質量部以下の充填剤の量を使用することが十分であることが見いだされた。
【0095】
必要に応じて、本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、さらに、上記の成分(i)、(ii)及び(iii)以外の樹脂であるさらなるポリマーを含んでよい。好ましいさらなるポリマーは、ポリエチレン、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン、ポリシクロヘキシルエタン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートなど、エチレン/スチレンインターポリマー、シンジオタクチックPP、シンジオタクチックPS、エチレン/プロピレンコポリマー(EP)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、及びそれらの混合物である。一実施態様において、さらなるポリマーは100℃を超える融点を有する結晶性ポリオレフィンである。
【0096】
存在する場合、さらなるポリマーは、熱可塑性ポリオレフィン組成物の質量を基準として、約1質量部以上、好ましくは約3質量部以上、より好ましくは約5質量部以上、最も好ましくは約7質量部以上の量で用いられる。一般的に、さらなるポリマーは、熱可塑性ポリオレフィン組成物の質量を基準として、約40質量部以下、好ましくは約20質量部以下、より好ましくは約15質量部以下、より好ましくは約10質量部以下、最も好ましくは約8質量部以下の量で使用される。
【0097】
本発明の特許請求する熱可塑性ポリオレフィン組成物は、必要に応じて、このタイプの熱可塑性ポリオレフィン組成物において通常使用される1又は2種以上の添加剤を必要に応じて含んでもよい。例えば、スリップ剤があり、好ましいスリップ剤は、飽和脂肪酸アミド又はエチレンビス(アミド)、不飽和脂肪酸アミド又はエチレンビス(アミド)、あるいはそれらの組み合わせである。他の任意の添加剤としては、発火抵抗添加剤(ignition resistant additives)、安定剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、流動促進剤、離型剤、例えばステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム)、核剤、例えば透明剤など、可塑剤、例えばパラフィン系オイル又は水素化鉱油などが挙げられるが、これらに限定されない。添加剤の好ましい例は、例えば発火抵抗添加剤、例えばハロゲン化炭化水素、ハロゲン化カーボネートオリゴマー、ハロゲン化ジグリシジルエーテル、有機リン化合物、フッ素化オレフィン、酸化アンチモン、及び芳香族硫黄の金属塩、又はこれらの混合物などであるが、これらに限定されない。さらに、熱、光及び酸素又はこれらの組み合わせにより引き起こされる分解に対してポリマーを安定化させる化合物を使用してもよい。
【0098】
使用される場合、かかる添加剤は、組成物の全質量を基準として、少なくとも約0.01質量部、好ましくは少なくとも約0.1質量部、より好ましくは少なくとも約1質量部、より好ましくは少なくとも約2質量部、最も好ましくは少なくとも約5質量部の量で存在することができる。一般的に、添加剤は、組成物の全質量を基準として、約25質量部以下、好ましくは約20質量部以下、より好ましくは約15質量部以下、より好ましくは約12質量部以下、最も好ましくは約10質量部以下の量で存在する。
【0099】
本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物の製造は当技術分野において知られている任意の適切な混合手段により実施でき、例えば個々の成分を、反応器内で調製し、粉末−粉末ブレンド又は好ましくはドライブレンドし、次に溶融混合(例えば、バンバリーミキサー、押出機、ロールミルなどを使用)することを含む。溶融ブレンドされた熱可塑性ポリオレフィン組成物を、粉末に直接変換しても、あるいは、まずペレットに小さくしてから粉砕して粉末にすることができる。
【0100】
典型的には、本発明の固体熱可塑性樹脂組成物は、バッグ、ゲイロード(gaylords)、大容量のビン(bins)、鉄道車両、及び/又はサイロからペレット又はしばしば粉末の形態で入手可能である。本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、スラッシュ成形プロセスで使用するために、好ましくは周囲温度で、粉砕、磨砕又は練磨される。磨砕は、周囲の雰囲気、例えば空気、又は不活性雰囲気、例えば窒素などのもとで行うことができる。さらに、磨砕は、周囲圧力下、正圧下、又は負圧下で行うことができる。ペレットは、それらの大容量の貯蔵庫からフィードホッパーに搬送され、磨砕装置に供給され、しばしば、このフィードは振動フィーダー等により促進される。例えばアトリッションミル、ディスクミル、ターボミル、ピンミル、竪型ミル、リンレックスミル(linlex mill)、ハンマーミル、コニカルミル、ボールミル、ロッドミル、カッティングミル、例えばワイリーミル(Wiley mill)など、パウダーグラインダーなどを使用した、当該技術分野で知られている任意の好適な粉砕装置を適用できる。これらのミルの幾つかについての適切な説明については、米国特許出願公開第2004/0147680号明細書を参照されたい。磨砕粒子、又は粉末は、サイクロン、スクリーン(screens)、シフター(sifters)、シーブ(sieves)、ロータリーゲート(rotary gates)、又はそれらの組み合わせにより大きさごとに分けられる。必要に応じて、粗すぎる材料をホッパー、フィーダー及び磨砕装置に再循環させる。粉末を、例えば最終生成物ホッパー内に集め、そして、スラッシュ成形工程に直接使用するか、又は適切な容器、例えばバッグ又は大容量のビン(bin)に入れて包装する。
【0101】
本発明の固体の熱可塑性組成物の磨砕は、内部結合力に打ち勝つことにより構造体をばらばらにする機械力への暴露下で起こる。磨砕後、固体の状態は変化し、その粒度、その平均粒度、その粒度分布及び/又はその粒子形状のうちの1又は2以上により特徴付けることができる。本発明のスラッシュ成形工程において使用するための熱可塑性組成物は、約150ミクロン〜約600ミクロン、好ましくは約200ミクロン〜約425ミクロンの粒度を有することにより好ましくは特徴付けられる。好ましくは、粒子の50質量%以上は約200ミクロン〜約425ミクロンの粒度の範囲内にあり、より好ましくは、粒子の75質量%以上は約200ミクロン〜約425ミクロンの粒度の範囲内にあり、さらに好ましくは、85質量%以上は200ミクロン〜約425ミクロンの粒度の範囲内にある。あるいは、磨砕粒子は、約200ミクロン〜約425ミクロン、より好ましくは約250ミクロン〜約350ミクロン、さらに好ましくは約275ミクロン〜約325ミクロンの質量平均粒度を有する。
【0102】
本発明の方法の成形工程はスラッシュ成形プロセスである。スラッシュボックスの開いた上部に、自由流動性粉体として本発明の熱可塑性ポリオレフィン組成物を加える。所定の温度に加熱された金型を、スラッシュボックスの上部に固定する。スラッシュボックスを、次に、必要に応じて何度も加熱された金型上に所望の厚さのフィルムが得られるのに必要な多くの回数を360度回転させ、好ましくは少なくとも1回、より好ましくは2回、3回、4回、又はそれ以上回転させる。スラッシュボックスを、時計回り方向、反時計回り方向、又はそれらの組み合わせで回転させることができる。スラッシュボックスが最後の半回転(すなわち、逆さの位置)で望ましい長さの時間、例えば5秒間、10秒間、15秒間、20秒間、25秒間、30秒間以上保持し、次に、元の位置に戻すことができる。このプロセスによって、金型上に部分的又は完全に溶融した粉末の層がもたらされる。余分な粉末を、もし存在するなら除去し、金型を必要に応じてさらに加熱して溶融を完了し、次に、金型を適切な冷却手段により冷却してフィルムを形成し、そのフィルムを金型から剥がす。
【0103】
金型は、好ましくは、約180℃〜350℃、より好ましくは約200℃〜300℃、より好ましくは240〜280℃の温度に加熱される。加熱サイクル(均一な表皮材を形成するために、金型がこの高温で保持される時間)は、好ましくは約2〜6分間である。これらの条件下で、本発明の組成物の粉末は溶融し、滑らかになり、均一な表皮材を形成する。加熱サイクルの後、金型及び均一な表皮材を冷却し、得られたフィルム又はシートを金型から取り出す。
【0104】
本発明のスラッシュ成形プロセスは、自立材料として又は積層構造体の一部として有用であるフィルム又はシートを生じる。このシートは、しぼパターンでエンボスされたものであることができる。かかるエンボスシートは、優れたしぼ保持性を有するため、人工皮革用途で、及びインストルメントパネルの表皮及び自動車用のドアスキンでの具体的な用途がある。自動車用途としては、インストルメントパネル用の表皮材及び例えばドアパネルなどの他の部位のための表皮材や、他の人工皮革カバーなどが挙げられる。シートの厚さは0.1mm〜2mmに及ぶことができる。
【0105】
一実施態様において、本発明は、本発明の組成物を含む人工皮革である。
【0106】
本発明の成形品は以下の分野で有用な製品である:(i)自動車の分野で、例えば、様々な自動車部品、例えば、内装カバー材、例えば、インストルメントパネル、コンソールボックス、アームレスト、ヘッドレスト、ドアトリム、リアパネル、ピラートリム、サンバイザー、トランクルームトリム、トランクリッドトリム、エアバッグカバー、シートバックル、ヘッドライナー、グローブボックス及びステアリングホイールカバーの内装カバー材;内装成形品、例えば、キッキングプレート及びチェンジレバーブーツ;外部部品、例えば、スポイラー、サイドモール、ナンバープレートハウジング、ミラーハウジング、エアダムスカート及び泥よけ;並びに、自動車部品の他の成形品;(ii)スポーツ用品分野で、運動靴の装飾部品、ラケットのグリップ、各種球技のスポーツ用具及び用品、自転車のサドル及びハンドルバーグリップの被覆材、オートバイ、魚釣りのルアー、ボール、及び三輪車など;(iii)住宅及び建築分野で、家具、机、椅子などの被覆材;ゲート、ドア、フェンスなどの被覆材;壁装飾材;カーテンウォールの被覆材;台所、洗面所、トイレなどの屋内床材;ベランダ、テラス、バルコニー、カーポートなどの屋外床材;カーペット、例えば、フロントドア又はエントランスマット、テーブルクロス、コースター、灰皿ドイリー;(iv)産業部品分野で、電動工具用のグリップ及びホースなど、及びそれらの被覆材;包装材;並びに(v)他の分野で、バッグ、ブリーフケース、ケース、ファイル、ポケットブック、アルバム、事務用品、カメラ本体、人形及び他の玩具、中空品、トラフィックコーン、タンクブラダー、ガスケット、ボートバンパー、医療用電球(medical bulb)、マネキン、ランプの基部(lamp base)、ブーツ、マット、発泡製品、布、グローブ、テープ、コンベヤーベルト、屋外設備のウェビング(outdoor furniture webbing)、ターポリン、テント、ウィンドウシェード、壁紙、装飾又は強化グリップ用途用のテキスタイルプリント、ツールハンドル(tool handle)、ワイヤーバスケット、ブラケットなどの金属製品のためのコーティング、並びに成形品、例えば時計バンド、絵画又は写真の外枠及びそれらの被覆材。
【実施例】
【0107】
実施例1(OBC−1)は、本発明の一実施例であり、比較例A(OBC−2)は本発明の実施例でない。
「OBC−1」は、Iメルトインデックス(190℃/2.16kg)が5g/10分であり、I10メルトインデックス(190℃/10kg)が35g/10分であり、密度が0.887g/ccであり、ハードセグメントの百分率が33であり、Tが−54℃であり、DSCにより求めた場合の溶融ピークが120℃であり、結晶化度が25%であり、融解熱が73J/gであり、ショアーA硬度が85であるエチレン−オクテンブロックコポリマーであり、
「OBC−2」は、Iメルトインデックス(190℃/2.16kg)が15g/10分であり、I10メルトインデックス(190℃/10kg)が105g/10分であり、密度が0.877g/ccであり、Tが−54℃であり、DSCにより求めた場合の溶融ピークが119℃であり、結晶化度が18%であり、ハードセグメントの百分率が22であり、融解熱が54J/gであり、ショアーA硬度が75であるエチレン−オクテンブロックコポリマーである。
【0108】
実施例1を、ディスクミルを使用して周囲温度で磨砕した。ペレットをフィードホッパーに空気搬送し、次に、振動フィーダーによりディスクミルに搬送した。この際の供給量は、ディスクミルの温度設定点に基づいて調節した。磨砕後、粉末をファンにより、マルチスクリーンシフターのトップスクリーンに粉末を向けるロータリーバルブを備えたサイクロン中に吹き入れた。粗い粉末と微細な粉末を分離し、粗い粉末をフィードホッパーに戻し、微細な粉末を厚めてバッグ又は大容量の箱に入れて包装した。約100kg毎時(kg/hr)の速度が達成された。微細な粉末は、約300ミクロンの平均粒度を有し、微細な粉末の約85質量%は200ミクロン〜450ミクロンの範囲内の粒度を有していた。
【0109】
比較例Aを周囲温度で磨砕する試みは失敗した。試みた磨砕によって、しばしば溶融(meltdown)と呼ばれる粒子の凝集が起こり、ミルに粘着した。
【0110】
磨砕後、実施例1をスラッシュ成形プロセスに使用した。実施例1の粉末を、265℃に加熱されたしぼ付シート金型を備えた30cm×45cm×30cmの粉末ボックスに入れた。金型及び粉末ボックスを次にひっくり返して約2分間保持した。このボックスを次にひっくり返して直立させ、次に、金型を粉末ボックスから取り出し、成形されたシート及び/又は金型に付着していた残留粉末を除去した。しぼ付きシートを金型から分離し、測定すると約2mmであった。組成及び材料特性試験を表1にまとめた。
「メルトインデックス」は、ASTM D 1238に従って求め、特に断らない限りIについて190℃/2.16kgの条件下で求め、グラム毎10分(g/10分)単位で報告し、I10については190℃/10kgの条件で求め、
「密度」はASTM 792に従って求め、グラム毎立方センチメートル(g/cc)単位で報告し、
「T」は上記のDSC法に従って求められたガラス転移温度であり、
「融解ピーク」は上記のDSC法に従って求め、
「結晶化度(%)」は上記のDSC法に従って求め、
「融解熱」は上記のDSC法に従って求め、
「ショアーA硬度」はASTM D 2240に従って求め、
「60°ガードナー光沢」はASTM D523に従って求め、値を%単位で報告し、
「引張破断及び伸び」はASTM D412に従って求めた。
【0111】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2個以上のソフトセグメントと1又は2個以上のハードセグメントとを含む1又は2種以上のポリマー材料を含む熱可塑性ポリオレフィン組成物であって、当該組成物は、スラッシュ成形による表皮材の製造を意図して粉末状であり、当該組成物は75を超えるショアーA硬度、−45℃未満のTg、及びDSCにより求めた場合に95℃を超える明瞭な溶融ピークを有する熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
(i)1又は2個以上のハードセグメントと1又は2個以上のソフトセグメントを含むオレフィンブロックコポリマーであって、以下に記載する特徴:
(i.a)約1.7〜約3.5の質量平均分子量/数平均分子量比(Mw/Mn)、摂氏度単位での少なくとも1つの溶融ピーク(Tm)、及びグラム/立方センチメートル(g/cc)単位での密度(d)を有し、ここで、Tm及びdの数値は以下の関係:
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)又はT>−6553.3+13735(d)−7051.7(d)
に対応する;又は
(i.b)約1.7〜約3.5のMw/Mnを有し、融解熱(ΔH)J/g、及び最長の示差走査熱量法(DSC)ピークと最長の結晶化分析分別(CRYSTAF)ピークとの間の温度差として定義される摂氏度でのデルタ量(ΔT)によって特徴付けられ、ここで、ΔT及びΔHの数値は、下記の関係:
ゼロよりも大きくかつ130J/g以下であるΔHについて、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gよりも大きいΔHについて、ΔT≧48℃
を有し、ここで、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を使用して求められ、ポリマーの5%未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合に、CRYSTAF温度は30℃である;又は
(i.c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形されたフィルムで求められた、300%歪み及び1サイクルでの百分率単位での弾性回復率(Re)、及びグラム/立方センチメートル(g/cc)単位での密度(d)を有し、ここで、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まない場合に、下記の関係:
Re>1481−1629(d)
を満足する;又は
(i.d)TREFを使用して分別された場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは量(−0.2013)T+21.07以上(式中、TはTREF画分のピーク溶離温度(℃単位で測定される)の数値である)のモルコモノマー含有量を有することにより特徴付けられる;又は
(i.e)25℃での貯蔵弾性率(G’(25℃))及び100℃での貯蔵弾性率(G’(100℃))を有し、ここで、G’(25℃)とG’(100℃)の比は、約1:1〜約9:1の範囲内である;又は
(i.f)TREFを使用して分別された場合に40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、この画分が、少なくとも0.5かつ約1以下のブロック指数及び約1.3よりも大きい分子量分布Mw/Mnを有することにより特徴付けられる;又は
(i.g)ゼロよりも大きくかつ約1.0以下の平均ブロック指数及び約1.3よりも大きい分子量分布Mw/Mnを有する、
のうちの1又は2以上により特徴付けられるオレフィンブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項3】
(ii)線状のエチレンポリマー、実質的に線状のエチレンポリマー、又はそれらの混合物であって、
(ii.a)約0.93グラム/cm未満の密度、
(ii.a)約3.0未満の分子量分布M/M、及び
(ii.a)30%を超える組成分布分岐指数、
を有するとして特徴付けられる、線状のエチレンポリマー、実質的に線状のエチレンポリマー、又はそれらの混合物と、
(iii)30%以上の結晶化度を有するプロピレンポリマー、
とのブレンドを含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリオレフィン組成物を周囲温度で粉砕することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項5】
(a)前記組成物を粉末に形成する工程、及び
(b)前記粉末をスラッシュ成形して表皮材にする工程、
を含む、請求項1に記載の組成物を使用して表皮材を製造する方法。
【請求項6】
工程(a)の前記組成物を粉末に形成する工程が周囲温度で実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を含むスラッシュ成形された表皮材。
【請求項8】
インストルメントパネル、コンソールボックス、アームレスト、ヘッドレスト、ドアトリム、リアパネル、ピラートリム、サンバイザー、トランクルームトリム、トランクリッドトリム、エアバッグカバー、シートバックル、ヘッドライナー、グローブボックス、又はステアリングホイールカバー用である、請求項7に記載のスラッシュ成形された表皮材。
【請求項9】
中空品、トラフィックコーン、タンクブラダー、ガスケット、ボートバンパー、ボール、玩具、魚釣りのルアー、医療用電球、マネキン、ランプの基部、ブーツ、マット、発泡製品、布、グローブ、テープ、コンベヤーベルト、屋外設備のウェビング、ターポリン、テント、ウィンドウシェード、壁紙、テキスタイルプリント、金属製品、ツールハンドル、ワイヤーバスケット、又はブラケット用である、請求項7に記載のスラッシュ成形された表皮材。
【請求項10】
人工皮革である請求項7に記載のスラッシュ成形された表皮材。

【公表番号】特表2013−505328(P2013−505328A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529804(P2012−529804)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048329
【国際公開番号】WO2011/034776
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】