説明

スラリー再生処理装置及び方法

【課題】多大な設置スペースを必要とせず、1台の遠心分離機のみで廃スラリーから一次分離物及び二次分離物を確実に分離でき、分離された分散媒と一次分離物を混合して再びスラリーを生成することができるスラリーの再生処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】廃スラリーを投入する遠心分離機2と、遠心分離機2から、一次分離物及び二次分離物を排出する排出口12と、排出口12と一次分離物用シュート8aを介して連通する一次分離物回収槽3と、排出口12と二次分離物用シュート8bを介して連通する二次分離物回収槽4と、分散媒又は分散媒と前記二次分離物の混合液を排水する排液口13と、排液口13と連通する分散媒回収槽5及び混合液回収槽6と、再生スラリーを生成する再生スラリー調合槽7と、排出口12に対して、一次分離物用シュート8aと二次分離物用シュート8bのいずれかに接続を切り替えるための切替手段9とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーの再生処理装置及び方法に関し、特に、ワイヤソー装置における切断加工後の廃スラリーの再生処理装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コスト削減のため、ワイヤソー装置等のスラリー使用型加工装置で用いた廃スラリーを再生利用していた。ワイヤソー装置における廃スラリーは、分散媒と、これに混入する砥粒及び切削屑で形成されている。これらの分離は、2台の遠心分離機を用いて砥粒及び切削屑をそれぞれ分散媒から分離していた。具体的には、1台目の遠心分離機に廃スラリーを投入し、1500G未満の低い遠心力で切削屑よりも比重が大きい砥粒をまず分離する。この後、前記で回収できなかった砥粒、分散媒と切削屑とからなる混合液を2台目の遠心分離機に投入し、1500G以上の高い遠心力で切削屑を分離する。この後、分散媒と砥粒を混合し、スラリーを再生していた。しかしながら、遠心分離機を2台用いることは、多大な設置スペースを必要とするので、そのスペースの確保が困難であった。
【0003】
一方、遠心分離機に投入する廃スラリー又は混合液は、一定の流量で供給することが好ましい。このため、オリフィスポットを介して遠心分離機に廃スラリー又は混合液を投入していた(例えば特許文献1参照)。オリフィスポットは、オリフィスプレートを交換することによって流量を調整する。しかしながら、スラリーの性質(温度、粘度、比重、砥粒種別、クーラント種別等)によって、最適なオリフィスプレートを選択する必要がある。この選択は、作業者の経験によるものが大きく、確実性に欠けているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−169299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、多大な設置スペースを必要とせず、1台の遠心分離機のみで廃スラリーから一次分離物及び二次分離物を確実に分離でき、分離された分散媒と一次分離物を混合して再びスラリーを生成することができるスラリーの再生処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、分散媒中に前記分離媒から分離されるべき互いに比重の異なる一次分離物及び二次分離物の少なくとも一方を含む廃スラリーが投入され、前記廃スラリーから前記一次分離物又は前記二次分離物を分離処理可能な遠心分離機と、前記遠心分離機に設けられ、前記遠心分離機から分離処理後の前記一次分離物又は前記二次分離物を排出する排出口と、該排出口に一次分離物用シュートを介して連通可能な一次分離物回収槽と、前記排出口に二次分離物用シュートを介して連通可能な二次分離物回収槽と、前記遠心分離機に設けられ、前記遠心分離機から前記廃スラリーを分離処理した後の前記分散媒又は該分散媒と前記二次分離物の混合液を排液する排液口と、該排液口に対して選択的に連通可能な分散媒回収槽及び混合液回収槽と、前記一次分離物と分散媒を混合して再生スラリーを生成する再生スラリー調合槽と、前記排出口に対して、前記一次分離物用シュートと前記二次分離物用シュートのいずれかを接続させる切替手段とを備えたことを特徴とするスラリー再生処理装置を提供する。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記廃スラリーを収容する廃スラリー収容槽と前記遠心分離機の間、及び前記混合液回収槽と前記遠心分離機の間にそれぞれ設けられ、前記廃スラリー又は前記混合液の流量を調整する可変制御式定量供給手段と、該可変制御式定量供給手段と前記遠心分離機の間に設けられた質量流量計と、前記質量流量計の計測結果に基づき、前記廃スラリー又は前記混合液の流量を一定にすべく前記可変制御式定量供給手段の作動を制御するPID制御部とを更に備えることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記廃スラリー収容槽と前記混合液回収槽、及び前記遠心分離機は、三方弁を介して接続され、前記可変制御式定量供給手段及び前記質量流量計は、前記三方弁と前記遠心分離機の間に配置されていることを特徴としている。
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれかの発明において、前記廃スラリーは、ワイヤに被加工物を押し付けて切断加工するワイヤソー装置で用いたスラリーであり、前記一次分離物は前記スラリーに混入する砥粒であり、前記二次分離物は前記被加工物の切削屑であることを特徴としている。
【0009】
さらに、請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載のスラリー再生処理装置を用いたスラリー再生処理方法であって、前記遠心分離機に前記廃スラリーを投入し、前記遠心分離機を所定の遠心力(低G)で駆動して、前記一次分離物を前記廃スラリーから遠心分離し、該遠心分離した一次分離物を前記一次分離物回収槽に回収し、前記混合液を前記混合液回収槽に回収し、該混合液回収槽から前記混合液を前記遠心分離機に投入し、前記遠心分離機を前記所定の遠心力より高い遠心力(高G)で駆動して、前記二次分離物を前記混合液から遠心分離し、該遠心分離した二次分離物を前記二次分離物回収槽に回収し、前記分散媒を前記分散媒回収槽に回収し、前記再生スラリー調合槽に、前記一次分離物回収槽に回収された前記一次分離物と、前記分散媒回収槽に回収された前記分散媒と、新しい一次分離物及び新しい分散媒とを投入し、再生スラリーを生成することを特徴とするスラリー再生処理方法を提供する。
【0010】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、前記質量流量計により前記廃スラリー又は前記混合液の実流量値を計測し、前記PID制御部にて前記実流量値と設定流量値を比較し、前記実流量値が前記設定流量値になるように、前記可変制御式定量供給手段をPID制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、第1のモータ及び第2のモータを用いて、異なる遠心力を発生させることができる。このため、1台の遠心分離機のみで比重の異なる一次分離物及び二次分離物を確実に分離して回収することができる。したがって、1台分の遠心分離機設置スペースを確保できればよく、スペース的に効率がよい。また、切替手段を用いて、分離した一次分離物又は二次分離物をそれぞれ別の回収槽に回収することができる。さらに、分散媒も別の回収槽に回収できるので、一次分離物と分散媒を混合して再生スラリーを確実に調合することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、遠心分離機に投入する廃スラリー又は混合液の供給を可変制御式定量供給手段と質量流量計のPID制御により無脈動かつ定量にすることができる。このため、人の手による流量調整が不要となり、流量の一定化を自動的に行うことができ、作業性が向上する。また、遠心分離機にて安定した回収を行うためには無脈動かつ定量に液を供給することが重要となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、廃スラリー収容槽と混合液回収槽、及び遠心分離機は、三方弁を介して接続されるので、廃スラリーと混合液が遠心分離機に投入される配管を共有することができる。したがって、ポンプや流量制御も共通して使用することができるので、部品点数を減少でき、コスト的にも効率がよい。
請求項4の発明によれば、ワイヤソー装置で用いた廃スラリーに含まれる再利用可能な砥粒を一次分離物として回収し、被加工物の切削屑を二次分離物として、別に回収できる。したがって、分散媒と砥粒を再び混合して切削用スラリーとしてワイヤソー装置に再利用できる。このため、スラリーの節約ができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、遠心分離機にて廃スラリーから一次分離物を分離し、その後同じ遠心分離機で第二分離物を分離して、これらを別の回収槽に回収する。したがって、1台の遠心分離機で2つの分離物を回収することができるので、1台分の遠心分離機設置スペースを確保できればよく、スペース的に効率がよい。
請求項6の発明によれば、廃スラリー又は混合液の実流量値をフィードバックさせて設定流量値に近づくように可変制御式定量供給手段をPID制御するので、確実に廃スラリー又は混合液を一定流量で遠心分離機に投入することができる。また、無脈動かつ定量に液を供給することで安定した遠心分離効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るスラリー再生装置の概略図である。
【図2】本発明に係るスラリー再生装置に用いられる遠心分離機の概略平面図である。
【図3】本発明に係るスラリー再生装置に用いられる遠心分離機の概略側面図である。
【図4】本発明に係るスラリー再生装置に用いられる分岐シュートと切替手段の関係を示した概略図である。
【図5】分岐シュートの概略図である。
【図6】本発明に係るスラリー再生処理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係るスラリー再生装置の概略図である。
図示したように、本発明に係るスラリー再生装置1は、遠心分離機2と、砥粒(一次分離物)回収槽3と、切削屑(二次分離物)回収槽4と、分散媒回収槽5と、混合液回収槽6と、再生スラリー調合槽7と、分岐シュート8と、切替手段9を備えている。遠心分離機2は、2台のモータ(第1のモータ10、第2のモータ11)をそれぞれ備えており、低G又は高Gと異なる遠心力を発生させることができる。
【0017】
分離対象物たる廃スラリーは、砥粒と、切削屑(スラッジ)と、分散媒(オイル)からなる。切削屑は、脆性材料のウェーハリング工程の際に、図示しない脆性材料(例えばシリコン等)をワイヤソー装置(不図示)で切断加工するときに発生する。ワイヤソー装置で使用された廃スラリーは、廃スラリー収容槽16に収容されている。一般的に砥粒は、切削屑より比重が大きい。したがって、廃スラリーに対して小さい遠心力で遠心分離すると、主に比重の大きい砥粒が分離される。この後、大きな遠心力で遠心分離すると、主に切削屑が分離される。これにより、互いに比重の異なる砥粒と切削屑を2段階に分けて1台の遠心分離機2で分離することができる。
【0018】
遠心分離機2の下側に、排出口12が備えられている。排出口12は、遠心分離された砥粒又は切削屑を落下させて排出する。この排出口12に、分岐シュート8の入口側が接続されている。分岐シュート8の出口側は、砥粒用シュート8aと、切削屑用シュート8bに途中で分岐している。切替手段9を用いて、排出口12に対する分岐シュート8の入口側開口位置を変更する。この位置を変更することにより、砥粒を砥粒用シュート8aに、切削屑を切削屑用シュート8bにそれぞれ通過させることができる。砥粒回収槽3は、砥粒用シュート8aと接続されている。切削屑回収槽4は、切削屑用シュート8bと接続されている。したがって、排出口12から排出された砥粒又は切削屑は、それぞれ砥粒用シュート8a又は切削屑用シュート8bを通って砥粒回収槽3又は切削屑回収槽4に回収される。
【0019】
分散媒回収槽5及び混合液回収槽6は、三方弁14を介して遠心分離機2の排液口13と接続されている。三方弁14は、自動式切替弁である(以下の三方弁19,22,23,26,29,30,32,37もすべて同じ)。排液口13は、遠心分離機2の下側に備えられている。一次分離で砥粒を遠心分離する際、切削屑と分散媒からなる混合液(スラッジオイル)は、排液口13から三方弁14を通って混合液回収槽6に回収される。混合液は、二次分離のため再び遠心分離機2に投入され、切削屑を遠心分離される。この後、分散媒は排液口13から三方弁14を通って分散媒回収槽5に回収される。分散媒に切削屑が残って回収された場合には、ポンプ36を駆動し、分散媒回収槽5中のオイルを三方弁19、分岐管21、三方弁22、ポンプ36、三方弁37、分岐管38、バルブ41の順に通して混合液回収槽6に戻し、再び二次分離を行う。一方、一次分離のみ実施し、二次分離をしないとき等、混合液を廃棄したいときは、ポンプ51を作動させて混合液廃棄槽52に移送する。
【0020】
再生スラリー調合槽7は、砥粒回収槽3及び分散媒回収槽5と接続されている。砥粒回収槽3には、予め新しい分散媒が収容されている。砥粒回収槽3に回収された砥粒は、ポンプ15を介して新しい分散媒とともに再生スラリー調合槽7に送られる。このような再生砥粒だけでなく、新砥粒収容槽(不図示)からも、再生スラリー調合槽7に新砥粒Sは送られる。
【0021】
分散媒回収槽5から分散媒が再生スラリー調合槽7に送られる場合、以下の流路を通る。ポンプ20が駆動することにより、分散媒回収槽5から、三方弁19、分岐管21、三方弁22、三方弁23、ポンプ20、ダンパー24、質量流量計25、三方弁26の順に通り、再生スラリー調合槽7に送られる。分岐管21には流体センサ27が備えられている。この流体センサ27は、分散媒が流れていることを検知する。
【0022】
分散媒は、分散媒回収槽5以外に新分散媒収容槽28a、28bに収容されている。この新分散媒収容槽28a,28bには、新しい分散媒が収容されている。再生スラリー調合槽7に新しい分散媒を送るときは、ポンプ20を駆動し、三方弁30を通して、三方弁19に送る。その後は、分散媒回収槽5から再生スラリー調合槽7への流路と同様である。このように、再生スラリー調合槽7に再生砥粒、再生分散媒、場合によっては新砥粒、新分散媒が送られ、これが再生スラリー調合槽7で攪拌されることにより、ワイヤソー装置に用いられる切削用スラリーとして再生される。攪拌は、モータ18の駆動とともに回転する攪拌部材17を用いて行われている。このときの再生スラリーの容量は、超音波センサ31で監視されている。超音波センサ31は、再生スラリーの液面レベルを検知する。調合槽7の大きさは予めわかっているので、液面レベルを検知することにより、再生スラリーの容量を算出できる。なお、砥粒回収槽3、分散媒回収槽5、混合液回収槽6、廃スラリー収容槽16にも、同様の攪拌部材17、モータ18、及び超音波センサ31が備えられている。また、切削屑回収槽4には、超音波センサ31が備えられている。
【0023】
廃スラリー収容槽16は、三方弁32、可変制御式定量供給手段33、質量流量計34を介して遠心分離機2と接続される。可変制御式定量供給手段33は、例えば脈動防止する機能を搭載したエア駆動又は電気駆動式のポンプである。可変制御式定量供給手段33及び質量流量計34は、PID制御部35とPLC等を用いて有線で接続される。廃スラリーは、可変制御式定量供給手段33を用いて、無脈動かつ定量で送られる。この実流量値は、質量流量計34で計測されている。この実流量値は、PID制御部35にて設定流量値と比較されている。PID制御部35において、実流量値が設定流量値になるように、可変制御式定量供給手段33が制御される。このため、廃スラリーの実流量値がフィードバックされて設定流量値に近づくように可変制御式定量供給手段33がPID制御されることになり、確実に廃スラリーを一定流量で遠心分離機2に投入することができる。このため、人の手による流量調整が不要となり、流量の一定化を自動的に行うことができ、作業性が向上する。なお、三方弁32には混合液回収槽6も接続され、混合液も同様の流量制御で遠心分離機2に送られる。したがって、廃スラリーと混合液の流量制御を同一のPID制御部35にて行うことができるので、部品点数を減少でき、コスト的にも効率がよい。
【0024】
また、このPID制御は、タッチパネル、PLCによる自動制御方式とし、操作性を向上することができる。タッチパネル、PLCを用いて、砥粒のみの回収や分散媒のみの回収等、分離モードを選択できるようにしてもよい。すなわち、後述するように、一次分離物と二次分離物を分離する、いわゆる2段分離モードや、単に砥粒(一次分離物)のみを回収する場合のような、いわゆる1段分離砥粒回収モードや、オイルのみを回収するような、いわゆる1段分離オイル回収モードを選択できるようにしてもよい。
【0025】
新分散媒は、装置の洗浄にも用いられる。洗浄に用いる場合は、ポンプ36を駆動させ、三方弁22から三方弁37に新分散媒を送り、分岐管38からバルブ41を通り、混合液回収槽6内を洗浄する。この他、混合液中の分散媒の量を増やしたいときにも利用される。分岐管39からバルブ42を通すと、遠心分離機2内を洗浄する。分岐管40からバルブ43を通すと、排出口12を洗浄するとともに、分岐シュート8も洗浄する。特にこの排出口12、分岐シュート8は砥粒がこびりつくため、分離中は定期に洗浄されている。また、切削屑は非常に粘度が高く、遠心分離機2内や分岐シュート8(切削屑用シュート8b)内に残るため、分散媒での洗浄が不可欠である。分散媒をバルブ44に通すと、廃スラリー収容槽16を洗浄する。これは、廃スラリー中の分散媒の量を増やしたいときにも利用できる。洗浄用の新分散媒が不要になったら、三方弁37から三方弁29に新分散媒を流通させ、新分散媒収容槽28a又は28bに戻される。なお、上記洗浄には、遠心分離機2にて廃スラリーから回収した再生分散媒を用いてもよい。
【0026】
図2は本発明に係るスラリー再生装置に用いられる遠心分離機の概略平面図であり、図3は概略側面図である。
上述したように、遠心分離機2には、第1のモータ10及び第2のモータ11が備わっている。45は、廃スラリー流入口であり、ここから廃スラリーが遠心分離機2内に流入する。遠心分離機2の下側には、上述しように、排出口12、排液口13が備わっている。46a、46bは、新又は再生分散媒流入口であり、新又は再生分散媒をここから流入させて遠心分離機2内を洗浄する。47は、排出口12の洗浄のための、新又は再生分散媒流入口である。
【0027】
図4は本発明に係るスラリー再生装置に用いられる分岐シュートと切替手段の関係を示した概略図である。
分岐シュート8は、4本のローラ48を備えた枠体49に囲まれて配設されている。枠体49に切替手段9が接続されている。切替手段9は、シリンダであり、軸方向(矢印R方向)に移動可能である。切替手段9の移動に伴い、ローラ48がレール50上を移動し、分岐シュート8も枠体49に押されて矢印R方向に移動する。分岐シュート8の上方に位置する遠心分離機2の排出口12(図1、図3参照)から落下してくる分離物に応じて、分岐シュート8の入口側を砥粒用シュート8a又は切削屑用シュート8bに切替える。分岐シュート8を枠体49で囲むことにより、分岐シュート8のみの修理や交換が独立して容易に行うことができ、メンテナンス性が向上する。
【0028】
図5は分岐シュートの概略図である。
図示したように、分岐シュート8は、出口側が砥粒用シュート8aと切削屑用シュート8bに分かれている。切削屑は、塊状なので、落下させて回収するように、切削屑用シュート8bは排出口12から鉛直方向に形成されている。砥粒は、若干分散媒が混じって回収されるので、多少角度があっても流れていくので、砥粒用シュート8aは斜めに形成されている。その角度θは、0°〜45°程度である。なお、砥粒用シュート8a及び切削屑用シュート8bの内面は、内側に砥粒や切削屑が付着しないように、鏡面仕上げされている。
【0029】
図6は本発明に係るスラリー再生処理方法のフローチャートである。
ステップS1:
ワイヤソー装置にて使用後の廃スラリーを廃スラリー収容槽に収容する。
ステップS2:
廃スラリーを遠心分離機に投入し、一次分離を行う。この一次分離にて、廃スラリー中の砥粒(一次分離物)のみを分離する。この一次分離は、1500G未満の低Gで遠心分離される。遠心分離機への投入は、可変制御式定量供給手段33によって無脈動かつ定量で行われる。その流量は質量流量計によって管理され、実流量値がフィードバックされ設定流量値に近づくようにPID制御部35(図1参照)にて制御される。一次分離中、適時に新分散媒等で遠心分離機内や分岐シュート(砥粒用シュート)内が洗浄される。分離された砥粒は、砥粒回収槽3(図1参照)に回収される。砥粒分離後の混合液は、混合液回収槽6に回収される。廃スラリー収容槽が空になった場合は、分散媒にて収容槽内を洗浄し、これを再び一次分離する。これにより、廃スラリー収容槽内に残った砥粒や切削屑(スラッジ)を取り除き、回収することができる。
【0030】
ステップS3:
混合液をステップS2で用いた遠心分離機に投入し、二次分離を行う。この二次分離にて、混合液を切削屑(二次分離物)と分散媒とに分離する。この二次分離は、1500G以上の高Gで遠心分離される。混合液の遠心分離機への投入制御は、ステップS2で示した廃スラリーの流量制御と同様である。二次分離中、適時に新分散媒等で遠心分離機内や分岐シュート(切削屑用シュート)内が洗浄される。分離された切削屑は、切削屑回収槽4(図1参照)に回収される。分散媒は、分散媒回収槽5に回収される。混合液回収槽が空になった場合は、分散媒にて収容槽内を洗浄し、これを再び二次分離する。これにより、混合液回収槽内に残った切削屑を取り除き、回収することができる。この後、分散媒回収槽内の比重を計測し、二次分離における分散媒の回収を確認する。
【0031】
ステップS4:
一次分離にて回収した砥粒、二次分離にて回収した分散媒、さらに必要に応じて新砥粒及び新分散媒(新オイル)を加えて再生スラリーを調合する。この新砥粒や新オイル等の投入の仕方は、例えば、(i)新砥粒及び新オイルを自動で投入したり、(ii)新砥粒を手動で、新オイルを自動で投入したり、(iii)新オイルのみを自動で投入したり、(iv)新砥粒と新オイルで予め形成された新スラリー及び新オイルを自動で投入する方法がある。
【0032】
まずは砥粒回収槽からの再生砥粒を再生スラリー調合槽に移送する。この移送は、砥粒回収槽を分散媒で洗浄しながら、すべての砥粒が移送されるように行われる。砥粒の移送が終わったら、再生スラリー調合槽内の比重を計測し、一次分離における砥粒回収率を判定する。この判定は、ステップS2の終了後に行ってもよい。再生スラリーは、目標とする体積と比重が設定されている。この設定値になるように、回収砥粒で足りない分が新砥粒で補充される。これに合わせて、分散媒も供給される。目標比重となったら、再生スラリーとして再びワイヤソー装置に使用する。
【0033】
以上によれば、第1のモータ及び第2のモータを用いて、低Gと高Gの異なる遠心力を発生させ、一次分離と二次分離を行うことができる。このため、1台の遠心分離機のみで比重の異なる砥粒(一次分離物)及び切削屑(二次分離物)を確実に分離して回収することができる。したがって、分離に際しては、1台分の遠心分離機設置スペースを確保できればよく、スペース的に効率がよい。
【0034】
上述したステップS1〜ステップS4は、一次分離物と二次分離物を分離する、いわゆる2段分離モードを行う場合の工程である。これに対し、単に砥粒(一次分離物)のみを回収する場合のような、いわゆる1段分離砥粒回収モードの場合は、上記ステップS3を除いたステップS1,S2,S4の順で行う。さらに、オイルのみを回収するような、いわゆる1段分離オイル回収モードの場合は、ステップS3のみで実現できる。
【符号の説明】
【0035】
1 スラリー再生装置
2 遠心分離機
3 砥粒回収槽
4 切削屑回収槽
5 分散媒回収槽
6 混合液回収槽
7 再生スラリー調合槽
8 分岐シュート
8a 砥粒用シュート
8b 切削屑用シュート
9 切替手段
10 第1のモータ
11 第2のモータ
12 排出口
13 排液口
14 三方弁
15 ポンプ
16 廃スラリー収容槽
17 攪拌部材
18 モータ
19 三方弁
20 ポンプ
21 分岐管
22 三方弁
23 三方弁
24 ダンパー
25 質量流量計
26 三方弁
27 流体センサ
28a 新分散媒収容槽
28b 新分散媒収容槽
29 三方弁
30 三方弁
31 超音波センサ
32 三方弁
33 可変制御式定量供給手段
34 質量流量計
35 PID制御部
36 ポンプ
37 三方弁
38 分岐管
39 分岐管
40 分岐管
41 バルブ
42 バルブ
43 バルブ
44 バルブ
45 廃スラリー流入口
46a 新分散媒流入口
46b 新分散媒流入口
47 新分散媒流入口
48 ローラ
49 枠体
50 レール
51 ポンプ
52 混合液廃棄槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒中に前記分離媒から分離されるべき互いに比重の異なる一次分離物及び二次分離物の少なくとも一方を含む廃スラリーが投入され、前記廃スラリーから前記一次分離物又は前記二次分離物を分離処理可能な遠心分離機と、
前記遠心分離機に設けられ、前記遠心分離機から分離処理後の前記一次分離物又は前記二次分離物を排出する排出口と、
該排出口に一次分離物用シュートを介して連通可能な一次分離物回収槽と、
前記排出口に二次分離物用シュートを介して連通可能な二次分離物回収槽と、
前記遠心分離機に設けられ、前記遠心分離機から前記廃スラリーを分離処理した後の前記分散媒又は該分散媒と前記二次分離物の混合液を排液する排液口と、
該排液口に対して選択的に連通可能な分散媒回収槽及び混合液回収槽と、
前記一次分離物と分散媒を混合して再生スラリーを生成する再生スラリー調合槽と、
前記排出口に対して、前記一次分離物用シュートと前記二次分離物用シュートのいずれかを接続させる切替手段とを備えたことを特徴とするスラリー再生処理装置。
【請求項2】
前記廃スラリーを収容する廃スラリー収容槽と前記遠心分離機の間、及び前記混合液回収槽と前記遠心分離機の間にそれぞれ設けられ、前記廃スラリー又は前記混合液の流量を調整する可変制御式定量供給手段と、該可変制御式定量供給手段と前記遠心分離機の間に設けられた質量流量計と、前記質量流量計の計測結果に基づき、前記廃スラリー又は前記混合液の流量を一定にすべく前記可変制御式定量供給手段の作動を制御するPID制御部とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のスラリー再生処理装置。
【請求項3】
前記廃スラリー収容槽と前記混合液回収槽、及び前記遠心分離機は、三方弁を介して接続され、前記可変制御式定量供給手段及び前記質量流量計は、前記三方弁と前記遠心分離機の間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラリー再生処理装置。
【請求項4】
前記廃スラリーは、ワイヤに被加工物を押し付けて切断加工するワイヤソー装置で用いたスラリーであり、前記一次分離物は前記スラリーに混入する砥粒であり、前記二次分離物は前記被加工物の切削屑であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラリー再生処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のスラリー再生処理装置を用いたスラリー再生処理方法であって、
前記遠心分離機に前記廃スラリーを投入し、
前記遠心分離機を所定の遠心力(低G)で駆動して、前記一次分離物を前記廃スラリーから遠心分離し、
該遠心分離した一次分離物を前記一次分離物回収槽に回収し、
前記混合液を前記混合液回収槽に回収し、
該混合液回収槽から前記混合液を前記遠心分離機に投入し、
前記遠心分離機を前記所定の遠心力より高い遠心力(高G)で駆動して前記二次分離物を前記混合液から遠心分離し、
該遠心分離した二次分離物を前記二次分離物回収槽に回収し、
前記分散媒を前記分散媒回収槽に回収し、
前記再生スラリー調合槽に、前記一次分離物回収槽に回収された前記一次分離物と、前記分散媒回収槽に回収された前記分散媒と、新しい一次分離物及び新しい分散媒とを投入し、再生スラリーを生成することを特徴とするスラリー再生処理方法。
【請求項6】
前記質量流量計により前記廃スラリー又は前記混合液の実流量値を計測し、前記PID制御部にて前記実流量値と設定流量値を比較し、前記実流量値が前記設定流量値になるように、前記可変制御式定量供給手段をPID制御することを特徴とする請求項5に記載のスラリー再生処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162640(P2010−162640A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6422(P2009−6422)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000139687)株式会社安永 (23)
【出願人】(000198352)株式会社IHI回転機械 (27)
【Fターム(参考)】