説明

スルファモイルスルホネートプロドラッグ

本発明は、下記一般式(I):
で表されるスルファモイルスルホネートプロドラッグ類、それらの調製方法、それらの化合物を含んで成る医薬組成物、及び経口医薬剤の製造のためへのそれらの使用に関する。本発明の化合物は、カルボニックアンヒドラーゼに結合し、そしてそれらの酸素を阻害する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記一般式(I):
【化1】

【0002】
で表されるスルファモイルスルホネートプロドラッグ類、それらのプロドラッグの調製方法、それらの化合物を含んで成る医薬組成物、及び経口医薬剤の製造のためへのそれらの使用に関する。
【0003】
WO01/91797号から、基-SO2NR1R2を通して赤血球に結合され、そしてそこに蓄積するステロイド化合物は知られている。赤血球と血漿との間での化合物の濃度比は、10〜1000:1、好ましくは30〜1000:1であり、その結果、我々は赤血球におけるデポット(depot)の形成を言及する。赤血球への化合物の強い結合のために、肝臓通過の間の代謝が回避される。不都合なことには、示される用量を用いての低められた代謝にもかかわらず、治療に適した活性化合物レベルが提供されない。これについての理由は、赤血球への過度の強い結合、酵素により誘発される分解、及び低溶解性において調べられるべきである。
【0004】
経口投与でき、そして従来技術に比較して、低用量でさえ、治療に適した活性成分レベルを確保する新規プロドラッグを供給することが本発明の目的である。
この目的は、スルファモイル基がスルホネート結合によりスペーサーXを通して、開放されるべき薬剤に結合されることにより達成される。スルファモイルスルホネートプロドラッグは、下記一般式(I):
【0005】
【化2】

【0006】
[式中、Xは、C1-12−アルカンジイル−、CpF2p基(p=1〜5)、C3-8−シクロアルカンジイル−、アリーレン−、ヘテロアルカンジイル−、C1-4−アルカンジイルアリール、C1-4−アルカンジイル−C3-8−シクロアルキル−、又はC3-8−シクロアルカンジイル−C1-4−アルキル基であり、そして
薬剤は、OH基によりスルホネートを形成できる医薬活性成分、例えば任意に置換され得る、ステロイド、抗マラリア剤、ヌクレオシド又はイソフラボノイドである]
で表される。
【0007】
本発明のスルファモイルスルホネート化合物は、赤血球に結合し、容易に水に溶解でき、そして酵素からの助けなしに、加水分解的に分解される。
【0008】
本発明のためには、“C1-12−アルカンジイル基”とは、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基又はニトリル基により任意に置換され得る、12個までの炭素原子を有する、二重結合された枝分かれ鎖又は直鎖のアルキレン基として定義される。例として、メタン−1,1−ジイル−、エタン−1,2−ジイル−、プロパン−1,3−ジイル−、ブタン−1,4−ジイル−、ペンタン−1,5−ジイル−、ヘキサン−16−ジイル−、オクタン−1,8−ジイル−、及びウンデカン−1,11−ジイル基が言及され得る。
【0009】
本発明のためには、CpF2p基(p=1〜5)とは、5個までの炭素原子を有する、枝分かれ鎖又は直鎖のペルフルオロ化されたアルキル基として定義される。例とし、ペルフルオロプロパン−1,3−ジイル−、ペルフルオロブタン−1,4−ジイル−、及びペルフルオロペンタン−1,5−ジイル基が言及され得る。
【0010】
上記に言及される“C3-8−シクロアルカンジイル基”とは、本発明によれば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びニトリル基により任意に置換され得る、3〜8個の炭素原子を有する、二重結合された単一又は二環式炭素環式基、例えばシクロブタン−1,3−ジイル−、シクロペンタン−1,3−ジイル−又はシクロへキサン−1,4−ジイル基を意味する。
【0011】
上記に言及される“アリーレン基”とは、本発明によれば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトリル基及びアルキル基により任意に置換され得る、6〜15個の炭素原子を有する、二重結合された芳香族単−〜三環式の炭素環式基、例えばm−フェニレン−、p−フェニレン−、フェナントリレン−又はナフタレン基を意味する。
【0012】
ヘテロアリーレン基は、個々の場合、5〜16の環原子を含み、そして炭素の代わりに、同じか又は異なっている1又は複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素又は硫黄をその環に含む。ヘテロアリール基は、単−、二−又は三環式であり得る。
【0013】
例えば、次の基が言及され得る:チェニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チアジニル、キノリル及びイソキノリル。
【0014】
本発明のためには、ヘテロアルカンジイル基は、個々の場合、1〜6個の炭素原子を有し、そして炭素の変わりに、同じか又は異なる1又は複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素又は硫黄を含む、二重結合された、直鎖又は枝分かれ鎖の飽和又は不飽和のヘテロアルキル基、例えばビス−エチレンオキシ基である。
【0015】
“C1-4−アリールアルカンジイル基”は、C1-C4−アルカンジイル基を通して骨格に結合されるアリール基であり、ここで前記アルカンジイル基は直鎖又は枝分かれ鎖であり得る。例えば、ベンジル又はフェネチレンが言及され得る。
【0016】
“C3-8−シクロアルキル−C1-4−アルカンジイル基”とは例えば、シクロアルキル−(CH2)−, シクロアルキル−(C2H4)−, シクロアルキル−(C3H6)−, シクロアルキル−(C4H8)−又はシクロアルキル−(C5H10)−を意味する。この場合、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルであり得る。
【0017】
“C1-4−アルキル−C3-8−シクロアルカンジイル基”とは、メチルシクロアルカンジイル、エチルシクロアルカンジイル、プロピルシクロアルカンジイル、ブチルシクロアルカンジイル又はペンチルシクロアルカンジイルとして定義される。この場合、シクロアルカンジイルは、シクロプロパン−1,3−ジイル、シクロブタン−1,4−ジイル、シクロペンタン−1,5−ジイル、シクロへキサン−1,6−ジイル、シクロへプタン−1,7−ジイル又はシクロオクタン−1,8−ジイルであり得る。
【0018】
本発明においては、用語“ハロゲン原子”とは、弗素、塩基、臭素又はヨウ素原子、好ましくは弗素、塩素又は臭素原子であり得る。
【0019】
OH基を通してスルホネートを形成できる医薬活性成分は、本発明のためには、次のものを意味する:
ステロイド:エストロゲン、例えばエストラジオール又はエストリオール、又はアンドロゲン、例えばテストステロン、MENT(7α−メチル−19−ノルテストステロン)、eF-MENT(11−フルオロ−7α−メチル−19−ノルテストステロン)、ナンドロロン、DHT(ジヒドロテストステロン)、又はゲスタゲン、例えばノルエチステロン、ジエノゲスト又はレボノルゲストレル、コルチコイド、例えばコルチソル;
【0020】
抗−マラリア剤:キニーネ、キンコニジン、ヒドロキシクロロキン、プリマキン、メフロキン;
ヌクレオシド:糖、例えばリボース又はデオキシリボース、及び塩基、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミン又はウラシル、さらにジドブジン、ブリブジン、インジナビル、ネルフィナビル;又は
イソフラボノイド:ゲニステイン。
【0021】
特に好ましい化合物は、次に特定される通りである:
1) 3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
2) 3-アセトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'- スルファモイルフェニルスルホネート、
3) 3-tert-ブチルジメチルシリルオキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3’- スルファモイルフェニルスルホネート、
4) 3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 4'-スルファモイルフェニルスルホネート、
【0022】
5) 2-メトキシ-3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
6) 3, 16α-ジヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
7) 3,17βジヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
8) 3-ベンゾイルオキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
9) キニン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
10) シンコニジン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
【0023】
11) ジドブジン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
12) 3-オキソアンドロスト-4-エン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
13) 3-オキソアンドロスタン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
14) 3-オキソ-7α -メチルアンドロスト-4-エン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
15) 3-オキソエストル-4-エン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
16) ブリブジン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート。
治療的に適切な薬剤化合物は、本発明の化合物から加水分解を通して開放される。
【0024】
インヒドロ試験
カルボニックアンヒドラーゼ阻害:
試験原理:
無色から黄色への色の変化を伴ってニトロフェニルアセテートの酵素転換の助けによるマイクロ滴定プレート上でのスルホンアミド又はスルファメートによるヒトカルボニックアンヒドラーゼI又はIIの阻害の光度定量。
【0025】
【表1】

本発明のスルファモイルスルホネートプロドラッグが驚くべきことには、カルボニックアンヒドラーゼIIを阻害することが見出された。赤血球における本発明のプロドラッグの濃度は、これから低められ得る。
【0026】
物理化学データ
水溶性:
a)運動学的測定:
本発明の化合物を、比濁法及び濁り度を用いて、pH7.4及び25℃で0.01Mのリン酸緩衝溶液中、10mモルのDMSO溶液として測定した。
濁り状態のまま、試験されるべき溶液は、沈殿物が沈降するまで、緩衝溶液に滴下された。
沈殿物は、比濁法により、一連の希釈溶液(本発明のリン酸緩衝溶液における化合物)において検出された。
【0027】
b)熱力学的測定:
本発明の固体形での化合物を、種々のpH値の過剰の水性緩衝液系に添加した。それを、25℃で24時間、撹拌した。遠心分離の後、その溶液を、HPLC(HPLC:カラム:Xterra MS C18 2.5μm、30×4.6mm)により試験した。2種の標準グラジエント系を、測定されるべき化合物に基づいて使用した:
酸性グラジエント:A:水/0.01%のトリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル/0.01%のトリフルオロ酢酸−0分5%B、0〜3分65%B、3〜5分65%B、5〜6分5%B;
アルカリ性グラジエント:A:水/0.025%のアンモニア、B:アセトニトリル/0.025%のアンモニア−0分20%B, 0〜3分80%B、3〜5分80%B、5〜6分20%B。
【0028】
【表2】

【0029】
本発明の化合物は、スルファメート−及びカルボン酸エステルプロドラッグに比較して、高い溶解性を示し、これが腸における良好な吸収を可能にする。
【0030】
加水分解:
本発明の化合物を、37℃で種々のpH値の水性緩衝液中、DMSO溶液として測定した。
定量化が、HPLC(HPLC:カラム:Xterra MS C18 2.5μm、4.6×30mm)を通して取られた。測定されるべき試験物質に基づいて、次のグラジエント系を、HPLCのために使用した:酸性グラジエント:A:水/0.01%のトリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル/0.01%のトリフルオロ酢酸−0分5%B、0〜3分65%B、3〜5分65%B、5〜6分5%B;
アルカリ性グラジエント:A:水/0.025%のアンモニア、B:アセトニトリル/0.025%のアンモニア−0分20%B, 0〜3分80%B、3〜5分80%B、5〜6分20%B。定量化が、1及び2時間後、及び24時間後に取られた。
【0031】
シュミレートされた胃液における安定性:
本発明の化合物の溶液を、シュミレートされた胃液(ペプシンを有するNaCl水溶液、pH=約1.2)において37℃でインキュベートした。
定量化が、次のグラジエントを用いて、HPLC(HPLC:カラム:Xterra MS C18 2.5μm、4.6×30mm)により取られた:
A:水/0.01%トリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル/0.01%トリフルオロ酢酸−0分5%B, 0〜3分65%B, 3〜5分65%B, 5〜6分5%B。
定量化が、0.5, 1, 1.5及び2時間後、取られた。
【0032】
【表3】

【0033】
カルボン酸エステルは、胃液(pH約1)及び腸(pH約7.4)において比較的安定しているが、しかし腸を通過する場合、そこに存在するエステラーゼにより分解される。しかしながら、胃を通過する間、安定したプロドラッグはほとんど完全のまま存続する。
従って、カルボン酸エステルの分解は、腸及び肝臓を通過する場合、起こる。
【0034】
酵素(エステラーゼ)は、スルホン酸エステルに対して知られていない。従って、スルホネートがまだ分解され、ここで単純な加水分解が起こることは驚くべきことであった。遅い加水分解が胃液において、及びpH=7.4ですでに起こるが、スルホネートは胃及び腸を通過するのに適切な安定性を有する。エステラーゼ分解は、腸壁においては生じない。肝臓における最初の通過効果は、スルホネートが赤血球にスルホンアミド基により結合されるので、回避される。
【0035】
本発明の一般式(I)の化合物は、“薬剤”の意味の機能として、種々の臨床学的情況の処理及び/又は予防のために使用され得る。例えば、“薬剤”がステロイド、例えばアンドロゲン又はエストロゲンである場合、一般式(I)の化合物は、女性及び男性においてホルモン置換療法(HRT)に、又は男性(前立腺癌、乳癌、性機能低下)及び女性(子宮内膜症、乳癌)におけるホルモン的に引起される疾病の処理に使用され得る。さらに、“薬剤”がアンドロゲン又はエストロゲンである本発明の一般式(I)の化合物は、男性又は女性における受精又は受胎能力の調節のために使用される。
【0036】
“薬剤”、例えばキニーネ、キンコニジン、ヒドロキシクロロキン、プリマキン又はメフロキンについて言及される追加の活性成分の使用は、マラリアの処理に関する。
“薬剤”がコルチソル誘導体である本発明の一般式(I)の化合物は、免疫抑制及び/又は抗増殖により影響される炎症及び/又はアレルギー疾患の処理及び予防のために使用され得る。
【0037】
“薬剤”がヌクレオシド(ジドブジン、ブリブジン、インジナビル、ネルフィナビル)である本発明のプロドラッグは、ウィルス疾患(ヘルペス、HIV)の処理のために使用され得る。
本発明の対象はさらに、本発明の一般式(I)の化合物及び任意には追加の活性成分、例えば“ゲスタゲン(ノルエチステロン、ジエノゲスト、ドロスピレノン、レボノルゲストレル)、抗ゲスタゲン(ミフェプリストン、オナプリストン)及び/又はプロゲステロン受容体モジュレーター(メソプロゲスチン、例えばアソプリスニル)を含んで成る医薬組成物に関する。
【0038】
それらの医薬組成物及び医薬剤は好ましくは、経口投与される。通常のビークル及び/又は希釈剤のほかに、それらは少なくとも1つの一般式Iの化合物を含む。
【0039】
投薬:
本発明のプロドラッグは、経口投与され得る。
一般的に、プロドラッグの投与の後、医薬的に使用されるそれぞれ“薬剤”物質の最高用量に完全に対応する量の対応する活性成分(“薬剤”)が開放されるよう、投与が実施される場合、満足のゆく結果が、言及される症状の処理及び/又は予防、又は生殖能調節のために予測されるべきである。
【0040】
本発明の医薬剤は、通常使用される固体又は液体ビークル又は希釈剤、及び適切な投与量での所望する型の投与に対応する、通常使用される医薬−技法アジュバントを伴って、既知手段で生成される。好ましい製剤は、経口投与のために適切である、分散のための形で存在する。そのような分散のための形は例えば、錠剤、フィルム錠剤、被覆された錠剤、カプセル、ピル、粉末、溶液又は懸濁液、又は他のデポット形である。
【0041】
対応する錠剤は例えば、活性成分と、既知アジュバント、例えば不活性希釈剤、例えばデキストロース、糖、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルピロリドン、爆薬、例えばトウモロコシ澱粉又はアルギン酸、結合剤、例えば澱粉又はセラチン、滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、又はタルク、及び/又はデポット効果を達成するための剤、例えばカルボキシポリメチレン、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート又はポリビニルアセテートとを混合することにより得られる。錠剤はまた、いくつかの層から成る。
【0042】
被膜された錠剤は、錠剤に類似して生成されるコアーを、被膜された錠剤被膜に通常使用される剤、例えばポリビニルピロリドン又はセラック、アラビアガム、タルク、酸化チタン又は糖により被覆することにより、調製され得る。この場合、被覆された錠剤のためのシェルはまた、いくつかの層から成ることができ、ここで錠剤について上記に言及されるアジュバントが使用され得る。
【0043】
本発明の一般式Iの化合物を含む溶液又は懸濁液はさらに、味覚改質剤、例えばサッカリン、シクラメート又は糖、及びまた、例えば風味剤、例えばバニラ又はオレンジ抽出物を含んで成る。それらはさらに、懸濁アジュバント、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、又は保護剤、例えばp-ヒドロキシベンゾエートを含んで成る。
【0044】
一般式Iの化合物を含んで成るカプセルは例えば、一般式Iの化合物と、不活性ビークル、例えばラクトース又はソルビトールとを混合し、そしてそれをゼラチンカプセルに封入することにより製造され得る。
本発明のプロドラッグは、次の例に従って合成され得、それらの例はより詳細な説明として作用し、本発明を制限するものではない。
【0045】
一般的合成の教示:
変法1
ジスルホン酸塩化物との反応:
一般式SO2−X−SO2Clのジスルホン酸塩化物を、塩基、例えばピリジンに、カバーガス下で溶解する。その対応する量の薬剤物質を前記溶液に添加する。その反応混合物を、反応が完結されるまで、撹拌する。次に、反応混合物を、濃縮されたNH3溶液中に撹拌する。沈殿物を濾過し、水により洗浄し、そして乾燥する。残留物を、有機溶媒、例えば酢酸エチルにより抽出し、有機相を洗浄し、そしてそれを、乾燥剤、例えばMgSO4により乾燥する。濾過の後、それを蒸発により濃縮し、そしてシリカゲル上でクロマトグラフィー処理する。対応するスルファモイルスルホネートが得られる。
【0046】
変法2
スルファモイルスルホン酸ハロゲン化物との反応:
上記に定義されるような薬剤物質を、塩基、例えばピリジン及び不活性溶媒、例えばクロロホルムに、カバーガス下で溶解する。冷却しながら、その対応する量の一般式NH2SO2-X-SO2Halのスルファモイルスルホン酸ハロゲン化物を、前記溶液に添加する。その反応混合物を、反応が完結されるまで、撹拌する。次に、水を添加し、そしてそれを、任意には、酸、例えば10%HClにより酸性化する。それを有機溶媒、例えば酢酸エチルにより抽出し、有機相を洗浄し、そしてそれを乾燥剤、例えばMgSO4により乾燥する。濾過の後、それを蒸発により濃縮し、そしてシリカゲル上でクロマトグラフィー処理する。対応するスルファモイルスルホネートを得る。
その対応するスルファモイルスルホン酸ハロゲン化物又はジスルホン酸は市販されており、又は当業者に知られている方法により生成され得る。
【実施例】
【0047】
合成例
例1:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネート
1.9gの1,3−ベンゼンジスルホニル塩化物を、アルゴン下で5mlのピリジンに溶解する。次に、1.0gの3−tert−ブチルジメチルシリルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−オールを添加する。2時間後、その反応混合物を、25mlの濃縮されたアンモニア溶液中に撹拌する。10分後、それを吸引し、水により洗浄し、そして乾燥する。残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。3−tert−ブチルジメチルシリルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
1H-NMR (DMSO-D6): 0.14 (s, 6 H, SiMe), 0.77 (s, 3 H, 18-Me), 0.93 (s, 9 H, t.-Bu), 4.43 (t, 1 H, 17-H), 7.68 (s, 2 H, NH2)。
【0048】
例2:3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート
300mgの3−tert−ブチルジメチルシリルオキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネートを、20mlのTHFに溶解する。撹拌下で、200mgのテトラブチルアンモニウム弗化物を室温で添加する。1時間後、20mlの水において撹拌する。物質を酢酸エチルにより抽出する。有機相を、飽和NaCl溶液により洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、蒸発により濃縮し、そしてシリカゲル上でクロマトグラフィー処理する。3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
1H-NMR (DMSO-d6): 0.76 (s, 3 H, 18-Me), 4.43 (t, 1 H, 17-H), 7.68 (s, 2 H, NH2), 8.98 (S, 1 H, 3-OH)。
【0049】
例3:3−オキソ−7α−メチルエストラ−4−エン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネート
1.9gの1,3−ベンゼンジスルホニル塩化物を、5mlのピリジンにアルゴン下で溶解する。次に、1.0gのMENTを添加する。2時間後、反応混合物を、25mlの濃縮されたアンモニア溶液中に撹拌する。10分後、それを吸引し、水により洗浄し、そして乾燥する。残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。3−オキソ−7α−メチルエストラ−4−エン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
1H-NMR (DMSO-D6): 0.66 (d, 3 H, 7-Me), 4.38 (t, 1 H, 17-H), 5.69 (s, 1 H, 4-H), 7.67 (s, 2 H, NH2), 7.83 - 8.28 (m, 4 H, H-Ar)。
【0050】
例4:3−オキソ−アンドロストー4−エン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネート
変法1
2.0gの1,3−ベンゼンジスルホニル塩化物を、5.5mlのピリジンにアルゴン下で溶解する。次に、1.0gのテストステロンを添加する。2時間後、反応混合物を、25mlの濃縮されたアンモニア溶液中に撹拌する。10分後、それを吸引し、水により洗浄し、そして乾燥する。残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。3−オキソ−アンドロストー4−エン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
【0051】
変法2
1.0gのテストステロンを、5.5mlのピリジンにアルゴン下で溶解する。次に、1.8gの3−アミノスルホニルフェニルスルホニル塩化物を添加する。2時間後、反応混合物を、25mlの水中に撹拌し、そして10%HClにより酸性化する。10分後、それを吸引し、水により洗浄し、そして乾燥する。残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。3−オキソ−アンドロストー4−エン−17β−イル3’−スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
1H-NMR (DMSO-D6): 0.78 (s, 3 H, 18-Me), 1.11 (s, 3 H, 19-Me), 4.34 (t, 1 H, 17-H),5.60 (s, 1 H, 4-H), 7.67 (s, 2 H, NH2), 7.83 - 8.28 (m, 4 H, H-Ar)。
【0052】
例5:ジドブジン-スルファモイルフェニルスルホネート
2.0gの1,3−ベンゼンジスルホニル塩化物を、5.5mlのピリジンにアルゴン下で溶解する。次に、1.0gのジドブジンを0℃で添加する。2時間の室温での撹拌の後、反応混合物を、25mlの濃縮されたアンモニア溶液中に撹拌する。10分の撹拌の後、それを乾燥状態に蒸発し、そしてEEにより抽出する。有機相を蒸発により濃縮し、そして残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。ジドブジン-スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
1H-NMR (DMSO-D6): 1.17 (s, 3 H, Me), 2.40 (m, 2 H, CH2), 4.00 (m, 1 H, CH), 4.42 (m, 2 H, CH2), 6.09 (m, 1 H, CH), 7.40 (s, 1 H, CH), 7.66 (s, 2 H, NH2), 7.85-8.30 (3 m + s, 5 H, 4-H),11.35 (s, 1 H, NH)。
【0053】
例6:シンコニジン−スルファモイルフェニルスルホネート
2.0gの1,3−ベンゼンジスルホニル塩化物を、5.5mlのピリジンにアルゴン下で溶解する。次に、1.0gのシンコニジンを0℃で添加する。2時間の室温での撹拌の後、反応混合物を、25mlの濃縮されたアンモニア溶液中に撹拌する。10分の撹拌の後、それを乾燥状態に蒸発し、そしてEEにより抽出する。有機相を蒸発により濃縮し、そして残留物を、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製する。シンコニジン−スルファモイルフェニルスルホネートを得る。
1H-NMR (DMSO-D6): 4.99 (m, 2 H, CH=CH2), 5.94 (m, 1 H, CH=CH2), 7.58 (s, 2 H, NH2)。
【0054】
さらなる労力を伴わないで、当業者は、前述の記載を用いて、本発明をその十分な程度まで利用できることと思われる。従って、前述の好ましい特定の態様は、単なる例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。
前述及び実施例においては、すべての温度は、特にことわらない限り、℃であり、そしてすべての部及び%は重量によってである。
【0055】
前記例は、遺伝学的に又は特異的に記載される本発明の反応体及び/又は操作条件を、前記例に使用されるそれらにより置換することにより類似する好結果を伴って反復され得る。
前述の記載から、当業者は、本発明の必須特徴を容易に確かめることができ、そして本発明の範囲内で、本発明の種々の変更及び修飾を行うことができ、種々の使用法及び条件にそれを適合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I:
【化1】

[式中、Xは、任意に置換されたC1-12−アルカンジイル基、CpF2p基(p=1〜5)、単−又は二環式の任意にハロゲン−、ヒドロキシ−又はニトリル−置換されたC3-8−シクロアルカンジイル基、単−〜三環式の任意にハロゲン−、ヒドロキシ−、ニトリル−及びアルキル−置換されたC6-15−アリーレン基、炭素の代わりに、1又は複数の、同一の又は異なったヘテロ原子を含む1〜6個の炭素原子を有するヘテロアルカンジイル基、C1-4−アルカンジイルアリール、C1-4−アルカンジイル−C3-8−シクロアルキル、又はC3-8−シクロアルカンジイル−C1-4−アルキル基であり、そして
「薬剤」は、OH基によりスルホネートを形成できる医薬活性化合物、例えば任意に置換され得る、ステロイド、抗マラリア剤、ヌクレオシド又はイソフラボノイドである]で表されるスルファモイルスルホネートプロドラッグ。
【請求項2】
「薬剤」が、ステロイド、例えばエストロゲン、例えばエストラジオール又はエストリオール、又はアンドロゲン、例えばテストステロン、MENT(7α−メチル−19−ノルテストステロン)、eF-MENT(11−フルオロ−7α−メチル−19−ノルテストステロン)、ナンドロロン(nandrolon)、DHT(ジヒドロテストステロン)、又はゲスタゲン、例えばノルエチステロン、ジエノゲスト又はレボノルゲストレル、又はコルチコイド、例えばコルチソル、又は抗−マラリア剤、例えばキニーネ、キンコニジン、ヒドロキシクロロキン、プリマキン、メフロキン、又は糖、例えばリボース又はデオキシリボース、及び塩基、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミン又はウラシル、さらにジドブジン、ブリブジン、インジナビル、ネルフィナビルから成るヌクレオシド、又はイソフラバノイド、例えばゲニステインである請求項1記載のスルファモイルスルホネートプロドラッグ。
【請求項3】
Xがアリーレン基である請求項1記載のスルファモイルスルホネートプロドラッグ。
【請求項4】
Xが、置換されていないか、又は塩素により置換されている、フェニレン、ピリジレン又はチオフェニレン基である請求項3記載のスルファモイルスルホネートプロドラッグ。
【請求項5】
すなわち、
1) 3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
2) 3-アセトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'- スルファモイルフェニルスルホネート、
3) 3-tert-ブチルジメチルシリルオキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3’- スルファモイルフェニルスルホネート、
4) 3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 4'-スルファモイルフェニルスルホネート、
5) 2-メトキシ-3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
6) 3, 16α-ジヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
7) 3,17βジヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-16α-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
8) 3-ベンゾイルオキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
9) キニン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
10) シンコニジン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
11) ジドブジン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
12) 3-オキソアンドロスト-4-エン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
13) 3-オキソアンドロスタン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
14) 3-オキソ-7α -メチルアンドロスト-4-エン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
15) 3-オキソエストル-4-エン-17β-イル 3'-スルファモイルフェニルスルホネート、
16) ブリブジン-3'-スルファモイルフェニルスルホネート
である請求項3又は4記載のスルファモイルスルホネートプロドラッグ。
【請求項6】
前記活性化合物が、抗マラリア剤、例えばアルテエーテル、アルテムエーテル、アルテスネート、クロロキン、パマキン、プリマキン、ピレタミン、メフロキン、プログアニル、キンコニジン、シンコニン、ヒドロキシクロロキン、パマキン、プリマキン、ピリメタミン、キニン又はキニン誘導体、例えば硫酸水素キニン、炭酸キニン、キニンジヒドロブロミド、キニンジヒドロクロリド、キニンエチルカーボネート、キニンホルメート、キニングルコネート、キニンヒドロイオジド、キニンヒドロクロリド、キニンサリチレート又はキニンスルフェートである請求項1、3又は4記載の化合物。
【請求項7】
赤血球に対する寄生攻撃の予防のためへの請求項6記載の化合物の使用。
【請求項8】
前記治療的に所望する作用が、プロドラッグ又はその代謝物に含まれる活性化合物の開放、特に加水分解性切断により生じる請求項1〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
少なくとも1つの請求項1〜5のいずれか1項記載の一般式Iの化合物、及び任意には、少なくとも1つの追加の活性化合物、並びに医薬的に許容できるアジュバント及び/又はビークルを含んで成る医薬組成物。
【請求項10】
前記追加の活性化合物がステロイド化合物である請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記追加のステロイド化合物が、ゲスタゲン、抗ゲスタゲン又はプロゲステロン受容体モジュレーターである請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記含まれるゲスタゲンが、ノルエチステロン、ジエノゲスト、ドロスピレノン、又はレボノルゲストレルであり;抗ゲスタゲンが、ミフェプリストン、オナプリストン、及びプロゲステロン受容体モジュレーターがメソプロゲスチン、例えばアソプリスニルである請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬剤の製造のためへの請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項14】
ホルモン置換療法のための医薬剤の製造のためへの請求項13記載の使用。
【請求項15】
女性用受胎能調節のためへの請求項1〜8のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項16】
男性及び女性におけるホルモン原因の疾病の治療及び/又は予防のための医薬剤の製造のためへの請求項13記載の使用。
【請求項17】
子宮内膜症、乳癌、前立腺癌又は性機能低下の治療及び予防のための医薬剤の製造のためへの請求項13記載の使用。
【請求項18】
カルボアンヒドラーゼ活性の阻害により絶対的に影響され得る疾病の治療及び/又は予防のための医薬剤の製造のためへの請求項13記載の使用。
【請求項19】
炎症及び/又はアレルギー疾患の治療及び/又は予防のための医薬剤の製造のためへの請求項13記載の使用。
【請求項20】
請求項1記載の一般式(I)のスルファモイルスルホネートプロドラッグの製造方法であって、請求項1及び2記載の対応する活性化合物“薬剤”と、塩化ジスルホニルClSO2-X-SO2Clとを、塩基の存在下で反応せしめ、そしてアンモニアにより続いて処理するか、又は請求項1及び2記載の対応する活性化合物“薬剤”と、スルファモイルスルホニルハロゲン化物NH2SO2-X-SO2Clとを、塩基の存在下で反応せしめることを含んで成る方法。
【請求項21】
前記塩基がピリジンである請求項20記載の方法。

【公表番号】特表2009−517424(P2009−517424A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542678(P2008−542678)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011726
【国際公開番号】WO2007/062874
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】