説明

スーパーオキシドジスムターゼをコードするAAVベクター

本発明は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、SOD遺伝子を標的細胞に送達させるために用いられ得るベクターに関する。標的細胞は、SODの標的細胞への送達が対象に対して治療上の利点および/または治療上の効果をもたらす、疾患または状態を有する対象内であってもよい。別の態様において、本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置における有効性について化合物をスクリーニングするためのモデル系に関する。モデル系は、SOD遺伝子をコードするAAVベクターを用いて形質導入された複数の細胞を含んでいてもよく、形質導入された細胞は、ALSと関連する表現型変化を示してもよい。本発明のモデル系を用いて、ALSの処置における有効性について化合物がスクリーニングされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、35 U.S.C.§119(e)の下、2005年7月7日に出願された米国仮出願番号第60/697,450(その内容は、引用により本明細書に取り込まれる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置における有効性について化合物をスクリーニングするためのインビトロモデルに関する。本発明はまた、遺伝子治療ベクターおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
神経変性疾患は主要な公衆の健康問題を提起する。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの選択的死滅に伴って生じる、容赦なく進行する致命的な疾患である。ALSに関するさらなる情報を、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)エントリー番号105400、およびRowland and Shneider (2001) Amyotrophic lateral sclerosis, New Eng. J. Med. 344: 1688-1700(これらの開示内容は全体として引用により本明細書に取り込まれる)において見出すことができる。
【0004】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をコードする遺伝子における変異は、ALSと関連する。SODの3種類の変異体が哺乳類において存在することが知られている。細胞質SODは、SOD1によりコードされる銅亜鉛酵素(Cu/Zn SOD)である(Weisiger and Fridovich (1973) J. Biol. Chem. 248, 4793-4796)。後述の通り、SOD1における遺伝子欠損は、家族性筋萎縮性側索硬化症(fALS)と関連する。ミトコンドリアSOD(MnSOD)はマンガンと関連し、SOD2によりコードされる。Li等((1995) Nature Genetics 11, 376-381)は、SOD2をコードする遺伝子が不活性化されている変異体マウスを記載している。SOD3によりコードされ(Carlsson et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 6264-6268)、かつ銅および亜鉛を含有する第3の哺乳類SODは、主として細胞外に位置する。この遺伝子の不活性化は、明白な表現型をもたらさない。
【0005】
約20%のfALSがSOD1遺伝子における変異と結び付けられる(Julien, J.P., Cell (2001) 104: 581-591)。グリシン93がアラニンに変異している(G93A)、変異体SOD1遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスは、fALSの臨床的特徴および病理学的特徴の多くを有する優性遺伝性成人発症麻痺性障害を発症する(Gurney et al., Science (1994) 264: 1772-1775)。しかしながら、これまでに、ALSおよび大抵の運動ニューロン疾患において運動ニューロン変性を導く分子機序は依然ほとんど分からないままであり、ALSを予防または治癒するのに利用可能な治療は現在存在しない。
【0006】
ALSを処置する際に有効な化合物のスクリーニング方法は効率的でなく、多大な労力を要し、薬物の発見を妨げるものである。上述のALSトランスジェニックマウスは、候補化合物の有効性を評価するための有用なインビボ方法を表すが、マウスを用いた実験は、比較的高価であり、時間のかかるものであり、ハイスループットスクリーニングにあまり適さない。他の実験は、死後のヒト試料における遺伝子発現の研究に頼ったものであり、そしてそれは十分でなく、制御された実験的操作に従わない。
【0007】
ALSの効率的なインビトロモデルは、可能性のある治療用化合物の迅速スクリーニングを促進するだろう。インビトロで有益な効果を示す化合物は、次に、さらなる試験、例えば、上述のトランスジェニックマウスを用いてさらに確認され得る。しかしながら、既存のインビトロ方法は、ハイスループットスクリーニングに適していない。例えば、ある方法では、初代培養中の個々の細胞に変異体SOD1遺伝子(例えば、G93A)をコードするプラスミドを用いてマイクロインジェクションし、ALSにおける同じ変異体遺伝子の過剰発現の効果を模倣する。次に、かかる細胞を目的の化合物で処理して、該化合物が、凝集体または封入体の形成などのSOD1の過剰発現と関連する表現型効果(複数を含む)を逆転させることができるかどうかを決定することができる。しかしながら、マイクロインジェクションは多大な労力を要し、かつ制限された数の細胞のみに行うことができる。そしてそのことが、統計上確かな結果を得ることを難しくする。
【0008】
ALSの効果を逆転させるか、あるいは改善する際の有効性について化合物をスクリーニングするためのモデル系の必要が存在し、そしてモデルは、ハイスループットスクリーニングに従い、統計上有意な数の細胞の評価により目的の化合物の有効性を決定することを可能にするべきである。
【0009】
野生型SOD(変異体ではない)は、治療剤として有用であるかもしれない。多くの障害は、酸化的ストレス、すなわち、スーパーオキシドなどの細胞において有害な反応性酸素種(ROS)が存在することの結果である。例えば、Cash et al. (2004) Med. CheO. Rev. 1: 19-23を参照されたい。スーパーオキシドジスムターゼは、スーパーオキシドの過酸化水素および分子酸素への変換を触媒する。SODにより生成される過酸化水素は、続いて、カタラーゼにより分子酵素および水に変換され、スーパーオキシドのより反応性の低い、従ってより損傷を与えない形態の酸素への変換が完了する。
【0010】
ビタミンA、ビタミンC、グルタチオン、ビタミンE、カロチン、リポ酸およびコエンザイムQ10などの酸化防止剤を投与して、かかる種の生成および蓄積を低減することができるが、かかる剤は、全身投与されたとき、細胞内で有効なレベルまで蓄積することができない。代替物として、酵素SODのかかる細胞への徐放性送達が、スーパーオキシド蓄積の有害な効果を低減することを助けるかもしれない。
【0011】
SOD活性の恩恵を受け得る対象の細胞にSOD遺伝子を送達することができる治療ベクターおよび方法の必要が存在する。かかる対象は、スーパーオキシドの過剰生成または蓄積を引き起こす障害に罹患しているもの、過剰スーパーオキシド生成または蓄積を引き起こす環境条件にさらされたもの、および正常な加齢と関連する累積酸化的損傷に従うものでさえも含む。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
1の態様において、本発明は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をコードするアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。1つの実施態様において、SODはSOD1である。別の実施態様において、SOD1遺伝子は、Gly93AlaなどのALSと関連する変異を含有する。
【0013】
1つの実施態様において、SODをコードするAAVベクター(AAV−SOD)を用いて、SOD遺伝子が標的細胞に送達される。1つの実施態様において、標的細胞は、SODの標的細胞への送達が治療上の利点をもたらす、疾患または状態を有する対象内にある。ある実施態様において、SODの送達は対象に対して治療効果をもたらす。他の実施態様において、疾患または状態は、パーキンソン病、ハンチントン病、変性性眼疾患(例えば、黄斑変性症、網膜色素変性症)、アルツハイマー病、関節リウマチ、クローン病、ペイロニー病、潰瘍性大腸炎、脳虚血(脳卒中)、心筋梗塞(心臓発作)、脳損傷および/または脊髄損傷、再かん流傷害、ALS、ダウン症、白内障、統合失調症、てんかん、ヒト白血病および他の癌、ならびに糖尿病からなる群より選択される。
【0014】
別の態様において、本発明は、Gly93AlaなどのALSと関連する変異を含有するSOD1遺伝子をコードするAAVベクターを用いて形質導入された複数の細胞を含む、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置における有効性について化合物をスクリーニングするためのモデル系に関する。種々の実施態様において、本発明のAAVベクターは、AAV−2、AAV−5またはAAV−6に由来する。
【0015】
1つの実施態様において、AAVベクターを用いて形質導入された複数の細胞は、それらが見出される集団、例えば、齧歯類脊髄由来細胞の初代培養物における少なくとも80%の細胞を含む。
【0016】
ある実施態様において、形質導入された細胞は、ALSと関連する表現型変化を示す。他の実施態様において、1種類以上のスクリーニングされた化合物が、この表現型変化を低減するか、あるいは改善する。
【0017】
なお別の実施態様において、本発明は、本発明のモデル系を用いて、ALSの処置における有効性について化合物をスクリーニングする方法に関する。
【0018】
図面の簡単な説明
図1は、pVm−G93ASODと称される、hSOD1−Gly93Alaの送達用rAAVベクターの概略図である。hSOD1−Gly93Alaの発現は、ニワトリβ−アクチンプロモーターによりもたらされる。発現カセットは、2つのAAV−2 ITR配列の間に位置する。SOD1−Gly93Alaは、本明細書において「変異体」SODとも称される。
【0019】
図2は、pVm−WTSODと称される、野生型ヒトSOD1の送達用rAAVベクターの概略図である。wtSOD1の発現は、ニワトリβ−アクチンプロモーターによりもたらされる。発現カセットは、2つのAAV−2 ITR配列の間に位置する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施は、特に示さない限り、ウイルス学、微生物学、細胞および分子生物学、ならびに組換えDNA技術の当業者において通常の方法を利用する。かかる技術は文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Current Edition);DNA Cloning: A Practical Approach, Vol. I & II (D. Glover, ed.);Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., Current Edition); Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., Current Edition);Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., Current Edition);CRC Handbook of Parvoviruses, vol. I & II (P. Tijssen, ed.);Fundamental Virology, 2nd Edition, vol. I & II (BN. Fields and D.M. Knipe, eds.);Freshney, Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (Wiley-Liss, Third Edition);およびAusubel et al. (1991) Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience, NY)を参照されたい。
【0021】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許、特許出願およびデータベース入力(OMIM入力を含む)は、全体として引用により本明細書に取り込まれる。
【0022】
本発明は、ALSのインビトロモデル系を作成するために用いられ得るか、あるいは治療剤として用いられ得るSODをコードするAAVベクターに関する。
【0023】
ALSと関連するSOD1変異
ALSモデル系に関する本発明の態様において、AAVベクターによりコードされるSOD遺伝子は、ALSと関連する変異を含む。本明細書で用いられる「ALSと関連する変異」は、ALSを有さない対象においてより、ALSを有する対象において高い頻度で生じるSOD遺伝子における変異をいう。wtSOD1のアミノ酸配列を表1にて示す。SOD1における既知の変異は、Ala4Ser、Ala4Thr、Ala4Val(A4V;147450.0012)、Cys6Gly、Cys6Phe、Val7Glu、Leu8Val、Leu8Gln、Gly10Val、Gly12Arg、Val14Met、Val14Gly、Gly16Ala、Gly16Ser、Asn19Ser、Phe20Cys、Glu2lGly、Glu21Lys、Gln22Leu、Gly37Arg(G37R;147450.0001)、Leu38Arg、Leu38Val(L38V;147450.0002)、Gly41Asp(G41D;147450.0004)、Gly41Ser、His43Arg、Phe45Cys、His46Arg(H46R;147450.0013)、Val47Phe、His48Arg、His48Gln、Glu49Lys、Thr54Arg、Cys57Arg、Ser59Ile、Asn65Ser、Leu67Arg、Gly72Cys、Gly72Ser、Asp76Tyr、Asp76Val、His80Ala、His80Arg、Leu84Val、Gly85Arg、Asn86Asp、Asn86Ser、Val87Met、Val87Ala、Ala89Thr、Ala89Val、Asp90Ala、Asp90Val、Gly93Ala(G93A;147450.0008)、Gly93Arg、Gly93Asp、Gly93Cys(G93C;147450.0007)、Gly93Ser、Gly93Val、Ala95Thr、Asp96Asn、Val97Met、Glu100Gly、Glu100Lys、Asp101Asn、Asp101Gly、Asp101His、Ile104Phe、Leu106Val、Ile113Thr(I113T;147450.0011)、Leul26Ter、Ser134Asn、Leul44Ser、およびAlal45Thrを含む。変異の後に数字が存在する場合、それらの変異のOMIM参照番号を表す。SOD1変異は、Rosen et al., (1993) Mutations in Cu/Zn superoxide dismutase gene are associated with familial amyotrophic lateral sclerosis, Nature 362: 59-62;Cudkowic et al., (1997) Epidemiology of mutations in superoxide dismutase in amyotrophic lateral sclerosis, Ann. Neurol. 41: 210-221;Belleroche et al., (1995) Familial amyotrophic lateral sclerosis/motor neuron disease (FALS): a review of current developments, J. Med. Genet. 32: 841-847においても開示されている。SOD1における多数の変異が本明細書において開示されているが、これらの変異体の全てがALSの疾患モデルを作成する際に有用であるわけではない。
【0024】
表1:wtSOD1のアミノ酸配列
【表1】

【0025】
アデノ随伴ウイルスベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療用遺伝子を送達するために首尾よく用いられており、ヒトでの臨床試験は、かなり有望であることを示している(例えば、Kay et al., Nat. Genet. (2000) 24: 257-261を参照)。単に、非病原性かつ複製欠損ウイルスに基づくウイルスベクター系として、組換えAAVビリオンは、検出可能な免疫応答または毒性なしで、種々の組織において増殖細胞および最終分化細胞の両方の効率的かつ徐放性の遺伝子伝達を確立するために首尾よく用いられてきた(Bueler, H., Biol. Chem. (1999) 380: 613-622)。
【0026】
AAVゲノムは、約4681個のヌクレオチドを含有する直鎖状の1本鎖DNA分子である。AAVゲノムは、一般に、逆方向末端反復(ITR)により各末端上で隣接される内部非反復ゲノムを含む。ITRは、およそ145塩基対(bp)の長さである。ITRは、DNA複製開始点としての機能、およびウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしての機能を含む、複数の機能を有する。ゲノムの内部非反復部分は、AAV複製(rep)およびキャプシド(cap)遺伝子として知られている2つの巨大なオープンリーディングフレームを含む。repおよびcap遺伝子は、ウイルスが複製され、ビリオンにパッケージングされることを可能にするウイルスタンパク質をコードする。特に、少なくとも4種類のウイルスタンパク質Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40(それらの見かけ分子量に従い命名)のファミリーは、AAVrep領域から発現する。AAVcap領域は、少なくとも3種類のタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする。
【0027】
AAVは、AAVゲノムの内部非反復部分(すなわち、repおよびcap遺伝子)を欠損させ、ITR間に異種遺伝子を挿入することにより、目的の遺伝子を送達するように操作されている。異種遺伝子は、典型的には、適当な条件下で患者の標的細胞において遺伝子発現をもたらすことができる異種プロモーター(恒常的、細胞特異的、または誘導可能)に機能的に結合される。ポリアデニル化部位などの終結シグナルも含まれ得る。
【0028】
AAVはヘルパー依存性ウイルスである。すなわち、それは、野生でAAVビリオンを形成するために、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、またはワクシニア)との共感染を必要とする。ヘルパーウイルスとの共感染がない場合、AAVは、ウイルスゲノムは宿主細胞の染色体に挿入されているが、感染性ビリオンは生成されない、潜伏状態を確立する。後のヘルパーウイルスによる感染が、組み込まれたゲノムを「レスキューし」、ゲノムを複製し、そのゲノムを感染性AAVビリオンにパッケージングすることを可能にする。AAVは異なる種由来の細胞に感染することができ、ヘルパーウイルスは宿主細胞と同じ種のものでなければならない。従って、例えば、ヒトAAVは、イヌアデノウイルスに共感染したイヌ細胞において複製する。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、三重トランスフェクション法(全体として引用により本明細書に取り込まれる、米国特許第6,001,650号において詳細に記載)を用いて、rAAVビリオンを生成する。なぜならこの方法は感染性ヘルパーウイルスの使用を必要とせず、rAAVビリオンが検出可能なヘルパーウイルスが全く存在することなく生成されることを可能にするからである。これは、rAAVビリオン生成用の3種類のベクター:AAVヘルパー機能ベクター、補助機能ベクター、およびrAAV発現ベクターを用いることにより成し遂げられる。当業者は、これらのベクターによりコードされる核酸配列が、種々の組み合わせの2種類以上のベクター上でもたらされ得ることを理解する。
【0030】
AAVヘルパー機能ベクターは、AAVヘルパー機能配列(すなわち、repおよびcap)をコードし、そしてそれは増殖性AAV複製およびキャプシド形成のためトランスに機能する。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、機能的repおよびcap遺伝子を含有する検出可能なAAVビリオンを全く作成することなく、効率的なAAVベクター生成を支持する。かかるベクターの一例であるpHLP19が、米国特許第6,001,650号(全体として引用により本明細書に取り込まれる)に記載されている。AAVヘルパー機能ベクターのrepおよびcap遺伝子は、上で説明された既知のAAV血清型のいずれかに由来し得る。例えば、AAVヘルパー機能ベクターは、AAV−2由来のrep遺伝子、およびAAV−6由来のcap遺伝子を有していてもよい。当業者は、他のrepとcap遺伝子の組み合わせが可能であることを理解し、決定的特徴はrAAVビリオンの生成を支持することができることである。
【0031】
補助機能ベクターは、本明細書において補助機能と称される、AAVが複製のため依存する非AAV由来ウイルスおよび/または細胞機能のヌクレオチド配列をコードする。補助機能はAAV複製に必要とされるそれらの機能を含み、そしてそれは、AAV遺伝子転写、ステージ特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成、およびAAVキャプシド構築の活性化に関与する部分を含むが、これらに限定されない。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、およびワクシニアウイルスなどの周知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。好ましい実施態様において、補助機能プラスミドpLadeno5が用いられる。pLadeno5に関する詳細は、米国特許第6,004,797号(全体として引用により本明細書に取り込まれる)において記載されている。このプラスミドは、AAVベクター生成のためのアデノウイルス補助機能の完全なセットを提供するが、複製コンピテントアデノウイルスを形成するのに必要な要素を欠く。
【0032】
組換えAAV発現ベクター
組換えAAV(rAAV)発現ベクターは、制御エレメント(転写開始領域を含む)、目的のSODコードポリヌクレオチド、および転写終結領域を含む、作動可能に結合した要素を提供するよう、既知の技術を用いて構築される。得られたコンストラクトは、機能性AAV ITR配列と(5’および3’)結合した作動可能に結合した成分を含有する。
【0033】
ALS研究用のモデル系を対象とする実施態様において、哺乳類神経細胞において機能する制御エレメントが選択される。治療上使用するためのAAV−SODベクターを対象とする実施態様において、目的の標的細胞または組織において機能的である制御エレメントが選択される。本発明のある実施態様において、組織特異的かつ調節可能な制御エレメントが望まれるが、他の実施態様は、恒常的プロモーターの使用を含む。
【0034】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は知られている。例えば、AAV−2配列について、Kotin, R.M. (1994) Human Gene Therapy 5: 793-801;Berns, K.I. "Parvoviridae and their Replication" in Fundamental Virology, 2nd Edition, (B.N. Fields and D.M. Knipe, eds.)を参照されたい。本発明のベクターにおいて用いられるAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換により変化していてもよい。加えて、AAV ITRは、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7およびAAV−8などを含むが、これらに限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来してもよい。AAV ITRはまた、例えば、マウス、ヤギ、またはウシ供給源から単離されたAAV変異体に由来してもよい。さらに、意図された通り機能する、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列を切除し、レスキューすることを可能にし、かつAAV Rep遺伝子産物が細胞に存在するとき、レシピエント細胞ゲノムへのDNA分子の組み込みを可能にする限り、AAV発現ベクターにおいて選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、同じAAV血清型または単離物と同一であるか、あるいはそれに由来することは必ずしも必要としない。
【0035】
異なるAAV血清型を用いて、異なる細胞種類を特異的に標的にすることができる。例えば、種々の実施態様において、本発明のベクターは、AAV−2、AAV−5およびAAV−6に由来する。例えば、初代ラット運動ニューロン培養物において、AAV−6由来ベクターは、主としてニューロンにおいてSOD発現を指令し、AAV−2由来ベクターは、ニューロンとグリアの両方においてSOD発現を指令し、そしてAAV−5由来ベクターは、主としてグリアにおいてSOD発現を指令する。hSOD1−Gly93Alaは、AAV−2由来ベクターを用いて送達されたとき、病変と関連する運動ニューロンにおける形態学的変化を引き起こすが、AAV−5由来ベクターを用いて送達されたとき、運動ニューロンにおいて病変を引き起こさない。
【0036】
AAV−SODの治療上の使用
rAAV−SODの治療上の使用に関する本発明の種々の実施態様において、rAAVベクターを用いて、SOD1、SOD2もしくはSOD3遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせを送達させる。特定の実施態様において、SOD1が送達される。
【0037】
本明細書に記載のベクターを用いて、望ましくないレベルのROSおよびフリーラジカル、または酸化的ストレスと一般的に関連する疾患または状態を処置または予防し得る。ROSは、いくつかの治療薬物の有害な副作用としても生じる。例えば、Chan et al. (1996) Adv. Neurol 71: 271-279;DiGuiseppi and Fridovich (1984) Crit. Rev. Toxicol. 12: 315-342を参照されたい。本発明のAAV−SODベクターを用いて処置され得る状態は、パーキンソン病、ハンチントン病、変性性眼疾患(例えば、黄斑変性症、網膜色素変性症)、アルツハイマー病、関節リウマチ、クローン病、ペイロニー病、潰瘍性大腸炎、脳虚血(脳卒中)、心筋梗塞(心臓発作)、脳損傷および/または脊髄損傷、再かん流傷害、ALS、ダウン症、白内障、統合失調症、てんかん、ヒト白血病および他の癌、ならびに糖尿病を含む。
【0038】
加齢と関連する正常な酸化的損傷に罹患しているにすぎない対象でさえ、本発明のベクターおよび方法から利益を享受し得る。ROSおよびフリーラジカルの形成による酸化的ストレスの漸進的上昇は加齢中に生じ(例えば、Mecocci, P. et al. (2000) Free Radio. Biol. Med, 28: 1243-1248を参照)、このことは、ラット組織(Erdincler, D. S., et al. (1997) Clin. Chim. Acta, 265: 77-84)および高齢ヒト患者の血液細胞(Congi, F., et al. (1995) Presse. Med., 24: 1115-1118)における脂質過酸化物(lipid peroxidate)形成の増加により証明されている。最近のレビュー(Niki, E., Intern. Med. (2000) 39: 324-326)によると、ROSおよびフリーラジカルによる組織損傷の増加の原因は、加齢中に生じる抗酸化酵素SODおよびCATのレベルの低下にあり得ることが報告されている。例えば、余分なSOD遺伝子をマウスのゲノムに挿入することにより作成されたトランスジェニック動物は、低減したレベルのROSおよびフリーラジカル損傷を有することが見出された。かかる動物は、寿命の延びも有していた。より最近の証拠によると、SOD活性を模倣する小マンガンポルフィリン化合物の投与は、線虫セノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)の寿命の44%の延びを導くことが示された(S. Melow, et al. (2000) Science, 289: 1567-1569)。従って、本発明のベクターおよび方法は、加齢プロセスに付随するROSおよびフリーラジカルレベルの上昇により引き起こされる組織損傷の増大および平均余命の低下を予防し、および/または打ち消し得る。
【0039】
本明細書において用いられるALSの「処置」は、治療上所望の結果である、既存の損傷の逆転、さらなる損傷の予防、および損傷の進行の遅延を含む。本発明の治療用rAAV−SODベクターまたはインビトロALSモデル系を用いて発見された化合物は、治療上有効と考えられるべき既存の損傷の逆転を必要としない。対象においてALSの進行を少なくとも遅延させる任意の処置が、治療上有効であると考えられ得る。
【0040】
治療用化合物についてスクリーニングするためのALSのインビトロモデル系
実施例においてより詳細に記載される通り、本発明のAAV−SODベクターを用いて、ALSの処置または予防における有効性について化合物をスクリーニングするために用いられ得るALSのインビトロモデル系を作成することができる。1つの実施態様において、ALSと関連する既知の変異体SOD1(SOD1−Gly93Ala)が、AAVベクターにクローン化され、組換えビリオン(rAAV−SOD1−Gly93Ala)が生成される。次に、rAAV−SOD1−Gly93Alaを用いて、ラット脊髄またはラット脳などの代表的組織由来の初代培養物を形質導入する。次に、トランスフェクションの3〜5日後に培養物を調べ、培養物中のニューロンの幾つかが、SOD凝集体の形成または空胞形成などのALSと関連する形態学的変化を示すことを確認する。かかる細胞は、本明細書において「ALS様細胞」と称される。かかる凝集体は、免疫細胞化学により可視化され得る。好ましい実施態様において、培養物中のALS様細胞の割合は高く、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、または95%またはそれ以上である。培養物中のALS様細胞の割合が高ければ高いほど、培養細胞を用いて、スクリーニングされ得る化合物の数が多くなるか、あるいは個々の化合物それぞれの複製数が多くなる。
【0041】
1種類以上の目的の化合物にALS様細胞をさらし、続いてALS様細胞の表現型が、SOD凝集体の低減などALS特徴の改善を反映する方法で変化するかどうかを決定することにより、スクリーニングは行われる。ある実施態様において、化合物は、個々のボトル、ディッシュ、プレートまたはマルチウェルプレートのウェル中の培養物などのALS様細胞の単離培養物に個別に添加される。他の実施態様において、化合物は、いくつかの化合物の混合物として添加される。ある実施態様において、化合物は、化合物のコンビナトリアルライブラリーまたはサブライブラリーとして添加される。ある実施態様において、化合物の混合物内での活性な化合物の同一性は、化合物の重複サブライブラリーを用いて得られたデータのデコンボリューションにより決定される。他の実施態様において、活性な化合物の同一性は、活性な混合物中において別々に、あるいは小グループにおいて個々の化合物をスクリーニングすることにより決定される。化合物の混合物またはライブラリーにおける活性な化合物の検出方法は、本発明の重要な態様ではない。
【0042】
実施例1において示される通り、変異体SOD遺伝子としてのSOD1−Gly93Alaの使用は、形質導入されたラット脊髄運動ニューロンおよびグリア細胞内でのSOD凝集体の形成、およびラット脳由来の線状体ニューロンおよびグリア細胞の空胞形成を引き起こす。形態学的特徴は、免疫細胞化学により視覚的に観察され得、例えば、形質導入細胞が可能性のある治療剤または処置を用いて処理されたとき、かかる形態学的特徴の任意の逆転が観察され得る。他の実施態様において、ALS様表現型の観察は、例えば、ヒトが介入することなく、凝集または空胞形成を検出することができるコンピューター支援画像解析により自動化される。かかるコンピューター支援画像解析は、多数の可能性のある治療剤または処置のスクリーニングにおいて特に好ましい。なお別の実施態様において、Gly93Ala以外のSOD1変異体が用いられ、これらの他の変異体SOD1遺伝子を用いて形質導入された細胞の表現型は、SOD1Gly93Ala形質導入と関連する表現型と異なっていてもよい。変異体SOD形質導入と関連する任意の検出可能な表現型変化を用いて、細胞がALS様表現型に対して形質導入されているかどうか、および可能性のある治療剤または処置がALS様表現型を逆転させる際に有効であるかどうかの両方を評価することができる。
【0043】
スクリーニングされ得る化合物は、ALS様細胞の培養物において提供され得る任意の化合物を含む。これらの化合物は、天然物(粗混合物または高度精製成分のいずれか)、合成化合物、コンビナトリアルライブラリー、および既知の治療上活性な化合物のライブラリーを含むが、これらに限定されない。合成化合物は、ランダムに選択されるか、あるいは合理的薬物設計を用いてALSの処置において用いられるため特異的に合成され得る。コンビナトリアルライブラリーは、小分子のコンビナトリアル合成に由来するか、あるいはオリゴヌクレオチド、オリゴ糖またはペプチドなどの高分子のコンビナトリアル合成に由来し得る。本発明のALSのインビトロモデル系を用いてスクリーニングされるべきライブラリーは、10、50、100、500、1000、10,000、100,000から1,000,000またはそれ以上を含む任意の数の個々の化合物を含んでいてもよい。本明細書で用いられる「ハイスループットスクリーニング」は、トランスジェニックマウスSOD1−Gly93Alaモデルなどのアッセイを用いて同じ時間および労力をかけて可能であるものより、単位時間当たり(例えば、1日当たり)より多くの化合物をスクリーニングすることをいう。種々の実施態様において、ハイスループットスクリーニングは、1日当たり10、20、50、100、500、1000、2000、5000またはそれ以上の種類の化合物のスクリーニングをいう。本発明のモデル系を用いて、ALS様表現型を逆転するか、または予防するための処置能力について、剤の添加を含まない処置もスクリーニングすることができる。
【0044】
本発明のインビトロアッセイにおいて有効性を示す化合物は、次に、例えば、他のインビトロアッセイ、インビボアッセイ(例えば、上述のALSマウス)、または臨床試験においてさらに研究され得る。かかる後続の試験は、本発明のインビトロモデル系より比較的多大な労力を要し、時間がかかり、かつ高価であり、従って、かかる多大な労力を要する試験を用いて多数の化合物をスクリーニングすることは現実的ではない。本発明のインビトロALSモデルを用いて、かかる多大な労力を要する試験を現実的なものにするために、候補化合物の数を十分に減らすことが可能である。このようにして、本発明のインビトロアッセイは、先行技術のスクリーニング方法を用いて実際に可能であるものよりも多くの化合物のスクリーニングを可能にし、従って、ALSの処置または予防のための有効なリード化合物を発見する可能性が増す。
【0045】
ALSのインビトロモデル系の基礎研究使用
本発明のALSモデル系は、ハイスループットスクリーニングのための効率的な方法を提供するだけでなく、疾患の病原を研究するため、およびALSにおける運動ニューロンの選択的脆弱性の根拠を明確にするための価値ある実験系も提供する。例えば、初代培養細胞は、ALSと関連する変異体SOD1をコードするAAVビリオンを用いて形質導入され、形質導入の4時間から4日後の時点で形質導入された細胞から、RNAが回収され得る。RNAは、wtSOD1をコードするAAVビリオンを用いて形質導入された対照細胞またはビリオンを用いて形質導入されていない細胞からも得られる。次に、RNA試料は、Affymetrix Gene Chip(登録商標)での遺伝子発現分析の対象とされ、対照と比較してALSモデル細胞においてどの遺伝子が過剰発現し、どの遺伝子が低発現しているかが決定される。差次的発現を示す遺伝子は、治療的介入のための魅力的な手段を表すかもしれない。
【0046】
治療用化合物についてスクリーニングするためのALSのインビボ(動物)モデル系
SODの変異体形態をコードする組換えAAVベクターを用いて、ALSの新規動物モデルを作成することもできる。動物に、ALS様表現型を生み出すために変異体SOD1遺伝子をコードするrAAVベクター(例えば、rAAVビリオン)を投与することができる。次に、ALSの症状を模倣した表現型を含む変化した表現型を示す動物を、可能性のある治療用化合物または処置の有効性を試験するための実験において用いる。次に、ALS様表現型における逆転を引き起こす化合物を、治療剤として開発するためにさらに研究することができる。かかるALSモデルにおいて用いられ得る動物は、マウス、ラットおよび非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の特定の実施態様の例を以下に提供する。説明の目的のみのため実施例を提供し、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0048】
初代ラット運動ニューロン培養物におけるALSのインビトロモデル
ALSのインビトロモデル系を以下のように構築する。SOD遺伝子の発現がニワトリβ−アクチンプロモーターにより指令されるように、ヒトSOD1野生型遺伝子(hSOD1wt)または変異体SOD1遺伝子(hSOD1−Gly93Ala)のいずれかを、2つのAAV逆方向末端反復(ITR)を含むAAV−2由来ベクターにクローニングすることにより、2種類のAAVベクターを作成する。
【0049】
次に、得られたrAAV2−SOD1−Gly93AlaベクターをAAV−2ビリオンにパッケージングし(例えば、米国特許第6,001,650号および第6,004,797号を参照)、これを用いて、初代ラット運動ニューロン培養物を形質導入する。形質導入の3〜5日後の蛍光顕微鏡検査により、形質導入した細胞が、多くの変異体SOD発現運動ニューロンにおける点状凝集体での変異体SODタンパク質の異常分布、神経細胞体の細胞質の拡大および運動神経プロセスの膨張、運動ニューロンのアポトーシス、および星状細胞の活性化などのALSの特徴的病理学的変化を示すことを明らかにする。rAAV2−SOD1wtを本発明のALSモデルにおける対照として用いる。なぜなら、このベクターを用いた形質導入は、標的細胞においてALS関連表現型変化を全く引き起こさないからである。
【0050】
それぞれpVm−WTSODまたはpVm−G93ASODをコードするAAV2ベクターを用いた形質導入の約3〜5日後のラット脊髄由来の初代培養物において、運動ニューロンにおけるSODの存在を免疫組織化学により可視化した。マウス抗SOD1 IgG 1次抗体およびAlexa−594−標識ヤギ抗マウスIgG 2次抗体を用いて、免疫組織化学を行った。pVm−G93ASODを用いて形質導入したニューロンは、pVm−WTSODを用いて形質導入したニューロンでは観察しない凝集したSOD1を示す。
【0051】
それぞれpVm−WTSODまたはpVm−G93ASODをコードするAAV2ベクターでの形質導入の約3〜5日後のラット脊髄由来の初代培養物において、グリア細胞におけるSODの存在を免疫組織化学により可視化した。pVm−G93ASODを用いて形質導入したグリア細胞は、pVm−WTSODを用いて形質導入したグリア細胞では観察しない凝集したSOD1を示す。
【0052】
AAV−5およびAAV−6由来のAAVベクター、すなわち、ITRがそれぞれAAV−5およびAAV−6に由来するAAVベクターを用いる以外、上述のものを用いて同じようにして別の実験を行う。次に、それぞれAAV−5またはAAV−6キャプシドタンパク質遺伝子を用いるパッケージングシステムを用いて、rAAV−5およびrAAV−6ビリオンを生成する。
【0053】
pVm−WTSODまたはpVmG93ASODをコードするAAV−6ベクターを用いた形質導入の約3〜5日後のラット脊髄由来の初代培養物において、運動ニューロンにおけるSODの存在を免疫組織化学により可視化した。pVm−G93ASODを用いて形質導入したニューロンは、wtSOD1を用いて形質導入したニューロンでは観察しない凝集したSOD1を示す。
【0054】
結果は、rAAV−6ビリオンを用いて送達した遺伝子がニュローンにおいて主に発現する一方、rAAV−2ビリオンを用いて送達した遺伝子は(上で考察した通り)ニューロンおよびグリアの両方において発現することを示す。rAAV−5ビリオンを用いて送達した遺伝子はグリアにおいてのみ発現し、rAAV−5ビリオン形質導入は、運動ニューロンにおいて病変を引き起こさなかった。
【0055】
運動ニューロンに対するrAAV2−SOD形質導入の表現型効果を、形質導入の6〜7日後および12日後に再び測定する。結果は、形質導入の12日後において、細胞死を導く経時的な凝集の進行を示す。pVm−G93ASODをコードするAAV2ベクターを用いた形質導入の約6〜7日後のラット脊髄由来の初代培養物において、運動ニューロンにおけるSODの存在を免疫組織化学により可視化した。pVm−G93ASODを用いて形質導入したニューロンにおけるSOD1の凝集は、形質導入の3〜5日後のものより広範であり、このことは、経時的な損傷の進行を説明している。pVm−G93ASODをコードするAAV2ベクターを用いた形質導入の約12日後のラットの脊髄由来の初代培養物において、運動ニューロンにおけるSODの存在を免疫組織化学により可視化した。結果は、SOD1−Gly93Alaが細胞にとって有毒であること、およびSOD1−Gly93Alaが最終的には細胞を殺傷することを示す。
【0056】
rAAV−SOD1−G93Aを用いた形質導入の6〜7日後の運動ニューロンの形態を評価し、ALS患者由来の運動ニューロンの形態と比較した。pVm−G93ASODをコードするAAV2ベクターを用いた形質導入の約6〜7日後のラット脊髄由来の初代培養物において、SODの存在を免疫組織化学により可視化する。培養中のrAAV−SOD1−G93A形質導入細胞は、ALS運動ニューロンの局所的な軸索膨張特徴を同じく示し、このことは、本発明のインビトロALSモデル系が疾患状態を模倣することを示唆している。pVm−G93ASODを用いて形質導入したニューロンは、6〜7日目において、ALS患者由来の運動ニューロンにおいて見られるものと類似する神経細胞体の細胞質の拡大および運動ニューロンプロセスの膨張を示す。
【0057】
ラット脊髄培養物(上記)を形質導入するために用いたのと同じビリオンをまた用いて、初代ラット脳培養物の線状体ニューロンを形質導入する。形質導入の3〜5日後の形質導入細胞の免疫細胞化学は、線状体ニューロンが、SOD1−G93Aを発現するベクターを用いて形質導入したとき、空胞形成を示すことを示す。ラット脳初代培養物由来のグリア細胞をSOD1−G93A発現AAVベクターを用いて形質導入したとき、同様の表現型を観察する。脳由来のグリア細胞は、(上で考察した)脊髄グリア細胞の同様の処置を用いて観察した凝集と対照的に、pVm−G93ASODを用いて形質導入したとき、空胞形成を示す。脳で観察したこの表現型は、形質導入した脊髄運動ニューロンおよびグリアにおいて観察したSOD1凝集体形成と対照をなす。
【0058】
SOD1−G93A発現細胞が実際に運動ニューロンであることを実験により確認する。rAAV−SOD1wtまたはrAAV−SOD1−G93Aを用いた形質導入の約5〜6日後のラット脊髄の初代培養細胞において、免疫細胞化学を行った。第1の実験は、SODおよび神経フィラメント光(NF−L)両方の免疫細胞化学検出を含むものであった。それぞれpVm−WTSODまたはpVm−G93ASODをコードするAAV−2ベクターを用いた形質導入の約3〜5日後のラット脊髄由来の初代培養物において、運動ニューロンにおけるSODおよびニューロフィラメント光(NF−L)の両方を検出した。NF−Lは特異的な神経マーカーである。同じ細胞におけるSODおよびNF−L両方の染色により、細胞がニューロンであることを確認する。第2の実験は、SODおよびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)両方の免疫細胞化学検出を含むものである。それぞれpVm−WTSODまたはpVm−G93ASODをコードするAAV−2ベクターを用いた形質導入の約3〜5日後のラット脊髄由来の初代培養物において、運動ニューロンにおけるSODおよびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の両方を検出した。ChATは運動ニューロンの特異的マーカーである。同じ細胞におけるSODおよびChAT両方の染色により、細胞が運動ニューロンであることを確認する。これらの実験は、運動ニューロンの特徴であるタンパク質を発現する細胞内でのSOD発現を示す。
【0059】
蛍光顕微鏡検査により、初代ラット運動ニューロン培養物における全細胞の約90%を形質導入したことを示す。rAAV−SOD1−Gly93Alaを用いた形質導入の高い効率は、単純に、適当な数のウイルス粒子を添加し、インキュベートすることにより、比較的少ない労力でアッセイにおいて使用するのに適した多数の細胞を提供する。本実施例において、1個の細胞当たり100,000個のrAAV−SOD1−Gly93Ala粒子を用いて、細胞を形質導入する。すなわち、感染の多重度(MOI)は105である。他の実験(示していない)は、1000までのMOIが、最大(90%)形質導入をもたらす際に同等に有効であることを示している。多数の形質導入細胞は、統計上有意な数の異なる細胞において目的の任意の所定の化合物の効果を観察することを可能にし、従って、統計上確かな結果を与える。このことは、実際にハイスループットスクリーニングのため統計上意味のある数の細胞を提供することができない、変異体SODコードプラスミドの個々の細胞へのマイクロインジェクションに関する従来の方法と対照をなす。
【0060】
多数の運動ニューロンおよび他の細胞を同時に形質導入するウイルスベクターを利用するこのエピジェネティックモデルは、ALSの分子病理学、ALSの新たな動物モデルの作成、およびALS薬物についてのスクリーニングの研究を促進し得る。
【0061】
実施例1の材料および方法は以下の通りである。
pVm−wtSODおよびpVm−G93ASODプラスミドの構築
組み込みHindIII部位を含有するフォワードプライマー、および組み込みNotI部位を有するリバースプライマーを用いたPCRにより、野生型およびG93A変異体のヒトSOD遺伝子を増幅する。
5’−AGCTAAGCTTCCACCATGGCGACGAAGGCCGTGTG−3’(HC番号146)(配列番号2)
5’−ATATGCGGCCGCTTATTGGGCGATCCCAATIACACCA−3’(HC番号147)(配列番号3)
【0062】
PCR産物をHindIIIおよびNotI制限酵素を用いて消化し、プラスミドF101のHindIIIおよびNotI部位にクローン化し、そして遺伝子をニワトリβ−アクチンプロモーターの制御下におき、両AAV ITRに隣接させて、プラスミドF101−wtSODおよびF101−G93Aを作成する。wtSODおよびG93Aをニワトリβ−アクチンプロモーターと共に、BglIIおよびNotIを用いてF101−wtSODおよびF101−G93Aから切り出し、SphI−BglIIおよびNotI−NcoIリンカーを用いてpVm−LacZのSphIおよびNcoI部位にクローン化する。配列決定分析によりコンストラクトを確かめ、pVm−wtSOD(図2)およびpVm−G93ASOD(図1)と命名する。次に、プラスミドを増幅し、これを用いて293細胞をトランスフェクトして、AAVベクターを生成する。
【0063】
初代神経培養物
day15のスプラーグドーリーラット胚から、解離脊髄または脳の初代培養物を調製する。解離線状体または脊髄組織を小片に切り刻み、トリプシンと30分間インキュベートする。解離後、組織をパスツールピペットを通して粉砕し、ポリ−D−リジン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)でコートした円形ガラス18mmカバースリップ(Fisher Scientific, Chicago, IL)を含有する12ウェル培養ディッシュ(Fisher Scientific, Chicago, IL)において、1ウェル当たり350,000個(線状体ニューロン)または700,000個(脊髄ニューロン)の細胞密度で細胞を蒔く。線状体培養物用の培地は、2% B−27、0.5mM L−グルタミンおよび25mM L−グルタミン酸を添加したNeurobasal培地(lnvitrogen, Chicago, IL)である。細胞を維持するために、1週間に1回培養物に栄養を与える。脊髄培養物用の培地は、2.5g D−グルコースを強化し、かつ2% ウマ血清、5% ウシ胎児血清、1% ペニシリン・ストレプトマイシン(penstrep)および成長因子を添加したイーグルの最小必須培地(EMEM)(ATCC, Manassas, Virginia)である。最適な細胞成長および安定性を得るために、1週間に2回、培養物に栄養を与える。4〜6日目に1.4μg/ml シトシン−B−D−アラビノシド(Calbiochem)を用いて培養物を処理することにより、非神経細胞をできるだけ少なくする。培養物を37℃、5% COにて維持する。運動ニューロンの成長および他のニューロンからの分化を可能にするために、解離の2〜3週後の実験において細胞を用いる。
【0064】
培養物の処理
線状体培養物および脊髄培養物をAAV−hSODwtまたはAAV−hG93A(1個の細胞当たり10ベクターゲノム(vg))とインキュベートし、ベクターの最大発現を達成する。
【0065】
免疫細胞化学
ガラスカバースリップ上で成長した線状体および脊髄細胞を、4% パラホルムアルデヒドを用いて固定し、0.05% NP−40により透過処理する。1×PBS、3% BSA、および2% ヤギ血清を含有するブロッキング溶液を用いる。以下の抗体:神経フィラメント−L(NF−L;AB1983,1:100,Chemicon Inc.)、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT;AB143およびMAB305,1:10,Chemicon Inc)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD;52,1:300,Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP:AB5804,1:500,Chemicon Inc)を用いて、免疫細胞化学を行う。全ての抗体をブロッキング溶液にて希釈する。1:200希釈した2次抗体:Alexa Fluor 488(緑)またはAlexa Fluor 594(赤)結合抗マウス/抗ウサギ/抗ラットIgG(Molecular Probes)とのインキュベーション後、落射蛍光顕微鏡検査により抗体分布を可視化する。
【実施例2】
【0066】
ALSの処置用候補物質としてのIL−10ペプチドの評価
ALSに対するIL−10由来ペプチドの効果を評価するためのアッセイにより、本発明の実施例1のインビトロALSモデル系の価値を明らかにする。
【0067】
当業者に既知の固相合成方法により、オリゴペプチドの製造を達成する。合成したオリゴペプチドの分析は、エレクトロスプレー質量分析、高速液体クロマトグラフィー、および精製生成物の外観を含む。オリゴペプチド(複数を含む)を1mg/mlでの注入用に水中に調製する。適当なIL−10由来ペプチド(米国特許第6,159,937号)および「スクランブル」対照ペプチドの例を表2において供する。慣習的なN末端からC末端方向でペプチド配列を供する。3文字表記を用いて、アミノ酸を指定する。
【0068】
【表2】

【0069】
典型的なペプチド配列を表2において供するが、神経障害性疼痛または神経変性疾患の処置におけるペプチドの有効性を保持し、おそらくは改良するか、あるいはその薬理学的特性を改良する種々の修飾または置換を、列挙した配列に対して成し得ることは、当業者にとって明らかである。かかる配列変異体を以下の実施例において記載する1種類以上のモデルにおいて試験して、それらの治療上の有効性を評価することができる。
【0070】
例えば、非ヒト種由来のIL−10配列を用いて、ヒト由来IL−10ペプチドと異なるIL−10由来ペプチド配列を得ることができ、そして非ヒトIL−10由来ペプチドは、ヒト由来の配列と比較して改良した特性を示すかもしれない。あるいは、治療用ペプチドの当業者によく知られた既知の経験的パラメーターを用いた調査により、変異体を設計することができる。加えて、合理的薬物設計を用いて、有効性の増大を示すことが予測される配列変異体を設計することができ、そして合理的薬物設計は、IL−10、IL−10レセプター、またはIL−10のレセプターとの複合体の3次元構造の分析に基づき得る。
【0071】
ラット脊髄の初代培養物をrAAV2−SOD1−G93Aビリオンと共にインキュベートし、1種類以上の、SOD1−G93Aを発現する形質導入運動ニューロン細胞を含む細胞培養物を生成する。上記のIL−10およびスクランブルペプチドを、rAAV−SOD1−G93A形質導入細胞の培養物を含有する組織培養プレートに形質導入後種々の時間で添加する(トリプリケート)。形質導入細胞の対照プレートはいずれのペプチドでも処理しない。ペプチド添加後時間の関数として、SOD免疫細胞化学を行い、Il−10ペプチド、スクランブルペプチド、または両方が、SOD1−G93A発現の表現型効果(すなわち、細胞内SOD凝集体形成または細胞死)を改善するかどうかを決定する。
【0072】
いずれかのペプチドまたは両方のペプチドを用いて処理した培養物において、凝集または細胞死の低減を観察すると、本発明のインビトロアッセイにおいてポジティブな結果となるペプチドを次により広範な研究(例えば、ALSマウスにおけるインビボ研究)の対象とする。本発明のインビトロアッセイにおけるポジティブな結果は、SOD凝集体形成または細胞死の10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98%またはそれ以上の低減を含む。最後にヒト対象における臨床試験を通じて、ALSの処置および予防における有効性を確認する。
【0073】
他の実験において、上で示したIL−10ペプチドの500種類の配列変異体を合成し、rAAV−SOD1−G93A形質導入運動ニューロンにおいてALS様表現型を低減する際の活性についてアッセイする。より高い活性を示すペプチドをALSの処置または予防における有効性についてさらに研究する。
【0074】
本発明と共に用いるための他のIL−10配列の代表的な非限定的な例は、NCBI受入番号NM000572、U63015、AF418271、AF247603、AF247604、AF247606、AF247605、AY029171、UL16720(全てヒト配列)、NM012854、L02926、X60675(ラット);NM010548、AF307012、M37897、M84340(全てマウス配列)、U38200(ウマ);U39569、AF060520(ネコ配列);U00799(ウシ);Ul1421、Z29362(ヒツジ配列);L26031、L26029(マカク配列);AF294758(サル);U33843(イヌ);AF088887、AF068058(ウサギ配列);AF012909、AF120030(マーモット配列);AF026277(フクロネズミ);AF097510(モルモット);U11767(シカ);L37781(スナネズミ);AB107649(ラマおよびラクダ)において記載の配列を含む。
【実施例3】
【0075】
ALSの処置用候補物質としてのGDNFペプチドの評価
ALSに対するグリア細胞由来神経栄養因子(GNDF)ペプチドの効果を評価するためのアッセイにより、本発明の実施例1のインビトロALSモデル系の価値をさらに明らかにする。IL−10よりむしろGDNF由来ペプチドおよびそのスクランブルバージョンを用意する以外、本質的には実施例2に記載の通り実験を行った。GDNFペプチドがアッセイにおいてポジティブな結果を示すと(すなわち、ペプチドでの処理後、形質導入運動ニューロンのALS様表現型特徴が低減していると)、このペプチドをさらに研究してALSの処置または予防における有効性を確認することができる。
【0076】
他の実験において、500種類の異なるGDNF由来ペプチドを合成し、rAAV−SOD1−G93A形質導入運動ニューロンにおいてALS様表現型を低減する際の活性についてアッセイする。より高い活性を示すペプチドをALSの処置または予防における有効性についてさらに研究する。
【0077】
本発明において用いるためのGDNFペプチドは、多数の既知のGDNF配列に由来してもよく、それは、米国特許第6,221,376号および第6,363,319号(全体として引用により本明細書に取り込まれる)、およびラットおよびヒト配列について、Lin et al., Science (1993) 260: 1130-1132、ならびにヒト配列について、NCBI受入番号AY052832、AJ001896、AF053748、AF063586およびL19063;ラット配列について、NCBI受入番号AF184922、AF497634、X92495、NM019139;ジャイアントパンダ配列について、NCBI受入番号AF516767;マウス配列について、NCBI受入番号XM122804、NM010275、D88351S1、D49921、U36449、U37459、U66195;ニッポニア・ニッポン(Nipponia nippon)配列について、NCBI受入番号AF469665;アカゲザル配列について、NCBI受入番号AF106678;およびゼブラフィッシュ配列について、NCBI受入番号NM131732およびAF329853において開示されているものを含む。GDNF配列は、米国特許出願番号第2003/0161814号においても開示されている。
【0078】
本発明のこれらの実施態様および他の実施態様は、本明細書における開示に照らして、当業者にとって容易に思い浮かぶものであるだろう。本発明の好ましい実施態様は詳細に記載されているが、本明細書において定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、バリエーションが作られ得ることが理解される。本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全体として引用により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、pVm−G93ASODと称される、hSOD1−Gly93Alaの送達用rAAVベクターの概略図である。hSOD1−Gly93Alaの発現は、ニワトリβ−アクチンプロモーターによりもたらされる。発現カセットは、2つのAAV−2 ITR配列の間に位置する。SOD1−Gly93Alaは、本明細書において「変異体」SODとも称される。
【図2】図2は、pVm−WTSODと称される、野生型ヒトSOD1の送達用rAAVベクターの概略図である。wtSOD1の発現は、ニワトリβ−アクチンプロモーターによりもたらされる。発現カセットは、2つのAAV−2 ITR配列の間に位置する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのAAV逆方向末端反復(ITR)配列およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をコードする遺伝子を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
SODがSOD1である、請求項1記載のベクター。
【請求項3】
SOD1がALSと関連する変異を含有する、請求項2記載のベクター。
【請求項4】
SOD1がGly93Ala変異を含有する、請求項3記載のベクター。
【請求項5】
AAVベクターがプラスミドである、請求項1記載のベクター。
【請求項6】
AAVベクターがAAVビリオンである、請求項1記載のベクター。
【請求項7】
AAVビリオンがAAV−2に由来する、請求項6記載のベクター。
【請求項8】
AAVビリオンがAAV−5に由来する、請求項6記載のベクター。
【請求項9】
AAVビリオンがAAV−6に由来する、請求項6記載のベクター。
【請求項10】
対象にSODをコードするAAVベクターを投与することを含む、対象の処置方法。
【請求項11】
対象が、ALS、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、ダウン症、関節リウマチ、クローン病、ペイロニー病、潰瘍性大腸炎、黄斑変性症、網膜色素変性症、白内障、脳虚血、心筋梗塞、脳損傷、脊髄損傷、再かん流傷害、統合失調症、てんかん、ヒト白血病、および糖尿病からなる群より選択される障害を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置または予防における有効性について化合物をスクリーニングする方法であって、
ALSと関連する変異を含有するSOD1をコードするAAVベクターを用いて細胞を形質導入して、ALSと関連する表現型特徴を示す形質導入細胞を生産すること;
該形質導入細胞を目的の化合物にさらすこと;
目的の化合物にさらされた形質導入細胞がALSと関連する表現型特徴の減少を示すかどうかを決定することを含む、方法。
【請求項13】
ALSの処置における有効性について化合物をスクリーニングするためのインビトロモデルであって、
ALSと関連する変異を含有するSODをコードするAAVベクターを用いて形質導入された複数の細胞を含む、モデル。
【請求項14】
変異がGly93Alaである、請求項12または13記載のモデル。
【請求項15】
AAVベクターを用いて形質導入された複数の細胞が、培養中の細胞集団における全細胞の少なくとも80%を含む、請求項13記載のモデル。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501009(P2009−501009A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520330(P2008−520330)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025980
【国際公開番号】WO2007/008486
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】