説明

ズームレンズ及びそれを有する光学機器

【課題】 広画角でかつ高いズーム比で色収差(特に広角端の倍率色収差)を始めとする諸収差が良好に補正された優れた光学性能を有するズームレンズ及びそれを有する光学機器を得ること。
【解決手段】 物体側より像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有し、ズーミングに際して各レンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、該第1レンズ群は、レンズ要素と、該レンズ要素とは異なる光学特性を有し、該レンズ要素に積層される樹脂層とを含む複合型光学素子を有し、該レンズ要素の材料のアッベ数νdg、該樹脂層を構成する材料のアッベ数νdj、異常部分分散比ΔθgFjを各々適切に設定すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ及びそれを有する光学機器に関し、例えばスチルカメラやデジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、そしてプロジェクター等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
最近、固体撮像素子を用いたビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等、撮像装置(カメラ)の小型化にともない、それに用いる光学系には広い画角を包含した小型のズームレンズであることが求められている。
【0003】
この種のカメラには、レンズ最後部と撮像素子との間に、ローパスフィルターや色補正フィルターなどの各種の光学部材を配置している。この為、それに用いるズームレンズには、比較的バックフォーカスの長いことが要求されている。
【0004】
さらに、カラー画像用の撮像素子を用いたカラーカメラの場合、輝度や色のシェーディングを避けるため、それに用いるズームレンズには像側のテレセントリック特性の良いものが望まれている。
【0005】
従来より、広画角で、バックフォーカスが長く、像側のテレセントリック特性の良いズームレンズとして、物体側より像側へ順に、負の屈折力のレンズ群と正の屈折力のレンズ群を有した、所謂レトロフォーカスタイプのズームレンズが知られている。
【0006】
このレトロフォーカスタイプのズームレンズとして、物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群と正の屈折力の第3レンズ群より成る、3群タイプのズームレンズが知られている(特許文献1〜5)。
【0007】
これらの3群ズームレンズのうち、特許文献1、4、5ではガラス材より成るレンズのレンズ面上に樹脂層を積層した複合型光学素子を用いて色収差を良好に補正した高い光学性能を有した小型のズームレンズを開示している。
【特許文献1】特開2005−266129号公報
【特許文献2】特開2002−23053号公報
【特許文献3】特開2002−196240号公報
【特許文献4】特開2002−6210号公報
【特許文献5】特開2004−61519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、多くのカメラにおいては、カメラの小型化を図るため、非撮影時に各レンズ群の間隔を撮影状態と異なる間隔まで縮小し、カメラ本体からのレンズの突出量を少なくした所謂沈胴式を利用したズームレンズが広く用いられている。
【0009】
一般に、ズームレンズを構成する各レンズ群のレンズ枚数が多いと、各レンズ群の光軸上の長さが長くなり、沈胴式を利用しても沈胴長が長くなってしまう。このため各レンズ群のレンズ枚数を少なくすることが重要になってくる。
【0010】
しかしながら、単に各レンズ群のレンズ枚数を削減し、沈胴長を短くした場合、球面収差やコマ収差といった単色での結像性能に関わる収差補正が困難となり、更に使用できる硝材の種類が限られた硝材範囲内となるため色収差を補正する事が困難になってくる。
【0011】
又、従来より、ズームレンズを構成するレンズ面を非球面形状とする事で、レンズの枚数を削減しつつ結像性能を良好に維持する手法が多くとられている。しかし、非球面を用いた場合、単色での結像性能に関わる収差は補正出来るものの、硝材選択が支配的となる色収差を補正する事は困難である。
【0012】
特に、レトロフォーカス型のズームレンズでは、広画角であるため使用できる硝材が限られた硝材範囲内になると倍率色収差を良好に補正することが大変難しくなってくる。
【0013】
又、レトロフォーカス型のズームレンズは全体としてレンズ構成が開口絞りに対し、非対称となるため、レンズ枚数を少なくし、小型化を図りつつ、全ズーム範囲にわたり高い光学性能をえることが大変難しい。
【0014】
特にレトロフォーカス型のズームレンズにおいて、小型化を図りつつ、高い光学性能を得るには、負の屈折力の第1レンズ群のレンズ構成を適切に設定することがズーミングに伴う色収差を含む諸収差の変動を良好に補正するのに重要である。更にレンズ系全体の小型化を図るのに重要になってくる。
【0015】
尚、従来より多くのズームレンズにおいてベースとなるレンズの上に樹脂等を積層させ、この樹脂層に非球面形状の金型を押し当てて製造した非球面レンズが用いられている。しかしこの非球面レンズは、レンズと樹脂の材質(材料)の違いを利用して、積極的に色収差の補正を行っていない。
【0016】
本発明は、広画角でかつ高いズーム比で色収差(特に広角端の倍率色収差)を始めとする諸収差が良好に補正された、優れた光学性能を有するズームレンズ及びそれを有する光学機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のズームレンズは、物体側より像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有し、ズーミングに際して各レンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、該第1レンズ群は、レンズ要素と、該レンズ要素とは異なる光学特性を有し、該レンズ要素に積層される樹脂層とを含む複合型光学素子を有し、該レンズ要素の材料のアッベ数をνdg、該樹脂層を構成する材料のアッベ数をνdj、異常部分分散比をΔθgFjとするとき、
31<|νdg−νdj|
26>νdj
0.10>|ΔθgFj|
なる条件を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、広画角でかつ高いズーム比で色収差(特に広角端の倍率色収差)を始めとする諸収差が良好に補正された、優れた光学性能を有するズームレンズ及びそれを有する光学機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のズームレンズは、物体側より像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群の少なくとも2つのレンズ群を有している。そしてズーミングに際して各レンズ群の間隔が変化するレトロフォーカス型のズームレンズである。
【0020】
図1は、本発明のズームレンズの実施例1のレンズの断面図である。図2〜図4は本発明のズームレンズの実施例1の無限遠物体に合焦した状態でのそれぞれ広角端(短焦点距離端)、中間のズーム位置、望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0021】
図5は、本発明のズームレンズの実施例2のレンズの断面図である。図6〜図8は本発明のズームレンズの実施例2の無限遠物体に合焦した状態でのそれぞれ広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。
【0022】
図9は、本発明のズームレンズの実施例3のレンズの断面図である。図10〜図12は本発明のズームレンズの実施例3の無限遠物体に合焦した状態でのそれぞれ広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。
【0023】
図13は、本発明のズームレンズの実施例4のレンズの断面図である。図14〜図16は本発明のズームレンズの実施例4の無限遠物体に合焦した状態でのそれぞれ広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。
【0024】
図17は、本発明のズームレンズの実施例5のレンズの断面図である。図18〜図20は本発明のズームレンズの実施例5の無限遠物体に合焦した状態でのそれぞれ広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。
【0025】
図21は、本発明のズームレンズの実施例6のレンズの断面図である。図22〜図24は本発明のズームレンズの実施例6の無限遠物体に合焦した状態でのそれぞれ広角端、中間のズーム位置、望遠端における収差図である。図25は本発明の撮像装置の要部概略図である。
【0026】
図1、図5、図9、図13、図17、図21のレンズ断面図において、左側が物体側(前方、拡大側)、右側が像側(後方、縮小側)である。
【0027】
又、レンズ断面図においてG1はレンズ要素、j1は後述する樹脂層である。Gaはレンズ要素G1と樹脂層j1から成る複合型光学素子である。L1は負の屈折力(光学的パワー=焦点距離の逆数)の第1レンズ群、L2は正の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群である。
【0028】
SPは開口絞りである。IPは像面であり、ビデオカメラやデジタルスチルカメラの撮影光学系として使用する際にはCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面に、銀塩フィルム用カメラのときはフィルム面に相当する。
【0029】
Gは差込フィルターや、光学的ローパスフィルター、赤外カットフィルター等に相当する光学ブロックである。
【0030】
図2〜図4、図6〜図8、図10〜図12、図14〜図16、図18〜図20、図22〜図24の収差図においてd、gは各々d線、g線である。ΔM、ΔSはd線のメリディオナル像面、d線のサジタル像面を表している。それぞれの倍率色収差はg線によって表している。また、FnoはFナンバー、ωは半画角(度)である。
【0031】
各実施例において、第1レンズ群L1は、レンズ要素G1と、このレンズ要素G1に積層された樹脂層j1にて構成した複合型光学素子Gaを有している。樹脂層j1はレンズ要素G1と異なる光学特性を有している。この樹脂層j1を例えば光または熱により硬化する硬化性樹脂によって作成する場合、一般的には成形型を用いて光重合成形または熱重合成形によって作成される。
【0032】
したがって成形型の形状を予め非球面形状としておけば、比較的容易にレンズ要素G1の境界面とは反対側の面を非球面形状とすることが出来る。
【0033】
各実施例の光学系では、物体側より像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、正の屈折力の第3レンズ群L3の3つのレンズ群でズームレンズを構成している。
【0034】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、矢印に示す如く第1レンズ群L1が像側に対して凸状の軌跡で移動している。即ち一度像側に移動した後、物体側へと移動する。第2レンズ群L2及び第3レンズ群L3は物体側へ移動している。各実施例のズームレンズでは第2レンズ群L2の移動により主な変倍を行い、第1レンズ群L1及び第3レンズ群L3の移動によって変倍に伴う像点の移動を補正している。
【0035】
各実施例において、第1レンズ群L1は、両面が凹形状の負レンズ(レンズ要素)G1と、この負レンズG1の像面側に積層された樹脂層j1より成る複合型光学素子Gaで構成している。また第2レンズ群L2は物体側から像側へ順に両面が凸形状の正レンズと物体側に凸のメニスカス形状の負レンズの2枚で構成している。
【0036】
第3レンズ群L3は、数値実施例1〜4では両凸形状の1つの正レンズで構成している。数値実施例5、6では物体側に凸のメニスカス形状の1つの正レンズで構成している。
【0037】
絞り部材としての開口絞りSPを、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズG21の物体側のレンズ面G21aの物体側頂点G21apと、このレンズG21の物体側のレンズ面G21aとレンズ外周部との交点G21hの間に配置している。こうすることで第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間の部材をなくし、レンズ沈胴時に第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間隔を極限まで近づける事を容易にしている。
【0038】
尚、以下の各実施例において広角端と望遠端は変倍用レンズ群が機構上光軸上を移動可能な範囲の両端に位置したときのズーム位置をいう。
【0039】
各実施例において第3レンズ群L3を第2レンズ群L2と一体化して、ズーミングの際に一体的に移動させても良い。
【0040】
このとき各実施例のズームレンズは2群ズームレンズとして取り扱うことができる。
【0041】
又、第3レンズ群L3の像側に屈折力のある1以上のレンズ群を配置し、全系として4群以上のズームレンズとしても良い。
【0042】
各実施例において第1レンズ群L1を構成するレンズ要素G1の材料のアッベ数をνdgとする。樹脂層j1を構成する材料のアッベ数をνdj、異常部分分散比をΔθgFjとする。このとき、
31<|νdg−νdj| ‥‥‥(1)
26>νdj ‥‥‥(2)
0.10>|ΔθgFj| ‥‥‥(3)
なる条件を満足している。
【0043】
尚、材料のアッベ数νd、部分分散比θgF、異常部分分散比(異常部分分散性)ΔθgFは次のとおりである。
【0044】
g線(波長435.8nm),F線(486.1nm),d線(587.6nm),C線(656.3nm)に対する材料の屈折率をそれぞれNg,Nd,NF,NCとする。このとき以下の式で表される。
【0045】
νd=(Nd−1)/(NF−NC)
θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)
ΔθgF=θgF−(0.6438−0.001682×νd)・・・(a)
また、レンズ要素とは、ガラスレンズ、プラスチックレンズ等樹脂が積層できる基板となる光学素子のことである。積層される樹脂層とはレンズ要素と異なる光学特性を有していれば、前もって成形された樹脂であっても良い。
【0046】
次に各条件式の技術的意味について説明する。
【0047】
条件式(1)は、レンズ要素G1と樹脂層j1の材料のアッベ数の差に関する。下限値を下回ると十分なアッベ数の差が得られず、第1レンズ群L1内における色収差の補正を十分に行うことが難しくなる。
【0048】
なお、条件式(1)の数値範囲は以下の範囲とすることが更に好ましい。これによれば更に色収差の補正が容易となる。
【0049】
35<|νdg−νdj|・・・(1a)
条件式(2)は、樹脂層j1の材料のアッベ数に関する。アッベ数の値(絶対値)が小さい、すなわち分散が大きければ、色収差を独立に補正することが容易になるので好ましい。
【0050】
次にこのことをレンズ面での軸上色収差係数及び倍率色収差係数を用いて説明する。
【0051】
屈折作用をするレンズ面のパワー変化をΔψ、材料のアッベ数をνとする、このとき、レンズ面での軸上色収差係数の変化ΔLと倍率色収差係数の変化△Tは、次のように表せる。
【0052】
ΔL ∝ Δψ/ν・・・(b)
ΔT ∝ Δψ/ν・・・(c)
式(b)及び式(c)から明らかなとおり、レンズ面のパワー変化Δψに対する各収差係数の変化ΔL,ΔTは、アッベ数νの値が小さい(すなわち、分散が大きい)ほど大きくなる。
【0053】
したがって、アッベ数νの値が小さい分散の大きな材料を用いれば、必要な色収差を得るためのパワー変化量Δψは小さくて済むことになる。
【0054】
このことは収差論上、球面収差、コマ収差や非点収差などに大きな影響を及ぼすことなく色収差をコントロールでき、色収差補正の独立性が高まることを意味する。
【0055】
逆に、分散の小さな(アッベ数νが大きい)材料を用いると、必要な色収差を得るためのパワー変化Δψは大きくなる。それに伴って球面収差などの諸収差が大きく変化し、色収差補正の独立性が弱まることになる。したがって、光学系を構成するレンズの内、少なくとも1つのレンズ面は、高分散材料で形成された屈折レンズより成るレンズ面であることが収差補正上重要である。
【0056】
またアッベ数νの値が小さければ、そもそも第1レンズ群L1内でレンズ要素との色収差のキャンセル関係を作るためのパワーが小さくて済む。パワーが小さければ収差論上好ましいだけでなく、樹脂層j1の最大厚を抑制する(小さくする)ことができる。このことは第1レンズ群L1のレンズ厚みを抑制することにつながり、結果的にコンパクトな光学系を得ることが容易となるので好ましい。
【0057】
なお条件式(2)の数値は以下の値とするのがより好ましい。これによれば更に色収差の補正が容易となる。
【0058】
24>νdj ・・・(2a)
条件式(2a)は更に好ましくは以下の値とするのが良い。
【0059】
22>νdj ・・・(2b)
条件式(3)は樹脂層j1の材料の異常部分分散比に関する。条件式(3)の上限値を上回ると広角端から望遠端まで全ズーム領域に渡って色収差を補正することが困難になる。
【0060】
次に、この理由を負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群からなるズームレンズにおいて広角端の倍率色収差係数及び望遠端の軸上色収差係数の例を用いて説明する。
【0061】
このズームレンズの各レンズ群の広角端における倍率色収差係数の波長に対する変化を示すと図25のようになる。
【0062】
第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2は上に凸状の曲線となり、第3レンズ群L3は下に凸状の曲線となる、光学系全系としては上に凸状の曲線となっている。
【0063】
同様に望遠端の軸上色収差係数の波長に対する変化を示すと図26のようになる。第1レンズ群L1及び第3レンズ群L3は下に凸状の曲線となり、第2レンズ群L2は上に凸状の曲線となり光学系全系としては上に凸状の曲線となっている。
【0064】
光学系全系として色収差を良好に補正するためには、この曲線の短波長側の曲がりを減らし直線性を高めてd線を中心として傾きを回転させれば良い。
【0065】
ここで、第1レンズ群L1の色収差係数の波長依存特性を見てみると、図25の広角端における倍率色収差係数については上に凸状の曲がりを持っている。この短波長側の曲がりは全系の曲がり方向と一致しているため、この第1レンズ群L1の曲がりを減らすことができれば全系として広角端において倍率色収差を良好に補正することができる。しかし図26に示すように望遠端において軸上色収差係数については第1レンズ群L1は下に凸状の曲がりをもっており、全系の曲がり方向とは一致していない。したがって第1レンズ群L1の曲がりを減らせば、全系の軸上色収差が悪化する。
【0066】
異常部分分散比ΔθgFはその特性を持つ材料に屈折力を与えた時に発生する色収差の短波長側の曲がりを示すものである。異常部分分散比ΔθgFの値が大きければより大きな短波長側の曲がりを示すことになり、逆に異常部分分散比ΔθgFの値が小さければ短波長側の曲がりは小さくなる。
【0067】
各実施例のズームレンズでは、負の屈折力の第1レンズ群L1に含まれる樹脂層j1で発生する色収差に関しても、上記のように広角端における倍率色収差と望遠端における軸上色収差の補正に関して相反する関係にある。
【0068】
つまり、樹脂層j1の異常部分分散比ΔθgFの値を小さくすれば広角端において倍率色収差は良好に補正されるが、逆に望遠端において軸上色収差は悪化する。また逆に樹脂層j1の異常部分分散比ΔθgFの値を大きくすれば広角端において倍率色収差は悪化するが、逆に望遠端において軸上色収差は良好に補正される。
【0069】
したがって、樹脂層j1の異常部分分散比ΔθgFは大きすぎても小さすぎても好ましくない。
【0070】
条件式(3)はこのような理由から、広角端から望遠端まで全ズーム領域に渡って色収差を良好に補正するための条件式である。
【0071】
以上のように、各実施例によれば、構成レンズ枚数が全体として4枚と少なく、広画角でかつ高いズーム比であり、色収差を含む諸収差が良好に補正された、沈胴式に好適なズームレンズが得られる。
【0072】
尚、各実施例のズームレンズにおいて更に良好なる光学性能を確保しつつ、レンズ系全体の小型化を図るためには、次の構成要件のうちの1つ以上を満足するのが良い。これによれば、各構成要件に相当する効果が得られる。
【0073】
物体側から像側へ順に負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有するズームタイプのズームレンズでは、望遠端における軸上色収差よりもむしろ広角端における倍率色収差を低減することが光学性能上望ましい。しかし、通常の硝材の部分分散比θgFは限られた範囲にしか分布していないため、少ないレンズ枚数で全波長域における色収差を良好に補正するのが困難となる場合がある。
【0074】
そこで、樹脂層j1を構成する材料の異常部分分散比ΔθgFjは
−0.10<ΔθgFj<0.038 ・・・(4)
なる条件を満足するのが好ましい。
【0075】
これによれば、広角端における倍率色収差を良好に補正することが容易となる。
【0076】
なお、条件式(4)の数値範囲は以下の数値範囲とするのが良い。これによれば広角端における倍率色収差を良好に補正することが容易となる。
【0077】
−0.10<ΔθgFj<0.01 ・・・(4a)
条件式(4a)は更に好ましくは以下の数値範囲とするのが良い。
【0078】
−0.05<ΔθgFj<0.00 ・・・(4b)
条件式(2)、(3)、(4)を満足する材料としては、樹脂や無機酸化物ナノ微粒子を合成樹脂中に分散させた混合体がある。
【0079】
様々な樹脂の中でも特にUV硬化樹脂(Nd=1.635、νd=22.7、θgF=0.69)やN−ポリビニルカルバゾール(Nd=1.696、νd=17.7、θgF=0.69)は条件式(2)(3)を満足する。またフルオレン系UV硬化樹脂(Nd=1.625、νd=25.2、θgF=0.63)は条件式(2)、(3)、(4)を満足する。
【0080】
尚、各実施例において条件式(2)、(3)、(4)を満足する材料であれば、これらに限定するものではない。
【0081】
また、一般の樹脂とは異なる光学特性を持つ光学材料として、下記の無機酸化物ナノ微粒子を合成樹脂中に分散させた混合体がある。
【0082】
ここで無機酸化物なの微粒子としてはTiO(Nd=2.757、νd=9.53)、Nb(Nd=2.367、νd=14.0)、ITO(Nd=1.8581、νd=5.53)がある。
【0083】
この他、Cr(Nd=2.2178、νd=13.4)、BaTiO(Nd=2.4362、νd=11.3)等の無機酸化物がある。
【0084】
これらの無機酸化物の中では、特にITO微粒子(Nd=1.8581、νd=5.53、θgF=0.29)を合成樹脂中に適切なる体積比で分散させた場合、上記条件式(2)、(3)、(4)を満足する光学材料が得られる。
【0085】
ITOは、透明電極を構成する材料であり、通常、液晶表示素子、EL素子等、他の用途として赤外線遮蔽素子、紫外線遮断素子に用いられている。
【0086】
各実施例において樹脂に分散させるITO微粒子の平均径は、散乱などの影響を考えると2nm〜50nm程度がよく、凝集を抑えるために分散剤などを添加しても良い。
【0087】
ITOを分散させる媒体材料としては、ポリマーが良く、成形型等を用いて光重合成形または熱重合成形することにより高い量産性を得ることができる。
【0088】
また、ポリマーの光学定数の特性としても、部分分散比が比較的大きいポリマー、あるいはアッベ数が比較的小さいポリマーか、両者を満たすポリマーが良い。例えば、N−ポリビニルカルバゾール、スチレン、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)、などが適用できる。後述する実施例ではITO微粒子を分散させるホストポリマーとしてフルオレン系UV硬化樹脂、N−ポリビニルカルバゾールを用いている。しかし、各実施例は、これらの光学材料に限定するものではない。
【0089】
ナノ微粒子を分散させた混合体の分散特性N(λ)は、良く知られたDrudeの式から導きだされた次式によって簡単に計算することができる。
【0090】
即ち、波長λにおける屈折率N(λ)は、
N(λ)=[1+V{NIT(λ)−1}+(1−V){N(λ)−1}]1/2
である。
【0091】
ここで、λは任意の波長、NITはITOの屈折率、Nはポリマーの屈折率、Vはポリマー体積に対するITO微粒子の総体積の分率である。
【0092】
レンズ要素G1の空気中における焦点距離をfg、樹脂層j1の空気中における焦点距離をfjとする。このとき
fg/fj<0 ・・・(5)
なる条件を満足するのが良い。
【0093】
条件式(5)はレンズ要素G1と樹脂層j1の焦点距離の比に関し、レンズ要素G1と樹脂層j1の焦点距離を異符号とするためのものである。条件式(5)の上限を超えるとレンズ要素G1と樹脂層j1の焦点距離が同符号となり、複合型光学素子自体での色収差を良好に補正するのが困難となる。その結果、第1レンズ群L1内での色収差の補正だけでなく、全系の色収差を良好に補正することが難しくなる。条件式(5)は更に好ましくは次の如く設定するのが良い。
【0094】
fg/fj<−0.1 ・・・(5a)
また各実施例において、レンズ要素G1の屈折面のうち少なくとも1つを非球面形状とするのが良い。これにより色の球面収差などの色収差フレアを良好に補正することが容易となる。
【0095】
また各実施例において樹脂層j1の屈折面のうち少なくとも1つを非球面形状とするのが良い。これによれば色の球面収差などの色収差フレアを良好に補正することが容易となる。
【0096】
また各実施例において、レンズ要素G1としてガラス材料を既存のモールド成形法によって作成すれば、容易に非球面形状を作成することができる。
【0097】
また各実施例においては、樹脂層j1よりも物体側に紫外線吸収膜を設けるのが良い。樹脂に強い紫外線が照射されると形状が変化したり光学特性が変化したりしやすく、光学性能が劣化してくる。
【0098】
そのために樹脂層j1よりも物体側に紫外線カット膜を蒸着したり、紫外線吸収フィルターを設置したりするのが良い。しかし、紫外線吸収フィルターをレンズ要素G1とは別に樹脂層j1よりも物体側に設置すると、光学系全体が大型化してしまうため好ましくない。
【0099】
また、レンズ要素G1の硝材として紫外線を吸収しやすい材料を使ったとしても、レンズ要素G1の厚みを十分に厚くしなければ紫外線を十分吸収することが難しい。
【0100】
したがって、光学系をコンパクトに保ちながら、樹脂層j1の光学性能の変化を保護するためには樹脂層j1よりも物体側に紫外線吸収膜を設けることが好ましい。
【0101】
また、各実施例では、樹脂層j1をレンズ要素G1よりも像側に設けている。上記理由から樹脂層j1よりも物体側に紫外線吸収膜(紫外線カット膜)を設けるのが良い。
【0102】
樹脂層j1の表面に紫外線吸収膜を蒸着すれば、蒸着時の温度は百数十度〜二百度程度までになるため好ましくない。
【0103】
したがって、樹脂層j1をレンズ要素G1よりも像側に設けて、レンズ要素G1には樹脂層j1を積層する前にあらかじめ紫外線吸収膜を蒸着しておくことが好ましい。
【0104】
尚、各実施例の光学系においては、例えば公知の電気的な収差補正方法によって、歪曲収差を補正するようにしても良い。
【0105】
次に各実施例のレンズ構成の特徴について説明する。
【0106】
図1の数値実施例1は、ズーム比2.9倍、Fno2.9〜5.4程度のズームレンズである。数値実施例1の第1レンズ群L1の樹脂層j1にはUV硬化樹脂(Nd=1.635、νd=22.7、θgF=0.69)を用いており、これによりズーム全域に渡って色収差を良好に補正している。
【0107】
図5の数値実施例2は、ズーム比2.9倍、Fno2.9〜5.4程度のズームレンズである。数値実施例2の第1レンズ群L1の樹脂層j1にはフルオレン系UV硬化樹脂(Nd=1.625、νd=25.2、θgF=0.63)を用いており、これによりズーム全域に渡って色収差を良好に補正している。
【0108】
図9の数値実施例3は、ズーム比2.8倍、Fno2.9〜4.9程度のズームレンズである。数値実施例3の第1レンズ群L1の樹脂層j1にはN−ポリビニルカルバゾール(Nd=1.696、νd=17.7、θgF=0.69)を用いており、これによりズーム全域に渡って色収差を良好に補正している。
【0109】
図13の数値実施例4は、ズーム比2.8倍、Fno2.9〜4.9程度のズームレンズである。数値実施例4の第1レンズ群L1の樹脂層j1にはホストポリマーであるN−ポリビニルカルバゾールにITO微粒子を体積比で12.5%混合させた材料(Nd=1.717、νd=13.2、θgF=0.54)を用いている。
【0110】
数値実施例4ではズーム全域に渡って色収差を良好に補正しているが、特に広角端において倍率色収差を良好に補正している。
【0111】
図17の数値実施例5は、ズーム比3.7倍、Fno2.9〜5.8程度のズームレンズである。数値実施例5の第1レンズ群L1の樹脂層j1にはホストポリマーであるフルオレン系UV硬化樹脂にITO微粒子を体積比で3.0%混合させた材料(Nd=1.633、νd=21.8、θgF=0.57)を用いている。
【0112】
数値実施例5ではズーム全域に渡って色収差を良好に補正しているが、特に広角端において倍率色収差を良好に補正している。
【0113】
図21の数値実施例6は、ズーム比3.7倍、Fno2.9〜5.8程度のズームレンズである。数値実施例6の第1レンズ群L1の樹脂層j1にはホストポリマーであるフルオレン系UV硬化樹脂にITO微粒子を体積比で5.0%混合させた材料(Nd=1.647、νd=18.5、θgF=0.59)を用いている。
【0114】
数値実施例6ではズーム全域に渡って色収差を良好に補正しているが、特に広角端において倍率色収差を良好に補正している。
【0115】
以下、数値実施例1〜6の具体的な数値データを示す。各数値実施例において、面番号は物体側から順に数えている。Rは曲率半径(mm)、Dは面間隔(mm)、Nd、νdはそれぞれd線に対する屈折率、アッベ数を表す。また光学系中に用いられているレンズ要素と樹脂層についてはG1及びj1で示している。またBFはバックフォーカスであり、レンズ全長は第1面から像面までの距離を表す。fは焦点距離、FnoはFナンバー、画角ωは半画角である。また、最も像側の2つの面はフェースプレート等のガラス材である。 また、非球面は面番号の後に、*の符号を付加して表している。非球面形状は、Xを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、B,C,D,E…を各次数の非球面係数として、
【0116】
【数1】

【0117】
で表す。
【0118】
なお、各非球面係数における「E±XX」は「×10±XX」を意味している。又、前述の各条件式と各実施例との関係を表−1に示す。
【0119】
ITO微粒子分散材料の屈折率は、前述のDrudeの式を用いて計算した値を用いて算出している。
【0120】
各実施例に用いた樹脂層j1を構成する材料の光学特性を表−2に示す。実施例4〜6に用いた微粒子分散材料のホストポリマーとITO微粒子の光学特性を表−3に示す。
【0121】
数値実施例 1
単位 mm

面データ
面番号 R D Nd νd 有効径
1* -18.386 0.60 1.48749 70.2 7.80
2 4.824 0.34 1.63555 22.7 6.40
3* 6.269 (可変) 6.36
4* 4.114 2.35 1.58313 59.4 4.36
5 -10.675 0.18 4.03
6 9.909 0.67 1.75520 27.5 3.71
7* 2.955 (可変) 3.23
8* 17.454 1.41 1.71999 50.2 3.52
9* -13.255 (可変) 3.67
10 ∞ 1.00 1.51633 64.1 6.79
11 ∞ 0.45 6.92


非球面データ
円錐定数(K) 4次の係数(B) 6次の係数(C) 8次の係数(D) 10次の係数(E)
k B C D E
1面 -1.015047E+02 -6.100110E-04 6.097970E-05 -9.274630E-07 -1.471830E-08
3面 -5.415220E-01 8.666660E-04 -9.110090E-05 1.439890E-05 -4.968880E-07
4面 -6.646150E-01 -1.619240E-03 -7.111170E-05 -1.211870E-05 7.875760E-07
7面 -5.359010E-01 3.564330E-03 5.780510E-05 -1.241210E-04 1.176230E-06
8面 0.000000E+00 5.236460E-03 2.822150E-04 -1.787640E-05 5.899860E-07
9面 -1.196716E+01 1.994300E-03 2.495980E-04 2.087080E-05 0.000000E+00

各種データ
ズーム比 2.91

広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.12 11.65 17.81
Fナンバー 2.94 4.06 5.43
画角ω 30.12 16.94 11.27
像高 3.55 3.55 3.55
レンズ全長 26.40 24.97 27.85
BF 0.45 0.45 0.45
入射瞳位置 5.71 3.43 1.78
射出瞳位置 -13.18 -18.95 -24.99
前側主点位 9.08 8.09 7.12
後側主点位 -5.67 -11.20 -17.36

可変間隔 広角端 中間 望遠端
D3 10.51 4.00 1.36
D7 1.13 1.73 2.08
D9 7.77 12.23 17.41

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 3 -10.22 0.94 0.50 -0.10
2 7 13.74 3.20 -4.01 -4.62
3 9 10.67 1.41 0.47 -0.36

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -7.77
2 2 30.18
3 4 5.41
4 6 -5.82
5 8 10.67


【0122】
数値実施例 2
単位 mm

面データ
面番号 R D Nd νd 有効径
1* -16.399 0.60 1.48749 70.2 7.80
2 4.638 0.40 1.62524 25.3 6.36
3* 6.398 (可変) 6.32
4* 4.121 2.39 1.58313 59.4 4.37
5 -10.859 0.25 4.03
6 9.835 0.56 1.75520 27.5 3.67
7* 2.985 (可変) 3.25
8* 15.879 1.35 1.71999 50.2 3.56
9* -14.398 (可変) 3.68
10 ∞ 1.00 1.51633 64.1 6.78
11 ∞ 0.45 6.91


非球面データ
円錐定数(K) 4次の係数(B) 6次の係数(C) 8次の係数(D) 10次の係数(E)
k B C D E
1面 -8.001450E+01 -5.621710E-04 5.992710E-05 -9.365040E-07 -1.432180E-08
3面 -2.935760E-01 9.952390E-04 -1.138400E-04 1.658560E-05 -5.791340E-07
4面 -6.456180E-01 -1.574150E-03 -8.002310E-05 -8.592880E-06 4.871380E-07
7面 -5.328820E-01 3.610620E-03 -1.828610E-05 -8.794600E-05 -2.590340E-06
8面 0.000000E+00 5.593310E-03 2.016940E-04 9.700490E-06 -1.537050E-06
9面 -1.390920E+01 2.460040E-03 2.281220E-04 3.364710E-05 0.000000E+00

各種データ
ズーム比 2.91

広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.12 11.57 17.81
Fナンバー 2.94 4.05 5.41
画角ω 30.12 17.06 11.27
像高 3.55 3.55 3.55
レンズ全長 26.37 25.02 27.98
BF 0.45 0.45 0.45
入射瞳位 5.70 3.47 1.81
射出瞳位 -13.19 -18.94 -25.11
前側主点 9.07 8.14 7.22
後側主点 -5.67 -11.12 -17.36

可変間隔 広角端 中間 望遠端
D3 10.45 4.05 1.36
D7 1.13 1.75 2.10
D9 7.80 12.22 17.51

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 3 -10.15 1.00 0.52 -0.12
2 7 13.76 3.20 -3.97 -4.63
3 9 10.69 1.35 0.42 -0.38

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -7.35
2 2 24.80
3 4 5.44
4 6 -5.88
5 8 10.69



【0123】
数値実施例 3
単位 mm

面データ
面番号 R D Nd νd 有効径
1* -9.775 0.65 1.51633 64.1 7.38
2 10.084 0.26 1.69589 17.7 6.72
3* 15.296 (可変) 6.71
4* 4.325 2.14 1.77250 49.6 4.34
5 -29.350 0.15 3.84
6 42.216 0.45 1.84666 23.8 3.63
7* 4.902 (可変) 3.29
8* 22.443 1.50 1.77250 49.6 3.94
9* -27.256 (可変) 4.28
10 ∞ 1.00 1.51633 64.1 10.00
11 ∞ 0.58 10.00


非球面データ
円錐定数(K) 4次の係数(B) 6次の係数(C) 8次の係数(D) 10次の係数(E)
k B C D E
1面 -6.780960E+00 -1.090830E-03 4.043700E-05 1.778630E-07 -3.234840E-08
3面 7.569740E-01 -2.832490E-04 8.344170E-06 1.998470E-06 -8.208490E-08
4面 -9.458660E-02 -1.065230E-04 1.104330E-05 -6.067690E-06 3.358670E-07
7面 -4.682940E-01 3.162630E-03 2.977120E-04 -3.258140E-05 7.209230E-06
8面 0.000000E+00 -1.442440E-03 -5.411870E-05 -1.160760E-05 6.720100E-08
9面 0.000000E+00 -1.435960E-03 -5.749830E-05 -5.872390E-06 0.000000E+00

各種データ
ズーム比 2.83

広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.55 13.50 18.51
Fナンバー 2.94 4.08 4.91
画角ω 28.46 14.73 10.86
像高 3.55 3.55 3.55
レンズ全長 26.40 23.43 25.07
BF 0.58 0.58 0.58
入射瞳位置 6.03 2.56 0.93
射出瞳位置 -13.56 -19.15 -23.19
前側主点位置 9.55 6.82 5.03
後側主点位置 -5.97 -12.92 -17.93

可変間隔 広角端 中間 望遠端
D3 10.65 2.53 0.40
D7 2.79 3.23 3.48
D9 6.24 10.95 14.47

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 3 -12.29 0.91 0.23 -0.34
2 7 10.75 2.74 -2.30 -3.20
3 9 16.15 1.50 0.39 -0.47

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -9.51
2 2 41.67
3 4 5.02
4 6 -6.59
5 8 16.15



【0124】
数値実施例 4
単位 mm


面データ
面番号 R D Nd νd 有効径
1* -9.803 0.60 1.51633 64.1 7.47
2 11.874 0.21 1.71689 13.2 6.86
3* 16.707 (可変) 6.84
4* 4.299 2.13 1.77250 49.6 4.33
5 -32.645 0.15 3.82
6 36.416 0.45 1.84666 23.8 3.61
7* 4.825 (可変) 3.27
8* 21.011 1.38 1.77250 49.6 3.93
9* -30.712 (可変) 4.24
10 ∞ 1.00 1.51633 64.1 10.00
11 ∞ 0.45 10.00



非球面データ
円錐定数(K) 4次の係数(B) 6次の係数(C) 8次の係数(D) 10次の係数(E)
k B C D E
1面 -6.936748E+00 -1.067530E-03 3.933230E-05 -2.632200E-08 -2.279120E-08
3面 1.321124E+00 -2.665970E-04 9.841480E-06 1.243370E-06 -5.024760E-08
4面 -8.841300E-02 -7.961990E-05 2.277630E-06 -4.914360E-06 3.120830E-07
7面 -4.132450E-01 3.236880E-03 2.684700E-04 -2.361090E-05 6.919230E-06
8面 0.000000E+00 -1.419030E-03-8.772540E-05 -8.028340E-06 -2.308090E-07
9面 0.000000E+00 -1.464090E-03-7.381210E-05 -6.189210E-06 0.000000E+00

各種データ
ズーム比 2.83

広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.55 13.10 18.51
Fナンバー 2.94 4.00 4.89
画角ω 28.46 15.16 10.86
像高 3.55 3.55 3.55
レンズ全長 26.40 23.11 24.71
BF 0.45 0.45 0.45
入射瞳位 6.13 2.71 0.87
射出瞳位 -13.47 -18.73 -23.10
前側主点 9.60 6.87 4.83
後側主点 -6.10 -12.65 -18.06

可変間隔 広角端 中間 望遠端
D3 10.91 2.83 0.40
D7 2.77 3.26 3.57
D9 6.34 10.65 14.37

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 3 -12.59 0.81 0.19 -0.32
2 7 10.79 2.73 -2.34 -3.22
3 9 16.34 1.38 0.32 -0.47

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -10.30
2 2 56.23
3 4 5.04
4 6 -6.61
5 8 16.34



【0125】
数値実施例 5
単位 mm

面データ
面番号 R D Nd νd 有効径
1* -11.676 0.70 1.58313 59.4 7.84
2 8.457 0.48 1.63267 21.8 7.12
3* 16.203 (可変) 7.10
4* 4.185 2.25 1.77250 49.6 4.46
5 -18.301 0.15 4.20
6 -64.598 0.58 1.84666 23.8 3.97
7* 6.293 (可変) 3.56
8* 8.691 1.37 1.68893 31.1 5.39
9 12.000 (可変) 5.32
10 ∞ 1.00 1.51633 64.1 10.00
11 ∞ 0.46 10.00



非球面データ
円錐定数(K) 4次の係数(B) 6次の係数(C) 8次の係数(D) 10次の係数(E)
k B C D E
1面 -1.415030E+00 -5.468480E-04 -3.659690E-06 2.402960E-06 -6.437450E-08
3面 -4.744410E+01 8.884470E-04 -1.089820E-04 8.845670E-06 -2.159310E-07
4面 -1.324440E-01 3.536550E-04 -4.401180E-06 1.485380E-06 -2.925240E-07
7面 6.140580E-01 4.142840E-03 3.826500E-04 -1.781070E-06 6.804560E-06
8面 0.000000E+00 7.722760E-05 -5.374280E-06 1.407800E-06 -8.555420E-08

各種データ
ズーム比 3.75

広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.15 15.12 23.04
Fナンバー 2.94 4.44 5.83
画角ω 30.00 13.21 8.76
像高 3.55 3.55 3.55
レンズ全長 27.51 23.79 27.52
BF 0.46 0.49 0.47
入射瞳位 6.44 2.68 1.07
射出瞳位 -12.36 -17.91 -24.17
前側主点 9.64 5.37 2.57
後側主点 -5.69 -14.63 -22.57

可変間隔 広角端 中間 望遠端
D3 12.29 2.55 0.40
D7 7.00 5.90 6.81
D9 1.23 8.32 13.31

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 3 -11.85 1.18 0.31 -0.41
2 7 8.52 2.98 -1.67 -2.83
3 9 39.15 1.37 -1.82 -2.51

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -8.30
2 2 27.31
3 4 4.61
4 6 -6.75
5 8 39.15



【0126】
数値実施例 6
単位 mm

面データ
面番号 R D Nd νd 有効径
1* -11.605 0.70 1.58313 59.4 7.83
2 9.564 0.38 7.13
3* 16.316 (可変) 7.11
4* 4.195 2.25 1.77250 49.6 4.46
5 -17.852 0.15 4.19
6 -47.065 0.59 1.84666 23.8 3.97
7* 6.436 (可変) 3.56
8* 8.497 1.36 1.68893 31.1 5.30
9 12.000 (可変) 5.23
10 ∞ 1.00 1.51633 64.1 10.00
11 ∞ 0.46 10.00



非球面データ
円錐定数(K) 4次の係数(B) 6次の係数(C) 8次の係数(D) 10次の係数(E)
k B C D E
1面 -1.094980E+00 -5.605380E-04 2.900140E-06 2.113440E-06 -6.071910E-08
3面 -4.944740E+01 8.874350E-04 -1.061340E-04 8.741110E-06 -2.193240E-07
4面 -1.225830E-01 3.526260E-04 2.187490E-07 8.592070E-07 -2.337150E-07
7面 5.438080E-01 4.184670E-03 3.697830E-04 1.000340E-06 6.407970E-06
8面 0.000000E+00 4.427490E-05 -3.738360E-06 1.186860E-06 -7.522560E-08

各種データ
ズーム比 3.75

広角端 中間 望遠端
焦点距離 6.15 15.12 23.04
Fナンバ長 2.94 4.43 5.81
画角ω 30.00 13.21 8.76
像高 3.55 3.55 3.55
レンズ全長 27.51 23.74 27.51
BF 0.46 0.48 0.46
入射瞳位 6.42 2.64 1.02
射出瞳位 -12.46 -17.97 -24.30
前側主点 9.64 5.37 2.62
後側主点 -5.69 -14.64 -22.58

可変間隔 広角端 中間 望遠端
D3 12.32 2.55 0.40
D7 6.67 5.58 6.49
D9 1.63 8.68 13.72

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 3 -11.86 1.08 0.28 -0.38
2 7 8.60 2.99 -1.70 -2.86
3 9 36.50 1.36 -1.68 -2.37

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -8.88
2 2 34.93
3 4 4.60
4 6 -6.65
5 8 36.50

【0127】
【表1】

【0128】
次に本発明のズームレンズを撮影光学系として用いたデジタルスチルカメラ(光学機器)の実施例を図27を用いて説明する。
【0129】
図27において、20はカメラ本体、21は本発明の光学系によって構成された撮影光学系である。22はカメラ本体に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)である。23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリである。24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、固体撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。
【0130】
このように本発明のズームレンズをデジタルスチルカメラ等の光学機器に適用することにより、小型で高い光学性能を有する光学機器を実現している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施例1のズームレンズの光学断面図
【図2】実施例1のズームレンズの広角端の収差図
【図3】実施例1のズームレンズの中間の収差図
【図4】実施例1のズームレンズの望遠端の収差図
【図5】実施例2のズームレンズの光学断面図
【図6】実施例2のズームレンズの広角端の収差図
【図7】実施例2のズームレンズの中間の収差図
【図8】実施例2のズームレンズの望遠端の収差図
【図9】実施例3のズームレンズの光学断面図
【図10】実施例3のズームレンズの広角端の収差図
【図11】実施例3のズームレンズの中間の収差図
【図12】実施例3のズームレンズの望遠端の収差図
【図13】実施例4のズームレンズの光学断面図
【図14】実施例4のズームレンズの広角端の収差図
【図15】実施例4のズームレンズの中間の収差図
【図16】実施例4のズームレンズの望遠端の収差図
【図17】実施例5のズームレンズの光学断面図
【図18】実施例5のズームレンズの広角端の収差図
【図19】実施例5のズームレンズの中間の収差図
【図20】実施例5のズームレンズの望遠端の収差図
【図21】実施例6のズームレンズの光学断面図
【図22】実施例6のズームレンズの広角端の収差図
【図23】実施例6のズームレンズの中間の収差図
【図24】実施例6のズームレンズの望遠端の収差図
【図25】本発明の効果を説明する負、正、正の屈折力の3群構成の代表的なズームレンズの広角端における倍率色収差係数図
【図26】本発明の効果を説明する負、正、正の屈折力の3群構成の代表的なズームレンズの望遠端における軸上色収差係数図
【図27】本発明の光学機器の要部概略図
【符号の説明】
【0132】
G1 レンズ要素
j1 樹脂層
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
SP 開口絞り
IP 像面
G ガラスブロック
d d線
g g線
ΔS サジタル像面
ΔM メリディオナル像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より像側へ順に、負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群を有し、ズーミングに際して各レンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、該第1レンズ群は、レンズ要素と、該レンズ要素とは異なる光学特性を有し、該レンズ要素に積層される樹脂層とを含む複合型光学素子を有し、該レンズ要素の材料のアッベ数をνdg、該樹脂層を構成する材料のアッベ数をνdj、異常部分分散比をΔθgFjとするとき、
31<|νdg−νdj|
26>νdj
0.10>|ΔθgFj|
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記樹脂層を構成する材料の異常部分分散比ΔθgFjは
−0.10<ΔθgFj<0.038
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記レンズ要素の空気中における焦点距離をfg、前記樹脂層の空気中における焦点距離をfjとするとき
fg/fj<0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記レンズ要素の少なくとも1つの面は、非球面形状である事を特徴とする請求項1、2又は3に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記樹脂層の少なくとも1つの面は、非球面形状である事を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記レンズ要素は、ガラス材料をモールド成形することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記樹脂層よりも物体側に紫外線吸収膜が設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記樹脂層は前記レンズ要素よりも像側に設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群の像側に、ズーミングに際して他のレンズ群と独立に移動する正の屈折力の第3レンズ群を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項のズームレンズと、該ズームレンズによって形成した像を受光する撮像素子を有していることを特徴とする光学機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2009−169247(P2009−169247A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9079(P2008−9079)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】