説明

セキュリティ管理装置、方法、及びそのプログラム

【課題】 種々の機器で機能利用の可否を決定する場合に認証用情報の入力待ち状態が放置されることによる弊害を払拭し、機能利用の的確なセキュリティ管理を実現する。
【解決手段】 予め設定した省エネモード移行時間が経過した時に、消費電力の節約等を図る省エネモードに移行するのと同時に通常の操作を不可能とするセキュリティモードに移行する。セキュリティモードにおいて、各機能に関するバックグラウンド処理を実行し、何らかの入力があればセキュリティモードの解除処理を開始し、パスワード入力画面を表示してパスワードの入力待ち状態とする。パスワードの入力待ち状態が放置され、省エネモード移行時間よりも短い予め設定したセキュリティモード再移行時間が経過すると、解除処理を開始する前の省エネモードとセキュリティモードの動作状態に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の機器における機能利用の可否を決定して当該機能利用のセキュリティを管理するセキュリティ管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータや画像形成装置等の電子機器を始めとする種々の機器においては、消費電力の低減や情報管理等の観点から所定時間の不使用等により一定の機能の動作を一時停止させておく動作モードを備えているものが多い。一般のコンピュータで起動される節電のためのサスペンド・モードや画面保護のためのスクリーン・セーバ等は、その代表的な例である。このような動作モードによって一時停止状態になっている機能動作を復帰させるためには、何らかの入力を与える任意の操作を行うだけで足りる場合もあるが、パスワード入力等による認証が要求される場合もある。近年の傾向としては、情報管理の要請や操作機能の多様化等を背景としてセキュリティ強化の観点から認証が要求される場合が増えてきており、かかる認証に関する先行技術としては次のようなものがある。
【0003】
特許文献1は、最後のユーザ入力からの経過時間又はシステムの動作待ち状態の継続時間が設定時間以上になると節電動作のサスペンド・モードに入るパーソナル・コンピュータにおいて、レジューム時にサスペンド・モードの継続時間が所定時間を越えていればパスワード入力を求め、越えていなければパスワード入力を求めないこととする技術を開示している。この技術は、ユーザが離席している可能性に応じてパスワード入力を要求することにより、システムのセキュリティとユーザビリティの均衡を保ちつつサスペンド・モードからのレジューム動作を行うものとしている。
【0004】
特許文献2は、キー操作入力又は処理完了の後のアイドル状態で所定時間が経過したときに各種処理設定を標準状態に戻すオートクリア処理を実行する画像形成装置について、オートクリア処理の実行前の状態に復帰する際の復帰確認処理を開示している。この復帰確認処理は、オートクリア処理の実行前の状態が各種設定等の管理操作中であった場合、復帰させようとする状態が管理操作であることの表示、パスワードの入力要求ないし所定の復帰操作の要求をすることにより、管理者以外の一般使用者による管理操作を防止するようにしている。
【0005】
特許文献3は、医師が患者の検査データの閲覧等をするのに利用する情報管理装置を開示している。この情報管理装置は、入力が途絶えてから予め設定した継続時間以内に再度の入力がなければ表示部の表示を消去し、あるいは、表示したまま放置しても構わない画面に変更し、再び情報の閲覧等をする場合にはパスワードの入力と情報へのアクセス権を証明する鍵情報の入力を求めるものとなっている。
【0006】
特許文献4は、サーバが各クライアントのユーザの在席情報を提供するシステムを開示している。このシステムにおいては、クライアントの情報処理端末が所定時間以上未操作であった場合にスクリーン・セーバを起動し、パスワードの入力によりスクリーン・セーバを解除して情報処理端末からサーバにユーザの在席を通知することとしている。
【特許文献1】特開平9−34577号公報(段落0028〜段落0067、図1〜図5)
【特許文献2】特開2002−341702号公報(段落0022〜段落0061、図1〜図16)
【特許文献3】特開平5−324559号公報(段落0015〜段落0029、図1及び図2)
【特許文献4】特開2003−281336号公報(段落0016〜0049、図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したようなパスワード入力等による認証では、表示手段によってパスワード等の認証用情報の入力を促す表示を行うと共に、キー操作等による入力を受け付けて予め記憶されている認証用情報との照合を行うのが通例である。したがって、一時停止状態になっている機能動作を復帰させるに当たっては、認証過程の段階で表示手段、入力手段、記憶手段及び演算手段等を動作させる必要がある。
【0008】
これに対し、情報の盗用を目論む第三者等が不正に機能動作を復帰させようとした場合には、認証用情報が知られていなければ機能動作が復帰することはないが、認証過程は実施されるので、表示手段等のいくつかの手段が動作する。そして、認証用情報の入力待ち状態のまま放置されたり、正しくない認証用情報に対する処理が実行されたりすることになる。入力された認証用情報が正しくない場合には再度認証用情報の入力を求める形態が一般的に多く採用されているので、結果的には認証用情報の入力待ち状態のまま放置されることが多いのが実情であろう。
【0009】
すなわち、認証用情報を知らない第三者が機能動作を復帰させようとした場合には、認証過程の実施によって無駄な動作が実行され、その無駄な動作が実行されている最中の状態が放置される結果となる。このため、消費電力の低減を図る上記サスペンド・モード等からの復帰にあっては、本来の目的を損なう電力の消費をすることになり、例えば、パスワード入力を求める表示手段の表示動作等が意味なく続き、サスペンド・モード等の動作モードを備えていること自体が無意味になってしまう。
【0010】
また、認証用情報の入力待ち状態は、本来、セキュリティを強化するための認証において認証過程実施中の一時的な状態であり、認証用情報を直ちに受け付けて後続の処理へと移ることが予定されているので、その状態が放置されるのはセキュリティ管理の面からも好ましいとはいえない。例えば、複数のユーザが共用している画像形成装置等において、認証用情報の入力待ち状態でパスワード等の入力を求める表示が放置されると、一時停止状態になっている機能動作を復帰させるためにはパスワード等が必要であるということを意味なく告知し続けることにもなる。さらに、その機能動作以外の動作による機能を利用しようとするユーザに対しては、放置された状態を解除する不用な手間をかけさせることになり、ユーザの負担増大や機能利用の効率低下といった問題も生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、一時停止状態になっている機能動作を復帰させる場合等、種々の機器における機能利用の可否を決定する場合において、認証用情報の入力待ち状態が放置されることによる弊害を払拭し、機能動作を一時停止させておく動作モード等の実効を確保しつつ、機能利用の的確なセキュリティ管理を実現することができるセキュリティ管理技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、本発明に係るセキュリティ管理装置は、予め設定された移行時間が経過した時に、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行する移行手段と、前記セキュリティモードにおいて前記機能利用を許可する認証に用いる認証用情報の入力を要求する入力要求手段と、前記認証用情報の入力待ち状態で前記移行時間よりも短い予め設定された再移行時間を経過した時に、前記移行手段によって移行した前記セキュリティモードの動作状態に戻る戻し手段とを有している。
【0013】
このセキュリティ管理装置において、前記移行時間は、前記機器の少なくとも1つの機能を無効にする動作モードに移行する前記機器の不使用継続時間であり、前記移行手段は、前記移行時間が経過した時に、前記動作モードに移行するのと同時に前記セキュリティモードに移行し、前記戻し手段は、前記認証用情報の入力待ち状態で前記再移行時間を経過した時に、前記移行手段において移行した前記動作モードと前記セキュリティモードの動作状態に戻るものとしてもよい。ここで、前記動作モードは、前記機器の機能動作を一時停止状態とする動作モードであるものとしてもよい。
【0014】
また、前記機器は、画像形成装置としてもよい。第1の例としては、前記機器は、読取画像のデータを一時的に保存する記憶手段を有する画像形成装置であり、前記記憶手段に一時的に保存されたデータが残っているときに、前記セキュリティモードにおいて当該データを削除する削除手段をさらに有するものとしてもよい。第2の例としては、前記機器は、印刷データを受け付けて印刷出力を実行する機能を有する画像形成装置であり、前記セキュリティモードの動作状態中に前記画像形成装置が印刷データを受け付けたときに、当該印刷データを保存して前記画像形成装置の印刷出力を実行させない第1の印刷制限手段と、前記認証用情報が入力されて前記機能利用を許可するときに、当該印刷データの印刷出力を前記画像形成装置に実行させる第1の印刷実行とをさらに有するものとしてもよい。第3の例としては、前記機器は、ファクシミリを受信して印刷出力を実行する機能を有する画像形成装置であり、前記セキュリティモードの動作状態中に前記画像形成装置がファクシミリを受信したときに、当該ファクシミリの受信データを保存して前記画像形成装置の印刷出力を実行させない第2の印刷制限手段と、前記認証用情報が入力されて前記機能利用を許可するときに、前記受信データの印刷出力を前記画像形成装置に実行させる第2の印刷実行手段とをさらに有するものとしてもよい。
【0015】
また、本発明に係るセキュリティ管理方法は、予め設定された移行時間が経過した時に、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行する第1の過程と、前記セキュリティモードにおいて前記機能利用を許可する認証に用いる認証用情報の入力を要求する第2の過程と、前記認証用情報の入力待ち状態で前記移行時間よりも短い予め設定された再移行時間を経過した時に、前記第1の過程において移行した前記セキュリティモードの動作状態に戻る第3の過程とを有している。
また、本発明に係るセキュリティ管理のプログラムは、予め設定された移行時間が経過した時に、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行する第1の手順と、前記セキュリティモードにおいて前記機能利用を許可する認証に用いる認証用情報の入力を要求する第2の手順と、前記認証用情報の入力待ち状態で前記移行時間よりも短い予め設定された再移行時間を経過した時に、前記第1の手順において移行した前記セキュリティモードの動作状態に戻る第3の手順とをコンピュータに実行させるものとなっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行し、機能利用を許可する際の認証用情報の入力待ち状態で先にセキュリティモードに移行するに至った移行時間よりも短い再移行時間を経過した時に、再びセキュリティモードの動作状態に戻ることとしたので、種々の機器における機能利用の可否を決定する場合において、認証用情報の入力待ち状態が長時間続く事態の回避を図ることができる。これにより、認証用情報の入力待ち状態が放置されることによる弊害を払拭し、機能利用の的確なセキュリティ管理を実現することができる。
【0017】
また、機器の機能動作を一時停止状態とする動作モードに移行する機器の不使用継続時間を移行時間とし、前記動作モードに移行するのと同時にセキュリティモードに移行し、認証用情報の入力待ち状態で前記不使用継続時間よりも短い再移行時間を経過した時に、再び前記動作モードとセキュリティモードの動作状態に戻る形態によれば、特に、一時停止状態になっている機能動作を復帰させる場合において機能利用の的確なセキュリティ管理を実現することができ、前記動作モードの実効を確保して機能動作を一時停止させておくことによる消費電力の節約等を図ることができる。さらに、記憶手段に一時的に保存されたデータが残っているときにセキュリティモードにおいて当該データを削除する形態によれば、セキュリティモードの動作状態中に不要なデータが削除され、情報管理の安全性等にも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<構成>
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるセキュリティ管理方法を適用した画像形成装置であるMFP(Multi-Function Printer(多機能プリンタ))の構成を示した図である。本MFPは、図示のように制御部1、記憶部2、スキャナ部3、画像形成部4、操作部5、表示部6、報知部7、ファクシミリ送受信部8及びネットワーク通信部9を有し、コピー機、プリンタ、スキャナ及びファクシミリ送受信機の機能を兼ね備えた複合機となっており、それらの機能を複数のユーザが共用できるものとなっている。
【0019】
制御部1は、種々の情報処理に係る演算処理を実行するCPU等の演算部、MFPの起動に必要なシステム情報等が記憶されたROM等の不揮発性メモリ、及び演算部の作業用記憶領域として更新可能に情報を記憶するキャッシュ・メモリやRAM等の半導体メモリを有する制御手段であり、本MFP内での情報処理、各部の動作制御及び外部との情報授受等を司る。本MFPのコピー機、プリンタ、スキャナ、ファクシミリ送受信機としての機能(以下、それぞれ「コピー機能」、「プリンタ機能」、「スキャナ機能」、「ファクシミリ機能」という。)は、この制御部1を主体とした動作によって実現される。
【0020】
記憶部2は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やハードディスク等の不揮発性メモリによって構成された記憶手段である。記憶部2には、制御部1が実行する制御プログラムや情報処理プログラム等のプログラム・ファイルが予め格納されており、本MFPの各機能が作動するときには画像形成処理に係る画像データ等のデータ・ファイルも随時格納される。この記憶部2に格納されているプログラム・ファイルには、省エネモードの処理動作を規定した省エネモード・プログラムのファイルと本MFP特有のセキュリティモードの処理動作を規定したセキュリティモード・プログラムのファイルが含まれている。
【0021】
ここで、省エネモードとは、機能動作を発動させる入力の待機状態で消費する電力の節約や待機状態中も一定の稼動を維持する部分の消耗低減ないし劣化防止等を図るための動作モードであり、記憶部2に格納されている省エネモード・プログラムでは、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能がユーザの操作に即応して作動する通常運転時の待機状態を維持する動作を停止し、各機能の動作を一時停止状態とする省エネモードが規定されている。本MFPは、不使用状態(コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能のいずれもが利用されず、各種設定等に関する操作も行われない状態。以下同じ。)が継続して待機状態のまま予め設定された省エネモード移行時間を経過した時に省エネモード・プログラムが起動され、かかる省エネモードに移行するものとなっている。
【0022】
一方、セキュリティモードとは、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を作動させて利用する通常の操作を不可能とし、認証過程の実施によって機能利用の可否を決定するための動作モードであり、記憶部2に格納されているセキュリティモード・プログラムでは、各機能の動作を発動させる通常運転時の操作による入力を受け付けないものとし、パスワード入力による認証過程を実施して通常運転時の操作を許可するか否かを決定するセキュリティモードが規定されている。本MFPにおいては、省エネモードへの移行によって各機能の動作が一時停止状態になるので、その一時停止状態をセキュリティモードの適用対象とし、セキュリティモードで各機能に関するバックグラウンド処理を適宜実行しつつ、各機能の悪用ないし誤用等につながる省エネモードからの復帰を防止するようになっている。この省エネモードと有機的に作用するセキュリティモードの具体的内容については、後述の動作説明で明らかにする。
【0023】
スキャナ部3は、コピー、スキャニング又はファクシミリ送信をする原稿の読取手段であり、制御部1による制御の下で図示せぬ原稿台にセットされた原稿を読み取り、読み取った原稿のデータを制御部1へと供給する。なお、スキャナ部3には、複数枚の原稿を原稿台に順次搬送する自動原稿送り装置等が必要に応じて装備される。
【0024】
画像形成部4は、印刷用紙であるシート材を給紙する給紙部、給紙されたシート材にトナー像を転写する転写部、シート材に転写されたトナー像をヒータの熱により定着させる定着処理を行う定着部、及びトナー像定着後のシート材を排紙する排紙部を備えた画像形成手段であり、制御部1による制御の下で画像形成に係る一連の処理を行う。例えば、コピー機能が起動されたときには、原稿台にセットされた原稿をスキャナ部3が読み取り、その読み取った原稿のデータを制御部1が画像データとして画像形成部4に供給し、画像形成部4が供給された画像データに基づく画像形成の処理を行う。なお、画像形成時のシート材としては、印刷用紙とするカット紙をセットする複数の給紙段を給紙部が備えており、そのうちの選択された給紙段から給紙されるカット紙を用いるようになっている。
【0025】
操作部5は、本MFPに対する動作命令や動作設定等の入力を行う入力手段であり、CRTディスプレイ・パネルやLCDパネル等によって構成されたタッチパネルを有し、そのタッチパネルに配置される種々の操作キーや必要に応じて設けられるハード・キーによって構成され、ユーザのキー操作による入力を受け付けて制御部1へと供給する。表示部6は、前記タッチパネルのCRTディスプレイやLCD等によって構成され、制御部1による制御の下で本MFPの処理動作に関する設定、動作状態、ユーザに対する入力要求のメッセージ等を表示する。
【0026】
報知部7は、制御部1によって駆動制御される音の発生手段であり、異常通知等のための報知音(ブザー音ないしメロディ音等)を発生させる。
【0027】
ファクシミリ送受信部8は、ファクシミリ用回線に接続された通信インターフェイスを有し、本MFPのFAXモデムとして機能するファクシミリの送受信部であり、本MFPから送信するファクシミリの画信号を制御部1から受けてファクシミリ用回線へ送出すると共に、ファクシミリ用回線から伝送されてきた画信号を受けて制御部1に供給する。
【0028】
ネットワーク通信部9は、LAN等のネットワークに接続された通信インターフェイスを有し、ネットワーク接続された図示せぬパーソナル・コンピュータ等の他のコンピュータと本MFPとの間の情報通信を担う。本MFPは、このネットワーク通信部9を介して制御部1が他のコンピュータと情報を授受することにより、複数のコンピュータが利用する(複数のユーザが共用する)プリンタとして機能し、かつ、サーバとしても機能することができるものとなっている。
【0029】
なお、図示は省略してあるが、本MFPには、廃棄トナー搬送路中のトナーの残存量を検出するセンサ、定着部のヒータの温度を検知する温度センサ、装置内湿度を検知する湿度センサ等の各種センサも設けられている。
【0030】
<動作>
次に、上記構成による本MFPの動作について説明する。本MFPは、複数のユーザが共用できるコピー機、プリンタ、スキャナ及びファクシミリ送受信機として機能し、ネットワーク接続されたコンピュータに対してはサーバとしても機能する。これらの機能自体は、サーバ機能を有する通常の共用MFPと同様であるが、本MFPは、記憶部2に格納されている省エネモード・プログラムとセキュリティモード・プログラムによって省エネモードとセキュリティモードが有機的に作用する特有の動作形態を実現する。そして、その動作形態は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能並びにサーバ機能とも関連する側面を有し、これらの機能に対しても本MFP特有の動作形態を与える。そこで、以下においては、通常の共用MFPと同様である各機能自体の動作については説明を省略し、本MFP特有の省エネモードとセキュリティモードの動作について説明する。
【0031】
省エネモードの動作を実施するに当たっては、本MFPを省エネモードに移行させる不使用状態の継続時間を省エネモード移行時間として予め設定する。この設定は、操作部5でのキー操作によって行い、省エネモード移行時間を制御部1が参照可能な記憶領域(記憶部2又は制御部1のRAM等)に記憶しておく。
【0032】
また、セキュリティモードの動作を実施するに当たっては、省エネモード移行時のセキュリティモード移行の有効/無効、パスワード及びセキュリティモード再移行時間を予め設定する。これらの設定も操作部5でのキー操作によって行い、それぞれの設定内容を制御部1が参照可能な記憶領域に記憶しておく。
【0033】
省エネモード移行時のセキュリティモード移行の有効/無効は、省エネモード移行時にセキュリティモードに移行するか否かを予め定めておく設定であり、操作部5でのキー操作によってセキュリティモード移行を有効に設定しておくと省エネモード移行時にセキュリティモード・プログラムが起動され、本MFPは、省エネモードに移行するのと同時にセキュリティモードに移行する。このセキュリティモード移行の有効/無効については、管理者等の特定のユーザが設定できるようなモードを設け、臨機応変に対応できるようにしてもよい。
【0034】
パスワードは、セキュリティモードにおいて通常運転時の操作(コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能ないしファクシミリ機能の利用)を許可する認証に用いる認証用情報であり、適宜選定した文字や記号等からなるパスワードを操作部5でのキー操作によって入力し、制御部1が参照可能な記憶領域に記憶させて保存(登録)しておく。この設定は、管理者等の特定のユーザが行ったり、各機能の利用を許されている正当なユーザが自身で行ったりしてもよいが、設定されたパスワードは、予め正当なユーザのみが知っているものとしておく。
【0035】
セキュリティモード再移行時間は、セキュリティモードの解除処理が開始された後で再び解除処理開始前のセキュリティモードに移行する待機時間である。セキュリティモードにおいては、パスワード入力による認証過程を実施して認証がなされれば通常運転時の操作を許可するので、それによってセキュリティモードは解除される。したがって、セキュリティモードの解除処理は、パスワード入力による認証過程を含んでおり、解除処理中に本MFPがパスワードの入力待ち状態となる待機時間がある。そこで、本MFPは、パスワードの入力待ち状態の待機時間を計時して所定の待機時間を経過した時に再び解除処理開始前のセキュリティモードに移行するものとし(詳細は後述)、その所定の待機時間をセキュリティモード再移行時間として予め設定するようになっている。このセキュリティモード再移行時間は本MFP特有の設定であり、設定するセキュリティモード再移行時間には様々な形態がある。ここでの動作説明においては、その一例として省エネモード移行時間の半分の時間をセキュリティモード再移行時間に設定したものとして話を進めるが、セキュリティモード再移行時間の設定形態についてはさらに後述する。
【0036】
以上の設定を行い、本MFPが不使用状態になると、省エネモードとセキュリティモードの動作を実施するための処理が実行される。図2は、その処理の手順を示したフローチャートである。
【0037】
本MFPが不使用状態になるのは、通常運転時に無操作状態となったときやコピー機能による印刷出力等の最後の出力を終了した後である。したがって、省エネモードとセキュリティモードの動作を実施するための処理は、通常運転における最終の操作又は出力が終了した時点から開始し、その時点から不使用状態の継続時間を制御部1が計時して省エネモード移行時間が経過するまで待機する(ステップS1)。このときの待機状態は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能をユーザの操作に即応して作動させることが可能な通常運転時の待機状態である。省エネモード移行時間の経過は、制御部1が計時する不使用状態の継続時間が上述の設定による省エネモード移行時間に至ったか否かによって判断しており、省エネモード移行時間が経過するまでは(ステップS1での判断結果が“NO”のままで)通常運転時の待機状態が維持される。ただし、省エネモード移行時間が経過する前にユーザの操作等がなされると、当該操作等に対応する動作が発動して不使用状態を脱するので、制御部1は、不使用状態の継続時間をリセットし、その動作が終了した時点から再び不使用状態の継続時間を計時する。これにより、再び省エネモード移行時間が経過するまで通常運転時の待機状態となり、結局、本MFPは、不使用状態になっても当該不使用状態の継続時間が省エネモード移行時間に至らない限り、通常運転時の待機状態となっている(ステップS1での判断結果は“NO”のままで後続の処理には進まない。)。
【0038】
かかる通常運転時の待機状態が続き、不使用状態の継続時間が省エネモード移行時間に至って省エネモード移行時間を経過すると、省エネモード移行時のセキュリティモード移行が有効か否かの判断がなされる(ステップS1での判断結果が“YES”となってステップS2へ進む。)。
【0039】
今、省エネモード移行時のセキュリティモード移行を上述の設定において有効にしてあったとすると、その設定を参照した制御部1によってセキュリティモード移行が有効と判断され、本MFPは、省エネモード及びセキュリティモードに移行する(ステップS2での判断結果が“YES”となってステップS3に進む。)。すなわち、省エネモード移行時間の経過により省エネモード・プログラムが起動されて省エネモードに移行し、かつ、これと同時にセキュリティモード・プログラムが起動されてセキュリティモードに移行する。
【0040】
省エネモードにおいては、通常運転時の待機状態を維持する動作を停止し、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能の動作を一時停止状態とする。停止する具体的な動作は、消費電力の節約や稼動部分の消耗低減等に寄与するものを適宜選定して省エネモード・プログラム中に規定し、例えば、表示部6の表示動作を停止(画面表示を消灯)したり、画像形成部4における定着部のヒータの設定温度を下げたりする。
【0041】
セキュリティモードにおいては、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を作動させて利用する通常の操作が不可能になる。すなわち、各機能の動作を発動させる通常運転時の操作による入力を受け付けないものとし、例えば、操作部5での通常のキー操作を受け付けないようにする処理等を行い、コピー機能における読取動作等も行わないようにする。これにより、セキュリティモードは、省エネモードに移行して一時停止状態になっている機能動作が通常の操作によっては復帰しないようにする。
【0042】
さらに、セキュリティモードにおいては、動作が一時停止状態になっている各機能に関するバックグラウンド処理を適宜実行する。例えば、コピー機能ないしスキャナ機能に関するバックグラウンド処理では、制御部1がRAM等のメモリ及び記憶部2に不要なデータがあるか否かを判断し(ステップS4)、不要なデータがあれば(ステップS4での判断結果が“YES”となって)その不要なデータを削除する(ステップS5)。このときの削除処理は、不要なデータを再生不能とする上書きによる削除処理である。なお、不要なデータがなければ(ステップS4での判断結果が“NO”となって)そのまま後続の処理へと進む。
【0043】
デジタル複写機等においては、コピーの機能によって一度スキャンした画像のデータを一時的に保存するが、その一時的なデータが電源をオフにしない限りメモリに残っている場合がある。そこで、本MFPにおいては、かかる一時的なデータ等でメモリに残しておく必要のない不要なデータがあればセキュリティモード中のバックグラウンド処理によって削除することとしている(ステップS4及びS5)。このようなセキュリティモード中のバックグラウンド処理については、他の機能に関する別の処理形態もある。具体的には後述の<バックグラウンド処理の形態>で説明する。
【0044】
そして、セキュリティモードに移行した本MFPは、セキュリティモードの解除処理を開始する入力を監視している(ステップS6)。この入力としては、操作部5でのキー操作による入力、ファクシミリ送受信部8でのファクシミリ受信入力、ネットワーク通信部9での印刷データ受信入力等、任意の信号入力を対象としてよい。何等入力がないうちは(ステップS6での判断結果が“NO”のままで)そのまま省エネモード及びセキュリティモードの動作を維持するが、例えば、ユーザが操作部5で任意のキーを操作すると、制御部1が入力ありと判断して(ステップS6での判断結果が“YES”となって)セキュリティモードの解除処理が開始される。
【0045】
セキュリティモードの解除処理では、パスワード入力による認証過程を実施し、通常運転時の操作を許可するか否か、すなわち、省エネモードに移行して一時停止状態になっている機能動作を復帰させるか否かを決定する。このため、表示部6にパスワード入力画面を表示してパスワードの入力を要求するが、本MFPにおいては、そのパスワード入力画面を表示した時点からタイマ計時を開始する(ステップS7)。ここにいうタイマは、セキュリティモード・プログラム中に規定されたソフトウェアのタイマ(計時用カウンタ)を制御部1が実現した計時手段であり、パスワード入力画面を表示して本MFPがパスワードの入力待ち状態となっている待機時間を計測する。
【0046】
本MFPにおいては、このタイマの計時による待機時間が上述の設定によるセキュリティモード再移行時間に至ったか否かを制御部1が判断し、パスワードの入力待ち状態でセキュリティモード再移行時間が経過したか否かを判断している(ステップS8)。そして、セキュリティモード再移行時間が経過するまでは(ステップS8での判断結果が“NO”である間は)、制御部1がパスワードの入力を監視しており(ステップS9)、何等入力がなくてもパスワードの入力待ち状態を維持する(ステップS9での判断結果も“NO”でステップS8及びS9の判断処理に留まる。)。
【0047】
かかるパスワードの入力待ち状態でユーザが操作部5でのキー操作によりパスワードを入力すると、制御部1が入力されたパスワードを予め設定されているパスワードと照合し、パスワードが合っているか否かを判断する(ステップS9での判断結果が“YES”となってステップS10に進む。)。そして、パスワードが合っている場合(ステップS10での判断結果が“YES”の場合)には、通常運転時の操作を許可してセキュリティモードを解除し、同時に省エネモードの動作も終了させて一時停止状態になっていた機能動作を復帰させる。これにより、本MFPは、通常運転に復帰して通常の使用が可能な状態になり、省エネモードとセキュリティモードの動作を実施するための処理は終了する。パスワードが合っていない場合(ステップS10での判断結果が“NO”の場合)には、再び表示部6にパスワード入力画面を表示してパスワードの入力を求め、そのパスワード入力画面を表示した時点から再びタイマ計時を開始して上記同様のパスワードの入力待ち状態になる(ステップS10からステップS7へと戻り、その後上記同様にステップS8及びS9の判断処理に留まる。)。複数のユーザが共用する画像形成装置では、セキュリティの面で不安な部分があるため、本MFPにおいては、このように省エネモードに移行する度にセキュリティモードに移行して復帰時にはパスワードを入力しなければ使用可能な状態にならないようにすることにより、セキュリティの強化を図っている。
【0048】
これに対し、パスワードの入力待ち状態が継続して待機時間がセキュリティモード再移行時間に至り、パスワード入力がないままセキュリティモード再移行時間が経過すると、本MFPは、再び省エネモード及びセキュリティモードに移行する(ステップS8での判断結果が“YES”となってステップS3に戻る。)。すなわち、本MFPは、パスワードの入力待ち状態のまま放置されてセキュリティモード再移行時間が経過すると、セキュリティモードの解除処理を開始する前の省エネモードとセキュリティモードの動作状態に戻る。セキュリティモードに関しては、例えば、解除処理の開始によってパスワード入力画面を表示してタイマ計時を行っているので、そのパスワード入力画面の表示とタイマ計時を停止させる。省エネモードに関しては、停止させていた動作のうちで解除処理の開始によって復帰させた動作を再び停止させる。例えば、パスワード入力画面を表示するために点灯した表示部6の画面表示を消灯し、表示部6の表示動作を再び停止させる。
【0049】
ここで、セキュリティモード再移行時間は、省エネモード移行時間の半分の時間に設定されているので、本MFPがパスワードの入力待ち状態で放置された場合には、通常運転時の待機状態から省エネモードに移行する時間の半分の時間で省エネモードとセキュリティモードの動作状態に戻る。したがって、本MFPにおいては、不使用状態から省エネモードに移行する時間よりも短い時間でパスワードの入力待ち状態から省エネモード及びセキュリティモードに再移行する(再移行のときは通常の移行をするときの時間まで待つ必要がない)ことになり、パスワードの入力待ち状態が不必要に長く続くことはない。
【0050】
例えば、本MFPが省エネモード及びセキュリティモードに移行しているときに、パスワードを知らない者(省エネモードへの移行と同時にセキュリティモードに移行することさえ知らない者等)が本MFPを不正に使用しようとすると、本MFPをパスワードの入力待ち状態としてパスワードが分からずにそのまま放置することになり、表示部6ではパスワード入力画面が表示され続ける。しかし、本MFPにおいては、不使用状態から省エネモードに移行する時間よりも短い時間で省エネモードに再移行するので、パスワード入力画面の表示が意味なく長時間続く事態は回避され、省エネモードの目的を損なうような電力の消費を防止することができる。
【0051】
また、本来はパスワードを知っている正当なユーザであっても、パスワードを忘れたり正しいつもりで入力したパスワードが間違っていたりする場合もあるので、正当なユーザが本MFPを一旦パスワードの入力待ち状態とした後でパスワードを確認するために本MFPから離れ、パスワードの入力待ち状態が放置されることもあり得る。このようなことは、セキュリティ管理の面から好ましいとはいえないが、本MFPにおいては、より短い時間で省エネモード及びセキュリティモードに再移行し、パスワード入力画面の表示が長時間放置されることはない。したがって、省エネモードからの復帰にパスワードが必要であることを意味なく長時間告知し続けるようなことはなくなり、他のユーザに長時間放置された状態を解除する不用な手間をかけさせるようなこともない。
【0052】
本MFPによれば、このようにパスワード入力がない場合に適切な処理が行われ、機能利用の的確なセキュリティ管理を実現することができる。パスワード入力がなく再び省エネモード及びセキュリティモードに移行した後は、上記同様にバックグラウンド処理を適宜実行し(ステップS4及びS5)、セキュリティモードの解除処理を開始する入力を監視し(ステップS6)、何らかの入力があれば上記同様にパスワード入力による認証過程を実施する(ステップS7〜S10)。そして、セキュリティモード再移行時間内に正しいパスワードが入力されれば通常運転に復帰して処理を終了し、セキュリティモード再移行時間が経過すれば再び解除処理開始前の省エネモード及びセキュリティモードに戻って同様の処理を繰り返す。これにより、省エネモードの実効が確保され、消費電力の節約を図ることができる。また、セキュリティモードが有効に活用され、各機能の悪用ないし誤用等につながる省エネモードからの復帰を防止することができ、ユーザの情報等も守られることになる。
【0053】
なお、省エネモード移行時のセキュリティモード移行を上述の設定において無効にして省エネモード移行時間を経過すると、その設定を参照した制御部1によってセキュリティモード移行が無効と判断され、本MFPは、通常の省エネモード動作を実施する(ステップS2での判断結果が“NO”となってステップS11に進む。)。通常の省エネモード動作とは、セキュリティモードへの移行を伴わない省エネモード・プログラムのみによる処理動作であり、上述した省エネモードの動作のみを実施し、任意の入力によって省エネモードが解除される。このため、制御部1が入力を監視し(ステップS12)、何等入力がないうちは(ステップS12での判断結果が“NO”で)そのまま省エネモードの動作が維持されるが、何らかの入力があれば(ステップS12での判断結果が“YES”となって)省エネモードが解除され、通常運転に復帰して処理を終了する。
【0054】
<セキュリティモード再移行時間の設定形態>
本MFPにおける省エネモードとセキュリティモードの基本的な動作は以上であるが、セキュリティモード再移行時間は、上述したように本MFP特有の設定であり、設定するセキュリティモード再移行時間には様々な形態がある。上述した動作説明における省エネモード移行時間の半分という設定は、本MFPが省エネモードへの移行による機能動作の一時停止状態をセキュリティモードの適用対象としていることから、省エネモード移行時間との関係を考慮した設定の一例となっている。一度省エネモードに移行した後であれば再移行までの時間は可能な限り短い方がよいとも言えるので、セキュリティモード再移行時間としては、省エネモード移行時間の半分以下の短時間を設定することにしてもよい。
【0055】
また、省エネモード移行時間は、ユーザが機能利用の状況等に応じて設定してもよいので、その設定される省エネモード移行時間毎に適したセキュリティモード再移行時間を適宜選定することにしてもよい。例えば、コピー機能等を頻繁に利用するユーザは、一度省エネモードに移行すると復帰に時間がかかるので、省エネモード移行時間を長めに設定する場合が多いであろうし、機能利用の頻度が低いユーザは、省エネモード移行時間を短めに設定して消費電力の節約を図る場合が多いであろう。このようなことを踏まえてセキュリティモード再移行時間の設定を考えると、妥当な設定の例としては次のような形態が挙げられる。
・省エネモード移行時間≧60分の場合は、セキュリティモード再移行時間を20分に 設定する。
・60分>省エネモード移行時間>3分の場合は、セキュリティモード再移行時間を省 エネモード移行時間の1/3の時間に設定する。
・省エネモード移行時間≦3分の場合は、セキュリティモード再移行時間を1分に設定 する。
【0056】
さらに、セキュリティモードの適用対象を他の動作モードによる動作状態としたり、上記動作説明とは異なる形態でセキュリティモードの動作を実施したりすることも可能なので、セキュリティモード再移行時間は、セキュリティモードの動作を実施する局面に応じて適宜設定するものとしてよい。セキュリティモード再移行時間の設定において重要なことは、通常運転の状態からセキュリティモードに移行するまでの時間(上述の例では省エネモード移行時間)よりも短い時間を設定することである。
【0057】
<バックグラウンド処理の形態>
上述したセキュリティモードにおけるバックグラウンド処理は、省エネモードへの移行によって動作が一時停止状態になっている各機能に関する処理であり、上記図2のステップS4及びS5による不要なデータの削除処理は、コピー機能ないしスキャナ機能に関するバックグラウンド処理の例である。本MFPは、他にもプリンタ機能やファクシミリ機能を備えており、それらの機能に関してセキュリティモード中に実行されるバックグラウンド処理の例としては、次のような形態のものが挙げられる。
【0058】
(1)プリンタ機能に関するバックグラウンド処理
プリンタ機能が利用されるときには、本MFPのサーバ機能によってネットワーク接続されている他のコンピュータから印刷データが送信され、ネットワーク通信部9を介して制御部1が印刷データを受ける。プリンタ機能に関するバックグラウンド処理は、この印刷データの送信が省エネモードとセキュリティモードの動作中に行われたときに実行される。
【0059】
プリンタ機能に関するバックグラウンド処理では、印刷データの受付のみを行い、印刷出力の実行はしない。したがって、印刷データを受けた制御部1がRAM等のメモリないし記憶部2を動作させて印刷データを保存し、画像形成部4は動作させない(画像形成処理の実行はせず、省エネモード中の画像形成部4の状態を維持する。)。印刷データを送信したコンピュータに対しては、その表示装置に本MFPがセキュリティモードになっている旨を表示させて通知するようにしてもよい。このようなバックグラウンド処理は、図2の処理手順中に破線で示した“バックグラウンド処理”の部分で上記ステップS4及びS5の処理に加えて実行される。
【0060】
バックグラウンド処理で受け付けた印刷データの印刷出力については、上記同様のパスワード入力による認証過程を経て本MFPが通常運転に復帰したときに実行することにしてもよいが、本MFPが当該印刷データを送信したコンピュータとの情報授受により同様の認証過程に相当する処理を行って実行することにしてもよい。
【0061】
例えば、本MFPとネットワーク接続されている端末機のコンピュータにおいて、当該コンピュータを使用している本MFPの正当なユーザが表示装置の画面に示される印刷メニューのOKボタンをクリックした場合には(印刷データの送信操作をした場合には)、本MFPから当該コンピュータに対してパスワード入力を要求し、表示装置にパスワード入力画面を表示させる。この場合、受け付けた印刷データの受信入力がセキュリティモードの解除処理を開始する入力となり、本MFPは、当該コンピュータの表示装置にパスワード入力画面を表示させた時点からタイマ計時を開始し、上記同様にパスワードの入力待ち状態になっている(印刷データの受付によってステップS6での判断結果が“YES”となり、ステップS7、S8及びS9の処理へと進んでいる。)。これにより、セキュリティモード再移行時間が経過する前にユーザが当該コンピュータの入力装置から正しいパスワードを入力すると、そのパスワードを受けた本MFPにおいてセキュリティモードが解除され(ステップS10での判断結果が“YES”となって通常運転に復帰し)、画像形成部4が動作してユーザが送信した印刷データの印刷出力が実行される。
【0062】
ここで、本MFPは、サーバとしての機能により、受け付けた印刷データがどの端末機から送信されてきたかを把握することが可能である。したがって、プリンタ機能の利用を許可するパスワードは、印刷データを送信してきた端末機のコンピュータを使用している特定のユーザのみのパスワードに限定することもできる。すなわち、それぞれのユーザ毎に予めパスワードを設定しておき、セキュリティモードの動作中に印刷データを受け付けたときには、その印刷データを送信した端末機のユーザのパスワードのみを受け付けるようにする。これにより、プリンタ機能に関しては、セキュリティモードの解除処理において特定人の認証が行われ、本MFPにアクセスする個々の端末機の利用に対してもセキュリティの管理を実施することができる。
【0063】
(2)ファクシミリ機能に関するバックグラウンド処理
ファクシミリ機能にはファクシミリの送信機能と受信機能がある。外部からのファクシミリは、本MFPがセキュリティモードに移行していても通常運転時同様に送られてくるので、特に、ファクシミリの受信機能に関しては、省エネモードとセキュリティモードの動作中に送られてきたファクシミリを受け付けるバックグラウンド処理を実行する必要がある。
【0064】
ファクシミリの受信機能に関するバックグラウンド処理では、受信されるファクシミリの受付のみを行い、受け付けた受信ファクシミリの印刷出力の実行はしない。したがって、制御部1は、ファクシミリ送受信部8を介してファクシミリ用回線から伝送されてきた画信号を受けると、RAM等のメモリないし記憶部2を動作させて受けた画信号のファクシミリ・データを保存し、画像形成部4は動作させない(画像形成処理の実行はせず、省エネモード中の画像形成部4の状態を維持する。)。受信ファクシミリを受け付けたときには、その旨を知らせる所定の報知音を報知部7によって発生させることにしてもよい。このようなバックグラウンド処理は、図2の処理手順中に破線で示した“バックグラウンド処理”の部分で上記ステップS4及びS5の処理に加えて実行される。
【0065】
バックグラウンド処理で受け付けた受信ファクシミリの印刷出力については、上記同様のパスワード入力による認証過程を経て本MFPが通常運転に復帰したときに実行することにしてもよいが、本MFPが受信ファクシミリを受け付けた時にファクシミリ・データを保存してある未出力の受信ファクシミリがある旨を表示部6に表示してセキュリティモードの解除処理を開始するようにしてもよい。すなわち、ファクシミリ送受信部8でのファクシミリ受信入力は、上述したようにセキュリティモードの解除処理を開始する入力としてもよいので、受信ファクシミリがある旨を併せて示したパスワード入力画面を表示部6に表示し、本MFPを上記同様のパスワードの入力待ち状態としてもよい(受信ファクシミリの受付によってステップS6での判断結果が“YES”となり、ステップS7、S8及びS9の処理へと進むようにしてもよい。)。これにより、セキュリティモード再移行時間が経過する前にユーザが操作部5でのキー操作により正しいパスワードを入力すると、本MFPにおいてはセキュリティモードが解除され(ステップS10での判断結果が“YES”となって通常運転に復帰し)、画像形成部4が動作して受信ファクシミリの印刷出力が実行される。
【0066】
ここで、ファクシミリの受信機能の利用を許可するパスワードについては、正当なユーザが共通のパスワードを使用するものとしてよく、上述したプリンタ機能の利用を許可するパスワードのようにユーザ毎に設定するものとはしなくてもよい(ファクシミリの受信機能に関しては、特定人の認証を行うことまでは要求されないのが一般的と考えられる。)。ただし、その共通のパスワードを知るユーザを特定のユーザのみに限定し、特定人の認証(ないしはそれに近い認証)を行うようにすることは可能である。
【0067】
(3)暗号ボックスを利用するバックグラウンド処理
プリンタ機能とファクシミリ機能に関するバックグラウンド処理は、上述したように受け付けたデータを蓄積しておいて印刷出力はしないという点において共通するところがある。そこで、例えば、データを暗号化して保存しておく暗号ボックスのような記憶領域を記憶部2に確保し、セキュリティモードの動作中に受け付けたデータは一旦その記憶領域に保存しておくようにしてもよい。これにより、受け付けたデータがバックグランド処理において安全に保管されることになり、さらに充実したセキュリティ管理を実現することもできる。
【0068】
<他の変形・応用等>
(1)パスワード入力
上述した動作説明においては、入力されたパスワードが合っていない場合に再びパスワードの入力待ち状態となるものとしたが、パスワード入力の回数を予め定めた回数に制限するものとしてもよい。すなわち、パスワード入力が合っていない場合が予め定めた回数だけ続いたときには、待機時間の長短に拘わらず解除処理開始前の省エネモードとセキュリティモードの動作状態に戻ることにしてもよい。
【0069】
また、上述した動作説明においては、パスワードが合っていない場合にパスワードの入力待ち状態としてから再びタイマ計時を開始する(タイマをリセットして計時をし直す)こととしたが、パスワードが合っていなくてもタイマ計時は継続する(再度パスワードの入力待ち状態となった時でもタイマをリセットしない)ようにしてもよい。さらに、このようにタイマ計時を継続する場合において、上記同様にパスワード入力の回数を予め定めた回数に制限するものとしてもよい。
【0070】
なお、パスワードは、セキュリティモードの解除処理において認証に用いる認証用情報の一例であり、指紋等の生体情報や暗証番号等を認証用情報とする形態を採用することも可能である。
【0071】
(2)ユーザの操作
本MFPに対するユーザの操作は、主として操作部5でのキー操作によって行うこととしたが、本MFPとネットワーク接続された端末機のコンピュータにおいて行うことにしてもよい。上述したプリンタ機能のバックグラウンド処理から通常運転に復帰する場合の操作は、その一例である。
【0072】
すなわち、本MFPとネットワーク接続されたコンピュータは、ネットワーク通信部9を介して制御部1と情報を授受することにより、本MFPをサーバとする端末機として本MFPに対する入力を行うことができるので、表示部6に表示される画面と同様の画面を本MFPとネットワーク接続されたコンピュータの表示装置に表示させ、そのコンピュータの入力装置をユーザが操作することによって本MFPに対する操作を行うことにしてもよい。例えば、上述した省エネモード移行時間、省エネモード移行時のセキュリティモード移行の有効/無効、パスワード及びセキュリティモード再移行時間の設定等は、ユーザが自身の端末機のコンピュータにおいて行うことにしてもよい。
【0073】
(3)セキュリティモードの適用形態
上述の実施形態においては、省エネモードへの移行による機能動作の一時停止状態をセキュリティモードの適用対象としたが、セキュリティモードは、他の動作モードにおける動作状態を適用対象とすることも可能である。例えば、サスペンド・モード、スクリーン・セーバ、低電力モード若しくはスリープ・モード等と呼ばれる上記省エネモードに類似した動作モード、単に表示部を消灯するだけの動作モード、単に表示部の画面表示を他の表示に切り替えるだけの動作モード、又は単に表示部の表示をロックするだけの動作モード等における動作状態をセキュリティモードの適用対象としてもよい。
【0074】
すなわち、通常の機能の少なくとも1つを無効にする動作モードに対しては、上記同様にセキュリティモードを適用することができ、省エネモードは、かかる動作モードの一例に過ぎない。そして、セキュリティモードの適用に当たっては、当該機能が有効な状態から当該動作モードに移行する時間よりも短い時間をセキュリティモード再移行時間に設定する。
【0075】
また、上述の実施形態においては、省エネモードへの移行と同時にセキュリティモードに移行することとしたが、セキュリティモードへの移行は、適用する動作モードへの移行と必ずしも同時である必要はない。例えば、上述の実施形態において、セキュリティモードへの移行を省エネモードへの移行より先にする形態や後にする形態を採用することも可能である。さらに、適用する動作モードに移行する時間が不定であるような場合には、当該動作モードへの移行と関連してセキュリティモードに移行するセキュリティモード移行時間(上記省エネモード移行時間に相当する時間)を予め設定し、そのセキュリティモード移行時間よりも短い時間をセキュリティモード再移行時間として予め設定する。この場合のセキュリティモード再移行時間は、当該動作モードを解除しようとしたが実際には解除されずに放置された場合を想定し、その放置状態を認容できる最長時間等を考慮して設定するとよい。
【0076】
そして、これらのことから、セキュリティモードの動作のみを単独で実施することも可能である。この場合、セキュリティモード移行時間を含むセキュリティモードへの移行条件を予め設定し、そのセキュリティモード移行時間よりも短い時間をセキュリティモード再移行時間として設定する。
【0077】
(4)対象機器
以上の実施形態においては、セキュリティモードの動作を実施する対象機器をMFPとしたが、セキュリティモードの動作は、他の種々の機器において実施することができる。例えば、パーソナル・コンピュータ等のコンピュータ、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant(携帯情報端末))等の移動機、リモート・コントローラ、コピー機ないし複写機、プリンタ、スキャナ、ファクシミリ送受信機、その他の電化製品等においてもセキュリティモードの動作を実施することができる。
【0078】
ここで、コンピュータや移動機等にあっては、スクリーン・セーバやスリープ・モード等の上記省エネモードに類似する動作モードを備えているのが通例なので、セキュリティモードによるセキュリティ管理を上記実施形態同様に行うこともできる。特に、ノート型のパーソナル・コンピュータや携帯電話機等は、充電式のバッテリを電源としているので、セキュリティモードの動作を実施することによって消費電力低減の機能が強化され、バッテリの寿命を延ばすことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態によるセキュリティ管理装置を適用した画像形成装置であるMFPの構成を示した図である。
【図2】同MFPにおいて省エネモードとセキュリティモードの動作を実施するための処理の手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 制御部
2 記憶部
4 画像形成部
5 操作部
6 表示部
8 ファクシミリ送受信部
9 ネットワーク通信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された移行時間が経過した時に、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行する移行手段と、
前記セキュリティモードにおいて前記機能利用を許可する認証に用いる認証用情報の入力を要求する入力要求手段と、
前記認証用情報の入力待ち状態で前記移行時間よりも短い予め設定された再移行時間を経過した時に、前記移行手段によって移行した前記セキュリティモードの動作状態に戻る戻し手段と
を有するセキュリティ管理装置。
【請求項2】
請求項1記載のセキュリティ管理装置において、
前記移行時間は、前記機器の少なくとも1つの機能を無効にする動作モードに移行する前記機器の不使用継続時間であり、
前記移行手段は、前記移行時間が経過した時に、前記動作モードに移行するのと同時に前記セキュリティモードに移行し、
前記戻し手段は、前記認証用情報の入力待ち状態で前記再移行時間を経過した時に、前記移行手段において移行した前記動作モードと前記セキュリティモードの動作状態に戻る
ことを特徴とするセキュリティ管理装置。
【請求項3】
前記動作モードは、前記機器の機能動作を一時停止状態とする動作モードである、請求項2記載のセキュリティ管理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項記載のセキュリティ管理装置において、
前記機器は、読取画像のデータを一時的に保存する記憶手段を有する画像形成装置であり、
前記記憶手段に一時的に保存されたデータが残っているときに、前記セキュリティモードにおいて当該データを削除する削除手段をさらに有する
ことを特徴とするセキュリティ管理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項記載のセキュリティ管理装置において、
前記機器は、印刷データを受け付けて印刷出力を実行する機能を有する画像形成装置であり、
前記セキュリティモードの動作状態中に前記画像形成装置が印刷データを受け付けたときに、当該印刷データを保存して前記画像形成装置の印刷出力を実行させない第1の印刷制限手段と、
前記認証用情報が入力されて前記機能利用を許可するときに、当該印刷データの印刷出力を前記画像形成装置に実行させる第1の印刷実行手段と
をさらに有するセキュリティ管理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項記載のセキュリティ管理装置において、
前記機器は、ファクシミリを受信して印刷出力を実行する機能を有する画像形成装置であり、
前記セキュリティモードの動作状態中に前記画像形成装置がファクシミリを受信したときに、当該ファクシミリの受信データを保存して前記画像形成装置の印刷出力を実行させない第2の印刷制限手段と、
前記認証用情報が入力されて前記機能利用を許可するときに、前記受信データの印刷出力を前記画像形成装置に実行させる第2の印刷実行手段と
をさらに有するセキュリティ管理装置。
【請求項7】
予め設定された移行時間が経過した時に、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行する第1の過程と、
前記セキュリティモードにおいて前記機能利用を許可する認証に用いる認証用情報の入力を要求する第2の過程と、
前記認証用情報の入力待ち状態で前記移行時間よりも短い予め設定された再移行時間を経過した時に、前記第1の過程において移行した前記セキュリティモードの動作状態に戻る第3の過程と
を有するセキュリティ管理方法。
【請求項8】
予め設定された移行時間が経過した時に、機器の通常の操作による機能利用を不可能とするセキュリティモードに移行する第1の手順と、
前記セキュリティモードにおいて前記機能利用を許可する認証に用いる認証用情報の入力を要求する第2の手順と、
前記認証用情報の入力待ち状態で前記移行時間よりも短い予め設定された再移行時間を経過した時に、前記第1の手順において移行した前記セキュリティモードの動作状態に戻る第3の手順と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−181882(P2006−181882A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378354(P2004−378354)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】