説明

セラミック電子部品用セラミックシート製品とそれを用いた積層セラミック電子部品、及びその製造方法

【課題】本発明は、セラミック電子部品用セラミックシート製品とそれを用いた積層セラミック電子部品、及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明によるセラミック電子部品用セラミックシート製品は、セラミック層と、上記セラミック層上に形成された金属層と、上記金属層と接触し、上記金属層から上記セラミック層内部に突出した金属ナノ構造物と、を含む。本発明によるセラミック電子部品用セラミックシート製品を用いた積層セラミック電子部品は、電極間の間隔が減少し、電気容量が増加するため、高容量積層セラミック電子部品が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品用セラミックシート製品とそれを用いた高容量の積層セラミック電子部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子製品の小型化に伴い、積層セラミック電子部品における小型化、大容量化が求められている。これにより、誘電体と内部電極の薄膜化、多層化が様々な方法で試されており、最近では誘電体層が薄層化し、積層数が多い積層セラミック電子部品が製造されている。
【0003】
しかしながら、より大きい静電容量を有する積層セラミック電子部品を製造するためには、新たな技術を用いてセラミックと内部電極層の間の構造をより効率的にデザインする必要がある。
【0004】
このような要求に応じ、電極の表面積を増加させるとともに、電極間の間隔を減少させる努力が続けられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セラミック電子部品用セラミックシート製品とそれを用いた高容量の積層セラミック電子部品、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、セラミック層と、上記セラミック層上に形成された金属層と、上記金属層と接触し、上記金属層から上記セラミック層内部に突出した金属ナノ構造物と、を含むセラミック電子部品用セラミックシート製品が提供される。
【0007】
上記金属ナノ構造物の高さは上記セラミック層の高さより低く形成されることができる。
【0008】
また、上記金属ナノ構造物は円柱状であり、その断面が星形であることができる。
【0009】
上記金属ナノ構造物は、上記金属層と同種の材質からなることができる。
【0010】
本発明の他の態様は、金属ナノ構造物を設けるステップと、上記金属ナノ構造物をセラミック層が形成されたセラミックグリーンシートにセラミック層内部に突出するように転写(transfer)するステップと、上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように金属層を形成するステップと、を含むセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法を提供する。
【0011】
上記金属ナノ構造物の高さは上記セラミック層の高さより低く形成されることができる。
【0012】
上記金属ナノ構造物を設けるステップは、高分子マトリックス(matrix)上にナノインプリンティング(nanoimprinting)方法によりパターニング(patterning)した後、金属ナノ構造物を成長させて行われることができる。
【0013】
上記金属ナノ構造物を成長させるステップは電気化学法または蒸着法により行われることができる。
【0014】
上記金属ナノ構造物は、上記金属層と同種の材質からなることができる。
【0015】
本発明の他の態様によると、複数の誘電体層と複数の内部電極層が交互に積層されたセラミック素体と、上記内部電極層と接触し、上記内部電極層から上記誘電体層内部に突出した金属ナノ構造物と、上記セラミック素体の外側に形成され、内部電極と電気的に接続された外部電極と、を含む積層セラミック電子部品が提供される。
【0016】
上記金属ナノ構造物の高さは上記セラミック層の高さより低く形成されることができる。
【0017】
また、上記金属ナノ構造物は円柱状であり、その断面が星形であることができ、上記金属層と同種の材質からなることができる。
【0018】
一方、本発明の他の態様によると、金属ナノ構造物を設けるステップと、上記金属ナノ構造物を誘電体層が形成されたセラミックグリーンシートに誘電体層内部に突出するように転写(transfer)するステップと、上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように内部電極層を設けるステップと、上記誘電体層、誘電体層上に形成された内部電極層、及び内部電極層と接触し誘電体層内部に突出した金属ナノ構造物が形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成するステップと、上記積層体を圧着及び切断してグリーンチップを製造するステップと、上記グリーンチップを焼成してセラミック素体を製造するステップと、を含む積層セラミック電子部品の製造方法が提供される。
【0019】
上記金属ナノ構造物の高さは上記セラミック層より低く形成されることができる。
【0020】
上記金属ナノ構造物を成長させるステップは電気化学法または蒸着法により行われることができる。
【0021】
上記金属ナノ構造物を設けるステップは、高分子マトリックス(matrix)上にナノインプリンティング(nanoimprinting)方法によりパターニング(patterning)した後、金属ナノ構造物を成長させて行われることができる。
【0022】
上記金属ナノ構造物の材質は上記金属層と同種であることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるセラミック電子部品用セラミックシート製品及びそれを用いた高容量のセラミック電子部品は、内部電極間の間隔が減少し、電気容量が増加するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造工程図である。
【図3】本発明の一実施形態による金属ナノ構造物を製造する工程フローチャートである。
【図4】ナノインプリントリソグラフィー(NIL)後の高分子マトリックス(a)及び金属ナノ構造物(b)(c)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを概略的に示した斜視図である。
【図6】図5のB−B’に沿って切断した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態は、様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態のみに限定されるわけではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野において通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における構成要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張することもあり、図面上において同一の符号で示される構成要素は同一の構成要素である。
【0026】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品を概略的に示す断面図である。
【0028】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品10は、セラミック層1と、上記セラミック層上に形成された金属層2と、上記金属層2と接触し、上記金属層2から上記セラミック層1の内部に突出した金属ナノ構造物3とを含むことができる。
【0029】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品10は、積層セラミック電子部品に製造する前の状態であり、キャリアフィルム4上に形成して完成することができる。
【0030】
上記セラミック層1は、一般的に用いられる材料であれば特に限定されないが、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)などで形成され、その厚さが2μm以下に形成されることができる。
【0031】
上記金属層2は、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)などの貴金属材料及びニッケル(Ni)、銅(Cu)のうち一種の物質で形成されるか、または、2種以上の物質が混合されて形成されることができる。
【0032】
上記金属層2の厚さは0.3μm〜1.0μmに形成されることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品10は、上記金属層2と接触し、上記金属層2から上記セラミック層1の内部に突出した金属ナノ構造物3を含むことができる。
【0034】
上記金属ナノ構造物3の高さは、本発明の一実施形態によって様々に変化し、上記セラミック層1より低い高さを有することができる。
【0035】
上記セラミックシート製品の積層時、上記金属ナノ構造物の高さが上記セラミック層と同じ高さの場合は、上記セラミック層と接触する下部金属層(図示せず)と接触してショートを起こす恐れがあるため、上記セラミック層の高さより低く形成することができる。
【0036】
また、上記金属ナノ構造物3は、ショートを防止するために上記セラミック層1の厚さより小さい2μm未満の高さに形成されることができる。
【0037】
また、上記金属ナノ構造物3は、その形状において制限はなく、例えば、円柱状であることができ、その断面が星形であることができる。
【0038】
特に、上記金属ナノ構造物3の断面が星形である場合は、金属の表面積がより増加し、電気容量の上昇効果がさらに大きくなる。
【0039】
また、上記金属ナノ構造物3の材質は一般的な金属であれば制限なく使用できるが、上記金属層2と同種の材質からなることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、上記セラミックシート製品10が上記金属ナノ構造物3を含むことによって金属の表面積が増加するため、上記金属層2と同種の材質からなることができる。
【0041】
特に、電気容量の上昇効果を最大限に引き出すために、上記金属ナノ構造物3は上記金属層2と同種の材質からなることができる。
【0042】
一方、上記金属ナノ構造物3の形成位置は特に制限されないが、例えば、セラミックシート製品10が積層される場合、セラミック層1の上部及び下部に形成される金属層2のそれぞれに接触し、上記各金属層2から上記セラミック層1の内部に突出することができる。
【0043】
この場合、ショートを防止するためには、上記金属ナノ構造物3が上記セラミック層1の内部で互いに接触しないようにする。
【0044】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品10は、上記金属層2から上記セラミック層1の内部に突出した金属ナノ構造物3を含み、これによって、上記製品の積層時、金属層間の間隔が減少し、電気容量が増加するようになる。
【0045】
電気容量は下記式から得られる。
【0046】
【数1】

【0047】
ここで、Cは電気容量、εは誘電率、Aは金属の表面積、dは金属層間の間隔である。
【0048】
即ち、電気容量は、上記式より、金属層間の間隔dが減少するほど、金属の表面積Aが増加するほど増加することが分かる。
【0049】
よって、本発明の一実施形態によると、上記製品を積層する場合、金属層間の間隔が減少し、電気容量が増加するようになる。
【0050】
図2は、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造工程図である。
【0051】
図3は、本発明の一実施形態による金属ナノ構造物を製造する工程フローチャートである。
【0052】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法は、金属ナノ構造物13を設けるステップS1と、上記金属ナノ構造物13をセラミック層が形成されたセラミックグリーンシートにセラミック層内部に突出するように転写(transfer)するステップS2と、上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように金属層を形成するステップS3と、を含むことができる。
【0053】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法は、先ず、高分子マトリックス(matrix)12上にナノインプリンティング(nanoimprinting)方法によりパターニング(patterning)した後、金属ナノ構造物を成長させることで、金属ナノ構造物を設けることができる(S1)。
【0054】
図3は、上記金属ナノ構造物13を設ける工程フローチャートである。
【0055】
図3を参照すると、金属ナノ構造物を設ける工程はナノインプリンティング方法により行われることができる。
【0056】
具体的には、基板11の表面上に高分子マトリックス12をコーティングする。
【0057】
上記高分子マトリックス12は特に制限されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0058】
その次、上記基板表面上の高分子マトリックスに対してナノインプリントリソグラフィー(Nanoimprint lithography;NIL)技術を用いてパターニングする。
【0059】
具体的には、ポリメチルメタクリレートのガラス転移温度以上の高温条件である140℃〜180℃の温度で凸凹状のスタンプを用いて高圧で押し付けた後、100℃以下に冷却させて分離する。
【0060】
これにより、ナノパターンが基板上に上記凸凹状が反映された陰刻で転写される。
【0061】
その次、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)などの貴金属材料及びニッケル(Ni)、銅(Cu)などの金属の1種または2種以上が結合された金属を上記基板1の上面全体に対して均一に形成して金属ナノ構造物13を成長させる。
【0062】
上記金属ナノ構造物13を成長させる方法は特に制限されないが、例えば、電気化学法または蒸着法により行われることができる。
【0063】
上記工程の後、熱硬化及びエッチング工程を経てナノパターンを除いた高分子マトリックス12を除去する。
【0064】
上記のようにすることで、基板11上に形成された金属ナノ構造物13が設けられる。
【0065】
図4は、ナノインプリントリソグラフィー(NIL)後の高分子マトリックス(a)及び金属ナノ構造物(b)(c)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0066】
図4を参照すると、図4の(a)には基板上の高分子マトリックスに対してナノインプリントリソグラフィー(NIL)が行われた後のSEMイメージが示されており、高分子マトリックスにナノパターンが陰刻で転写されていることが分かる。
【0067】
また、図4の(b)(c)には、基板上に金属ナノ構造物が形成されたSEMイメージが示されている。
【0068】
次いで、上記金属ナノ構造物13をセラミック層が形成されたセラミックグリーンシートにセラミック層内部に突出するように転写(transfer)することができる(S2)。
【0069】
セラミック層が形成されたセラミックグリーンシートは公知の方法により製作されることができる。
【0070】
上記金属ナノ構造物13は、その高さがセラミック層の高さより低い高さを有するように予め設計され形成されるため、セラミック層が形成された下部キャリアフィルムとは接触しない。
【0071】
上記工程の後、基板11を除去することにより、金属ナノ構造物13がセラミック層内部に突出して形成されたセラミックグリーンシートが設けられる。
【0072】
次いで、上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように金属層を形成することができる(S3)。
【0073】
上記金属層の形成は一般的な方法を用いることができ、例えば、導電性ペーストをディスペンシング(dispensing)し、スキージ(squeegee)を一側方向に移動しながら形成することができる。
【0074】
セラミックシート製品の製造方法を除いては、上述した本発明の一実施形態によるセラミックシート製品の特徴と同一である。
【0075】
図5は、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサを概略的に示した斜視図である。
【0076】
図6は、図5のB−B’に沿って切断した断面図である。
【0077】
図5及び図6を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層1と複数の内部電極層2が交互に積層されたセラミック素体5と、上記内部電極層2と接触し、上記内部電極層2から上記誘電体層1の内部に突出した金属ナノ構造物3と、上記セラミック素体5の外側に形成され、内部電極と電気的に接続された外部電極6a、6bと、を含むことができる。
【0078】
以下では、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品のうち、積層セラミックコンデンサ100について説明するが、これに制限されるものではない。
【0079】
また、セラミックシート製品のセラミック層は積層セラミック電子部品における誘電体層に対応し、セラミックシート製品の金属層は積層セラミック電子部品における内部電極層に対応するものであって、同じ対象の異なる表現に過ぎない。
【0080】
本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層1と複数の内部電極層2が交互に積層されたセラミック素体5と、上記セラミック素体5の外側に形成され、内部電極と電気的に接続された外部電極6a、6bとを含むことができる。
【0081】
特に、上記内部電極層2と接触し、上記内部電極層2から上記誘電体層1の内部に突出した金属ナノ構造物3を含むことができる。
【0082】
図6に示したように、上記セラミック素体5は、その内部に複数の誘電体層1と複数の内部電極層2のみならず、上記金属ナノ構造物3を含んで積層されることができる。
【0083】
これにより、上記内部電極間の間隔が減少し、電気容量が増加するようになる。
【0084】
即ち、本発明の一実施形態によると、上記誘電体層1と内部電極層2の界面で上記内部電極層2と接触し、上記内部電極層2から上記誘電体層1の内部に突出した金属ナノ構造物3が形成され、これらの層が交互に積層されることによって、高容量の積層セラミックコンデンサが提供される。
【0085】
金属ナノ構造物3の高さ、材質及び形状などは上述したセラミックシート製品における特徴と同一であり、ここでは省略する。
【0086】
また、誘電体層及び内部電極層の材質及び厚さなどは特に制限されず、上述したセラミックシート製品における説明と同一である。
【0087】
図7は、本発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサの製造工程図である。
【0088】
図7を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、金属ナノ構造物を設けるステップと、上記金属ナノ構造物を誘電体層が形成されたセラミックグリーンシートに誘電体層内部に突出するように転写(transfer)するステップと、上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように内部電極層を形成するステップと、上記誘電体層、誘電体層上に形成された内部電極層、及び内部電極層と接触し誘電体層内部に突出した金属ナノ構造物が形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成するステップと、上記積層体を圧着及び切断してグリーンチップを製造するステップと、上記グリーンチップを焼成してセラミック素体を製造するステップと、を含むことができる。
【0089】
以下では、上述した本発明の一実施形態であるセラミックシート製品の製造方法に関する説明と重複する部分については省略し、積層セラミック電子部品のうち、積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0090】
先ず、セラミック層1と、上記セラミック層上に形成された金属層2と、上記金属層2と接触し、上記金属層2から上記セラミック層1の内部に突出した金属ナノ構造物3とを含む複数のグリーンシートを設ける。
【0091】
上記複数のグリーンシートをキャリアフィルム4から分離させた後、複数のグリーンシートを重ね合わせて積層して積層体を形成する。
【0092】
次いで、グリーンシート積層体を高温、高圧で圧着させた後、切断工程を経て所定の大きさに切断してコンデンサ本体を製造する。
【0093】
その後、か焼、焼成、研磨し、外部電極及びめっき工程などを経て積層セラミックコンデンサを完成する。
【0094】
以下、比較例及び実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに制限されない。
【0095】
本発明の一実施例による積層セラミックコンデンサ(実施例)及び従来技術による積層セラミックコンデンサ(比較例)を下記のように製造した。
【0096】
実施例の場合、先ず、ポリメチルメタクリレート(PMMA)がコーティングされた基板表面上の高分子マトリックスに対してナノインプリントリソグラフィー(Nanoimprint lithography;NIL)技術を用いてパターニングした。
【0097】
次いで、ニッケル金属を蒸着法によりパターニングされた上記表面に塗布し上記金属を成長させた後、熱硬化及びエッチング工程を経て400nmの高さを有する金属ナノ構造物を形成した。
【0098】
その次、厚さ600nmのセラミック層が形成されたセラミックグリーンシートを設けた後、上記金属ナノ構造物をスクリーンプリンティング法によりセラミックグリーンシートにセラミック層内部に突出するように形成した。
【0099】
上記セラミック層はチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を用いて通常の方法で形成し、上記金属ナノ構造物はその高さがセラミック層の高さより低いため、セラミック層が形成された下部キャリアフィルムとは接触しない。
【0100】
上記工程の後、基板を除去し、上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように金属層を一般的な方法で形成した。
【0101】
上記金属層は、セラミック層内部に突出したニッケルナノ構造物と同じ材質である導電性ニッケルペーストを塗布して形成し、ニッケルナノ構造物と接触するように形成される。
【0102】
上記セラミックグリーンシートを積層した後、圧着、切断、焼成などの工程を経て、本発明の一実施例である積層セラミックコンデンサを製作した。
【0103】
比較例は、金属ナノ構造物を含まないものであり、積層セラミックコンデンサの大きさ及び厚さなどの他の条件は実施例と同じにして製造した。
【0104】
上記実施例及び比較例では、積層セラミックコンデンサ内部の誘電体層の厚さが600nm、内部電極層の厚さが1μm、角600nm×2mmの1つのユニットをそれぞれ切断してシミュレーションすることで電気容量を比較した。
【0105】
実施例の場合、上記600nmの厚さを有する誘電体層内部に突出した厚さ400nmのニッケルナノ構造物が、誘電体層と内部電極層の界面で誘電体層内部に突出して形成されている。
【0106】
シミュレーションは、下記式から始め、最終的には電気容量を求めて行われた。
【0107】
【数2】

【0108】
【数3】

【0109】
上記式において、Wはエネルギー密度、Eは電場、dvは微分体積要素、εは誘電率である。
【0110】
印加電圧0.1Vに対して上記式を計算した結果、比較例のWは1.77×10−14[J]で、実施例のWは5.12×10−14[J]であった。
【0111】
上記各W値を上述した電気容量式に代入して求めた結果を以下の表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
上記シミュレーションの結果、本発明の一実施例によると、比較例に比べ電気容量が290%増加したことが分かる。
【0114】
したがって、本発明の一実施例による積層セラミックコンデンサは、従来に比べて電極間の間隔が減少し、電気容量が増加することが分かる。
【0115】
本発明は上述した実施形態及び添付された図面により限定されるものではなく、添付された請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で多様な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは当技術分野の通常の知識を有した者に自明であり、これも請求範囲に記載された技術的事項に属する。
【符号の説明】
【0116】
1:誘電体(セラミック)層
2:内部電極(金属)層
3、13:金属ナノ構造物
4:キャリアフィルム
5:セラミック素体
6a、6b:外部電極
10:セラミックシート製品
11:基板
12:高分子マトリックス
14:セラミックグリーンシート
100:積層セラミックコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック層と、
上記セラミック層上に形成された金属層と、
上記金属層と接触し、上記金属層から上記セラミック層内部に突出した金属ナノ構造物と、
を含むセラミック電子部品用セラミックシート製品。
【請求項2】
上記金属ナノ構造物の高さは、上記セラミック層の高さより低いことを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品。
【請求項3】
上記金属ナノ構造物の形状は円柱状であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品。
【請求項4】
上記金属ナノ構造物は断面が星形になっていることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品。
【請求項5】
上記金属ナノ構造物の材質は上記金属層と同種の材質からなることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品。
【請求項6】
金属ナノ構造物を設けるステップと、
上記金属ナノ構造物をセラミック層が形成されたセラミックグリーンシートにセラミック層内部に突出するように転写(transfer)するステップと、
上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように金属層を形成するステップと、
を含むセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法。
【請求項7】
上記金属ナノ構造物の高さは上記セラミック層の高さより低いことを特徴とする請求項6に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法。
【請求項8】
上記金属ナノ構造物を設けるステップは、高分子マトリックス(matrix)上にナノインプリンティング(nanoimprinting)方法によりパターニング(patterning)した後、金属ナノ構造物を成長させて行われることを特徴とする請求項6に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法。
【請求項9】
上記金属ナノ構造物を成長させるステップは電気化学法または蒸着法により行われることを特徴とする請求項6に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法。
【請求項10】
上記金属ナノ構造物は上記金属層と同種の材質からなることを特徴とする請求項6に記載のセラミック電子部品用セラミックシート製品の製造方法。
【請求項11】
複数の誘電体層と複数の内部電極層が交互に積層されたセラミック素体と、
上記内部電極層と接触し、上記内部電極層から上記誘電体層内部に突出した金属ナノ構造物と、
上記セラミック素体の外側に形成され、内部電極と電気的に接続された外部電極と、
を含む積層セラミック電子部品。
【請求項12】
上記金属ナノ構造物の高さは上記誘電体層の高さより低いことを特徴とする請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
上記金属ナノ構造物の形状は円柱状であることを特徴とする請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
上記金属ナノ構造物は断面が星形になっていることを特徴とする請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
上記金属ナノ構造物は上記内部電極層と同種の材質からなることを特徴とする請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項16】
金属ナノ構造物を設けるステップと、
上記金属ナノ構造物を誘電体層が形成されたセラミックグリーンシートに誘電体層内部に突出するように転写(transfer)するステップと、
上記セラミックグリーンシート上に、上記金属ナノ構造物と接触するように内部電極層を設けるステップと、
上記誘電体層、誘電体層上に形成された内部電極層、及び内部電極層と接触し誘電体層内部に突出した金属ナノ構造物が形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成するステップと、
上記積層体を圧着及び切断してグリーンチップを製造するステップと、
上記グリーンチップを焼成してセラミック素体を製造するステップと、
を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項17】
上記金属ナノ構造物の高さは上記誘電体層の高さより低いことを特徴とする請求項16に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項18】
上記金属ナノ構造物を設けるステップは、高分子マトリックス(matrix)上にナノインプリンティング(nanoimprinting)方法によりパターニング(patterning)した後、金属ナノ構造物を成長させて行われることを特徴とする請求項16に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項19】
上記金属ナノ構造物を成長させるステップは電気化学法または蒸着法により行われることを特徴とする請求項16に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項20】
上記金属ナノ構造物は上記内部電極層と同種の材質からなることを特徴とする請求項16に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227507(P2012−227507A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234773(P2011−234773)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】