説明

セラミド含有皮膚外用剤

【課題】
結晶性が高く皮膚外用剤などへの配合が困難であったセラミドを安定に含有して、皮膚水分蒸散抑制効果に優れた皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
セラミドを常温で液状の高級アルコールに溶解し、リン脂質を乳化剤として使用することにより、経時安定性の良い皮膚外用剤を得ることができた。高級アルコールとしては、ホホバアルコールが特に適していた。本発明の皮膚外用剤は皮膚の水分蒸散抑制効果の向上作用を有していた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、さらに詳細には皮膚の水分バリア能に優れた皮膚外用剤に有用な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは皮膚の角層の細胞間脂質に含有され、皮膚バリア能に寄与しているといわれているが、セラミド類は一般に化粧品基材への溶解性が悪いため結晶物として分散していることが多く、セラミドを化粧料などの皮膚外用剤中に含有させるために、種々の化合物を組み合わせてその結晶化を抑制させたり、溶解性を向上させる試みが為されている。例えば、セラミド、コレステロール、リン脂質からなる複合物を多価アルコールを含有する水相と混合する方法(例えば、特許文献1を参照)や、セラミドとリン脂質を1:2〜1:100の割合で多価アルコール中に溶解させた後に水相に分散させる方法(例えば、特許文献2を参照)などが知られている。また、セラミド、炭素数12〜32の脂肪酸を含む油性基材にノニオン性の界面活性剤を添加し、これをアルキルメチルタウリン塩やアシルグルタミン酸塩で乳化する方法(例えば、特許文献3を参照)なども知られている。さらに、セラミド、脂肪族アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステルを多価アルコールを含有する水性媒体で分散させることにより、液晶構造を有した分散物が得られること(例えば、特許文献4,特許文献5を参照)が知られている。しかし、このような液晶分散物は、セラミドの吸収性では好ましいが、製剤系の安定性、特に液晶部分への水の侵入による液晶構造の崩壊などを起こしやすいという心配がある。このように、セラミドを皮膚外用剤中に安定に配合させる工夫が種々行われてきているが、未だ十分とは言えないのが現状である。
【0003】
ここで、極性を有する常温で液状の油剤である高級アルコールは、化粧料などにおいて、皮膚にしっとり感、柔軟性を与えるために使用されている(例えば、特許文献6,特許文献7を参照)。しかし、常温で液状であり、しかも極性を有していることから、皮膚からの水分蒸散を抑制する効果(閉塞効果)は、他の非極性の油剤や固形油脂ほどは期待しにくいものであった。このような中、セラミドと常温で液状の高級アルコールとリン脂質を含有する皮膚外用剤は知られていないし、常温で液状の高級アルコールとセラミドとリン脂質を組み合わせて使用することによりセラミド含有製剤系の安定性が向上し、該皮膚外用剤が優れた皮膚水分蒸散抑制効果を有することも知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−229811号公報
【特許文献2】特開平11−130651号公報
【特許文献3】特開2004−161655号公報
【特許文献4】特開2004−331595号公報
【特許文献5】特開2004−331594号公報
【特許文献6】特開2004−300125号公報
【特許文献7】特開2004−352689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結晶性が高く皮膚外用剤などへの配合が困難であったセラミドを安定に含有して、皮膚水分蒸散抑制効果に優れた皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究努力した結果、セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有する皮膚外用剤において、セラミド含有製剤系の安定性が優れており、しかも常温で液状の高級アルコールを使用していながら皮膚の水分蒸散抑制効果が優れていることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
【0007】
(1) セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(2) 前記セラミドがセラミド2であることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) 前記リン脂質がリゾ体であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) 前記リン脂質がリゾレシチンであることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5) 前記常温で液状の高級アルコールがホホバアルコールであることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(6) フェノキシエタノールを含有することを特徴とする(1)〜(5)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(7) 1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールから選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする、(1)〜(6)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(8) アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩を含有することを特徴とする、(1)〜(7)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(9) セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有する乳化又は可溶化型の皮膚外用剤であって、セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有する乳化粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする、(1)〜(8)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(10) パラベンを含有しないことを特徴とする、(1)〜(9)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(11) セラミド、常温で液状の高級アルコール、リン脂質を含有する乳化物を調整し、しかる後に、他の製剤成分とともに製剤化されたものであることを特徴とする、(1)〜(10)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(12) 化粧料であることを特徴とする、(1)〜(11)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セラミドを安定に含有し、皮膚水分バリア能に優れた皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるセラミド
本発明の皮膚外用剤は、セラミドを含有することを特徴とする。本発明に使用されるセラミドとは、スフィンゴシンのアミノ基に長鎖脂肪酸がアミド結合した化合物の総称で、スフィンゴシンの構造及び長鎖脂肪酸の構造の違いによりセラミド1〜6が知られている。本発明においてはセラミド構造を有していれば何れのセラミドでも使用できるが、その中でも、セラミド2(N−アシルスフィンゴシン)又はセラミド3(N−アシルジヒドロスフィンゴシン)が好ましい。セラミド2としては、高砂香料工業よりセラミドTIC−001が市販されており、このものを購入して使用することができ、好ましい。セラミド3は、スフィンゴシンのヒドロキシ体であるフィトスフィンゴシンのN−アシル化体であり、植物セラミドとしても知られており、米糠に含有されているスフィンゴ糖脂質であるセレブロシドを加水分解しても得ることができる。セラミド3は、コスモファーム社より市販されており、このものを購入して使用することができ、好ましい。このようなセラミドの使用濃度は、ホホバアルコールに対して、1〜10質量%含有させることが好ましい。これより少なくなると本発明の効果が現れにくくなり、多すぎるとセラミドの結晶化が進行し本発明の効果が損なわれるからである。
【0010】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるリン脂質
本発明の皮膚外用剤はリン脂質を含有していることを特徴としている。セラミドを溶解した常温で液状の高級アルコールを水へ乳化・可溶化させるために、乳化・可溶化剤としてリン脂質を使用することにより、微細で安定性のよい乳化・可溶化型製剤が得られる。本発明の皮膚外用剤に用いられるリン脂質としては、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びこれらのリゾ体が例示でき、これらは天然型であっても、水添されたものであっても、化学的に合成されたものであっても良く、これらのリン脂質のうちリゾ体を用いるのがより好ましい。これは、これらのリン脂質の中でもリゾ体の乳化・可溶化力が特に優れているからである。また、リゾ体の中でもリゾフォスファチジルコリン(水酸化レシチン(リゾレシチン))が特に好ましい。これは、リゾフォスファチジルコリンが、他のリゾ体に比して安定性が良く、また市販品として入手し易いからである。この様なリゾフォスファチジルコリンとしては、レシノールLL20、レシノールSH50(日本サーファクタント工業製)等があり、このものを購入して使用することができ、好ましい。この様な成分の含有量としては、外用剤に対して0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0011】
(3) 本発明の皮膚外用剤の必須成分である常温で液状の高級アルコール
本発明の皮膚外用剤は、常温で液状である高級アルコールを含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤に使用される常温で液状の高級アルコールとは、20℃、1気圧で流動性を有している炭素数16以上のアルコールを指し、具体的にはイソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコールなどがあげられる。これらの高級アルコールの中では、ホホバアルコールが特に好ましい、これはセラミドの溶解性が優れており、さらにセラミドの含有による水分蒸散抑制効果が一番顕著に現れるからである。本発明に使用されるホホバアルコールは、ホホバの種子から得られるホホバオイル(エステル化合物)を加水分解して得られるアルコール成分を精製することによって得られる。また、このホホバオイルを加水分解して得られた脂肪酸を還元してアルコール体へ誘導し、ホホバアルコールとすることも可能である。ホホバオイルは、アメリカ南部やメキシコ北部の乾燥地帯に自生しているツゲ科ホホバの種子から得られる油脂で、不飽和脂肪酸と不飽和脂肪族アルコールからなるエステル体を主成分とする油脂である。このホホバオイル中の脂肪酸と脂肪族アルコールの組成比は天然油脂であるので変動するが、脂肪酸部分の組成は、炭素数18不飽和度1(C18:1)の直鎖脂肪酸が4〜8%、炭素数20不飽和度1の直鎖脂肪酸(C20:1)が30〜40%、炭素数22不飽和度1の直鎖脂肪酸(C22:1)が5〜9%、脂肪族アルコール部分の組成としては、炭素数20不飽和度1の直鎖脂肪族アルコール(C20:1)が18〜26%、炭素数22不飽和度1の直鎖脂肪族アルコール(C22:1)が18〜26%、炭素数24不飽和度1の直鎖脂肪族アルコール(C24:1)が2〜6%であり、単なる加水分解物から脂肪族アルコールのみを単離するとC20:1が36〜54%、C22:1が36〜54%、C24:1が4〜12%含有されることになる。しかし、一般には脂肪酸部分もアルコールへ還元されて使用されるため、オクタデセノール(C18:1)が4〜6%、エイコセノール(C20:1)が55〜64%、ドコセノール(C22:1)が24〜32%、テトラコセノール(C24:1)が2〜6%程度の組成を有している。このような組成のホホバアルコールとしては、ホホバアルコール(太陽化学製(株))が市販されており、このものを購入して使用することができ、好ましい。皮膚外用剤組成物中に於けるホホバアルコールの含有量は0.5〜20質量%、さらに言えば1〜10質量%であることが好ましい。これ以下では本発明の皮膚水分蒸散抑制効果が得られにくく、これ以上では製剤的に不安定化する可能性があるからである。
【0012】
(4)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤としては、セラミドを常温で液状の高級アルコールに溶解させ、これを、リン脂質により、乳化物となし、これを含有させた乳化形態であることが好ましい。具体的には、セラミドと常温で液状の高級アルコールの混合物を70〜80℃に加熱して均一溶液とし、これを70〜80℃に加熱しておいたリン脂質含有水溶液と混合・撹拌し、乳化物を形成し、さらにマイクロフルイダイザー、エクストルーダー、ディスパー、高圧ホモミキサー等の高機械力処理を行い、さらに微細な乳化粒子とすることが好ましい。乳化物の安定化のためにも乳化粒子の微細化は有効であり、マイクロフルイダイザーを使用する場合には、1回〜3回マイクロフルイダイザーを通すことにより作製直後において、100nm以下の乳化粒子とすることが好ましく、80nm以下とすることがより好ましい。乳化粒子をこの様なサイズとすることにより、優れた製剤系の安定化効果を得ることができる。このものをそのまま本発明の皮膚外用剤とすることもできるが、更に、得られた乳化物を製造中間体として用い、他の製剤上の任意成分とともに常法に従って処理し、皮膚外用剤に調整することができ、本発明に皮膚外用剤の製造法ではこの様な方法が好ましい。
【0013】
前記製造中間体を用いる製造法において、本発明の皮膚外用剤では、予め製造された水中油型乳化製剤や可溶化製剤に前記製造中間体としての乳化物を混合することも可能であり、この様な形態も本発明の好ましい形態の一つである。製造中間体と混合される水中油型乳化製剤や可溶化製剤は、水中油型乳化製剤や可溶化製剤であればどのような形態のものでも使用できるが、本発明の皮膚外用剤の乳化粒子との合一が起こりにくいように、使用する界面活性剤は本発明で使用するリン脂質とは異なる性質を有する界面活性剤、例えばポリオキシエチレン鎖やポリグリセリンなどの水親和性基を有するノニオン性の界面活性剤を使用した乳化物が好ましい。さらにアルキル変性カルボキシビニルポリマーのような界面活性作用を有する高分子を使用して界面を強化した水中油型乳化物を使用するのも好ましい形態である。
【0014】
また、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールから選択される1種以上の多価アルコールを含有させるのも、本発明の皮膚外用剤の好ましい形態の一つである。これらの多価アルコールは安全性が高い上に、抗菌性を有しているため、これらを含有させることにより、本発明の皮膚外用剤の防腐力を高めることができる。加えて、フェノキシエタノールを使用することも防腐力を向上させる上で有効である。この様な形態を取ることにより、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラベン類を使用せずに防腐力を持たせることができ、これによってスティンギングなどの現象を抑制することができ、パラベン類に対して一過性の刺激を感じやすい敏感肌の人にも使用し易くなる。特に、好ましい形態は、フェノキシエタノールを含有し、パラベン類を含有しない形態である。
【0015】
本発明の皮膚外用剤においては、前記の成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、通常化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の必須成分に分類されない高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の皮膚外用剤は製造することが出来る。
【0016】
本発明の皮膚外用剤の剤型は特に限定されるものではないが、本発明が水中油型の乳化物の形態が好ましい形態であるため、具体的には、クリーム、乳液、ミルクローション、クリーム状パックなどが好ましい。
【0017】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、かかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0018】
以下に示す処方に従い、イ)、ロ)を秤取り、イ)を75℃に加熱して均一溶液とした。別途、ロ)を混合後75℃に加熱し、これにイ)を添加し、撹拌乳化後、マイクロフルイダイザーを2回かけて微細な乳化粒子とし、これを冷却して、本発明の皮膚外用剤1を得た。実施例1における皮膚外用剤1において、ホホバアルコールをイソステアリルアルコールに置換したものを皮膚外用剤2、ホホバアルコールをステアリルアルコールに置換したものを比較例1,ホホバアルコールをステアリン酸に置換したものを比較例2,ホホバアルコールをトリ(2−エチルヘキサン酸)グリセリドに置換したものを比較例3、セラミドをコスモファーム社のセラミド3に置換したものを皮膚外用剤3,セラミドを水に置換したものを比較例4、セラミドをカルナウバロウ(融点83〜93℃)に置換したものを比較例5とした。
【0019】
イ)
ホホバアルコール 5.0 質量%
セラミド2(セラミドTIC−001:高砂香料製) 0.2 質量%
ロ)
リゾレシチン(レシノールLL20:日本サーファクタント工業製) 1.0 質量%
グリセリン 1.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 0.5 質量%
水 92.3 質量%
【0020】
<試験例1> 経時安定性試験
実施例1の皮膚外用剤1,皮膚外用剤2,比較例1,比較例2,比較例3、皮膚外用剤3をスライドグラス上に載せ、へらで展延し、偏光顕微鏡によるマルテーゼクロス(液晶状態)及び析出物の観察を行った。さらに、20℃の恒温室に4ヶ月間放置したサンプルについても、スライドグラス上に載せ、へらで展延し、顕微鏡による観察を行った。結果を表1に示す。
<試験例2> 乳化粒子径の測定
乳化粒子径の測定は、コールター社製のマルチアングル サブミクロン 粒子アナライザイー N4 PLUSを用いて実施した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
比較例1は偏光顕微鏡観察でマルターゼクロスが観察され液晶分散物であることが判った。その他の皮膚外用剤1,皮膚外用剤2,比較例2,皮膚外用剤3はエマルションであった。比較例3は、作製直後でも結晶の析出が認められ、セラミドの溶解状態が悪いことがわかった。また、粒子径も皮膚外用剤1,皮膚外用剤2,皮膚外用剤3、比較例4では小さいものであったが、その他は比較的大きかった。20℃、4ヶ月放置の状態において、皮膚外用剤1,皮膚外用剤2,皮膚外用剤3は結晶の析出が認められず、粒子径も100nm前後であったが、比較例1,比較例2,比較例3においては結晶の析出が認められ、粒子径もかなり大きくなっていた。
【0023】
<試験例3> 水分蒸散抑制試験
内径3.5cmφ×高さ6cmの上部の開口した円筒容器を精秤し、これに蒸留水20mlを入れ再度精秤した。この容器の上部に桐山ロート用濾紙(4cmφ:No.5C)をセットし、開口部3cmφのキャップをした。上部開口部に実施例1で作製した皮膚外用剤1,皮膚外用剤2,皮膚外用剤3、比較例4,比較例5のサンプルを500μlずつ塗布した。この容器を40℃、30%R.H.の雰囲気中に24時間放置した。24時間後に、水の入った円筒容器を精秤し、開口部を通して蒸散した水の量を計算した。コントロールとして、蒸留水500μlで同様に処理した濾紙を用いた。測定は、各5例で行ない、5例の平均値と偏差を算出した。結果を図1に示す。
【0024】
図1の結果より、比較例4のホホバアルコールを含有する組成物の水分蒸散抑制効果は強いものでは無かった、それに比べて、セラミド2を添加させた皮膚外用剤1、ホホバアルコールに変えてイソステアリルアルコールを用いた皮膚外用剤2、セラミド3を添加させた皮膚外用剤3では、水分蒸散抑制効果を示した。セラミド2を高融点のワックスであるキャンデリラロウに置換した比較例5では、若干の効果が認められたが、セラミドの添加効果にははるかに及ばなかった。
【実施例2】
【0025】
以下に示す処方に従い、イ)、ロ)を秤取り、イ)を75℃に加熱して均一溶液とした。別途、ロ)を混合後75℃に加熱し、これにイ)を添加し、撹拌乳化後、マイクロフルイダイザーをかけて微細なエマルションとし、これを冷却して、本発明の皮膚外用剤4を得た。実施例2における皮膚外用剤4において、セラミドを水に置換したものを比較例6、セラミドを固体パラフィンに置換したものを比較例7とした。
【0026】
イ)
ホホバアルコール 8.0 質量%
セラミド2(セラミドTIC−001:高砂香料製) 0.5 質量%
スクワラン 3.0 質量%
ロ)
リゾレシチン(レシノールSH50:日本サーファクタント工業製) 2.0 質量%
グリセリン 5.0 質量%
メチルパラベン 0.3 質量
水 81.2 質量%
【実施例3】
【0027】
以下に示す処方に従い、イ)、ロ)を秤取り、イ)を75℃に加熱して均一溶液とした。別途、ロ)を混合後75℃に加熱し、これにイ)を添加し、撹拌乳化後、マイクロフルイダイザーをかけて微細なエマルションとし、これを冷却して、本発明の皮膚外用剤5を得た。
【0028】
イ)
ホホバアルコール 8.0 質量%
セラミド(セラミドTIC−001:高砂香料製) 0.5 質量%
スクワラン 3.0 質量%
ロ)
リゾレシチン(レシノールSH50:日本サーファクタント工業製) 1.0 質量%
グリセリン 5.0 質量%
1,2−ペンタンジオール 2.0 質量%
水 80.5 質量%
【0029】
<試験例4> 皮膚の水分バリア機能改善試験
肌の乾燥に悩む20名のパネラーを対象に試験を実施した。測定に際しては、20℃、相対湿度50%の部屋で実施し、測定値は平均した。各パネラーの顔面を37℃の温水を用いて、クレンジング料、水性洗顔料を使用して洗浄してもらい、その後15分間安静にしてもらった後、測定を行った。頬部を対象として、経皮水分蒸散量(TEWL)をTEWAMETER TM-210にて測定し初期値とした。その後、TEWLの平均がほぼ同じになるように、5名ずつの4グループに分けた。各グループ毎に、実施例2にて作成した皮膚外用剤4又は比較例6,比較例7、実施例3の皮膚外用剤5を1ヶ月間使用してもらい、1ヶ月後に同様の条件で再度経表皮水分蒸散量を測定した。評価結果を図2に示した。
【0030】
図2の結果より、実施例2の皮膚外用剤4を1ヶ月間使用することによりTEWLが減少し、皮膚の水分バリア機能の向上を示した。セラミドを水に置換した比較例6では、皮膚の水分バリア機能の改善効果があまり認められなかった。さらにセラミドを固体パラフィンに置換した比較例7においても、あまり改善効果が認められなかった。また、1,2−ペンタンジオールを添加した皮膚外用剤5では、若干の改善効果の増強が認められた。
【実施例4】
【0031】
以下に示す処方に従い、イ)、ロ)、ハ)、ニ)、ホ)を秤取り、75℃に加熱して均一溶液とした。ロ)にイ)を添加し、撹拌乳化後、マイクロフルイダイザーをかけて微細なエマルションとした。これとは別途、ハ)にニ)を添加して、さらにホ)を添加して、乳化組成物を作製した。これに、先ほど調整したエマルションを混合し、本発明の皮膚外用剤6を得た。実施例4におけるエマルションの製造に於いてセラミドを水に置換して製造したエマルションとハ)、ニ)、ホ)より調整される乳化組成物を混合したものを比較例8とした。
【0032】
イ)
ホホバアルコール 5.0 質量%
セラミド(セラミドTIC−001:高砂香料製) 0.4 質量%
ロ)
リゾレシチン(レシノールSH50:日本サーファクタント工業製) 0.5 質量%
1,3−ブタンジオール 2.0 質量%
水 8.0 質量%
ハ)
ソルボンS60A 1.2 質量%
ソルボンT60A 1.0 質量%
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
水 3.0 質量%
ニ)
スクワラン 10.0 質量%
ノムコートTIO 3.0 質量%
ビタミンE 0.1 質量%
ホ)
1,2−ペンタンジオール 2.0 質量%
グリセリン 5.0 質量%
ヒアルロン酸 0.1 質量%
水 55.7 質量%
【実施例5】
【0033】
以下に示す処方に従い、イ)、ロ)、ハ)、ニ)、ホ)を秤取り、75℃に加熱して均一溶液とした。ロ)にイ)を添加し、撹拌乳化後、マイクロフルイダイザーをかけて微細なエマルションとした。これとは別途、ハ)にニ)を添加して、さらにホ)を添加して乳化組成物を作製した。これに、先ほど調整したエマルションを混合し、本発明の皮膚外用剤7を得た。
【0034】
イ)
ホホバアルコール 5.0 質量%
セラミド(セラミドTIC−001:高砂香料製) 0.4 質量%
ロ)
リゾレシチン(レシノールSH50:日本サーファクタント工業製) 0.5 質量%
1,3−ブタンジオール 2.0 質量%
水 8.0 質量%
ハ)
ソルボンS60A 1.2 質量%
ソルボンT60A 1.0 質量%
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
水 3.0 質量%
ニ)
スクワラン 10.0 質量%
ノムコートTIO 3.0 質量%
ビタミンE 0.1 質量%
ホ)
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2 質量%
(Goodrich社製:カーボポール1382)
1,2−ペンタンジオール 2.0 質量%
グリセリン 5.0 質量%
ヒアルロン酸 0.1 質量%
水 55.5 質量%
【0035】
<試験例5> 皮膚の水分バリア機能改善試験
肌の乾燥に悩む15名のパネラーを対象に試験を実施した。測定に際しては、20℃、相対湿度50%の部屋で実施し、測定値は平均した。各パネラーの顔面を37℃の温水を用いて、クレンジング料、水性洗顔料を使用して洗浄してもらい、その後15分間安静にしてもらった後、測定を行った。頬部を対象として、経皮水分蒸散量(TEWL)をTEWAMETER TM-210にて測定し初期値とした。その後、TEWLの平均がほぼ同じになるように、5名ずつの3グループに分けた。各グループ毎に、皮膚外用剤6、比較例8,皮膚外用剤7を1ヶ月間使用してもらい、1ヶ月後に同様の条件で再度経表皮水分蒸散量を測定した。評価結果を図3に示した。
【0036】
図3の結果より、皮膚外用剤6を1ヶ月間使用することによりTEWLが減少し、皮膚の水分バリア機能の向上を示した。セラミドを水に置換して製造した比較例8では,皮膚外用剤1ほどのTEWL改善効果ではなかった。さらに、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを添加した皮膚外用剤7においては、皮膚外用剤1に比べて若干のTEWLの改善増強効果がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、セラミドを安定に配合し、皮膚水分バリア能に優れた皮膚外用剤に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】試験例3の結果を示す図である。
【図2】試験例4の結果を示す図である・
【図3】試験例5の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記セラミドがセラミド2であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記リン脂質がリゾ体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記リン脂質のリゾ体がリゾレシチンであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記常温で液状の高級アルコールがホホバアルコールであることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに、フェノキシエタノールを含有することを特徴とする請求項1〜5何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
さらに、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールから選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
さらに、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩を含有することを特徴とする、請求項1〜7何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有する乳化又は可溶化剤型の皮膚外用剤であって、セラミド、リン脂質、常温で液状の高級アルコールを含有する乳化粒子の平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
パラベンを含有しないことを特徴とする、請求項1〜9何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
予め、セラミド、常温で液状の高級アルコール、リン脂質を含有する乳化物を調整し、しかる後に、他の製剤成分とともに製剤化されたものであることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項12】
化粧料であることを特徴とする、請求項1〜11何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−1950(P2007−1950A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185977(P2005−185977)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】