説明

セロトニン二重作用化合物に関する併用療法

本発明は、5−ヒドロキシトリプトファンとセロトニントランスポーターのアロステリック部位に結合するセロトニン再取り込み阻害薬との組み合わせを含む併用療法および医薬組成物に関する。本発明はさらに、(i)約1mg〜約75mgの範囲の5−ヒドロキシトリプトファン;および(ii)セロトニントランスポーターのアロステリック部位に結合するセロトニン再取り込み阻害薬を含む医薬組成物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−ヒドロキシトリプトファンとセロトニントランスポーターのアロステリック部位に結合するセロトニン再取り込み阻害薬との組み合わせを含む、有効性が改善された併用療法および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願を通じて様々な刊行物が参照される。本発明の属する技術分野をより詳細に説明するため、そうした刊行物の開示内容全体を参照によって本出願に援用する。
【0003】
5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)はセロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン;5−HT)の直接の前駆体である。5−HTPはインビボで脱炭酸されて5−HTとなる。脳内の5−HTレベルは中枢神経系(CNS)における5−HTPレベルに左右される。5−HTPが血液脳関門を通過するのに輸送分子は必要ない。5−HTPは脳内のセロトニンの産生を増加させることが臨床的に明らかにされており、したがって、軽度または中等度の鬱病患者の処置として5−HTPの投与が提案されてきた(総説として、非特許文献1および非特許文献2を参照されたい)。
【0004】
セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)は効果的であるうえ、忍容性が高く、従来の三環系抗鬱薬に比べて安全性プロファイルに優れているため、情動障害、特に鬱病の処置において第一選択治療薬になっている。
【0005】
しかしながら、患者に効果があっても、ある程度の有害な副作用を伴わない医薬品治療はほとんど知られていない。ヒト患者のオープン試験において5−HTPの単独療法には消化管の副作用(悪心、嘔吐、下痢)および精神病理学的副作用(急性不安状態、軽躁)が伴ってきた(非特許文献3;非特許文献4)。5−HTPの投与は好酸球増多筋痛症候群の原因である可能性があると考えられている(総説として、非特許文献5を参照されたい)。こうした副作用のリスクを管理する1つのアプローチとしては5−HTPの用量を減量し得る。
【0006】
SRIでは、SRIの周知の効果と比較検討して管理すべき、予想される副作用として性機能障害および睡眠障害が挙げられる。SRIの単独療法では多くの患者で治療効果の発現が遅延した。さらに、鬱病および不安障害の臨床試験からは、1つのクラスとしてSRIの単独療法で処置された患者の30%超が非応答であることが示されている。
【0007】
様々な動物モデルでは、種々のSRIを5−HTPと一緒に投与した際のSRIの様々な増強作用に関する知見が認められている。たとえば、非特許文献6では、隔離飼育による攻撃性マウスモデルを用いて有効量以下の用量のL,5−HTPにより、シタロプラムおよびパロキセチンの抗攻撃性作用が大きく増強されることが認められた。
【0008】
また、非特許文献7でも、不安誘発超音波発声ラットモデルを用いてL,5−HTPとシタロプラムまたはエスシタロプラムとの併用投与が試験された。このモデルの場合、超音波発声がラットのパニック不安を模倣すると理論立てられており、L,5−HTPとシタロプラムとを併用処置すると抗不安反応がやや減弱し、L,5−HTPとエスシタロプラムとの併用処置では顕著に増強されることが確認された。R−シタロプラムとの併用の処置では対照と比較して超音波発声が顕著に増加した。
【0009】
したがって、患者はより低用量の5−HTPの投与で効果が得られる可能性がある。患者はまた、より低用量のSRIの投与で効果が得られる可能性もある。さらに、SRIに反応しない患者もSRIと5−HTPとの併用療法で効果が得られるかもしれない。こうした併用療法はSRIまたは5−HTPのどちらかをより低用量で含むものであるが、SRIまたは5−HTPの単独療法よりも有効性を高めるか、あるいは治療効果の発現を早める可能性がある。こうした併用療法は、SRIがセロトニントランスポーター(SERT)のアロステリック部位に結合するときに特に有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第05/061455A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,943,590号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Meyers,S.、Alterm Med Rev.2000 Feb、5(1):64−71
【非特許文献2】Birdsall,T.C.、Altern Med Rev.1998 Aug;3(4):271−80
【非特許文献3】Zmilacher,K.、Battegay,R.およびGastpar,M.、Neuropsychobiology.1988、20(1):28−35
【非特許文献4】Gijsman,H.J.ら、J Clin Psychopharmacol.2002 Apr、22(2):183−9
【非特許文献5】Das,Y.T.ら、Toxicol Lett.2004 Apr 15;150(1):111−22
【非特許文献6】Sanchez,C.およびHyttel,J.、European Journal of Pharmacology(1994)264:241−247
【非特許文献7】C.Sanchez、European Journal of Pharmacology(2003)464:155−158
【非特許文献8】Rigdon,GCおよびWang,CM、Drug Development Research 1991、22:135−140
【非特許文献9】SanchezおよびMeier、Psychopharmacol.129:197−205;1997
【非特許文献10】Mork,A.、Kreilgaard,M.およびSanchez,C.、Neuropharmacology.2003 Aug、45(2):167−73
【非特許文献11】Aghajanian,G.K.、Essays Neurochem Neuropharmacol 2000、3:1−32
【非特許文献12】Hyttel,J.、Psychopharmacology 1978、60:13−18
【非特許文献13】Hyttel,J.、Prog.Neuro−Psychopharmacol.& Biol.Psychait.1982、6:277−295
【非特許文献14】Hyttel,J.およびLarsen、Acta Pharmacol.Tox.1985、56(suppl.1):146−153
【非特許文献15】Sanchez,C.および Hyttel,J.、European J.Pharm.1994、264:241−247
【非特許文献16】Plenge,P.およびMellerup,E.T.、Eur J Pharmacol.1985 Dec 10;119(1−2):1−8
【非特許文献17】Wennogle,L.P.およびMeyerson,L.R.、Life Sci.1985 Apr 22;36(16):1541−50
【非特許文献18】Chen,F.ら、Eur Neuropsychopharmacol.2005 Mar;15(2):193−8
【非特許文献19】Chen,F.ら、J.Neurochem.2005、92:21−28
【非特許文献20】Chen,FC.、J.Neurochem.、2005、92、21−28
【非特許文献21】Sanchez,C.ら、Psychopharmacology 2003;167:353−362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、(i)5−ヒドロキシトリトファンおよび(ii)2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のもう1つの目的は、(i)約1mg〜約75mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファン;および(ii)セロトニントランスポーターのアロステリック部位に結合するセロトニン再取り込み阻害薬2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む医薬組成物を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】麻酔ラットの背側縫線におけるセロトニン含有ニューロンの自発発火を示す発火率のヒストグラムである。低閾値下用量(low threshold dose)の5−HTP(25mg/kg)(左矢印)を注射すると、細胞発火率が低下する。続けて25μg/kgの化合物II、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミン(右矢印)の第2の注射により、さらに低下することが観察される。
【図2】麻酔ラットの背側縫線におけるセロトニン含有ニューロンの自発発火を示す発火率のヒストグラムである。図1に示したのと同様の実験において化合物II、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミン(左矢印)の後に25mg/kgの5−HTP(中央の矢印)を投与する。2回目の注射(5−HTP)により細胞の発火が著しく低下する。ニューロンはその後に投与するWAY−100635(選択的5−HT1Aアンタゴニスト)(右矢印)に反応し、ニューロンの自発発火率が上昇する。
【図3】背側縫線細胞の発火に関して化合物IIと5−HTPとの組み合わせ投与の概要をグラフ化したものである。処置の順序に関係なく、このSRIとこの5−HT前駆体とを組み合わせると、ニューロン活動に対する作用は個々の投与作用を単純に足して得られるものよりも大きくなる。化合物IIの後に5−HTPを注射した組み合わせでは細胞発火率に対する作用が5−HTP単独の場合より有意に増大する(**p<0.01)。同様に、5−HTPの後に化合物IIを注射した場合の細胞発火率に対する作用も化合物II単独の作用より有意に増大する(**p<0.01)。統計解析は6匹の異なるラットから収集したデータについて行った。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、5−ヒドロキシトリプトファンとセロトニントランスポーターのアロステリック部位に結合するセロトニン再取り込み阻害薬、たとえば、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンとを含む医薬組成物に関する。
【0016】
本明細書で使用する場合、「セロトニン再取り込み阻害薬」または「SRI」とは、中枢神経系(CNS)におけるセロトニントランスポーターの主要なリガンド結合部位に結合してセロトニンの再取り込みを阻害することで治療効果を十分にまたはある程度発揮する化合物を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、「アロステリックモジュレーター」とは、セロトニントランスポーター(SERT)のアロステリック部位に結合するSRIを意味する。こうした化合物はアロステリックセロトニン再取り込み阻害薬(ASRI)とも呼ばれる。
【0018】
本発明の一実施形態では、アロステリックモジュレーターはSERTの1つまたは2つ以上のアロステリック部位に結合する。別の実施形態では、アロステリックモジュレーターは、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンに結合できるSERTのアロステリック部位に結合する。
【0019】
5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)は、アミノ酸L−トリプトファンから体内で自然に生成される芳香族アミノ酸である。5−HTPは5−HTの直接の前駆体である。以下に5−HTPの式を式Iとして示す。
【化1】

【0020】
5−HTPは、2−アミノ−3−(5−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル)−プロパン酸(C1112)としても知られている。本明細書および特許請求の範囲を通じて「5−HTP」および「5−ヒドロキシトリトファン」は、塩基(両性イオン)、薬学的に許容可能な塩、塩基もしくは塩の水和物または溶媒和物、ならびに無水物、および非晶質または結晶質形態を含むアミノ酸5−ヒドロキシトリプトファンの任意の形態を含むことを意図している。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な酸または塩基との塩を含む。5−HTPに関しては、こうした塩を薬学的に許容可能な塩基、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムなどの強塩基と形成してもよい。また、こうした5−HTPの塩を塩酸、臭化水素酸、リン酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸および同種のものなど薬学的に許容可能な酸と形成してもよい。したがって、5−HTPは酸付加塩の形態、または両性イオン水和物、両性イオン一水和物もしくは両性イオン無水物の形態で用いてもよい。
【0021】
本発明の目的においては、5−HTPはラセミ混合物中に存在してもよいし、実質的に純粋なD−エナンチオマー、D−5−ヒドロキシトリプトファン、または実質的に純粋なL−エナンチオマー、L−5−ヒドロキシトリプトファンとして存在してもよい。
【0022】
本発明の一態様は、SRIとの併用療法に使用するための5−HTPを含む医薬組成物に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、(i)約1mg〜約75mgの範囲の5−ヒドロキシトリプトファン;および(ii)2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
本明細書に記載の本発明によれば、5−HTPはアロステリックモジュレーターなどのセロトニン再取り込み阻害薬の治療効果を増強し、および/またはその発現を早めるために使用することができる。さらに、本発明の一部として、併用療法で使用する際により低い用量の5−HTPがアロステリックモジュレーターの治療効果を増強し、および/またはその治療効果のより速い発現を提供し得る。本発明の一実施形態では、5−HTPを約1mg〜約75mgの範囲の量で2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンと併用投与する。本発明の別の実施形態では、5−HTPを約3mg〜約50mgの範囲の量で2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンと併用投与する。本発明のなお別の実施形態では、5−HTPを約10mg〜約50mgの範囲の量で2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンと併用投与する。
【0025】
本明細書で使用する場合、「増強する」とは、SRIの治療効果を改善し、および/または作用を強化することを意味するものとする。
【0026】
本明細書に記載するように、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンは本発明の実施形態を形成するSRI、またはそうした化合物のいずれかの薬学的に許容可能な塩である。2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンの式は式IIとして示される。
【化2】

【0027】
式IIの化合物(以下、化合物IIという)は、インビトロでの再取り込み阻害効力により測定するとセロトニントランスポーター(SERT)とノルエピネフリントランスポーター(NET)との両方で阻害作用を発揮するため、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)と見なされる。本明細書で使用する場合、ノルエピネフリンはノルアドレナリンも意味する。
【0028】
このため、特定の理論に拘泥するわけではないが、本出願人らは化合物IIがSRI、SNRIおよびASRIの定義を満たすものと認めている。
【0029】
上述の化合物IIは遊離塩基の形態で用いても、酸付加塩などの薬学的に許容可能な塩の形態で用いてもよく、後者は塩基形態と適当な酸との反応により得ることができる。
【0030】
換言すれば、本発明の一実施形態では、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンは薬学的に許容可能な塩の形態にある。
【0031】
たとえば、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンはL−(+)−酒石酸水素塩の形態で使用してもよい。
【0032】
別の実施形態では、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンは非晶質形態の遊離塩基ではない。
【0033】
他の実施形態では、こうした塩は、薬学的に許容可能な酸付加塩、薬学的に許容可能な金属塩、アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩を含むことができる。酸付加塩は、無機酸の塩および有機酸の塩を含む。さらに、薬学的に許容可能な酸付加塩としては本化合物が形成できる水和物も意図している。好適な無機酸および有機酸の例は、参照によってその全体を本明細書に援用する特許文献1に記載されている。
【0034】
セロトニン再取り込みの強力な阻害作用が明らかになっている抗鬱薬化合物(たとえば、SRI)は、背側縫線ニューロンの発火率を抑制する(非特許文献8)。このため、本明細書では5−HTPとSRI、すなわち化合物IIまたはその薬学的に許容可能な塩とを併用投与が、どちらかの化合物の単独投与よりも背側縫線ニューロンの発火に対して、より大きな作用を有することが示される。5−HTPとこのSRIを組み合わせた投与の驚くべき作用は相加的ではなく相乗的であることが確認されており、したがって、治療可能性が改善される。
【0035】
上記のように、本発明の一実施形態では、単独療法で通常使用されるよりも低用量の5−HTPを単独療法で通常使用される用量の化合物IIと組み合わせて用いて5−HT放出量(output)を増強し、それにより治療効果のより速い発現を提供することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、併用療法に使用すべき5−HTPの量は1日約3〜約50mgまたは1日約10〜約50mgなど1日約1〜約75mgの範囲としてもよい。したがって、本発明の医薬組成物は、約3〜約50mgまたは約10〜約50mgなど約1〜約75mgの5−HTPを含んでもよい。
【0037】
本明細書で使用する場合、化合物の「治療有効量」とは、ある疾患ならびにその徴候および/または合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に阻止するのに十分な化合物の量を意味する。これを達成するのに十分な量を「治療有効量」と定義する。それぞれの目的に対する有効量は疾患または傷害の重症度のほか、対象の体重および全身状態に依存する。適切な投薬量については、数値マトリックスを作成してマトリックスの様々なポイントを試験することで通常の実験により判定できることが理解されよう。こうしたことはどれも訓練を受けた医師の通常の技術の範囲内である。
【0038】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む。さらなる実施形態では、医薬組成物は、0.1mg〜50mgの2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む。さらに、本発明では、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンの1日の用量範囲が1日あたり0.1mg〜50mgになるように、こうした医薬組成物をそれを必要している患者に投与することも含む。
【0039】
本明細書で使用する場合、「有効量以下の用量(subeffective dose)」とは、単独療法としての臨床成績を達成するために投与される最低用量を下回る量の用量を意味するものとする。
【0040】
本発明のなお別の態様では、医薬組成物は、50mg未満の量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび約1mg〜約600mgの範囲の量の5−HTPを含む。本発明の別の実施形態では、医薬組成物は、50mg未満の量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび約25mg〜約300mgの範囲の量の5−HTPを含む。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態では、医薬組成物は、50mg未満の量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび約50mg〜約200mgの範囲の量の5−HTPを含む。本発明のさらなる実施形態では、医薬組成物は、約0.1mg〜約49.9mgの量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む。
【0042】
本発明のさらなる実施形態では、併用療法に使用すべき5−HTPの量は1日約25mg〜約300mgまたは1日約50mg〜約200mgなど1日約1mg〜約600mgの範囲としてもよい。したがって、本発明の医薬組成物は、約25mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgなど約1mg〜約600mgの5−HTPを含んでもよい。
【0043】
このため、本発明の一実施形態は有効量以下の用量の化合物IIおよび5−HTPを含有する医薬組成物を含み、この組成物は約1mg〜約600mg、約25mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgの範囲の量の5−HTPを含む。さらに、本発明では、5−HTPの1日の用量範囲が1日約1mg〜約600mgまたは1日約25mg〜約300mgまたは1日約50mg〜200mgになるように、こうした医薬組成物をそれを必要している患者に投与することも含む。
【0044】
5−HTPをセロトニンに分解する芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼは広く全身に分布する。5−HTPのセロトニンへの分解を抑えるため、5−HTPと併用して末梢性脱炭酸阻害剤を投与してもよい。
【0045】
このため、本医薬組成物は末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含んでもよい。末梢性脱炭酸阻害剤には、カルビドパ、L−α−メチルドパ、モノフルオロメチルドパ、ジフルオロメチルドパおよびベンセラジドが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0046】
本発明の医薬組成物は、約100mg〜約150mgの範囲の量のカルビドパを含んでもよい。
【0047】
本発明によれば、本明細書に記載の医薬組成物は、たとえば、経口または非経口など任意の好適な方式で投与することができ、たとえば、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤または注射用溶液剤もしくは分散剤など、そうした投与に好適な任意の形態としてもよい。本発明の一実施形態では、この組成物を錠剤またはカプセル剤として好適な医薬品固形製剤(solid pharmaceutical entity)の形態で投与しても、注射用の懸濁剤、溶液剤または分散剤の形態で投与してもよい。
【0048】
固形医薬組成物の調製方法は当該技術分野において周知である。したがって、たとえば、錠剤の場合、活性成分を通常の佐剤および/または希釈液と混合し、その後都合のよい打錠機でその混合物を圧縮して調製してもよい。佐剤または希釈液の例として、コーンスターチ、ラクトース、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ゴムおよび同種のものが挙げられる。活性成分と適合性があることを条件として、着色料、香料、防腐剤など他の佐剤または添加剤を用いてもよい。
【0049】
本医薬組成物は、特許請求の範囲に記載されている発明の一部として固形投与形態、典型的には錠剤またはカプセル剤などの経口投与形態で投与しても、あるいは液体経口投与形態で投与してもよい。本明細書に記載の医薬組成物は錠剤またはカプセル剤などの単位剤形で投与すると最も都合がよい。たとえば、こうした錠剤またはカプセル剤は約1〜約600mg、または約25mg〜約300mg、または約10〜50mgの範囲の量の5−HTPを含んでもよい。
【0050】
本発明の医薬組成物を調製する際は、適当な量の塩の形態または塩基形態の5−HTPおよび/または化合物IIを薬学的に許容可能なキャリアとの密な混合物(intimate admixture)中で組み合わせ、所望の投与形態に応じて様々な形態をとってもよい。こうした医薬組成物は経口投与、直腸内投与、経皮投与または非経口注射による投与に好適な単位投与形態としてもよい。たとえば、経口剤形の組成物を調製する場合、水、グリコール、油、アルコールおよび同種のものなど通常の製剤基材(pharmaceutical media)のいずれかを経口液体製剤の形態に組み込んでもよい。経口液体製剤は懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤および溶液剤であってもよい。経口剤形の組成物を調製するには、デンプン、糖、カオリン、潤滑剤、結合剤、崩壊剤および同種のものなど通常の製剤基材のいずれかを固体キャリアの形態に組み込んでもよい。経口固体製剤は散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤であってもよい。投与のしやすさから、錠剤およびカプセル剤が最も都合がよい経口剤形であり、この場合、固体医薬キャリアを使用することになるだろう。
【0051】
投与のしやすさと投薬量の均一性から、前述の医薬組成物を単位投与形態で製剤化すると特に都合がよい。本明細書で使用する場合、単位投与形態とは単位投薬量として好適な物理的に分離したユニットを意味し、各ユニットは、必要とされる医薬キャリアとともに、所望の治療効果を発揮するように予め定められた量の5−HTPおよび/または化合物IIを含む。単位投与形態の例として、錠剤(割線入りコーティング剤を含む)、カプセル剤、丸剤、分包散剤、オブラート剤(wafer)、注射用溶液剤または懸濁剤および同種のものならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
5−HTPは化合物IIの投与の前に投与しても、その投与の最中に投与しても、またはその投与の後に投与してもよく、ただし5−HTPの投与から化合物IIの投与までの時間については、各成分が中枢神経系に対して相乗的に作用できるような時間であることを条件とする。5−HTPと化合物IIとの同時投与を想定している場合、化合物IIおよび5−HTPをともに含む単一の組成物であれば特に都合がよい。あるいは、好適な組成物の形態でセロトニン再取り込み阻害薬および5−HTPを別々に投与してもよい。こうした医薬組成物は末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含んでもよい。この組成物は本明細書に上述したように調製してもよい。よって、こうした組成物は、化合物IIおよびカルビドパなどの末梢性脱炭酸阻害剤を含んでもよい。他の組成物は、5−HTPおよびカルビドパなどの末梢性脱炭酸阻害剤を含んでもよい。こうした組成物は単一錠剤および同種のものなどとして同時に投与しても、または別個の組成物または錠剤および同種のものなどとして別々に投与してもよい。
【0053】
本発明はまた、精神医学的薬物療法において同時に、別々にあるいは連続的に使用できる組み合わせ製剤として5−HTPおよび化合物IIを含む。こうした組成物は、たとえば、5−HTPを含む分離した単位剤形および化合物IIの分離した単位剤形を含むキットを含むことができ、すべてが同一容器またはブリスターパックなどのパックに入っていてもよい。こうした医薬組成物は、末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含んでもよい。上述の組成物は本明細書に記載の本発明のいずれかの態様に準じて製造する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、ある用量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび5−HTPを含むキットに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、ある用量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび約1mg〜約600mgの範囲の量、約25mg〜約300mgの範囲の量または約50mg〜約200mgの範囲の量の5−HTPを含むキットに関する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明は、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび約1mg〜約75mgの範囲の量、約3mg〜約50mgの範囲の量または約10mg〜約50mgの範囲の量の5−HTPを含むキットに関する。さらなる実施形態では、このキットは、約0.1mg〜約50mgの範囲の量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む。
【0056】
他の実施形態では、本発明は、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび5−HTPを含むキットに関する。いくつかの実施形態では、本発明は、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび約1mg〜約600mgの範囲の量、約25mg〜約300mgの範囲の量または約50mg〜約200mgの範囲の量の5−HTPを含むキットに関する。いくつかの態様では、このキットは末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含む。
【0057】
他の態様では、本発明は、情動障害の処置のための併用療法に使用される5−HTPおよび2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む、本明細書に記載するような医薬組成物に関する。本発明の別の態様では、本発明は、鬱病の処置のための併用療法に使用される5−HTPおよび2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む、本明細書に記載するような医薬組成物に関する。さらに別の態様では、本発明は、不安障害の処置のための併用療法に使用される5−HTPおよび2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む、本明細書に記載するような医薬組成物に関する。
【0058】
本明細書に記載の医薬組成物はすべて末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含んでもよい。
【0059】
本発明は、ヒトを含む動物の生体における鬱病ならびに全般性不安障害、社会不安障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害およびパニック不安を含む不安障害などの情動障害からなる群から選択される疾患または障害の処置方法であって、それを必要とする対象に遊離塩基またはその塩としての治療有効量の化合物IIおよび5−HTPを投与することを含む、方法に関する。
【0060】
本発明は、鬱病ならびに全般性不安障害、社会不安障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害およびパニック不安を含む不安障害などの情動障害を処置するための医薬組成物を調製するための、遊離塩基またはその塩としての化合物IIの使用に関する。
【0061】
他の態様では、本発明は、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンと組み合わせて使用される医薬組成物を調製するための5−HTPの使用に関する。さらなる態様では、本発明は、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンの治療効果を増強し、および/またはそのより発現を提供するのに有用な医薬組成物を調製するための5−HTPの使用に関する。
【0062】
なおさらなる態様では、本発明は、SRIに応答する疾患または障害の処置方法であって、5−HTPおよび2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンをそれを必要としているヒト患者に投与することを含む、方法に関する。
【0063】
本発明のさらなる態様は、SRIの治療効果に応答する疾患または障害を処置するための医薬組成物を調製するための5−HTPおよび2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンの使用に関する。
【0064】
別の態様では、本発明はSRIにより処置されるべきか、処置を受けている個体を処置する医薬組成物を調製するための5−HTPの使用に関し、前記個体はSRIの治療効果に応答する疾患または障害に罹患している。いくつかの態様では、本発明は、SRIにより処置されるべきか、処置を受けている個体を処置するためのキットを作製するための5−HTPの使用に関し、前記個体はSRIの治療効果に応答する疾患または障害に罹患している。
【0065】
SRIによる処置に応答する疾患または障害には、情動障害、摂食障害、恐怖症、気分変調症、月経前症候群、認知障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用が含まれるが、これに限定されるものではない。情動障害には、鬱病および不安障害が含まれるが、これに限定されるものではない。摂食障害には、過食症、無食欲症および肥満症が含まれるが、これに限定されるものではない。不安障害には、全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害および社会不安障害が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0066】
他の実施形態では、本発明は、SRIの治療効果を増強し、および/またはそのより速い発現を提供する方法であって、SRIにより処置されるべきか、処置を受けているヒト患者に5−HTPを投与することを含む、方法に関する。
【0067】
別の実施形態では、本明細書に記載するような医薬組成物を鬱病、不安障害および他の情動障害、過食症、無食欲症および肥満症などの摂食障害、恐怖症、気分変調症、月経前症候群、認知障害、衝動調節障害、注意欠陥多動性障害および薬物乱用の処置、特に鬱病の処置に使用する。
【0068】
さらなる実施形態では、本明細書に記載するような医薬組成物を全般性不安障害、パニック不安、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害または社会不安障害などの不安障害の処置に使用する。
【0069】
例示ではあるが、以下の実施例の詳細により本発明の理解が深まるであろう。当業者であれば、個々の方法およびそこで論じられる結果が本発明の例証にすぎず、本発明はその後に記載される特許請求の範囲に詳述されることを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0070】
実施例の詳細
マウス強制水泳試験
雄NMRI/BOMマウス(18〜25g;Bomholtgaard,Denmark)を使用することができる。マウスをプラスチックケージ(35×30×12cm)ごとに10匹ずつ飼育し、試験前の少なくとも1週間この動物施設に慣れさせる。室温(21+/−2℃)、相対湿度(55+/−5%)および換気(16回/時)は自動的に調節する。動物には試験前に市販の食餌ペレットおよび水道水を自由摂取させるものとする。
【0071】
空間が限られた容器内でマウスに強制的に水泳させると、特徴的な不動状態を呈するようになる。この現象は抗鬱薬による前処置を行うと抑えられる。本試験は(非特許文献9)に詳述されているように行った。簡単に説明すると、6つの水泳ユニット(以前にマウスを入れたことがある新鮮でない水(soiled water)(23〜25℃)1200mlで満たされた2000mlのガラス製広口瓶)を備えた完全自動の試験系を用いる。不動に関する評価は画像解析により行う。
【0072】
マウスを薬剤処置またはビヒクル処置してから30分後、5−HTPで処置し、20分後にガラス製広口瓶に入れ、合計6分間水に入れたままにしておく。最後の3分間に不動状態の累積時間を測定する。
【0073】
ラットにおけるマイクロダイアリシス
非特許文献10に詳述されているように自由行動ラットを用いてマイクロダイアリシスを行い、細胞外セロトニンレベルに対するエスシタロプラム単独およびフルオキセチン単独の作用と、5−HTP(25mg/kg、皮下注射)との組み合わせの作用とを調査することができる。
【0074】
簡単に説明すると、脳内ガイドカニューレを外科的に埋め込んでマイクロダイアリシスのための雄Sprague−Dawleyラットを作製する。マイクロダイアリシスプローブをガイドカニューレに挿入する。マイクロダイアリシスプローブの挿入の前に、濾過したリンゲル液(146mMのNaCl、3mMのKCl、1mMのMgCl、1.2mMのCaCl)でプローブの灌流を行い、実験の間は流速を1μl/分で一定にして前頭皮質への灌流を続ける。動物が安定したら、式IIの化合物を注射して試験を開始する。実験中は20分間隔でサンプリングを行ってもよい。式IIの化合物の注射から60分後、5−HTP(25mg/kg、皮下注射)を注射する。サンプルごとに透析液中の5−HTレベルを電気化学検出HPLCで測定する。
【0075】
マウスのガラス玉覆い隠し行動
雄BALB/cByJマウス(Jackson labs,Bar Harbor,ME))が到着したら、5匹/ケージで飼育する。到着時のマウスは7〜8週齢であってもよい。動物は、試験前に少なくとも1週間標準的な実験室条件下で飼育施設に馴化させる(午前6時点灯)。
【0076】
試験室に1時間馴化させたら、動物にビヒクル(食塩水)または式IIの化合物を投与する。30分後、動物にビヒクルまたは5−HTP(2.5mg/kg、腹腔内)を注射する。第2の注射から15分後、動物をそれぞれ新規なケージに入れる。ケージには床敷としてアスペン/マツ(Aspen Pine)が重ねて敷かれ、その上に10個のガラス玉がそれぞれ2列(すなわち、合計20個)平行に配されている。30分経過したら、マウスを試験ケージから取り出し、ホームケージに戻す。十分に目視できるガラス玉の数(床敷で覆われている部分が2/3未満)を数え、20から差し引いて覆われたガラス玉の数を算出する。
【0077】
5−HTニューロンの発火活動に対する阻害作用
実験日の体重が250〜300gの雄Sprague−Dawleyラット(Harlan,Gannat,FRANCE)を用いて実験を行った。ラットは標準的な実験室条件下(明暗周期は各12時間、飼料および水は自由摂取)で飼育されていた。この動物を抱水クロラール(400mg/kg、腹腔内)で麻酔した。追加投与を行い麻酔を一定に維持し、テイルピンチに対する侵害受容反応を抑制した。
【0078】
充填しやすいように予め繊維ガラスフィラメントが装着された単連(single−barreled)ガラスマイクロピペットで背側縫線5−HTニューロンの単一の(unitary)細胞外記録を行った。その先端を2〜4μmに折り(broken back)、Blue Chicago色素で飽和した2MのNaCl溶液を充填した。ラット(対照または処置)を定位固定装置に置き、正中のラムダ前方1mmに穿頭孔を開けた。背側縫線5−HTニューロンはシルビウス水道の腹側縁(ventral border)の直下1mmの距離に認められた。こうしたニューロンについては、Aghajanianの基準(非特許文献11)である遅い発火率(0.5〜2.5Hz)および定常的な発火率、さらに持続時間の長い(0.8〜1.2ms)正の活動電位により同定した。
【0079】
背側縫線5−HTニューロンの発火活動に対する5−HTP(25mg/kg、静脈内)の阻害作用への化合物II(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミン)の推定される相乗効果を判定するため、阻害の20〜30%に相当する用量の化合物IIを5−HTPの投与の前後に注射した。
【0080】
統計解析については、Window対応SigmaStatバージョン4.0ソフトウェア(Jandel Corporation)で行った。平均は平均値±SEMとした。p<0.05の場合に有意と判断した。
【0081】
6匹のラット群では、背側縫線5−HTニューロンの基準となる平均発火率が1.82±0.23Hzであった。25mg/kgの5−HTPを注射すると、発火が13.4±2.26%抑制された(図1を参照)。このラットに第2の注射剤として化合物II(0.025mg/kg)を投与したところ、さらに82.43±2.78%の低下が認められた(図1)。別の実験では、化合物IIを5−HTPより前に注射した。6匹のラットの背側縫線5−HT細胞の基準となる平均発火率は1.70±0.07Hzであり、化合物II(0.025mg/kg)は発火を24.1±4.98%阻害し、続いて5−HTP(25mg/kg)を注射したところ、発火はさらに70.53±2.76%抑制された(図2)。各化合物から独立に得られる背側縫線細胞発火の阻害作用の程度は、5−HTP=13.4±2.26%、化合物II=24.10±4.98%であった。5−HTP+化合物IIの併用効果は単純な相加的相互作用から予想されるものよりも著しく大きかった(相加=37.5%;5−HTPが先の場合=95.83%;化合物IIが先の場合=94.63%;図3)。したがって、5−HTPの効果は化合物IIの存在下で有意に高まる(p<0.01)。同様に、化合物IIの効果も5−HTPの存在下で有意に高まることが明らかになった(p<0.01)。
【0082】
続けて選択的5−HT1AアンタゴニストであるWAY−100635を投与するとニューロンの自発発火率が増大することから、5−HT1A受容体を遮断することで5−HTニューロン発火のフィードバック阻害が解除されることが示唆される。
【0083】
こうした結果からは、背側縫線核のニューロン発火に対して5−HTPと化合物IIとの併用により得られる効果が相乗的なものであり、相加的なものでないことが示される。
【0084】
ラット脳シナプトソームにおけるH−セロトニン取り込みの阻害
セロトニントランスポーターの主要な高親和性結合部位における化合物を試験するため、すなわち、化合物がセロトニン再取り込み阻害薬であるかどうかを判定するため、セロトニン(5−HT)取り込みの阻害作用を判定した。
【0085】
以下の方法により、ラット脳シナプトソームを用いて被検化合物によるH−セロトニン(H−5−HT)(10nM)取り込みの阻害作用をインビトロで判定した。特定のSRIに関するセロトニン取り込みの例示的な方法、さらに結果については、非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;および1990年7月24日に発行された、Bogeso,Kらの特許文献2に記載されている。
【0086】
手順:雄ウィスター系(Mol:Wist)ラット(125〜250g)を断頭屠殺し、失血死させた(exanguinated)。1mMのニアラミドを含む40容(w/v)の0.32M氷冷スクロース中で脳組織(小脳を除く)を軽くホモジナイズした(ガラスTeflonホモジナイザー)。P2画分(シナプトソーム画分)を遠心分離(4℃で600×g、10分および25000×g、55分)により得て、800容の改変クレブス−リンゲルリン酸塩緩衝液(pH7.4)に懸濁した。
【0087】
400μlの氷上シナプトソーム懸濁液(5mgの原組織)に、100μlの被検化合物の水溶液を加えた。37℃で5分間のプレインキュベーション後、100μlのH−5−HT(最終濃度10nM)を加え、このサンプルを37℃で10分間インキュベートした。WhatmanのGF/Fフィルターでサンプルを真空濾過してインキュベーションを終了させ、10μMの非標識5−HTを含む5mlの緩衝液で洗浄した。フィルターを計数バイアルに入れ、4mlの適当なシンチレーション液(たとえば、Picofluor(商標)15、Packard)を加えた。1時間振盪し暗所で2時間保管してから、放射能量を液体シンチレーション計測法で測定した(cpm)。取り込み量については、10μMの被検化合物の存在下で測定された非特異的結合および受動輸送を差し引いて得た。測定したcpmを被検化合物の濃度に対してプロットし、最もフィットしたs字曲線を使用した。取り込みの阻害効力はnM単位のIC50値(対数平均)で表す。5つの濃度の被検化合物で2本の完全な(full)濃度反応曲線を3回ずつ測定した。IC50値は、取り込み量が対照サンプルの総取り込み量から被検化合物10μmの存在下での非特異的結合および取り込みを差し引いた取り込み量の50%になる濃度として求めた。
【0088】
2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンはセロトニントランスポーターに高親和性で結合し、取り込み阻害効力(IC50)は0.35nMを示す。
【0089】
セロトニントランスポーターのアロステリック調節
タンパク質のアロステリック部位は、主要なリガンド結合部位とは異なる別の結合部位である。たとえば、リガンドとリガンド結合部位との結合を促進し、および/または安定化させるなどの調節を行う化合物は一般に、アロステリック機構を介して作用すると考えられる。
【0090】
特定の理論に拘泥するわけではないが、セロトニントランスポーターには少なくとも2種類の別個の結合部位、すなわち、セロトニン再取り込みの阻害に関与する主要な高親和性結合部位と、主要部位でのリガンドの結合をアロステリックに調節する1つまたは2つ以上の低親和性結合部位とがあると考えられる(非特許文献16;非特許文献17)。
【0091】
エスシタロプラムがSERTのアロステリック結合部位に結合することは複数の研究で明らかにされている。エスシタロプラムとCOS−1細胞膜に発現するヒトセロトニントランスポーターとの相互作用に関する研究から、エスシタロプラムが第2の低親和性アロステリック部位に結合し、トランスポーターからの(高親和性主要部位のみに結合する濃度で使用される)H−エスシタロプラムの解離速度を遅くすることが明らかになった。言い換えれば、エスシタロプラムにはエスシタロプラム:セロトニントランスポーター複合体に対して安定化/自己増強作用があると考えられる。このエスシタロプラムの作用は濃度依存性である(非特許文献18;および非特許文献19を参照されたい)。
【0092】
エスシタロプラム以外にも、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、ベンラファキシン、デュロキセチンおよびセロトニンと、COS−1細胞膜に発現するヒトセロトニントランスポーターの高親和性および低親和性結合部位との相互作用が検討されたことがある(非特許文献18)。その研究によれば、パロキセチンは、程度はエスシタロプラムよりも低いが、主要な高親和性部位でのH−パロキセチン:ヒトセロトニントランスポーター複合体を安定化させることが示唆された。セルトラリン、フルオキセチン、ベンラファクシンおよびデュロキセチンには、セロトニントランスポーターの主要結合部位に対する結合を安定化させる作用がほとんどないか、あるいはまったくなかった(非特許文献18)。
【0093】
化合物がアロステリック機構を介して作用するかどうかはインビトロの解離実験により判定できる。解離結合実験ではタンパク質の放射性リガンドの「解離速度」(koff)が測定される。放射性リガンドとトランスポータータンパク質を結合(すなわち、複合体を形成)させてから、解離速度が測定できるようにリガンドを加えてトランスポーターに対する放射性リガンドのそれ以上の結合を遮断する。様々な時間で結合(放射性リガンド:トランスポーター複合体の放射能により測定される)を測定して放射性リガンドがトランスポーターから解離する速度を判定する。解離速度定数を用いて結合複合体の半減期を判定することができる。半減期の測定値を用いれば、化合物がヒトSERTのアロステリックモジュレーターであるかどうかの確認が可能である。
【0094】
非特許文献20に記載されているのと同様に解離結合試験を行うことで、化合物2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンがSERTのアロステリック部位に結合し、26uMのIC50H−エスシタロプラムの解離速度を著しく遅らせることが測定された。
【0095】
他の方法では、以下の段落に記載の方法により化合物のZ係数(Z−factor)を判定することで、ある化合物、特にSRIが本出願の特許請求の範囲に記載するヒトセロトニントランスポーター(hSERT)のアロステリックモジュレーターであるかどうかを当業者であれば判定できる。
【0096】
始めに解離速度を判定するため、hSERT(GenBankアクセッション番号X70697)で一過性にトランスフェクトしたCOS−1細胞から単離した膜を標準的な方法により調製する。トランスフェクション法も当該技術分野において周知である。以下、同じトランスフェクション法により、独立した少なくとも3回のトランスフェクションからアッセイを2回ずつ行う。
【0097】
最初に、hSERTを発現する膜調製物と放射性リガンド(放射能標識被検化合物)とを緩衝液(50mMのトリス、pH7.4;120mMのNaCl、5mMのKCl)中にて4℃で30分間インキュベートして放射性リガンド/hSERT複合体を形成する。放射性リガンドの濃度は放射性リガンドのK値の約10倍とする。(K値は同じ緩衝液中で予め測定しておく)。
【0098】
同じ緩衝液で放射性リガンド/hSERT複合体を30倍希釈する。別の実験では、被検化合物(cold、非放射能標識)を含む同じ緩衝液で放射性リガンド/hSERT複合体を30倍希釈する。被検化合物を含む、あるいは含まない緩衝液で希釈した放射性リガンド/hSERT複合体のインキュベーションを20℃で時間間隔を長くしながら続ける。各時間間隔(たとえば、10分、20分、30分など)で、インキュベーションからサンプルを取り出し、セルハーベスターのGF/Cガラス繊維フィルターで濾過して反応を止める。Packard Bellマイクロプレートシンチレーションカウンターによりプレートを直接カウントして、サンプルごとに集積した放射能を測定する。放射能は結合に相当し、fmol複合体/mg膜で表す。サンプルごとの結合を経過時間に対してプロットして解離速度を判定する。放射性リガンドの解離速度(koff)はGraphPad PRISMプログラム(GraphPad Software,San Diego,CA)を用いて非線形回帰により求める。解離半減期(t1/2)は0.69302/koffから算出し、時間単位で表す。
【0099】
放射性リガンド/hSERT複合体の解離半減期(分単位)については、解離緩衝液中で被検化合物の濃度を上げてその濃度(たとえば、10μM、20μM、30μM、40μMおよび50μMの被検化合物)に対してプロットする。このプロットの傾きはZ係数(Z−factor)と呼ばれる。Z係数については、独立した少なくとも4回の測定から算出する。Z係数は放射性リガンド/hSERT複合体の安定化の度合いの尺度となる。Z係数が0(ゼロ)を超えると、正のアロステリックモジュレーターであることが示唆される。本発明をさらに明らかにする非限定的な例として、R−シタロプラムはセロトニントランスポーターの主要な結合部位に結合し、報告されたIC50値が50nMを超えるため、SRIクラスに包含されず、したがって、アロステリックSRIとは見なされない。たとえば、非特許文献21を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)約1mg〜約75mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファン;および(ii)2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が1mg〜50mgの2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が3mg〜50mgの5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が10mg〜50mgの5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記末梢性脱炭酸阻害剤がカルビドパである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が約100mg〜約150mgの範囲の量のカルビドパを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が錠剤またはカプセル剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(i)5−ヒドロキシトリプトファン;および(ii)2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンを含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が約1mg〜約600mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が約25mg〜約300mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が約50mg〜約200mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が(i)約0.1mg〜約50mgの量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび(ii)約1mg〜約600mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が(i)約0.1mg〜約50mgの量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび(ii)約25mg〜約300mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が(i)約0.1mg〜約50mgの量の2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルスルファニル)−ベンジル]−メチル−アミンおよび(ii)約50mg〜約200mgの範囲の量の5−ヒドロキシトリプトファンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
末梢性脱炭酸阻害剤をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記末梢性脱炭酸阻害剤がカルビドパである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が約100mg〜約150mgの範囲の量のカルビドパを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が錠剤またはカプセル剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が単位投与形態である、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−540461(P2010−540461A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526063(P2010−526063)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/077435
【国際公開番号】WO2009/042632
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】