説明

センサ、液膜測定装置

【課題】リアルタイムに液膜等の検出対象の厚さを測定可能とすると共に、その熱輸送量の測定を可能とするセンサ、液膜測定装置を提供する。
【解決手段】本実施の形態に係る第一のセンサ11Aは、筒状の本体12と、この本体12内に隙間を持って設けられる一対の電極13a、13bと、本体12と電極13a、13bとの間に充填された絶縁部18と、本体12内に設けられた熱電対19a〜19cとを有する。これにより、流体の液膜Lの膜厚を測定すると共に、測定された液膜Lの膜厚に応じた温度分布を測定し、熱流束を測定することができ、液膜Lの厚さに応じた熱輸送量を確認することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液膜厚さ等を測定するセンサ、液膜測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントの蒸気発生器は、原子炉でつくられた熱湯が通る多数の管(管群)の間を水が通り、このときに管内の熱湯と熱交換を行うことで水が蒸発し、蒸気を発生する。そのため、管群の間の空間には、水(液体)と蒸気(気体)とが混在して流れる、いわゆる気液二相流が存在し、この状態で、液体は管の外表面に沿って流れる。このような蒸気発生器では、内部を可視化することができないため、蒸気の発生状況をリアルタイムで制御するためには、気液二相流における液膜を測定する必要がある。
【0003】
従来、液膜の厚さを測定する技術としては、下記特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載された液膜測定装置では、一対の検出電極間に生じる電位差を検出し、この電位差と液膜厚さとの相関関係から実際の液膜厚さを求めるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−77338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、管の表面を流れる気液二相流の性質は、高温状態にある管からの熱影響により変動するものであり、気液二相流の膜厚を把握するだけでは、例えば、蒸気発生器における蒸気の発生状況をリアルタイムで制御する場合には、十分とはいえない。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、リアルタイムに液膜等の検出対象の厚さを測定可能とすると共に、その熱輸送量の測定を可能とするセンサ、液膜測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、筒状の本体と、前記本体内に隙間を持って設けられる少なくとも二つ以上の電極と、前記本体と前記電極との間に充填された絶縁部と、前記本体内に設けられた温度測定部とを有することを特徴とするセンサにある。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記本体、前記電極の各々の先端部が、検出対象に対向するように配置されていることを特徴とするセンサにある。
【0009】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記絶縁部が、高い熱伝導率を有するセラミックスからなることを特徴とするセンサにある。
【0010】
第4の発明は、第1乃至3の何れか一つの発明において、前記温度測定部が、熱電対であることを特徴とするセンサにある。
【0011】
第5の発明は、第1乃至4の何れか一つの発明において、前記温度測定部が、前記本体の肉厚方向に少なくとも二つ以上設けられてなることを特徴とするセンサにある。
【0012】
第6の発明は、第2乃至5の何れか一つの発明において、前記本体内に一体、又は前記本体の近傍に設けられ、前記検出対象の有無を検出するボイド計を有することを特徴とするセンサにある。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、前記ボイド計が、前記本体の肉厚方向に少なくとも二つ以上設けられてなることを特徴とするセンサにある。
【0014】
第8の発明は、第2乃至7の何れか一つの発明において、前記検出対象が、液体及び気体の二相流体を形成する混合流体により配管の内側、外側の何れか一方の流路壁面に形成される液膜であることを特徴とするセンサにある。
【0015】
第9の発明は、第1乃至8の何れか一つの発明のセンサと、前記電極に所定の電流を印加する電源と、前記電極間に生じる電位差を検出する電圧計とを有し、前記本体、前記電極の各々の先端部が、検出対象と接触するように配置されていることを特徴とする液膜測定装置にある。
【0016】
第10の発明は、第9の発明において、前記電圧計の検出結果に基づいて前記検出対象の膜厚を測定する計測データ変換部を有し、得られた前記検出対象の膜厚に応じた前記検出対象への熱輸送量の確認と、前記検出対象の有無の確認との何れか一方又は両方を行うことを特徴とする液膜測定装置にある。
【発明の効果】
【0017】
請求項1のセンサによれば、筒状の本体と、前記本体内に隙間を持って設けられる少なくとも二つ以上の電極と、前記本体と前記電極との間に充填された絶縁部と、前記本体内に設けられた温度測定部とを有するので、前記電極間に生じる電位差を検出しつつ、前記本体を設置した管体内部の温度を測定することができる。このため、検出対象の厚さを測定することができると共に、測定された前記検出対象の厚さに応じた前記管体内部の温度或いは熱流束を同一の場所で測定することができる。これにより、前記検出対象の厚さに応じて前記検出対象に移送される熱輸送量を正確に測定することができる。
【0018】
請求項2のセンサによれば、前記本体、前記電極の各々の先端部を検出対象に対向するように配置するので、前記電極の先端部のみを前記検出対象と接触させることができるため、前記検出対象のうち前記電極間を通過する前記検出対象の厚さをより詳細に測定することができる。
【0019】
請求項3のセンサによれば、前記絶縁部が、高い熱伝導率を有するセラミックスからなるので、耐熱性を有すると共に、高い熱伝導率を備えることができる。
【0020】
請求項4のセンサによれば、前記温度測定部が、熱電対であるので、前記本体内に容易に設置し、温度を測定することができる。
【0021】
請求項5のセンサによれば、前記温度測定部が、前記本体の肉厚方向に少なくとも二つ以上設けられてなるので、前記本体の壁肉厚み方向における温度勾配を測ることができる。
【0022】
請求項6のセンサによれば、前記本体内に一体、又は前記本体の近傍に設けられ、前記検出対象の有無を検出するボイド計を有するので、前記検出対象の有無を確認することができる。
【0023】
請求項7のセンサによれば、前記ボイド計が、前記本体の肉厚方向に少なくとも二つ以上設けられてなるので、前記検出対象が前記本体の設置位置からどの程度離れた位置にあるかを確認することができる。
【0024】
請求項8のセンサによれば、前記検出対象が、液体及び気体の二相流体を形成する混合流体により配管の内側、外側の何れか一方の流路壁面に形成される液膜であるので、検出対象を水など液体のみからなる単相流に限定されることなく、二相流体を形成する混合流体の液膜にも適用することができる。
【0025】
請求項9の液膜測定装置によれば、請求項1乃至8の何れか一つのセンサと、前記電極に所定の電流を印加する電源と、前記電極間に生じる電位差を検出する電圧計とを有し、前記本体、前記電極の各々の先端部が、前記検出対象と接触するように配置されているので、前記電極間には所定の電流を前記検出対象を介して通電することができ、前記電極間に生じる電位差を検出することができる。
【0026】
請求項10の液膜測定装置によれば、前記電圧計の検出結果に基づいて前記検出対象の膜厚を測定する計測データ変換部を有し、得られた前記検出対象の膜厚に応じた前記検出対象への熱輸送量の確認と、前記検出対象の有無の確認との何れか一方又は両方を行うので、前記電圧計の検出結果より前記検出対象の厚さを測定することができると共に、前記検出対象の厚さに応じて前記検出対象に移送される熱輸送量を正確に測定することができる。このため、前記検出対象の厚さと前記検出対象に移送される熱輸送量との関係を正確に求めることができる。また、前記検出対象の有無とそのときに移送される熱輸送量との関係も正確に求めることができる。
【0027】
これにより、設備の管内または管外における気液二相流の流れの状況を詳細に把握することができるため、設備の稼動をより精度良く制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0029】
[第一の実施の形態]
本発明による第一の実施の形態に係るセンサを備えた液膜測定装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明による第一の実施の形態に係る第一のセンサを備えた液膜測定装置の構成を簡略に示す概略図であり、図2は、本発明による第一の実施の形態に係る第一のセンサの平面図である。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係る第一のセンサを備えた液膜測定装置10Aは、第一のセンサ11Aと、筒状の本体(ケーシング)12内に設けられている一対の電極13a、13bに電流を印加する直流電源(電源)14と、一対の電極13a、13b間に生じる電位差を検出する電圧計15とを有し、本体12、一対の電極13a、13bの各々の先端部が、液膜Lと接触するように配置したものである。
また、図1中、矢印方向が流体の液膜Lの流れ方向を示す。
【0031】
本発明は、蒸気発生器の管群を構成する伝熱管16の外側の流路壁面17に形成される水の液膜Lを測定する場合について説明する。
蒸気発生器は容器内部に多数の伝熱管からなる管群を備えており、蒸気発生器では、給水入口から容器内に供給された水が管群の間を通過することで蒸気が発生し、気水分離機にて水(液体)と蒸気(気体)とが分離された後、発生した蒸気のみが蒸気出口から排出されるようになっている。このとき、冷却材として用いられる水は、単相流の状態で伝熱管16の下部から流入し、上昇する際、伝熱管16の発熱によって沸騰し、蒸気及び水の気液二相流として伝熱管16の間の間隙を上昇し、水は管群を構成する伝熱管16の表面(伝熱表面)に沿って流れる。
【0032】
また、上昇する気液二相流は、環状流として伝熱管16の外周面を覆い、薄い液膜Lが伝熱管16の表面に形成され、この液膜Lは、伝熱管16の表面の熱伝達率を向上させる。そして、更に出力が上昇すると、伝熱管16の表面の液膜Lが蒸発して伝熱管16の表面が乾く液膜ドライアウト現象が発生する。そして、このようなドライアウトが一旦発生すると熱伝達率が悪化するため、伝熱管16の壁温が急上昇し、場合によっては管壁の焼損(バーンアウト)現象が発生し得る。
【0033】
また、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aは、筒状の本体(ケーシング)12と、この本体12内に隙間を持って設けられる一対の電極13a、13bと、本体12と電極13a、13bとの間に充填された絶縁部18と、本体12内に設けられた熱電対(温度測定部)19a〜19cとを有するものである。
【0034】
また、本実施の形態においては、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aが、伝熱管16の管壁に形成された孔16aに装着され、その検出面21が伝熱管16の流路壁面(外周面)17と略面一とされ、本体12が伝熱管16と接するようにしている。そして、本体12、一対の電極13a、13b、絶縁部18の各々の先端部が、伝熱管16の流路壁面17を流れる流体の液膜Lに対向するように配置されている。よって、一対の電極13a、13bの先端部のみを流体の液膜Lと接触させることができるため、伝熱管16の流路壁面17を流れる流体の液膜Lのうち一対の電極13a、13b間を通過する液膜Lの厚さをより詳細に測定することができる。
【0035】
電極13a、13bは、筒状の本体12内に隙間を持って設けられ、一対の電極13a、13bが同一の方向に沿って配置されている。また、本実施の形態では、本体12内に一対の電極13a、13bのみを設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、三つ以上電極を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、本体12、電極13a、13bは、各々導電性材料から形成され、本体12、電極13a、13bを構成する導電性材料としては、例えば銅(Cu)が用いられるが、高温・高圧の環境下で用いられる本実施の形態に係る第一のセンサ11Aとしては、例えば白金(Pt)などを用いられるのが好ましい。これは、高温・高圧環境下等で使用する場合に、耐久性が向上できるからである。
【0037】
また、本体12と電極13a、13bとの間に絶縁部18が形成されており、絶縁部18には絶縁性材料が用いられ、耐熱性、絶縁性に優れる上、例えば300〜400℃の高温に耐えながら高い熱伝導率を有する高熱伝導セラミックスが用いられる。
高熱伝導セラミックスとは、発生する熱を速やかに伝達、拡散し、緩和、冷却する等の熱媒体としての役割を果たすものであり、優れた機械特性と高い熱伝導率を合わせ持つ放熱材料である。
よって、絶縁部18を高熱伝導セラミックスによって形成することで、耐熱性を有すると共に、高い熱伝導率を備えることができる。
【0038】
また、熱電対19a〜19cは、本体12の肉厚方向に設けられ、本体12内の電極13a、13b間に設けられている。具体的には、熱電対19a〜19cは、本体12内に流体の液膜Lの流れ方向と直交する方向に伝熱管16の外表面側から壁肉厚み方向に所定間隔ごとに配置されている。これにより、各熱電対19a〜19c毎に壁肉厚み方向での温度を測定することができるため、本体12の壁肉厚み方向における温度勾配を測ることができる。また、温度測定部として熱電対19a〜19cを用いることで、本体12内に容易に設置し、温度を測定することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、温度測定部として、熱電対19a〜19cを用いているが、これに限定されるものではなく、本体12内に設置して温度を測定できるものであればよい。また、本体12の壁肉厚み方向における温度勾配を測るため、本実施の形態では、熱電対19a〜19cを壁肉厚み方向に三つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、一つ又は二つでもよく、又は四つ以上設けるようにしてもよい。
【0040】
よって、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aのように、本体12内に一対の電極13a、13bと熱電対19a〜19cを設けることで、一対の電極13a、13b間に生じる電位差を検出しつつ、本体12内の壁肉厚み方向における温度を測定することができる。このため、流体の液膜Lの膜厚を測定することができると共に、測定された流体の液膜Lの膜厚に応じた伝熱管16内部の温度或いは熱流束を同一の場所で測定することができる。これにより、流体の液膜Lの膜厚に応じて流体の液膜Lに移送される熱輸送量を正確に測定することができる。
【0041】
また、流体の液膜Lの膜厚に応じて流体の液膜Lに移送される熱輸送量を正確に測定することで、液膜Lの厚さとその液膜Lに移送される熱輸送量との関係を正確に求めることができる。
【0042】
また、伝熱管16のような蒸気発生器の管を評価する際、流体の液膜Lを測定することで流動を調べつつ熱流束を調べることができるため、流体の液膜Lの有無又はその膜厚とその時の伝熱管16の伝熱性能、損傷具体などとの関係を予め求めることができる。
【0043】
また、伝熱管16の表面の液膜Lが蒸発して伝熱管16の表面が乾く液膜ドライアウト現象の状態でも熱電対19a〜19cにより伝熱管16の流路壁面17に移送される熱輸送量を測定することができる。このため、流体の液膜Lの有無に関係なく、流体の液膜Lの膜厚や流動様式を測定しつつ、伝熱管16の液膜Lへの熱伝達率、熱による伝熱管16の影響を調べることができる。
【0044】
また、図1、2に示すように、電極13a、13bには、直流電源14が接続され、直流電源14から所定の電流を流れるようになっており、一対の電極13a、13b間には、所定の電流が流体の液膜Lを介して通電することになる。
【0045】
また、電極13a、13bは、隙間を持って配置されているとともに、電圧計15に接続され、電極13a、13b間に生じる電位差を検出するようになっている。電圧計15で検出された電圧値は、図示しない制御部内に設けられる計測データ変換部22に伝達され、計測データ変換部22では、電圧計15の検出結果に基づいて、伝熱管16の流路壁面17に沿って流れる流体の液膜Lの膜厚の測定を行う。また、熱電対19a〜19cで検出された温度も計測データ変換部22に伝達され、伝熱管16内部の温度の測定を行う。
【0046】
よって、計測データ変換部22では、得られた流体の液膜Lの膜厚に応じた液膜Lへの熱輸送量の確認、複数の伝熱管16からなる管群に供給する水の流量、各種温度条件等、蒸気発生器の作動の制御などを行うようになっている。
【0047】
次に、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aにおける測定の原理を説明する。
流路壁面17上の液膜Lの膜厚を測定する手法として定電圧法及び定電流法が知られているが、本実施の形態においては、センサ間の干渉がなく、しかも、膜厚の減少に対して出力を増大する定電流法が採用される。
【0048】
流路壁面17の流路方向に間隔を隔てた一対の電極13a、13b間の電位差を測定する電圧計15と、その電圧計15の計測値を記録する計測データ変換部22とを備える。また、熱電対19a〜19cを本体12内の肉厚方向に設け、直流電源14に接続された正負の電極13a、13bと、電極13a、13b間に設けた熱電対19a〜19cとを有する本体12を伝熱管16の流路壁面17に挿入し、流路壁面17を流れる流体の液膜Lに通電する。また、電極13a、13bの先端部が、流路壁面17の所定位置において流路壁面17上の液膜Lに接触するように配置される。また、絶縁部18は、高温に耐えながら高い熱伝導率を有する高熱伝導セラミックスによって形成され、直流電源14の電力を印加する電極13a、13bが例えばPtなどの金属によって形成される。
【0049】
図1に示すように、伝熱管16の流路壁面17に流体の液膜Lが存在する状態で、本体12に直流電源14から所定の電流を流すと、電極13a、13b間で生じる電位差を電圧計15で検出する。
【0050】
そして、電圧計15で検出される電圧と、液膜Lの厚さとの相関関係を予め求めておくことで、計測データ変換部22では、検出された電圧から液膜Lの厚さを求めることができる。電圧と、液膜Lの厚さとの相関関係については、例えば、図3に示すように、電圧が大きくなるとその分だけ液膜Lの膜厚は厚くなり、電圧が小さいと液膜Lの膜厚は薄くなる。
【0051】
また、液膜Lには流れがあることから、液膜Lの厚さは変動するため、予め設定した所定時間内に検出された液膜Lの厚さの平均値を液膜Lの厚さとすることもできる。
【0052】
また、図1に示すように、本体12内に設けた熱電対19a〜19cで伝熱管16内部の温度を測定する。そして、熱電対19a〜19cで測定される温度と、液膜Lの厚さとの相関関係を予め求めておくことで、計測データ変換部22では、測定された温度から本体12内の温度或いは熱流束を求めることができ、流体の液膜Lの膜厚に応じて流体の液膜Lに移送される熱輸送量を正確に測定することができる。
【0053】
従って、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aを伝熱管16に備えることにより、蒸気発生器など高温・高圧となる環境下でリアルタイムに液膜Lの厚さの測定と、伝熱管16の内部の温度或いは熱流束を同一の場所で同時に測定することが可能となる。
【0054】
これにより、蒸気発生器においてリアルタイムに伝熱管16の液膜Lの厚さを測定することができると共に、伝熱管16の内部の温度或いは熱流束を同一の場所で測定することができるため、蒸気発生器を制御し蒸気の発生量などをより精度良く行うことが可能となる。
【0055】
更に、上記のような本実施の形態に係る第一のセンサ11Aは、その検出面21の大きさ(面積)に対し、電極13a、13bによる検出範囲が小さいため、局所的に流体の液膜Lの厚さを測定することができ、より詳細に流体の液膜Lの膜厚の測定を行うことができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aは、伝熱管16のように管体の外周面に沿う液体の膜厚を測定するのに限定されるものではなく、管体の内周面、あるいは他の壁面等に沿う流体の測定、条件出し等に用いることができる。
【0057】
例えば、管体の内周面に沿う液体の流れの測定を行う際に本実施の形態に係る第一のセンサ11Aを用いた図を図4、5に示す。図4は、配管の内周面を流れる流体を測定する状態を表す配管の部分断面であり、図5は、配管の内周面を流れる流体を測定する状態を表す配管の平面図である。尚、図4、5中、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8は簡略に示す。
図4、5に示すように、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8の検出面が配管23の内周面24と略同一面に位置するように設け、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8を配管23の断面の周方向に8個配置することで、配管23の内周面24の液膜Lの膜厚を測定することができ、配管23の内周面24の液膜厚さ分布を測定することができる。
【0058】
また、配管23の内周面24に配置する第一のセンサ11Aの数は、8個に限定されるものではなく、配管23の内径、大きさなどに応じて配置する第一のセンサ11Aの数を適宜変更するようにしてもよい。
【0059】
また、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8を配管23の内周面24に流体の流れ方向に沿って複数段設けることで、配管23の内周面24の各段での液膜Lの膜厚を測定することができる。
【0060】
また、伝熱棒表面の液膜厚さ分布の測定を行う際に本実施の形態に係る第一のセンサ11Aを用いた図を図6、7に示す。図6は、伝熱棒外周面を流れる流体を測定する状態を表す配管の部分断面図であり、図7は、伝熱棒外周面を流れる流体を測定する状態を表す伝熱棒の平面図である。また、図6、7中、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8は簡略に示す。
図6、7に示すように、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8の検出面が伝熱棒25の外周面26と略同一面に位置するように設け、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8を伝熱棒25の断面の周方向に8個組込んで配置することで、伝熱棒25の外周面26の液膜Lの膜厚を測定することができ、伝熱棒25の外周面26の液膜厚さ分布を測定することができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る第一のセンサ11A−1〜11A−8を伝熱棒25の外周面26に複数段設けることで、伝熱棒25の外周面26の各段での液膜Lの膜厚を測定することができる。
【0062】
このように、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aによれば、筒状の本体12と、この本体12内に隙間を持って設けられる一対の電極13a、13bと、本体12と電極13a、13bとの間に充填された絶縁部18と、電極13a、13b間に設けられた熱電対19a〜19cとを有するので、流体の液膜Lの膜厚を測定することができると共に、測定された流体の液膜Lの膜厚に応じた伝熱管16内部の温度或いは熱流束を同一の場所で測定することができる。これにより、流体の液膜Lの膜厚に応じて流体の液膜Lに移送される熱輸送量を正確に測定することができる。
【0063】
また、流体の液膜Lの膜厚に応じて流体の液膜Lに移送される熱輸送量を正確に測定することで、液膜Lの厚さとその液膜Lに移送される熱輸送量との関係を正確に求めることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、検出対象として、液体及び気体の二相流体を形成する混合流体により伝熱管16の外側の流路壁面17に形成される液膜Lを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、水などの液体のみからなる単相流を検出対象として用いてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、蒸気発生器の伝熱管16に用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、原子炉容器の燃料集合体を構成する燃料棒などに装着するようにしてもよい。例えば、原子炉の炉心を構成する複数の燃料集合体では、所定間隔を隔てて垂直な燃料棒を稠密に配置した構成を有する。燃料棒の軸心方向に所定間隔を隔てて配置され、冷却材としての水が単相流の状態で燃料集合体の下部から流入する。この流入した水は、燃料棒の発熱によって沸騰し、蒸気及び水の気液二相流として燃料棒の間の間隙を上昇し、環状流として燃料棒の外周面を覆い、燃料棒の表面(伝熱表面)に液膜が形成される。この液膜を本実施の形態に係る第一のセンサ11Aを用いることで、測定することが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aは、流体の厚さに応じて電位差が変動するものであればよく、気体に接した状態で液体が流れる気液二相流の流れる流路を有する設備等に取り付け、その作動の制御に用いることもできる。例えば、気液二相流が流れる吸熱冷凍機、ボイラやエアーコンディショナーの配管、装置等にも設けることができる。
【0067】
更に、本実施の形態に係る第一のセンサ11Aは蒸気発生器のような装置の制御に用いるのに限定されるものではなく、計測データ変換部22を有する制御部にて、本実施の形態で示したような蒸気発生器の制御を行わず、液膜Lの流れのみを測定し、各種装置の機能評価のために用いることも可能である。
【0068】
[第二の実施の形態]
図8は、本発明による第二の実施の形態に係る第二のセンサを備えた液膜測定装置の構成を簡略に示す概略図である。
なお、前述した実施の形態で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、本実施の形態に係る第二のセンサ11Bは、図1に示すような本発明による第一の実施の形態に係る第一のセンサ11Aに液膜Lの有無を検出するボイド計31a〜31cを本体12内に一体に設けられてなるものである。
【0070】
即ち、図8に示すように、本実施の形態に係る第二のセンサ11Bは、電極13a、13bの外側であって本体12と電極13bと間にボイド計31a〜31cを本体12内と一体に設けられてなるものである。
【0071】
例えば、原子炉を限界熱流速以上に高めると気泡の不連続性が失われ、伝熱管16の流路壁面17には蒸気膜32が形成され、その蒸気膜32の上に逆環状流の逆環状流液相33が形成される(膜沸騰)。そして、気泡が時間的・空間的に不連続に発生し、伝熱管16の流路壁面17に液膜Lが形成され、環状流が形成される(核沸騰)。よって、伝熱管16に供給された水は伝熱管16の下部から上側に上昇するに従って逆環状流から環状流に遷移する。
【0072】
本実施の形態に係る第二のセンサ11Bにおいては、ボイド計31a〜31cが、本体12の電極13a、13bの外側であって電極13bと本体12との間に本体12の肉厚方向に設けられ、流体の液膜Lの流れ方向と直交する方向に伝熱管16の外表面側から液膜L側に所定間隔ごとに配置されている。
【0073】
よって、本実施の形態に係る第二のセンサ11Bのように、本体12にボイド計31a〜31cを一体に設け、本体12の肉厚方向に伝熱管16の外表面側から液膜L側に所定間隔ごとに配置することで、流路壁面17の流体の液膜Lの有無を確認することができる。これにより、伝熱管16に沿って形成される温度流れにおいて、沸騰伝熱面である流路壁面17の近傍での流体の流動を確認することができる。
【0074】
また、ボイド計31a〜31cを伝熱管16の外表面側から液膜L側に所定間隔ごとに設けることで、流体の液膜Lが流路壁面17からどの程度離れた位置に形成されているかを確認することができる。
【0075】
また、ボイド計31a〜31cで検出された測定結果は計測データ変換部22に伝達され、流路壁面17上に流体の液膜Lがあるか否かを確認すると共に、流体の液膜Lの膜厚と液膜Lが形成されている位置の確認を行う。また、熱電対19a〜19cにより検出された測定結果に基づいて、流体の液膜Lの有無とそのときに移送される熱輸送量との関係も正確に求めることができる。
【0076】
また、本実施の形態では、ボイド計31a〜31cを本体12に伝熱管16の外表面側から液膜側に三つ設けているが、本発明は、これに限定されるものではなく、一つ又は二つ、または四つ以上設けるようにしてもよい。
【0077】
また、本実施の形態では、ボイド計31a〜31cは本体12と一体として近傍設けられているが、本発明は、これに限定されるものではなく、本体12の近傍に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、本発明に係るセンサは、液膜の膜厚と測定された液膜の膜厚に応じた管体内の温度分布とを同時に測定することができるので、液膜の厚さと液膜に移送される熱輸送量との関係を正確に測定することができ、配管の内外の何れか一方を流れる流体の液膜を計測するセンサに用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明による第一の実施の形態に係る第一のセンサを備えた液膜測定装置の構成を簡略に示す概略図である。
【図2】本発明による第一の実施の形態に係る第一のセンサの平面図である。
【図3】電圧と液膜の厚さとの関係を示す図である。
【図4】配管の内周面を流れる流体を測定する状態を表す配管の部分断面である。
【図5】配管の内周面を流れる流体を測定する状態を表す配管の平面図である。
【図6】伝熱棒外周面を流れる流体を測定する状態を表す配管の部分断面図である。
【図7】伝熱棒外周面を流れる流体を測定する状態を表す伝熱棒の平面図である。
【図8】本発明による第二の実施の形態に係る第二のセンサを備えた液膜測定装置の構成を簡略に示す概略図である。
【符号の説明】
【0080】
10A、10B 液膜測定装置
11A 第一のセンサ
11B 第二のセンサ
12 本体(ケーシング)
13a、13b 電極
14 直流電源(電源)
15 電圧計
16 伝熱管
16a 孔
17 流路壁面
18 絶縁部
19a〜19c 熱電対
21 検出面
22 計測データ変換部(制御部)
23 配管
24 内周面
25 伝熱棒
26 外周面
31a〜31c ボイド計
32 蒸気膜
33 逆環状流液相
L 液膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体と、
前記本体内に隙間を持って設けられる少なくとも二つ以上の電極と、
前記本体と前記電極との間に充填された絶縁部と、
前記本体内に設けられた温度測定部とを有することを特徴とするセンサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記本体、前記電極の各々の先端部が、検出対象に対向するように配置されていることを特徴とするセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記絶縁部が、高い熱伝導率を有するセラミックスからなることを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
前記温度測定部が、熱電対であることを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つにおいて、
前記温度測定部が、前記本体の肉厚方向に少なくとも二つ以上設けられてなることを特徴とするセンサ。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一つにおいて、
前記本体内に一体、又は前記本体の近傍に設けられ、前記検出対象の有無を検出するボイド計を有することを特徴とするセンサ。
【請求項7】
請求項6において、
前記ボイド計が、前記本体の肉厚方向に少なくとも二つ以上設けられてなることを特徴とするセンサ。
【請求項8】
請求項2乃至7の何れか一つにおいて、
前記検出対象が、液体及び気体の二相流体を形成する混合流体により配管の内側、外側の何れか一方の流路壁面に形成される液膜であることを特徴とするセンサ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一つのセンサと、
前記電極に所定の電流を印加する電源と、
前記電極間に生じる電位差を検出する電圧計とを有し、
前記本体、前記電極の各々の先端部が、検出対象と接触するように配置されていることを特徴とする液膜測定装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記電圧計の検出結果に基づいて前記検出対象の膜厚を測定する計測データ変換部を有し、
得られた前記検出対象の膜厚に応じた前記検出対象への熱輸送量の確認と、前記検出対象の有無の確認との何れか一方又は両方を行うことを特徴とする液膜測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−2349(P2010−2349A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162473(P2008−162473)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】