説明

センサデータ送信方法およびセンサノード

【課題】センサネットワークで、ゲートウェイに接続している通信ノードへのパケットの集中を回避し、検知をしないノードからも測定データを収集できるようにする。
【解決手段】他のノードから検知Messageを受信して検知状態に遷移すると、検知状態時検知メッセージ送信抑制部604が、自ノード内のセンサデータの値が閾値を超えて検知すべき状態になっても、その検知を抑制し、検知Messageをサーバに送信しなくなる。また、第2の検知状態時データ送信部609は、他のノードから受信したセンサデータに、自ノード内のセンサ202で測定されメモリ203に記録されているセンサデータを付加して、隣接ノードに伝搬させる。これらにより、ネットワーク内の輻輳が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークにおけるセンサノードからのセンサデータ送信方法およびセンサノードに関する。
【背景技術】
【0002】
センサネットワークとして代表的なアドホックネットワークは、「固定インフラ不要」、「動的なネットワーク」、「マルチホップ可能」、である特徴を持っていて、基幹中継(GW:Gate Way)と複数のノードで構成されている。ノードは例えば、無線通信機能、センサ機能、電源ユニット、および計算機を備えた小型のデバイスである。このノードは隣接するノードとお互いに通信をしながら、自律的にネットワークを構成する。
【0003】
ネットワーク内の各ノードのセンサは常時データを測定しており、その値がある閾値を超えたとき(これを「検知」と呼ぶ)に、検知メッセージ(以下、「検知Message」と表記する。)をサーバに通知する。検知Messageには、ノードが検知したことを知らせる検知通知と、ノードが検知したときの時刻を示す検知時刻が含まれる。この検知Messageは、隣接ノードをホップしてサーバまで伝播する。検知処理は一定の周期で行いデータは記録しておく。検知Messageの通知のタイミングは、検知タイマを用いて所定の時間経過後ごとである。
【0004】
検知Messageをサーバに通知する仕組みとして、以下のような従来技術が知られている。
まず、パケット到達率に影響を与えずに、トラヒック量を低減する従来技術が知られている。受信部は、送信元の無線装置から報知された信号であって、無線装置の位置を示すパケット信号が含まれた信号を受信する。中継処理部は、受信部によって無線装置から報知された信号を受信してから、距離検出部によって検出された距離に比例して設定された遅延時間が経過した後に、中継処理を実行する。中継処理部は、遅延時間が経過する前に、受信部によって受信したパケット信号と同一のパケット信号が受信された場合、遅延時間が経過した後の中継処理を停止するものである(例えば特許文献1)。
【0005】
また、無線アドホックネットワークにおいてネットワークトラフィックを減少させ、メッセージを送信する待ち時間を短縮する従来技術が知られている。ネットワークの受信ノードにおいて到来するメッセージを受信し、メッセージの再送信を行うスケジュール時間を決める。その際、再送信のためのスケジュール時間は、受信ノードによってメッセージを受信した信号強度に比例するように設定する。そして、再送信のためのスケジュール時間の前に、ネットワーク内における異なったノードから同じメッセージが受信されたときに、メッセージの再送信を取り消すものである(例えば特許文献2)。
【0006】
さらに、不要なメッセージの処理に関わるプロセッサの負荷を低減させることができるフレーム処理装置を提供する従来技術が知られている。初めて受信したメッセージを比較の基準である基準メッセージとし、以降受信して分類されたメッセージに対して、基準メッセージとの一致比較を行うメッセージ一致比較部と、一致したメッセージに対して当該メッセージが受信済みであるか否かを判定する冗長メッセージ判定部と、を有し、冗長メッセージ判定部は、基準メッセージを受信した時刻からの受信経過時間が判定基準値の範囲内にある場合には当該メッセージを廃棄し、受信経過時間が判定基準値を超過している場合には基準メッセージをクリアするものである(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−47984号公報
【特許文献2】特開2007−13961号公報
【特許文献3】特開2007−43382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術の方法だけでは、検知メッセージの通知を行った場合に、ゲートウェイに接続している通信ノードへのパケットの集中を完全に回避することは難しく、データの遅延やパケットロスを生じるという問題点を有していた。
【0009】
また、各センサノードは、測定データとして、ある閾値を超えたとき(検知時)のデータのみを収集しており、きめ細かく測定データを収集することができていないという問題点を有していた。
【0010】
そこで、本発明の課題は、ゲートウェイに接続している通信ノードへのパケットの集中を回避することである
【課題を解決するための手段】
【0011】
態様の一例では、ノードにおいて、ノード内のセンサにてセンサデータを測定して順次記録し、ノードにおいて、測定したセンサデータの値が所定の条件を満たすことを検知したときに、他のノードから検知メッセージを受信した状態でない場合には、検知時刻を保持し、検知の通知と検知時刻を含む検知メッセージを、隣接するノードに順次同報して送信すると共に、所定時間の計時を開始し、ノードにおいて、検知メッセージを受信した状態である場合には、検知メッセージは送信せず、ノードにおいて、所定時間内にサーバからデータ取得依頼メッセージを受信した場合に、サーバに測定し記録しているセンサデータを送信し、ノードにおいて、所定時間の終了時に検知メッセージを受信した状態を解除するように構成する。
【0012】
態様の他の一例では、ノードにおいて、他のノードからの検知メッセージの受信時に、検知時刻を保持していない場合には、受信した検知メッセージに含まれる検知時刻を保持すると共に、受信した検知メッセージを他のノード以外の隣接するノードに同報して送信して伝搬させると共に、所定時間の計時を開始し、ノードにおいて、検知メッセージの受信時に、検知時刻を保持している場合であって、受信した検知メッセージに含まれる検知時刻が保持している検知時刻よりも前のものである場合には、保持している検知時刻を受信した検知メッセージに含まれる検知時刻で置き換えて更新し、受信した検知メッセージを他のノード以外の隣接するノードに同報して送信し伝搬させ、ノードにおいて、検知メッセージの受信時に、検知時刻を保持している場合であって、受信した検知メッセージに含まれる検知時刻が保持している検知時刻以降のものである場合には、受信した検知メッセージを破棄するように構成する。
【発明の効果】
【0013】
ノードが検知保護期間になると、サーバからのデータ取得依頼メッセージを待つ状態になり、また、不要な検知メッセージの伝搬を破棄するようにしたため、ネットワーク内のトラフィックの軽減や、基幹中継に繋がるポートでのトラフィック集中(輻輳)の回避が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アドホックネットワークの構成例を示す図である。
【図2】ノードのハードウェア構成例を示す図である。
【図3】一般的な手法により検知した時のノードにおける処理の流れを示すフローチャートを示す図である。
【図4】一般的な手法による検知時のシーケンスを示す図である。
【図5】アドホックネットワークの課題の説明を示す図である。
【図6】実施形態におけるノードの機能ブロック図である。
【図7】本実施形態におけるノードの状態遷移を示す原理説明図である。
【図8】本実施形態による検知Message 通知処理の説明図である。
【図9】本実施形態に対比される一般的な手法による検知Message 通知処理の説明図である。
【図10】本実施形態によるセンサデータ取得処理の説明図である。
【図11】本実施形態に対比される一般的な手法によるセンサデータ取得処理の説明図である。
【図12】本実施形態における検知したときのノードにおける制御処理を示すフローチャートを示す図である。
【図13】本実施形態における検知Message受信時のノードにおける制御処理を示すフローチャートを示す図である。
【図14】本実施形態のケース1の動作例のシーケンスを示す図である。
【図15】本実施形態のケース2の動作例のシーケンスを示す図である。
【図16】本実施形態のケース3の動作例のシーケンスを示す図である。
【図17】本実施形態のケース4の動作例のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、アドホックネットワークの構成例を示す図である。
アドホックネットワーク103は、図中#1から#12までの番号が付されたノード101と、基幹中継102(GW:Gate Way)とから構成される。
【0016】
アドホックネットワーク103が例えばサーバデータセンターの空調制御による省エネ管理を行なうための環境監視システムに適用される場合には、ノード101は例えば、データセンター各所に設置される温度センサ、風速センサなどのセンサを搭載する通信装置である。また、アドホックネットワーク103が例えばビルの省エネ、セキュリティ管理を行なうための施設管理・制御システムに適用される場合には、ノード101は例えば、部屋の状態を検知する照度センサ、温度センサ、人感センサなどのセンサを搭載する通信装置である。あるいは、アドホックネットワーク103が例えば電力会社における発電・配電の最適化管理を行なうための点検業務システムに適用される場合には、ノード101は例えば、検針メータのセンサを搭載する通信装置である。さらには、アドホックネットワーク103が例えば、橋梁なのでの老朽化に対する健全性確認を行なうための構造物モニタリングシステムに適用される場合には、ノード101は例えば、構造物の状態を検知する加速度センサ、ひずみセンサ、監視カメラなどのセンサを搭載する通信装置である。
【0017】
図1では、#1から#12までの12台のノード101が相互に接続された構成が示されている。ノード101同士は、有線または無線によるアドホックルーティングプロトコルの通信方式に従って自律的な通信を行う。
【0018】
1つのノード101と他のノード101がケーブルにより直接接続されている場合、2つのノード101が「隣接している」という。また、1つのノード101に隣接している他のノード101を「隣接ノード」ということがある。なお、ノード101自身のことを「自ノード」ということがある。
【0019】
基幹中継(GW)102は、各ノード101が収集したセンサ情報を、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク網105を介して接続される監視・制御用のサーバ104に中継するゲートウェイ(Gate Way)装置として機能する。また、サーバ104から各ノード101又は自分自身に通知される各種制御情報を、各ノード101又は自分自身に中継する。言い換えれば、基幹中継102は、LANの通信プロトコルと有線アドホックルーティングプロトコルとの変換を行う。
【0020】
サーバ104は、各ノード101が収集したセンサ情報を監視し、センサ情報を表示し、またはセンサ情報の異常を検知して警報を表示する。また、サーバ104は、各ノード101を制御する。
【0021】
アドホックネットワーク103では、例えば有線接続された各ノード101が収集したセンサ情報が、基幹中継102を介してサーバ104に収集されて集中的に監視または制御される。これにより、センサ情報の効率的な収集、監視を行なうことが可能となる。
【0022】
図2は、図1のノード101のハードウェア構成例を示す図である。ノード101は、バッテリ208、センサ202、タイマ207、メモリ203、MPU201、PHY204、RF部205または有線コネクタ部206を備える。バッテリ208は、ノード101全体の電源を供給する。センサ202は、前述した各種物理量を測定するセンサである。タイマ207は、後述する検知期間、データ取得期間、検知保護期間などをカウントするタイマ群である。メモリ203は、測定したセンサデータや隣接ノードのアドレス情報等に関するルーティングテーブルを格納する。MPU(Micro Processing Unit)201は、ノード101全体の動作を制御する。PHY204は、ノード101において隣接ノードとの間で送受信される論理信号と物理信号との変換を行う変換部である。アドホックネットワーク103が有線ネットワークである場合には、PHY204には有線コネクタ部206が接続される。有線コネクタ部206は、有線の通信線を収容する。アドホックネットワーク103が無線ネットワークである場合には、PHY204には無線周波数処理部であるRF(Radio Frequency)部205が接続される。RF部205は、無線通信を実行する。各ノード101には、それぞれ3ポート以上のRF部204または有線コネクタ部205が付いていて、ノード101は数珠つなぎ・メッシュ状・ツリー状に網を形成可能である。各ノード101からのデータや検知Message は、メモリ203内に格納してあるルーティングテーブルが参照されることにより、あるルーティング方法(プロトコル)に基づいて、図1において、基幹中継102を介してサーバ104に送られる。
【0023】
以下の説明では、図1に示される構成のアドホックネットワーク103を例として、まずアドホックネットワーク103上での各ノード101のセンサがセンシングを行うための一般的に考えられる動作について説明する。その後に、本実施形態のセンシング動作について説明する。
【0024】
ここではまず、図1の#3のノード101にて検知したときの一般的に考えられる動作例を以下に記す。なお、以下の説明においては、「#3のノード101」を単純に「ノード#3」と表記する。他のナンバーのノード101の場合も同様である。すなわち、#1のノード101なら「ノード#1」、#12のノード101なら「ノード#12」の如くである。
【0025】
このとき、各ノード101は、ノード#3、#2、#4、#5の順に検知をしたとし、ノード#1は検知していない状態であるとする。なお、「検知」とは、前述したように、アドホックネットワーク103内の各ノード101のセンサが常時データを測定している状態において、その値がある閾値を超えたときの状態をいう。
【0026】
図1において、着目するノード101の番号を#1・#2・#3・#4・#5とし、各ノード101が検知をした時の一般的に考えられる制御動作の処理の流れを示すフローチャートを図3に、シーケンス図を図4に示す。図3のフローチャートおよび図4のシーケンスは例えば、図2のMPU201が、メモリ203に記憶された制御プログラムを実行する制御動作である。
【0027】
一般的に考えられる制御動作において、ネットワーク内の各ノード101は、図3と図4のステップS1からS9の順で動作する。
各ノード101においてまず、隣接ノードと接続をする例えば有線のリンクが確立した後(図3のステップS1)、自ノード内のセンサにてデータの測定を開始する(図3のステップS2)。
【0028】
続いて、センサデータが閾値を超えていない場合は(ステップS3の判定値が0)、ステップS2のセンサデータの測定状態に戻る。
ある時刻でセンサデータの値が閾値を超えて検知した状態になると(ステップS3の判定値が1)、ノード101は、検知を通知するための検知Message をサーバに向けて送信し、検知タイマとデータ記録タイマをスタートさせる。これらのタイマでは、スタート時にそれぞれ個別の所定値に初期設定され、順次値が減ってゆく。このとき、検知Message は、隣接ノード、その隣接ノードのさらに隣接ノードというように、各ノード101を次々にホップして、アドホックネットワーク103内を伝搬してゆき、基幹中継102からサーバ104に伝達される。
【0029】
検知をしたノード101は、検知時刻以降検知タイマの値が0より大きくなっている間、図3には図示しないが、ある一定周期で自ノードのセンサによりデータを記録し、データを蓄積しておく(図3のステップS5の判定値が1)。
【0030】
そして、データ取得タイマの値が0になったら(図3のステップS5の判定値が0)、記録したセンサデータをまとめてサーバに通知し、データ取得タイマを再スタートする(図3のステップS5→S6)。
【0031】
ステップS7にて検知タイマの値が0になったと判定されるまで、ステップS5からS7までのセンサデータの記録・通知を実施する(図3のステップS7の判定値が1)。
ステップS7にて検知タイマの値が0になったと判定されたら(図3のステップS7の判定値が0)、センサデータの記録および送信処理を終了し(ステップS7→S8)、ステップS2のデータの測定開始の処理に戻る。
【0032】
以上の制御動作に基づいて、図4のシーケンス図に示されるように、例えばノード#2、#3、#4、#5のそれぞれが、検知をしたタイミングでセンサデータの記録を開始する(図2のS4に対応)。そして、各ノード101は、自ノードのデータ取得タイマによってカウントされるある一定期間分のセンサデータを記録蓄積して、まとめてサーバ104に向けて送信する(図2のS5、S6に対応)。図2で説明したように、以上のセンサデータの記録・送信の動作は、検知時刻から検知タイマによってカウントされる所定時間の間実行され、その後再び、検知を監視する状態に戻る。
【0033】
このように一般的に考えられる技術では、各ノード101がそれぞれ検知を行うごとに、それぞれのタイミングでセンサデータを記録しまとめて送信することになる。
以上の動作において、例えば図4のノード#2、#3、#4、#5は、それぞれ独立して検知を行っている。この場合に、それぞれの検知タイミングが近かったり、ルーティングの隣接関係によっては、図4の301で示されるタイミングが近接する可能性が生じる。より具体的には、図2のアドホックネットワーク103の構成例において、例えば図5の破線矢印として示されるように、それぞれのノード101から検知Message やそれに続くセンサデータが送信された場合を考える。このような場合、基幹中継102と接続しているノード101(図5ではノード#1)の接続ポート(図2のRF部204または有線コネクタ部205)に、全ノード101のデータが集中してしまうことになり、データの遅延やパケットロスを生じる可能性が高くなる。
【0034】
また、上述した一般的に考えられるセンシング方法では、データ量の肥大化を防ぎ、効率的なデータ収集を行うために、アドホックネットワーク103内のある閾値を超えていない(検知をしていない)ノード101のデータは取得されない仕組みとなっている。例えば、図4の302として示されるように、ノード#1では、検知をしていないため、このノード101のセンサデータはサーバ104(図1)へは送信されない。しかしながら、例えば図5に示されるようなネットワーク構成例において、検知が行われている#2、#3、#4、#5の各ノード101との関係で、サーバ104がノード#1のデータも観測したいというような状況が発生する場合がある。このような場合には、上述した一般的に考えられるセンシング方法では、ノード#1のデータは、ノード#1において検知が行われるまで取得することができない。
【0035】
そこで、以下に説明する実施形態は、基幹中継102に接続しているノード101(図1の構成例ではノード#1)へのパケットの集中を回避し、また、検知をしないノードからもきめ細かく測定したセンサデータを収集することのできるシステムである。
【0036】
図6は、本実施形態におけるノード101(図1、図2)の機能ブロック図である。図6に示される機能ブロックは、図2のハードウェア構成におけるMPU201の制御処理として実装される。より具体的には、図6の601から609として示される各機能ブロックは、MPU201が後述する図12、図13に示されるフローチャートの処理に対応する制御プログラムを実行する処理として実装される。この制御プログラムは例えば、図2のメモリ203などに記憶されている。
【0037】
図6において、センサデータ記録部601は、ノード101内のセンサ202(図2)にてセンサデータを測定し、その測定結果を順次メモリ203(図2)に記録する。
第1の検知状態開始部602は、測定したセンサデータの値が所定の条件を満たすことを検知したときに、他のノードから検知メッセージを受信した状態でない場合には、検知時刻を、メモリ203またはMPU201(図2)の内部のレジスタ等に保持する。また、第1の検知状態開始部602は、検知の通知と検知時刻を含む検知メッセージを生成した後、サーバ104(図1)に向け、図6の送信側PHY204s(図2のPHY204の一部)を介して、隣接ノードにブロードキャスト(同報)して送信する。さらに、第1の検知状態開始部602は、タイマ207を制御して、所定時間の計時を開始する。ここで、「測定したセンサデータの値が所定の条件を満たす」とは例えば、センサ202において、或る程度以上大きな値が観測され、センサデータの値が所定の閾値を超えた場合をいう。また、「他のノードから検知メッセージを受信した状態でない場合」とは、より具体的には、検知状態ではない通常状態であることをいう。そして、上記所定時間の計時開始により、自ノードの状態が、通常状態から検知状態に遷移する。
【0038】
図7は、本実施形態におけるノードの状態遷移を示す原理説明図である。本実施形態では、ノード101は、通常状態と検知状態の2つの状態を取り得る。
通常状態は、センサ202(図2)からのセンサデータの読出しおよびメモリ203への記録のみを行っている状態であり、サーバ104(図1)への通知を必要としない状態である。通常状態では、ノード101は、図7のイベントE1に示されるように、センサ202からセンサデータが読み出された場合に、メモリ203へのセンサデータの記録のみを実行する。この制御を実行するのが、図6のセンサデータ記録部601である。
【0039】
一方、検知状態は、検知保護期間と呼ぶ期間内の状態であり、サーバ104への検知Message およびセンサデータの通知が行われる状態である。図7のイベントE2に示されるように、1つのノード101で、自ノード内のセンサ202からのセンサデータの値が閾値を超えて検知を行うと、そのノード101は、検知時刻を保持した上で、検知通知と検知時刻を含む検知Message をブロードキャストする。その上で、ノード101は、タイマ207を制御して所定時間の計時を開始することにより、図7のイベントE2に示されるように、通常状態から検知状態に遷移する。この制御を実行するのが、図6の第1の検知状態開始部602である。なお、このときのセンサデータも、図6のセンサデータ記録部601によって、メモリ203に記録される。
【0040】
検知Message を送信し検知状態になったノード101では、図7のイベントE4に示されるように、図6のセンサデータ記録部601が、通常状態の場合と同様に、センサ202からセンサ値が読み出された場合に、メモリ203へのセンサデータの記録を実行する。
【0041】
これと共に、図6の第1の検知状態時データ送信部605が、検知状態である間(所定時間内)に、サーバ104からデータ取得依頼メッセージ(以下、「データ取得依頼Message 」と表記する)を待つ状態となる。そして、図7のイベントE5に示されるように、データ取得依頼Message を受信すると、第1の検知状態時データ送信部605は、サーバ104に向けて、メモリ203に記録しているセンサデータを送信する。データ取得依頼Message の受信処理は、図6の受信側PHY204r(図2のPHY204の一部)を介して実行される。また、センサデータの送信処理は、図6の送信側PHY204s(図2のPHY204の一部)を介して、隣接ノードに送信する処理として実行される。
【0042】
このように、検知を行ったノード101は、サーバ104からのデータ取得依頼メッセージの受信を待ってセンサデータを送信するため、サーバ104の制御下で、センサデータの送信を実行することが可能となる。
【0043】
以上の動作に加えて、検知Message を送信したノード101以外のノード101は、次のような特徴的な動作を実行する。
図7のイベントE3として示されるように、検知時刻を保持していない通常状態において、他のノード101から検知Message を受信すると、図6の第2の検知状態開始部606は、受信した検知Message に含まれる検知時刻を保持する。この受信動作は、図6の受信側PHY204r(図2のPHY204の一部)を介して実行される。検知時刻は、メモリ203(図2)またはMPU201(図2)の内部のレジスタ等に保持される。また、第2の検知状態開始部606は、受信した検知Message を受信元のノード101以外の隣接にブロードキャスト送信して伝搬させる。この送信処理は、図6の送信側PHY204s(図2のPHY204の一部)を介して実行される。そして、第2の検知状態開始部606は、タイマ207を制御して所定時間の計時を開始することにより、図7のイベントE3に示されるように、通常状態から検知状態に遷移する。つまり、他のノード101の検知により、そのノード101からの検知Message のブロードキャストを受信した他のノード101も、検知状態に遷移する。
【0044】
このように、検知Message を受信して検知状態に遷移すると、図6の検知状態時検知メッセージ送信抑制部604が、自ノード内のセンサデータの値が閾値を超えて検知すべき状態になっても、その検知を抑制し、検知Message をサーバ104に送信しなくなる。この結果、図5等で説明したように、複数のノード101から検知Message およびそれに続くセンサデータがほぼ同じタイミングで一斉に送信されて、基幹中継102に接続しているノード101において、輻輳が発生する可能性を抑制することが可能となる。
【0045】
ここで、図6の検知状態時検知メッセージ転送部607と検知状態時検知メッセージ破棄部608は、検知時刻を既に保持しているすなわち自ノードが検知状態にあるときに、他のノード101から検知Message を受信すると、以下の制御処理を実行する。なお、この受信処理は、図6の受信側のPHY204r(図2のPHY204の一部)を介して実行される。また、検知時刻は、図6の第1の検知状態開始部602または第2の検知状態開始部606によって、通常状態から検知状態への遷移が実行されるときに、メモリ203(図2)またはMPU201(図2)の内部のレジスタ等に保持されている。
【0046】
まず、図7のイベントE6に示されるように、検知状態時検知メッセージ転送部607は、受信した検知Message 内の検知時刻が保持している検知時刻よりも前のものである場合に、保持している検知時刻を受信した検知時刻で置き換えて更新する。そして、検知状態時検知メッセージ転送部607は、受信した検知Message を受信元のノード101以外の隣接ノードにブロードキャスト送信して伝搬させる。この送信処理は、図6の送信側のPHY204s(図2のPHY204の一部)を介して実行される。
【0047】
一方、同じく図7のイベントE6に示されるように、検知状態時検知メッセージ破棄部608は、受信した検知Message に含まれる検知時刻が保持している検知時刻以降のものである場合には、受信した検知Message を破棄する。
【0048】
以上のようにして、ノード101は、現在の検知状態において、最も早く検知され送信された検知Message のみを、サーバ104に伝搬させるように動作する。これにより、ほぼ同時に複数のノード101から送信された複数の検知Message による輻輳の発生を抑制することが可能となる。
【0049】
検知Message を受信して検知状態に遷移したノード101は、図6の検知状態時検知メッセージ送信抑制部604によって、センサデータの送信が抑制される。しかしながら、そのようなノード101は、以下の手段によって、自ノードに記録されているセンサデータをサーバ104に向けて送信することができる。つまり、図6の第2の検知状態時データ送信部609が、検知状態(所定時間内)において他のノード101からセンサデータを受信した場合に、図7のステップE7に示される制御動作を実行する。すなわち、第2の検知状態時データ送信部609は、他のノード101から受信したセンサデータに、自ノード内のセンサ202で測定されメモリ203に記録されているセンサデータを付加して、受信元のノード101以外の隣接ノードに送信して伝搬させる。他のノード101からのセンサデータの受信処理は、図6の受信側のPHY204r(図2のPHY204の一部)を介して実行される。また、センサデータの付加による送信処理は、図6の送信側PHY204s(図2のPHY204の一部)を介して実行される。
【0050】
なお、この付加的なセンサデータの送信は、他のノード101からセンサデータを受信したときに常に実行されるようにしてもよいし、サーバ104から指定されている場合においてのみ実行されるようにしてもよい。いずれの場合であっても、サーバ104からのデータ取得依頼Message をトリガとして、検知を行ったノード101のみならず、そのノード101と基幹中継102の経路上にある他のノード101のセンサデータも、きめ細かく収集することが可能となる。しかもその場合に、それぞれのノード101から余分なデータ送信が発生しないため、基幹中継102に接続されるノード101におけるアドホックネットワーク103(図1)の輻輳状態を回避することが可能となる。
【0051】
図7のイベントE8に示されるように、検知状態において、図6の検知状態出力部105が、図2のタイマ207での所定時間の計時が終了しタイマ値が0になったことを検知すると、自ノードの状態を検知状態から通常状態に遷移させる。この結果、検知メッセージを受信した状態が解除されて、センサデータをサーバ104に通知する必要のない通常状態に戻る。
【0052】
以上のように、本実施形態では、アドホックネットワーク内の任意のノードをノード#X、ノード#Yとしたとき、ノード#Xが検知すると、ネットワーク内の全ノードにブロードキャストで検知Message を送信する。そして、ノード#Xは、通常状態から検知状態に遷移して、サーバから送信されるデータ取得依頼Message を持つ状態になるようにした。さらに、検知Message を受信したノード#Y(未検知)も、通常状態から検知状態に遷移して検知をしなくなり、検知Message のブロードキャストも他ノードへ行わなくなる検知状態(検知保護期間)を設けた。この結果、基幹中継102に接続されているノード101、例えば図1のネットワーク構成例ではノード#1において輻輳が発生することを回避することが可能となる。なお、ノード#Xと同じように、ノード#Yも検知保護期間になると、サーバから送信されるデータ取得依頼Message を持つ状態になるようにした。
【0053】
データの取得方法としては、検知Message を受信したサーバが、データ取得依頼Messageをネットワーク内の末端ノードに送信する。受信した末端ノードで記録されていたセンサデータは、隣接ノードを伝播することにより、サーバにデータを通知する。そして、伝播する際に、途中のノードで記録されていたセンサデータも付加して伝搬するようにした。これにより、サーバ104は検知をしたノード101に関連するノード101のセンサデータも、まとめて収集することが可能となる。この結果、基幹中継102に接続されているノード101における輻輳を回避すると同時に、検知をしていないノード101のセンサデータもきめ細かく収集することが可能となる。
【0054】
なお、データ取得依頼Message のリクエストタイミングは、サーバが適当に決めてよい。また、本実施形態において、アドホックネットワーク103(図1)内での各ノード101での時刻同期は、事前に行われているものとする。時刻同期の方法としては、一般的に行われている時刻同期プロトコル(NTP:Network Time Protocol)などの手法を用いればよい。
【0055】
図8は、図6のノードの機能構成図および図7の状態遷移図に基づく、本実施形態による検知Message 通知処理の説明図である。
まず、ネットワーク内の各ノードのリンクは確立されている状態である。図8では、ノード#Cが最初に検知したとし、ネットワーク内の全ノードに検知Message をブロードキャストで送信する。
【0056】
検知状態(検知保護期間)になる条件は2つある。1つは、任意のノード、図8の例では、ノード#Cが検知した場合である(図8のS1)。もう1つは、隣接ノードから検知Message を受信した場合、図8の例では、ノード#B(#E)がノード#C(#D)から検知Message を受信した場合である(図8のS2)。検知保護期間になると同時に、データの記録を開始する。
【0057】
検知保護期間中のノード#B(#E)は検知抑止状態であるため、検知をすべき状態になっても検知Message を送信しない。また、サーバからのデータ取得依頼Message を待つ状態になる(図8のS3)。
【0058】
ノード#C、#Dは検知をしているため、検知保護期間中である。ノード#Cがノード#Dから検知Message を受信する。しかし、受信した検知Message 中の検知時刻がノード#Cが元々保持している検知時刻よりも遅いため、受信した検知Message は廃棄する(図8のS4)。
【0059】
ノード#Dがノード#Cからの検知Message を受信する。この場合、ノード#Cからの検知Message に含まれる検知時刻がノード#Dが元々保持している検知時刻よりも早い(古い)ため、ノード#Dは、自ノードの検知時刻を更新して隣接ノード#Eに伝播する(図8のステップS5)。
【0060】
このとき、各ノードは常時データを測定していて、検知時刻(センシング値が閾値を超えた時刻)前の数秒間は過去の(閾値を超えていない)センサデータが読みだせるようになっている(図8のS6)。これによりサーバは例えば、閾値を超える直前の温度変化を、閾値を超える直前のデータを各ノードに要求して取得することにより、解析することができる。また、検知状態(検知保護期間)の終わりは検知保護期間タイマにより制御する。
【0061】
最終的に、サーバでは、ノード#Cからのみ、検知Message を受信する(図8のS7)。
ノード#Eで受信した検知Message は、サーバ宛ではなく、ネットワーク内の他ノードへ検知Message を通知するために、伝播される。
【0062】
図9は、図8の本実施形態に対比される一般的な手法による検知Message 通知処理の説明図である。
図9において、各ノードは検知すると、それぞれ独立して、検知Message をサーバ宛に送信する(図9のS9)。
【0063】
基幹中継とサーバは、検知したノードの検知Message をすべて受信・処理することになる(図9のS10)。
この結果、一般的な手法では、それぞれの検知タイミングが近かったりルーティングの隣接関係によっては、基幹中継と接続しているノード(図5の例ではノード#1)の接続ポートに、全ノードのデータが集中してしまうことになり得る。この結果、輻輳の発生の可能性が高まってしまう。
【0064】
また、一般的な手法では、サーバは、ノード#B、#C、#D、#Eだけではなく、ノード#Aのセンサデータも収集したいような場合があり得る。しかしこの場合、ノード#Aは検知をしていないため、センサデータを取得することができない。
【0065】
これに対して図8に示される本実施形態では、各ノードは、検知Message を受信して検知状態(検知保護期間)に遷移するため、検知していないノード(図8の例ではノード#A)のデータ取得が可能になった。つまり、サーバは、検知をしたノードの周囲のノードのセンシング状態も含めて、総合的なデータ解析が可能となる。これは、検知Message をブロードキャストし、その検知Message の受信により検知状態(検知保護期間)に遷移するようにしたことによるものである。
【0066】
なお、検知保護期間は、検知時刻でスタートし、設定された所定時間で終了する。これに対して、データ収集期間(データ取得依頼Message を受信するまでの期間)は、検知保護期間よりも短くてもよい。
【0067】
図10は、本実施形態によるセンサデータ取得処理の説明図である。
ノード#A、#B、#C、#D、#Eはそれぞれ検知状態(検知保護期間)であり、ノード#Eを末端のノードとする。アドホックネットワークの構成情報をサーバが持っているので、末端ノードを判別することが可能である。
【0068】
図10において、データを取得するために、検知Message を受信したサーバは、末端ノード#Eにデータ取得依頼Message を送信する(図10のS1)。
データ取得依頼Message を受信したノード#Eのセンサデータは、ノード#D⇒ノード#C⇒ノード#B⇒ノード#Aとホップして伝搬される(図10のS2)。このとき、ノード#Eの持つセンサデータに途中のノードのセンサデータを追加していき、サーバにてこれらのセンサデータ群を取得する。ネットワーク内で検知状態(検知保護期間)にあるノードのセンサデータはすべて取得可能であるが、1つの検知Message でネットワーク内の全ノードのデータが取得できるわけではない。このため、ルーティングによってはデータが取得されないノードもある。しかし、一つ一つのノードにデータ取得依頼Message を送信するよりは格段にパケット数を抑制ことができる。また、データの取得ルートが被った場合はノードで判断し、データを付与しないように動作することができる。
【0069】
図11は、図10の本実施形態に対比される一般的な手法によるセンサデータ取得処理の説明図である。各ノードが検知したタイミングにより独立して、センサデータを送信し、サーバで受信している(図11のS3)。
【0070】
この結果、検知Message の場合と同様に、一般的な手法では、基幹中継と接続しているノードの接続ポートに、全ノードのセンサデータが集中し、輻輳の発生の可能性が高まってしまう。また、一般的な手法では、サーバは、ノード#Aのセンサデータは収集できない。
【0071】
これに対して本実施形態では、サーバは検知をしたノードに関連するノードのセンサデータも、まとめて収集することが可能となる。この結果、基幹中継に接続されているノードにおける輻輳を回避すると同時に、検知をしていないノードのセンサデータもきめ細かく収集することが可能となる。 図12は、本実施形態における検知したときのノード101(図1)における制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、図6のセンサデータ記録部601、第1の検知状態開始部602、検知状態終了部603、検知状態時検知メッセージ送信抑制部604、および第1の検知状態時データ送信部605の機能を実現する。この制御処理は例えば、図2のハードウェア構成において、MPU201が、メモリ203に記憶された制御プログラムを実行する動作の一部である。
【0072】
アドホックネットワーク103(図1)内で、リンクが確立される(図12のステップS1)。
センサ202(図2、図6)にてセンサデータの測定および記録を開始する(図12のステップS2)。この処理は、図6のセンサデータ記録部601の機能に対応する。
【0073】
測定したデータが閾値を超えていない場合は、センサデータの測定・記録処理を繰り返す(図12のステップS3の判定値が0→ステップS2)。
測定したデータが閾値を超えて検知した場合、検知Message を受信している状態かどうかを判定する(図12のステップS3の判定値が1→ステップS4)。この処理は、図6の第1の検知状態開始部602の機能の一部である。ここでは、検知Message の受信でセットされ検知状態(検知保護期間)の終了でリセットされるような内部レジスタを設けて判定してもよいし、検知保護期間タイマの値が0でない場合に検知Message を受信している状態と判定するような処理であってもよい。
【0074】
検知Message を受信済の状態である場合、検知状態(検知保護期間)となっているため、検知Message を送信しない(図12のステップS4の判定値が1→ステップS5)。この処理は、図6の第1の検知状態開始部602の機能の一部である。
【0075】
検知Message を受信していない状態である場合、タイマ207(図2、図6)を制御して検知保護期間タイマをスタートさせる。そして、検知時刻をメモリ203(図2、図6)またはMPU201の内部のレジスタに記録し、ブロードキャストで全ノードに向けて検知Message を通知する(図12のステップS4の判定値が0→ステップS6)。この処理は、図6の第1の検知状態開始部602の機能の一部である。
【0076】
サーバ104から送信されるデータ取得依頼Message の受信を待つ状態になり、その間、タイマ207内の検知保護期間タイマの値が0になったかどうかを判定する(図12のステップS7→ステップS8の判定値が1→ステップS7の繰り返し処理)。この処理は、図6の第1の検知状態時データ送信部605の機能の一部と検知状態終了部603の機能の一部である。
【0077】
検知状態においてデータ取得依頼Message を受信した場合、サーバ104にセンサデータを送信する(図12のステップS8の判定値が0→ステップS9)。この処理は、図6の第1の検知状態時データ送信部605の機能の一部である。
【0078】
所定時間経過したのち検知保護期間タイマが0になると、検知保護期間タイマがリセットされ、検知保護期間(検知状態)が終了する(図12のステップS7の判定値が0→ステップS10)。その後、ステップS2に戻る。
【0079】
図13は、本実施形態における検知Message受信時のノードにおける制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、図6の第2の検知状態開始部606、検知状態時検知メッセージ転送部607、検知状態時検知メッセージ破棄部608、第2の検知状態時データ送信部609の機能を実現する。この制御処理は例えば、図2のハードウェア構成において、MPU201が、メモリ203に記憶された制御プログラムを実行する動作の一部である。 ノード101にて、検知Message の受信処理が実行される(図13のステップS1)。この処理は、図6のPHY204r(図2のPHY204の一部)の機能である。
【0080】
検知Message を受信したノード101が検知時刻を保持しているかを判定する。検知時刻は、図12のステップS6または図13のステップS3にて、例えばメモリ203(図2)またはMPU201(図2)の内部のレジスタに保持される。この処理は、図6の第2の検知状態開始部606の機能一部である。
【0081】
検知時刻を保持していない場合、タイマ207を制御して検知保護期間タイマをスタートし、検知時刻をメモリ203(図2)またはMPU201(図2)の内部のレジスタ等に記録し、ノード101は検知保護期間(検知状態)となる(図13のステップS2の判定値が0→ステップS3)。その後、隣接ノードにホップして検知Message を伝播させる(図13のステップS3→S7)。この処理は、図6の第2の検知状態開始部606の機能の一部である。
【0082】
検知時刻を保持している場合、受信した検知Message に含まれる検知時刻と保持している検知時刻を比較する(図13のステップS2の判定値が1→ステップS4)。この処理は、図6の検知状態時検知メッセージ転送部607と検知状態時検知メッセージ破棄部608の機能の一部である。
【0083】
受信した検知Message に含まれる検知時刻が保持している検知時刻よりも遅い、もしくは、同時刻の場合、受信した検知Message は破棄される(図13のステップS4の判定値が0→S5)。その後、図13の検知Message 受信処理を終了する。この処理は、図6の検知状態時検知メッセージ破棄部608の機能の一部である。
【0084】
受信した検知時刻が保持している検知時刻よりも早い場合は、保持している検知時刻を受信した検知時刻で更新する(図13のステップS4の判定値が1→ステップS6)。その後、隣接ノードにホップして検知Message を伝播させる(図13のステップS7)。この処理は、図6の検知状態時検知メッセージ転送部607の機能の一部である。
以上のようにして、本実施形態による図6の機能に対応する処理が実現される。
【0085】
以下に、本実施形態におけるいくつかのケースにおける動作例を説明する。
図14は、本実施形態のケース1の動作例のシーケンスを示す図である。
【0086】
図1のアドホックネットワーク103において、ノード#3が最初に検知し、ノード#5は検知していない場合を考える。
図14は、ノード#1・#2・#3・#4・#5に着目し、ノードが検知したときのシーケンス図である。
【0087】
ルーティング方法は、ノード#5→ノード#4→ノード#3→ノード#1→サーバ104とする。
ノード#3が検知をし、ブロードキャストでネットワーク内の全ノード101に検知Message を通知する(図14のS1)。これは、図12のステップS6による。
【0088】
ノード#2・#4・#5が検知状態になったが、ノード#3からの検知Message を受信した後のため検知Message を送信しない(図14のS2)。これは、図13のステップS4による。
【0089】
ノード#3からの検知Message を受信したサーバ104は、末端ノード#5宛てにデータ取得依頼Message を送信する(図14のS3)。
データ取得依頼Message に応答してノード#5からセンサデータが送信される。この処理は、図12のステップS8→S9による。ノード#5から送信され伝播されてゆくセンサデータには、そのセンサデータを受信した途中のノード101で記録されているセンサデータが追加されていく(図14のS4)。
【0090】
検知していないノード#5も検知Message を受信して検知状態に遷移しているため、データ取得依頼Message に基づいてセンサデータを取得できる(図14のS5)。
ルーティングの関係でノード#2のデータは取得されない(ノード#2を伝播するルートの場合に取得される)(図14のS6)。
【0091】
図15は、本実施形態のケース2の動作例のシーケンスを示す図である。
図1のアドホックネットワーク103において、センサ202(図2)を搭載したあるノード101が検知した場合を考える。
【0092】
ノードは、ノード#3、#2、#4、#5の順に検知したとし、ノード#1は検知していない状態である。
図15は、ノード#1・#2・#3・#4・#5に着目し、ノードが検知したときのシーケンス図である。
【0093】
ルーティング方法は、ノード#5→ノード#4→ノード#3→ノード#1→サーバとする。
最初に検知したノード#3は、検知したことを知らせるため、ブロードキャストでネットワーク内の全ノードに検知Message を通知する(図15のS1)。これは、図12のステップS6による。
【0094】
ノード#3の次に検知したノード#2は、ノード#3からの検知Message を受信する前のため、検知する(図15のS2)。これは、図12のステップS4→S6による。
検知したノード#2は、ブロードキャストでネットワーク内の全ノードに検知Message を通知する。ノード#2からノード#3(検知済)への検知Message はノード#3における検知時刻と比較され、ノード#3の検知時刻の方が早いため、破棄され、ルーティングしない(図15のS3)。これは、図13のステップS4→S5による。
【0095】
次に検知したノード#4・#5は、ノード#3からの検知Message を受信しており検知状態(検知保護期間)となっているため、検知をすべき状態になっても検知Message を周辺ノードにブロードキャストしない(図15のS4)。この処理は、図12のステップS4→S5による。
【0096】
検知Message を受信したサーバ104は、センサデータを取得するため、ノード#5にデータ取得依頼Message を送信する(図15のS5)。
データ取得依頼Message を受信したノード#5のデータは、ノード#5→#4→#3→#1とホップして伝搬する。この処理は、図12のステップS8→S9による。このとき、ノード#5の持つデータに途中のノード(#4、#3、#1)のデータを追加していき、サーバ104にセンサデータを通知する(図15のS6)。
データを取得する際、検知していないノード#1のデータも取得できるようになっている(図15のS7)。
【0097】
図16は、本実施形態のケース3の動作例のシーケンスを示す図である。
図1のアドホックネットワーク103において、センサ202(図2)を搭載したあるノード101が検知した場合を考える。
図16は、アドホックネットワーク103内の全ノード101が同時に検知状態になったとし、ノード#1・#2・#3・#8・#10・#11に着目したシーケンス図である。
【0098】
各ノード101で検知し、全ノード101にブロードキャストで検知Message を通知する。この処理は、図12のステップS3→S4→S6による。ノード#2・#3・#8・#10・#11が隣接ノードにブロードキャストした検知Message は、受信したノードの検知時刻と比較され、破棄される(図16のS1)。この処理は、図13のステップS4→S5による。
【0099】
ノード#1の検知Message のみサーバ104に通知され、ノード#2・#3・#8・#10・#11は検知状態(検知保護期間)になり、データ取得依頼Message を待つ(図16のS2)。この処理は、図12のS7→S8→S7のループによる。
データ取得依頼Message を受信したノード#11は、ルーティング方法に従い、各ノードをホップして伝播する(図16のS3)。
【0100】
図17は、本実施形態のケース4の動作例のシーケンスを示す図である。
図1のアドホックネットワーク103において、センサ202を搭載したあるノード101が検知した場合を考える。
図17は、最初にノード#2・#3・#11が同時に検知し、ノード#1・#10・#11が2番目に検知したとし、ノード#1・#2・#3・#8・#10・#11に着目したシーケンス図である。
【0101】
検知したノード101は、全ノード101にブロードキャストで検知Message を通知する。
最初に検知したノード#2・#8・#11からの検知Message は、各ノード101の持っている検知時刻と同じため、検知Message (図17の△印)は破棄される(図17のS1)。
【0102】
ノード#1・#3・#10からの検知Message (図17の○印)は、最初の検知Message を受信済みのため破棄される(図17のS2)。
ノード#2・#3から検知Message を受信するノード#1では、受信した時刻が遅いほうの検知Message が破棄される(図17のS3)。
【0103】
この場合、ノード#1とノード#2(か#3)の検知Message のみサーバ104に通知され、各ノード101は検知保護期間になり、サーバ104からのデータ取得依頼Message を待つ。
【0104】
以上説明したように、本実施形態では、ノードが検知保護期間になると、サーバからのデータ取得依頼Message を持つ状態になり、自ノードが検知しても検知Message の送信を回避できるようになった。また、検知Message (検知時刻が早い)を受信したノードに検知Message (検知時刻が遅い)を送っても破棄され、その後検知Message がルーティングしなくなるようにした。これにより、ネットワーク内のトラフィックの軽減や、基幹中継に繋がるポートでのトラフィック集中(輻輳)の回避を可能とした。
【0105】
本実施形態では、各ノードで測定したデータを取得する際、サーバよりデータを取得する末端ノードを指定し、末端ノードがホップして伝搬してくる途中ノードのデータを追加して伝搬することにより、さらなるトラフィック軽減が得られる。なお、末端ノードは既知のものとする。
【0106】
従来のノード装置では、ノードが検知した後のデータのみを記録しサーバへ通知していたが、本実施形態では、検知以降のデータだけでなく、検知開始時刻より数秒程度前のデータを取得できるようになる。
【0107】
従来のノード装置は、検知していないノードのデータは取得しない仕組みだったが、本実施形態では、検知していないノードのデータも取得することが可能になった。
【符号の説明】
【0108】
101 ノード
102 基幹中継102(GW:Gate Way)
103 アドホックネットワーク
104 サーバ
105 ネットワーク網
201 MPU(Micro Processing Unit)
202 センサ
203 メモリ
204 PHY
205 RF部
206 有線コネクタ部
207 タイマ
208 バッテリ
601 センサデータ記録部
602 第1の検知状態開始部
603 検知状態終了部
604 検知状態時検知メッセージ送信抑制部
605 第1の検知状態時データ送信部
606 第2の検知状態開始部
607 検知状態時検知メッセージ転送部
608 検知状態時検知メッセージ破棄部
609 第2の検知状態時データ送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノードにおいて、前記ノード内のセンサにてセンサデータを測定して順次記録し、
前記ノードにおいて、前記測定したセンサデータの値が所定の条件を満たすことを検知したときに、他のノードから検知メッセージを受信した状態でない場合には、前記検知時刻を保持し、前記検知の通知と前記検知時刻を含む検知メッセージを、隣接するノードに順次同報して送信すると共に、所定時間の計時を開始し、
前記ノードにおいて、前記検知メッセージを受信した状態である場合には、前記検知メッセージは送信せず、
前記ノードにおいて、前記所定時間内に前記サーバからデータ取得依頼メッセージを受信した場合に、前記サーバに前記測定し記録しているセンサデータを送信し、
前記ノードにおいて、前記所定時間の終了時に前記検知メッセージを受信した状態を解除する、
ことを特徴とするセンサデータ送信方法。
【請求項2】
ノードにおいて、他のノードからの検知メッセージの受信時に、検知時刻を保持していない場合には、前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻を保持すると共に、前記受信した検知メッセージを前記他のノード以外の隣接するノードに同報して送信して伝搬させると共に、所定時間の計時を開始し、
前記ノードにおいて、前記検知メッセージの受信時に、前記検知時刻を保持している場合であって、前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻が前記保持している検知時刻よりも前のものである場合には、前記保持している検知時刻を前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻で置き換えて更新し、前記受信した検知メッセージを前記他のノード以外の隣接するノードに同報して送信し伝搬させ、
前記ノードにおいて、前記検知メッセージの受信時に、前記検知時刻を保持している場合であって、前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻が前記保持している検知時刻以降のものである場合には、前記受信した検知メッセージを破棄する、
ことを特徴とするセンサデータ送信方法。
【請求項3】
前記ノードにおいて、前記所定時間内に前記他のノードからセンサデータを受信した場合に、前記他のノードから受信したセンサデータに前記ノード内のセンサで測定し記録しているセンサデータを付加して前記他のノード以外の隣接するノードに送信して伝搬させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のセンサデータ送信方法。
【請求項4】
ノード内のセンサにてセンサデータを測定して順次記録するセンサデータ記録部と、
測定したセンサデータの値が所定の条件を満たすことを検知したときに、他のノードから検知メッセージを受信した状態でない場合には、前記検知時刻を保持し、前記検知の通知と前記検知時刻を含む検知メッセージを、隣接するノードに順次同報して送信すると共に、所定時間の計時を開始する第1の検知状態開始部と、
前記ノードにおいて、前記検知メッセージを受信した状態である場合には、前記検知メッセージは送信しない検知状態時検知メッセージ送信抑制部と、
前記ノードにおいて、前記所定時間内に前記サーバからデータ取得依頼メッセージを受信した場合に、前記サーバに前記測定し記録しているセンサデータを送信する第1の検知状態時データ送信部と、
前記ノードにおいて、前記所定時間の終了時に前記検知メッセージを受信した状態を解除する検知状態終了部と、
を有することを特徴とするセンサノード。
【請求項5】
ノードにおいて、他のノードからの検知メッセージの受信時に、検知時刻を保持していない場合には、前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻を保持すると共に、前記受信した検知メッセージを前記他のノード以外の隣接するノードに同報して送信して伝搬させると共に、所定時間の計時を開始する第2の検知状態開始部と、
前記ノードにおいて、前記検知メッセージの受信時に、前記検知時刻を保持している場合であって、前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻が前記保持している検知時刻よりも前のものである場合には、前記保持している検知時刻を前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻で置き換えて更新し、前記受信した検知メッセージを前記他のノード以外の隣接するノードに同報して送信して伝搬させる検知状態時検知メッセージ転送部と、
前記ノードにおいて、前記検知メッセージの受信時に、前記検知時刻を保持している場合であって、前記受信した検知メッセージに含まれる検知時刻が前記保持している検知時刻以降のものである場合には、前記受信した検知メッセージを破棄する検知状態時検知メッセージ破棄部と、
ことを特徴とするセンサノード。
【請求項6】
前記ノードにおいて、前記所定時間内に前記他のノードからセンサデータを受信した場合に、前記他のノードから受信したセンサデータに前記ノード内のセンサで測定し記録しているセンサデータを付加して前記他のノード以外の隣接するノードに送信して伝搬させる第2の検知状態時データ送信部をさらに含む、
ことを特徴とする請求項4または5に記載のセンサノード。

【図3】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−195786(P2012−195786A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58541(P2011−58541)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】