説明

センサモジュール

【課題】電力不足となることがなくタイヤ内部の状態を安定して測定、送信することができるセンサモジュールを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ100の内部の状態を測定する少なくとも一つのセンサ5、7と、センサ5、7によって測定されたデータを送信する送信回路13と、センサ5、7および送信回路13に供給する電力を、空気入りタイヤ100の転動時の変形に伴うエネルギを変換して発電する圧電素子15と、センサ5、7および送信回路13に供給する電力を、外部からの電波エネルギを介して受電する受電アンテナ17と、を備え、センサモジュール1を空気入りタイヤ100のトレッド部に配置した状態にて、受電アンテナ17の、タイヤ幅方向に沿う長さW1を、空気入りタイヤ100に埋設されたベルト103の最大幅Wbよりも大としたセンサモジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に装着された空気入りタイヤの状態(空気圧等)を測定し、測定したデータを送信するセンサモジュールに関し、特には、タイヤの状態を安定して測定、送信することができるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
センサによって、タイヤの内部状態(空気圧等)を監視するシステムは、タイヤプレッシャモニタリングシステム(TPMS)とも呼ばれ、一部の国ではその装着が義務化されているが、このようなシステムとしては、従来、空気圧を測定するセンサ装置をエアバルブやホイールに取り付け、センサ装置への電力の供給を、内蔵した電池によって行うものが主流であった。
【0003】
このような電池式のセンサ装置では、使用開始時期と製造時期がある程度一致していないと、電池の自己放電等によって蓄電量が低下し、使用途中あるいは使用開始前に電池切れが発生するというおそれがある。
【0004】
そこで、このような電池切れ等の問題を避けるため、特許文献1には、タイヤの回転振動や衝撃を利用して振動型の圧電素子を振動させて発電し、その電力でセンサを作動させるものが提案されている。しかし、圧電素子の振動特定には、速度依存性があり、例えば低速で良好に発電するように調整すると中速では発電量が減少し、さらに高速ではほとんど発電されずセンサを作動できないという不具合が生じる。しかも、このような単純な発電式の装置では、タイヤが停止している場合にはセンサを一切作動させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−186930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記問題を解決することを課題とし、すなわち、電力不足となることがなくタイヤ内部の状態を安定して測定、送信することができるセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、この発明のセンサモジュールは、車両に装着された空気入りタイヤの状態を測定し、測定したデータを送信するセンサモジュールであって、空気入りタイヤの状態を測定する少なくとも一つのセンサと、前記センサによって測定されたデータを送信する送信回路と、前記センサおよび前記送信回路に供給する電力を、空気入りタイヤの転動時の変形に伴うエネルギを変換して発電する圧電素子と、前記センサおよび前記送信回路に供給する電力を、外部からの電波エネルギを介して受電する受電アンテナと、を備え、前記センサモジュールを空気入りタイヤのトレッド部に配置した状態にて、前記受電アンテナの、タイヤ幅方向に沿う長さを、空気入りタイヤに埋設されたベルトの最大幅よりも大としたことを特徴とするものである。なお、ここでいう「ベルトの最大幅」とは、JATMA又はこれに準ずる規格に記載されている適用リムにタイヤを装着し、そのタイヤ内に同規格に定める最高空気圧を適用した状態にて測定したベルトの最大幅を指し、特にベルトが複数層から構成される場合には、その中で最も幅の大きい層の幅を指すものとする。
【0008】
かかるセンサモジュールにあっては、電力源として、圧電素子のほかに、外部(メイン装置)から供給された電力(電波エネルギ)を受電する受電アンテナを設けたことから、圧電素子による電力が不足した場合等には、受電アンテナで生成した電力にて各回路を駆動することができる。したがって、従来のような、電源不足の問題を解消することができ、タイヤ内部の状態を常時安定して測定、送信することが可能となる。特に、この発明のセンサモジュールは、車両の走行中のみならず、停止中にも給電が可能である。また、このような外部給電方式は、連続的に多くのデータが読み出せるので、圧力や温度に関する情報だけでなく内部に書き込まれた多くの情報(タイヤに負荷した加速度(常時計測データ)などのデータ量の多い情報)を読み出すことができる。但し、外部給電方式は、車両側の電力を活用するため、車両全体の省電力を考慮すると、必要な時(圧電充電での電力不足や圧力、温度以外のデータを取得する時など)のみ外部給電方式を用いることが望ましい。なお、圧力、温度情報はデータ値の変化率が緩やかであるため、圧電充電の電力による送信でも対応できる。また、空気入りタイヤには、一般に補強層として金属製のベルトが配置されているため、圧電素子をタイヤの変形が大きいトレッド部に配置するようにしたことに起因して、ベルトの存在によって受電アンテナの感度が低下するおそれがあるが、この発明では、受電アンテナの長手方向の長さを、ベルトの最大幅よりも大とし、受電アンテナの端部がベルトの幅方向端部よりも外側に延出するようにしたことから、より安定した外部給電を行うことが可能となる。
【0009】
したがって、この発明のセンサモジュールによれば、電力不足となることがなくタイヤ内部の状態を安定して測定、送信することができるセンサモジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、電力不足となることがなくタイヤ内部の状態を安定して測定、送信することができるセンサモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明にしたがう一実施形態のセンサモジュールの構成図である。
【図2】図1のセンサモジュールの外観を示す平面図である。
【図3】図1のセンサモジュールを適用した空気入りタイヤの幅方向断面図である。
【図4】センサモジュールの動作を示す、空気入りタイヤの周方向断面図である。
【図5】センサモジュールを空気入りタイヤのトレッド部に埋設した例を示す、空気入りタイヤの幅方向断面図である。
【図6】(a)、(b)、(c)はそれぞれ、この発明のセンサモジュールに好適に適用できる他の受電アンテナを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ここに、図1は、一実施形態のセンサモジュールを示す構成図であり、図2は、センサモジュールの外観を示す平面図であり、図3は、センサモジュールを適用した空気入りタイヤの幅方向断面図であり、図中、符号1は、センサモジュールを示し、符号100は、センサモジュールが適用された空気入りタイヤを示している。
【0013】
このセンサモジュール1は、受信回路、送信回路、コントローラ、表示装置および警告装置等を含むことができる外部のメイン装置50(図3参照)と協働して、タイヤプレッシャモニタリングシステム(TPMS)を構成することができる。また、センサモジュール1は、トレッド部(クラウン部ともいう)101にベルト103を配置してなる空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう。)100に好適に適用できるものであり、センサモジュール1は、タイヤ100のトレッド部101内面に貼り付けたり(図3参照)、トレッド部101内に埋設したりすることができる(図5参照)。
【0014】
センサモジュール1は、図1、2に示すように、タイヤ100の内面に貼り付けられる基板3と、タイヤ100の空気圧を測定する圧力センサ5と、タイヤ100の内部の温度を測定する温度センサ7と、圧力センサ5および温度センサ7に接続された制御回路9と、制御回路9に接続されたメモリ11と、制御回路9に接続された送信回路13と、送信回路13に接続された送信アンテナ13aと、タイヤ100の転動時の変形に伴うエネルギを変換して発電するフィルム状(屈曲変形により発電する屈曲型)の圧電素子15と、外部からの電力(電波エネルギ)を受電する受電アンテナ17とから構成される。受電アンテナ17としては、ループアンテナやコイル−コイル間の電磁力によるコイルアンテナなどを用いることができる。なお、センサモジュール1による「送信」には、車両本体のECUなどにデータを蓄積する場合だけでなく、TPMSの装置自体(メモリ)にデータを蓄えて直接基地局とデータ通信を行う場合や、停車時にハンディタイプの情報ツールと直接通信を行う場合も含む。
【0015】
圧電素子15および受電アンテナ17で発生した電力は、整流器18、19にて整流、直流化されて電力監視回路20に送られる。圧力センサ5、温度センサ7、制御回路9、送信回路13等の、センサモジュール1内の回路は、全て電力監視回路20から供給される電圧によって作動するよう構成される。制御回路9は、マイクロプロセッサにて構成されている。メモリ11は、制御回路9での演算処理に必要な情報を供給する他、測定したデータやタイヤに関する固有の情報を記憶するよう構成されている。送信回路13は、制御回路9で処理されたデータを所定のタイミングにて、あるいは外部(例えばメイン装置50)からの要求信号に基いて、送信アンテナ13aを介して送信するよう構成されている。受電アンテナ17は、平面視にて、略矩形に形成されるが、これに限定されない。
【0016】
そして、この例では、センサモジュール1は、図3に示すように、受電アンテナ17の長手方向がタイヤ幅方向D1に沿う向きにて、タイヤ100のトレッド部101の内面に対してゴムパッチ105により固定、保持されており、受電アンテナ17の、タイヤ幅方向D1に沿う長さ(長手方向の長さ)W1は、タイヤ100に埋設されたベルト103の最大幅Wbより大である。すなわち、受電アンテナ17の長手方向の少なくとも一方の端部は、タイヤ100のベルト103の幅方向端部よりも幅方向外側に延出している。
【0017】
次に、上述したセンサモジュール1を用いてタイヤ100内の空気圧、温度を測定する方法について説明する。先ず、図4に示すように、タイヤ100の転動により圧電素子15は、センサモジュール1がタイヤ100の接地域外に位置する場合は、タイヤ100の内面に沿って湾曲した形状となっているが、センサモジュール1がタイヤ100の接地域に入ると、平坦に伸張され、接地が終了すると再び湾曲した形状に復帰する。この変形(歪み)を繰り返し受けることで、圧電素子15は発電を行う。圧電素子15で発電された電力は、整流化された後、電力監視回路20に送られ、一定以上の電力が蓄電され次第全ての回路9、13に電源が供給される。電源の供給を受けると制御回路9は、タイヤ100内の空気圧、温度をそれぞれ測定し、測定された各データは、送信回路13から送信アンテナ13aを介してメイン装置50に送信される。送信電波は、タイヤ回転位置によってはメイン装置50に届き難い場合もあり、また電力監視回路20に蓄電可能な容量にも限度があるため必要最低限の短い時間の送信を行うこととする。
【0018】
一方、センサモジュール1には、電力源として、圧電素子15のほかに、外部(例えば、メイン装置50の送信回路)から供給された電力(電波エネルギ)を受電する受電アンテナ17が設けられていることから、圧電素子15による電力が不足した場合等には、受電アンテナ17で生成した電力にて各回路9、13を駆動する。
【0019】
このように、圧電素子15による発電のみでは、タイヤ100の停止状態、低速走行状態が続いた場合に、センサモジュール1を作動させるための電源が不足するおそれがあるが、受電アンテナ17を設け外部からの電力を併用できるようにしたことで、電源不足の問題を解消することができ、すなわちタイヤが停止状態でもタイヤ内部の状態を常時安定して測定、送信することが可能となる。また、このような外部給電方式は、連続的に多くのデータが読み出せるので、圧力や温度に関する情報だけでなく内部に書き込まれた多くの情報(タイヤに負荷した加速度(常時計測データ)などのデータ量の多い情報)を読み出すことができる。但し、外部給電方式は、車両側の電力を活用するため、車両全体の省電力を考慮すると、必要な時(圧電充電での電力不足や圧力、温度以外のデータを取得する時など)のみ外部給電方式を用いることが望ましい。なお、圧力、温度情報はデータ値の変化率が緩やかであるため、圧電充電の電力による送信でも対応できる。また、空気入りタイヤには、一般に補強層として金属製のベルト103が配置されているため、圧電素子15をタイヤ100の変形が大きいトレッド部101に配置するようにしたことに起因して、ベルト103の存在によって受電アンテナ17の感度が低下するおそれがあるが、この発明では、受電アンテナ17の長手方向の長さW1を、ベルト103の最大幅Wbよりも大とし、受電アンテナ17の端部がベルト103の幅方向端部よりも外側に延出するようにしたことから、より安定した外部給電を行うことが可能となる。
【0020】
なお、電力監視回路20には、受電信号を検知する検出手段を設けてもよく、これによれば、電力が受電アンテナ20から供給されていることを検知した場合に、タイヤの空気圧や温度に関する情報のみならず、メモリに記憶されたタイヤの固有情報(例えば、製造メーカー、製造年月日、使用開始時期、メンテナンス履歴等)を外部(例えば、メイン装置50)に送信するよう構成することができる。受電アンテナ17を用いた外部からの給電は、圧電素子15による発電に比べて、タイヤ100の転動状態にかかわらず、大きな電力を生成することが可能であるので、短時間での蓄電と情報送信の繰り返しが可能であり、消費電力の大きい、上記タイヤの固有情報の送信も可能となる。
【0021】
また、センサモジュール1には、電池や振動型の圧電素子のような厚みの大きい部品を搭載していないため薄型であり、図3に示すようにタイヤ100の内面に貼り付けるだけでなく、図5に示すようにトレッド部101に埋設することもでき、このようにトレッド部101に埋設する場合には、タイヤ製造工程にて取り付けることができるため、装着コストを低減でき、また装着の安定性を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
また、受電アンテナ17の形状は、図2に示す矩形に限らず、図6(a)、(b)に示すように、長手方向の端部(タイヤ幅方向D1における端部)に向かうに連れて先細りとなる形状とすることができる。図6(a)は、直線的なアンテナ配置の受電アンテナ17を示し、図6(b)は、曲線的なアンテナ配置の受電アンテナ17を示している。なお、図6(c)に示すように、先細り部を複数個配置してもよい。タイヤ転動に伴う変形はタイヤ周方向成分の寄与が大きいため、受電アンテナ17において、タイヤ周方向D2に平行な部分(図2参照)は、タイヤ転動に伴う変形により疲労し、場合によっては破損に至ることも考えられるが、タイヤ周方向D2に平行な部分を減らすことで、受電アンテナ17の破損の懸念を低減することができる。
【0023】
また、この実施形態では、受電アンテナ17を除く構成部品(圧力センサ5、温度センサ7、制御回路9、送信回路13)の配列方向を、受電アンテナ17の長手方向(タイヤ幅方向D1)に沿って、かつタイヤ幅方向に沿って配置させており、これによれば、タイヤ転動に伴う変形はタイヤ幅方向成分の寄与が小さいため、タイヤ転動時のセンサモジュール1の変形に伴う各構成部品の破損の懸念を低減することができる。
【0024】
さらに、この実施形態では、圧電素子15の長手方向を、受電アンテナ17の長手方向(タイヤ幅方向D1)に直交する方向(すなわちタイヤ周方向D2)、かつタイヤ周方向に沿って配置させており、これによれば、タイヤ転動に伴う変形はタイヤ周方向成分の寄与が大きいため、タイヤ転動時に圧電素子15の変形量を大きくすることができて、圧電素子15による発電効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
かくして、この発明により、電力不足となることがなくタイヤ内部の状態を安定して測定、送信することができるセンサモジュールを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0026】
1 センサモジュール
3 基板
5 圧力センサ
7 温度センサ
9 制御回路
11 メモリ
13 送信回路
13a 送信アンテナ
15 圧電素子
17 受電アンテナ
18、19 整流器
20 電力監視回路
50 メイン装置
100 空気入りタイヤ
103 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着された空気入りタイヤの状態を測定し、送信するセンサモジュールであって、
空気入りタイヤの状態を測定する少なくとも一つのセンサと、
前記センサによって測定されたデータを送信する送信回路と、
前記センサおよび前記送信回路に供給する電力を、空気入りタイヤの転動時の変形に伴うエネルギを変換して発電する圧電素子と、
前記センサおよび前記送信回路に供給する電力を、外部からの電波エネルギを介して受電する受電アンテナと、を備え、
前記センサモジュールを空気入りタイヤのトレッド部に配置した状態にて、前記受電アンテナの、タイヤ幅方向に沿う長さを、空気入りタイヤに埋設されたベルトの最大幅よりも大としたことを特徴とするセンサモジュール。
【請求項2】
前記受電アンテナの長手方向の端部を先細りに形成し、前記受電アンテナの長手方向をタイヤ幅方向に沿って配置した、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記センサおよび前記送信回路の配列方向を、前記受電アンテナの長手方向に一致させてなる、請求項1または2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記圧電素子の長手方向を、前記受電アンテナの長手方向に直交する方向に一致させ、前記圧電素子の長手方向をタイヤ周方向に沿って配置した、請求項1〜3の何れか一項に記載のセンサモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−88123(P2012−88123A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233970(P2010−233970)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】