説明

センサ素子及び関連した角度測定システム

少なくとも1つの供給端子(10,14)を用いて、特に少なくとも1つの第1の供給端子を用いて、かつ少なくとも1つの基準端子(12,16)を用いて、特に、例えばグラウンド電位(GND;GND1,GND2)における、少なくとも1つの第2の供給端子を用いて、少なくとも1つの供給電圧(VCC;VCC1,VCC2)及び少なくとも1つの供給電流(i;i1,i2)をそれぞれ供給されることができ、供給電圧(VCC;VCC1,VCC2)の降下又は供給電流(i;i1,i2)の流れの方向(D;D1,D2)と、結果として生じる内部磁場(Hres)の方向との間の角度(α;α1、α2)の関数としてセットされる差分電圧(Vout;Vout1、Vout2)が、少なくとも第1の、特に正(V+;V+1,V+2)の、タッピング電極(20,24)と少なくとも第2の、特に負(V−;V−1,V−2)の、タッピング電極(22,26)との間でタップされることができ、結果として生じる内部磁場(Hres)の方向が、固有磁化(H0)及び少なくとも1つの外部磁場(Hext)を重ねることにより与えられ、好適な磁気方位を持たずに製造されることができ、技術的に引き起こされるオフセットが最小化される又は完全に除去される、少なくとも1つの磁気抵抗センサ素子(100,110)を提供するために、磁気抵抗センサ素子(100,110)が、フラットになるように設計され、特に供給電圧(VCC;VCC1,VCC2)の降下が連続的であることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載された磁気抵抗センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式角度測定は、磁気抵抗センサの応用の主要分野である。これに対する理由は、磁気抵抗センサが基づく固体効果が角度効果であり、即ち、
【数1】

であることである。
【0003】
磁場を測定するセンサ素子(いわゆるA[異方性(anisotropic)]M[磁気(magneto)]R[抵抗(resistive)]センサ)は、異方性磁気抵抗効果の原理に基づく。
【0004】
現在、例えば文献DE10104453A1に記載されたように、AMR角度センサは、第一に、完全なホイートストンブリッジとして設計される。このような完全なホイートストンブリッジの伝達関数は、式
【数2】

により与えられる。
【0005】
しかしながら、ホイートストンブリッジ回路の個々の細長い抵抗器の製造中に技術的公差が存在することは不利であり、これらの公差は、前記抵抗器の不可避的な非対称性を生じ、これにより電気的オフセットV0が生じる。これらのオフセットは、ほとんど約12ミリボルト毎ボルト(12mV/V)のホイートストンブリッジの、AMR効果Δρ/ρにより決定される、信号振幅の大きさのオーダである数ミリボルト毎ボルト(mV/V)で既に存在し、これにより後の信号調整及び処理中のこのようなオフセットの除去は、過度に高度な複雑性を必要とする。
【0006】
今までに知られているブリッジの他の不利点は、線形又はバー形抵抗器が無視できない固有(又は内部)磁場強度H0を持つことであり、
【数3】

ここで、tは、前記線形又はバー形抵抗器の厚さであり、
wは、前記線形又はバー形抵抗器の幅であり、
Mは、パーマロイの飽和磁化(約800キロアンペア/メートル)であり、これは式、
【数4】

を介して、内部磁化の角度と外部磁場の角度との間の差をもたらす。ブリッジ出力電圧の奇数調波、ひいては追加の振動角度誤差が、これにより結果として生じる。
【0007】
したがって、ホイートストンブリッジ回路において、前記抵抗器は、不連続な長いストリップの形で設計され、好適な磁気方位を持つ抵抗器の特定の設計は、磁気伝達特性に影響を与えるので、ホイートストンブリッジ回路の原理に基づく磁気抵抗センサは、出力信号における不所望な散乱を示し、特に、前記ホイートストンブリッジ回路の内部領域に対する前記ホイートストンブリッジ回路の特に大きく影響を受け、したがって問題のある縁領域の比は、前記磁気抵抗センサの出力信号を弱める。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の不利点及び欠点に基づき、概説された従来技術の認識において、本発明の目的は、好適な磁気方位を持たずに製造されることができ、技術的に引き起こされるオフセットが最小化されるか、又は完全に除去される磁気抵抗センサ素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載されたフィーチャを持つ磁気抵抗センサ素子、請求項6に記載されたフィーチャを持つ角度センサ、及び請求項10に記載されたフィーチャを持つ角度測定システムにより達成される。本発明の有利な実施例及び都合の良い成果は、それぞれの従属請求項において特徴付けられる。
【0010】
本発明は、磁気抵抗センサ素子が2次元構造の形で設計され、特にフラットであるという事実に基づく。したがって、複数の線形又はバー形ブリッジ抵抗器(→ホイートストンブリッジの形成)の代わりに、少なくとも1つのフラットな、特に異方性の、M[磁気]R[抵抗]素子を使用する。
【0011】
前記磁気抵抗素子のこの2次元構造又はフラットな設計は、ホイートストンブリッジと比較して2つの決定的な利点、特に、
−より小さな技術的に引き起こされる電気的オフセットV0と、
−内部磁場H0により引き起こされる、より小さな角度誤差と、
を有する。
【0012】
本発明によると、したがって、好適な磁気方位を持たないレイアウトが達成される(従来技術によるAMRホイートストンブリッジにおいて、このような好適な磁気方位は、振動する角度誤差を生じる)。
【0013】
前記出力信号における不所望な散乱の発生は、したがって、前記センサ素子のフラットな設計により除去される。更に、前記センサ素子のフラットな設計のために、前記磁気抵抗センサ素子の供給電圧は、有利には、連続的に降下する。
【0014】
本発明の1つの特に好適な実施例によると、固有磁化H0は低い磁場強度を持ち、これにより、結果として生じる内部磁化Hresは、外部磁場Hextに本質的に平行に向けられる。
【0015】
更に、本発明による前記センサ素子の1つの有利な実施例において、差分電圧の勾配の方向は、供給電流の流れ又は前記供給電圧における降下の方向に本質的に垂直に向けられる。
【0016】
有利には、前記センサ素子は、少なくとも部分的に、少なくとも1つの強磁性合金、例えばパーマロイで形成される。ニッケル鉄合金パーマロイ(Ni80Fe20)は、低い磁場強度及び低いヒステリシス損失を同時に持つ高い透磁率の利点を提供する。このような強磁性構造の磁気特性は、外部形状により調整されることができる。更に、磁場により通過される場合、パーマロイは、オーム抵抗を数パーセントだけ変更する性質を持つ。
【0017】
本発明の1つの本質的な実施例において、前記センサ素子は、特に供給端子及び信号タップを用いて、4つ以上のポールを有するように設計されることができる。この場合、前記センサ素子は、有利には、固定電位を形成するために少なくとも1つの接地点を有する。
【0018】
本発明の1つの有利な実施例において、前記センサ素子は、本質的に長方形に又は本質的に円形に設計されてもよい。これとは独立に、又はこれに連動して、前記センサ素子は、有利には、好適な磁気方位を持たない。
【0019】
本発明は、更に、上述のタイプの少なくとも1つのセンサ素子を有し、磁場強度、特に磁場強度の時間的勾配を測定する角度センサに関する。
【0020】
このような角度センサは、単一の供給電圧のみが印加されることができるだけでない又は単一の供給電流のみが流れるだけでないように設計されてもよく、むしろ、1つの好都合な実施例において、前記角度センサは、第1の供給電圧の降下又は第1の供給電流の流れの方向が、第2の供給電圧の降下又は第2の供給電流の流れの方向に対して、所定の角度、例えば45度だけ回転又はオフセットされるように設計されてもよい。
【0021】
これに関連して、前記角度センサは、有利には、
前記第1の供給電圧又は前記第1の供給電流に割り当てられた第1のセンサ素子、及び付加的に、
前記第2の供給電圧又は前記第2の供給電流に割り当てられた第2のセンサ素子、
を有することができる。
【0022】
代わりに、前記角度センサの1つの好都合な実施例において、前記第1の供給電圧又は前記第1の供給電流及び前記第2の供給電圧又は前記第2の供給電流は、例えば、各場合において所定の角度、例えば45度だけ回転又はオフセットされる端子を用いて、同一のセンサ素子に割り当てられることもできる。
【0023】
本発明は、更に、
上述のタイプの少なくとも1つの角度センサと、
前記角度センサの少なくとも1つの出力信号を供給されることができ、前記出力信号を評価するように備えられた少なくとも1つの回路構成、特に少なくとも1つの集積回路と、
を有する非接触式角度測定システムに関する。
【0024】
本発明は、最終的に、
少なくとも1つのクランク軸角度を測定する場合に少なくとも1つの基準マークを検出するための、
金属物体を検出するための、
回転速度及び/又は電流を測定するための、
弱い磁場を検出するため、例えば少なくとも1つの駆動部、少なくとも1つの金属棒、少なくとも1つのカム、少なくとも1つの輪又は少なくとも1つの歯車のような、車又は機械の能動部品(active component)における小さな移動及び/又は変化を例えば検出するための、
トラフィック移動を検出及び/又は制御するための、
例えば少なくとも1つのコンパスを使用する、ナビゲーション目的の、又は
非接触式角度測定のための、
上述のタイプの少なくとも1つのセンサ素子及び/又は上述のタイプの少なくとも1つの角度センサ及び/又は上述のタイプの少なくとも1つの角度測定システムの使用に関する。
【0025】
上述のタイプの磁気抵抗センサデバイス(又は磁気抵抗センサ素子)及び/又は上述のタイプの角度センサ及び/又は上述のタイプの角度測定システムは、有利には、
近接センサとして、
モーションセンサとして、又は
位置センサとして、
使用されることもできる。この場合、有利には、外部磁場のソースに対する検出されるべき対象の位置が変化する場合に前記センサ素子の比例する電圧信号を生じる外部磁場を使用する。
【0026】
既に上で述べられたように、本発明の教示を有利に構成及び発展する様々な可能性が存在する。これに関して、一方で、請求項1、請求項6及び請求項10に従属する請求項が参照され、他方で、本発明の他の実施例、フィーチャ及び利点は、図1ないし6に示される実施例の複数の例の模範的実施を特に参照して以下により詳細に記載される。
【0027】
同一又は同様な構成、要素又はフィーチャは、図1ないし7Bにおいて同一の参照符号を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明によるセンサ素子100の3つの実施例が以下に与えられる。余分な繰り返しを避けるために、本発明の構成、フィーチャ及び利点に関する以下の説明は、(別に定められない限り)
図1に示される磁気抵抗センサ素子100の第1の実施例と、
図3に示される磁気抵抗センサ素子100の第2の実施例と、
図6に示される磁気抵抗センサ素子100の第3の実施例と、
に関する。
【0029】
図1に示される前記第1の実施例において、センサ素子100は、フラットな、本質的に長方形のA[異方性]M[磁気]R[抵抗]素子として設計され、この場合、AMR効果は50倍大きく示される。
【0030】
このAMR素子100は、供給端子10を介して及びグラウンド電位GNDにおける基準端子12を介して供給電圧VCC(以下VCCとしても与えられる)及び供給電圧VCCによりもたらされる供給電流iをそれぞれ供給される。この場合、端子10及び12は、互いに反対であり、それぞれの場合に幅wを持つAMR素子100の側面のほぼ中心に配置される。
【0031】
AMR素子100の原理は、AMR素子100の固有磁化H0及び外部磁場Hextを重ねることにより、結果として生じる内部磁場Hresが生成されるという事実に基づく。
【0032】
図1に示されるAMR素子100において、特徴的な固有磁場強度H0は低い(←→好適な磁気方位が無い)ので、結果として生じる内部磁化Hresは、低い磁場強度であっても外部磁場Hextにほぼ平行に向けられ、換言すると、結果として生じる内部磁化Hresの方向は外部磁場Hextの方向に対応する。AMR素子100は、したがって、外部磁場Hextの方向に導電率ρ及び前記方向に垂直にρを持つ。
【0033】
方向D(=電流の所定の方向又は供給電圧VCCとグラウンド電位GNDとの間、換言すると供給端子10と基準端子12との間、の電圧降下の方向)と外部磁場Hextの方向(=本質的に結果として生じる内部磁場Hresの方向)との間の角度αに依存して、差分電圧Vout(いわゆる擬似ホール電圧(pseudo-Hall voltage))がAMR素子100においてセットされ、前記電圧は、供給電圧VCCに対して規格化された形式で以下の式により記載される。
【数5】

ここで、fは、0ないし1の(幾何学的)補正因子であり、
wは、(VCC−GNDに垂直に規定される)AMRセンサ素子100の幅であり、
lは、(VCC−GNDに沿って規定される)AMRセンサ素子100の長さである。
【0034】
所定の磁場角度を持つ外部磁場Hextのため、例えばAMR素子100が移動される場合にAMR素子100における異なる導電率が上述のようにセットされる。これらの導電率は、差分電圧出力信号Voutの形式でタップされることができる。
【0035】
この目的で、AMR素子100は、互いに反対に位置する2つのタッピング電極20及び22、特に、
(正の差分電圧VoutをタップするタップV+に対する)1つの正のタッピング電極20と、
(負の差分電圧VoutをタップするタップV−に対する)1つの負のタッピング電極22と、
を有する。
【0036】
2つのタッピング電極20及び22は、それぞれの場合に、長さ1を持つAMR素子100の側面のほぼ中心に配置される。
【0037】
図1において、AMRセンサ100の等電位線が異なる色を使用して示される。ここで、それぞれの場合におけるカラーストリップの外側限界は、等電位線に対応し、完全な供給電圧VCC(=100%VCC)からグラウンド電位GND(=0%VCC)への電圧降下は、図1の右側の縁におけるストリップによりもう一度示される。
【0038】
図2は、AMR素子100の(規格化された)出力信号Voutと外部磁場Hext又は結果として生じる内部磁場Hresの角度αとの間の関係を示す。
【0039】
この関係は、外部磁場Hextが印加される場合に磁気導体の抵抗R又は固有抵抗ρが変化するという事実に原因があることができる。外部磁場Hextが前記磁気導体の面に平行に及び前記磁気導体内を流れる電流iに垂直に印加される場合、前記磁気導体の内部磁場Hresのベクトルは角度αだけ回転する。前記磁気導体の抵抗R又は固有抵抗ρは、したがって、以下の式によって角度αに関して配置されることができる。
ρ=ρ+(ρ−ρ)cos2α
ここで、ρは、材料定数であり、
ρは、材料定数である。
【0040】
AMR素子100の差分出力信号V−又はV+は、sin2αに比例するので、図1に示されるAMR素子100は、90度の角度範囲を検出することができる(図2参照)。
【0041】
図2において、外部磁場Hextの(電流iの方向Dに対する)角度αが横座標上にプロットされ、図1に示されるAMR素子100の規格化された出力電圧Voutが縦座標上にプロットされる。AMR素子100の図示された出力信号の振幅は、9.5mV/Vであり、これは(約12mV/kV)のAMR効果のおよそ80パーセントに対応する。
【0042】
フラットなAMR角度センサ素子100の伝達特性は、既知のホイートストンブリッジ(従来技術参照)のものに対応する。AMR角度センサ素子100の伝達関数は、したがって、
【数6】

を示す。
【0043】
わずかに低い振幅を与えられると、フラットな及び/又は2次元AMR構造100に対する製造上の影響のため、線形の個々の抵抗器からなる完全なブリッジの場合より大幅に低いオフセットV0が生成される。線形抵抗器(従来技術、即ち図7A及び図7Bを参照)の代わりのフラットなAMR素子100の使用は、同程度の有用な振幅を持ちながら負所望な電気的オフセットをこのように減少する。結果として、AMR角度センサを製造する場合の効率は増大されることができ、後の信号処理の間の複雑さが減少されることができる。
【0044】
新しい2次元AMR素子100の他の利点は、好適な磁気方位を持たずに製造されることができることである。従来のホイートストンブリッジにおいて、このような好適な方位は、最高0.3度になる振幅を持つ振動する角度誤差を引き起こす。
【0045】
更に、AMR素子100の記載されたフラットな設計のため、前記電気的オフセットの温度係数も低い。
【0046】
図3は、好適な磁気方位を持たないフラットなAMR素子100を示す。フラットなAMR素子100は、円形パーマロイ(AMR)層から形成され、対応する電極、特に供給端子10と、正のタッピング電極20と、基準端子12と、負のタッピング電極22とは、それぞれの場合に反時計回りの方向に90度だけ互いに対してオフセットされて前記円形パーマロイ(AMR)層に配置される。
【0047】
図3に示されるAMR素子100の出力信号の振幅は、11.5mV/Vであり、したがって、図1に示されるAMR素子100の出力信号の振幅よりおよそ5分の1高い(図2参照)。
【0048】
本発明は、
複数のAMRセンサ素子100,110を組み合わせる(図4参照)可能性、又は
差分電圧をタップするために2より多い電極20、22、24、26を使用する(図6参照)可能性、
をも含む。
【0049】
図4は、角度センサ200の一実施例を有する非接触式角度測定システム400の一実施例を示す。角度センサ200は、第1のAMRセンサ素子100及び第2のAMRセンサ素子110を有し、これら2つのセンサ素子100及び110は、互いに対して特定の角度、特に45度だけ回転される。
【0050】
このような構成において、AMRセンサ素子100及び110の出力信号210、212及び214、216は、AMRセンサ素子100の出力信号210及び212がsin2αに比例し、45度だけ回転されたAMRセンサ素子110の出力信号214及び216がcos2αに比例するので、互いに対して90度だけ位相オフセットを示す。
【0051】
センサ素子100及び110のこのような構成は、したがって、180度の角度範囲を検出することを可能にする(図5参照)。図5において、外部磁場Hextの角度αが横座標上にプロットされ、AMR素子100及び110の規格化された差分出力電圧Voutが縦座標上にプロットされる。
【0052】
角度測定システム400は、角度センサ200に加えて、センサ素子100及び110の出力信号210、212及び214、216を評価する集積回路300を有し、この回路構成300は、
第1のセンサ素子100の出力信号210、212及び入力バッファ310の第1の出力信号312を供給されることができる第1のアナログ/デジタル変換器320と、
第2のセンサ素子110の出力信号214、216及び入力バッファ310の第2の出力信号314を供給されることができる第2のアナログ/デジタル変換器330と、
を有する。
【0053】
アナログ/デジタル変換器320及び330の第1の出力信号322及び332から角度α1又はα2を決定するために、集積回路300は、更に、2つのアナログ/デジタル変換器320及び330の下流に配置された算術ユニット340を有する。
【0054】
更に、出力されるべき曲線の特性を適合するために、アナログ/デジタル変換器320及び330の第2の出力信号324及び334並びに算術ユニット340の出力信号342を供給されることができる適合ユニット350が備えられ、前記適合ユニットは、算術ユニット340とデジタル/アナログ変換器360との間に接続される。
【0055】
集積回路300に更に割り当てられたこのデジタル/アナログ変換器360は、適合ユニット350の出力信号352を供給されることができる。集積回路300の出力信号372をバッファ記憶するために、デジタル/アナログ変換器360の出力信号362を供給されることができる出力バッファ370が備えられる。
【0056】
最後に、集積回路構成300は、
振動子/クロック生成器ユニット380と、
決定された値を試験及び/又は比較するように備えられた試験/トリム(trim)ユニット382と、
リセットユニット384と、
を有する。
【0057】
図6は、磁気抵抗センサ素子100の第3の実施例を示す。このフラットなAMR素子100は、円形に設計され、異なる差分電圧Vout1及びVout2をそれぞれタップする合計4つのタッピング電極20、22及び24、26を有する。
【0058】
第1の正のタッピング電極20及び第2の負のタッピング電極22は、互いに反対に配置され、それぞれの場合に、
タッピング電極20及び22に割り当てられた供給端子10に対して、及び
タッピング電極20及び22に割り当てられた基準端子12に対して、
90度だけオフセットされる。第1の供給電圧VCC1は、供給電極10及び基準端子12を用いてグラウンド電位GND1に対してAMR素子100に印加される。
【0059】
第3の正のタッピング電極24及び第4の負のタッピング電極26は、同様に互いに反対に配置され、それぞれの場合に、
タッピング電極24及び26に割り当てられた供給端子14に対して、及び
タッピング電極24及び26に割り当てられた基準端子16に対して、
90度だけオフセットされる。第2の供給電圧VCC2は、供給電極14及び基準端子16を用いてグラウンド電位GND2に対してAMR素子100に印加される。
【0060】
第3のタッピング電極24は、したがって、供給電圧VCC2又は電流i2に対する第1のタッピング電極であり、第4のタッピング電極26は、したがって、供給電圧VCC2又は電流i2に対する第2のタッピング電極である。
【0061】
電極14、16及び24、26は、それぞれの場合に、電極10、12及び20、22に対して時計回りの方向に45度だけオフセットされて配置される。図6に示される第3の実施例は、したがって、図4に示された角度センサ200の一体化された実施例にほぼ対応する。(図4に示される角度センサ200において、電極14、16及び24、26は第2のセンサ素子110に割り当てられ、第2のセンサ素子110は、電極10、12及び20、22を有する第1のセンサ素子100に対して時計回り方向に45度だけ回転される。)
【0062】
図6に示されたフラットなセンサ素子100の前記電極の記載された構成のため、図4に示された角度センサ200の場合と同様な技術的効果が達成され、換言すると、タッピング電極20、22及び24、26によりタップされた出力信号Vout1及びVout2は、図5と同等な位相シフトを示す。
【0063】
上述の発明と従来技術との間の差を示すために、いわゆるダブルブリッジの形の既知の角度センサが図7Aに示される。この角度センサは、互いに対して45度だけオフセットされた2つのホイートストンブリッジを有し、
第1のホイートストンブリッジの抵抗器R1a、R1b、R1c及びR1dと、
第2のホイートストンブリッジの抵抗器R2a、R2b、R2c及びR2dとが関連付けられている。
【0064】
このようなホイートストンブリッジの回路構成は、図7Bに示される。4つの抵抗器R1a、R1b、R1c及びR1dの他に、前記ホイートストンブリッジは、
供給電圧VCCを印加する供給端子と、
接地された基準端子GNDと、
負の出力信号V−又は負の差分電圧−Voutをタップするタッピング電極と、
正の出力信号V+又は正の差分電圧+Voutをタップするタッピング電極と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による磁気抵抗センサ素子の第1の実施例を概略的に示す。
【図2】図1のセンサ素子の規格化された出力信号に対してプロットされた、供給電流と外部磁場との間の角度を概略的に示す。
【図3】本発明による磁気抵抗センサ素子の第2の実施例を概略的に示す。
【図4】図1又は図3の2つのセンサ素子を有する本発明による角度センサの一実施例を有し、前記2つのセンサ素子が互いに対して45度の角度だけオフセットされて配置された、本発明による非接触式角度測定システムの一実施例を概略的に示す。
【図5】図4のセンサ素子の規格化された出力信号に対してそれぞれの場合にプロットされた決定されるべき角度α1及びα2を概略的に示す。
【図6】本発明による磁気抵抗センサ素子の第3の実施例を概略的に示す。
【図7A】いわゆるダブルブリッジの形の従来技術による角度センサを概略的に示す。
【図7B】図7Aの角度センサに対する従来技術によるホイートストンブリッジの回路構成を概略的に示す。
【符号の説明】
【0066】
100:第1の磁気抵抗センサ素子、特に第1の異方性磁気抵抗センサ素子
110:第2の磁気抵抗センサ素子、特に第2の異方性磁気抵抗センサ素子
10:供給端子、特に第1のセンサ素子100の第1の供給端子
12:(供給端子10に対する)基準端子、特に、例えばグラウンド電位GND、特に第1のグラウンド電位GND1における前記第1のセンサ素子100の(第1の供給端子10に対する)第1の基準端子
14:第2のセンサ素子110の供給端子(図4、第2の実施例を参照)又は第1のセンサ素子100の第2の供給端子(図6、第3の実施例を参照)
16:例えばグラウンド電位GNDにおける、第2のセンサ素子110の(供給端子14に対する)基準端子(図4、第2の実施例を参照)、又は例えばグラウンド電位GND2における、第1のセンサ素子100の(第2の供給端子14に対する)第2の基準端子(図6、第3の実施例を参照)
20:第1のセンサ素子100の第1の、特に正の、タッピング電極
22:第1のセンサ素子100の第2の、特に負の、(第1のタッピング電極20に対する)タッピング電極
24:第2のセンサ素子110の第1の、特に正の、タッピング電極(図4、第2の実施例を参照)、又は第1のセンサ素子100の第3の、特に正の、タッピング電極(図6、第3の実施例を参照)
26:第2のセンサ素子110の第2の、特に負の、(第1のタッピング電極24に対する)タッピング電極(図4、第2の実施例を参照)、又は第1のセンサ素子100の第4の、特に負の、タッピング電極(図6、第3の実施例を参照)
200:角度センサ
210:角度センサ200の第1の出力信号、特に第1のセンサ素子100の正の出力信号
212:角度センサ200の第2の出力信号、特に第1のセンサ素子100の負の出力信号
214:角度センサ200の第3の出力信号、特に第2のセンサ素子110の正の出力信号
216:角度センサ200の第4の出力信号、特に第2のセンサ素子110の負の出力信号
300:出力信号210、212、214、216を評価する回路構成、特に集積回路
310:入力バッファ
312:入力バッファ310の第1の出力信号
314:入力バッファ310の第2の出力信号
320:第1のアナログ/デジタル変換器
322:第1のアナログ/デジタル変換器320の第1の出力信号
324:第1のアナログ/デジタル変換器320の第2の出力信号
330:第2のアナログ/デジタル変換器
332:第2のアナログ/デジタル変換器330の第1の出力信号
334:第2のアナログ/デジタル変換器330の第2の出力信号
340:算術ユニット
342:算術ユニット340の出力信号
350:適合ユニット
352:適合ユニット350の出力信号
360:デジタル/アナログ変換器
362:デジタル/アナログ変換器360の出力信号
370:出力バッファ
372:角度測定システム400の出力信号、特に回路構成300の出力信号、特定的には出力バッファ370の出力信号
380:振動子/クロック生成器ユニット
382:試験/トリムユニット
384:リセットユニット
400:非接触式角度測定システム
α:供給電圧VCCの降下又は供給電流iの流れの方向Dと結果として生じる磁場Hresの方向との間の角度
α1:第1の供給電圧VCC1の降下又は第1の電流i1の流れの方向D1と結果として生じる磁場Hresの方向との間の角度
α2:第2の供給電圧VCC2の降下又は第2の電流i2の流れの方向D2と結果として生じる磁場Hresの方向との間の角度
D:供給電圧VCCの降下、又は供給電流iの流れの方向
D1:第1の供給電圧VCC1の降下又は第1の供給電流の流れの方向
D2:第2の供給電圧VCC2の降下又は第2の供給電流の流れの方向
GND:基準電位、特にグラウンド電位
GND1:第1の基準電位、特に第1のグラウンド電位
GND2:第2の基準電位、特に第2のグラウンド電位
0:固有磁化、特に固有磁場
ext:外部磁場
res:結果として生じる内部磁場
i:供給電流
i1:第1の供給電流
i2:第2の供給電流
VCC=VCC:特にグラウンド電位GNDに対する、供給電圧
VCC1:特にグラウンド電位GND1に対する、第1の供給電圧
VCC2:特にグラウンド電位GND2に対する、第2の供給電圧
out:電圧差又は差分電圧
out1:第1の電圧差又は第1の差分電圧
out2:第2の電圧差又は第2の差分電圧
V+:特に第1のタッピング電極20においてタップされるべき正の差分電圧Vout
V+1:特に第1のタッピング電極20においてタップされるべき正の差分電圧Vout1
V−1:特に第2のタッピング電極22においてタップされるべき負の差分電圧Vout1
V+2:特に第1のタッピング電極24(図4、第2の実施例を参照)において又は第3のタッピング電極24(図6、第3の実施例を参照)においてタップされるべき正の差分電圧Vout2
V−2:特に第2のタッピング電極26(図4、第2の実施例を参照)において又は第4のタッピング電極26(図6、第3の実施例を参照)においてタップされるべき負の差分電圧Vout2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの供給端子を用いて、特に少なくとも第1の供給端子を用いて、
少なくとも1つの基準端子を用いて、特に、例えばグラウンド電位における、少なくとも第2の供給端子を用いて、
少なくとも1つの供給電圧及び少なくとも1つの供給電流をそれぞれ供給されることができる磁気抵抗センサ素子であって、
前記供給電圧の降下又は前記供給電流の流れの方向と、
結果として生じる内部磁場の方向との間の、
角度の関数としてセットされる差分電圧が、
少なくとも第1の、特に正の、タッピング電極と、少なくとも第2の、特に負の、タッピング電極との間でタップされることができ、
前記結果として生じる内部磁場の方向が、固有磁化及び少なくとも1つの外部磁場を重ねることにより与えられる、磁気抵抗センサ素子において、
前記磁気抵抗センサ素子がフラットになるように設計され、特に前記供給電圧の降下が連続的であることを特徴とする、磁気抵抗センサ素子。
【請求項2】
前記結果として生じる内部磁化が、前記外部磁場に本質的に平行に向けられることを特徴とする、請求項1に記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記差分電圧の勾配の方向が、前記供給電圧の降下又は前記供給電流の流れの方向に本質的に垂直に向けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセンサ素子。
【請求項4】
前記センサ素子が、少なくとも部分的に少なくとも1つの強磁性合金、例えばパーマロイから形成されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のセンサ素子。
【請求項5】
前記センサ素子が、
4つ以上のポールを有するように設計され、及び/又は
本質的に長方形に又は本質的に円形に設計され、及び/又は
好適な磁気方位を持たない、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のセンサ素子。
【請求項6】
磁場強度、特に磁場強度の時間的勾配を測定する角度センサにおいて、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのセンサ素子を特徴とする角度センサ。
【請求項7】
第1の供給電圧の降下又は第1の供給電流の流れの方向が、第2の供給電圧の降下又は第2の供給電流の流れの方向に対して、所定の角度、例えば約45度だけ回転又はオフセットされることを特徴とする、請求項6に記載の角度センサ。
【請求項8】
前記第1の供給電圧又は前記第1の供給電流に割り当てられた第1のセンサ素子と、
前記第2の供給電圧又は前記第2の供給電流に割り当てられた第2のセンサ素子と、
の組み合わせを特徴とする、請求項7に記載の角度センサ。
【請求項9】
前記第1の供給電圧又は前記第1の供給電流及び前記第2の供給電圧又は前記第2の供給電流が、同一のセンサ素子に割り当てられることを特徴とする、請求項7に記載の角度センサ。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの角度センサと、
前記角度センサの少なくとも1つの出力信号を供給されることができ、前記出力信号を評価するために備えられる少なくとも1つの回路構成、特に少なくとも1つの集積回路と、
を特徴とする、非接触式角度測定システム。
【請求項11】
前記回路構成が、
特に前記第1のセンサ素子の少なくとも1つの、特に第1の、出力信号、及び
少なくとも1つの入力バッファの少なくとも第1の出力信号、
を供給されることができる少なくとも第1のアナログ/デジタル変換器と、
前記第2のセンサ素子の少なくとも1つの出力信号、又は特に前記第1のセンサ素子の少なくとも1つの、特に第2の、出力信号、及び
前記入力バッファの少なくとも第2の出力信号、
を供給されることができる少なくとも1つの他のアナログ/デジタル変換器と、
前記第1のアナログ/デジタル変換器の少なくとも第1の出力信号、及び
前記他のアナログ/デジタル変換器の少なくとも第1の出力信号、
を供給されることができる少なくとも1つの算術ユニットであって、
少なくとも1つのアルゴリズムを用いて、例えばCORDICアルゴリズムを用いて、前記アナログ/デジタル変換器の前記第1の出力信号から、少なくとも1つの値、特に少なくとも1つの角度、を決定するために備えられた、当該算術ユニットと、
前記アナログ/デジタル変換器の第2の出力信号及び前記算術ユニットの出力信号を供給されることができ、特に出力されるべき曲線の特性を適合するために備えられた、少なくとも1つの適合ユニットと、
前記適合ユニットの出力信号を供給されることができる少なくとも1つのデジタル/アナログ変換器と、
前記デジタル/アナログ変換器の出力信号を供給されることができ、特に前記出力信号をバッファ記憶するために備えられた、少なくとも1つの出力バッファ、及び/又は
少なくとも1つの振動子/クロック生成器ユニット、及び/又は
特に前記決定された値を試験及び/又は比較するために備えられた、少なくとも1つの試験/トリムユニット、及び/又は
少なくとも1つのリセットユニットと、
を有することを特徴とする、請求項10に記載の角度測定システム。
【請求項12】
少なくとも1つのクランク軸角度を測定する場合に少なくとも1つの基準マークを検出するための、
金属物体を検出するための、
回転速度及び/若しくは電流を測定するための、
弱い磁場を検出するための、例えば少なくとも1つの駆動部、少なくとも1つの金属棒、少なくとも1つのカム、少なくとも1つの輪、若しくは少なくとも1つの歯車のような車若しくは機械の能動部品の小さな移動及び/若しくは変化を検出するための、
トラフィック移動を検出及び/若しくは制御するための、
例えば少なくとも1つのコンパスを使用する、ナビゲーション目的の、又は
非接触式角度測定のための、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのセンサ素子及び/又は請求項6ないし9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの角度センサ及び/又は請求項10又は11に記載の少なくとも1つの角度測定システムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2007−537437(P2007−537437A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512647(P2007−512647)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051441
【国際公開番号】WO2005/111546
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】