説明

ソレノイドポンプ

【課題】組付性を向上することができるソレノイドポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ組立体20は、圧力室120の容積を変更するピストン14と、戻しばね15と、圧力室120に対する作動液の流入流出を制御する吸入弁30および吐出弁40を有する弁組立体20と、を備え、ポンプ組立体20は、ガイドパイプ12を基準にして、ポンプハウジング11、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20を、全て同一方向から組み付け可能に構成されている。ポンプハウジング11の内周部は、ガイドパイプ12の配置される側から反対側へ向けて段付き状に拡径しており、ピストン14を収容する小径部111と、戻しばね15を収容する中径部112と、弁組立体20を収容する大径部113と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイドポンプとしては、自動二輪車等の車両に搭載可能なブレーキ液圧制御装置に適用されるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1に記載されたソレノイドポンプは、固定コアと、この固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、電磁力で可動コアを固定コア側に移動させるコイルと、を有している。このソレノイドポンプでは、固定コアに連結されるポンプハウジング内にポンプ室を設けるとともに、このポンプ室内に、可動コアの移動により摺動されるピストン(プランジャ)を配置し、このピストンの一端に着座するように弁体を配置している。ピストンは戻しばねで可動コア側に付勢されている。
【0003】
また、特許文献2に記載されたソレノイドポンプは、固定コア内に、ピストン(プランジャ)が摺動する圧力室が設けられており、この圧力室に対して連通するように、吸入弁および吐出弁が配置された構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−45932号公報
【特許文献2】特開2008−260522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、ソレノイドポンプは、複数の部品から構成されるものであるため、作業効率よく部品を組み付けることが要望されている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載のソレノイドポンプでは、例えば、ポンプハウジングに対して部品を組み付ける場合に、複数方向から部品を組み付ける必要がある。このため、組み付け作業が煩雑で組付性に劣るという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、組付性を向上することができるソレノイドポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために創案された本発明は、ポンプ組立体が、固定コアと、前記固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、少なくとも一部が前記固定コアになる円筒状のポンプハウジングと、前記ポンプハウジングに固着されて前記可動コアを摺動自在に収容する有底のパイプ部材と、前記ポンプハウジング内において前記可動コアの移動に応じて摺動し、前記ポンプハウジング内に形成された圧力室の容積を変更するピストンと、前記ピストンを前記可動コア側に付勢する戻しばねと、前記圧力室に対する作動液の流入流出を制御する吸入弁および吐出弁を備えた弁組立体と、を備え、このポンプ組立体に、電磁力で前記可動コアを前記固定コア側に移動させるコイルが装着されてなるソレノイドポンプであって、前記ポンプ組立体は、前記パイプ部材を基準にして、前記ポンプハウジング、前記ピストン、前記戻しばねおよび前記弁組立体を、全て同一方向から組み付け可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
かかるソレノイドポンプによると、パイプ部材を基準にして同一方向から、ポンプハウジング、ピストン、戻しばねおよび弁組立体を全て組み付けることができるので、組付工程が単純化されて組立性が向上する。また、このことは、製造コストの低減に寄与する。
組付時には、例えば、ポンプハウジングに、ピストン、戻しばねおよび弁組立体を同一方向から順に組み付けてこれらを半完成品としておいてから、これをパイプ部材に同一方向から組み付けてポンプ組立体とする組付手順を採ることができる。また、パイプ部材に対してポンプハウジングを組み付けておいてから、ポンプハウジングにピストン、戻しばね、弁組立体を順に同一方向から組み付けてポンプ組立体とする組み付け手順を採ることもできる。したがって、組み付けの自由度を高めつつ、組付性を向上することのできるソレノイドポンプが得られる。
【0010】
また、本発明は、前記ポンプ組立体が、前記ポンプハウジングと前記ピストンとの間をシールする環状のシール部材を備え、前記シール部材は、前記パイプ部材を基準にして、前記ポンプハウジング、前記ピストン、前記戻しばねおよび前記弁組立体を組み付ける方向と同一方向から組み付け可能に構成されるのがよい。
【0011】
かかるソレノイドポンプによると、シール部材により、作動液がポンプハウジングとピストンとの間を通じて可動コア側に流出することがないので、可動コアが作動液に浸されない構成とすることができる。これによって、可動コアが作動する際に作動液による抵抗が発生することがなく、可動コアの良好な移動を実現することができる。可動コアの良好な移動は、ピストンの摺動性の向上に寄与し、ソレノイドポンプの作動応答性の向上に寄与する。これによって、作動液の吸入および吐出を円滑に行うことができるソレノイドポンプが得られる。
【0012】
また、シール部材は、パイプ部材を基準にして、ポンプハウジング、ピストン、戻しばねおよび弁組立体を組み付ける方向と同一方向から組み付けることができるので、パイプ部材を基準にして同一方向から、全ての部材を組み付けることができ、組付工程が単純化されて組立性が向上する。また、このことは、製造コストの低減に寄与する。
【0013】
また、本発明は、固定コアと、前記固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、少なくとも一部が前記固定コアになる円筒状のポンプハウジングと、前記ポンプハウジングに固着されて前記可動コアを摺動自在に収容する有底のパイプ部材と、前記ポンプハウジング内において、前記可動コアの移動に応じて摺動し、前記ポンプハウジング内に形成された圧力室の容積を変更するピストンと、前記ピストンを前記可動コア側に付勢する戻しばねと、前記圧力室に対する作動液の流入流出を制御する吸入弁および吐出弁を備えた弁組立体と、を備えるポンプ組立体に、電磁力で前記可動コアを前記固定コア側に移動させるコイルが装着されてなるソレノイドポンプであって、前記ポンプハウジングの内周部は、前記パイプ部材の配置される側から反対側へ向けて段付き状に拡径しており、前記ピストンを収容する小径部と、前記戻しばねを収容する中径部と、前記弁組立体を収容する大径部と、を有していることを特徴とする。
【0014】
かかるソレノイドポンプによると、ポンプハウジングの内周部には、パイプ部材の配置される側から順に、ピストンを収容する小径部と、戻しばねを収容する中径部と、弁組立体を収容する大径部と、が形成されているので、大径部側(パイプ部材の配置される側と反対側)から小径部側へ向けて、小径の部品から順に組み付けることができる。これにより、ピストン、戻しばね、弁組立体を全て同一方向からポンプハウジングに組み付けることができ、組付工程が単純化されて組立性が向上する。また、このことは、製造コストの低減に寄与する。
【0015】
また、前記ポンプハウジングは、前記小径部が形成される側の外周部が、前記パイプ部材の開口部に挿入されて固着される構成とするのがよい。
【0016】
かかるソレノイドポンプによると、パイプ部材にポンプハウジングを組み付ける方向と、ポンプハウジングにピストン、戻しばね、弁組立体を組み付ける方向とが同一になるため、組付性が向上する。
組付時には、例えば、ポンプハウジングに、ピストン、戻しばねおよび弁組立体を順に組み付けてこれらを半完成品としておいてから、これをパイプ部材に同一方向から組み付けてポンプ組立体とする組付手順を採ることができる。また、パイプ部材に対してポンプハウジングを組み付けておいてから、このポンプハウジングにピストン、戻しばね、弁組立体を順に同一方向から組み付けてポンプ組立体とする組み付け手順を採ることもできる。したがって、組み付けの自由度を高めつつ、組付性を向上することのできるソレノイドポンプが得られる。
【0017】
また、本発明は、前記戻しばねは、前記ピストンに設けられた受部と、この受部に対向する前記弁組立体の端部と、の間に配置されている構成とするのがよい。
【0018】
かかるソレノイドポンプによれば、戻しばねがピストンの受部と弁組立体の端面との間に配置される構成であるので、組付時には、ピストンと弁組立体との間に戻しばねを介在させればよく、戻しばねをポンプハウジングに対して組み付けるときのような手間がかからない。したがって、組み付けが容易であり、組付性が向上する。
【0019】
また、本発明は、前記弁組立体は、中空円筒状のシリンダ部材を備え、前記シリンダ部材の内周部に、前記吸入弁または前記吐出弁の一方が設けられているとともに、前記シリンダ部材の外周部に、他方が設けられている構成とするのがよい。
【0020】
かかるソレノイドポンプによれば、吸入弁と吐出弁とが中空円筒状のシリンダ部材に設けられてなる弁組立体を、一つの組付部品としてポンプハウジングに組み付けることが可能であるので、組付性が向上する。
【0021】
また、本発明は、前記シリンダ部材の外周部に設けられる弁が、カップシールで構成されているのがよい。
【0022】
かかるソレノイドポンプによれば、シリンダ部材の外周に設けられる弁は、カップシールであるので、簡易な構成を採用しながら小型化を達成することのできるソレノイドポンプが得られる。
【0023】
また、本発明は、前記ポンプハウジングと前記ピストンとの間をシールする環状のシール部材が前記ピストンに嵌められている構成とするのがよい。
【0024】
このソレノイドポンプによれば、シール部材により、作動液がポンプハウジングとピストンとの間を通じて可動コア側に流出することがないので、可動コアが作動液に浸されない構成とすることができる。これによって、可動コアが作動する際に作動液による抵抗が発生することがなく、可動コアの良好な移動を実現することができる。可動コアの良好な移動は、ピストンの摺動性の向上に寄与し、ソレノイドポンプの作動応答性の向上に寄与する。これによって、作動液の吸入および吐出を円滑に行うことができるソレノイドポンプが得られる。
【0025】
また、本発明は、前記パイプ部材に、外気連通孔が形成されている構成とするのがよい。
【0026】
このソレノイドポンプによれば、パイプ部材に形成された外気連通孔によって、パイプ部材内の空間が外気に連通することとなり、可動コアの好適な移動を実現することができる。これによって、作動液の吸入および吐出を円滑に行うことができるソレノイドポンプが得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、組付性を向上することができるソレノイドポンプが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係るソレノイドポンプを示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係るソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【図3】第2実施形態に係るソレノイドポンプを示す断面図である。
【図4】第2実施形態に係るソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【図5】第3実施形態に係るソレノイドポンプを示す断面図である。
【図6】第3実施形態に係るソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【図7】第4実施形態に係るソレノイドポンプを示す断面図である。
【図8】第4実施形態に係るソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、ソレノイドポンプ10(10A等)を構成するポンプハウジング11の挿入部11A(11A’)が配置される側を「一端側」、ガイドパイプの導入孔12cが配置される側を「他端側」と称して説明する。また、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0030】
(第1実施形態)
図1、図2に示すように、ソレノイドポンプ10は、自動車等の車両に搭載可能なブレーキ液圧制御装置等の各種部品が装着される基体Kに取り付けられるものであり、後記する部品要素からなるポンプ組立体に、コイル16が装着されて構成されている。
【0031】
ポンプ組立体は、少なくとも一部が固定コアになるポンプハウジング11と、このポンプハウジング11の他端側に固定されたガイドパイプ12と、ガイドパイプ12内に進退動自在に配置された可動コア13と、ポンプハウジング11内に形成された圧力室120に向けて突出するピストン14と、ピストン14を可動コア13側へ向けて付勢する戻しばね15と、吸入弁30および吐出弁40を有する弁組立体20と、を備えている。
【0032】
ポンプハウジング11は、鉄や鉄合金等の磁性材料からなり、円筒状を呈している。ポンプハウジング11は、挿入部11Aと胴部11Bとを備え、その内側に形成される貫通孔110の内周部には、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20が収容されるようになっている。これらの詳細は後記する。
挿入部11Aの外径は、胴部11Bの外径よりも大径とされており、基体Kに形成された取付穴K1にシール部材11a、11aを介して液密に挿入される。そして、挿入部11Aは、取付穴K1の開口側からリング状の抜け止め部材11bで脱落不能に固定される。
なお、挿入部11Aは、取付穴K1に対して圧入やカシメ等で固定してもよい。
【0033】
本実施形態では、取付穴K1の底壁に吸入液圧路G1が開口形成されており、この吸入液圧路G1に向けて開口するように、弁組立体20の吸入口121が配置されている。
また、取付穴K1の側壁に吐出液圧路N1が開口形成されており、この吐出液圧路N1に対向する挿入部11Aの周壁に、周壁凹部115が形成されている。この周壁凹部115は、連通孔116を通じて、弁組立体20の吐出口122に通じている。
【0034】
胴部11Bは、挿入部11Aよりも小径の外径とされており、その外周部は、ガイドパイプ12の開口部12a(図2参照)に挿入されて固着される大きさとされている。つまり、胴部11Bの他端側の外周部には、これを覆う状態にガイドパイプ12が固着される。
【0035】
ポンプハウジング11の内空を形成する貫通孔110は、その内周部が、他端側から一端側に順次拡径する段付き円筒状に形成されており、小径部111と、この小径部111よりも内径の大きくされた中径部112と、この中径部112よりも内径の大きくされた大径部113と、を備えている。つまり、ポンプハウジング11は、このような段付き円筒状の貫通孔110を備えているので、後記するように、一端側(大径部113側)から他端側(小径部111側)へ向けて、ピストン14、戻しばね15、弁組立体20が、同一方向から順に組み付け可能となっている。
小径部111には、シール部材としてのOリング111aを介してピストン14の他端側が軸方向に摺動自在に装着される。
【0036】
ピストン14は、ポンプハウジング11を貫通する貫通孔110に挿通され、可動コア13に押圧されてポンプハウジング11内に形成された圧力室120に向けて突出するように構成されている。ピストン14には、周方向に突出する鍔部14bが形成されている。ピストン14は、この鍔部14bよりも他端側が小径部111に摺動自在に挿入されている。
また、ピストン14は、鍔部14bおよび鍔部14bの一端側となる部位が、中径部112内に位置しており、ピストン14の摺動によって圧力室120に突出するようになっている。
鍔部14bは、中径部112の内周面に対して摺動可能であり、ピストン14の摺動をガイドするようになっている。
【0037】
ここで、Oリング111aは、中径部112の他端部(小径部111の一端側方)に配置されており、一端側から装着される金属製のリング部材111bで移動不能に保持されている。
なお、Oリング111aおよびリング部材111bについても一端側から他端側へ向けて組み付ける構成となっているので、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20とともに同一方向から組み付け可能となっている。
本実施形態では、このOリング111aを境にして、Oリング111aよりも一端側となる領域が作動液としてのブレーキ液の存在する領域となっているとともに、他端側となる領域が、大気に連通する領域となっている。
【0038】
ピストン14の他端部は、胴部11Bの他端面11cよりも可動コア13側へ突出しており、ピストン14の他端面142は、可動コア13の一端面13aに当接している。したがって、ピストン14は、可動コア13によって直接的に押動される。これによって、ピストン14の応答性の向上が図られている。
【0039】
また、ピストン14の一端側には、戻しばね15が装着されるようになっており、前記した鍔部14bが戻しばね15の他端部を受ける座(受部)として機能する。
【0040】
また、ピストン14の一端面には、圧力室120に連通する通路14aが開口形成されている。この通路14aは、ピストン14内を軸方向に沿って他端側へ延設され、鍔部14bよりも他端側の部位で径方向に分岐されて、ピストン14の外周面に開口している。これによって、中径部112の内周面とピストン14の外周面とで囲われる空間部S1と、圧力室120との間が、通路14aによって連通することとなる。つまり、中径部112に摺接する鍔部14bを跨ぐ状態に、圧力室120と空間部S1との間でブレーキ液が通流し、空間部S1には、ピストン14の摺動に伴ってブレーキ液が流出入する。これによって、ピストン14(鍔部14b)のスムーズな摺動が実現されている。
また、ブレーキ液を充填する際に、通路14aを通じて空間部S1にブレーキ液が到達し易くなるので、空間部S1のエア抜き性を向上させることができる。
【0041】
本実施形態のピストン14は、一端側と他端側の直径を異ならせており、他端側の直径L2が一端側の直径L1よりも小さくなるように形成してある(L1>L2)。これによって、組付時には、他端側のみが小径部111に挿入可能であり、誤組防止が図られている。
【0042】
このようなピストン14の周囲には、貫通孔110の一部(中径部112の略全体の内面と大径部113の一部の内面)を利用して圧力室120が形成されている。圧力室120は、ピストン14を挟んで可動コア13が配置される側(他端側)と反対側(一端側)に配置されており、ピストン14と、弁組立体20とで、貫通孔110の一部が仕切られる(囲われる)ことにより形成されている。
【0043】
このような圧力室120には、戻しばね15が配置されている。
戻しばね15は、ピストン14の鍔部14bと弁組立体20のシリンダ部材21との間に圧縮状態で介設されており、ピストン14を可動コア13側に付勢している。戻しばね15は、中径部112の内径よりも小さい外径を備えたコイルばねであり、組付時には、ポンプハウジング11の一端側の開口から中径部112内に挿入され、これよりも先に組み付けられたピストン14に装着されるようになっている。
【0044】
ここで、戻しばね15の戻し力は、貫通孔110(小径部111、中径部112)とピストン14との間に生じる摺動抵抗、ピストン14とOリング111aとの間に生じる摺動抵抗、およびガイドパイプ12と可動コア13との間に生じる摺動抵抗の3つを加算したものよりも大きくなるように設定されている。これによって、後記するように、コイル16が消磁した際には、戻しばね15の戻し力によって、ピストン14が圧力室120から離れる側(他端側:可動コア13側)へ摺動する。
なお、前記したようにピストン14が可動コア13に対して直接接触する構造であるので、例えば、ピストン14と可動コア13との間に伝達部材が介在されているような構造に比べて、伝達部材に生じる摺動抵抗を考慮する必要がなく、その分、戻し力の小さい戻しばね15を用いることができる。これによって、コイル16を、電磁力の小さな小型なものにすることができ、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることが可能である。
なお、本実施形態では、戻しばね15をコイルばねとしたが、これに限られることなく、板ばね等の付勢力を有する部材を用いて構成してもよい。
【0045】
大径部113の内面113aには、弁組立体20が組み付けられている。
なお、大径部113は、弁組立体20の吐出弁40に対向する部分の内径が、これよりも一端側となる部分の内径よりも小さくされている。
【0046】
弁組立体20は、シリンダ部材21と、シリンダ部材21の内面に配置された吸入弁30と、シリンダ部材21の外周面に配置された吐出弁40と、を備えている。
シリンダ部材21は、円筒形状を呈しており、貫通孔110の一端開口から挿入されて大径部113の内面113aに嵌め入れられる。シリンダ部材21の軸方向略中央部は、内空へ向けてテーパ状に突出されており、この部分に、吸入弁30の吸入弁体31が着座する弁座22が形成されている。なお、弁座22を境にして、一端側には、吸入口121を形成する第1内周面27が形成され、他端側には、この第1内周面27よりも小径とされて吸入弁30が装着される第2内周面28が形成されている。弁座22は、切削加工やプレス加工等によって形成することができる。
【0047】
シリンダ部材21は、一端側から他端側へ向けて外周面が段状に縮径されており、一端側の大径とされた第1外周部23が大径部113の開口近傍の内面113aにきつく嵌まり合うようになっている。第2外周部24は、第1外周部23よりも小径とされており、大径部113の内面113aとの間に吐出口122をなす空間部の一部を形成している。第3外周部25は、第2外周部24よりもさらに小径とされており、図2に示すように、この第3外周部25と、隣接する第2外周部24の側壁24aと、一端側に隣接するフランジ部26の側壁26aとで、吐出弁40が嵌り込む凹部を形成している。
なお、フランジ部26は、大径部113の内面113aに当接しないようになっており、その周部と内面113aとの間には、ブレーキ液の通路となる連通路(隙間)が形成されている。
【0048】
フランジ部26は、他端側が圧力室120に面しており、その他端側壁には、段部26b(端部)が形成されている。この段部26bは、ピストン14の一端側に装着された戻しばね15の一端部に対向するように形成されており、組付時に弁組立体20を大径部113に組み付けると、戻しばね15の一端部が当接して係止されるように構成されている。
【0049】
吸入弁30は、吸入液圧路G1と圧力室120との間の流路を開閉する一方向弁であり、ブレーキ液を圧力室120に吸入する際にのみ開弁する。吸入弁30は、シリンダ部材21の第2内周面28に配置されている。
吸入弁30は、弁座22に着座する球状の吸入弁体31と、圧力室120側の開口から第2内周面28に取り付けられた断面コ字形状の保持部材32と、吸入弁体31と保持部材32との間に圧縮状態で配置された吸入弁ばね33と、を備えて構成されている。
【0050】
吸入弁体31は、吸入弁ばね33の復元力によって、弁座22に着座するように付勢されている。そして、吸入弁体31は、ピストン14が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に摺動(復動作)して圧力室120が減圧されると開弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入するのを許容する。また、吸入弁体31は、ピストン14が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に摺動(往動作)して圧力室120が増圧されると閉弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入するのを阻止する。
つまり、吸入弁体31は、ピストン14の摺動方向と同方向に移動して開閉するように構成されている。
なお、吸入弁体31は、プレート形状であってもよい。また、吸入弁ばね33は、コイルばねを例示したが、板ばね等を用いてもよい。
【0051】
吐出弁40は、圧力室120と吐出液圧路N1との間の流路を開閉する一方向弁であり、圧力室120からブレーキ液を吐出する際にのみ開弁し、ピストン14の軸方向に沿うブレーキ液の流れを許容する。吐出弁40は、吸入弁30の径方向外側周りを囲む位置関係で、シリンダ部材21の第3外周部25を含んで形成される凹部内に配置されており、ピストン14の軸方向に沿うブレーキ液の流れを許容あるいは遮断するように構成されている。したがって、このようなレイアウトを採ることにより、ソレノイドポンプ10の軸線方向の寸法を短縮することが可能である。
【0052】
本実施形態では、吐出弁40としてカップシールを採用している。吐出弁40は、円環状のベース部41と、このベース部41の外周端部から軸方向に延びるリップ部42とを備え、ベース部41からリップ部42にかけて断面略コ字状(図1参照)に形成されている。
【0053】
リップ部42は、ピストン14が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に摺動(往動作)するのに伴って内側に撓み、大径部113の内面113aから離間して、当該内面113aとの間にブレーキ液が通流する間隙(ブレーキ液が圧力室120から吐出液圧路N1に向けて吐出する間隙)を形成する。
また、リップ部42は、ピストン14が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に摺動(復動作)するのに伴って外側に撓み、内面113aに密着してブレーキ液の通流を阻止(シール)するようになっている。
【0054】
なお、リップ部42に対向している部分の大径部113は、これよりも一端側となる部分の内径よりも小さくされているので、内面113aにリップ部42が近接して密着可能となっている。これによって、吐出弁40の機能性が高められている。
【0055】
ガイドパイプ12内に配置される可動コア13は、磁性材料からなり、その一端面13aをピストン14の他端面142に当接させた状態でガイドパイプ12内を軸方向に移動する。すなわち、可動コア13は、コイル16を励磁したときに、ポンプハウジング11に引き寄せられ、戻しばね15の付勢力に抗して一端側に移動する。これにより、ピストン14が一端側に押動され、圧力室120にピストン14が突出して、圧力室120の容積を縮小する。
【0056】
可動コア13の外周部には、可動コア13の軸方向に沿って連通孔13bが形成されている。連通孔13bは、一端側がポンプハウジング11の他端側方に形成される空間部S2に連通しており、また、他端側がガイドパイプ12の底部に形成された空間部12bに連通している。
【0057】
パイプ部材として機能するガイドパイプ12は、有底円筒状を呈しており、その開口部12a(図2参照)には、ポンプハウジング11の胴部11Bが挿入されて嵌合(圧入)され、溶接により固着されている。ガイドパイプ12の底部には、大気を導入する外気連通孔としての導入孔12cが形成されている。したがって、この導入孔12cを通じて、ガイドパイプ12の空間部12bに大気が導入され、この空間部12bから可動コア13の連通孔13bを通じて空間部S2に大気が導入される。これによって、空間部S2内に空気が自由に出入りし、ピストン14のストレスのない軸方向の摺動が確保されている。
【0058】
コイル16は、樹脂製のボビン16aにコイル16bが環装されて構成され、ボビン16aの外側には、磁路を形成するヨーク16cが配置されている。
【0059】
以上のように構成されたソレノイドポンプ10は、図1に示すように、基体Kの取付穴K1に挿入部11Aが挿入されて固定されると、吸入弁30の吸入口121が吸入液圧路G1に連通し、また、吐出弁40の吐出口122が吐出液圧路N1に連通する。
そして、コイル16が励磁され、可動コア13がポンプハウジング11側へ吸引されてピストン14が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に摺動すると、圧力室120が増圧されるのに応じて吐出弁40が開弁し、圧力室120から吐出液圧路N1へブレーキ液が流出する。
【0060】
続いて、コイル16が消磁され、戻しばね15の付勢力によってピストン14が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に摺動すると、圧力室120が減圧されるのに応じて吸入弁30が開弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入する。
すなわち、コイル16の励磁・消磁を切換えることによって、可動コア13が軸方向に連続して往復動作し、それに応じて往復駆動されるピストン14で、ブレーキ液の吸入・吐出が連続して行われることになる。
【0061】
そして、これらの一連の動作において、吸入弁30から吸入されたブレーキ液は、これに隣接する圧力室120に直に導入され、圧力室120に導入されたブレーキ液は、圧力室120に隣接する吐出弁40を通じて吐出される。これにより、ブレーキ液は、ピストン14のOリング111aを境として、一端側のブレーキ液が存在する領域のみを経由して吸入・吐出されることとなる。つまり、ブレーキ液は、Oリング111aより他端側の領域(小径部111における摺動領域)を通らずに圧力室120を経由して吸入・吐出されることとなるので、ブレーキ液を円滑に吐出することができる。
【0062】
また、吸入弁30から圧力室120に直接に、ブレーキ液が吸引され、圧力室120から吐出弁40へ直接に、ブレーキ液が吐出されるので、ブレーキ液の通流性がよく、ブレーキ液の粘性が高まるような比較的温度の低い低温環境下にあっても、ブレーキ液を円滑に吐出することができる。
また、ピストン14の小径化が可能となるとともに、高圧力まで昇圧が可能となる。
【0063】
次に、ソレノイドポンプ10を組み立てる際の各部品の組み付け手順について説明する。
まず、ポンプハウジング11に対して、各部品を組み付ける。ここで、ポンプハウジング11に形成された貫通孔110の内周部には、他端側から一端側へ向けて順次拡径する段付き円筒状の小径部111、中径部112、および大径部113が形成されているので、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20を、ポンプハウジング11の一端開口から貫通孔110内に順に挿入して、これらを小径部111、中径部112および大径部113にそれぞれ組み付けることができる。
【0064】
具体的に、初めに、ポンプハウジング11の一端開口から貫通孔110内にOリング111aを挿入して、これを中径部112の他端部に配置し、次にリング部材111bを中径部112に圧入して装着する。次に貫通孔110内にピストン14を挿入し、一番奥の小径部111に対してピストン14の他端側を挿入して装着する。前記したように、ピストン14は、一端側と他端側の直径が異なっているので、誤った方向で組み付けられることがない。
【0065】
次に、貫通孔110内に戻しばね15を挿入して、中径部112の内空に位置するピストン14の鍔部14bの一端側に、戻しばね15を装着する。
その後、貫通孔110内に予め組み立てておいた弁組立体20を挿入して、大径部113の内面113aに弁組立体20を嵌め入れる。これによって、ポンプハウジング11に、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20が組み付けられてなる半組立品が得られる。
ここで、貫通孔110の大径部113内に弁組立体20を挿入して行くと、弁組立体20の他端側のフランジ部26に形成された段部26bに、戻しばね15の一端部がばね力をもって当接し、弁組立体20のさらなる挿入を行うことによって、段部26bに保持される。これによって、ピストン14と弁組立体20との間に戻しばね15が圧縮された状態で配置される。
このように、組付時には、ポンプハウジング11に対して各部品を一端開口から順に挿入して同一方向から組み付けることができる。
【0066】
次に、ガイドパイプ12の開口部12aから可動コア13を挿入し、ガイドパイプ12内に可動コア13を配置する。その後、ガイドパイプ12の開口部12aに、ポンプハウジング11の胴部11Bの他端側の外周部111cを挿入して嵌合(圧入)し、溶接により固着する。
これにより、ガイドパイプ12を基準にして各部品を同一方向から組み付けて構成されたポンプ組立体が得られる。
【0067】
そして、このようにしてなるポンプ組立体に対してコイル16を装着することで、ソレノイドポンプ10が組み立てられる。
【0068】
なお、ソレノイドポンプ10を基体Kに組み付ける際には、先にポンプ組立体を基体Kの取付穴K1に液密に組み付けておき、後からコイル16をガイドパイプ12に装着する組み付け手順を採ることができる。
【0069】
また、前記した組み付け手順では、ポンプハウジング11に各部品を順に組み付けて半組立品としておいてから、これをガイドパイプ12に対して組み付けることとしたが、これに限られることはなく、次のようにして組み付けてもよい。
すなわち、ガイドパイプ12に対して可動コア13を一端側から挿入し、これに、Oリング111a、リング部材111b、ポンプハウジング11、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20を順に一端側から組み付けるようにしてもよい。
【0070】
この場合には、ガイドパイプ12を基準にして、ポンプ組立体をなす全ての部品を同一方向から順に組み付けることができる。
また、弁組立体20は、シリンダ部材21の第2内周面28に他端側から吸入弁体31および吸入弁ばね33を挿入して、保持部材32を第2内周面28に圧入することで吸入弁30を組み付け、さらに、シリンダ部材21の第3外周部25を含んで形成される凹部内に他端側から吐出弁40を組み付けることで組み立てることができる。
このように、弁組立体20は、予め一部品として扱えるように構成しておくことが可能なので、ソレノイドポンプ10は、ポンプ組立体をなす全ての部品を同一方向から順に組み付けることができる。
なお、弁組立体20はシリンダ部材21に対して先に吐出弁40を組み付けた後、吸入弁体31、吸入弁ばね33を挿入し、保持部材32を圧入して吸入弁30を組み付けてもよい。また、吐出弁40が伸縮性に富んだ材質であれば、吐出弁40は、シリンダ部材21の一端側から組み付けることも可能である。
【0071】
以上説明した本実施形態のソレノイドポンプ10によれば、ガイドパイプ12を基準にして、一端側からガイドパイプ12に部品を全て組み付けることができるので、組付工程が単純化されて組立性が向上する。また、このことは、製造コストの低減に寄与する。
【0072】
また、ポンプハウジング11の内周部には、他端側から順に、ピストン14を収容する小径部111と、戻しばね15を収容する中径部112と、弁組立体20を収容する大径部113と、が形成されているので、大径部113側から(一端側から)小径部111側へ向けて、小径の部品から順に組み付けることができる。つまり、ピストン14、戻しばね15、弁組立体20を全て同一方向からポンプハウジング11に組み付けることができる。したがって、組付工程が単純化されて組付性が向上する。
【0073】
ここで、組付時には、前記したように、ポンプハウジング11に、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20を順に組み付けて半完成品としておいてから、これをガイドパイプ12に同一方向から組み付けてポンプ組立体とする組付手順を採ることができる。また、ガイドパイプ12に対してポンプハウジング11を組み付けておいてから、このポンプハウジング11にピストン14、戻しばね15、弁組立体20を順に同一方向から組み付けてポンプ組立体とする組み付け手順を採ることもできる。したがって、組み付けの自由度を高めつつ、組付性を向上することのできるソレノイドポンプ10が得られる。
【0074】
また、ポンプハウジング11は、小径部111が形成される側の外周部111cが、ガイドパイプ12に挿入されて固着されるので、ガイドパイプ12にポンプハウジング11を組み付ける方向と、ポンプハウジング11にピストン14、戻しばね15、弁組立体20を組み付ける方向とが同一になるため、組付性が向上する。
【0075】
また、ピストン14の他端面142が胴部11Bの他端面11cから可動コア13側に突出して、可動コア13の一端面13aに直接当接する構造であるので、可動コア13の作動をピストン14に伝達するための伝達部材等を排除することができ、部品点数を削減してコストの低減を図ることができる。また、伝達部材等を用いたときに生じる摺動抵抗を考慮する必要がなく、戻し力の小さい戻しばね15を用いることができるので、コイル16を電磁力の小さな小型なものとすることができ、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
【0076】
また、戻しばね15は、ピストン14の一端部と、この一端部に対向する弁組立体20の段部26bとの間に介設されているので、組付時には、ピストン14と弁組立体20との間に戻しばね15を介在させればよく、戻しばね15をポンプハウジング11に対して組み付けるときのような手間が掛からない。したがって、組み付けが容易であり、組付性が向上する。
【0077】
また、シリンダ部材21の内周部に、吸入弁30が設けられているとともに、シリンダ部材21の外周部に、吐出弁40が設けられているので、吸入弁30と吐出弁40とがシリンダ部材21に設けられてなる弁組立体20を一つの部品としてポンプハウジング11に組み付けることが可能となり、組付性が向上する。
【0078】
また、シリンダ部材21の外周部に設けられる吐出弁40は、カップシールであるので、簡易な構成を採用しながら小型化を達成することのできるソレノイドポンプ10が得られる。
【0079】
また、ポンプハウジング11とピストン14との間に介設されたOリング111aにより、ブレーキ液がポンプハウジング11とピストン14との間を通じて可動コア13側に流出することがないので、可動コア13が作動液に浸されない構成とすることができる。これによって、可動コア13が作動する際にブレーキ液による抵抗が発生することがなく、可動コア13の良好な移動を実現することができる。可動コア13の良好な移動は、ピストン14の摺動性の向上に寄与し、ソレノイドポンプ10の作動応答性の向上に寄与する。これによって、ブレーキ液の吸入および吐出を円滑に行うことができるソレノイドポンプ10が得られる。
【0080】
また、ガイドパイプ12に、導入孔12cが形成されているので、ガイドパイプ12内の空間が外気に連通することとなり、可動コア13の好適な移動を実現することができる。これによって、ブレーキ液の吸入および吐出を円滑に行うことができ、昇圧レスポンスが向上する。また、ソレノイドポンプ10におけるブレーキ液の通流径路が短くなるので、その分、エア抜きに必要となる時間も短縮される。
【0081】
また、ソレノイドポンプ10は、吸入口121と吐出口122とが交差(直交)する位置関係に設けられているので、これらが直線となる位置関係に設けられたものに比べて、基体K側における流路取り回しの自由度が高まるようになり、基体Kの小型化も可能となる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明のソレノイドポンプの第2実施形態について説明する。
本実施形態のソレノイドポンプ10Aが前記第1実施形態のものと異なるところは、図3、図4に示すように、弁組立体20Aを構成するシリンダ部材21Aの内周部に吐出弁40Aが配置されているとともに、シリンダ部材21Aの外周部に吸入弁30Aが配置されている点にあり、その他の基本構成に変わりはない。
【0083】
本実施形態では、基体Kの取付穴K1の底壁に吐出液圧路N1が開口形成されており、この吐出液圧路N1に向けて開口するように、弁組立体20Aの吐出口122が配置され、この吐出口122に吐出弁40Aが配置されている。
また、取付穴K1の側壁に吸入液圧路G1が開口形成されており、この吸入液圧路G1に対向する挿入部11Aの周壁凹部115が、連通孔116を通じて、弁組立体20Aの吸入口121に通じている。そして、この吸入口121に通じるシリンダ部材21Aの外周部(第3外周部25)に、吐出弁40Aの径方向外側周りを囲むようにして、吸入弁30Aが配置されている。
【0084】
シリンダ部材21Aは、円筒形状を呈しており、貫通孔110の一端開口から挿入されて大径部113の内面113aに嵌め入れられる。シリンダ部材21Aの他端部は、貫通孔110の内空へ向けてテーパ状に突出されており、この部分に、吐出弁40Aの吐出弁体41Aが着座する弁座22Aが形成されている。なお、弁座22Aを境にして、一端側には吐出口122を形成するとともに吐出弁40Aが装着される段状の第1内周面27が形成され、他端側には、この第1内周面27よりも小径とされて圧力室120に通じる第2内周面28が形成されている。
【0085】
シリンダ部材21Aは、一端側から他端側へ向けて外周面が略段状に縮径されており、一端側の大径とされた第1外周部23が大径部113の開口近傍の内面113aにきつく嵌まり合うようになっている。第2外周部24は、第1外周部23よりも小径とされており、大径部113の内面113aとの間に吸入口121の一部を形成している。第3外周部25は、第2外周部24よりも小径とされており、図4に示すように、この第3外周部25と、これに隣接する第2外周部24の側壁24aと他端側に隣接するフランジ部26の側壁26aとで吸入弁30Aが嵌り込む凹部を形成している。
なお、フランジ部26は、大径部113の内面113a(図3参照)との間にブレーキ液の通路となる隙間を形成して配置されている。
また、大径部113の内面113aは、吸入口121から圧力室120へ向けて複数段状に縮径されている。これによって、吸入弁30Aから吸入されたブレーキ液が圧力室120に好適に導かれるようになっている。
【0086】
本実施形態では、吸入弁30Aとして、前記第1実施形態で説明したものと同様のベース部31Aとリップ部32Aとを備えたカップシールを用いており、このカップシールのリップ部32Aが吸入液圧路G1に対して吸入時に開くように、前記第1実施形態で説明したものと軸方向に逆向きに配置されている。
【0087】
したがって、リップ部32Aは、ピストン14が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に摺動(復動作)するのに伴って内側に撓み、大径部113の内面113aから離間して、内面113aとの間にブレーキ液が通流する間隙(ブレーキ液が吸入液圧路G1から圧力室120に向けて流入する間隙)を形成する。
また、リップ部32Aは、ピストン14が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に摺動(往動作)するのに伴って外側に撓み、大径部113の内面113aに密着してブレーキ液の通流を阻止(シール)する。
【0088】
吐出弁40Aは、圧力室120と吐出液圧路N1との間の流路を開閉する一方向弁であり、前記したように、シリンダ部材21Aの第1内周面27に装着されている。
より詳細には、吐出弁40Aは、シリンダ部材21Aに形成された弁座22Aに着座する球状の吐出弁体41Aと、第1内周面27に取り付けられた断面コ字形状の保持部材42Aと、吐出弁体41Aと保持部材42Aとの間に圧縮状態で配置された吐出弁ばね43Aと、を備えて構成されている。
【0089】
吐出弁体41Aは、吐出弁ばね43Aの復元力によって、弁座22Aに着座するように付勢されている。そして、吐出弁体41Aは、ピストン14が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に摺動(往動作)して圧力室120が増圧されると開弁し、圧力室120から吐出液圧路N1へブレーキ液が流出するのを許容する。また、吐出弁40Aは、ピストン14が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に摺動(復動作)して圧力室120が減圧されると閉弁し、圧力室120から吐出液圧路N1へブレーキ液が流出するのを阻止する。
【0090】
本実施形態では、吐出弁40Aの吐出弁体41Aの移動方向がピストン14の軸方向に沿う方向となっており、応答性のよいブレーキ液の吐出を実現することができる。
【0091】
本実施形態のソレノイドポンプ10Aにおいても、前記第1実施形態で説明したものと同様に、ガイドパイプ12を基準にして、ポンプハウジング11、ピストン14、戻しばね15および弁組立体20を全て同一方向から組み付けることができるので、組付工程が単純化されて組立性が向上する。また、このことは、製造コストの低減に寄与する。
【0092】
(第3実施形態)
次に、本発明のソレノイドポンプの第3実施形態について説明する。
本実施形態のソレノイドポンプ10Bが前記第1、2実施形態のものと異なるところは、図5、図6に示すように、弁組立体20Bを構成するシリンダ部材21Bに組み付けられた吸入弁30Bが吐出弁40の装着される位置に対して一端側へずれた位置に配置されている点にあり、その他の基本構成に変わりはない。
【0093】
本実施形態では、基体Kの取付穴K1の底壁に吸入液圧路G1が開口形成されており、また、取付穴K1の側壁に吐出液圧路N1が開口形成されている。
【0094】
ポンプハウジング11を構成する挿入部11A’は、前記第1、第2実施形態で説明したものに比べて、一端部の外径D1が小さくなるように設定されている。つまり、大径部113の小径化が図られており、これに挿入されて嵌め入れられる弁組立体20Bのシリンダ部材21Bについても小径化を図っている。
そのための構成として、吸入弁30Bが吐出弁40の装着される位置に対して一端側へずれた位置に配置されており、これらを軸方向にオフセットして配置することによって、シリンダ部材21Bの外径の小型化を図っている。
【0095】
シリンダ部材21Bは、一端側の内周に、吸入口121を形成する大径の第1内周面27が形成され、他端側の内周に、圧力室120に通じる小径の第2内周面28が形成されている。
第1内周面27には、吸入弁30Bが装着されており、また、第2内周面28の径方向外側周りを囲む位置関係で、吐出弁40が装着されている。
【0096】
吸入弁30Bは、第1内周面27の他端部に嵌合する円筒状の弁座部材131と、弁座部材131に形成されたテーパ状の弁座131aに着座する球状の吸入弁体132と、弁座部材131の他端側から弁座部材131に取り付けられた断面コ字形状の保持部材133と、吸入弁体132と保持部材133との間に圧縮状態で配置された吸入弁ばね134と、を備えて構成されている。
【0097】
吸入弁体132は、吸入弁ばね134の復元力によって、弁座131aに着座するように付勢されている。そして、吸入弁体132は、ピストン14が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に摺動(復動作)して圧力室120が減圧されると開弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入するのを許容する。また、吸入弁体132は、ピストン14が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に摺動(往動作)して圧力室120が増圧されると閉弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入するのを阻止する。
【0098】
吐出弁40は、前記第1実施形態で説明したものと同様の構成であるが、シリンダ部材21Bの外径(第3外周部25の外径)に合わせて小径とされている点が異なっている。
【0099】
本実施形態では、シリンダ部材21Bを軸方向から見たとき(透視したとき)に、吸入弁30Bの弁座部材131と、吐出弁40のベース部41とが軸方向に重なる位置関係(部分的にオーバーラップする関係)となるように設けている。これによって、シリンダ部材21Bの、特に、径方向の小径化が可能であり、ポンプハウジング11の挿入部11A’の一端部の小径化が可能である。
【0100】
本実施形態のソレノイドポンプ10Bにおいても、前記第1、第2実施形態で説明したものと同様に、ガイドパイプ12を基準として、部品を全て同一方向から組み付けることができるので、組付工程が単純化されて組立性が向上するという利点が得られる。
そして、ポンプハウジング11を構成する挿入部11A’の外径D1が、前記第1、第2実施形態で説明したものに比べて小さくなるので、その分、基体Kにおける配置レイアウト(流路レイアウト)の自由度を高めることができる。
【0101】
(第4実施形態)
次に、本発明のソレノイドポンプの第4実施形態について説明する。
本実施形態のソレノイドポンプ10Cは、前記第3実施形態の変形例であり、図7、図8に示すように、弁組立体20Cを構成するシリンダ部材21Cの第1内周面27に吐出弁40Aが配置され、シリンダ部材21Cの外周面(第3外周部25)に吸入弁30Aが配置されている。
基体Kの取付穴K1の底壁には、吐出液圧路N1が開口形成され、また、取付穴K1の側壁には、吸入液圧路G1が開口形成されている。
【0102】
本実施形態のソレノイドポンプ10Cにおいても、前記第3実施形態で説明したものと同様に、ガイドパイプ12を基準として、部品を全て同一方向から組み付けることができるので、組付工程が単純化されて組立性が向上するという利点が得られる。
そして、ポンプハウジング11を構成する挿入部11A’の外径D1が、前記第1、第2実施形態で説明したものに比べて小さくなるので、その分、基体Kにおける配置レイアウト(流路レイアウト)の自由度を高めることができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、圧力室120の容積やピストン14の径、ピストン14の突出量は適宜変更可能であり、ブレーキ液の吐出量が異なるソレノイドポンプ10(10A〜10C)としてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10、10A〜10C ソレノイドポンプ
11 ポンプハウジング
12 ガイドパイプ(パイプ部材)
12a 開口部
12c 導入孔(外気連通孔)
13 可動コア
14 ピストン
16 コイル
20 弁組立体
20A〜20C 弁組立体
21 シリンダ部材
21A〜21C シリンダ部材
26b 段部(端部)
30 吸入弁
30A、30B 吸入弁
40、40A 吐出弁
110 貫通孔
111 小径部
111a Oリング(シール部材)
111c 外周部
112 中径部
113 大径部
120 圧力室
G1 吸入液圧路
N1 吐出液圧路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ組立体は、
固定コアと、
前記固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、
少なくとも一部が前記固定コアになる円筒状のポンプハウジングと、
前記ポンプハウジングに固着されて前記可動コアを摺動自在に収容する有底のパイプ部材と、
前記ポンプハウジング内において前記可動コアの移動に応じて摺動し、前記ポンプハウジング内に形成された圧力室の容積を変更するピストンと、
前記ピストンを前記可動コア側に付勢する戻しばねと、
前記圧力室に対する作動液の流入流出を制御する吸入弁および吐出弁を備えた弁組立体と、を備え、
このポンプ組立体に、電磁力で前記可動コアを前記固定コア側に移動させるコイルが装着されてなるソレノイドポンプであって、
前記ポンプ組立体は、前記パイプ部材を基準にして、前記ポンプハウジング、前記ピストン、前記戻しばねおよび前記弁組立体を、全て同一方向から組み付け可能に構成されていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ組立体は、前記ポンプハウジングと前記ピストンとの間をシールする環状のシール部材を備え、
前記シール部材は、前記パイプ部材を基準にして、前記ポンプハウジング、前記ピストン、前記戻しばねおよび前記弁組立体を組み付ける方向と同一方向から組み付け可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載のソレノイドポンプ。
【請求項3】
固定コアと、
前記固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、
少なくとも一部が前記固定コアになる円筒状のポンプハウジングと、
前記ポンプハウジングに固着されて前記可動コアを摺動自在に収容する有底のパイプ部材と、
前記ポンプハウジング内において、前記可動コアの移動に応じて摺動し、前記ポンプハウジング内に形成された圧力室の容積を変更するピストンと、
前記ピストンを前記可動コア側に付勢する戻しばねと、
前記圧力室に対する作動液の流入流出を制御する吸入弁および吐出弁を備えた弁組立体と、
を備えるポンプ組立体に、電磁力で前記可動コアを前記固定コア側に移動させるコイルが装着されてなるソレノイドポンプであって、
前記ポンプハウジングの内周部は、前記パイプ部材の配置される側から反対側へ向けて段付き状に拡径しており、前記ピストンを収容する小径部と、前記戻しばねを収容する中径部と、前記弁組立体を収容する大径部と、を有していることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項4】
前記ポンプハウジングは、前記小径部が形成される側の外周部が、前記パイプ部材の開口部に挿入されて固着されることを特徴とする請求項3に記載のソレノイドポンプ。
【請求項5】
前記戻しばねは、前記ピストンに設けられた受部と、この受部に対向する前記弁組立体の端部と、の間に配置されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のソレノイドポンプ。
【請求項6】
前記弁組立体は、中空円筒状のシリンダ部材を備え、
前記シリンダ部材の内周部に、前記吸入弁または前記吐出弁の一方が設けられているとともに、前記シリンダ部材の外周部に、他方が設けられていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のソレノイドポンプ。
【請求項7】
前記シリンダ部材の外周部に設けられる弁は、カップシールで構成されていることを特徴とする請求項6に記載のソレノイドポンプ。
【請求項8】
前記ポンプハウジングと前記ピストンとの間をシールする環状のシール部材が前記ピストンに嵌められていることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のソレノイドポンプ。
【請求項9】
前記パイプ部材には、外気連通孔が形成されていることを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載のソレノイドポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−21532(P2011−21532A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166822(P2009−166822)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】