説明

ソーワイヤおよびそれを用いたシリコンインゴットの切断方法

【課題】均一な厚みを有する反りのないウエハを切り出すことが可能な固定砥粒方式のソーワイヤを提供すること。
【解決手段】ソーワイヤは、始端および終端を有するワイヤと、ワイヤの表面に固着された砥粒とを備え、ワイヤは始端から所定の長さにわたって規定される第1部分と、第1部分に続くように第1部分の端から所定の長さにわたって規定される第2部分と、第2部分に続くように第2部分の端から終端までの間に規定される第3部分とからなり、第1および第3部分の表面に固着した砥粒は粒径が第2部分の表面に固着した砥粒の粒径よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソーワイヤおよびそれを用いたシリコンインゴットの切断方法に関し、詳しくは、固定砥粒方式のソーワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する従来技術としては、外周面に多数の案内溝が等間隔で形成された複数本のローラでソーワイヤを巻き回して走行させ、走行するソーワイヤに加工液を供給しながらシリコンインゴットを押し当てて多数枚のウエハに切断するワイヤソーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−260652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、シリコンインゴットからウエハを切り出す装置としてワイヤソーが用いられている。
ワイヤソーによる切断では、水性又は油性の分散剤に砥粒を分散させたスラリーと呼ばれる加工液を供給しながら切断する遊離砥粒方式が主流である。
しかしながら、近年の環境衛生上の問題からソーワイヤの表面に砥粒を固着させた固定砥粒方式が提案されている。
【0005】
遊離砥粒方式では、走行するソーワイヤとシリコンインゴットとの接触面においてスラリーに含まれる砥粒の転動や引っ掻きによる微小切削作用(研磨作用)が生じることにより切断がなされる。
一方、固定砥粒方式では、ソーワイヤの表面に固着した砥粒によってシリコンインゴットとの接触面を直接切削することにより切断がなされる。
このため、固定砥粒方式では遊離砥粒方式よりも切断速度が向上するものの、ソーワイヤの走行状態が切断にそのまま反映されるため、切り出されたウエハのウエハ形状を一定の範囲に維持するのが難しい。
【0006】
つまり、切断の初期段階では、シリコンインゴットに切り込みが付けられるまでソーワイヤの走行が安定しないため、ソーワイヤが走行方向に対して左右にぶれる横ぶれが生じ易い。
また切断の最終段階では切断された溝に切削屑が多く溜まり、スラリーがソーワイヤに均一に付着し難くなるため、ソーワイヤの挙動が不安定になり易い。
【0007】
特に、シリコンインゴットが単結晶シリコンからなる場合、該インゴットは結晶方位の影響により側面に対して45°の方向で割れ易く、加工中の割れを防ぐために角に相当する部分が曲面で構成される。
この場合、切断の初期段階でソーワイヤは曲面部分に当接することとなり、切り込みが付けられるまでソーワイヤを安定して走行させるのがより一層難しくなる。
【0008】
ソーワイヤに横ぶれや不安定な挙動が生じると、切断にあたって本来切削する必要のない部分まで研削してしまうことになり、切り出されたウエハの一部に厚みの薄い部分や反りの大きな部分が形成されてしまう。
このようなウエハは厚みの薄い部分や反りの大きな部分の影響で割れが発生し易く、半導体デバイスの信頼性低下に繋がる。
【0009】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、均一な厚みを有する反りのないウエハを切り出すことが可能な固定砥粒方式のソーワイヤとそれを用いたシリコンインゴットの切断方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、始端および終端を有するワイヤと、ワイヤの表面に固着された砥粒とを備え、ワイヤは始端から所定の長さにわたって規定される第1部分と、第1部分に続くように第1部分の端から所定の長さにわたって規定される第2部分と、第2部分に続くように第2部分の端から終端までの間に規定される第3部分とからなり、第1および第3部分の表面に固着した砥粒は粒径が第2部分の表面に固着した砥粒の粒径よりも小さいことを特徴とするソーワイヤを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、始端側と終端側に規定される第1および第3部分の表面に固着した砥粒の粒径が第2部分の表面に固着した砥粒の粒径よりも小さく設定されるので、切断の初期段階では砥粒の粒径が小さく食い込み易い第1部分でソーワイヤの横ぶれを抑えながらシリコンインゴットに切り込みを付け、切り込みが付けられた後は砥粒の粒径が大きく切削力の高い第2部分で切り込みに沿って速やかに切断を進め、切断の最終段階では砥粒の粒径が小さい第3部分でソーワイヤの不安定な挙動がシリコンインゴットに及ぼす影響を抑えながら切断を終えることができる。
これにより、固定砥粒方式のソーワイヤで均一な厚みを有する反りのないウエハを切り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態に係るソーワイヤの構成を示す説明図である。
【図2】図1に示されるソーワイヤの作製に用いられるメッキ槽の構成を示す説明図である。
【図3】図1に示されるソーワイヤを用いてシリコンインゴットを切断する際に用いられるマルチワイヤソーの構成を示す斜視図である。
【図4】図3に示されるマルチワイヤソーのテーブル付近の部分拡大正面図である。
【図5】図1に示されるソーワイヤによってシリコンインゴットを切断する工程を示す工程図である。
【図6】図1に示されるソーワイヤによってシリコンインゴットを切断する工程を示す工程図である。
【図7】比較例に係るソーワイヤを用いて切断されたウエハの厚みの変化を示すグラフ図である。
【図8】比較例に係るソーワイヤを用いて切断されたウエハの厚みの変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明によるソーワイヤは、始端および終端を有するワイヤと、ワイヤの表面に固着された砥粒とを備え、ワイヤは始端から所定の長さにわたって規定される第1部分と、第1部分に続くように第1部分の端から所定の長さにわたって規定される第2部分と、第2部分に続くように第2部分の端から終端までの間に規定される第3部分とからなり、第1および第3部分の表面に固着した砥粒は粒径が第2部分の表面に固着した砥粒の粒径よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
この発明によるソーワイヤにおいて、ワイヤは樹脂製又は金属製のいずれであってもよいが、機械的強度の観点からすると金属製のものが好適である。
金属製のワイヤとしては、例えば、直径100〜130μm程度の鋼線やピアノ線を用いることができる。
砥粒としては、例えば、粒径10〜20μm程度のダイヤモンド砥粒やCBN砥粒などを用いることができる。なお、本明細書において粒径とは平均粒径を意味する。
【0015】
砥粒をソーワイヤの表面に固着させる方法としては、例えば、砥粒が混入したレジンボンド(熱硬化性樹脂)の中にワイヤを通過させ、ワイヤの表面に付着したレジンボンドを冷却して硬化させるレジンボンド法や、砥粒が混入したメッキ液中でワイヤを電気メッキする電着法などがあり、砥粒の固着力の観点からすれば電着法が好ましい。ワイヤを電気メッキすることによりメッキ層に砥粒を埋設して固着させることができる。
【0016】
この発明によるソーワイヤにおいて、第1および第3部分の表面に固着した砥粒の粒径は第2部分の表面に固着した砥粒の粒径の約70〜95%の範囲内にあってもよい。
【0017】
というのは、次のような理由による。すなわち、単結晶シリコンからなるシリコンインゴットのように、切断の初期段階で切り込みを付ける部分が曲面である場合などのように、切り込みを付けるのが難しい箇所においてインゴットに加わる機械的なストレスを軽減しつつ、厚みのばらつきや反りを抑えて切断するには粒径の小さい砥粒が適している。
しかしながら、砥粒の粒径が小さくなるに従って切削力が低くなり、また表面の凹凸の間隔が小さくなるため切削によって発生する切削屑がソーワイヤの表面から離脱し難くなり、ソーワイヤの表面に切削屑が溜まり易くなる。
【0018】
ソーワイヤの表面に切削屑が溜まると切削力がより一層低下するが、このような状態においてシリコンインゴットが一定の圧力でソーワイヤに押し付けられると、切断が進まないためソーワイヤの撓みが大きくなり、最悪の場合、ソーワイヤの断線に至る。
このため、砥粒の粒径は一概に小さい方がよいとも言えず、一定の切削力を保つには粒径を小さくするのにも限界がある。
第1および第3部分の表面に固着した砥粒の粒径を第2部分の表面に固着した砥粒の粒径の約70〜95%の範囲内とするのは、上述のような事情を考慮したものであり、切断の初期段階および最終段階を担う第1および第3部分の砥粒の粒径をできるだけ小さくしつつ、一定の切削力を発揮させるうえでは上記範囲が妥当な範囲となる。
【0019】
上記範囲を採用することにより、切断の初期段階ではシリコンインゴットに加わる機械的なストレスを最小限に抑えながらスムーズに切り込みを付け、切り込みが付けられた後は切り込みに沿って第2部分で速やかに切断を進め、切断の最終段階ではソーワイヤの不安定な挙動がシリコンインゴットに与える影響を最小限に抑えつつ切断を終えるという、この発明のソーワイヤによりもたらされる好ましい効果をより一層確実なものとすることができる。
【0020】
この発明は別の観点からみると、この発明による上述のソーワイヤと、前記ソーワイヤを少なくとも2本のローラで張架し第1部分から巻き回して走行させるワイヤソーを用い、ソーワイヤの第1部分でシリコンインゴットに切り込みを入れ、ソーワイヤの第2部分で前記切り込みに沿って切断を進め、ソーワイヤの第3部分で切断を終えることを特徴とするシリコンインゴットの切断方法を提供するものでもある。
【0021】
この発明による上記のシリコンインゴットの切断方法によれば、切断の初期段階では砥粒の粒径が小さく食い込み易い第1部分でソーワイヤの横ぶれを抑えながらシリコンインゴットに切り込みを付け、切り込みが付けられた後は砥粒の粒径が大きく切削力の高い第2部分で切り込みに沿って速やかに切断を進め、切断の最終段階では砥粒の粒径が小さい第3部分でソーワイヤの不安定な挙動がシリコンインゴットに及ぼす影響を抑えながら切断を終えることができる。
これにより、固定砥粒方式で均一な厚みを有する反りのないウエハを切り出すことが可能となる。
【0022】
この発明によるシリコンインゴットの切断方法において、前記ワイヤソーは前記ソーワイヤを一方向に第1の距離だけ走行させたのち、前記一方向とは逆方向に第1の距離よりも短い第2の距離だけ走行させる工程を繰り返すことにより前記ソーワイヤを往復走行させてもよい。
【0023】
このような構成によれば、切り出されたウエハの厚みをより均一にでき、なおかつ切断に要する時間も短縮できる。
つまり、ワイヤソーによる切断では、ソーワイヤがシリコンインゴットの切り込みに入る走行方向上流側の切削量が、ソーワイヤがシリコンインゴットの切り込みから出る走行方向下流側の切削量よりも多くなる傾向がある。
【0024】
このため、仮に一方向にのみソーワイヤを走行させてシリコンインゴットを切断すると、得られたウエハはソーワイヤの走行方向の上流側に相当する部分が下流側に相当する部分よりも厚くなる。
しかしながら、上述のようにソーワイヤを往復走行させて切断すると、ワイヤの走行方向によって切削量が不均一になる現象が解消されるため、均一な厚みでウエハを切り出すことができる。
【0025】
また、ソーワイヤを往復走行させることによって、ソーワイヤの表面や切断中の切り込みに溜まった切削屑の排出も促進されるため、良好な切削力を発揮させることができ、より精度よく切断できるだけでなく、切断に要する時間も短縮される。
【0026】
この発明によるシリコンインゴットの切断方法において、シリコンインゴットは角に相当する部分が曲面で構成された直方体状の形状を有し、前記インゴットの曲面部分は前記ソーワイヤの第1および第3部分で切断されてもよい。
【0027】
このような構成によれば、本来、切断の初期段階で切り込みを付け難い曲面部分において、該曲面部分に加えられる機械的なストレスを抑えつつスムーズに切り込みを付けることができ、また、切断の最終段階においてはソーワイヤの不安定な挙動がシリコンインゴットに及ぼす影響を最小限に抑えつつ切断を終えることができる。
このため、この発明によるシリコンインゴットの切断方法による利点が最大限に発揮され、角に相当する部分が曲面で構成された直方体状のシリコンインゴットから均一な厚みのウエハを切り出すことができる。
【0028】
以下、図面に基づいてこの発明の実施形態に係るソーワイヤとそれを用いたシリコンインゴットの切断方法について説明する。
【0029】
図1は本発明の実施形態に係るソーワイヤの構成を示す説明図である。
図1に示されるように、この発明の実施形態に係るソーワイヤ10は、始端1dおよび終端1eを有するワイヤ1と、ワイヤ1の表面に固着された砥粒2a,2bとを備える。
ワイヤ1は始端1dから所定の長さL1にわたって規定される第1部分1aと、第1部分1aに続くように第1部分1aの端から所定の長さL2にわたって規定される第2部分1bと、第2部分1bに続くように第2部分1bの端から終端1eまでの間に規定される第3部分1cとからなり、第1および第3部分1a,1cの表面に固着した砥粒2aは粒径R1が第2部分1bの表面に固着した砥粒2bの粒径R2よりも小さく設定されている。
【0030】
ワイヤ1は100〜130μm程度の直径を有するピアノ線で、表面に電気メッキによってNiメッキ層3が形成され、このNiメッキ層3にダイヤモンド砥粒からなる砥粒2a,2bが埋設された状態で固着している。
なお、図1では説明の便宜上、ソーワイヤ10の始端1dから終端1eまでを短く描いているが、実際にはソーワイヤ10は数十km〜数百kmもの長さを有する。
ここで、ワイヤ1の表面に砥粒2a,2bを固着させる方法について図2に基づいて詳しく説明する。図2は図1に示されるソーワイヤの作製に用いられるメッキ槽の構成を示す説明図である。
【0031】
図2に示されるように、本実施形態では電着法によってワイヤ1の表面に砥粒2a,2bを固着させるにあたり、隣接して並べられた第1メッキ槽11および第2メッキ槽12を用いる。第1および第2メッキ槽11,12にはいずれもNiメッキ液13が収容され、それぞれ異なる粒径R1,R2を有する砥粒2a,2b(図1参照)がNiメッキ液13に混入している。
具体的には、第1メッキ槽11には平均粒径17.5μmの粒径R1を有する砥粒2aが混入し、第2メッキ槽12には平均粒径18.5μmの粒径R2を有する砥粒2bが混入している。砥粒2aの粒径R1は、砥粒2bの粒径R2の約95%に設定されている。
【0032】
第1および第2メッキ槽11,12には直流電源11a,12aがそれぞれ設けられている。直流電源11a,12aからスイッチ11d,12dを介して延びる陽極11b,12bは第1および第2メッキ槽11,12内のNiメッキ液13と接触するように第1および第2メッキ槽11,12内にそれぞれ設けられている。また、第1および第2メッキ槽11,12内には直流電源11a,12aの陰極に接続された電極ローラ11c,12cがワイヤ1に電気的に接触するよう設けられている。
スイッチ11d,12dを操作することにより、第1および第2メッキ槽11,12内でワイヤ1を陰極として通電させワイヤ1に電気メッキを施すことができる。なお、第1および第2メッキ槽11,12は互いに電気的に独立しているため、第1および第2メッキ槽11,12のいずれか一方でのみ電気メッキを施すことができる。
【0033】
このような第1および第2メッキ槽11,12を用いたソーワイヤ10の作製方法は次の通りである。
まず、ワイヤ1が第1メッキ槽11に通されるとスイッチ11dをオンにしてワイヤ1を陰極として通電を開始し、ワイヤ1の表面にNiメッキ層3(図1参照)を形成する。この際、第1メッキ槽11のNiメッキ液13に混入した粒径R1を有する砥粒2aがNiメッキ層3に埋設されるようにしてワイヤ1の表面に固着する。
第1メッキ槽11でNiメッキ層3が形成されたワイヤ1は隣接して配置された第2メッキ槽12へ通されるが、第1部分1a(図1参照)に相当する所定の長さL1分の電気メッキが済むまでは第2メッキ槽12においてワイヤ1への通電は行わない。
【0034】
第1部分1aに相当する所定の長さL1分だけ第1メッキ槽11で電気メッキが施されると、スイッチ11dをオフにして第1メッキ槽11における通電を止めると共に、スイッチ12dをオンにして第2メッキ槽12での通電を開始する。
これにより、第1部分1aに続く第2部分1bに第2メッキ槽12で電気メッキが施され、ワイヤ1の表面に粒径R2を有する砥粒2bが固着する。第2メッキ槽12において第2部分1b(図1参照)に相当する長さL2分だけ電気メッキが施されると、スイッチ12dをオフにして第2メッキ槽12における通電を止めると共に、スイッチ11dをオンにして再び第1メッキ槽11で通電を開始する。
【0035】
これにより、第2部分1bに続く第3部分1cに第1メッキ槽11で電気メッキが施され、ワイヤ1の表面に粒径R1を有する砥粒2aが固着する。そして第3部分1c(図1参照)に相当する所定の長さL3分だけ電気メッキが施されることにより、図1に示される本実施形態に係るソーワイヤ10が作製される。
【0036】
なお、第1および第2メッキ槽11,12間で通電のオン・オフを切り替えるタイミングは同時でもよいが、切り替えるタイミングを適切にずらすことにより第1部分1aと第2部分1bとの境界において第1および第2メッキ槽11,12の双方でメッキが施され部分的にNiメッキ層3が厚くなった部分や、第2部分1bと第3部分1cとの境界においてNiメッキ層3が部分的に形成されていない部分が発生することを防止できる。
【0037】
図3はこの発明の実施形態に係るソーワイヤを用いたシリコンインゴットの切断方法で用いられるマルチワイヤソーの構成を示す斜視図である。
図3に示されるように、マルチワイヤソー100は、ソーワイヤ10を回転駆動させるワイヤ駆動部20と、加工液33をソーワイヤ10に供給する加工液供給部30と、ソーワイヤ10の所定箇所にシリコンインゴット60を押し当ててシリコンインゴット60を切断するインゴット押圧部40とを備えている。
【0038】
図3に示されるように、ワイヤ駆動部20は、未使用のソーワイヤ10が巻かれた新線ボビン21、新線ボビン21から送出されたソーワイヤ10を張架するための2本のローラ22a,22b、ローラ22aを駆動させるローラ駆動機構23、ローラ22bから外れた使用済みのソーワイヤ10を巻き取る巻取ボビン24とから主に構成されている。このため、新線ボビン21がマルチワイヤソー100にセットされて稼働が開始すると、まず、ソーワイヤ10の第1部分1aが送り出され、その後、第1部分1aに続く第2部分1b、第2部分1bに続く第3部分1cが順次送り出される。
【0039】
新線ボビン21とローラ22bとの間にはテンションローラ25aが設けられ、ソーワイヤ10に25Nのテンションが加えられている。
同様に、ローラ22bと巻取ボビン24との間にもテンションローラ25bが設けられソーワイヤ10に25Nのテンションが加えられている。
【0040】
本実施形態では、上述の通り表面に砥粒2a,2bが固着したソーワイヤ10を用いるため、加工液33としては砥粒を含まないものが用いられる。
また、図示しないが、ローラ22a,22bの外周面には深さ250μm程度のV字状の溝が300〜500μm程度のピッチで約800本それぞれ形成されており、ソーワイヤ10はこのV字状の溝に嵌められることにより300〜500μm程度のピッチで約800周にわたって巻き回されている。
【0041】
図3に示されるように、ローラ駆動機構23は、ローラ22aの軸端に設けられたプーリ26、サーボモータ27、サーボモータ27の回転出力を減速して出力する減速機28、減速機28の出力軸に設けられたプーリ(図示せず)、減速機28のプーリとローラ22aのプーリ26に張架される駆動ベルト29とから構成されている。
サーボモータ27はドライバ回路を備えた制御部50によって制御され、設定された回転数で正方向および逆方向に回転する。
これにより、サーボモータ27の回転出力は減速機28、駆動ベルト29およびプーリ26を介してローラ22aに伝達され、ローラ22aはサーボモータ27の回転方向により、ソーワイヤ10を往路方向に走行させる正方向と復路方向に走行させる逆方向に回転駆動させられる。
【0042】
本実施形態では、ローラ22bを従動ローラとしているが、もちろん、ローラ22bの軸端にもローラ22aの軸端に設けられたプーリ26と同様のプーリを設け、プーリ26に伝達された駆動力をローラ22bに二次伝達してローラ22bをローラ22aと等速度で同方向に回転駆動するように構成されてもよい。
【0043】
図3に示されるように、加工液供給部30は、ポンプ(図示せず)を備えた加工液タンク31、加工液タンク31から延出する加工液供給配管32、加工液供給配管32から3又に分岐し、ソーワイヤ10に加工液33をカーテン状に吐出する加工液ノズル34とから主に構成されている。
ソーワイヤ10に吐出されて流れ落ちた加工液33は、マルチワイヤソー100の下方に設けられた受け皿(図示せず)で回収され、再び加工液タンク31に戻される。
【0044】
図3に示されるように、インゴット押圧部40は、テーブル44に保持されたシリコンインゴット60をソーワイヤ10へ押し付け、ソーワイヤ10に固着している砥粒2a,2b(図1参照)の研削作用によりシリコンインゴット60を薄い板状に切断するものである。
【0045】
インゴット押圧部40は、サーボモータ41、サーボモータ41の回転出力を減速して出力する減速機42、減速機42の出力軸に接続された溝付きの駆動シャフト43、駆動シャフト43とねじ対偶をなし、駆動シャフト43の正逆回転によって上下に移動するテーブル44とから主に構成されている。
駆動シャフト43は螺旋状の溝が形成されており、ボールねじ(図示せず)を備えたテーブル44を極めてスムーズに上下移動させることができる構成となっている。
サーボモータ41はドライバ回路を備えた制御部50によって制御され、設定された通りのタイミングと速度でテーブル44を下降および上昇させることができる。
【0046】
図4は図3に示されるマルチワイヤソーのテーブル付近の部分拡大正面図である。
図4に示されるように、被加工物であるシリコンインゴット60は、予めバンドソーや外周刃で角柱状に加工され、加工中の割れを防止するために角に相当する部分が曲面60a,60bで構成されている。本実施形態においてシリコンインゴット60は、端面が一辺126mm又は156mmの略正方形で、長さが100〜300mmの直方体状である。シリコンインゴット60は多結晶シリコンでもよいが、多結晶シリコンよりも所定の角度で割れ易いために角に相当する部分に比較的大きな曲面60a,60bが形成される単結晶シリコンの方がこの発明によるソーワイヤ10の効果が顕著に発揮される。
【0047】
図3に示されるように、このようなシリコンインゴット60は2枚の青板ガラスからなる保持板45に2本ずつ縦に並べて接着される。シリコンインゴット60が接着された保持板45はアルミからなる固定板46を介してテーブル44の下面にセットされる。
シリコンインゴット60を切断する際のソーワイヤ10の走行速度は、往路方向および復路方向とも650〜900m/min.程度であることが好ましい。ソーワイヤ10を往路方向に走行させた後、復路方向に走行させる工程を繰り返すことによりソーワイヤ10を往復走行させることができる。1回あたりの復路方向の走行距離を1回あたりの往路方向の走行距離よりも短くすることにより、ソーワイヤ10は往路方向と復路方向に一進一退を繰り返しながら、結果としては往路方向に進むことになる。ソーワイヤ10の往復走行は制御部50がサーボモータ27を制御することにより行われる。
【0048】
また、このような往復走行を行うにあたっては、新線ボビン21および巻取ボビン24を受動的ではなく往復走行に合わせて能動的に回転させる必要がある。
このため、新線ボビン21および巻取ボビン24は、制御部50によって制御されるサーボモータ51,52によって回転駆動される構成となっており、往復走行に合わせてソーワイヤ10の送出および巻取を能動的に行う。
【0049】
ソーワイヤ10の送出量および巻取量によって新線ボビン21および巻取ボビン24の外径が変化するので、新線ボビン21の送出量および巻取量、並びに、巻取ボビン24の巻取量および送出量を往復走行に合わせて正確に制御することは難しいが、テンションローラ25a,25bの調節作用が働くので、新線ボビン21および巻取ボビン24を回転駆動するサーボモータ51,52が高い精度をもって正確に制御されずとも送出量および巻取量の過不足は解消される。
【0050】
このようにソーワイヤ10を往復走行させながら、加工液33を100kg/分(加工液ノズル1本あたり30kg/分以上)程度で供給し、テーブル44を0.5〜2.0mm/min.程度の速度で下降させてシリコンインゴット4をソーワイヤ10へ押し付け、研削作用によりシリコンインゴット60を切断する。加工液33としては、鉱物油を主成分とし砥粒を含まない油性のものを用いる。
なお、本実施形態では、後述するようにソーワイヤ10の第1および第3部分1a,1cの切削力が第2部分1bの切削力よりも低いので、テーブル44の下降速度はソーワイヤ10の切削力の変化に合わせて上記範囲内で適宜設定される。
【0051】
図5および図6は図1に示される本発明の実施形態に係るソーワイヤ10でシリコンインゴット60を切断する工程を示す工程図である。
図5(a),(b)に示されるように、本発明の実施形態に係るシリコンインゴットの切断方法では、まず、切断の初期段階としてソーワイヤ10の始端側に設けられた第1部分1aでシリコンインゴット60に切り込み61を付ける。
【0052】
この際、ソーワイヤ10はシリコンインゴット60の曲面60a(図4参照)に当接することとなるが、ソーワイヤ10の第1部分1aに固着した砥粒2aの粒径R1は上述のとおり平均粒径17.5μmと非常に小さいため、第1部分1aと曲面60aとの接触圧が適度に高まりシリコンインゴット60に食い込み易い。このため、シリコンインゴット60に切り込み61を付けるにあたり、ソーワイヤ10が走行方向に対して左右にぶれる横ぶれの発生が抑制され、切断に本来必要のない部分まで切削してしまうことが防止される。
【0053】
シリコンインゴット60に切り込み61が付けられた後は、図6(c)に示されるように、切り込み61に沿って第1部分1aに続く第2部分1bを走行させ切断を進める。この際、ソーワイヤ10の第2部分1bは切り込み61に案内されながら安定して走行する。また、第2部分1bは第1部分1aの砥粒2aよりも大きい粒径R2を有する砥粒2bが固着しているため第1部分1aよりも切削力が高く、さらには砥粒2bの粒径R2が比較的大きいためソーワイヤ10の表面における凹凸の間隔が大きくなり、切削により生じた切削屑がソーワイヤ10の表面から離脱し易く切削屑が溜まり難い。このため、第2部分1bはその高い切削力を維持することができ、速やかに切断を進めることができる。
そして、第2部分1bの高い切削力によって速やかな切断が行われるため、テーブル44の下降によってソーワイヤ10が撓むこともなく、ソーワイヤ10はより一層安定して走行するようになる。
【0054】
最後に、図6(d)に示されるように、切断の最終段階としてシリコンインゴット60に形成された切り込み61に沿って第2部分1bに続く第3部分1cを走行させ、シリコンインゴット60の切断を終える。
この切断の最終段階では、切り込み61の深さが深くなっているため、切断によって発生する切削屑が切り込み61に溜まり易く、加工液33がソーワイヤ10に均一に付着し難くなるためソーワイヤ10の走行挙動が不安定になり易い。
【0055】
しかしながら、本発明では、上述のとおり、第3部分1cに第2部分1bの砥粒2bよりも小さい粒径R1を有する砥粒2aが固着しているため、第3部分1cの切削力は第2部分1bよりも低い。
このため、ソーワイヤ10の走行挙動が不安定になったとしても、その不安定な挙動がシリコンインゴット60に及ぼす影響を抑えることができ、切断にあたって本来切削する必要のない部分まで切削してしまうことを防止しつつスムーズに切断を終えることができる。
【0056】
なお、本発明の実施形態において、ソーワイヤ10の第1部分1aの長さL1はシリコンインゴット60のうち切断の初期段階で切り込み61が付けられる曲面60a側を切断するのに必要な長さに設定され、第2部分1bの長さL2はシリコンインゴット60のうち曲面60a,60b以外の部分を切断するのに必要な長さに設定され、第3部分1cの長さL3はシリコンインゴット60のうち切断の最終段階となる曲面60b側を切断するのに必要な長さに設定される。
【0057】
なお、上述の通り、ソーワイヤ10の第2部分1bに固着した砥粒2bの粒径R2は、ソーワイヤ10の始端1d側と終端1e側にそれぞれ規定された第1部分1aおよび第3部分1cに固着した砥粒2aの粒径R1よりも大きい。
このため、図6(d)では第2部分1bで切断された部分の切り込み61の幅が第1および第3部分1a,1cで切断された部分の幅よりも広く描かれているが、これは説明を分かり易くするための便宜的なもので、実際には本発明の本実施形態に係るソーワイヤ10によってシリコンインゴット60から切り出されたウエハの厚みは全領域で略均一になる。
【0058】
というのは、本発明の実施形態に係るソーワイヤ10によるシリコンインゴット60の切断では、上述の通り、第1部分1aと第3部分1cに固着した砥粒2aの粒径R1が17.5μmと比較的小さく設定されるため、切断の初期段階におけるソーワイヤ10の横ぶれと切断の最終段階におけるソーワイヤ10の不安定な挙動が切断に及ぼす影響を抑えることができる。しかし、それでもなお切断の初期段階におけるソーワイヤ10の横ぶれと切断の最終段階におけるソーワイヤ10の不安定な挙動の影響が完全に抑えられるわけではなく、若干の横ぶれや不安的な挙動による影響は発生する。
【0059】
切断の初期段階と最終段階では、このようなソーワイヤ10の若干の横ぶれや不安定な挙動により、余分に切削される部分が不可避的に生じてしまうため、第1および第3部分1a,1cで切断された部分の切削量と、第2部分1bで切断された部分の切削量は均衡し、この結果、切り出されたウエハの厚みは全領域で略均一になるのである。
【0060】
本実施形態において、第1および第3部分1a,1cに固着した砥粒2aの粒径R1は、第2部分1bに固着した砥粒2bの粒径R2(18.5μm)の約95%となる17.5μmに設定されるが、第2部分1bの砥粒2bの粒径R2に対する第1および第3部分1a,1cの砥粒2aの粒径R1は、上述のような切断の初期段階と最終段階で不可避的に生ずるソーワイヤ10の横ぶれや不安定な挙動も考慮し、第1および第3部分1a,1cで切断された部分の切削量と第2部分1bで切断された部分の切削量が均衡するように設定される。
【0061】
なお、第1および第3部分1a,1cの砥粒2aの粒径R1を小さく設定し過ぎると、第2部分1bで切断された部分の切削量との均衡がとれなくなるばかりでなく、第1および第3部分1a,1cの表面における凹凸の間隔が小さくなり過ぎ、切削屑がソーワイヤ10の表面から離脱し難くなって切削屑が表面に溜まり所期の切削力を維持できなくなるので、第1および第3部分1a,1cの砥粒2aの粒径R1を設定する際にはこのような事情も併せて考慮する必要がある。
1つの目安としては、第1および第3部分1a,1cの砥粒2aの粒径R1は、第2部分1bの砥粒2bの粒径R2の約70〜95%の範囲内になるように設定するとよい。
【0062】
比較例
この発明の実施形態に係るソーワイヤおよびそれを用いたシリコンインゴットの切断方法の比較例について説明する。
比較例では、始端から終端まで一定の粒径の砥粒が固着した従来のソーワイヤ(図示せず)を用いてシリコンインゴットを切断しウエハを得た。切断に用いたマルチワイヤソーなどソーワイヤ以外の条件は上述の本発明によるシリコンインゴットの切断方法と同様である。
【0063】
図7は平均粒径17.5μmの砥粒が固着したソーワイヤを用いて切断されたウエハの厚みの変化を表すグラフ図、図8は粒径20.0μmの砥粒が固着したソーワイヤを用いて切断されたウエハの厚みの変化を示すグラフ図である。図7および図8に示されるグラフ図において縦軸はウエハの厚さを示し、横軸は切り始めからの距離を示している。距離0mmが切り始め、距離126mmが切り終わりであり、距離0〜15mmと距離111〜126mmがシリコンインゴット60の曲面60a,60b(図4参照)にそれぞれ相当している。なお、厚みの測定は切断されたウエハの中央部で行った。
【0064】
図7から分かるように、平均粒径17.5μmの砥粒が固着したソーワイヤで切断されたウエハは、切断初期においてソーワイヤがシリコンインゴット60に食い込み易いため、曲面60aに相当する部分において厚みのばらつきが小さくなっているが、ウエハの中央付近で厚みのばらつきが大きくなっている。
これは砥粒の平均粒径が17.5μmと小さいため、ソーワイヤ表面の凹凸の間隔が小さくなり、切削屑がソーワイヤの表面から離脱し難くなっていることに起因していると考えられる。つまり、切削屑がソーワイヤの表面に溜まり易いため切削力が低下し、テーブル44(図3参照)の下降に切断が追いつかず、ソーワイヤが撓んで走行挙動が不安定になる。そしてソーワイヤの不安定な挙動により本来切削する必要のない部分までもが切削されてしまい、ウエハの厚みが不均一になっていると考えられる。
【0065】
一方、図8から分かるように、平均粒径20.0μmの砥粒が固着したソーワイヤで切断されたウエハは、切断の初期段階と最終段階で切断された部分(曲面60a,60bに相当する部分)の厚みのばらつきが大きくなっている。
これは、砥粒の粒径が20.0μmと比較的大きいため、切り込み61を付ける切断の初期段階でソーワイヤと曲面60aとの接触圧が高まらずソーワイヤが走行方向に対して左右にぶれる横ぶれが発生しているためと考えられる。
また、切断の最終段階で厚みのばらつきが大きくなっているのは、切り込み61に溜まった切削屑により加工液が均一に付着し難くなり、ソーワイヤの走行挙動が不安定になっているためと考えられる。
【0066】
以上のことから、ソーワイヤのうち、切断の初期段階と最終段階を担う始端側と終端側の砥粒の粒径を他の部分の粒径よりも小さく設定することが、固定砥粒方式で均一な厚みを有する反りの少ないウエハを切断するうえで効果的であることが分かる。
【0067】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、シリコンインゴット60に切り込み61を付ける切断の初期段階では、後の切断を担う第2部分1bよりも小さい粒径R1を有する砥粒2aが固着した第1部分1aを用いるので、ソーワイヤ10とシリコンインゴット60との接触圧が適度に高まってソーワイヤ10がシリコンインゴット60に食い込み易くなり、ソーワイヤ10が走行方向に対して左右にぶれる横ぶれを抑制できる。このため、シリコンインゴット60に切り込み61を付ける際のソーワイヤ10の横ぶれに起因してウエハに厚みのばらつきや反りが生じることを防止できる。
【0068】
さらに、シリコンインゴット60に切り込み61が付けられた後は、第1部分1aよりも大きい粒径R2を有する砥粒2bが固着した切削力に優れる第2部分1bで安定して速やかに切断を進めることができる。
そして、切断の最終段階では、第2部分1bよりも小さい粒径R1を有する砥粒2aが固着した第3部分1cが用いられるので、ソーワイヤの不安定な挙動が切断に及ぼす影響を抑えつつスムーズに切断を終えることができる。
これにより、固定砥粒方式のソーワイヤ10でシリコンインゴット60から均一な厚みを有する反りのないウエハを切り出すことが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 ワイヤ
1a 第1部分
1b 第2部分
1c 第3部分
1d 始端
1e 終端
2a,2b 砥粒
3 Niメッキ層
10 ソーワイヤ
11 第1メッキ槽
11a,12a 直流電源
11b,12b 陽極
11c,12c 電極ローラ
11d,12d スイッチ
12 第2メッキ槽
13 Niメッキ液
20 ワイヤ駆動部
21 新線ボビン
22a,22b ローラ
23 ローラ駆動機構
24 巻取ボビン
25a,25b テンションローラ
26 プーリ
27,41,51,52 サーボモータ
28,42 減速機
29 駆動ベルト
30 加工液供給部
31 加工液タンク
32 加工液供給配管
33 加工液
34 加工液ノズル
40 インゴット押圧部
43 駆動シャフト
44 テーブル
45 保持板
46 固定板
50 制御部
60 シリコンインゴット
60a,60b 曲面
61 切り込み
100 マルチワイヤソー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
始端および終端を有するワイヤと、ワイヤの表面に固着された砥粒とを備え、ワイヤは始端から所定の長さにわたって規定される第1部分と、第1部分に続くように第1部分の端から所定の長さにわたって規定される第2部分と、第2部分に続くように第2部分の端から終端までの間に規定される第3部分とからなり、第1および第3部分の表面に固着した砥粒は粒径が第2部分の表面に固着した砥粒の粒径よりも小さいことを特徴とするソーワイヤ。
【請求項2】
第1および第3部分の表面に固着した砥粒の粒径は第2部分の表面に固着した砥粒の粒径の70〜95%の範囲内にある請求項1に記載のソーワイヤ。
【請求項3】
請求項1および2のいずれか1つに記載のソーワイヤと、前記ソーワイヤを少なくとも2本のローラで張架し第1部分から巻き回して走行させるワイヤソーを用い、ソーワイヤの第1部分でシリコンインゴットに切り込みを入れ、ソーワイヤの第2部分で前記切り込みに沿って切断を進め、ソーワイヤの第3部分で切断を終えることを特徴とするシリコンインゴットの切断方法。
【請求項4】
前記ワイヤソーは前記ソーワイヤを一方向に第1の距離だけ走行させたのち、前記一方向とは逆方向に第1の距離よりも短い第2の距離だけ走行させる工程を繰り返すことにより前記ソーワイヤを往復走行させる請求項3に記載のシリコンインゴットの切断方法。
【請求項5】
シリコンインゴットは角に相当する部分が曲面で構成された直方体状の形状を有し、前記シリコンインゴットの曲面部分は前記ソーワイヤの第1および第3部分で切断される請求項3又は4に記載のシリコンインゴットの切断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−230274(P2011−230274A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105462(P2010−105462)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】