説明

ゾル−ゲル組成物を含む生物活性材料送達系

生物活性材料リザーバとして機能するゾル−ゲル組成物被覆を使用する植え込み可能な医療機器並びに有機及び無機基材の改善された接着のための、ゾル−ゲル組成物被覆の使用が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許119条(e)に基づき、2006年2月2日に出願された米国仮特許出願60/764,941に対する優先権を主張し、2004年2月18日に出願された米国仮特許出願60/546,091に対して優先権を主張する2004年12月1日に出願された国際特許出願PCT/US2004/040270の一部継続出願である(これらの開示内容は、参照により、本明細書中に完全に組み込まれる。)。
【0002】
本発明は、生物活性材料を含有する自己集合したゾル−ゲル組成物に関する。具体的には、本発明は、植え込み可能な医療機器上の薬物リザーバとしてのこのようなゾル−ゲル組成物の使用に関し、有機表面と無機表面の間の接着を改善するためのこのようなゾル−ゲル組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
「ゾル−ゲル」プロセスは、一般に、自己集合フィルムを含む多孔性材料を製作するために使用される。ゾルとは、適切な溶媒中に溶解された目的の材料のコロイド懸濁液を含有する液体溶液である。溶解された前駆体分子間の縮合反応は、ゾル内に形成する構造(粒子、分岐鎖、直鎖など)をもたらす。これらの構造のサイズ、成長速度及び形態は、溶媒内の反応の速度論に依存し、速度論は、溶液濃度、存在する水の量、溶媒の温度及びpH、溶媒の撹拌並びに他のパラメータなどのパラメータによって決定される。十分な時間が与えられれば、縮合反応は、最終的にゲルが形成されるまで、成長する粒子又は鎖の凝集をもたらす。ゲルは、残りの溶液からなる連続した液体相を封入する巨視的規模の連続した固相を形成するきわめて多数の架橋された前駆体分子として可視化され得る。ゾル−ゲルプロセスの最終工程では、(一般に、乾燥によって)封入された溶媒が除去され、前駆体分子が架橋し(時効(aging)と称されるプロセス)は、所望される固体をもたらす。
【0004】
材料のゾル−ゲル合成は、他の合成経路に比べて幾つかの利点を有している。これらの利点としては、穏やかな加工条件(低温、低圧、穏やかなpH)、安価な原材料、真空加工処理又はその他の高価な装置が不要であること、及び生じた構造に対する調節の高いレベル(特に、調節が多孔性に対する場合)を挙げることができる。液体ゾルは、ゲルになる前に、モノリス、薄いフィルム、繊維及びマイクロ又はナノ規模の粒子など、想定可能なあらゆる形態に成型することができるので、最終製品の形状に関しては、実質的に何の制限も存在しない。
【0005】
ゾル−ゲルプロセス中で製造された材料の多孔性は、多数の異なる方法で調節することが可能である。最も単純なゾル−ゲルプロセスにおいて、特別な細孔形成剤(porogen)はゾルに添加されず、最終固体の多孔度は、前駆体の分岐の量又はゲル化前の凝集によって決定される。多孔性ゾル−ゲル組成物の平均孔サイズ、容積及び表面積は、ゾル−ゲル過程前の前駆体分子のサイズとともに増加する。
【0006】
多孔度は、ゾル−ゲルプロセス時の、溶媒内の追加材料の存在によっても操作することも可能である。ゾル内への犠牲細孔形成剤(特に、加熱又はその他の方法を介して容易に除去することができるもの)の取り込みは、一般に、ゾル−ゲルプロセスを使用する場合に、多孔性固体を取得するための効率的な方法と考えられる。歴史的には、これらの努力は、超小型電子産業用の低誘電定数(低k)の絶縁フィルムの製作に対して集中された。犠牲テンプレートは、ゾル−ゲルプロセスを用いて形成された無機材料中に孔を作製するためにも使用することが可能である。犠牲テンプレートは、通常、溶液中での自己集合を可能とする両親媒性分子(すなわち、親水性特性と疎水性特性を有する分子)である。これらの両親媒性分子は、前駆体分子の構造周囲への同時集合を誘導する高度に秩序化された構造を作出する。一旦、前駆体分子が構造周囲に同時集合すると、前駆体分子は除去することができ、陰性像空隙(negative image void)を残す。
【0007】
自己集合テンプレートによって補助されたゾル−ゲル組成物は特有の性質を有しているので、多数の研究が行われてきた。例えば、1992年に、Mobil Oil Corporationの研究者グループは、界面活性剤分子(短い両親媒性分子)が、可溶性シリカの水溶液中で自己集合し、シリカ基質が凝固した時点で、界面活性剤を除去することができ、均一なメソ細孔(メソ細孔とは、約2nmと約50nmの間の孔径を有する細孔である;参照により、本明細書中に完全に組み込まれる。U.S.Pat.Nos.5,057,296及び5,102,643を参照されたい。)の六角形状のハチの巣状配列を有する材料(「MCM−41」と称される。)が残される。MCM−41は、水熱条件下で、陽イオン性界面活性剤、第四級アルキルトリメチルアンモニウム塩及びケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸テトラエチル又はシリカゲルなどの様々なシリカ源を用いて合成される(Beck et al., 1992, J.Am.Chem.Soc. 114, 10834)。MCM−41の孔径は、異なる界面活性剤を使用し、又は合成条件を変化させることによって、約1.6nmから最大約10nmに調整することが可能である。現在、テンプレートによって補助されたメソ多孔性材料は、自己集合両親媒性テンプレート:短分子界面活性剤(Brinkerら(Advanced materials 1999, 11 No. 7)及びKresgeら(Nature Vol.359 22 Oct.1992))及びトリブロックコポリマー(参照により本明細書中に組み込まれるU.S.Patent No.6,592,764参照。)という2つの広いクラスを用いて製作されている。
【0008】
ゾル−ゲルプロセスを用いて作製された多孔性材料は、生物活性材料を送達するために使用することができる。例えば、vallet−Regiら(Chem.Mater.2001,13,308−311)は、イブプロフェンとともに、粉末化されたMCM−41を充填することを記載した。この場合には、イブプロフェンをヘキサン中に溶解させ、粉末化された形態でヘキサン中にMCM−41化合物を添加することによって、イブプロフェンがMCM−41中に充填された。Munozら(Chem.Mater.2003,15 500−503)は、16炭素の界面活性剤を用いて作製された製剤及び12炭素の界面活性剤を用いて作製された製剤という2つの異なるMCM−41の製剤から、異なる速度でイブプロフェンを送達することができることを示した実験を記載した。
【0009】
国際特許出願PCT/US2004/040270(PCT’270)(参照により、本明細書中に完全に組み込まれる。)より以前に、トリブロックコポリマーテンプレートをベースとするゾル−ゲル組成物を含む植え込み可能な医療機器又は生物活性材料送達機器が、生物活性材料リザーバとして機能するように設計された実質的に連続的に相互接続されたチャンネルを有する表面被覆を形成することを記載した参考文献は存在しない。さらに、生物活性材料が植え込み可能な医療機器の表面に付与される前に、表面被覆そのものの中に見出され、及び植え込み可能な医療機器の表面に付与された後に生物活性材料リザーバとしてさらに機能することができる実質的に連続的に相互接続されたチャンネルを有する、トリブロックコポリマーテンプレートをベースとしたゾル−ゲル組成物表面被覆を記載した参考文献は存在しない。従って、PCT’270中に記載されている発明は、植え込み可能な医療機器の表面中に生物活性材料を搭載することができる少なくとも2つの更なる機構を提供した。
【0010】
PCT’270中に記載されている材料及び方法は、多数の重要な利点(本明細書中に記載されている。)を与えたが、ゾル−ゲルプロセスを用いて作製された材料を担持する生物活性材料の製作には、なお改善の余地が存在する。例えば、ゾル−ゲル過程中及び機器植え込み後の生物活性材料粒子のより優れた調節は、特定のゾル−ゲル組成物内の生物活性剤の量に対してより正確な調節を可能する上で、及び機器植え込み後における、植え込まれた医療機器から生理的環境中への生体活性材料の放出速度に対するよりよい調節を可能とする上で利点を与え得る。本発明は、このような利点を提供する。しかしながら、これらの利点をさらに詳しく記載する前に、本発明のさらなる態様に関連する背景を記載する。
【0011】
植え込み可能な医療機器の分野における1つの挑戦課題は、機器が植え込まれた後、時間が経過するにつれて、生物活性材料が放出されるように、生物活性材料及び生物活性材料含有被覆を植え込み可能な機器の表面に接着させることであった。生物活性材料を基材(植え込み可能な医療機器の表面など)へ付着させるための1つのアプローチは、ポリマー被覆中に生物活性材料を含めることであった。ポリマー被覆は、植え込み可能な医療機器の表面上に生物活性材料を保持させ、ポリマーの分解又は液体若しくは組織中への拡散(この場合には、ポリマーは非分解性である。)を介して、生物活性材料を放出する。植え込まれた医療機器に生物活性材料を付着させるためにポリマー被覆を使用することが可能であるが、ポリマー被覆の使用に付随する問題が存在する。1つの問題は、ステントの金属製基材などの大幅に異なる基材へポリマー被覆を接着させることは、材料の特性が異なるために(異なる熱膨張特性など)困難であるということである。さらに、多くの無機固体は、表面水酸基(M−OH(Mは、ケイ素又はアルミニウムなどの無機材料の原子を表す。)の存在によって特徴付けられる親水性の固有表面酸化物に覆われている。次いで、周囲条件において、吸着された水分子の少なくとも単層が表面を被覆し、これらの水酸基と水素結合を形成する。従って、この水層のために、疎水性の有機ポリマーは、植え込み可能な医療機器の表面へ、自発的に接着することができない。さらに、乾燥条件下でポリマー/表面結合(共有結合を含む。)が形成された場合でさえ、これらの結合は、水に曝露されると、加水分解(すなわち、分解)を受けやすい。この効果は、有機/無機界面を含有する機器又は成分が、ヒト又は他の動物の身体などの水性腐食性環境中で動作しなければならない用途において特に重要である。2つの異なる材料の種類を接着させることに伴うこれらの困難は、しばしば、植え込み可能な医療機器とその上に存在するポリマー性被覆の間に不十分な結合をもたらし、これは、時間とともに、材料の分離をもたらす場合がある。このような分離は、植え込み型医療機器において、極めて望ましくない特性である。
【0012】
伝統的に、有機/無機界面を強化するために、2つの異なるアプローチが採られてきた。第一のアプローチは、無機表面上に調節された粗さ又は多孔度を導入することであり、これは、ポリマーの機械的連動を誘導する。第二のアプローチは、ポリマーの湿潤性、結合及び水に対する界面耐性を改善する両親媒性シランカップリング剤によって、無機表面を化学的に修飾することである。これらの方法は幾つかの利点を与えるが、すべての状況において有効であるわけではない。従って、無機及び有機表面を接着させることを伴う方法には改善の余地が存在する。本発明に係るある種のゾル−ゲル組成物の実施形態は、このような改善を与える。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、強化された生物活性材料の取り込みを有するゾル−ゲル組成物を作製する方法及び臨床的な使用時における、医療機器から生理的環境中への生物活性材料の放出の速度をさらに調節するための方法を提供する。本方法は、無機及び有機基材と材料の間に強化された接着も与える。これらの方法は、徐放生物活性材料リザーバとして、及び/又は植え込み可能な医療機器上の生物活性材料被覆として使用することができるゾル−ゲル組成物を提供する。本発明は、(とりわけ、他の特性のなかでも)形成材料の疎水性又は親水性を変化させ、ゾル−ゲル過程時の形成材料及びその化学的環境との生物活性材料分子の相互作用の仕方に影響を与える、ゾル−ゲル過程時の化学的環境を修飾することによって、生物活性材料の強化された取り込みを可能とする。ゾル−ゲル過程時の化学的環境の修飾は、患者中に植え込まれた際に、生理的環境中への生物活性材料の放出速度に影響を与えるように、ゾル−ゲル環境から除去された後の形成された材料の特性にも影響を与えることができる。具体的には、特定の生物活性材料の特性に応じて、生物活性材料がゾル−ゲルプロセス中の環境とどのように相互作用するかを調節するために、ゾル−ゲルプロセスの化学的環境が調整される。非限定的な例として、ゾル−ゲル混合物への有機的に修飾されたシランの添加は、形成しているゲル(ゾル−ゲル過程中に形成している構造を意味する。)の疎水性を増加させることが可能である。理論に拘泥するものではないが、形成しているゲルの疎水性の増加は、ゾル−ゲル過程中に、生物活性材料が、形成しているゲルと水性環境との間を移動する能力を妨害し、形成しているゲルへ、より強固に生物活性材料を保持し、形成しているゾル−ゲル組成物内に生物活性材料をより良好に保持するものと考えられる。さらに、最終的に形成された材料の増強された疎水性含量は、患者中に植え込まれた際に、生物活性材料の生理的環境中への放出の速度をよりよく調節することができる。本発明の方法は、形成されたゾル−ゲル組成物の表面を有機的に修飾されたシランで処理することによって、機器植え込み後に、生理的環境中への生物活性材料の放出を調節する能力をさらに増強させることができる。有機的に修飾されたシランの疎水性トリメチル基は、植え込まれた医療機器の生理的環境中の液体が、組成物中に拡散し、生物活性材料を可溶化して、生物活性材料が早期に放出されるのを防ぐことを補助することができる。
【0014】
本発明のゾル−ゲル組成物は、無機基材と有機被覆間の強力な相互嵌合を可能とする連続的に相互接続されたチャンネルの形態の孔を与えることによって、基材への接着を増強することもできる。
【0015】
具体的には、本発明の一実施形態には、構造要素及び生物活性材料リザーバを含む医療機器であり、前記生物活性材料リザーバは前記構造要素の表面に付与された被覆を含み、前記被覆は1つ又はそれ以上の層を含み、前記層の少なくとも1つはゾル−ゲルプロセスを用いて形成されたマトリックス組成物を含み、前記ゾル−ゲルプロセスの環境は、前記マトリックス組成物中に取り込まれるべき生物活性材料の特性に対して調整されており、前記調整は、形成された際の前記マトリックス組成物内の前記生物物質の量及び/又は患者内に植え込まれた際の生理的環境中への前記生物活性材料の放出の速度に影響を与える、前記医療機器が含まれる。マトリックス組成物は、ゾル−ゲルに由来する無機酸化物;ゾル−ゲルに由来する有機的に修飾されたシラン;有機的に修飾されたシランを含むハイブリッド酸化物;及びテンプレートを用いて作製されたメソ細孔を有する酸化物からなる群から選択される材料を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
ある種の実施形態において、本発明のマトリックス組成物は、上記のゾル−ゲルプロセスを介して製作された無機酸化物を含む。無機酸化物は、ケイ素の酸化物及びチタンの酸化物からなる群から選択することができる。マトリックス組成物は、メソ細孔性無機酸化物とすることもできる。メソ多孔性無機酸化物は、犠牲的孔生成テンプレート成分及び自己集合又は誘導集合作製プロセスを用いて取得することができる。テンプレート成分は、両親媒性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。テンプレート成分は、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドトリブロックコポリマーとすることもできる。
【0017】
本発明のメソ細孔性無機酸化物は、実質的に連続的な相互接続されたチャンネルを含むことができる。実質的に連続な相互接続されたチャンネルの内部表面は、疎水性、電荷、生体適合性、機械的特性、生物活性材料の親和性、保存容量及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるメソ多孔性酸化物の特性を修飾する有機的に修飾されたシランで被覆することができる。さらに、1つ又はそれ以上の生物活性材料は、構造要素の表面に被覆が付与された後に、相互接続されたチャンネル中に搭載することができる。
【0018】
本発明のある実施形態において、マトリックス組成物の酸化物には、疎水性、電荷、生体適合性、機械的特性、生物活性材料の親和性、保存容量及びこれらの組み合わせからなる群から選択される前記多孔性酸化物の特性を修飾する因子を配合することが可能である。一実施形態において、修飾剤は、有機的に修飾されたシランである。有機的に修飾されたシランは、アルキルシラン;メチルトリメトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;ジメチルジエトキシシラン;トリメチルエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニルトリエトキシシラン;エチルトリエトキシシラン;イソプロピルトリエトキシシラン;ブチルトリエトキシシラン;オクチルトリエトキシシラン;ドデシルトリエトキシシラン;オクタデシルトリエトキシシラン;アリール官能性シラン;フェニルトリエトキシシラン;アミノシラン;アミノプロピルトリエトキシシラン;アミノフェニルトリメトキシシラン;アミノプロピルトリメトキシシラン;アクリラート官能性シラン;メタクリラート官能性シラン;アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;カルボキシラート;ホスホナート;エステル;スルホナート;イソシアナート;エポキシ官能性シラン;クロロシラン;クロロトリメチルシラン;クロロトリエチルシラン;クロロトリヘキシルシラン;ジクロロジメチルシラン;トリクロロメチルシラン;N,O−ビス(トリメチルシリル)−アセトアミド(BSA);N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA);ヘキサメチルジシラザン(HMDS);N−メチルトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA);N−メチル−N−(t−ブチルジメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MTBSTFA);トリメチルクロロシラン(TMCS);トリメチルシリルイミダゾール(TMSI);及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0019】
本発明の一実施形態は、構造要素及び生物活性材料溶出被覆を含む医療機器であり、前記生物活性材料溶出被覆は、前記医療機器の表面上に付与された少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層がゾル−ゲルプロセスを用いて形成されており、及び有機的に修飾されたシランを含む、前記医療機器を含む。ある種の実施形態において、この少なくとも1つの層は、前記少なくとも1つの層が前記医療機器の表面に付与された基礎被覆であり、及び前記医療機器は前記基礎被覆上に付与された上部被覆をさらに含む。生物活性材料含有球体は、前記基礎被覆内、前記上部被覆内、前記基礎被覆と前記上部被覆の間及びこれらの組み合わせからなる群から選択される位置に見出すことができる。生物活性材料含有球体は、生体分解性ポリマーから構成され得る。
【0020】
一実施形態において、基礎被覆及び/又は上部被覆はゾル−ゲル無機酸化物組成物を含む。別の実施形態において、基礎被覆は、実質的に連続な相互接続されたチャンネルを有するメソ多孔性酸化物を含む。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態は、構造要素及び生物活性材料溶出被覆を含む医療機器であり、前記生物活性材料溶出被覆は少なくとも2つの層を含み、少なくとも2つの層の少なくとも1つはゾル−ゲルプロセスを用いて形成されたマトリックス組成物を含み、前記ゾル−ゲルプロセスの環境は、前記マトリックス組成物中に取り込まれるべき生物活性材料の特性に対して調整されており、前記調整は、形成された際の前記マトリックス組成物内の前記生物活性物質の量及び/又は患者内に植え込まれた際の生理的環境中への前記生物活性材料の放出の速度に影響を与える、前記医療機器を含む。これらの2つの層は、基礎被覆及び上部被覆を含むことができるが、これらに限定されない。本発明のこれらの実施形態において、各層は、それぞれ、生物活性材料なしのゾル−ゲル酸化物層;酸化物中に取り込まれた生物活性材料を有するゾグ−ゲル酸化物層;生物活性材料なしの有機的に修飾されたシランが配合されたゾル−ゲル酸化物;生物活性材料で有機的に修飾されたシランが配合されたゾル−ゲル酸化物;生物活性材料なしの有機的に修飾されたシラン層;生物活性材料を有する有機的に修飾されたシラン層;生物活性材料なしのメソ多孔性酸化物;酸化物中に取り込まれた生物活性材料を有するメソ多孔性酸化物;メソ多孔性酸化物中に取り込まれた生物活性材料及び多孔性酸化物が前記医療機器の前記表面に付与された後にその相互接続されたチャンネル中に搭載されたさらなる生物活性材料を有するメソ多孔性酸化物;酸化物中に取り込まれた生物活性材料を有さないが、前記医療機器の前記表面に前記酸化物が付与された後にその相互接続されたチャンネル中に搭載された生物活性材料を有するメソ多孔性酸化物;及び生物活性材料含有ポリマー球体の集合物からなる群から選択される形態を含むことができる。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、構造要素及び生物活性材料リザーバを含む医療機器であり、前記生物活性材料リザーバは前記構造要素の表面に付与された被覆を含み、前記被覆は、ゾル−ゲルプロセスを用いて形成されたマトリックス組成物を含み、前記ゾル−ゲルプロセスの環境は、前記マトリックス組成物中に取り込まれるべき生物活性材料の特性に対して調整されており、前記調整は、形成された際の前記マトリックス組成物内の前記生物物質の量及び/又は患者内に植え込まれた際の生理的環境中への前記生物活性材料の放出の速度に影響を与え、前記被覆が構造要素の表面に付与されたときに、前記被覆は無機表面と、ポリマー、組織、骨及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機表面との間の接着を強化する、前記医療機器を含む。
【0023】
本発明で使用される生物活性物材料は、一実施形態において、抗再狭窄剤、抗炎症剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、抗微生物剤、抗新生物剤、血管新生剤、抗血管新生剤、血栓溶解剤、降圧剤、抗不整脈剤、カルシウムチャンネル遮断薬、コレステロール低下薬、向精神薬、抗うつ剤、抗痙攣剤、避妊薬、鎮痛薬、骨成長因子、骨再構築因子、神経伝達物質、核酸、オピエートアンタゴニスト及びこれらの組み合わせからなる群から選択することが可能である。生物活性材料は、パクリタキセル、ラパマイシン(rampamycin)、エベロリムス、タクロリムス、シロリムス、デス−アスパラギン酸アンギオテンシンI、酸化窒素、アポシニン、γ−トコフェリル、プレイオトロフィン、エストラジオール、アスピリン、アトロバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、パラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン及びこれらの組み合わせからなる群から選択することも可能である。
【0024】
本発明の医療機器としては、血管導管、ステント、プレート、ネジ、脊髄ケージ、歯科インプラント、歯科充填材、装具(brace)、人工関節、塞栓機器、心室補助装置、人工心臓、心臓弁、静脈フィルター、止め金、クリップ、縫合糸、人工関節メッシュ(prosthetic mesh)、ペースメーカー、ペースメーカー導線、除細動器、神経刺激装置、神経刺激装置導線、植え込み可能センサーおよび外部センサーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
用語の定義
「植え込み可能な医療機器」という用語は、生物の身体の内部又はその表面上で機能を発揮する、生物の身体によって産生されない物体を意味する。植え込み可能な医療機器としては、生物材料、生物活性材料送達装置、血管導管、ステント、プレート、ネジ、脊髄ケージ、歯科インプラント、歯科充填材、装具、人工関節、塞栓機器、心室補助装置、人工心臓、心臓弁、静脈フィルター、止め金、クリップ、縫合糸、人工関節メッシュ、ペースメーカー、ペースメーカー導線、除細動器、神経刺激装置、神経刺激装置導線、及び植え込み可能センサー又は外部センサーが挙げられるが、これらに限定されない。植え込み可能な医療機器はサイズによって限定されず、マイクロ機械系及びナノ機械系が含まれる。本発明の実施形態には、このような植え込み可能な医療機器が含まれる。
【0026】
「リザーバ」又は「生物活性材料リザーバ」という用語は、生物活性材料を保持することができる空間を表すのみならず、1つ又はそれ以上の生物活性材料を封入するゾル−ゲルマトリックス組成物を含む被覆も表し、リザーバ又は生物活性材料リザーバは、一例として、植え込み可能な医療機器などの基質の表面に付与することが可能である。
【0027】
本明細書において使用される「生物活性材料」という用語は、生物学的に活性である、又は生物学的に適切である全ての有機、無機又は生体因子を表す。例えば、生物活性材料は、タンパク質、ポリペプチド、多糖(例えば、ヘパリン)、オリゴ糖、単糖若しくは二糖、有機化合物、有機金属化合物又は無機化合物であり得る。生物活性材料としては、ホルモン、成長因子、成長因子産生ウイルス、成長因子阻害剤、成長因子受容体、抗炎症剤、代謝拮抗薬、インテグリン遮断剤、又は完全な若しくは部分的な機能的インセンス(insense)又はアンチセンス遺伝子などの生物活性分子を挙げることができる。生物活性材料としては、生物関連材料又は生物活性材料を担持する人工粒子又は材料も挙げることができる。例は、薬物を有するコアと、コア上の被覆とを含むナノ粒子である。このようなナノ粒子は、孔中に事後的に搭載され、又は金属イオンと同時堆積され得る。
【0028】
生物活性材料は、生物体に対して治療効果を有し得る化学的又は生物学的化合物などの薬物も含むことができる。生物活性材料としては、ホルモン治療などの長期的治療に対して特に有用である生物活性材料が挙げられる。例としては、避妊及びホルモン置換療法用の薬物、並びに骨粗鬆症、癌、てんかん、パーキンソン病及び疼痛などの疾病の治療用薬物が挙げられる。適切な生物材料としては、抗再狭窄剤、抗炎症剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、抗微生物剤、抗新生物剤、血管新生剤、抗血管新生剤、血栓溶解剤、降圧剤、抗不整脈剤、カルシウムチャンネル遮断薬、コレステロール低下薬、向精神薬、抗うつ剤、抗痙攣剤、避妊薬、鎮痛薬、骨成長因子、骨再構築因子、神経伝達物質、核酸、オピエートアンタゴニスト及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。さらなる生物活性材料としては、パクリタキセル、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、シロリムス、デス−アスパラギン酸アンギオテンシンI、酸化窒素、アポシニン、γ−トコフェリル、プレイオトロフィン、エストラジオール、アスピリン、アトロバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、パラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
生物活性材料としては、代謝、分解(例えば、分子成分の切断)又はその他体内で加工及び修飾された後に、適切な生物活性を発揮する前駆体材料も挙げることができる。
【0030】
これらには、このような修飾がなければ、比較的生物学的に不活性と考えられ得る前駆体材料、又は、このような修飾がなければ、このような修飾前に、治療されるべき医学的症状に関連する結果に対して有効でないと考えられ得る前駆体材料が含まれ得る。
【0031】
前記例の何れかの組み合わせ、混合物又はその他の調製物を作製することが可能であり、本明細書中の予定される意味に属する生物活性材料と考えることができる。生物活性材料に対する本発明の態様は、前記例の全てを含むことができる。
【0032】
「ゾル−ゲル」過程という用語は、対象材料の可溶性前駆体が、適切な溶媒中の場合によって使用される第二の材料(生物活性材料を含むが、これに限定されない。)を有する液体溶媒中に溶解される過程を表す。溶解された前駆体分子間の縮合反応は、溶液(「ゾル」)内に形成している構造(粒子、分岐鎖、直鎖など)をもたらす。形成している構造は、場合によって使用される第二の材料をその中に含有することが可能な、ゾル−ゲルプロセスの「ゲル」になる。一旦、液体溶媒の全て又は実質的に全てがゲルから除去されると、本発明のマトリックス組成物のある実施形態が形成される。
【0033】
「メソ多孔性無機酸化物」という用語は、ゾル−ゲル組成物が約2nmから約50nmのサイズ範囲の孔を有する本発明の方法に従って作製されたゾル−ゲル組成物を表す。
【0034】
「有機的に修飾された」という用語は、少なくとも1つの有機(炭素をベースとした)リガンド(一実施形態において、直接の金属−炭素(又は半導体−炭素)結合)を含有する化合物を表す。
【0035】
「有機的に修飾されたシラン」という用語は、ケイ素に結合された、少なくとも1つの加水分解不能な炭素ベースのリガンドを含有する化合物を表す。化合物のこのクラスは、ORMOSIL、シランカップリング剤、シランカップラー、シラン接着促進物質又は単にシランとも称される。加水分解不能なリガンドは、有機化学の原理に従って合成された全ての想定可能な有機基であり得るので、これらの化合物は多様な化合物を表す。非限定的な例としては、アルキルシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなど、但しこれらに限定されない。)、アリール官能性シラン(例えば、フェニルトリエトキシシランなど)、アミノシラン(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなど)、アクリラート及びメタクリラート官能性シラン(例えば、アクリルオキシプロピルトリメトキシシランなど)、カルボキシラート、ホスホナート、エステル、スルホナート、イソシアナート及びエポキシ官能性シランが挙げられる。
【0036】
これらの化合物は、これらの化合物がゾル−ゲルプロセスの加水分解/縮合反応を受けられるようにする加水分解可能な基をなお含有していることを認識することが重要である。従って、これらの各々若しくはこれらの2つ若しくはそれ以上のあらゆる組み合わせをゾル−ゲル前駆体として使用することが可能であり、又は、テトラエトキシシラン(TEOS)若しくはチタンイソプロポキシドなどの完全に加水分解可能なゾル−ゲル前駆体と組み合わせて使用することが可能である。このようにして得られたゾル−ゲル組成物は、化学量論的無機酸化物ではない。代わりに、このようにして得られたゾル−ゲル組成物は、構成成分の特定の組み合わせに特徴的なバルクの化学的、機械的、物理的及びその他の特性を示すハイブリッドゾル−ゲル材料である。
【0037】
本態様において特に有用であり得る、典型的な有機的に修飾されたシランとしては、クロロシラン;クロロトリメチルシラン;クロロトリエチルシラン;クロロトリヘキシルシラン;ジクロロジメチルシラン;トリクロロメチルシラン;N,O−ビス(トリメチルシリル)−アセトアミド(BSA);N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA);ヘキサメチルジシラザン(HMDS);N−メチルトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA);N−メチル−N−(t−ブチルジメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MTBSTFA);トリメチルクロロシラン(TMCS);トリメチルシリルイミダゾール(TMSI)及びこれらの組み合わせが挙げられる。表面処理に特に有用なものとして列記されたこの基は、前パラグラフ中に含まれる化合物と類似しているが、アルコキシリガンドを含有していない点で異なる。
【0038】
詳細な説明
本発明は、ゾル−ゲル組成物及びそれらの使用を包含する。具体的には、本発明のゾル−ゲル組成物は、(1)生物活性材料リザーバとして、及び、ある種の実施形態において、徐放生物活性材料リザーバとして、並びに(2)有機表面と無機表面の間の接着を強化させるために使用される被覆として、本発明のゾル−ゲル組成物を有用なものとする特性を有する。本発明のゾル−ゲル組成物を作製するために使用される方法は、ゾル−ゲル過程時に、形成されているゲル中への生物活性材料の取り込みを増強することができ、組成物が患者中に植え込まれた際に、生理的環境中への生物活性材料の放出速度の調節を助ける特性を、形成されたゾル−ゲル組成物に与えることもできる。具体的には、特定の生物活性材料の特性に応じて、生物活性材料がゾル−ゲルプロセス中に環境とどのように相互作用するかを調節し、及び埋め込まれた後に、生物活性材料が、形成された組成物から生理的環境へどのように放出されるかを調節するために、ゾル−ゲルプロセスの化学的環境が調整される。形成しているゲル中に捕捉されており、ゲルが形成された際に、ゾル−ゲル組成物から様々な生物活性材料が溶出する速度は、ゾル−ゲル過程の間に使用される溶液の組成を変化させることによって、さらに精緻に調節することが可能である。さらに、有機的に修飾されたシランでの形成されたゾル−ゲル組成物の処理は、生物活性材料が、可溶化され、植え込み後に、生理的環境中にゾル−ゲル組成物から可溶化及び放出されるのを妨げるのに役立ち得る。
【0039】
既述のように、本発明は、生物活性材料リザーバとして、又は生物活性材料被覆として機能する植え込み可能な医療機器の表面に付与することができるゾル−ゲル組成物を包含する。ゾル−ゲル組成物は、テンプレートをベースとしたゾル−ゲル合成経路を介して製作されたメソ多孔性無機酸化物とすることができ、メソ多孔性材料は、生物活性材料を保持することができ、及び所定の期間にわたって生物活性材料を放出することができる生物活性材料リザーバとして機能するように適合されている実質的に連続的に相互接続されたチャンネルを有している。本発明のゾル−ゲル組成物は、植え込み可能な医療機器の表面への付与前に、材料自体の物質内に生物活性材料を有することによって、及び/又は植え込み可能な医療機器の表面上への付与後に材料の相互接続されたチャンネル中に搭載された生物活性材料を有することによって、生物活性材料リザーバとして機能し得る。本発明のゾル−ゲル組成物中への生物活性材料の取り込みは、一実施形態において、ゾル−ゲルプロセスの間に、有機的に修飾されたシランを溶媒に添加することによって増強され、又はより精緻に調節することが可能である。有機的に修飾されたシランは、生物活性材料が形成しているゲルと水性環境間を自由に移動できないように、プロセスの疎水性/親水性及び形成しているゲル材料など、ゾル−ゲルプロセスの化学的環境を変化させることができる。一実施形態において、生物活性材料は、静電力及び/又は化学的若しくは水素結合の故に形成するので、ゲルの近くに保持される。
【0040】
本発明のメソ多孔性ゾル−ゲル組成物は、フィルム全体を通じて、三次元的に、実質的に連続して相互接続されたチャンネルを含む高度に秩序化された表面接近可能な孔チャンネルネットワークを示す。この秩序化された相互接続された構造は、本発明のゾル−ゲル組成物が生物活性材料リザーバとして機能することができる1つの機序を提供する。フィルムの表面に付与された生物活性材料は、多孔性フィルムを貫通し、拡散、浸透圧若しくは電気化学的誘発又はその他の手段によって後に放出される生物活性材料を相互接続されたチャンネルに搭載する。
【0041】
本発明のメソ多孔性ゾル−ゲル組成物は、ゾル−ゲル前駆体(アルコキシドシリカ前駆体(これに限定されない。))と混合された場合に、高度に秩序化された三次元構造へと自己集合することができるトリブロックコポリマーテンプレートを用いて作製される(図1)。熱処理(又はUVランプ/オゾン源への室温曝露)は、テンプレートを除去し、周囲の無機相の架橋(時効)を機械的に強固なネットワークへと誘導する。従って、最終ゾル−ゲル組成物は、図1に示されているもののネガティブであり、相互接続されたチャンネルのネットワークを残存させるように、ブロックコポリマーが除去されている。このようにして形成されたチャンネルは、予測可能な均一性を有する。この記載された例において、孔及びチャンネルは、メゾスコピック域、一般的には、約2から30nm、より一般的には、約5から30nmの直径を有する。チャンネルの直径は、水熱処理又は当初溶液中への疎水性膨張剤の添加を介して、正確に調節することが可能である。従って、本発明の孔及びチャンネルは、約2から100nm、約3から75nm、約5から50nm、約7から30nm又は約10から20nmを含む(これらに限定されない。)あらゆる所望の直径を有するように作製することが可能である。
【0042】
既述のように、持続的な、調節された、及び持続放出型生物活性材料の送達は、本発明のゾル−ゲル組成物生物活性材料送達リザーバ(及び対応する生物活性材料送達機器)を用いて実現することができる。ゾル−ゲル組成物の特性を変動させることによって、様々な生物活性材料に対して、異なる生物活性材料送達放出速度及び特性を達成することが可能である。例えば、生物活性材料は、概ね一次又は概ね二次速度論で放出され得る。送達は、生物活性材料送達機器の植え込み時に、又は植え込み後の特定の時点で開始することができ、短期間、例えば、約1時間未満、約30分未満、約15分未満又は約5分未満の間に、ゼロから最大速度へ急速に増加し得る。このような最大送達は、送達速度が突然低下するまで、所定の期間継続し得る。例えば、送達は、少なくとも約8時間、約2日、約4日、約7日、約10日、約15日、約30日、約60日又は少なくとも約90日間、最大速度で継続し得る。他方、生物活性材料送達速度は、概ねベル形状の経時的曲線を辿ることができ、最初はゆっくりであるが、送達速度が指数関数的に増加して、最大速度まで上昇した後、時間が経過するにつれて速度が指数関数的に減少し、最終的には徐々にゼロまで低下する。徐放生物学的材料送達の分野では、一般的に、生物活性材料の大半が短期間のうちに送達される巨大な生物活性材料送達「突発」を回避することが望ましいと考えられている。形成しているゾル−ゲル組成物中への生物活性材料の増強された取り込みを可能とする本発明の方法は、この問題を軽減するのに役立ち得る。有機的に修飾されたシランで、ゾル−ゲル組成物の表面及び/又はチャンネルを処理することを採用する実施形態は、薬物溶出の速度を遅くするためにも使用することもできる。このアプローチにおいて、有機的に修飾されたシランの疎水性基は、液体がゾル−ゲル組成物中に拡散し、生物活性材料を可溶化して、生物活性材料の初期放出をもたらす能力を阻害する。次いで、本発明に従い、具体的な生物活性材料/疾病/患者の組み合わせに対して望まれることに応じて、送達特性の大幅な変動を与えるように、様々なパラメータを調整することができる。
【0043】
生物活性材料の搭載及び放出特性(例えば、最大生物活性材料搭載、生物活性材料溶出の速度、及び時間の経過につれて溶出特性が変化する様式)は、ゾル−ゲル組成物生物活性材料リザーバの特性(生物活性材料が、該材料そのもの中に見出されるか(生物活性材料送達機器への事前付与)、前記材料の相互接続されたチャンネル内に見出されるか(生物活性材料送達機器への付与後に搭載される。)、又は両方に見出されるかどうかなど)及び生物活性材料製剤の特性の両者に依存する。放出速度論は、生物活性材料製剤を変化させ、ゾル−ゲル材料の孔径を変化させ、チャンネルの内部を被覆し、ゾル−ゲル組成物の表面及び/又はチャンネルを、有機的に修飾されたシランで処理し、様々な物質で材料をドープすることによって変化させることが可能である。
【0044】
ゾル−ゲル材料の孔径を操作するための幾つかの公知の方法が存在する。両親媒性分子の疎水性部分のサイズは、かなりの程度まで、孔の直径を規定するので、使用されるテンプレート材料の種類及びゲル中で使用される量を変化させることによって、孔の直径を変化させることが可能である。例えば、MCM−41の孔径は、約1.6nmから最大約10nmの範囲で調整することができる(U.S. Patent Nos.5,057,296 and 5,102,643, and Beck et al., 1992, J. Am.Chem.Soc.114, 10834)。孔径を変化させるための別の方法は、テンプレート自己集合後に、疎水性領域を膨張させる疎水性有機共溶媒をゾル中に取り込ませることによる方法である。最も広く使用される膨張剤は、1,3,5トリメチルベンゼン(TMB)(Schmidt−Winkel et al., Chemistry of Materials, 2000, 12, p. 686−696)であるが、トリイソプロピルベンゼン、ペルフルオロデカリン、アルカン、アルケン及び長鎖アミン(N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミンなど)など、原理的に、多くの他の有機材料がこの役割を果たし得る。他の適切な方法には、自己集合されたゲルの合成語水熱処理(Khushalani et al., Advanced Materials, 1995, 7, p.842)又は温度の改変が含まれる。例えば、Galarneau et al., 2003(New J.Chem.27:73−39)は、合成温度が、二分した様式で形成されたメソ多孔性物質の構造に影響を与えることを示す。80℃未満で合成された場合には、SBA−15は、約5nmの直径を有するメソ細孔及び約1nm未満の直径を有する「超微細孔」を有する。80℃以上で合成された場合には、SBA−15は、約9nmより大きな直径を有するメソ細孔を有し、超微細孔を有しない。
【0045】
生物活性材料の放出速度論は、ゾル−ゲル組成物内のチャンネルの表面特性を修飾することによっても変化させることが可能である。ゾル−ゲル合成の完了及び構造を誘導するテンプレートの除去後、所望の表面官能性を付与するために孔チャンネルの内部表面を修飾することができる。チャンネル内に担持されるべき生物活性材料又はその他の物質とよりよく相互作用させるために、チャンネルは、疎水性若しくは親水性被覆で、又は帯電した表面被覆で被覆することができる。これを達成するための1つの方法は、有機的に修飾されたシランを使用することによるものである。どのような終結部分が使用されているかに応じて、より大きな疎水性又はより大きな親水性特性の何れかを表面に付与するために、有機的に修飾されたシランをリンカー剤として使用することができる。例えば、終結分子としてカルボキシル基が使用されている場合には、親水性特性が付与されるが、長鎖脂肪酸又はチオール(thyol)が使用される場合には、より大きな疎水性特性が付与される。様々な親水性及び疎水性部分が本分野において周知である。
【0046】
あるいは、チャンネル表面が、クロロシリル(Si−Cl)基(クロロシリル基は、その後、有機化学の原理に従って加工処理することによって、あらゆる所望の官能基へさらに変換され得る。)によって被覆された状態になるように、UV光によって反応性にされた(Cl−>Cl)Cl作用気体へ曝露することによって、チャンネル壁を修飾することができる。例えば、ホスゲン(SOCl)、イソシアナート(−N=C=O)、マラミド及びその他など、他の作用気体で、孔壁表面を最初に処理することによって、類似の結果を得ることもできる。孔壁表面のシラノール(Si−OH)基と容易に反応して、別の基(例えば、ホスゲンの場合にはSi−Cl)でシラノールを置換し、次いで、別の基は、孔壁にあらゆる所望の化学的官能基を付与するために、その後の段階で反応させることができる化学物質が存在する。
【0047】
チャンネル特性を操作する別の方法は、表面電荷を付与するために、強い酸性又は塩基性液体溶液による処理である。具体的には、表面の等電点(シリカの場合pI=2)より低いpHを有する溶液への曝露は、表面が正に帯電した状態になると、表面シラノール部分のプロトン化(Si−OH−>Si−OH2+)をもたらす。同様に、表面pIより高いpHの溶液での処理は、表面シラノールの脱プロトン化及び負の正味表面電荷(Si−OH―>Si−O)をもたらす。溶液が、静電的引力を介して、帯電された表面に付着することができる逆符号の帯電した溶質も含有していなければ、酸性又は塩基性溶液から除去した際に、この電荷は維持されないことに注意することが重要である。後者の場合には、表面は帯電した状態を保ち、酸性又は塩基性溶液から除去された後でさえ、溶質は表面に付着した状態を保つ。これらの特性は、メソ多孔性マトリックス(以下でさらに論述されている。)からの、極性又は電気的に帯電した生物活性分子の溶出を刺激するために使用することができる。
【0048】
異なる生物活性材料は、サイズ、疎水性及び電荷の観点から異なる特性を有するので、上記方法の1つ又はそれ以上は、チャンネル中に搭載される具体的な生物活性材料に基づいて選択することができる。これは、生物活性材料の搭載及びゾル−ゲル組成物からの放出に影響を与える。例えば、パクリタキセルは、約1から2nmのサイズの疎水性(親油性)分子である。他の疎水性生物活性材料としては、例えば、アムホテリシン、デキサメタゾン及びフルタミドなどの多くの抗精神薬、抗生物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。パクリタキセルは、ラパマイシンより若干疎水性であり、コルチコステロイドは、一般に、ラパマイシン又はパクリタキセルより疎水性が低い。疎水性の生物活性材料を使用する場合には、生物活性材料の搭載を最大化するために、疎水性被覆でチャンネルを被覆することが望ましい場合があり得る。生物活性材料の搭載を最大化するための親水性被覆は、高度に親水性及び水溶性である生物活性材料に対して役立ち得る。親水性生物活性材料としては、多くのホルモンペプチド、バンコマイシン及びフェノバルビタール、シメチジン、アテノロール、アミノ配糖体などの抗生物質、ホルモン(例えば、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、p−ニトロフェニルβ−セロペンタオシド及び黄体形成ホルモン放出ホルモン並びに他の多くが上げられるが、これらに限定されない。周知の陽イオン性生物活性材料としては、ビンクリスチン、アミロライド、ジゴキシン、モルヒネ、プロカインアミド、キニジン、キニーネ、ラニチジン、トリアムテレン、トリメトプリム、バンコマイシン及びアミノ配糖体が挙げられるが、これらに限定されない。陰イオン性生物活性材料としては、ペニシリン及び多くの利尿薬が挙げられるが、これらに限定されない。従って、チャンネル処理が有益であるかどうかを決定する際には、搭載されるべき生物活性材料の特性及び所望される放出特性を考慮すべきである。
【0049】
本発明のマトリックス又はチャンネル内に入ると、生物活性材料は、幾つかの様式で溶出することができる。生物活性材料を放出するために、単純拡散を使用することが可能であり、この場合には、生物活性材料は、環境溶液(体液)中へ濃度勾配を下向する。浸透圧効果も使用することが可能であり、これによって、溶解された生物活性材料は、より高い浸透ポテンシャルの領域からより低い浸透ポテンシャルの領域へ、細胞間隙流体流によって運搬させることができる。浸透圧効果は、生物活性材料をマトリックスから強制的に移動させるためにも使用することができる。例えば、水溶液の漸増容量をマトリックスに充填することによって、疎水性の生物活性材料をマトリックスから強制的に移動させることができる。これは、例えば、ゾル−ゲルマトリックス組成物の半分を疎水性生物活性材料で充填し、残りの半分を可溶性塩で部分的に充填することによって行い得る。患者の中に植え込まれると、体液由来の水が塩を溶解し、水をマトリックス内に引き付ける強力な浸透ポテンシャルを生成する。流入する水は、疎水性生物活性材料を排除し、疎水性生物活性材料をマトリックスから周囲の生理的環境中に排出する。このような系は、多くの様式で設計することが可能であり、浸透圧ポンプはゾル−ゲルマトリックス組成物から分離され得る。
【0050】
生物活性材料放出速度論は、生物活性材料製剤の正味電荷、疎水性及び流体力学的特性など、生物活性材料製剤そのものの物理的特性を変化させることによっても調整することが可能である。
【0051】
ゾル−ゲル組成物から生物活性材料を溶出させるために使用される他の方法としては、帯電した生物活性材料粒子に対する電気泳動機構の使用、環境に曝露された生物活性材料リザーバの表面積を調節することなどの物理的な開閉、並びに、リザーバからの生物活性材料の放出速度を調節するために使用することができる様々な生物分解性及び半透性の膜の使用が挙げられる。
【0052】
本発明の1つの重要な態様は、抗再狭窄生物活性材料の送達である。1つの特に有効な抗再狭窄生物活性材料は、親油性生物活性材料であるパクリタキセル(N−ベンジル−β−フェニルイソセリンエステル、分子量853.9)(イチイの木の樹皮から単離された抗癌剤)であると思われる。
【0053】
既述のように、本発明のゾル−ゲル組成物は、フィルムの全体積を通じて連続的に相互接続されている高度に秩序化された、表面接近可能な開放チャンネルネットワークの故に、有機表面と無機表面の間の接着を強化するのに極めて適している。例えば、本発明の無機ゾル−ゲル組成物の上部表面上に堆積された有機生物活性材料含有ポリマーは、多孔性フィルムに接近して、その厚さ全体を通じて透過することが可能であり、下に存在する無機基材表面まで達する強固なナノ複合材料相を作出する。ポリマーとゾル−ゲル組成物のこのような分子相互嵌合は、腐食及び機械的除去に対して抵抗性を有する極めて強固な結合を生成する。
【0054】
図2は、有機及び無機表面間の接着を増強させるために使用される本発明の三層構造10を図解している。この例では、ゾル−ゲル組成物110は、無機基材100の上に堆積されている。有機ポリマー120は、ゾル−ゲル組成物110を通じて相互嵌合されている。本発明の典型的なゾル−ゲル組成物では、孔130の平均直径は約5から30nmの間とすることができ、フィルム上部からの孔(チャンネルネットワークへのアクセス点)の表面密度は、約1012/cmの桁であり得る。
【0055】
接着を強化するために本発明のゾル−ゲル組成物を使用する際、接着が求められているポリマーは、前駆体製剤の回転被覆又は他の何れかの適切な方法によって、ゾル−ゲル組成物の上部に堆積させることができる。次いで、ポリマー材料は、毛管作用又は圧力若しくは熱的処理によって(これらに限定されない。)ゾル−ゲル組成物の孔に進入し、これにより、一実施形態において、実質的にその厚さ全体を通じて、ゾル−ゲル組成物を透過する。この透過の後に、光調節された反応又は他の適切な方法による熱硬化を介したポリマーの架橋が続く。場合によって、接着をさらに向上させるために、この工程と同時に又はこの工程の後に、有機ポリマー120と孔130の修飾された壁と無機基材100の表面間の共有結合又はその他の化学的結合の形成を行うことができる。
【0056】
生物活性材料リザーバを提供する目的であるか、又は接着を強化する目的であるかを問わず、本発明のゾル−ゲル組成物は、以下の非限定的に方法によって、作製し、基材の上に堆積させることができる。(1)、まず、基材、例えば、外科用鋼、ニッケル−チタン合金(NiTi)、コバルト−クロム合金(Co−Cr)、炭素繊維材料、プラスチック又は他の適切な生物適合性材料(これらに限定されない。)を用意し、(2)次いで、基材表面から全ての望ましくない汚染を除去し、(3)基材にマイクロブラスト加工を施し、(4)無機前駆体を、両親媒性トリブロックコポリマーテンプレート化剤、1つ又はそれ以上の生物活性材料及び有機的に修飾されたシランと混合することによって、ゾル−ゲル組成物を作製する。典型的な無機前駆体の非限定的な例としては、テトラエトキシシラン及びチタンオルトプロポキシドなどのSiO及びTiOが挙げられる。所望であれば、この段階で、他の溶媒、例えば、エタノールなどの流動修飾物質又は1,3,5トリメチルベンゼンなどの膨張剤を添加することも可能であり、(5)次いで、一般に、回転被覆、浸漬被覆又は噴霧被覆又は被覆を施すべき物体の塗布によって(これらに限定されない。)、基材の表面上に、テンプレートによって補助されたゾル−ゲル組成物を堆積させる。さらに、ある種の実施形態において、ゾル−ゲル組成物は、有機的に修飾されたシランによって、その表面上又はそのチャンネル内を処理することが可能である。
【0057】
本発明に従って使用するための適切な有機的に修飾されたシランとしては、非限定的な例としては、アルキルシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなど、但しこれらに限定されない。)、アリール官能性シラン(例えば、フェニルトリエトキシシランなど)、アミノシラン(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなど)、アクリラート及びメタクリラート官能性シラン(例えば、アクリルオキシプロピルトリメトキシシランなど)、カルボキシラート、ホスホナート、エステル、スルホナート、イソシアナート、エポキシ官能性シラン、クロロシラン(例えば、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリヘキシルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシランなど)、N,O−ビス(トリメチルシリル)−アセトアミド(BSA);N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA);ヘキサメチルジシラザン(HMDS);N−メチルトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA);N−メチル−N−(t−ブチルジメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MTBSTFA);トリメチルクロロシラン(TMCS);トリメチルシリルイミダゾール(TMSI);及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
浸漬被覆又は噴霧被覆は、ステントなど、複雑な形状と一定しない屈曲を有する物体を被覆するために簡単に使用することができる。ゾル−ゲル組成物の最終的な厚さは、最終的な希釈標準溶液において、全ての成分の濃度が同じ量だけ減少し、それらの相対濃度及びモル比が一定に保たれるように、溶液を希釈することによって、具体的には、溶液により多くの溶媒(典型的にはエタノール)を添加することによって調節及び最適化することができる。ゾル−ゲル組成物の厚さは、実施例に記載されているように、回転被覆若しくは浸漬被覆速度又は両方を変化させることによっても調整することが可能である。次いで、熱処理によって、又はUVランプ/オゾン源への室温曝露によって、チャンネルを画するテンプレート材料が除去される。これは、テンプレートを除去し、周囲の無機相の架橋を機械的に強固なネットワークへと誘導する。無機前駆体が熱感受性である場合には、UV/オゾン処理は、特に有用である。
【0059】
本発明のある種の実施形態において、複数の目盛長でゾル−ゲル組成物をテンプレート化するパターン形成技術を使用することができる。例えば、シリカなどのゾル−ゲルメソ多孔性酸化物での被覆は、ゾル−ゲル前駆体分子との縮合反応に関与することができる利用可能な−OH部分を有する親水性表面を必要とする。堆積前に−OH官能基の選択された表面領域を剥離するために、伝統的なリソグラフィー若しくはソフトリソグラフィー(Whitesides et al., Angew.Chem.Intl.Ed, 1998, 37, p.550)又は何れかの他の表面パターン形成法が使用される場合には、メソ多孔性被覆は、しかるべくパターン形成される。あるいは、ゾル−ゲル組成物被覆は、例えば、柔軟なシリコーン鋳型と基材表面の間に液体ゾルの限られた量をその中で圧縮することができる毛細管中での微小成形を介して(Trau et al.,Nature.997,390,p.674)パターン形成することができる。
【0060】
あるいは、ゾル−ゲル組成物被覆の堆積をパターン形成するために、第二の犠牲細孔形成剤を使用することが可能である。例えば、100から500nm範囲の半径を有する単分散ポリスチレン球体(Stein et al., Science, 1998,281,p.538−540)などの、市販のラテックス粒子若しくは特別に合成されたラテックス粒子を介して、又はホルムアミド系中の油など、相分離されたエマルジョン(Pine et al.,Nature,1997,389,p.948−951)を介してゾル−ゲル固体をテンプレート化することによって、マクロ多孔性無機材料(100nm<d<10μm)を作製する方法が確立されている。これら及び他の関連する方法は、本明細書に記載されているゾル−ゲル組成物を生成する自己集合テンプレートプロセスと組み合わせることができる。最終的な結果は、多様な規模の粒子を有する階層的に秩序化された無機固体である(Whitesides et al.,Science,1998,282,p.2244)。このようなアプローチは、細胞遊走及び骨/インプラント統合を可能とするためにはマクロ規模の多孔性のインプラント表面が望ましいのに対して、局所的な生物活性材料送達のためにメソ規模の多孔度を活用することが可能である整形外科用途において特に有効であり得る。
【0061】
本発明の別の実施形態は、適切なゾル−ゲル前駆体が存在しない他の無機固体(金及び白金などの(これらに限定されない。)貴金属を含み、幅広く炭素をベースとしたポリマーにさえ拡張される。)をパターン形成するための中間鋳型としての、比較的容易に取得できるメソ多孔性材料(シリカなど)の使用である。例えば、まず、植え込み可能な機器上にメソ多孔性シリカ被覆を堆積させた後、Pd又はAuナノ粒子(これらに限定されない。)の揮発性前駆体又は液体をベースとした懸濁物を介して「鋳造」し、続いて、例えば、フッ化水素酸処理によって、メソ多孔性シリカを溶解することにより、シリカフレームワークのメソ多孔性貴金属レプリカをもたらすことができる(Schuth, in Studies in Surface Science and Catalysis, v.135, p.1−12)。
【0062】
実施例
【実施例1】
【0063】
まず、濃(12M)HCl25μLを、脱イオン水860μL及び無水エタノール3mLと混合することによって、20mLのガラスシンチレーションバイアル中に0.3Mエタノール性塩酸を作製することにより、0.1Mテトラエトキシシラン(TEOS)ゾル−ゲル溶液を調製した。1.5mLの微小遠心管中で、エタノール1mLと112μLTEOSを混ぜ合わせた。30秒にわたって、酸性化されたエタノール溶液にTEOS溶液を滴加し、得られたTEOS溶液を、45秒間加水分解させた。加水分解期間が終了した時点で、加水分解されたTEOS溶液2mLを、ガラスバイアル(1ドラム)中のデス−アスパラギン酸アンギオテンシンI(DAA−I)(2.5mg)に添加した。ペプチドの溶解及び混合を確実に行うために、短時間の音波処理を使用した。5ミクロンフィルターを通過させた後、得られた溶液を5mLの気体機密性ハミルトン注射器に移した。Harvard Scientificの注射器ポンプ中に注射器を配置し、超音波噴霧器に接続した。
【0064】
懸濁用の溝付き円錐を用いて、被覆心棒上に、2つの清浄化された12mmステント又は4つの清浄化された6mmステントの何れかを戴置した。心棒を噴霧装置に取り付け、40℃での乾燥の30分後に、表面上にゲル約20μgを堆積させるために、噴霧ヘッドを超えて心棒を繰り返し通過させながら、DAA−Iを含有するゾル−ゲル溶液の十分量をステントに噴霧した。DAA−Iの望ましい放出速度を与えるためのさらなる障壁として機能させるために、0.1MTEOSの上部被覆を付与した。0.1MTEOS溶液は、先述のように調製したが、DAA−Iは添加しなかった。40℃で30分間乾燥させた後に、50μgの上部被覆を生じさせるのに十分なTEOSを、ステントに噴霧した。
【0065】
図3A−3Dを参照すると、Oxford Instruments INCA X−Sight Model 7021とともにHitachi S−3000N Scanning Electron Microscopeを用いて、DAA−Iで被覆されたステントの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を記録した。両面伝導接着性円盤を用いたチャンバーの排気前に、走査型電子顕微鏡内の回転ステージ上に、予めDAA−I/TEOSで被覆された幾つかのステントを配置した。各ステントの地図を描き、互いに対する各ステントの向きに基づいた位置決定及びその後の特定を示す。画像化の前に、ステントの表面準備は行わなかった。内部視覚カメラ及び外部調節を用いて、SEM視野内の適切な位置にステントを配置した。許容される配置が為された時点で、電気的画像系に電圧を加え、60×(図3A)、500×(図3B)、1000×(図3C)及び2000×(図3D)の倍率で、様々な対象領域を画像化した。明るさとコントラストを自動調整した後に、目的の特定領域の電気的画像を保存した。
【0066】
図4を参照すると、酢酸アンモニウム緩衝液、pH5.0中の0.1%ソルトール中において、37℃でステントを温置したときに、この溶媒中に見出されるDAA−Iの量を分析することによって、TEOS被覆されたステントからのDAA−Iの溶出を、時間の関数として測定した。AltimaC−8カラム(Altech,Chicago IL)を用いて、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)プロファイル中のDAA−Iピークを積算し、標準曲線と比較することによって、DAA−Iの量を求めた。図4から明らかなように、TEOSとDAA−I間のモル比を増加させることによって、DAA−I溶出の速度を遅らせることが可能である。
【実施例2】
【0067】
TEOSの量を増加させることがDAA−Iの溶出速度に対して及ぼす影響を調べるために、上記方法及びプロトコールに従って、DAA−Iの一定量(1.25mg/mL)に、TEOSの漸増量0.1から0.5Mを添加した。上述のように、溶液のそれぞれをステント(9mm、n=4)に噴霧し、秤量し、24時間にわたって溶出されたDAA−Iの量を比較した。図5Aは、72時間にわたって放出された生物活性材料の総量を示しているのに対して、図5Bは、時間の関数としての溶出曲線を示している。これらの図5A−5Bから明らかなように、薬物に対するTEOSのモル比を増加させると、水溶液中への薬物の放出速度が著しく遅延した。
【実施例3】
【0068】
加水分解されたTEOS又はテトラメトキシシラン(MEOS)のみから構成されるゾル−ゲルは、比較的親水性であり、生物活性材料をより有効に捕捉するとしても、パクリタキセル、ラパマイシン、シクロスポリン及び限られた水溶性を有するその他の物質など、多くの疎水性薬物に対して、化学的に適合的な環境を与えない。生じたゾル−ゲルの疎水性特性を増加させるために、様々なアルキル化されたエトキシシランをゾル−ゲル形成溶液に添加することが可能である。劇的に異なるゾル−ゲル被覆を与えるために、メチル、t−ブチル、イソブチル、ヘキシル、フェニル、オクチル、ドデシル及びオクタデシルトリエトキシシランなどの化合物を、異なるモル比で、混合物に添加することが可能である。このような化合物を含めることによって、多様な化合物をゲル中に取り込ませる能力に著しい差がもたらされ、ゲルから水溶液中へのそれらの放出速度にも影響を与える。このような効果の例は、図6に示されている。10から90%のフェニル、オクチル及びドデシルトリエトキシシランの何れかの様々な濃度をTEOSと混合することによって、ゾル−ゲル溶液を作製した((TEOS+シラン)の総濃度は0.1Mである。)。
【0069】
溶液の各々は、薬物10μgでステントを被覆するのに十分なセリバスタチンの量を含有していた。ステントに噴霧し、乾燥させた後、ポリプロピレン微量遠心管中の水1mL中に、ステントを別々に浸漬させた。5分後に、セリバスタチン含量について、溶液の分取試料を分析した。図6から明らかなように、ゲル中に、より多くの疎水性シランが取り込まれると、溶出される生物活性材料はより少なくなった。最も有効であったのは、ドデシルトリエトキシシランであり、最適な含量は、約30%より大きく、約90%より小さかった。
【0070】
この知識を用いて、0.5M100%TEOS又は0.2M40%ドデシルトリエトキシシラン/60%TEOSの何れか中で被覆した場合に、セリバスタチンの溶出特性を直接比較するステントを調製した。興味深いことに、後者の組成物のより高い濃度は、構造的に安定でなかった。40%ドデシルトリエトキシシラン/60%TEOSの0.3M及びそれ以上の濃度で被覆されたステント上に、著しい薄片及び粒子の形成が観察された。重要な特徴は、セルビスタチン4μg及び8μgの溶出曲線が2つのゾル−ゲルに対して等しかったことであり、親水性シランを含めることによって、一定の溶出速度を得るためにゲル内に必要とされるゾル−ゲル前駆体の総量が低下することを示唆している(図7A−7B参照)。
【実施例4】
【0071】
ゾル−ゲルマトリックス組成物からの生物活性材料の放出を調節する別の非限定的方法は、ゾル−ゲルを反応性クロロシランで化学的に処理することである。本実施例では、0.5MTEOS中の10μgセリバスタチンで、ステントを噴霧被覆し、次いで、乾燥させた。次に、一切の生物活性材料なしに、0.5MTEOSの第二の層を付与した。次いで、約10分間又は約30分間、クロロトリメチルシランの1M溶液中に浸漬し、次いで、40℃のオーブン中で一晩乾燥させることによって、ステントを処理した。ゾル−ゲルの表面に対するこの「シラン化(silanation)」の効果を測定するために、これらのステントからのセリバスタチンの溶出速度を、処理されていない被覆されたステントからの溶出速度と比較した。図8から明らかなように、クロロトリメチルシランによるゾル−ゲルの修飾は溶出の速度を低下させ、より長い曝露は、溶出特性に対してより高い効果を有した。
【0072】
本発明の数多くの用途が存在する。1つの非限定的な例は、完全股関節形成術である。大腿骨コンポーネントのポリメチルメタクリラート(PMMA)セメント/金属界面の不良が、セメント股関節インプラントの無菌性弛緩の主原因として認識されている。実験的及び計算的研究によって、界面剥離が、周囲のセメント被膜内の圧迫を著しく増加させ、PMMAのひび割れ及び全体的なインプラントの不具合をもたらし得ると結論付けられた。
【0073】
本発明は、ポリマー性セメントでの大腿骨コンポーネントの固定を確保するのに理想的である。ゾル−ゲル組成物は、選択したインプラント材料に従って選択することができる。SiOフィルムは、Co−Cr−Mo上に堆積させることができるのに対して、TiOフィルムは、Ti6−A14−Vコンポーネントに対して理想的であると思われる。適切なシラン接着促進物質と組み合わせて、インプラントと予め被覆されたPMMA材料間の優れた結合を確立することができる。さらに、ゾル−ゲル組成物の表面の粗さは、数桁の規模で小さい。この特性は、破片の生成及び骨の喪失を予防する上で有益であるはずである。
【0074】
Ti6−A14−V合金基材上に堆積され、擬似体液に曝露されたSiOメソ多孔性フィルムは、ヒドロキシアパタイト結晶の沈殿を誘導することが示されている。しかしながら、粒径の範囲の故に、これらの研究で示唆されたように、無セメント関節置換用途においてメソ多孔性フィルムが有用であると判明する可能性は低いと思われる。50から100μmの範囲のサイズを有する孔は、多孔性被覆全体にわたって、骨組織が増殖状態にあるようにするために必要な最小限度として報告されている。これに対して、本発明において考察されたとおり、メソ多孔性形態は、ポリマー分子鎖を収容するのに理想的である。
【0075】
疎水性薬物であるパクリタキセルを使用する本発明の一実施形態において、ゾル−ゲル合成を介して誘導された無機酸化物(上記のとおり)、イオン性又は非イオン性界面活性剤及びブロックコポイリマー又はあらゆる多様なモル比でのこれらのあらゆる組み合わせによって、マトリックスを構成することが可能である。モル比及び被覆プロセスのパラメータを適切に選択することによって、マトリックスが薬物を封入し、拡散を介して薬物の徐放を制御するように、この材料系が自己集合するように誘導させることが可能である。自己集合プロセスは、マトリックス成分の相分離も含むことが可能であり、相分離において、界面活性剤及び/又はブロックコポリマーはテンプレートとして作用し、(上述のように)ゾル−ゲル無機材料の集合を誘導することができる。その後、テンプレート成分を除去することによって、無機マトリックス中の得られた相互接続された孔チャンネルネットワークを通じた薬物放出を制御するための、場合によって使用される機構を与えることができる。
【0076】
別の実施形態において、マトリックスは、専ら、ゾル−ゲル酸化ケイ素から構成され、パクリタキセル/TEOSのモル比は、約10:1から約1:200の範囲である。例えば、約1:10のパクリタキセル/TEOSモル比及び約5μg/μLの薬物濃度を有する溶液は、約0.9mLのエタノール及び約50μLの脱イオン水から構成される溶媒中にパクリタキセル約5mg及びTEOS約50μLを溶解させることによって調製される。ステントは、毛管によって補助された塗布を通じて、溶液約2μLで被覆することが可能であり、薬物の計約10μgが搭載される。
【0077】
別の実施形態において、まず、ポリ乳酸(PLA)又はブロック(ポリ乳酸)−ブロック(ポリグリコール酸)(PLGA)ポリマー球体中に、パクリタキセル(又は他の生物活性材料)を封入することが可能であり、ここで、ポリマー/薬物モル比は、約200:1から約1:1の何れとすることも可能であり、又は、別の実施形態において、約10:1から約3:1とすることが可能である。ポリマー/薬物球体は、安定な懸濁液を形成させるために、脱イオン(DI)水中に懸濁させることができる。次いで、例えば、水溶液の噴霧被覆の噴霧被覆に続く、ゾル−ゲル組成物の上部被覆を介して、球体をステント上に堆積させることができる。ゾル−ゲル組成物上部被覆は、機械的強度及び機器表面への球体の改善された接着を与え、並びに薬物溶出をさらに調節するための拡散障壁として作用することが可能であるのに対して、生物分解性ポリマー球体は、持続的な薬物放出を与えることが可能である。
【0078】
具体的な例において、PLA/パクリタキセル球体約40mg(約18重量%の薬物濃度)を、DI水約2mL中に懸濁することができる。次いで、約40μL/分の速度でこの溶液を分配し、約2.0ワットで振動コンポーネントを動作させることによって得られたエアロゾル−ビームを約20回通過させることによって、ステントを噴霧被覆する。この手順によって、約20μgの総薬物搭載が得られる。さらに、ゾル−ゲル酸化ケイ素上部被覆は、加水分解されたTEOS溶液を用いて噴霧被覆することができる。加水分解は、水溶液中で行うことができ、例えば、酸性若しくは塩基性条件、撹拌若しくは超音波振動を介した撹拌、有機溶媒の添加又は上記の何れかの組み合わせによって、場合によって促進することができる。具体的な例において、上部被覆溶液は、約pH3以下であり、TEOS約210μL、DI水約9.25mL、エタノール約0.5mL及び希(0.1M)塩酸(HCl)約100μLを混合し、磁気撹拌棒を用いて、約1時間、約1500rpmで激しく撹拌することによって調製することが可能である。上部被覆は、約40μL/分で溶液を分配し、出力約2.0Wで溶液をエアロゾル化しながら、スプレービームにステントを約20回通過させることを含む。
【0079】
別の例において、PLA/セリバスタチン球体の中間層は、薬物を含有する基礎被覆とゾル−ゲル組成物上部被覆の間に挟むことができる。例えば、DI水約1mL中にPLA/セリバスタチン球体約20mgを溶解し、約40μL/分の分配速度及び約1Wのエアロゾル化出力で、約20回の通過を噴霧することによって、この中間層を取得することができる。この中間層の目的は、拡散する分子の球体との相互作用を介して、薬物放出をさらに延長することである。
【0080】
本発明のこれらの実施形態中の基礎被覆は、さらなる生物活性材料を含有することが可能であるが、さらなる生物活性材料を含有する必要はない。基礎被覆中に含有される生物活性材料は、球体中に見出され、又は場合によって無機ゾル−ゲル組成物上部被覆中に見出される他の生物活性材料と同一又は別異とすることが可能である。例えば、基礎被覆は、同時係属中のU.S.Patent Publication No.2006−0051397(無薬物金属層の堆積に関する全ての開示に関して、参照により、本明細書中に組み込まれる。)中に記載されているように、生物活性材料を含まない金属層とすることができる。あるいは、基礎被覆は、直接的に電気化学的工程を通じて、金属層内に堆積された生物活性材料又は同時係属中のU.S.Patent Publication No.2006−0062820;2006−0051397及び20070115512(これらの記載された技術に関する全ての開示に関して、参照により、本明細書中に組み込まれる。)中に記載されているような電気化学的プロセスの使用を通じて作製された孔中に搭載された生物活性材料を有する金属層とすることができる。あるいは、基礎被覆は、生物活性材料を含まない無機ゾル−ゲル組成物、医療機器の表面に付与される前に、組成物内に生物活性材料を含有する無機ゾル−ゲル組成物、機器に付与されるまで生物活性材料を含まない無機ゾル−ゲル組成物、及び生物活性材料がその相互接続されたチャンネル中に搭載された無機ゾル−ゲル組成物とすることができ、又はゾル−ゲル組成物の本形態は、両機構を通じて生物活性材料を含むことが可能である。本発明の基礎被覆は、2004年5月4日にRaghebらに付与されたU.S. Patent No. 6,730,064(生物活性材料非含有被覆及び生物活性材料含有被覆の付与に関する全ての教示に関して、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている方法に従って付与することも可能である。
【0081】
先述の記載の広範さは、本発明が多様な有用な実施形態を包含することを明確なものとするはずである。これらの実施形態は、機器の物理的機能性によってのみ限定される層の深さを有する被覆又は層の複数を含むことができる。ある種の実施形態において、この深さは、約5ミクロンを超えない。さらに、異なる層は、異なる生物活性材料、同一若しくは別異の生物活性材料及び/又は1つ若しくはそれ以上の特定の層内の生物活性材料の混合物を含むことができる。非限定的な例として、1つの層は2つの異なる生物活性材料を含有することができ、2つの異なる層は2つの異なる生物活性材料を含有することができ、又は複数の層は異なる濃度の同じ生物活性材料を含有することができる。具体的な非限定例として、1つの機器は、3つの層を含むことができる。基礎層はパクリタキセルを含有することができ、中間層は生物活性材料を含有しないことができ、外側層上部被覆は、スタチンなどの抗炎症性生物活性材料を含むことができる。この例では、スタチンは、機器の植え込み時に、迅速に放出されるのに対して、パクリタキセルの放出は遅延される。あるいは、外側層上部被覆は、水障壁を与えるために、ドデシルシラン(これに限定されない。)を用いて疎水性とすることが可能である。本発明の範囲の最後の非限定的な例として、何れかの層のゾル−ゲル組成物は、ゾル−ゲルに由来する無機酸化物;ゾル−ゲルに由来する有機的に修飾されたシラン;有機的に修飾されたシランを含むハイブリッド酸化物;テンプレートを用いて作製されたメソ規模の細孔を有する酸化物とすることができることを理解すべきである。
【0082】
本明細書の具体的な記載以外の実施が可能な本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、実施形態の様々な適合及び改変を施し、使用することが可能である。上記記載は例示を意図するものであって、限定を意図するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ決定されるものとする。
【0083】
本明細書中で使用されている用語及び表現は、説明の用語として使用されており、限定の用語と使用されているものではない。このような用語及び表現の使用においては、図示及び記載されている特徴の均等物又はその一部を除外するという意図は存在せず、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲内で、様々な改変が可能であることが認識される。さらに、本発明の何れかの実施形態の何れかの1つ又はそれ以上の特徴も、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の他の何れの実施形態の何れの1つ又はそれ以上の他の特徴とも組み合わせることが可能である。
【0084】
別段の記載がなければ、本明細書及び特許請求の範囲内で使用されている成分の量、分子量のような特性、反応条件などを表す全ての数字は、全ての事例で、「約」という用語によって修飾されているものと理解しなければならない。従って、別段の記載がなければ、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記されている数値パラメータは、本発明によって取得することが求められている所望の特性に応じて変動し得る近似である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する意図としてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁の数字に照らして、及び通常の四捨五入技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似であるが、具体的な実施例に示されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、全ての数値は、それらの各検査測定中に見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を内包している。
【0085】
本発明を記載する際に(特に、以下の特許請求の範囲において)使用されている不定冠詞及び定冠詞並びに類似の指示語は、本明細書中に別段の記載がなければ、又は明確に文脈に反しなければ、単数及び複数の両方を包含するもの解釈しなければならない。本明細書における値の範囲の記載は、この範囲内に属する各別個の値を個別的に参照するための便法としての役割を果たすことを意図したものに過ぎない。本明細書に別段の記載がなければ、各個別の値は、あたかも各値が本明細書に個別的に記載されている場合と同様に、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載されている全ての方法は、本明細書に別段の記載がなければ、又は文脈上明確に反しなければ、あらゆる適切な順序で実施することができる。本明細書に提供されているあらゆる全ての例又は例示的言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより明確に浮き彫りにすることを意図したものに過ぎず、特許請求の範囲に記載されている以外に、本発明の範囲に対して限定を加えるものではない。本明細書中の言語は、本発明の実施にとって不可欠な特許請求の範囲に記載されていない何らかの要素を示唆するものと解釈すべきでない。
【0086】
本明細書に開示されている代替的要素又は実施形態のグループ分けは、限定として解釈すべきでない。各群の要素は、個別に、又は群の他の要素若しくは本明細書中に見出される他の要素とのあらゆる組み合わせとして参照され、請求され得る。群の1つ又はそれ以上の要素が、便宜及び/又は特許性を理由として、群内に含められ、又は群から除外され得ることが予想される。このような何らかの包含又は除外が行われる場合には、本明細書は、修飾された群を含有するものとみなされ、これにより、添付の特許請求の範囲中で使用される全てのマーカッシュ群の書面による記載を充足する。
【0087】
本明細書には、本発明を実施するために本発明者らが知悉する最良様式を含む、本発明の好ましい実施形態が記載されている。もちろん、前記記載を読めば、これらの好ましい実施形態に対する変形は、当業者に自明となる。本発明者は、当業者が、適宜、このような変形を使用することを予測し、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されているものは異なって、本発明が実施されることを予定している。従って、本発明は、適用法令によって許容されるところに従い、本明細書に添付されている特許請求の範囲に記載されている特許事項(patient matter)のあらゆる改変及び均等物を含む。さらに、本明細書中に別段の記載がなければ、又は明確に文脈に反しなければ、全ての可能なその変形における上記要素のあらゆる組み合わせが本発明によって包含される。
【0088】
さらに、本明細書を通じて、特許及び刊行物が多数参照されている。上記引用された参考文献及び刊行物の各々は、参照により、その全体が本明細書中に個別に組み込まれる。
【0089】
最後に、本明細書中に開示されている本発明の実施形態は、本発明の原理を例示するものであることを理解しなければらない。使用される得る他の修飾は、本発明の範囲に属する。従って、例として、但し、限定ではなく、本明細書中の教示に従って、本発明の別の構成を使用し得る。従って、本発明は、正確に図示及び記載されているものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、立方体対称を有する1つの実現可能なテンプレート構造の模式図を示している。
【図2】図2は、メソ多孔性ゾル−ゲルSiOフィルムの模式図を示しており、孔は、基材表面上で、立方体対称を示している。
【図3A】図3Aは、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器のSEM画像の4つの異なる拡大図を示している。
【図3B】図3Bは、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器のSEM画像の4つの異なる拡大図を示している。
【図3C】図3Cは、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器のSEM画像の4つの異なる拡大図を示している。
【図3D】図3Dは、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器のSEM画像の4つの異なる拡大図を示している。
【図4】図4は、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器からの、デス−アスパラギン酸アンギオテンシンI(DAA−I)の溶出の速度を示している。
【図5A】図5Aは、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器から、72時間後に放出されたDAA−Iの量を示している。
【図5B】図5Bは、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器から、72時間後に放出されたDAA−Iの量を示している。
【図6】図6は、本発明の教示に従って、ゾル−ゲル組成物で被覆された移植可能な医療機器から溶出されたセルビスタチンの量を示している。
【図7A】図7Aは、さらなるセルビスタチン放出特性を示している。
【図7B】図7Bは、さらなるセルビスタチン放出特性を示している。
【図8】図8は、本発明の教示に従って、有機的に修飾されたシランで処理された移植可能な医療機器からのセルビスタチンの放出特性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造要素及び生物活性材料リザーバを含む医療機器であり、前記生物活性材料リザーバは前記構造要素の表面に付与された被覆を含み、前記被覆は1つ又はそれ以上の層を含み、及び前記層の少なくとも1つはゾル−ゲルプロセスを用いて形成されたマトリックス組成物を含み、前記ゾル−ゲルプロセスの環境は、前記マトリックス組成物中に取り込まれるべき生物活性材料の特性に対して調整されており、前記調整は、形成された際の前記マトリックス組成物内の前記生物活性材料の量及び/又は患者内に植え込まれた際の生理的環境中への前記生物活性材料の放出の速度に影響を与える、前記医療機器。
【請求項2】
前記マトリックス組成物が、ゾル−ゲルに由来する無機酸化物;ゾル−ゲルに由来する有機的に修飾されたシラン;有機的に修飾されたシランを含むハイブリッド酸化物;及びテンプレートを用いて作製されたメソ細孔を有する酸化物からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記マトリックス組成物が前記ゾル−ゲルプロセスを介して製作された無機酸化物である、請求項1に記載の医療機器。
【請求項4】
前記無機酸化物が、ケイ素の酸化物及びチタンの酸化物からなる群から選択される、請求項3に記載の医療機器。
【請求項5】
前記マトリックス組成物がメソ多孔性無機酸化物である、請求項3に記載の医療機器。
【請求項6】
前記メソ多孔性無機酸化物が、犠牲的孔生成テンプレート成分及び自己集合又は誘導集合作製プロセスを用いて得られる、請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記テンプレート成分が、両親媒性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択される、請求項6に記載の医療機器。
【請求項8】
前記テンプレート成分が、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシドトリブロックコポリマーである、請求項7に記載の医療機器。
【請求項9】
前記メソ多孔性無機酸化物が、実質的に連続な相互接続されたチャンネルを含む、請求項5に記載の医療機器。
【請求項10】
前記実質的に連続な相互接続されたチャンネルの内部表面が、疎水性、電荷、生体適合性、機械的特性、生物活性材料の親和性、保存容量及びこれらの組み合わせからなる群から選択される前記メソ多孔性酸化物の特性を修飾する有機的に修飾されたシランで被覆されている、請求項9に記載の医療機器。
【請求項11】
1つ又はそれ以上の生物活性材料が、前記被覆が前記構造要素の前記表面に付与された後に前記相互接続されたチャンネル中に搭載される、請求項10に記載の医療機器。
【請求項12】
前記酸化物に、疎水性、電荷、生体適合性、機械的特性、生物活性材料の親和性、保存容量及びこれらの組み合わせからなる群から選択される前記酸化物の特性を修飾する剤が配合されている、請求項3に記載の医療機器。
【請求項13】
前記修飾剤が有機的に修飾されたシランである、請求項12に記載の医療機器。
【請求項14】
前記有機的に修飾されたシランが、アルキルシラン;メチルトリメトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;ジメチルジエトキシシラン;トリメチルエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニルトリエトキシシラン;エチルトリエトキシシラン;イソプロピルトリエトキシシラン;ブチルトリエトキシシラン;オクチルトリエトキシシラン;ドデシルトリエトキシシラン;オクタデシルトリエトキシシラン;アリール官能性シラン;フェニルトリエトキシシラン;アミノシラン;アミノプロピルトリエトキシシラン;アミノフェニルトリメトキシシラン;アミノプロピルトリメトキシシラン;アクリラート官能性シラン;メタクリラート官能性シラン;アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;カルボキシラート;ホスホナート;エステル;スルホナート;イソシアナート;エポキシ官能性シラン;クロロシラン;クロロトリメチルシラン;クロロトリエチルシラン;クロロトリヘキシルシラン;ジクロロジメチルシラン;トリクロロメチルシラン;N,O−ビス(トリメチルシリル)−アセトアミド(BSA);N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA);ヘキサメチルジシラザン(HMDS);N−メチルトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA);N−メチル−N−(t−ブチルジメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MTBSTFA);トリメチルクロロシラン(TMCS);トリメチルシリルイミダゾール(TMSI);及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の医療機器。
【請求項15】
前記生物活性材料が、抗再狭窄剤、抗炎症剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、抗微生物剤、抗新生物剤、血管新生剤、抗血管新生剤、血栓溶解剤、降圧剤、抗不整脈剤、カルシウムチャンネル遮断薬、コレステロール低下薬、向精神薬、抗うつ剤、抗痙攣剤、避妊薬、鎮痛薬、骨成長因子、骨再構築因子、神経伝達物質、核酸、オピエートアンタゴニスト及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の医療機器。
【請求項16】
前記生物活性材料が、パクリタキセル、ラパマイシン、エベロリムス、タクロリムス、シロリムス、デス−アスパラギン酸アンギオテンシンI、酸化窒素、アポシニン、γ−トコフェリル、プレイオトロフィン、エストラジオール、アスピリン、アトロバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の医療機器。
【請求項17】
前記医療機器が、血管導管、ステント、プレート、ネジ、脊髄ケージ、歯科インプラント、歯科充填材、装具、人工関節、塞栓機器、心室補助装置、人工心臓、心臓弁、静脈フィルター、止め金、クリップ、縫合糸、人工関節メッシュ、ペースメーカー、ペースメーカー導線、除細動器、神経刺激装置、神経刺激装置導線、植え込み可能センサーおよび外部センサーからなる群から選択される機器である、請求項1に記載の医療機器。
【請求項18】
構造要素及び生物活性材料溶出被覆を含む医療機器であり、前記生物活性材料溶出被覆が、前記医療機器の表面上に付与された少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層がゾル−ゲルプロセスを用いて形成されており、及び有機的に修飾されたシランを含む、前記医療機器。
【請求項19】
前記少なくとも1つの層が基礎被覆であり、及び前記医療機器が前記基礎被覆上に付与された上部被覆をさらに含む、請求項18に記載の医療機器。
【請求項20】
生物活性材料含有球体が、前記基礎被覆内、前記上部被覆内、前記基礎被覆と前記上部被覆の間及びこれらの組み合わせからなる群から選択される位置に見出される、請求項19に記載の医療機器。
【請求項21】
前記生物活性材料含有球体が生体分解性ポリマーから構成される、請求項20に記載の医療機器。
【請求項22】
前記基礎被覆及び/又は前記上部被覆がゾル−ゲル無機酸化物組成物を含む、請求項19に記載の医療機器。
【請求項23】
前記基礎被覆が、実質的に連続な相互接続されたチャンネルを有するメソ多孔性酸化物を含む、請求項18に記載の医療機器。
【請求項24】
構造要素及び生物活性材料溶出被覆を含む医療機器であり、前記生物活性材料溶出被覆は、層の少なくとも1つがゾル−ゲルプロセスを用いて形成されたマトリックス組成物を含む少なくとも2つの層を含み、前記ゾル−ゲルプロセスの環境は、前記マトリックス組成物中に取り込まれるべき生物活性材料の特性に対して調整されており、前記調整が、形成された際の前記マトリックス組成物内の前記生物活性材料の量及び/又は患者内に植え込まれた際の生理的環境中への前記生物活性材料の放出の速度に影響を与える、前記医療機器。
【請求項25】
前記少なくとも2つの層が、基礎被覆及び上部被覆を含み、並びに前記基礎被覆が、前記医療機器の前記表面に付与されており、及び前記上部被覆が、前記基礎被覆上に付与されている、請求項24に記載の医療機器。
【請求項26】
前記少なくとも2つの層の少なくとも1つが、生物活性材料なしのゾル−ゲル酸化物層;酸化物中に取り込まれた生物活性材料を有するゾル−ゲル酸化物層;生物活性材料なしの有機的に修飾されたシランが配合されたゾル−ゲル酸化物;生物活性材料で有機的に修飾されたシランが配合されたゾル−ゲル酸化物;生物活性材料なしの有機的に修飾されたシラン層;生物活性材料を有する有機的に修飾されたシラン層;生物活性材料なしのメソ多孔性酸化物;酸化物中に取り込まれた生物活性材料を有するメソ多孔性酸化物;酸化物中に取り込まれた生物活性材料及びメソ多孔性酸化物が前記医療機器の前記表面に付与された後にその相互接続されたチャンネル中に搭載されたさらなる生物活性材料を有するメソ多孔性酸化物;酸化物中に取り込まれた生物活性材料を有さないが、前記医療機器の前記表面に前記酸化物が付与された後にその相互接続されたチャンネル中に搭載された生物活性材料を有するメソ多孔性酸化物;及び生物活性材料含有ポリマー球体の集合物からなる群から選択される形態を含む、請求項24に記載の医療機器。
【請求項27】
構造要素及び生物活性材料リザーバを含む医療機器であり、前記生物活性材料リザーバは前記構造要素の表面に付与された1つ又はそれ以上の層を含み、前記1つ又はそれ以上の層の各々は、個別に、ゾル−ゲルプロセスを用いて形成されたマトリックス組成物を含み、前記ゾル−ゲルプロセスの環境は、前記マトリックス組成物中に取り込まれるべき生物活性材料の特性に対して調整されており、前記調整は、形成された際の前記マトリックス組成物内の前記生物物質の量及び/又は患者内に植え込まれた際の生理的環境中への前記生物活性材料の放出の速度に影響を与え、並びに前記層が前記構造要素の前記表面に付与されたときに、無機表面とポリマー、組織、骨及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機表面との間の接着を強化する、前記医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−525124(P2009−525124A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553223(P2008−553223)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/031271
【国際公開番号】WO2007/092043
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(504206388)メドロジックス・ディバイス・コーポレーション (2)
【出願人】(508091317)スタンフオード・ユニバーシテイ (1)
【Fターム(参考)】