タイヤ、及び、タイヤの製造方法
【課題】タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高いタイヤ、及び、タイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】空気入りタイヤ10は、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材17と、タイヤ骨格部材17のビード部構成部分12Mに設けられ、リム20と接するゴムチェーファー24と、を備えている。この空気入りタイヤ10をリム20に組み付けると、ゴムチェーファー24がリム20に当接している。従って、リムフィット性が良好であり、タイヤ内に空気を充填してもビード部12とリム20との間から気体が抜け難いので、タイヤ骨格部材17が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【解決手段】空気入りタイヤ10は、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材17と、タイヤ骨格部材17のビード部構成部分12Mに設けられ、リム20と接するゴムチェーファー24と、を備えている。この空気入りタイヤ10をリム20に組み付けると、ゴムチェーファー24がリム20に当接している。従って、リムフィット性が良好であり、タイヤ内に空気を充填してもビード部12とリム20との間から気体が抜け難いので、タイヤ骨格部材17が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともビード部を構成する熱可塑性材料からなるタイヤ構成部材を備えたタイヤ、及び、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム、有機繊維材料、及びスチール部材で形成されているタイヤが知られている。近年、軽量化やリサイクルのし易さの観点から、熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂等の熱可塑性高分子材をタイヤ構成部材とすることが求められている。このため、例えば特許文献1には、熱可塑性エラストマーでビードコアを覆ってタイヤ骨格部材を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、熱可塑性材料自体の剛性が高いのでリムフィット性が充分でない。このため、タイヤをリム組みしてタイヤ内に気体(空気)を充填しても、必要な内圧を長時間にわたって維持することが難しいという問題があった。
本発明は、上記事実を考慮して、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高いタイヤ、及び、タイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材と、前記タイヤ構成部材に設けられ、リムと接するゴムチェーファーと、を備えている。
リムと接するとは、リムの一部と接する場合も当然に含む。
請求項1に記載の発明では、タイヤのリム組み(タイヤとリムとの組みつけ)を行うと、ゴムチェーファーがリムに当接している。従って、リムフィット性が良好であり、タイヤ内に気体(空気)を充填してもビード部とリムとの間から気体が抜け難いので、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
なお、ゴムチェーファーはタイヤ周方向に連続した円環状であることが好ましいが、必ずしも連続していなくても内圧保持性能を向上させる効果を奏する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記タイヤ構成部材が、前記ビード部からクラウン部まで構成するタイヤ骨格部材である。
本明細書で、ビード部からクラウン部までを構成するとは、ビード部からタイヤセンターまでを構成することを意味する。
請求項2に記載の発明により、タイヤ強度を向上させ易い構造にすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記ゴムチェーファーがサイド部にまで延びている。
本明細書でサイド部とは、ビード部からトレッド端までのことをいう。ここで、トレッド端とは、タイヤをJATMA YEAR BOOK(2008年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%を内圧として充填し、最大負荷能力を負荷したときのタイヤ幅方向最外の接地部分を指す。なお、使用地又は製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
請求項3に記載の発明により、縁石などによってタイヤサイド部が損傷することが防止され易い。なお、トレッド近くやトレッド内側にまで熱可塑性チェーファーが延びていてもよい。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記ゴムチェーファーが前記ビード部のタイヤ内側にまで延びている。
これにより、ビード部のタイヤ外側にだけゴムチェーファーを設けた場合に比べ、リム組み時にゴムチェーファーのエッジがめくれることが充分に防止される。
【0009】
請求項5に記載の発明は、熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを配置し、プレス機で押圧するとともに前記生ゴムを加硫成形してゴムチェーファーとする。
請求項5に記載の発明によって製造されたタイヤでは、タイヤのリム組み(タイヤとリムとの組みつけ)を行うと、ゴムチェーファーがリムに当接している。従って、タイヤ内に気体(空気)を充填してもビード部とリムとの間から気体が抜け難いので、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記生ゴムを配置する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける。
これにより、生ゴムを押圧した際に生ゴムの位置がずれることを防止できる。なお、接着剤を塗布する前に、タイヤ構成部材の生ゴムを配置する表面をサンドペーパーやリューターなどでバフ研磨しておくと、接着力が更に向上する。更には、バフ研磨後にアルコールなどで研磨面を洗浄してもよい。
【0011】
請求項7に記載の発明は、熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出して加硫成形することによりゴムチェーファーとする。
請求項7に記載の発明によって製造されたタイヤでは、タイヤのリム組み(タイヤとリムとの組みつけ)を行うと、ゴムチェーファーがリムに当接している。従って、タイヤ内に気体(空気)を充填してもビード部とリムとの間から気体が抜け難いので、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0012】
請求項8に記載の発明は、前記生ゴムを射出する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける。
これにより、生ゴムを射出した際に生ゴムの形成位置がずれることを防止できる。なお、接着剤を塗布する前に、タイヤ構成部材の生ゴムを射出する表面をサンドペーパーやリューターなどでバフ研磨しておくと、接着力が更に向上する。更には、バフ研磨後にアルコールなどで研磨面を洗浄してもよい。
【0013】
請求項9に記載の発明は、前記タイヤ構成部材を成形する成形型のキャビティ内にジグを設け、タイヤ内側となる方向からビードコアを前記ジグに当接させて固定し、溶融した熱可塑性材料を前記キャビティ内に注入することにより前記タイヤ構成部材を成形する。
成形型は、金型であってもよいし、金属以外の材質の型であってもよい。
請求項9に記載の発明では、タイヤ内側となる方向からビードコアをジグに当接させた状態で、溶融した熱可塑性材料をキャビティ内に注入する。すなわち、ビードコアの位置ずれを防止するためのジグをビードコアにタイヤ外側から当接させない状態にして、又は、ビードコアの位置ずれを防止するための補助ジグをビードコアにタイヤ外側から僅かな領域で当接させた状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。従って、ジグが当接していたことにより熱可塑性材料が入り込めなくてビードコアが露出している部位は、形成されたタイヤ構成部材のタイヤ外側には、全く形成されないか、又は、形成されても僅かな領域である。従って、リムが当接する部位全てにわたり、熱可塑性材料が存在しているか、又は、存在していない部位があっても僅かな領域である。よって、リム組み時におけるエア保持性が充分に確保され易い。
【0014】
そして、タイヤ構成部材のタイヤ内側に、ジグが当接していたことにより熱可塑性材料が入り込めなくてビードコアが露出している部位が形成されるが、この部位が大きくてもリム組み時のエア保持性を確保することができる。従って、釜抜き時におけるビードコア周辺の熱可塑性材料の破壊防止性を充分に確保したジグ寸法、形状とすることができ、タイヤ成形時でのビードコアの位置ずれを充分に抑制することができる。
【0015】
なお、溶融した熱可塑性材料の注入は射出成形をするための高圧の注入であってもよい。また、タイヤ構成部材をチューブ状に形成して、タイヤ構成部材内に空気を充填できる構造にしてもよい。
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時の弾性と製造時の成形性とを考慮すると熱可塑性エラストマーを注入することが好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記プレス機で押圧した際、又は、前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出した際、前記タイヤ構成部材に形成された前記ジグの抜け跡部を前記生ゴムで埋める。
これにより、ビードコアが金属製であった場合にビードコアが錆びることが防止されるとともに、タイヤ構成部材の劣化の防止、タイヤ構成部材に故障核が発生することの防止に寄与する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高いタイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態に係る空気入りタイヤの断面斜視図、及び、第1実施形態に係る空気入りタイヤをリムに装着したときの部分拡大斜視断面図である。
【図2】図2(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で用いる金型で、ビードコアに当接するジグが設けられた位置での平面断面図、及び、ビードコアに当接するジグが設けられていない位置での部分拡大断面図である。
【図3】図3(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で形成したタイヤ骨格部材の部分斜視断面図、及び、ビードコアを描かないで示した部分斜視断面図である。
【図4】図4(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で形成したタイヤ骨格部材の部分斜視断面図、及び、ビードコアを描かないで示した部分斜視断面図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で形成したタイヤ骨格部材をタイヤ内側から見た側面図、及び、図5(A)の部分拡大図である。
【図6】第1実施形態で、タイヤ骨格部材半体上に生ゴムを配置してプレス機で押圧することを示す断面図である。
【図7】第1実施形態で加硫成形された空気入りタイヤの側面図である。
【図8】図8(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態の変形例で、タイヤ骨格部材をビードコアを描かないで示した部分斜視断面図、及び、タイヤ外側から補助ジグをビードコアに当接させて樹脂注入することを示す部分拡大平面断面図である。
【図9】図9(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で、タイヤ骨格部材の変形例をタイヤ外側から見た側面図、及び、図9(A)の部分拡大図である。
【図10】第2実施形態で、チェーファー用の樹脂を射出成形する金型の断面図である。
【図11】第2実施形態で製造された空気入りタイヤの部分斜視断面図である。
【図12】図12(A)及び(B)は、それぞれ、第2実施形態で、生ゴムを射出する前のタイヤ骨格部材半体の内面側を示す説明図、及び、ゴムチェーファーを形成した後のタイヤ骨格部材半体の内面側を示す説明図である。
【図13】第2実施形態で製造された空気入りタイヤの変形例を示す部分斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10は、リム20のビードシート部21、及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16と、からなるタイヤ骨格部材(タイヤケース)17と、リム20のビードシート部21、及びリムフランジ22に当接するようにビード部12の表面側に形成されたゴムチェーファー24と、を備えている。タイヤ骨格部材17は熱可塑性材料で形成されており、ゴムチェーファー24は生ゴムをプレス機で押圧し加硫成形したものである。
【0022】
タイヤ骨格部材17は、一つのビード部12のうちビードコア18を覆うビード部構成部分12M、一つのサイド部14、及び、半幅のクラウン部16が一体としてモールド等で成形された同一形状とされた円環状のタイヤ骨格部材半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤセンターCLで接合することで形成されている。なお、タイヤ骨格部材17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成しても良く、1対のビード部12、1対のサイド部14、及びクラウン部16を一体で成形したものであっても良い。
【0023】
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が上げられる。
【0024】
熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができ、ゴムで成形(加硫)する場合に比較して、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間も短くて済む。
また、本実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ骨格部材半体17Aと他方のタイヤ骨格部材半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤ骨格部材半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットがある。
【0025】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されているが、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければビードコア18は省略しても良い。なお、ビードコア18は、有機繊維コード、有機繊維が樹脂被覆されたコード等、スチール以外のコードで形成されていても良く、更には、ビードコア18がコードではなく硬質樹脂で射出成形などで形成されたものでもよい。
【0026】
そして、本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤ骨格部材17を構成する熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴム(加硫ゴム)からなる円環状のゴムチェーファー24が形成されている。このゴムチェーファー24は、ビードシート部21と接触する部分にまで延びていても良く、更には、タイヤ内側にまで延びていてもよい。ゴムチェーファー24を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。
【0027】
クラウン部16には、螺旋状に巻回されたスチールのコード26からなるクラウン部補強層28が埋設されている。なお、コード26は、全体がクラウン部16に埋設されていても良く、一部分がクラウン部16に埋設されていても良い。このクラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0028】
クラウン部補強層28の外周側には、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層30が配置されている。トレッドゴム層30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料からなるトレッド層を外周部に設けても良い。
【0029】
以下、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の製造方法について説明する。以下では、射出成形によってタイヤ骨格部材半体17A(図3〜図5参照)を形成し、更にタイヤ骨格部材半体17Aに生ゴム(未加硫ゴム)をプレス機で押圧し加硫成形してゴムチェーファー24を製造し、その後、2つのタイヤ骨格部材半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤセンターで接合することで説明する。
【0030】
本実施形態では、図2に示すような金型40を用いる。この金型40は、ビード部12(図3参照)からタイヤセンターCL(図3参照)までを構成するタイヤ骨格部材半体17Aを成形することができるように、タイヤ外面側を成形する外金型42と、タイヤ内面側を成形する内金型44とを有する。内金型44にはビードコア固定用のジグ46が、予め設定された位置に設けられている。外金型42と内金型44との間には、タイヤ骨格部材形状のキャビティS(空間)が形成されている。
【0031】
図4に示すように、ジグ46のビードコア18へのタイヤ周方向に沿った当接長さL、すなわち、タイヤ骨格部材半体17Aのタイヤ内側に形成された、熱可塑性材料の存在しない領域Aのタイヤ周方向に沿った長さLは、20mm以下であることが好ましい。これにより、破壊核の発生懸念がない。
【0032】
なお、ジグ46のビードコア18へのタイヤ周方向に沿った当接長さLが15mm以下であると、タイヤ骨格部材半体17Aに応力集中がより生じ難い。そして、この長さLが5mm以下であると、この効果をより更に得易い。また、この当接長さLは、ジグ46の強度上の観点で少なくとも1mm以上であることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、ジグ46はマグネット材で形成されている。また、ジグ46は、ビードコア収容位置に沿って均等間隔で12個配置されている。
このジグ46には、ビードコア18の寸法に応じた凹部47が形成されており、ビードコア18が金型40内に配置されたときにはビードコア18の一部がこの凹部47に入ってタイヤ内側から支えられた状態となる。この結果、ビードコア18は、タイヤ内側方向への移動が規制されるとともに上下方向(タイヤ径方向)の移動も規制された状態となる。
【0034】
また、金型40のゲート(樹脂注入路)48は、ビードコア18が凹部47に入った状態でビードコア18のタイヤ外側を溶融状態の熱可塑性高分子材料が通過するように、形成されている。熱可塑性高分子材料は、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂である。
ゲート48はリング状に開口したディスクゲートであり、キャビティSはリング状のゲート48に連通して中空円盤状に広がるように形成されている。なお、ゲート48はピンゲートであってもよいが、成形性の観点で、このようにディスクゲートのほうが好ましい。
【0035】
本実施形態では、まず、金型40を開き、ビードコア18のタイヤ内側部をジグ46の凹部47に入れ、金型40を閉じる。ビードコア18としては、磁力で吸着されるように磁性体で形成されたものを用いる。
そして、ゲート48から溶融した熱可塑性材料を金型40内に注入して射出成形して、タイヤ骨格部材半体17Aを形成する。
【0036】
この注入の際、ジグ46が設けられた位置では、熱可塑性材料は、ゲート48からビードコア18と外金型42との間を経由するように注入されるので、ビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧される。従って、ビードコア18が受ける移動力をジグ46で充分に支えることができる。よって、ビードコア18の位置ずれを防止するためのジグ46をビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。
【0037】
溶融樹脂としてはオレフィン系、エステル系、アミド系、もしくはウレタン系のTPEか、一部ゴム系の樹脂を混練してあるTPVであることが好ましい。これらの熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又は ASTM D648 に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が75℃以上、同じく JIS K7113 に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じく JIS K7113 に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7113 に規定されるビカット軟化温度(A法)が130℃以上であることが好ましい。
【0038】
このようにして製造されたビードコア18を保持しているタイヤ骨格部材半体17Aを金型40から取り出し、図6に示すように、加硫成形可能なプレス機50にセットする。このプレス機50は、タイヤ骨格部材半体17Aにタイヤ内側から当接して支える下型(台座)51と、下型51の上方に位置し、上下方向に往復移動可能で下面に成形面が形成された上型52と、上型52を上方から押圧する上型押圧部54と、を備えている。
【0039】
上型52にはゴムチェーファー成形面56が形成されており、下型51にタイヤ骨格部材半体17Aをセットし、ゴムチェーファー24を形成するための所定寸法の生ゴムRをタイヤ骨格部材半体17Aのビード部構成部分12Mに配置し、上型52を下降させてタイヤ骨格部材半体17Aのサイド部14に上型52の成形面(下面)を当接させて押圧した際に、上型52とビード部構成部分12Mとの間に設定形状のゴムチェーファーを加硫成形できるスペースが形成されるようになっている。また、上型52には、スピュー形成用の貫通孔58が形成されている。
【0040】
本実施形態では、下型51にタイヤ骨格部材半体17A、及び、生ゴムRをセットし、上型52を設定位置にまで下降させて生ゴムRを押圧し、この生ゴムRを所定温度で所定時間かけて加硫成形する。この結果、加硫ゴムからなるゴムチェーファー24(図1、図7参照)が形成される。この所定温度は、タイヤ骨格部材半体17Aを構成する熱可塑性材料の融点よりも低いことが、タイヤ骨格部材半体17Aの変形を防ぐ観点で好ましい。
生ゴムRの加硫促進剤としては、硫黄もしくはパーオキサイドが好ましい。生ゴムRに入れる補強剤としては、カーボンブラックもしくは特にシリカが好ましい。生ゴムRのカップリング剤としてはアミノシラン又はポリスルフィドであってもよい。
【0041】
本実施形態では、生ゴムRの配置位置を、生ゴムRをプレス機50で押圧すると上記の領域Aを生ゴムRが覆う位置とする。なお、タイヤ骨格部材半体17Aのうち生ゴムRをセットする部位の表面に1層或いは2層の接着剤層を塗布してもよい。この場合、接着剤を塗布する部位の表面をサンドペーパーなどでバフ研磨しておくと接着力が向上する。また、接着力を向上させるためには、接着剤を塗布した後にある程度乾燥させておくことが好ましい。このため、接着剤を塗布する際には、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はない。
【0042】
更に、このゴムチェーファー24が形成された2つのタイヤ骨格部材半体17Aを、互いに向かい合わせにタイヤセンターで突き当て、溶接用熱可塑性材料19(図1参照)を接合部位に向けて押出すことで接合して、ビード部12にゴムチェーファー24が形成されたタイヤ骨格部材17(図1参照)を製造する。溶接用熱可塑性材料19は自然冷却により次第に固化し、一方のタイヤ骨格部材半体17Aと他方のタイヤ骨格部材半体17Aとが溶接用熱可塑性材料19(図1参照)によって接合されることになる。なお、接合する際、2つのタイヤ骨格部材半体17Aの内部に、薄い金属板からなる筒状のタイヤ内面支持リングを配置して、タイヤ内面支持リングを回転させることにより2つのタイヤ骨格部材半体17Aを回転させつつ、溶融した溶接用熱可塑性材料をノズルから接合部位に向けて押し出すことで、接合部位に沿って溶融した溶接用熱可塑性材料19を形成してもよい。その際、ローラを溶接用熱可塑性材料に押し付けながら2つのタイヤ骨格部材半体17Aを回転させることにより、溶接用熱可塑性材料の表面を平らにしてもよい。
なお、ゴムチェーファー24の形成は、タイヤ骨格部材半体17Aの接合後としてもよく、工程の順序は適宜変更可能である。
【0043】
その後、タイヤ骨格部材17を回転装置で回転させつつ、コード供給装置(図示せず)から排出された加熱されたコード26をタイヤ骨格部材17の外周面に螺旋状に巻き付けてクラウン部補強層28を形成する。コード26をタイヤ骨格部材17の外周面に螺旋状に巻き付けるには、タイヤ骨格部材17を回転しながら、コード供給装置をタイヤ骨格部材17の軸方向に移動させれば良い。
【0044】
なお、タイヤ骨格部材17を構成する熱可塑性材料の融点よりもコード26を高温に加熱(例えば、コード26の温度を100〜200°C程度に加熱)することで、コード26が接触した部分の熱可塑性材料が溶融し、タイヤ骨格部材17の外周面にコード26の一部または全体を埋設することができる。コード26の埋設量は、コード26の温度、コード26に作用させるテンション等によって調整することができる。
その後、路面に接する部位にゴム材(トレッドゴム30。図1参照)を貼り付けて、耐摩耗性、耐破壊性を向上させた空気入りタイヤ10が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材17のビード部構成部分12Mにゴムチェーファー24が加硫成形で形成されている。従って、タイヤのリム組みを行うと、ゴムチェーファー24がリムに当接するので、空気入りタイヤ10内に空気を充填してもビード部12とリム20との間から空気が抜け難い。従って、タイヤ骨格部材17が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0046】
また、タイヤ骨格部材17はサイド部14及びトレッド部(クラウン部16)も構成しており、しかも溶接用熱可塑性材料19によって2つのタイヤ骨格部材半体17AがタイヤセンターCLで接合されている。従って、タイヤ強度が効率的に高くなっている。
そして、ゴムチェーファー24がビード部12のタイヤ内側(タイヤ内面)にまで延びている。これにより、ビード部12のタイヤ外側にだけゴムチェーファー24を設けた場合に比べ、リム組み時にゴムチェーファー24のエッジがめくれるおそれがない。
また、タイヤ骨格部材のうちビード部構成部分12Mに生ゴムRを配置して、プレス機50で押圧し加硫成形することによってゴムチェーファー24が形成されており、製造時間の短縮化が図られている。
【0047】
また、タイヤ骨格部材半体17Aを製造する際、タイヤ内側となる方向からビードコア18をジグ46に当接させた状態で、溶融した熱可塑性材料をキャビティ内に注入する。すなわち、ビードコア18の位置ずれを防止するためのジグ46をビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。従って、ジグ46が当接していたことにより熱可塑性材料が形成されずにビードコア18が露出した領域Aは、タイヤ骨格部材半体17Aのタイヤ外側には全く形成されない。従って、リム20が当接する部位全てにわたり、熱可塑性材料が存在しており、リム組み時におけるエア保持性が充分に確保され易い。
【0048】
更に、生ゴムRの配置位置を、生ゴムRをプレス機50で押圧すると上記の領域Aを生ゴムRが覆う位置としている。従って、ゴムチェーファー24が領域Aを覆っており、これにより、金属製のビードコア18が錆びることが防止されるとともに、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核が発生することを防止できる。
そして、生ゴムRを配置する際、タイヤ骨格部材半体17Aのうち生ゴムRを配置する部位の表面に接着剤を塗布している。これにより、プレス機50で押圧した際に生ゴムRの位置ずれが生じることを防止できるとともに、ゴムチェーファー24とタイヤ骨格部材半体17Aとの接着力が向上している。
【0049】
そして、タイヤ骨格部材半体17Aのタイヤ内側に、ジグ46が当接していたことにより固化した熱可塑性材料が形成されずにビードコア18が露出した領域Aが形成されるが、この領域Aの寸法が比較的大きくてもリム組み時のエア保持性を確保することができる。従って、釜抜き時におけるビードコア周辺の熱可塑性材料の破壊防止を充分に確保したジグ寸法、形状とすることができ、タイヤ成形時でのビードコア18の位置ずれを充分に抑制することができる。そして、ビードコア18の位置ずれだけでなく、成形時の圧力付加によるビードコア18の変形をも防止することができる。
そして、溶融した熱可塑性材料を注入する際、射出成形をするために高圧で注入しても、このような効果が得られる。
【0050】
また、本実施形態では、ジグ46を磁石で形成しているので、ビードコア18をジグ46で保持し易い。なお、磁力をビードコア18の方向以外に逃がさないようにする遮蔽部材で覆ったジグを用いてもよい。
また、ビードコア収容位置に沿って複数位置にジグ46を配置している。これにより、ビードコア18の位置精度をより向上させることができる。
【0051】
また、熱可塑性材料を注入する際、ビードコア18と、タイヤ外側を形成する外金型42との間から注入している。このため、注入時にビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧される。従って、ビードコア18が受ける移動力をジグ46で充分に支えることができる。
【0052】
なお、ゴムチェーファー24がサイド部14にまで延びるように、上型52の成形面の形状を変更してもよい。これにより、縁石などによってサイド部14が損傷することを防止し易い空気入りタイヤとすることができる。
また、ビードコア18の位置ずれを更に防止するために、図8(B)に示すように、キャビティS内への進退方向位置の設定が可変な補助ジグ62を設け、この補助ジグ62をビードコア18にタイヤ外側から僅かな領域で当接させた状態にして、熱可塑性材料を注入してもよい。この場合には、図8(A)、図9に示すように、タイヤ外側に、熱可塑性材料が存在していない僅かな領域Eが生じるが、このように領域Eが小さいので、リム組み時においてエア保持性の問題はなく、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核の問題も全くない。
また、タイヤ骨格部材17には、クラウン部以外(例えばサイド部14)にも、補強材(高分子材料や金属からなる繊維、コード、不織布、織布等)が埋設配置されていてもよい。
また、タイヤ骨格部材半体17Aを形成した後、タイヤ骨格部材半体17Aを内金型44に配置したまま外金型42のみを外して生ゴムRを配置し、生ゴム押圧面が上型52と同形状の外金型で生ゴムRを押圧して加硫成形することでゴムチェーファーを形成することも可能である。
【0053】
また、タイヤ骨格部材半体17Aのビード部構成部分12Mと熱可塑性チェーファー24との接合強度を上げるために、ビード部構成部分12Mと熱可塑性チェーファー24とが接合する面を凹凸形状にしてアンカー効果(アンカーを下ろしたように強固に噛み合っている効果)を得られるようにしてもよい。
例えば、根元側よりも熱可塑性チェーファー側のほうが径の大きい逆円錐台状の凸部が配列されたビード部構成部分としてもよい。なお、熱可塑性チェーファー側が単に凹凸状であるビード部構成部分としても、熱可塑性チェーファー側が複数の断面湾曲凹状部を連ねたものであるビード部構成部分としても、アンカー効果が得られる。
このようなアンカー効果を得るための凹凸の深さは、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmよりも深いと、成形品の強度が落ちることが考えられる。また、凹凸の深さが0.05mmよりも浅いと、充分なアンカー効果を得にくい。
このような凹凸形状を形成するには、金型の成形面に予め対応する凹凸形状を形成しておけばよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aを第1実施形態と同様にして製造する。
そして、図10に示すように、射出成形(インサート成形)用の金型70にタイヤ骨格部材半体17Aを収容して金型70を閉じる。ここで、この金型70は、外金型72と内金型74とで構成されており、外金型72にはチェーファー用の生ゴムを注入するゲート78が形成されている。そして、タイヤ骨格部材半体17Aを金型70内に収容して閉じると、ゲート78に連通して設定形状のゴムチェーファー84を形成するスペースZがキャビティ内に形成される構造になっている。なお、金型70には、キャビティ内に生ゴムが注入されたときにキャビティ内の空気を追い出すためのガス抜き孔(図示せず)が形成されている。
【0055】
本実施形態では、射出成形用の金型70にタイヤ骨格部材半体17Aを収容して金型70を閉じ、チェーファー用の生ゴムをゲート78から射出して加硫成形する。これにより、図11に示すように、タイヤ骨格部材半体17Aにゴムチェーファー84が形成される。
【0056】
その後、第1実施形態と同様にして、2つのタイヤ骨格部材半体17Aを接合してタイヤ骨格部材を製造し、コード26をタイヤ骨格部材17の外周面に螺旋状に巻き付けてクラウン部補強層28を形成する。そして、路面に接する部位にゴム材(トレッドゴム30。図1参照)を貼り付けて、耐摩耗性、耐破壊性を向上させた空気入りタイヤを製造する。
【0057】
このように、本実施形態では、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材半体17Aのビード部構成部分12Mに生ゴムを射出して加硫成形することによりゴムチェーファー84を形成している。従って、タイヤのリム組みを行うと、ゴムチェーファー84がリムに当接するので、空気入りタイヤ10内に空気を充填してもビード部とリムとの間から空気が抜け難い。従って、タイヤ骨格部材17が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0058】
また、第1実施形態と同様、本実施形態ではタイヤ骨格部材半体17Aのビードコア18が露出している領域Aに生ゴムが入る。従って、図12に示すように、生ゴムを射出する前にはビードコア18が露出していた領域A(図12(A)参照)を、図12(B)に示すように、ゴムチェーファー84が覆っている。これにより、金属製のビードコア18が錆びることが防止されるとともに、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核が発生することが防止される。
【0059】
なお、タイヤ骨格部材半体17Aのうちゴムチェーファー84を配置する表面に1層或いは2層の接着剤層を塗布してもよい。この場合、第1実施形態と同様、接着剤を塗布する部位の表面をサンドペーパーなどでバフ研磨しておくとゴムチェーファー84との接着力が向上する。接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はない。
また、本実施形態では射出成形用の金型70に生ゴムを注入することで説明したが、第1実施形態で説明したプレス機50を用いて、生ゴムRを配置することに代えて貫通孔58から生ゴムを注入することにより射出して加硫成形することによりゴムチェーファー24を形成してもよい。この場合であっても、上記の領域Aを生ゴムRが覆い、この結果、ゴムチェーファー24が領域Aを覆う構造にすることが可能である。これにより、金属製のビードコア18が錆びることが防止されるとともに、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核が発生することを防止できる。
【0060】
また、図13に示すように、サイド部14にまで延びたゴムチェーファー86を形成するように、タイヤ骨格部材半体17Aを収容したキャビティ内に形成されるスペースZ(図10参照)の形状を変更してもよい。これにより、縁石などによってサイド部14が損傷することを防止し易い空気入りタイヤとすることができる。
【0061】
<試験例>
本発明の効果を確かめるために、本発明者は、タイヤ骨格部材半体17AをTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)で構成させて、ゴムチェーファー24が設けられた第1実施形態の空気入りラジアル空気入りタイヤ10の一例(以下、実施例タイヤという)、及び、ゴムチェーファーが設けられていない空気入りタイヤの一例(以下、従来例タイヤという)を用意し、それぞれリム組みして内圧保持性能の試験をし、性能評価を行った。従来例タイヤは、実施例タイヤに比べ、ゴムチェーファー24が形成されていないタイヤである。
【0062】
本試験例では、0.39MPa(4kg/cm2 )の内圧にして48時間後の内圧を測定した。そして、従来例タイヤにおける内圧保持性能を評価指数100とし、実施例タイヤについては相対評価となる評価指数を算出した。この評価指数は大きいほど性能が高いこと、すなわち内圧保持性能が優れていることを示す。
実施例タイヤの評価指数は110であり、内圧保持性能が従来例タイヤよりも良好であるという結果になった。
【0063】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、製造工程の順序を適宜変更することが可能である。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10 空気入りタイヤ(タイヤ)
12 ビード部
14 サイド部(タイヤサイド部)
17 タイヤ骨格部材(タイヤ構成部材、タイヤ骨格部材)
18 ビードコア
20 リム
24 ゴムチェーファー
40 金型(成形型)
46 ジグ
50 プレス機
84 ゴムチェーファー
86 ゴムチェーファー
S キャビティ
R 生ゴム
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともビード部を構成する熱可塑性材料からなるタイヤ構成部材を備えたタイヤ、及び、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム、有機繊維材料、及びスチール部材で形成されているタイヤが知られている。近年、軽量化やリサイクルのし易さの観点から、熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂等の熱可塑性高分子材をタイヤ構成部材とすることが求められている。このため、例えば特許文献1には、熱可塑性エラストマーでビードコアを覆ってタイヤ骨格部材を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、熱可塑性材料自体の剛性が高いのでリムフィット性が充分でない。このため、タイヤをリム組みしてタイヤ内に気体(空気)を充填しても、必要な内圧を長時間にわたって維持することが難しいという問題があった。
本発明は、上記事実を考慮して、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高いタイヤ、及び、タイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材と、前記タイヤ構成部材に設けられ、リムと接するゴムチェーファーと、を備えている。
リムと接するとは、リムの一部と接する場合も当然に含む。
請求項1に記載の発明では、タイヤのリム組み(タイヤとリムとの組みつけ)を行うと、ゴムチェーファーがリムに当接している。従って、リムフィット性が良好であり、タイヤ内に気体(空気)を充填してもビード部とリムとの間から気体が抜け難いので、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
なお、ゴムチェーファーはタイヤ周方向に連続した円環状であることが好ましいが、必ずしも連続していなくても内圧保持性能を向上させる効果を奏する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記タイヤ構成部材が、前記ビード部からクラウン部まで構成するタイヤ骨格部材である。
本明細書で、ビード部からクラウン部までを構成するとは、ビード部からタイヤセンターまでを構成することを意味する。
請求項2に記載の発明により、タイヤ強度を向上させ易い構造にすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記ゴムチェーファーがサイド部にまで延びている。
本明細書でサイド部とは、ビード部からトレッド端までのことをいう。ここで、トレッド端とは、タイヤをJATMA YEAR BOOK(2008年度版、日本自動車タイヤ協会規格)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%を内圧として充填し、最大負荷能力を負荷したときのタイヤ幅方向最外の接地部分を指す。なお、使用地又は製造地においてTRA規格、ETRTO規格が適用される場合は各々の規格に従う。
請求項3に記載の発明により、縁石などによってタイヤサイド部が損傷することが防止され易い。なお、トレッド近くやトレッド内側にまで熱可塑性チェーファーが延びていてもよい。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記ゴムチェーファーが前記ビード部のタイヤ内側にまで延びている。
これにより、ビード部のタイヤ外側にだけゴムチェーファーを設けた場合に比べ、リム組み時にゴムチェーファーのエッジがめくれることが充分に防止される。
【0009】
請求項5に記載の発明は、熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを配置し、プレス機で押圧するとともに前記生ゴムを加硫成形してゴムチェーファーとする。
請求項5に記載の発明によって製造されたタイヤでは、タイヤのリム組み(タイヤとリムとの組みつけ)を行うと、ゴムチェーファーがリムに当接している。従って、タイヤ内に気体(空気)を充填してもビード部とリムとの間から気体が抜け難いので、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0010】
請求項6に記載の発明は、前記生ゴムを配置する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける。
これにより、生ゴムを押圧した際に生ゴムの位置がずれることを防止できる。なお、接着剤を塗布する前に、タイヤ構成部材の生ゴムを配置する表面をサンドペーパーやリューターなどでバフ研磨しておくと、接着力が更に向上する。更には、バフ研磨後にアルコールなどで研磨面を洗浄してもよい。
【0011】
請求項7に記載の発明は、熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出して加硫成形することによりゴムチェーファーとする。
請求項7に記載の発明によって製造されたタイヤでは、タイヤのリム組み(タイヤとリムとの組みつけ)を行うと、ゴムチェーファーがリムに当接している。従って、タイヤ内に気体(空気)を充填してもビード部とリムとの間から気体が抜け難いので、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0012】
請求項8に記載の発明は、前記生ゴムを射出する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける。
これにより、生ゴムを射出した際に生ゴムの形成位置がずれることを防止できる。なお、接着剤を塗布する前に、タイヤ構成部材の生ゴムを射出する表面をサンドペーパーやリューターなどでバフ研磨しておくと、接着力が更に向上する。更には、バフ研磨後にアルコールなどで研磨面を洗浄してもよい。
【0013】
請求項9に記載の発明は、前記タイヤ構成部材を成形する成形型のキャビティ内にジグを設け、タイヤ内側となる方向からビードコアを前記ジグに当接させて固定し、溶融した熱可塑性材料を前記キャビティ内に注入することにより前記タイヤ構成部材を成形する。
成形型は、金型であってもよいし、金属以外の材質の型であってもよい。
請求項9に記載の発明では、タイヤ内側となる方向からビードコアをジグに当接させた状態で、溶融した熱可塑性材料をキャビティ内に注入する。すなわち、ビードコアの位置ずれを防止するためのジグをビードコアにタイヤ外側から当接させない状態にして、又は、ビードコアの位置ずれを防止するための補助ジグをビードコアにタイヤ外側から僅かな領域で当接させた状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。従って、ジグが当接していたことにより熱可塑性材料が入り込めなくてビードコアが露出している部位は、形成されたタイヤ構成部材のタイヤ外側には、全く形成されないか、又は、形成されても僅かな領域である。従って、リムが当接する部位全てにわたり、熱可塑性材料が存在しているか、又は、存在していない部位があっても僅かな領域である。よって、リム組み時におけるエア保持性が充分に確保され易い。
【0014】
そして、タイヤ構成部材のタイヤ内側に、ジグが当接していたことにより熱可塑性材料が入り込めなくてビードコアが露出している部位が形成されるが、この部位が大きくてもリム組み時のエア保持性を確保することができる。従って、釜抜き時におけるビードコア周辺の熱可塑性材料の破壊防止性を充分に確保したジグ寸法、形状とすることができ、タイヤ成形時でのビードコアの位置ずれを充分に抑制することができる。
【0015】
なお、溶融した熱可塑性材料の注入は射出成形をするための高圧の注入であってもよい。また、タイヤ構成部材をチューブ状に形成して、タイヤ構成部材内に空気を充填できる構造にしてもよい。
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時の弾性と製造時の成形性とを考慮すると熱可塑性エラストマーを注入することが好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記プレス機で押圧した際、又は、前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出した際、前記タイヤ構成部材に形成された前記ジグの抜け跡部を前記生ゴムで埋める。
これにより、ビードコアが金属製であった場合にビードコアが錆びることが防止されるとともに、タイヤ構成部材の劣化の防止、タイヤ構成部材に故障核が発生することの防止に寄与する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タイヤ構成部材が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高いタイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態に係る空気入りタイヤの断面斜視図、及び、第1実施形態に係る空気入りタイヤをリムに装着したときの部分拡大斜視断面図である。
【図2】図2(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で用いる金型で、ビードコアに当接するジグが設けられた位置での平面断面図、及び、ビードコアに当接するジグが設けられていない位置での部分拡大断面図である。
【図3】図3(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で形成したタイヤ骨格部材の部分斜視断面図、及び、ビードコアを描かないで示した部分斜視断面図である。
【図4】図4(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で形成したタイヤ骨格部材の部分斜視断面図、及び、ビードコアを描かないで示した部分斜視断面図である。
【図5】図5(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で形成したタイヤ骨格部材をタイヤ内側から見た側面図、及び、図5(A)の部分拡大図である。
【図6】第1実施形態で、タイヤ骨格部材半体上に生ゴムを配置してプレス機で押圧することを示す断面図である。
【図7】第1実施形態で加硫成形された空気入りタイヤの側面図である。
【図8】図8(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態の変形例で、タイヤ骨格部材をビードコアを描かないで示した部分斜視断面図、及び、タイヤ外側から補助ジグをビードコアに当接させて樹脂注入することを示す部分拡大平面断面図である。
【図9】図9(A)及び(B)は、それぞれ、第1実施形態で、タイヤ骨格部材の変形例をタイヤ外側から見た側面図、及び、図9(A)の部分拡大図である。
【図10】第2実施形態で、チェーファー用の樹脂を射出成形する金型の断面図である。
【図11】第2実施形態で製造された空気入りタイヤの部分斜視断面図である。
【図12】図12(A)及び(B)は、それぞれ、第2実施形態で、生ゴムを射出する前のタイヤ骨格部材半体の内面側を示す説明図、及び、ゴムチェーファーを形成した後のタイヤ骨格部材半体の内面側を示す説明図である。
【図13】第2実施形態で製造された空気入りタイヤの変形例を示す部分斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10は、リム20のビードシート部21、及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16と、からなるタイヤ骨格部材(タイヤケース)17と、リム20のビードシート部21、及びリムフランジ22に当接するようにビード部12の表面側に形成されたゴムチェーファー24と、を備えている。タイヤ骨格部材17は熱可塑性材料で形成されており、ゴムチェーファー24は生ゴムをプレス機で押圧し加硫成形したものである。
【0022】
タイヤ骨格部材17は、一つのビード部12のうちビードコア18を覆うビード部構成部分12M、一つのサイド部14、及び、半幅のクラウン部16が一体としてモールド等で成形された同一形状とされた円環状のタイヤ骨格部材半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤセンターCLで接合することで形成されている。なお、タイヤ骨格部材17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成しても良く、1対のビード部12、1対のサイド部14、及びクラウン部16を一体で成形したものであっても良い。
【0023】
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が上げられる。
【0024】
熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができ、ゴムで成形(加硫)する場合に比較して、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間も短くて済む。
また、本実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ骨格部材半体17Aと他方のタイヤ骨格部材半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤ骨格部材半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットがある。
【0025】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されているが、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければビードコア18は省略しても良い。なお、ビードコア18は、有機繊維コード、有機繊維が樹脂被覆されたコード等、スチール以外のコードで形成されていても良く、更には、ビードコア18がコードではなく硬質樹脂で射出成形などで形成されたものでもよい。
【0026】
そして、本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤ骨格部材17を構成する熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴム(加硫ゴム)からなる円環状のゴムチェーファー24が形成されている。このゴムチェーファー24は、ビードシート部21と接触する部分にまで延びていても良く、更には、タイヤ内側にまで延びていてもよい。ゴムチェーファー24を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。
【0027】
クラウン部16には、螺旋状に巻回されたスチールのコード26からなるクラウン部補強層28が埋設されている。なお、コード26は、全体がクラウン部16に埋設されていても良く、一部分がクラウン部16に埋設されていても良い。このクラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0028】
クラウン部補強層28の外周側には、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層30が配置されている。トレッドゴム層30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料からなるトレッド層を外周部に設けても良い。
【0029】
以下、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の製造方法について説明する。以下では、射出成形によってタイヤ骨格部材半体17A(図3〜図5参照)を形成し、更にタイヤ骨格部材半体17Aに生ゴム(未加硫ゴム)をプレス機で押圧し加硫成形してゴムチェーファー24を製造し、その後、2つのタイヤ骨格部材半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤセンターで接合することで説明する。
【0030】
本実施形態では、図2に示すような金型40を用いる。この金型40は、ビード部12(図3参照)からタイヤセンターCL(図3参照)までを構成するタイヤ骨格部材半体17Aを成形することができるように、タイヤ外面側を成形する外金型42と、タイヤ内面側を成形する内金型44とを有する。内金型44にはビードコア固定用のジグ46が、予め設定された位置に設けられている。外金型42と内金型44との間には、タイヤ骨格部材形状のキャビティS(空間)が形成されている。
【0031】
図4に示すように、ジグ46のビードコア18へのタイヤ周方向に沿った当接長さL、すなわち、タイヤ骨格部材半体17Aのタイヤ内側に形成された、熱可塑性材料の存在しない領域Aのタイヤ周方向に沿った長さLは、20mm以下であることが好ましい。これにより、破壊核の発生懸念がない。
【0032】
なお、ジグ46のビードコア18へのタイヤ周方向に沿った当接長さLが15mm以下であると、タイヤ骨格部材半体17Aに応力集中がより生じ難い。そして、この長さLが5mm以下であると、この効果をより更に得易い。また、この当接長さLは、ジグ46の強度上の観点で少なくとも1mm以上であることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、ジグ46はマグネット材で形成されている。また、ジグ46は、ビードコア収容位置に沿って均等間隔で12個配置されている。
このジグ46には、ビードコア18の寸法に応じた凹部47が形成されており、ビードコア18が金型40内に配置されたときにはビードコア18の一部がこの凹部47に入ってタイヤ内側から支えられた状態となる。この結果、ビードコア18は、タイヤ内側方向への移動が規制されるとともに上下方向(タイヤ径方向)の移動も規制された状態となる。
【0034】
また、金型40のゲート(樹脂注入路)48は、ビードコア18が凹部47に入った状態でビードコア18のタイヤ外側を溶融状態の熱可塑性高分子材料が通過するように、形成されている。熱可塑性高分子材料は、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂である。
ゲート48はリング状に開口したディスクゲートであり、キャビティSはリング状のゲート48に連通して中空円盤状に広がるように形成されている。なお、ゲート48はピンゲートであってもよいが、成形性の観点で、このようにディスクゲートのほうが好ましい。
【0035】
本実施形態では、まず、金型40を開き、ビードコア18のタイヤ内側部をジグ46の凹部47に入れ、金型40を閉じる。ビードコア18としては、磁力で吸着されるように磁性体で形成されたものを用いる。
そして、ゲート48から溶融した熱可塑性材料を金型40内に注入して射出成形して、タイヤ骨格部材半体17Aを形成する。
【0036】
この注入の際、ジグ46が設けられた位置では、熱可塑性材料は、ゲート48からビードコア18と外金型42との間を経由するように注入されるので、ビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧される。従って、ビードコア18が受ける移動力をジグ46で充分に支えることができる。よって、ビードコア18の位置ずれを防止するためのジグ46をビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。
【0037】
溶融樹脂としてはオレフィン系、エステル系、アミド系、もしくはウレタン系のTPEか、一部ゴム系の樹脂を混練してあるTPVであることが好ましい。これらの熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又は ASTM D648 に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が75℃以上、同じく JIS K7113 に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じく JIS K7113 に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7113 に規定されるビカット軟化温度(A法)が130℃以上であることが好ましい。
【0038】
このようにして製造されたビードコア18を保持しているタイヤ骨格部材半体17Aを金型40から取り出し、図6に示すように、加硫成形可能なプレス機50にセットする。このプレス機50は、タイヤ骨格部材半体17Aにタイヤ内側から当接して支える下型(台座)51と、下型51の上方に位置し、上下方向に往復移動可能で下面に成形面が形成された上型52と、上型52を上方から押圧する上型押圧部54と、を備えている。
【0039】
上型52にはゴムチェーファー成形面56が形成されており、下型51にタイヤ骨格部材半体17Aをセットし、ゴムチェーファー24を形成するための所定寸法の生ゴムRをタイヤ骨格部材半体17Aのビード部構成部分12Mに配置し、上型52を下降させてタイヤ骨格部材半体17Aのサイド部14に上型52の成形面(下面)を当接させて押圧した際に、上型52とビード部構成部分12Mとの間に設定形状のゴムチェーファーを加硫成形できるスペースが形成されるようになっている。また、上型52には、スピュー形成用の貫通孔58が形成されている。
【0040】
本実施形態では、下型51にタイヤ骨格部材半体17A、及び、生ゴムRをセットし、上型52を設定位置にまで下降させて生ゴムRを押圧し、この生ゴムRを所定温度で所定時間かけて加硫成形する。この結果、加硫ゴムからなるゴムチェーファー24(図1、図7参照)が形成される。この所定温度は、タイヤ骨格部材半体17Aを構成する熱可塑性材料の融点よりも低いことが、タイヤ骨格部材半体17Aの変形を防ぐ観点で好ましい。
生ゴムRの加硫促進剤としては、硫黄もしくはパーオキサイドが好ましい。生ゴムRに入れる補強剤としては、カーボンブラックもしくは特にシリカが好ましい。生ゴムRのカップリング剤としてはアミノシラン又はポリスルフィドであってもよい。
【0041】
本実施形態では、生ゴムRの配置位置を、生ゴムRをプレス機50で押圧すると上記の領域Aを生ゴムRが覆う位置とする。なお、タイヤ骨格部材半体17Aのうち生ゴムRをセットする部位の表面に1層或いは2層の接着剤層を塗布してもよい。この場合、接着剤を塗布する部位の表面をサンドペーパーなどでバフ研磨しておくと接着力が向上する。また、接着力を向上させるためには、接着剤を塗布した後にある程度乾燥させておくことが好ましい。このため、接着剤を塗布する際には、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はない。
【0042】
更に、このゴムチェーファー24が形成された2つのタイヤ骨格部材半体17Aを、互いに向かい合わせにタイヤセンターで突き当て、溶接用熱可塑性材料19(図1参照)を接合部位に向けて押出すことで接合して、ビード部12にゴムチェーファー24が形成されたタイヤ骨格部材17(図1参照)を製造する。溶接用熱可塑性材料19は自然冷却により次第に固化し、一方のタイヤ骨格部材半体17Aと他方のタイヤ骨格部材半体17Aとが溶接用熱可塑性材料19(図1参照)によって接合されることになる。なお、接合する際、2つのタイヤ骨格部材半体17Aの内部に、薄い金属板からなる筒状のタイヤ内面支持リングを配置して、タイヤ内面支持リングを回転させることにより2つのタイヤ骨格部材半体17Aを回転させつつ、溶融した溶接用熱可塑性材料をノズルから接合部位に向けて押し出すことで、接合部位に沿って溶融した溶接用熱可塑性材料19を形成してもよい。その際、ローラを溶接用熱可塑性材料に押し付けながら2つのタイヤ骨格部材半体17Aを回転させることにより、溶接用熱可塑性材料の表面を平らにしてもよい。
なお、ゴムチェーファー24の形成は、タイヤ骨格部材半体17Aの接合後としてもよく、工程の順序は適宜変更可能である。
【0043】
その後、タイヤ骨格部材17を回転装置で回転させつつ、コード供給装置(図示せず)から排出された加熱されたコード26をタイヤ骨格部材17の外周面に螺旋状に巻き付けてクラウン部補強層28を形成する。コード26をタイヤ骨格部材17の外周面に螺旋状に巻き付けるには、タイヤ骨格部材17を回転しながら、コード供給装置をタイヤ骨格部材17の軸方向に移動させれば良い。
【0044】
なお、タイヤ骨格部材17を構成する熱可塑性材料の融点よりもコード26を高温に加熱(例えば、コード26の温度を100〜200°C程度に加熱)することで、コード26が接触した部分の熱可塑性材料が溶融し、タイヤ骨格部材17の外周面にコード26の一部または全体を埋設することができる。コード26の埋設量は、コード26の温度、コード26に作用させるテンション等によって調整することができる。
その後、路面に接する部位にゴム材(トレッドゴム30。図1参照)を貼り付けて、耐摩耗性、耐破壊性を向上させた空気入りタイヤ10が製造される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材17のビード部構成部分12Mにゴムチェーファー24が加硫成形で形成されている。従って、タイヤのリム組みを行うと、ゴムチェーファー24がリムに当接するので、空気入りタイヤ10内に空気を充填してもビード部12とリム20との間から空気が抜け難い。従って、タイヤ骨格部材17が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0046】
また、タイヤ骨格部材17はサイド部14及びトレッド部(クラウン部16)も構成しており、しかも溶接用熱可塑性材料19によって2つのタイヤ骨格部材半体17AがタイヤセンターCLで接合されている。従って、タイヤ強度が効率的に高くなっている。
そして、ゴムチェーファー24がビード部12のタイヤ内側(タイヤ内面)にまで延びている。これにより、ビード部12のタイヤ外側にだけゴムチェーファー24を設けた場合に比べ、リム組み時にゴムチェーファー24のエッジがめくれるおそれがない。
また、タイヤ骨格部材のうちビード部構成部分12Mに生ゴムRを配置して、プレス機50で押圧し加硫成形することによってゴムチェーファー24が形成されており、製造時間の短縮化が図られている。
【0047】
また、タイヤ骨格部材半体17Aを製造する際、タイヤ内側となる方向からビードコア18をジグ46に当接させた状態で、溶融した熱可塑性材料をキャビティ内に注入する。すなわち、ビードコア18の位置ずれを防止するためのジグ46をビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。従って、ジグ46が当接していたことにより熱可塑性材料が形成されずにビードコア18が露出した領域Aは、タイヤ骨格部材半体17Aのタイヤ外側には全く形成されない。従って、リム20が当接する部位全てにわたり、熱可塑性材料が存在しており、リム組み時におけるエア保持性が充分に確保され易い。
【0048】
更に、生ゴムRの配置位置を、生ゴムRをプレス機50で押圧すると上記の領域Aを生ゴムRが覆う位置としている。従って、ゴムチェーファー24が領域Aを覆っており、これにより、金属製のビードコア18が錆びることが防止されるとともに、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核が発生することを防止できる。
そして、生ゴムRを配置する際、タイヤ骨格部材半体17Aのうち生ゴムRを配置する部位の表面に接着剤を塗布している。これにより、プレス機50で押圧した際に生ゴムRの位置ずれが生じることを防止できるとともに、ゴムチェーファー24とタイヤ骨格部材半体17Aとの接着力が向上している。
【0049】
そして、タイヤ骨格部材半体17Aのタイヤ内側に、ジグ46が当接していたことにより固化した熱可塑性材料が形成されずにビードコア18が露出した領域Aが形成されるが、この領域Aの寸法が比較的大きくてもリム組み時のエア保持性を確保することができる。従って、釜抜き時におけるビードコア周辺の熱可塑性材料の破壊防止を充分に確保したジグ寸法、形状とすることができ、タイヤ成形時でのビードコア18の位置ずれを充分に抑制することができる。そして、ビードコア18の位置ずれだけでなく、成形時の圧力付加によるビードコア18の変形をも防止することができる。
そして、溶融した熱可塑性材料を注入する際、射出成形をするために高圧で注入しても、このような効果が得られる。
【0050】
また、本実施形態では、ジグ46を磁石で形成しているので、ビードコア18をジグ46で保持し易い。なお、磁力をビードコア18の方向以外に逃がさないようにする遮蔽部材で覆ったジグを用いてもよい。
また、ビードコア収容位置に沿って複数位置にジグ46を配置している。これにより、ビードコア18の位置精度をより向上させることができる。
【0051】
また、熱可塑性材料を注入する際、ビードコア18と、タイヤ外側を形成する外金型42との間から注入している。このため、注入時にビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧される。従って、ビードコア18が受ける移動力をジグ46で充分に支えることができる。
【0052】
なお、ゴムチェーファー24がサイド部14にまで延びるように、上型52の成形面の形状を変更してもよい。これにより、縁石などによってサイド部14が損傷することを防止し易い空気入りタイヤとすることができる。
また、ビードコア18の位置ずれを更に防止するために、図8(B)に示すように、キャビティS内への進退方向位置の設定が可変な補助ジグ62を設け、この補助ジグ62をビードコア18にタイヤ外側から僅かな領域で当接させた状態にして、熱可塑性材料を注入してもよい。この場合には、図8(A)、図9に示すように、タイヤ外側に、熱可塑性材料が存在していない僅かな領域Eが生じるが、このように領域Eが小さいので、リム組み時においてエア保持性の問題はなく、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核の問題も全くない。
また、タイヤ骨格部材17には、クラウン部以外(例えばサイド部14)にも、補強材(高分子材料や金属からなる繊維、コード、不織布、織布等)が埋設配置されていてもよい。
また、タイヤ骨格部材半体17Aを形成した後、タイヤ骨格部材半体17Aを内金型44に配置したまま外金型42のみを外して生ゴムRを配置し、生ゴム押圧面が上型52と同形状の外金型で生ゴムRを押圧して加硫成形することでゴムチェーファーを形成することも可能である。
【0053】
また、タイヤ骨格部材半体17Aのビード部構成部分12Mと熱可塑性チェーファー24との接合強度を上げるために、ビード部構成部分12Mと熱可塑性チェーファー24とが接合する面を凹凸形状にしてアンカー効果(アンカーを下ろしたように強固に噛み合っている効果)を得られるようにしてもよい。
例えば、根元側よりも熱可塑性チェーファー側のほうが径の大きい逆円錐台状の凸部が配列されたビード部構成部分としてもよい。なお、熱可塑性チェーファー側が単に凹凸状であるビード部構成部分としても、熱可塑性チェーファー側が複数の断面湾曲凹状部を連ねたものであるビード部構成部分としても、アンカー効果が得られる。
このようなアンカー効果を得るための凹凸の深さは、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmよりも深いと、成形品の強度が落ちることが考えられる。また、凹凸の深さが0.05mmよりも浅いと、充分なアンカー効果を得にくい。
このような凹凸形状を形成するには、金型の成形面に予め対応する凹凸形状を形成しておけばよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、タイヤ骨格部材半体17Aを第1実施形態と同様にして製造する。
そして、図10に示すように、射出成形(インサート成形)用の金型70にタイヤ骨格部材半体17Aを収容して金型70を閉じる。ここで、この金型70は、外金型72と内金型74とで構成されており、外金型72にはチェーファー用の生ゴムを注入するゲート78が形成されている。そして、タイヤ骨格部材半体17Aを金型70内に収容して閉じると、ゲート78に連通して設定形状のゴムチェーファー84を形成するスペースZがキャビティ内に形成される構造になっている。なお、金型70には、キャビティ内に生ゴムが注入されたときにキャビティ内の空気を追い出すためのガス抜き孔(図示せず)が形成されている。
【0055】
本実施形態では、射出成形用の金型70にタイヤ骨格部材半体17Aを収容して金型70を閉じ、チェーファー用の生ゴムをゲート78から射出して加硫成形する。これにより、図11に示すように、タイヤ骨格部材半体17Aにゴムチェーファー84が形成される。
【0056】
その後、第1実施形態と同様にして、2つのタイヤ骨格部材半体17Aを接合してタイヤ骨格部材を製造し、コード26をタイヤ骨格部材17の外周面に螺旋状に巻き付けてクラウン部補強層28を形成する。そして、路面に接する部位にゴム材(トレッドゴム30。図1参照)を貼り付けて、耐摩耗性、耐破壊性を向上させた空気入りタイヤを製造する。
【0057】
このように、本実施形態では、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材半体17Aのビード部構成部分12Mに生ゴムを射出して加硫成形することによりゴムチェーファー84を形成している。従って、タイヤのリム組みを行うと、ゴムチェーファー84がリムに当接するので、空気入りタイヤ10内に空気を充填してもビード部とリムとの間から空気が抜け難い。従って、タイヤ骨格部材17が熱可塑性材料で形成されていても内圧保持性能が高い。
【0058】
また、第1実施形態と同様、本実施形態ではタイヤ骨格部材半体17Aのビードコア18が露出している領域Aに生ゴムが入る。従って、図12に示すように、生ゴムを射出する前にはビードコア18が露出していた領域A(図12(A)参照)を、図12(B)に示すように、ゴムチェーファー84が覆っている。これにより、金属製のビードコア18が錆びることが防止されるとともに、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核が発生することが防止される。
【0059】
なお、タイヤ骨格部材半体17Aのうちゴムチェーファー84を配置する表面に1層或いは2層の接着剤層を塗布してもよい。この場合、第1実施形態と同様、接着剤を塗布する部位の表面をサンドペーパーなどでバフ研磨しておくとゴムチェーファー84との接着力が向上する。接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、特に制限はない。
また、本実施形態では射出成形用の金型70に生ゴムを注入することで説明したが、第1実施形態で説明したプレス機50を用いて、生ゴムRを配置することに代えて貫通孔58から生ゴムを注入することにより射出して加硫成形することによりゴムチェーファー24を形成してもよい。この場合であっても、上記の領域Aを生ゴムRが覆い、この結果、ゴムチェーファー24が領域Aを覆う構造にすることが可能である。これにより、金属製のビードコア18が錆びることが防止されるとともに、タイヤ骨格部材半体17Aの劣化や、タイヤ骨格部材半体17Aに故障核が発生することを防止できる。
【0060】
また、図13に示すように、サイド部14にまで延びたゴムチェーファー86を形成するように、タイヤ骨格部材半体17Aを収容したキャビティ内に形成されるスペースZ(図10参照)の形状を変更してもよい。これにより、縁石などによってサイド部14が損傷することを防止し易い空気入りタイヤとすることができる。
【0061】
<試験例>
本発明の効果を確かめるために、本発明者は、タイヤ骨格部材半体17AをTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)で構成させて、ゴムチェーファー24が設けられた第1実施形態の空気入りラジアル空気入りタイヤ10の一例(以下、実施例タイヤという)、及び、ゴムチェーファーが設けられていない空気入りタイヤの一例(以下、従来例タイヤという)を用意し、それぞれリム組みして内圧保持性能の試験をし、性能評価を行った。従来例タイヤは、実施例タイヤに比べ、ゴムチェーファー24が形成されていないタイヤである。
【0062】
本試験例では、0.39MPa(4kg/cm2 )の内圧にして48時間後の内圧を測定した。そして、従来例タイヤにおける内圧保持性能を評価指数100とし、実施例タイヤについては相対評価となる評価指数を算出した。この評価指数は大きいほど性能が高いこと、すなわち内圧保持性能が優れていることを示す。
実施例タイヤの評価指数は110であり、内圧保持性能が従来例タイヤよりも良好であるという結果になった。
【0063】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、製造工程の順序を適宜変更することが可能である。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10 空気入りタイヤ(タイヤ)
12 ビード部
14 サイド部(タイヤサイド部)
17 タイヤ骨格部材(タイヤ構成部材、タイヤ骨格部材)
18 ビードコア
20 リム
24 ゴムチェーファー
40 金型(成形型)
46 ジグ
50 プレス機
84 ゴムチェーファー
86 ゴムチェーファー
S キャビティ
R 生ゴム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材と、
前記タイヤ構成部材に設けられ、リムと接するゴムチェーファーと、
を備えた、タイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ構成部材が、前記ビード部からクラウン部まで構成するタイヤ骨格部材である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴムチェーファーがサイド部にまで延びている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴムチェーファーが前記ビード部のタイヤ内側にまで延びている、請求項1〜3のうち何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、
前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを配置し、プレス機で押圧するとともに前記生ゴムを加硫成形してゴムチェーファーとする、タイヤの製造方法。
【請求項6】
前記生ゴムを配置する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける、請求項5に記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、
前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出して加硫成形することによりゴムチェーファーとする、タイヤの製造方法。
【請求項8】
前記生ゴムを射出する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける、請求項7に記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記タイヤ構成部材を成形する成形型のキャビティ内にジグを設け、
タイヤ内側となる方向からビードコアを前記ジグに当接させて固定し、
溶融した熱可塑性材料を前記キャビティ内に注入することにより前記タイヤ構成部材を成形する、請求項5〜8のうち何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記プレス機で前記生ゴムを押圧した際、又は、前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出した際、前記タイヤ構成部材に形成された前記ジグの抜け跡部を前記生ゴムで埋める、請求項9に記載のタイヤの製造方法。
【請求項1】
熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材と、
前記タイヤ構成部材に設けられ、リムと接するゴムチェーファーと、
を備えた、タイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ構成部材が、前記ビード部からクラウン部まで構成するタイヤ骨格部材である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴムチェーファーがサイド部にまで延びている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴムチェーファーが前記ビード部のタイヤ内側にまで延びている、請求項1〜3のうち何れか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、
前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを配置し、プレス機で押圧するとともに前記生ゴムを加硫成形してゴムチェーファーとする、タイヤの製造方法。
【請求項6】
前記生ゴムを配置する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける、請求項5に記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性材料からなり、少なくともビード部を構成するタイヤ構成部材を成形し、
前記タイヤ構成部材の前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出して加硫成形することによりゴムチェーファーとする、タイヤの製造方法。
【請求項8】
前記生ゴムを射出する際、前記タイヤ構成部材の前記ビード部に接着剤を塗布して前記生ゴムを貼り付ける、請求項7に記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記タイヤ構成部材を成形する成形型のキャビティ内にジグを設け、
タイヤ内側となる方向からビードコアを前記ジグに当接させて固定し、
溶融した熱可塑性材料を前記キャビティ内に注入することにより前記タイヤ構成部材を成形する、請求項5〜8のうち何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記プレス機で前記生ゴムを押圧した際、又は、前記ビード部のリムと接する側に生ゴムを射出した際、前記タイヤ構成部材に形成された前記ジグの抜け跡部を前記生ゴムで埋める、請求項9に記載のタイヤの製造方法。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図2】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−42233(P2011−42233A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191229(P2009−191229)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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