説明

タイヤの製造装置、タイヤの製造方法およびタイヤ

【課題】チューブ体の外周部とトレッドの内周面とをその全域にわたって容易かつ確実に接合させる。
【解決手段】熱可塑性材料で形成されるとともにリム10の外周部に嵌合されるチューブ体21と、このチューブ体21の外周部に接合されたトレッド22と、を備えるタイヤ20を形成するタイヤの製造装置であって、内部空間Aに正の気体圧が付与されたチューブ体21をその内周部側から支持する内側支持体41と、チューブ体21に外嵌されたトレッド22をその外周部側から支持する外側支持体42と、チューブ体21とトレッド22との間を加熱して両者を接合する加熱手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造装置、タイヤの製造方法およびタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤでは、例えば下記特許文献1に示されるように、加硫ゴム内に有機繊維やスチールコード等を有するビードコアやベルト層等の補強材が埋設されている。
ところがこの種のタイヤでは、構造が複雑になり製造コストを低減するのが困難であるばかりでなく、重量が大きくなり、例えばリム組みやリム解きの作業も困難になる場合があった。
そこで、このような問題を解決するために、本願発明者等は鋭意検討した結果、熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤを想到するに至った。
このタイヤでは、トレッドとチューブ体とで構成されるとともに、チューブ体が熱可塑性材料で形成されてその内部に有機繊維やスチールコード等を有する補強材が埋設されていないので、構造を単純にすることが可能になり、製造コストを低減することができるとともに、軽量化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−255305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このタイヤの製造に際し、チューブ体の外周部とトレッドの内周面とをその全域にわたって接合させることが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、チューブ体の外周部とトレッドの内周面とをその全域にわたって容易かつ確実に接合させることができるタイヤの製造装置、タイヤの製造方法およびタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のタイヤの製造装置は、熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤを形成するタイヤの製造装置であって、内部空間に正の気体圧が付与されたチューブ体をその内周部側から支持する内側支持体と、該チューブ体に外嵌されたトレッドをその外周部側から支持する外側支持体と、チューブ体とトレッドとの間を加熱して両者を接合する加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤの製造方法は、熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤを形成するタイヤの製造方法であって、前記チューブ体の内部空間に正の気体圧を付与するとともに、本発明のタイヤの製造装置を用い、前記内側支持体によりチューブ体をその内周部側から支持させ、かつチューブ体に外嵌されたトレッドをその外周部側から前記外側支持体により支持させた状態で、前記加熱手段によりチューブ体とトレッドとの間を加熱して両者を接合することを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤは、熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤであって、本発明のタイヤの製造方法により形成されたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、内部空間に正の気体圧が付与されたチューブ体の外周部がタイヤ径方向の外側に向けて変形することを外側支持体によって規制し、かつ該チューブ体の内周部がタイヤ径方向の内側に向けて変形することを内側支持体によって規制することが可能になる。
したがって、前記加熱手段による加熱時にチューブ体の内圧が上昇することと相俟って、トレッドの内周面とチューブ体の外周部とを互いに強く密接させることが可能になり、両者間に例えば気泡が介在する等して未接合箇所が発生することが抑えられ、両者を確実に接合することができる。
また、前述の接合に際し、チューブ体およびトレッドを内圧が保持可能な気密空間に置かなくても、両者を確実に接合することが可能になることから、この製造装置の複雑化や大型化を回避することができる。
【0010】
ここで、本発明のタイヤの製造装置は、前記チューブ体の外表面において、前記内側支持体とトレッドとの間に位置する両側部分をタイヤ幅方向の外側から支持する側方支持部を備えてもよい。
【0011】
この場合、側方支持部を備えているので、前述のように外側支持体および内側支持体がチューブ体のタイヤ径方向の変形を規制したことによって、チューブ体の両側部分がタイヤ幅方向の外側に膨出変形するのを防ぐことが可能になる。したがって、前述の接合に際し、チューブ体が塑性変形するのを抑制することが可能になり、タイヤを精度よく形成することができる。
【0012】
また、前記内側支持体は前記リムを兼ねてもよい。
【0013】
この場合、内側支持体がリムを兼ねていることから、リムへのタイヤの装着と、タイヤの製造と、を同時に行うことが可能になる。また、内側支持体がリムを兼ねているので、タイヤの製造装置を簡素化することが可能になり、タイヤの製造コストを抑えることができる。
【0014】
さらに、前記外側支持体は、タイヤ幅方向に分割可能に形成されてもよい。
【0015】
この場合、外側支持体がタイヤ幅方向に分割可能に形成されているので、この外側支持体をトレッドの外周部側に容易に装着することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、チューブ体の外周部とトレッドの内周面とをその全域にわたって容易かつ確実に接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したタイヤ・リム組立体を分解した斜視図である。
【図2】図1に示すタイヤ・リム組立体を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図3】図1および図2に示すタイヤ・リム組立体をタイヤ幅方向に沿って切断した状態の一部を示す斜視図である。
【図4】図1から図3に示すタイヤ・リム組立体において、第2分割リムを取り外した状態を示す要部拡大図である。
【図5】本発明に係る一実施形態として示したタイヤの製造方法のトレッド接合工程において、タイヤ幅方向に二分割された外側支持体のうちの一方の内側に仮組み体を配置した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る一実施形態として示したタイヤの製造方法のトレッド接合工程において、仮組み体を外側支持体に装着した状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示す、仮組み体が外側支持体に装着されてなる構成をタイヤ幅方向に沿って切断した状態の一部を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る他の実施形態として示したタイヤの製造方法のトレッド接合工程において、仮組み体が外側支持体に装着されてなる構成をタイヤ幅方向に沿って切断した状態の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明に係るさらに他の実施形態として示したタイヤの製造方法のトレッド接合工程において、仮組み体が外側支持体に装着されてなる構成をタイヤ幅方向に沿って切断した状態の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るタイヤを有するタイヤ・リム組立体の一実施形態を図1から図4を参照しながら説明する。
タイヤ・リム組立体1は、円盤状のリム10と、このリム10の後述する支持部(外周部)12に装着されたタイヤ20と、を備え、これらのリム10およびタイヤ20がそれぞれ、タイヤ幅方向Hに沿って延びる共通軸と同軸に配置されている。以下、この共通軸に直交する方向をタイヤ径方向といい、この共通軸を中心に周回する方向をタイヤ周方向という。
【0019】
リム10は、円盤状のリム本体11と、このリム本体11の外周面に連結され、後述するチューブ体21をその内周部側から支持する支持部12と、を備えている。リム10は、後述するチューブ体21やトレッド22を形成する材質よりも高硬度の材質、例えば合成樹脂、鉄、ステンレス鋼若しくはアルミニウム等で形成されている。また、リム本体11におけるタイヤ径方向の中央部には、リム10を図示されない車軸に組付けるための装着孔13が複数形成されている。
ここで、支持部12においてタイヤ幅方向Hの内側を向く両表面およびこれらの表面をつなぐ底面、つまり支持面12aのタイヤ幅方向Hに沿った縦断面視形状は、チューブ体21の内周部における前記縦断面視形状に沿う円弧状となっている。すなわち、支持部12におけるタイヤ幅方向Hの両端部は、タイヤ径方向に延在しチューブ体21の内周部をタイヤ幅方向Hの両側から支持する支持突部12bとなっている。なお図示の例では、支持突部12bは、タイヤ径方向の内側から外側に向かうに従い漸次タイヤ幅方向Hの外側に向けて延在している。
【0020】
本実施形態では、リム10は、タイヤ幅方向Hの中央部で円盤状の第1分割リム14とリング状の第2分割リム15とに分割可能となっている。また、前記装着孔13は、円盤状の第1分割リム14においてタイヤ径方向に沿って延びタイヤ幅方向Hを向く平板部17の中央部に形成され、車軸に装着された第1分割リム14に対してリング状の第2分割リム15が着脱自在となっている。
【0021】
第1分割リム14における平板部17の外周部には、タイヤ周方向に間隔をあけて複数の肉抜き部17aが形成されている。肉抜き部17aは、タイヤ周方向に沿って長い平面視長方形状に形成されるとともに、平板部17をタイヤ幅方向Hに貫通している。
また、平板部17の外周部においてタイヤ幅方向Hの内側を向く表面のうち、各肉抜き部17aにタイヤ径方向の外側から各別に連なる複数の外周縁部17bと、タイヤ周方向で隣り合う肉抜き部17a同士の間および前記外周縁部17b同士の間に位置する中間部分17cと、は、他の部分よりもタイヤ幅方向Hの外側に大きく窪んでいる。
【0022】
さらに図示の例では、平板部17の前記外周縁部17bにおけるタイヤ周方向の中央部のうちその外周縁を除いた部分(以下、第1係合凸部という)18はタイヤ幅方向Hの内側に突出している。また、平板部17の前記中間部分17cにおいてその外周縁を除いた部分(以下、第2係合凸部という)19もタイヤ幅方向Hの内側に突出している。なお、第1係合凸部18および第2係合凸部19のタイヤ幅方向Hの内側に向けた各突出量は、前記外周縁部17bおよび中間部分17cのタイヤ幅方向Hの外側に向けた各窪み量よりも小さくなっている。
【0023】
リング状の第2分割リム15の内周縁部15bには、タイヤ径方向の内側に向けて突出する板体15aがタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、第2分割リム15の内周縁部15bはタイヤ周方向における全周にわたって連続して延びるフランジ状に形成されている。
ここで、板体15aおよび第1分割リム14の第2係合凸部19はそれぞれ、互いに同形同大とされるとともにその配設ピッチは互いに同等になっている。なお、板体15aおよび第2係合凸部19に挿通孔16が形成されており、これらの挿通孔16に挿入された図示されないボルトにナットを螺着することにより、第2分割リム15が第1分割リム14に固定されるようになっている。
【0024】
また、図3に示されるように、前記支持面12aのタイヤ幅方向Hの中央部には、タイヤ径方向に沿って延在し、肉抜き部17aに開口する支持孔31が形成されている。この支持孔31内に、チューブ体21の内部空間Aに圧縮気体を注入するための圧縮気体注入パイプ30が配設されている。圧縮気体注入パイプ30におけるタイヤ径方向の内方端部は、肉抜き部17a内に突出している。
【0025】
タイヤ20は、内部空間Aに正の気体圧が付与されたチューブ体21と、無端帯状に形成されたトレッド22と、を備えている。なお、チューブ体21の内部空間Aに充填される気体としては、例えば空気や窒素ガス等が挙げられる。
そして、リム10、チューブ体21およびトレッド22それぞれのタイヤ幅方向Hにおける中央部が互いに一致させられた状態で、チューブ体21がリム10の支持面12aに離脱可能に嵌合され、かつトレッド22がチューブ体21の外周部に嵌合されて接合されている。さらに、チューブ体21は、その外周部のタイヤ径方向の外側に向けた変形がトレッド22により抑えられた状態で、内部空間Aの正の気体圧が作用することにより、内周部がリム10の支持面12aに密接されている。
【0026】
ここで、前記内部空間Aは、タイヤ周方向における全周にわたって連続して延びかつ前記縦断面視形状が円形状に形成された気密空間とされ、チューブ体21は中空のドーナツ状体となっている。
また、このチューブ体21においてリム10の支持部12に支持される内周部には、図3に示されるように、前記内部空間Aに連通し、かつ支持孔31内に配設される連通筒32が突設されている。この連通筒32内に圧縮気体注入パイプ30が嵌合されている。この圧縮気体注入パイプ30から圧縮気体が供給されることで内部空間Aが正圧に保持可能となっている。なお図示の例では、連通筒32はチューブ体21と一体に形成されている。
【0027】
さらに本実施形態では、チューブ体21の内周部におけるタイヤ幅方向Hの中央部に、図1に示されるように、連通筒32、およびタイヤ周方向の全周にわたって連続して延びる円環板33が突設されている。図示の例では、円環板33はチューブ体21と一体に形成されている。円環板33には、タイヤ径方向の内方に向けて開口する係合孔33aがタイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。各係合孔33aは、タイヤ周方向に長い長方形状とされ、第2係合凸部19のうち肉抜き部17aよりもタイヤ径方向の外側に位置する部分、および第1係合凸部18と同形同大となっている。
【0028】
そして、このチューブ体21を第1分割リム14に装着すると、図4に示されるように、円環板33の係合孔33a内に、第2係合凸部19のうち肉抜き部17aよりもタイヤ径方向の外側に位置する部分、および第1係合凸部18が各別に嵌め込まれて係合する。またこの際、円環板33が、第1、第2係合凸部18、19よりも若干タイヤ幅方向Hの内側に突出する。これにより、第2分割リム15を第1分割リム14に装着したときに、円環板33が、第1分割リム14の平板部17および第2分割リム15の内周縁部15bによってタイヤ幅方向Hに圧縮させられて挟み込まれる。
【0029】
ここで本実施形態では、チューブ体21の外周部におけるタイヤ幅方向Hの中央部は、図1および図3に示されるように、前記共通軸と同軸の円筒状に形成され、タイヤ幅方向Hに沿って平行に延びる平坦面21cとなっている。この平坦面21cにタイヤ径方向の外側からリボン体21bが巻き付けられている。
【0030】
また、チューブ体21のタイヤ幅方向Hにおける両側部分21aは、図2および図3に示されるように、リム10の支持面12aおよびトレッド22に覆われておらず外部に露出している。なお、リム10の支持面12aで覆われたチューブ体21の内周部のタイヤ幅方向Hに沿った周長と、トレッド22で覆われたチューブ体21の外周部のタイヤ幅方向Hに沿った周長と、は互いに同等になっている。また、チューブ体21において前述のように外部に露出した両側部分21aのタイヤ径方向に沿った各周長は互いに同等になっている。
【0031】
トレッド22は天然ゴムまたは/およびゴム組成物が加硫された加硫ゴムで形成されている。このトレッド22の内部には、スチールコードまたは有機繊維が複数並べられて構成された補強層22aが全周にわたって埋設されている。
【0032】
さらに本実施形態では、チューブ体21は、例えば熱可塑性エラストマー若しくは熱可塑性樹脂等の熱可塑性材料で形成されている。なお、走行時の弾性(乗り心地性)や製造時の成形性を考慮すると、チューブ体21は熱可塑性エラストマーで形成するのが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えばJIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂若しくはポリアミド樹脂等が挙げられる。
また、チューブ体21の肉厚は例えば約0.5mm〜5.0mm程度にし、車両への装着時に内部空間Aに付与する気体圧は例えば約50kPa〜500kPa程度にし、このタイヤ・リム組立体1を装着する車両としては例えば自動二輪車全般や総重量3t未満の普通乗用車等が挙げられる。
【0033】
なお、チューブ体21の肉厚が0.5mmより薄くなると、耐圧性や耐刃性が不十分になるおそれがあり、5.0mmより厚くなると、重量が増大したりあるいはチューブ体21に曲げひずみが作用したときに、表面側と裏面側とで生ずる応力の差が大きくなって耐疲労性が悪化したりするおそれがある。
また、チューブ体21に付与される気体圧が50kPaよりも低くなると、荷重支持性能が低下するおそれがあり、500kPaより高くなると、乗り心地性や耐圧性が悪化するおそれがある。
【0034】
次に、タイヤ20の製造方法について説明する。
タイヤ20の製造方法は、チューブ分割体形成工程と、チューブ分割体仮接合工程と、トレッド配置工程と、チューブ体接合工程と、トレッド接合工程と、を有している。
【0035】
チューブ分割体形成工程では、チューブ体21がタイヤ幅方向Hの中央部で分割された形態の一対のチューブ分割体を形成する。
一対のチューブ分割体それぞれにおいて、チューブ体21の内周部を構成する内周部分には、円環板33がタイヤ幅方向Hに二分割された形態の円環薄板が各別に設けられている。なお、一対のチューブ分割体の内周部分にそれぞれ半割の連通筒32も設けられている。
【0036】
チューブ分割体仮接合工程では、まず、一対のチューブ分割体それぞれにおいて、チューブ体21の外周部を構成する外周部分における分割端縁を互いに突き合わせた状態で、この突き合わせた部分にタイヤ径方向の外側からリボン体21bを巻き付ける。次に、前記外周部分において前記分割端縁が位置する部分、およびリボン体21bを、例えば熱風やレーザー等で加熱しながら、若しくは超音波により振動させて摩擦熱を発生させながら、例えばロール等の第1加圧手段によりタイヤ径方向に挟み込んで加圧する。これにより、リボン体21bが、前記外周部分において前記分割端縁が位置する部分に接合され、かつ前記外周部分における分割端縁同士が互いに接合される。
【0037】
トレッド配置工程は、前記第1加圧手段を退避させた後に、一対のチューブ分割体の各外周部分をタイヤ径方向の内側に向けて押し込む。これにより、一対のチューブ分割体の各内周部分が、前記円環薄板同士がタイヤ幅方向Hに互いに離間移動させられて開口しながら、一対のチューブ分割体の外径が縮径させられる。そして縮径変形させられた一対のチューブ分割体を円筒状のトレッド22内に挿入した状態で、一対のチューブ分割体に対する前述の押し込みを解除する。これにより、一対のチューブ分割体が復元変形し、その外周部分がトレッド22の内周面に当接することで、一対のチューブ分割体が容易にトレッド22内に嵌合される。
【0038】
チューブ体接合工程は、一対のチューブ分割体の各内周部分における前記円環薄板同士を、互いに重ね合わせた状態で、例えば熱風やレーザー等で加熱しながら、若しくは超音波により振動させて摩擦熱を発生させながら、例えばロール等の第2加圧手段によりタイヤ幅方向Hに挟み込んで加圧する。これにより、前記円環薄板同士が互いに接合することで、外周部にトレッド22が嵌合されたチューブ体21が形成される。
【0039】
トレッド接合工程では、チューブ体21の外周部にトレッド22を接合する。
まず、このトレッド接合工程で用いるタイヤの製造装置について説明する。
タイヤの製造装置は、図5〜図7に示されるように、内部空間Aに正の気体圧が付与されたチューブ体21をその内周部側から支持する内側支持体41と、このチューブ体21に外嵌されたトレッド22をその外周部側から支持する外側支持体42と、チューブ体21とトレッド22との間を加熱して両者を接合する加熱手段と、を備えている。
内側支持体41は図示の例では前述したリム10を兼ねている。
加熱手段は加熱炉となっている。
【0040】
外側支持体42は、円筒状に形成されるとともに、その内周面のタイヤ幅方向Hに沿った縦断面視形状は、タイヤ径方向の外側に向けて窪む円弧状となっている。外側支持体42は、チューブ体21やトレッド22を形成する材質よりも高硬度の材質、例えば合成樹脂、鉄、ステンレス鋼若しくはアルミニウム等で形成されている。
外側支持体42の外周面におけるタイヤ幅方向Hの中央部には、その全周にわたってタイヤ径方向の外側に向けてフランジ部45が突設されている。フランジ部45には、タイヤ周方向に間隔をあけて複数の貫通孔45aが形成されている。
また本実施形態では、外側支持体42におけるタイヤ幅方向Hの両端部にそれぞれ、チューブ体21の外表面において、リム10の支持部12とトレッド22との間に位置する両側部分21aをタイヤ幅方向Hの外側から支持する側方支持部46がタイヤ径方向の内側に向けて突設されている。さらに、側方支持部46のタイヤ径方向の内端部には、支持部12の支持突部12bにおけるタイヤ径方向の外端部に当接する当接部47が、タイヤ径方向の内側に向けて突設されている。
そして、外側支持体42はタイヤ幅方向Hに二等分割可能に形成されていて、フランジ部45の貫通孔45a内に図示されないボルトを挿通してこのボルトにナットを螺着することで固定されるようになっている。
【0041】
次に、以上のように構成されたタイヤの製造装置を用いたトレッド接合工程について説明する。
まず、外周部にトレッド22が嵌合されたチューブ体21を、図1から図4で示したタイヤ・リム組立体1と同様にしてリム(内側支持体)10に装着して仮組み体を形成する。
そして、この仮組み体を、図5に示されるように、二等分割された外側支持体42のうちの一方の内側に配置した後に、図6および図7に示されるように、他方をその内側に前記仮組み体を進入させながら前記一方に重ね合わせる。これにより、外側支持体42がチューブ体21に外嵌されたトレッド22をその外周部側から覆い、かつ側方支持部46がチューブ体21の前記両側部分21aをタイヤ幅方向Hの外側から覆う。さらにこの際、前記当接部47が、支持部12の支持突部12bにおけるタイヤ径方向の外端部に当接することで、外側支持体42の内周面とリム10の支持面12aと側方支持部46の内面とにより密閉空間が画成される。
その後、圧縮気体注入パイプ30からチューブ体21の内部空間Aに圧縮気体を注入し、内部空間Aに正の気体圧(例えば100kPa〜2000kPa)を付与する。この際、チューブ体21の内周部がリム10の支持部12に密接することで、チューブ体21がその内周部側からリム10の支持部12により支持され、かつトレッド22の外周部が外側支持体42の内周面に密接することで、トレッド22がその外周部側から外側支持体42により支持される。さらにこの際、チューブ体21の前記両側部分21aが側方支持部46の内面に密接することで、チューブ体21の前記両側部分21aが側方支持部46によりタイヤ幅方向Hの外側から支持される。
そして、前記仮組み体を外側支持体42とともに加熱炉内に置き、チューブ体21とトレッド22との間を加熱(例えば70℃〜200℃)して両者21、22を接合し、タイヤ20を形成する。なお本実施形態では、その後タイヤ20から外側支持体42を取り外すことでタイヤ・リム組立体1が得られる。
【0042】
ここで、前述したトレッド配置工程で一対のチューブ分割体に外嵌するトレッド22は、完全に加硫した完全加硫状態であっても、全く加硫していない未加硫状態であっても、あるいは途中まで加硫が進行した半加硫状態であってもよい。
また、前述したトレッド配置工程では、トレッド22とチューブ体21との間に、接合部材を配置することが好ましい。なお、この接合部材は、トレッド22が未加硫状態にある場合には必ずしも配置しなくてもよい。
前記接合部材としては、例えば、未加硫状態の接合用ゴム帯部材、加硫接着剤、RFL(レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス)接着剤、若しくはこれらのうちの2つ以上を組み合わせたもの等が挙げられ、これらのうち加硫接着剤、若しくはRFL接着剤が、熱可塑性材料との接合の観点から好ましい。
加硫接着剤としては、例えば、ハロゲン化ゴム系の加硫接着剤(株式会社東洋化学研究所製 メタロック(登録商標)R−46)、あるいはイソシアネート系の加硫接着剤等が挙げられる。
RFL接着剤のラテックスとしては、例えばポリブタジエン系ゴムラテックス、スチレン/ブタジエン系ゴムラテックス、天然ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス、アクリロニトリル/ブタジエン系ゴムラテックス等が挙げられる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によるタイヤの製造方法によれば、内部空間Aに正の気体圧が付与されたチューブ体21の外周部がタイヤ径方向の外側に向けて変形することを外側支持体42によって規制し、かつチューブ体21の内周部がタイヤ径方向の内側に向けて変形することを内側支持体41によって規制することが可能になる。
したがって、前記加熱炉内での加熱時にチューブ体21の内圧が上昇することと相俟って、トレッド22の内周面とチューブ体21の外周部とを互いに強く密接させることが可能になり、両者21、22間に例えば気泡が介在する等して未接合箇所が発生することが抑えられ、両者21、22を確実に接合することができる。
また、前述の接合に際し、チューブ体21およびトレッド22を内圧が保持可能な気密空間に置かなくても、両者21、22を確実に接合することが可能になることから、この製造装置の複雑化や大型化を回避することができる。
【0044】
また本実施形態では、外側支持体42に側方支持部46が設けられているので、前述のように外側支持体42および内側支持体41がチューブ体21のタイヤ径方向の変形を規制したことによって、チューブ体21の両側部分21aがタイヤ幅方向Hの外側に膨出変形するのを防ぐことが可能になる。したがって、前述の接合に際し、チューブ体21が塑性変形するのを抑制することが可能になり、タイヤ20を精度よく形成することができる。
【0045】
さらに本実施形態では、内側支持体41がリム10を兼ねていることから、リム10へのタイヤ20の装着と、タイヤ20の製造と、を同時に行うことが可能になる。さらにまた、内側支持体41がリム10を兼ねているので、タイヤの製造装置を簡素化することが可能になり、タイヤ20の製造コストを抑えることができる。
また、外側支持体42がタイヤ幅方向Hに二等分割可能に形成されているので、この外側支持体42をトレッド22の外周部側に容易に装着することができる。
【0046】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
例えば、前記実施形態では、内側支持体41としてリム10を示したが、リム10とは別の構成を採用してもよい。
また、前記実施形態では、加熱手段として加熱炉を採用したが、これに代えて例えば、外側支持体42および内側支持体41のうちの少なくとも一方の内部に埋設したヒータ等を採用してもよい。
さらに、前記トレッド接合工程は、外側支持体42の内周面とリム10の支持面12aと側方支持部46の内面とにより画成された密閉空間を減圧した状態で、チューブ体21とトレッド22との間を加熱して両者21、22を接合してもよい。この場合、両者21、22間に気泡が発生するのをより一層確実に抑えることができる。
また、外側支持体42に側方支持部46および当接部47を設けたが、図8に示されるように側方支持部46および当接部47を有しない外側支持体42を採用してもよいし、あるいは側方支持部46および当接部47を内側支持体に設けてもよいし、さらには側方支持部を外側支持体42および内側支持体とは別部材にしてもよい。
さらに、外側支持体42として、図9に示されるような、例えばケプラーや綿等で形成され高剛性で耐熱性に優れ非伸縮性の無端帯状に形成されたシート体を採用してもよい。なお図示の例では、シート体におけるタイヤ幅方向Hの両端部が、タイヤ周方向の複数個所でピン48により内側支持体41に離脱可能に固定されている。
また、前記実施形態では、一対のチューブ分割体の内周部分にそれぞれ半割の連通筒32を設けたが、これに代えて例えば、一対のチューブ分割体のうち、一方のチューブ分割体の内周部分に連通筒32の全体を設けてもよい。
【0048】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
次に、前述した作用効果に係る検証試験について説明する。
従来例では外側支持体42を用いずにタイヤを形成し、実施例では図5から図7に示す外側支持体42を用い前述と同様にしてタイヤを形成し、その他の条件は従来例および実施例双方について全く同様にした。なお、チューブ体21の内部空間Aに付与した気体圧は800kPaとし、加熱炉内(大気圧)の設定温度は120℃とし、加熱時間は4時間とし、前記接合部材として加硫接着剤を採用した。
その結果、従来例では、トレッド22の内周面とチューブ体21の外周部との間に、気泡が介在する等した未接合箇所が大部分を占め、実使用に耐え得るタイヤが得られなかったことが確認される一方、実施例では、トレッド22の内周面とチューブ体21の外周部との間に未接合箇所が殆ど視認できなかったことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
チューブ体の外周部とトレッドの内周面とをその全域にわたって容易かつ確実に接合させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 タイヤ・リム組立体
10 リム
12 支持部(外周部)
20 タイヤ
21 チューブ体
21a 両側部分
22 トレッド
41 内側支持体
42 外側支持体
46 側方支持部
A 内部空間
H タイヤ幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤを形成するタイヤの製造装置であって、
内部空間に正の気体圧が付与されたチューブ体をその内周部側から支持する内側支持体と、該チューブ体に外嵌されたトレッドをその外周部側から支持する外側支持体と、チューブ体とトレッドとの間を加熱して両者を接合する加熱手段と、を備えることを特徴とするタイヤの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のタイヤの製造装置であって、
前記チューブ体の外表面において、前記内側支持体とトレッドとの間に位置する両側部分をタイヤ幅方向の外側から支持する側方支持部を備えることを特徴とするタイヤの製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタイヤの製造装置であって、
前記内側支持体は、前記リムを兼ねていることを特徴とするタイヤの製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤの製造装置であって、
前記外側支持体は、タイヤ幅方向に分割可能に形成されていることを特徴とするタイヤの製造装置。
【請求項5】
熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤを形成するタイヤの製造方法であって、
前記チューブ体の内部空間に正の気体圧を付与するとともに、
請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤの製造装置を用い、
前記内側支持体によりチューブ体をその内周部側から支持させ、かつチューブ体に外嵌されたトレッドをその外周部側から前記外側支持体により支持させた状態で、前記加熱手段によりチューブ体とトレッドとの間を加熱して両者を接合することを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項6】
熱可塑性材料で形成されるとともにリムの外周部に嵌合されるチューブ体と、このチューブ体の外周部に接合されたトレッドと、を備えるタイヤであって、
請求項5記載のタイヤの製造方法により形成されたことを特徴とするタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−79240(P2011−79240A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233767(P2009−233767)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】