説明

タイヤ位置登録システム

【課題】1つのイニシエータでタイヤ位置を登録可能とすることにより、システム構成を簡素化することができるタイヤ位置登録システムを提供する。
【解決手段】受信機11をCピラーに配置し、1つのイニシエータ17を車体5の後部左寄りに配置する。まずイニシエータ17から弱いトリガ信号Strを送信して、左後タイヤ2dを特定する。続いてドア閉状態のとき、イニシエータ17から強いトリガ信号Strを送信して計3つのタイヤ通信機4b〜4dを起動させ、これらから送信される電波を受信機11が受信したときの受信信号強度を測定する。また、ドア開操作されたときも同様にこれらの受信信号強度を測定する。そして、ドア閉時の受信信号強度とドア開時の受信信号強度との差から、左前タイヤ2b及び右後タイヤ2cを特定する。最後に走行中にタイヤ通信機4a〜4dから受信するタイヤ空気圧信号Stpの中から、未登録のものを右前タイヤ2aとして登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムに係り、詳しくは各タイヤのタイヤ位置を車体に登録するタイヤ位置登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、走行車両の安全確保を目的として、走行中において各タイヤのタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムが搭載される傾向にある。タイヤ空気圧監視システムは、各タイヤにタイヤ通信機を取り付け、このタイヤ通信機にて検出したタイヤ空気圧信号を車体に無線送信する。車体は、タイヤ通信機から受信したタイヤ空気圧信号を基にタイヤ空気圧を監視し、低圧タイヤが存在することを確認すると、低圧警報を運転者に通知する。
【0003】
この種のタイヤ空気圧監視システムでは、車体がタイヤ空気圧信号を受信したとき、どの位置のタイヤから送信されたものかを認識する必要がある。よって、タイヤ空気圧監視システムには、各タイヤハウスに設置したイニシエータでタイヤ通信機の送信動作を管理する直接方式が考案されている(特許文献1等参照)。この場合、車体は、イニシエータにてタイヤ通信機を選択的に起動させ、起動時に送信されるタイヤ空気圧信号内のタイヤIDにて信号の正否を認証する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−062516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、タイヤ空気圧監視システムが直接方式の場合は、各タイヤハウスにイニシエータを設置しなければならないので、右前、左前、右後、左後の計4つのイニシエータが必要となる。このため、イニシエータが多数必要となるので、タイヤ位置把握に関係するシステムの構造が複雑になる問題があった。よって、部品点数の少ない簡素なタイヤ位置登録システムの開発ニーズがあった。また、イニシエータが多数必要となると、その分だけ部品コストも高価になってしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、1つのイニシエータでタイヤ位置を登録可能とすることにより、システム構成を簡素化することができるタイヤ位置登録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、タイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧検出手段を各タイヤに取り付け、当該タイヤ空気圧検出手段から無線によりタイヤ空気圧信号を車体に送信し、各タイヤの空気圧を車体で監視するタイヤ状態監視システムに使用し、前記タイヤの位置を前記車体に登録するタイヤ位置登録システムにおいて、前記タイヤ空気圧検出手段を起動させるトリガ信号を、送信強度を変えて送信可能な1つのイニシエータと、自身に最も近い前記タイヤ空気圧検出手段から送信される電波を、自身と当該タイヤ空気圧検出手段との間に位置するドアの開又は閉で、それぞれ異なる受信信号強度で受信する受信手段と、前記トリガ信号を前記イニシエータから送信強度を変えて送信させたときの各場合での前記タイヤ空気圧検出手段の応答結果と、前記タイヤ空気圧検出手段からの電波を前記受信手段がドア閉時に受信したときの受信信号強度とドア開時に受信したときの受信信号強度とに生じる変化とに基づき、前記タイヤの位置を登録する登録手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
本発明の構成によれば、トリガ信号を1つのイニシエータから送信強度を変えて送信することにより、例えば弱い送信強度のトリガ信号でタイヤ空気圧検出手段を1つのみ起動させ、強い送信強度のトリガ信号で複数のタイヤ空気圧検出手段を起動させる。また、1つのイニシエータによってドア閉及び開の両方でタイヤ空気圧検出手段を起動させ、受信手段がタイヤ空気圧検出手段からの電波をドア閉時に受信したときの受信信号強度と、同様の電波をドア開時に受信したときの受信信号強度との間に生じる変化を確認する。
【0009】
よって、本発明の構成においては、トリガ信号をイニシエータから送信強度を変えて送信させたときのタイヤ空気圧検出手段の各々の応答結果と、タイヤ空気圧検出手段からの電波を受信手段がドア閉時に受信したときの受信信号強度とドア開時に受信したときの受信信号強度とに生じる変化とを基に、タイヤ空気圧検出手段を特定する。このため、1つのイニシエータでタイヤの位置登録が可能となるので、システム構造を簡素にすることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記受信信号強度の変化は、前記タイヤ空気圧検出手段からの電波を前記受信手段がドア閉時に受信したときの受信信号強度と、当該電波をドア開時に受信したときの受信信号強度との差であることを要旨とする。この構成によれば、受信信号強度差を用いてタイヤ位置を特定するので、差を確認するという簡素な処理で、かつ精度よくタイヤ位置を特定することが可能となる。
【0011】
本発明では、前記登録手段は、前記イニシエータから前記トリガ信号を弱めに送信させることにより、当該イニシエータに最寄りの前記空気圧検出手段を起動させて、該イニシエータの最寄りタイヤを特定する第1登録手段と、前記ドアの開閉の各々で前記イニシエータから前記トリガ信号を強めに送信させることにより、前記イニシエータの最寄りのタイヤ空気圧検出手段を含む複数のタイヤ空気圧検出手段を起動させ、前記ドア閉時にこれらタイヤ空気圧検出手段から受信する受信信号強度と、前記ドア開時にこれらタイヤ空気圧検出手段から受信する受信信号強度との変化を基に、強めの前記トリガ信号で起動した複数のタイヤのうち、前記イニシエータの最寄りタイヤ以外の他タイヤの位置を登録する第2登録手段と、走行時に前記タイヤ空気圧検出手段から受信した電波のうち、未登録のものを残りのタイヤとして特定する第3登録手段とを備えたことを要旨とする。この構成によれば、まず弱めのトリガ信号にてタイヤ空気圧検出手段を起動させて、イニシエータの最寄りタイヤを特定し、続いてドア閉時において強いトリガ信号にて複数のタイヤ空気圧検出手段を起動して、これらの受信信号強度を測定する。そして、ドア開時において同じく強いトリガ信号にて複数のタイヤ空気圧検出手段を起動して、これらの受信信号強度を測定し、ドア閉時の受信信号強度とドア開時の受信信号強度との変化から、タイヤ位置を特定する。最後に、走行時にタイヤ空気圧検出手段から受信するタイヤ空気圧信号から、残りのタイヤを特定する。このため、駐停車中の車両が走行に移行するまでの流れの中で、スムーズにタイヤ位置を車体に登録することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記イニシエータは、前記弱めのトリガ信号を送信した際に前記第1登録手段を形成し、かつ前記強めのトリガ信号を送信した際に前記第2登録手段を形成することが可能な位置に配置され、前記受信手段は、前記イニシエータが前記強めのトリガ信号を送信したときにのみ応答するタイヤ空気圧検出手段の近傍に配置されるとともに、当該タイヤ空気圧検出手段が送信してくる電波を、自身の最寄りのドアの開又は閉に応じ、各々異なる受信信号強度で受信する位置に配置されていることを要旨とする。イニシエータや受信手段の位置を工夫することによって、簡素な構造でタイヤ位置を登録することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1つのイニシエータでタイヤ位置を登録可能とすることにより、システム構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のタイヤ位置登録システムのブロック図。
【図2】タイヤ通信機のドア開閉前後における通信態様を示す説明図。
【図3】イニシエータが形成する通信エリアの概略を示す概念図。
【図4】タイヤ位置登録時に実行されるフローチャート。
【図5】イニシエータの最寄りタイヤを登録するときの動作図。
【図6】ドア閉時に強いトリガ信号で3輪を起動させたときの動作図。
【図7】ドア開時に強いトリガ信号で3輪を起動させたときの動作図。
【図8】走行中に最後のタイヤを登録するときの動作図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化したタイヤ位置登録システムの一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、各タイヤ2(2a〜2d)のタイヤ空気圧等を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)3が搭載されている。タイヤ空気圧監視システム3は、各タイヤ2a〜2dに取り付けられたタイヤ通信機4でタイヤ空気圧等を検出し、その検出結果をタイヤ空気圧信号Stpとして車体5に送信する。タイヤ空気圧監視システム3は、タイヤ空気圧信号Stpからタイヤ空気圧を確認し、その結果を運転者に通知する。なお、タイヤ通信機4がタイヤ空気圧検出手段に相当する。
【0016】
タイヤ通信機4には、タイヤ通信機4を統括管理するコントローラ6が設けられている。コントローラ6のメモリ(図示略)には、各タイヤ2a〜2dの固有IDとしてタイヤIDが登録されている。タイヤ通信機4には、タイヤ空気圧を検出する圧力センサ7、タイヤ温度を検出する温度センサ8、タイヤ2の回転を検出する加速度センサ9が設けられ、これらがコントローラ6に接続されている。これらセンサ類は、検出信号をコントローラ6に出力する。コントローラ6には、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信可能な送信部10が接続されている。
【0017】
車体5には、タイヤ通信機4から受信したタイヤ空気圧信号Stpを基にタイヤ2の空気圧を監視する受信機(以降、TPMS受信機と記す)11が設けられている。TPMS受信機11には、TPMS受信機11の動作を統括管理するタイヤ空気圧監視ECU(Electronic Control Unit)12と、UHF電波を受信可能な受信部13とが設けられている。タイヤ空気圧監視ECU12のメモリ(図示略)には、各タイヤ2a〜2dのタイヤIDが、タイヤ位置を対応付けて登録されている。受信部13は、アンテナ14と、受信電波を復調及び増幅する受信回路15とからなる。TPMS受信機11には、例えば車内インストルメントパネル等に設置された表示部16に接続されている。なお、TPMS受信機11が受信手段に相当する。
【0018】
タイヤ通信機4は、加速度センサ9から出力される加速度信号を基にタイヤ2が回転状態(車両1が走行状態)に入ったことを検出すると、タイヤ空気圧信号Stpの送信を開始する。つまり、本例のタイヤ空気圧監視システム3は、車両走行中にタイヤ通信機4が自らタイヤ空気圧信号Stpを車体5に送信する直接方式となっている。タイヤ空気圧信号Stpには、タイヤIDやタイヤ情報(空気圧、温度)等が含まれている。各タイヤ通信機4は、他のタイヤ通信機4と電波送信が重ならないように、ランダムな時間差をもって電波送信する。
【0019】
タイヤ空気圧監視ECU12は、タイヤ空気圧信号Stpを受信部13で受信すると、タイヤ空気圧信号Stp内のタイヤIDを基にID照合を実行する。タイヤ空気圧監視ECU12は、ID照合が成立することを確認すると、同じ信号内に含まれるタイヤ情報を基にタイヤ空気圧を確認する。そして、タイヤ空気圧監視ECU12は、タイヤ空気圧が閾値未満になっていることを確認すると、その低圧タイヤを表示部16にタイヤ位置を対応付けて表示する。
【0020】
本例のタイヤ空気圧監視システム3には、1つのイニシエータ17のみで各タイヤ2の位置を車体5に登録することが可能なタイヤ位置登録システムが設けられている。ところで、図2に示すように、TPMS受信機11は、車体5のCピラー18付近に搭載されることが多い。Cピラー18は、後部ドアの後側に位置するピラーであり、本例の場合、車体後部右側のものとする。よって、本例のTPMS受信機11は、右後のCピラー18に取り付けられていることとする。
【0021】
この場所にTPMS受信機11を搭載した場合の特徴として、Cピラー18に近い右後タイヤ通信機4cからのタイヤ空気圧信号StpをTPMS受信機11が受信する際、右後ドア19が開閉される前後で、タイヤ空気圧信号Stpの受信信号強度(RSSI:Receive Signal Strength Indication)が大きく変化する。つまり、右後ドア19が開いているとき、TPMS受信機11は右後タイヤ通信機4cからの電波を右後ドア19に遮られることなく受信できるため、受信信号強度は右後ドア19が閉じているときに比べ、増加する。よって、TPMS受信機11が取り付けられているCピラー18側の右後タイヤ2cは、右後ドア19の開閉前後の受信信号強度を比較すれば、その位置を特定することができるはずである。従って、本例のタイヤ位置登録システムは、この原理を利用して、前後左右4本のタイヤ2a〜2dの位置を特定する。
【0022】
イニシエータ17は、無線通信によってタイヤ通信機4を起動させる部品である。イニシエータ17は、タイヤ空気圧監視ECU12に接続され、送信動作がタイヤ空気圧監視ECU12によって管理されている。イニシエータ17は、タイヤ空気圧監視ECU12から起動指令を入力すると、タイヤ通信機4を起動させるトリガ信号StrをLF(Low Frequency)帯の電波で送信する。イニシエータ17は、車体5において左後寄りの位置に配置されるとともに、アンテナ軸が車体前後方向の線に対して所定角度をとるように、車体前後方向に対して斜め向きに配置されている。これは、前後左右の4つのタイヤ通信機4a〜4dのうち、所定のものを選択して起動させるためである。
【0023】
タイヤ通信機4には、LF電波を受信可能な受信部20が設けられている。タイヤ通信機4は、イニシエータ17からのトリガ信号Strを受信部20で受信すると起動し、タイヤ空気圧信号Stpを車体5に送信する。なお、このときのタイヤ通信機4からの応答電波は、必ずしもタイヤ空気圧信号Stp自体に限らず、タイヤ空気圧の情報を含まないタイヤIDのみの信号でもよい。
【0024】
タイヤ空気圧監視ECU12には、イニシエータ17にトリガ信号Strを可変して送信させる送信電波可変部21が設けられている。送信電波可変部21は、トリガ信号Strを図3に示す弱送信エリアEa及び強送信エリアEbの2エリアで形成することが可能である。弱送信エリアEaは、左後タイヤ通信機4dのみを起動させることが可能な範囲に形成される。また、強送信エリアEbは、左前タイヤ通信機4b、右後タイヤ通信機4c及び左後タイヤ通信機4dの3つを起動させることが可能な範囲に形成される。なお、送信電波可変部21が登録手段(第1登録手段、第2登録手段)を構成する。
【0025】
タイヤ空気圧監視ECU12には、受信電波の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部22が設けられている。受信信号強度測定部22は、受信部13がタイヤ空気圧信号Stpを受信した際、このときの受信信号強度を測定する。なお、受信信号強度測定部22が登録手段(第2登録手段)を構成する。
【0026】
タイヤ空気圧監視ECU12には、イニシエータ17の最寄りタイヤのIDを車体5に登録する第1タイヤID登録部23が設けられている。第1タイヤID登録部23は、送信電波可変部21にトリガ信号Strを弱送信エリアEaにて形成させ、このトリガ信号Strにて起動したタイヤ通信機4が送信してくるタイヤ空気圧信号StpのタイヤIDを、左後タイヤ2dのIDとして車体5に登録する。なお、第1タイヤID登録部23が登録手段(第1登録手段)を構成する。
【0027】
タイヤ空気圧監視ECU12には、イニシエータ17の強送信エリアEb内に位置する3輪のタイヤ2b〜2dのうち、イニシエータ17に最寄りの1輪以外の2輪のタイヤ2b,2cのIDを車体5に登録する第2タイヤID登録部24が設けられている。第2タイヤID登録部24は、右後ドア19の閉及び開のそれぞれで、強送信エリアEbによって3輪(左前タイヤ2b、右後タイヤ2c、左後タイヤ2d)の各タイヤ通信機4b〜4dを起動させる。ここで、イニシエータ17に最寄りの左後タイヤ2dは、第1タイヤID登録部23によって既に車体5に登録済みであるので、残りの2輪(左前タイヤ2b、右後タイヤ2c)を特定すればよい。よって、第2タイヤID登録部24は、左後タイヤ2d以外の2輪(左前タイヤ2b、右後タイヤ2c)に関し、各タイヤ空気圧信号Stpの受信信号強度のドア開閉前後における差を測定し、強度差が大きいタイヤIDを右後タイヤ2cのIDとして車体5に登録し、強度差の小さいタイヤIDを左前タイヤ2bのIDとして車体5に登録する。なお、第2タイヤID登録部24が登録手段(第2登録手段)を構成する。
【0028】
タイヤ空気圧監視ECU12には、4輪のタイヤ2a〜2dのうち最後の1輪のタイヤIDを登録する第3タイヤID登録部25が設けられている。ところで、車両走行中、各タイヤ通信機4は、一定間隔ごとにタイヤ空気圧信号Stpを定期的に送信してくるので、走行中に受信したタイヤIDのうち、第1タイヤID登録部23及び第2タイヤID登録部24で登録できなかったIDが、最後の1輪(右前タイヤ2a)と特定できる。よって、第3タイヤID登録部25は、走行中に受信したタイヤIDのうち、自身に登録済みでないタイヤIDを、右前タイヤ2aのIDとして車体5に登録する。なお、第3タイヤID登録部25が登録手段(第3登録手段)を構成する。
【0029】
次に、本例のタイヤ位置登録システムの動作を、図4のフローチャートを用いて説明する。なお、図4のフローチャートは、例えば車両1が駐停車中の所定時期に実行が開始され、4輪のタイヤIDが車体5に登録されるまで継続が実行される。
【0030】
ステップ101において、第1タイヤID登録部23は、イニシエータ17から弱いトリガ信号Strを送信して、イニシエータ17の最寄りの1輪を起動させ、このとき受信したタイヤ空気圧信号Stp内のタイヤIDを、左後タイヤ2dのタイヤIDとして車体5に登録する。即ち、図5に示すように、弱送信エリアEaのトリガ信号Strをイニシエータ17に形成させ、このトリガ信号Strにて起動した左後タイヤ通信機4dのID4を、左後タイヤ2dとして車体5に登録する。
【0031】
ステップ102において、第2タイヤID登録部24は、右後ドア19が閉状態の際、イニシエータ17から強いトリガ信号Strを送信することにより、ID登録が済んだ左後タイヤ2dを含む計3輪を起動させる。即ち、図6に示すように、右後ドア19が閉時のとき、強送信エリアEbのトリガ信号Strをイニシエータ17に形成させ、ID登録が済んだ左後タイヤ通信機4dと、左前タイヤ通信機4bと、右後タイヤ通信機4cとに、それぞれタイヤ空気圧信号Stpを送信させる。このとき、各タイヤ空気圧信号Stpは、他のタイヤ空気圧信号Stpと電波送信が重ならないように、ランダムな所定の時間差をもって送信される。
【0032】
ここで、このとき起動した3輪のうち、イニシエータ17に最寄りのタイヤ通信機4dはID登録が済んでいるので、残りの2輪についてのID登録の作業に移る。このとき、第2タイヤID登録部24は、各タイヤ通信機4b〜4dからタイヤ空気圧信号Stpを受信するが、ID登録が済んでいない2つのタイヤ通信機4b,4cについて受信信号強度を測定し、これらをドア閉時の受信信号強度として記憶する。即ち、第2タイヤID登録部24は、ID2のドア閉時の受信信号強度と、ID3のドア閉時の受信信号強度とを記憶する。
【0033】
ステップ103において、第2タイヤID登録部24は、TPMS受信機11側の後部ドアで開操作があったか否かを判定する。即ち、第2タイヤID登録部24は、右後ドア19で開閉があったか否かを判定し、ドア開操作があれば、ステップ104に移行し、ドア開操作がなければ、ステップ102に戻る。
【0034】
なお、ステップ103からステップ102に戻ったとき、ドア閉時における受信信号強度測定は、ステップを戻る度に毎回実行されることに限定されない。例えば、前の測定から一定時間が経過しているときのみ、受信信号強度測定を再実行するようにしてもよい。
【0035】
ステップ104において、第2タイヤID登録部24は、右後ドア19が開状態の際、イニシエータ17から強いトリガ信号Strを送信することにより、ID登録が済んだ左後タイヤ2dを含む計3輪を起動させる。即ち、図7に示すように、右後ドア19が開時のとき、強送信エリアEbのトリガ信号Strをイニシエータ17に形成させ、ID登録が済んだ左後タイヤ通信機4dと、左前タイヤ通信機4bと、右後タイヤ通信機4cとに、それぞれタイヤ空気圧信号Stpを送信させる。このときも、各タイヤ空気圧信号Stpは、他のタイヤ空気圧信号Stpと電波送信が重ならないように、ランダムな所定の時間差をもって送信される。
【0036】
このとき、第2タイヤID登録部24は、各タイヤ通信機4b〜4dからタイヤ空気圧信号Stpを受信するが、ID登録が済んでいない2つのタイヤ通信機4b,4cについて受信信号強度を測定し、これらをドア開時の受信信号強度として記憶する。即ち、第2タイヤID登録部24は、ID2のドア開時の受信信号強度と、ID3のドア開時の受信信号強度とを記憶する。
【0037】
続いて、ステップ105において、第2タイヤID登録部24は、ID(ID2,ID3)ごとにドア開閉前後の受信信号強度差を計算する。即ち、第2タイヤID登録部24は、ID2についてドア開閉前後における強度差を計算するとともに、ID3についてもドア開閉前後における強度差を計算する。
【0038】
ステップ106において、第2タイヤID登録部24は、計算した受信信号強度の強度差を基に、ID2及びID3のタイヤ位置を特定する。ここで、ドア開閉前後で受信信号強度の差が大きくなったものは、ドア開時に受信信号強度が大きくなる右後タイヤ通信機4cと判定できる。よって、第2タイヤID登録部24は、ドア開閉前後で強度差が大きかったID3を、右後タイヤ2cとして車体5に登録し、ドア開閉前後で強度差が小さかったID2を、左前タイヤ2bとして車体5に登録する。
【0039】
ステップ107において、第3タイヤID登録部25は、車両走行中の定期受信にて取得したタイヤIDのうち、車体5に位置登録されていないID1を、右前タイヤ2aとして車体5に登録する。即ち、車両走行中の定期受信で各タイヤ通信機4a〜4dから受信するタイヤIDのうち、車体5に未登録のものが残りタイヤのIDと判定できるので、これを右前タイヤ2aのIDとして登録する。
【0040】
以上により、本例においては、イニシエータ17の数が1つでもタイヤ位置を特定することが可能となるので、車両1に設置するイニシエータ17が1つで済むことになる。よって、タイヤ位置登録システムのシステム構成の簡素化が可能となる。また、設置するイニシエータ17が1つで済むので、タイヤ位置登録システムに必要となる部品コストも安価にすることが可能となる。
【0041】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車体5にイニシエータ17を1つのみ設け、このイニシエータ17に弱送信エリアEaのトリガ信号Strを形成させることにより、左後タイヤ2dのIDを車体5に登録する。続いて、右後ドア19の開閉前後でイニシエータ17に強送信エリアEbのトリガ信号Strを形成させ、ドア開閉前後における受信信号強度の差から、左前タイヤ2b及び右後タイヤ2cのIDを車体5に登録する。そして、車両走行中の定期受信から取得するIDのうち、未登録のものを右前タイヤ2aとして車体5に登録する。よって、設置するイニシエータ17が1つで済むので、システム構成を簡素化することができ、ひいては部品コストも安価にすることができる。
【0042】
(2)第2タイヤID登録部24で受信信号強度をパラメータとしてタイヤ位置を特定するとき、受信信号強度差によってタイヤ位置特定を行うので、受信信号強度差を確認するという簡素な処理で、かつ精度よくタイヤ位置を特定することができる。
【0043】
(3)TPMS受信機11を右後部のCピラー18に設置した場合の特徴として、右後ドア19を開閉したとき、TPMS受信機11がドア閉時に右後タイヤ通信機4cから受信する電波の受信信号強度と、ドア開時に右後タイヤ通信機4cから受信する電波の受信信号強度とで、大きな強度差が生じることが知見された。よって、本例のTPMS受信機11は、このように大きな受信信号強度差が生じるCピラー18に取り付けられるので、タイヤ位置特定を精度よく行うことができる。
【0044】
(4)タイヤ位置登録システムは、所定時間間隔で自ら起動して、タイヤ位置の登録作業を自動実行する。よって、ユーザに別途登録作業を課すことなくタイヤ位置が車体5に自動登録(オートロケーション)されるので、利便性を確保することができる。
【0045】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・タイヤ位置登録の開始タイミングは、他の態様に適宜変更可能である。また、タイヤ位置登録は、例えば車体5において所定操作があったことを契機に開始されるものとしてもよい。
【0046】
・受信信号強度の変化は、受信信号強度差に限定されない。例えば、受信信号強度自体を監視し、受信信号強度と閾値とを比較する形式でもよい。
・TPMS受信機11が左後部のCピラーに配置され、イニシエータ17が車体5の後部右寄りの位置に配置されてもよい。
【0047】
・TPMS受信機11の配置場所は、Cピラー18に限定されず、例えばBピラーなどの他の位置に変更してもよい。
・イニシエータ17の配置場所は、車体5の後部左寄りの位置に限定されない。つまり、本例の第1登録手段及び第2登録手段を形成するLF帯の通信エリアを形成できる位置であれば、イニシエータ17はどこに配置されていてもよい。
【0048】
・イニシエータ17は、車体前後方向の線に対し斜め向きに配置されることに限定されない。要は、タイヤ通信機4a〜4dの中から所定のものを起動させることができるトリガ信号Strのエリアを形成できれば、配置向きは適宜変更可能である。
【0049】
・タイヤ位置登録の対象となるタイヤは、駆動輪として車体5に取り付けられた2a〜2dに限らず、にスペアタイヤを加えてもよい。
・タイヤ空気圧信号Stpの周波数はUHFに限定されず、トリガ信号Strの周波数もLFに限定されない。即ち、無線で使用する周波数は適宜変更可能である。
【0050】
・受信手段は、TPMS受信機11自体に限定されず、例えば受信部13としてもよい。
・タイヤ位置登録の手順は、実施形態に述べた内容や手順に限定されず、請求項1の思想を含めば適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
2(2a〜2d)…タイヤ、3…タイヤ空気圧監視システム、4(4a〜4d)…タイヤ空気圧検出手段としてのタイヤ通信機、5…車体、11…受信手段としてのTPMS受信機、17…イニシエータ、18…Cピラー、19…ドアとしての右後ドア、21…登録手段、第1登録手段、第2登録手段を構成する送信電波可変部、22…登録手段、第2登録手段を構成する受信信号強度測定部、23…登録手段、第1登録手段を構成する第1タイヤID登録部、24…登録手段、第2登録手段を構成する第2タイヤID登録部、25…登録手段、第3登録手段を構成する第3タイヤID登録部、Stp…タイヤ空気圧信号、Str…トリガ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧検出手段を各タイヤに取り付け、当該タイヤ空気圧検出手段から無線によりタイヤ空気圧信号を車体に送信し、各タイヤの空気圧を車体で監視するタイヤ空気圧監視システムに使用し、前記タイヤの位置を前記車体に登録するタイヤ位置登録システムにおいて、
前記タイヤ空気圧検出手段を起動させるトリガ信号を、送信強度を変えて送信可能な1つのイニシエータと、
自身に最も近い前記タイヤ空気圧検出手段から送信される電波を、自身と当該タイヤ空気圧検出手段との間に位置するドアの開又は閉で、それぞれ異なる受信信号強度で受信する受信手段と、
前記トリガ信号を前記イニシエータから送信強度を変えて送信させたときの各場合での前記タイヤ空気圧検出手段の応答結果と、前記タイヤ空気圧検出手段からの電波を前記受信手段がドア閉時に受信したときの受信信号強度とドア開時に受信したときの受信信号強度とに生じる変化とに基づき、前記タイヤの位置を登録する登録手段と
を備えたことを特徴とするタイヤ位置登録システム。
【請求項2】
前記受信信号強度の変化は、前記タイヤ空気圧検出手段からの電波を前記受信手段がドア閉時に受信したときの受信信号強度と、当該電波をドア開時に受信したときの受信信号強度との差である
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ位置登録システム。
【請求項3】
前記登録手段は、
前記イニシエータから前記トリガ信号を弱めに送信させることにより、当該イニシエータに最寄りの前記空気圧検出手段を起動させて、該イニシエータの最寄りタイヤを特定する第1登録手段と、
前記ドアの開閉の各々で前記イニシエータから前記トリガ信号を強めに送信させることにより、前記イニシエータの最寄りのタイヤ空気圧検出手段を含む複数のタイヤ空気圧検出手段を起動させ、前記ドア閉時にこれらタイヤ空気圧検出手段から受信する受信信号強度と、前記ドア開時にこれらタイヤ空気圧検出手段から受信する受信信号強度との変化を基に、強めの前記トリガ信号で起動した複数のタイヤのうち、前記イニシエータの最寄りタイヤ以外の他タイヤの位置を登録する第2登録手段と、
走行時に前記タイヤ空気圧検出手段から受信した電波のうち、未登録のものを残りのタイヤとして特定する第3登録手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ位置登録システム。
【請求項4】
前記イニシエータは、前記弱めのトリガ信号を送信した際に前記第1登録手段を形成し、かつ前記強めのトリガ信号を送信した際に前記第2登録手段を形成することが可能な位置に配置され、
前記受信手段は、前記イニシエータが前記強めのトリガ信号を送信したときにのみ応答するタイヤ空気圧検出手段の近傍に配置されるとともに、当該タイヤ空気圧検出手段が送信してくる電波を、自身の最寄りのドアの開又は閉に応じ、各々異なる受信信号強度で受信する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のタイヤ位置登録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162202(P2012−162202A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25131(P2011−25131)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】