説明

タイヤ加硫装置

【課題】 簡単な機構でありながら、タイヤ加硫用ブラダーの負圧時におけるブラダ−の破損を効率よく防止するようにしたタイヤ加硫装置を提供する。
【解決手段】 加硫ブラダ−2の上下開口端部をそれぞれ上部クランプリング3aと下部クランプリング3bとに把持し、加硫ブラダ−2の内側に、上部クランプリング3a側の中心に固定したセンターポスト4aと下部クランプリング3bの中心位置に貫通するスリーブストッパー4bとを互いに摺動可能に嵌合した中央支持機構4を設け、上部クランプリング3aの上昇に同期させて加硫ブラダ−2内に負圧を負荷させるタイヤ加硫装置1において、中央支持機構4の周囲に、この中央支持機構4と共に上下に伸縮するコイルスプリング5を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ加硫装置に関し、さらに詳しくは、タイヤ加硫用ブラダーの負圧時におけるブラダ−の破損を防止するようにしたタイヤ加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤの加硫装置は、中心機構として上下に昇降するセンターポストを有し、この周囲に配置された加硫ブラダ−を縮径することにより、グリ−ンタイヤの挿入、シェ−ピング、加硫及び加硫後タイヤの取り出しが行なわれるようになっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このような一連の工程の中で、グリ−ンタイヤを挿入する際や、加硫後のタイヤを取り出す際には、タイヤの出し入れを円滑にするために、センタ−ポストの上昇と共に、加硫ブラダ−の内圧を負圧にしてブラダ−を鼓状に変形させている。その際,図5のX部に示すように、加硫ブラダ−2が入れ子式のセンタ−ポスト4aとこの下降を規制するスリ−ブストッパー4bとの隙間に噛み込まれて加硫ブラダ−2が破損するという問題があった。特に、使用履歴の多い加硫ブラダ−2にあっては弾性回復力が低下しているため、このような損傷が多発し易い欠点を有していた。
【0004】
この対策として、本発明者は先に、加硫ブラダ−の内側の中央支持機構の周囲に、中央支持機構と共に上下に伸縮する籠体を配置し、この籠体により加硫ブラダ−の中央支持機構側への収縮を抑え込むようにした発明をなし、特許出願を行った(特願2004−342591号)。しかし、この籠体は機構がやや複雑であったため、製造コストが嵩むという問題を孕んでいた。
【特許文献1】特許第2792707号公報
【特許文献2】特開平9−123171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述するような従来の問題点を解消するもので、簡単な機構でありながら、タイヤ加硫用ブラダーの負圧時におけるブラダ−の破損を効率よく防止するようにしたタイヤ加硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫装置は、加硫ブラダ−の上下開口端部をそれぞれ上部クランプリングと下部クランプリングとに把持すると共に、該加硫ブラダ−の内側に、前記上部クランプリングの中心に固定したセンターポストと前記下部クランプリングの中心位置に貫通するスリーブストッパーとを互いに摺動可能に嵌合した中央支持機構を設け、前記上部クランプリングの上昇に同期させて前記加硫ブラダ−内に負圧を負荷させるタイヤ加硫装置において、前記中央支持機構の周囲に、該中央支持機構と共に上下に伸縮するコイルスプリングを配置したことを特徴とするものである。
【0007】
さらに、上述する構成において、以下の(1)〜(4)に記載するように構成することが好ましい。
(1)コイルスプリングを構成するワイヤを炭素鋼又はクロム鋼にする。
(2)コイルスプリングを構成するワイヤの線径を3〜10mmにする。
(3)コイルスプリングの最小内径を100mm以上にし、最大外径を上部クランプリング及び下部クランプリングの外径の0.98倍以下にする。
(4)コイルスプリングの螺旋ピッチを5mm以上にすると共に、螺旋数を5以上にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ加硫装置によれば、上部クランプリングの中心に固定したセンターポストと下部クランプリングの中心位置を貫通するスリーブストッパーとを互いに摺動可能に嵌合した中央支持機構の周囲に、この中央支持機構と共に上下に伸縮するコイルスプリングを配置したので、加硫ブラダ−の内圧を負圧にした際に、ブラダ−の中央支持機構側への縮径をコイルスプリングが制約して、加硫ブラダ−が直接センタ−ポストとスリ−ブストッパーとの隙間に噛み込まれることによって生ずる破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態によるタイヤ加硫装置の一例を示す要部の断面図で、図2は図1のタイヤ加硫装置によりタイヤを加硫している状態を示す断面図である。
【0010】
図1及び図2において、タイヤ加硫装置1の中央支持機構4は、加硫ブラダ−2の開口両端部を把持する上部クランプリング3aと下部クランプリング3bと、上部クランプリング3a側の中心に固定したセンターポスト4aと下部クランプリング3b側の中心に固定したスリ−ブストッパー4bとからなり、センターポスト4aとスリ−ブストッパー4bとが互いに摺動可能に嵌合されて、上部クランプリング3aが上下方向に昇降するように構成されている。中央支持機構4の周囲には、この中央支持機構4と共に上下に伸縮するコイルスプリング5が配置されている。
【0011】
これにより、グリ−ンタイヤ6を挿入する際や、加硫後のタイヤを取り出す際に、加硫ブラダ−2の内圧を負圧にして加硫ブラダ−2を縮径変形させても、加硫ブラダ−2の変形がコイルスプリング5により制限されて、加硫ブラダ−2が直接センタ−ポスト4aとスリ−ブストッパー4bとの隙間に噛み込まれることがなくなり、加硫ブラダ−2の破損を防止することができる。
【0012】
本発明において、コイルスプリング5は長手方向に付勢する螺旋状に形成されたワイヤからなり、その両端部をそれぞれ上部クランプリング3a及び下部クランプリング3bに固定させるか、あるいは一方の端部のみを下部クランプリング3bに固定して、上部クランプリング3aに向けて付勢するように配置するとよい。これにより、コイルスプリング5は上下のクランプリング3a、3bの間隔に追随して自身の有する弾性力によって長手方向に伸縮する。
【0013】
本発明において、コイルスプリング5を構成するワイヤの材質は特に限定されないが、耐腐食性を重視する観点から、炭素鋼又はクロム鋼により構成するとよい。さらに、コイルスプリング5を構成するワイヤの線径は3〜10mm、好ましくは5〜8mmに設定するとよい。線径が3mm未満では上述する付勢力を確保するためにワイヤの螺旋ピッチを密にする必要があるため、加硫ブラダ−2の内壁面とコイルスプリング5の外面との接触面積が大きくなり、この擦れ合いによって加硫ブラダ−2が劣化し易くなり、10mm超ではコイルスプリング5の剛性が高くなり過ぎて上部クランプリング3aの昇降が緩慢になり作業性が低下する。
【0014】
上述するコイルスプリング5は、図3に示すように、側面視で円柱状に形成される他、図4(a)又は(b)に示すように、中央部分を拡径又は縮径させた鼓状又は提灯状に形成される。何れの場合であっても、コイルスプリング5の最小内径rを100mm以上に設定し、最大外径Rを上部クランプリング3a及び下部クランプリング3bの外径の0.98倍以下に設定するとよい。最小内径rが100mm未満では、加硫ブラダ−2が中央支持機構4側に縮径し過ぎて破損に至る場合があり、最大外径Rが上下クランプリング3a、3bの外径の0.98倍超では、グリ−ンタイヤ6を挿入する際や、加硫後のタイヤを取り出す際に、加硫ブラダ−2の内壁面がコイルスプリング5の外面に衝突して損傷を受け易くなる。
【0015】
さらに、コイルスプリング5の螺旋ピッチpを5mm以上、好ましくは10〜30mmにすると共に、螺旋数を5以上(図3では6) にするとよい。ここで、コイルスプリング5の螺旋ピッチpとは、自然状態における螺旋ピッチをいい、具体的にはコイルスプリング5を構成するワイヤのコイルスプリング5の長手方向における間隔をいう。
【0016】
上述する螺旋ピッチpが5mm未満ではグリーンタイヤ6を加硫する際の上部クランプリング3aの降下距離が制約されるため、タイヤ加硫装置としての機能が得られなくなり、螺旋数が5未満では上述する螺旋ピッチが大きくなり過ぎて加硫ブラダ−2がコイルスプリング5のワイヤ間に挟まれたり、加硫ブラダ−2が中央支持機構4側に縮径し過ぎて破損に至る場合がある。
【0017】
上述するように、本発明のタイヤ加硫装置は、加硫装置における中央支持機構の周囲に、この中央支持機構と共に上下に伸縮するコイルスプリングを配置することにより、加硫ブラダ−が直接センタ−ポストとスリ−ブストッパーとの隙間に噛み込まれることによって生ずるブラダ−の破損を防止するもので、簡単な機構でありながら、タイヤ加硫装置を維持管理する上で優れた効果を奏することから、各種の空気入りタイヤを加硫するに際して幅広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態によるタイヤ加硫装置の一例を示す要部の断面図である。
【図2】図1のタイヤ加硫装置によりタイヤを加硫している状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるコイルスプリングの形状を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の他の実施形態によるコイルスプリングの形状を示す断面図である。
【図5】従来のタイヤ加硫装置を例示する図1に相当する断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 タイヤ加硫装置
2 加硫ブラダ−
3a 上部クランプリング
3b 下部クランプリング
4 中央支持機構
4a センタ−ポスト
4b スリ−ブストッパー
5 コイルスプリング
6 グリーンタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ブラダ−の上下開口端部をそれぞれ上部クランプリングと下部クランプリングとに把持すると共に、該加硫ブラダ−の内側に、前記上部クランプリングの中心に固定したセンターポストと前記下部クランプリングの中心位置に貫通するスリーブストッパーとを互いに摺動可能に嵌合した中央支持機構を設け、前記上部クランプリングの上昇に同期させて前記加硫ブラダ−内に負圧を負荷させるタイヤ加硫装置において、
前記中央支持機構の周囲に、該中央支持機構と共に上下に伸縮するコイルスプリングを配置したタイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記コイルスプリングを構成するワイヤが炭素鋼又はクロム鋼である請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記コイルスプリングを構成するワイヤの線径が3〜10mmである請求項1又は2に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記コイルスプリングの最小内径が100mm以上で、最大外径が前記上部クランプリング及び下部クランプリングの外径の0.98倍以下である請求項1、2又は3に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項5】
前記コイルスプリングの螺旋ピッチが5mm以上で、螺旋数が5以上である請求項1、2、3又は4に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載されたタイヤ加硫装置を使用して加硫を行なうタイヤ加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−331200(P2007−331200A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164850(P2006−164850)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】