説明

タイヤ用ゴム部材の製造方法、及びそれに用いる製造装置

【課題】ゴムストリップ供給手段からのゴムストリップを、直接かつ精度良く成形フォーマーに巻き付るとともに、シュリンクに起因した巻き付け後のストリップ巻付け体の寸法のバラツキを抑制する。
【解決手段】ゴムストリップPを送り出しローラ6aから成形フォーマー4に送り出すとともに、成形フォーマー4を回転しながら軸心方向に横移動させ、該成形フォーマー4上で前記コンベヤ7からのゴムストリップPを螺旋状に巻回しながら貼り付けてタイヤ用ゴム部材P1を形成する巻き付け工程K1と、アプリケータ3を、ゴムストリップPを成形フォーマー4に貼り付ける下降位置S1から、送り出しローラ6aが上方に離間して待機する上昇位置S2まで上昇移動させ、前記成形フォーマー4上に形成されたタイヤ用ゴム部材P1を取り外すタイヤ用ゴム部材取外し工程K2とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出機からのゴムストリップを、直接かつ精度良く成形フォーマーに巻き付けしうるとともに、シュリンク(ゴム収縮)に起因した巻き付け後のストリップ巻付け体の寸法バラツキを減じうるタイヤ用ゴム部材の製造方法、及びそれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長尺なテープ状のゴムストリップを、円筒状の成形フォーマー上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより、所望の断面形状に近いストリップ巻付け体を、例えばトレッドゴム、サイドウォールゴム、クリンチゴム、ブレーカクッションゴムなどのタイヤ用ゴム部材が成形フォーマー上に直接的に形成される所謂ストリップワインド方式が、特許文献1などに提案されている。
【0003】
前記特許文献1では、図7に示されるように、ゴム押出機aから押し出し成形されるゴムストリップbを、非伸長性の搬送テープcを周回可能に巻装したゴム搬送装置dの前記搬送テープcに粘着させた状態にて成形フォーマーeまで搬送するもので、前記搬送装置dには、ゴム押出機aから受け取ったゴムストリップbをジグザグ状に折り返して一時的に貯留させるアキュムレータ部fと、ゴムストリップbを成形フォーマーeに送り出す送出しローラgを有するアプリケータ部hとを具える。そして前記アプリケータ部hを軸心方向(紙面に対して垂直方向)に横移動させることにより、回転する成形フォーマーe上で、前記送出しローラgからのゴムストリップbを螺旋状に巻回しながら貼り付ける。
【0004】
この搬送装置dでは、アプリケータ部hが軸心方向に横移動するため、アキュムレータ部fとアプリケータ部hとの間で、搬送テープcに捩れや引っ張り力が負荷されるが、前記ゴムストリップbが搬送テープcの一面に粘着保持されるため、ゴムストリップbには前記捩れや引っ張りによる変形が発生せず、精度良く搬送することができる。
【0005】
しかしながらこのものは、ゴムストリップbの有する粘着力を利用して、該ゴムストリップbを搬送テープcに粘着する。従って、粘着力の小さいゴムストリップbは、このような搬送装置dを用いてタイヤ用ゴム部材を形成することができない。また、搬送の間、ゴムストリップbが搬送テープcに粘着されて拘束されるため、ゴムストリップのシュリンク(収縮)が、成形フォーマーeへの巻き付け後に発生する。その結果、ストリップ巻付け体(タイヤ用ゴム部材)iが前記シュリンクによってしだいに変形し、寸法変化や形状変化を招いたり、又ゴムストリップbの巻回部分がシュリンクによって切断するという問題が生じる。
【0006】
そこで本発明者は、前記アプリケータ部のみを搬送テープによって搬送するとともに、このアプリケータ部とゴム押出機との間に、搬送テープを用いずにゴムストリップのみをU字に弛ませて保持するフリーフェスツーン部を形成することを提案した(図示せず)。このものは、前記フリーフェスツーン部においてシュリンクが生じるため、巻き付け後のシュリンクが低減され、寸法変化や形状変化などをある程度抑制することができる。
【0007】
しかし、アプリケータ部が横移動することによる捩れや引っ張りの影響を受けるため、シュリンク量やゴムストリップの厚さや幅が安定せず、同一ロット内にてストリップ巻付け体に寸法バラツキが生じるなど充分満足しうる結果をうるに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−246812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、長尺なテープ状のゴムストリップを、円筒状の成形フォーマー上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより前記ゴムストリップの巻回体からなるタイヤ用ゴム部材を形成するタイヤ用ゴム部材の製造方法であって、ゴムストリップ供給手段によって押出し成形されながら順次供給されるゴムストリップを、搬送方向最前端側の送り出しローラを含む案内ローラにより周回可能に案内される搬送ベルトを有するコンベヤを含むアプリケータを用いて受け取り、かつ前記送り出しローラ側から成形フォーマーに送り出すとともに、前記成形フォーマーを、回転しながら軸心方向に横移動させることにより、該成形フォーマー上で前記コンベヤからのゴムストリップを螺旋状に巻回しながら貼り付けてタイヤ用ゴム部材を形成する巻き付け工程と、前記アプリケータを、前記コンベヤが成形フォーマーと接近して前記ゴムストリップを成形フォーマーに貼り付ける下降位置から、前記コンベヤが成形フォーマーから上方に離間して待機する上昇位置まで上昇移動させ、前記成形フォーマー上に形成されたタイヤ用ゴム部材を取り外すタイヤ用ゴム部材取外し工程とを具えることを特徴とする。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記ゴムストリップ供給手段とアプリケータとの間に、ゴムストリップをU字に巻装する回転自在なフリーローラーが配されるとともに、該フリーローラーは、前記タイヤ用ゴム部材取外し工程に伴う前記アプリケータの昇降移動と同期して昇降移動することにより、該アプリケータとフリーローラーとの間の距離を一定に保つことを特徴とする請求項1記載のタイヤ用ゴム部材の製造方法である。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記コンベヤによるゴムストリップの搬送速度V2は、前記ゴムストリップ供給手段からのゴムストリップ供給速度V1の70〜100%の範囲であり、かつ、前記ゴムストリップは、前記フリーローラーとコンベヤとの間で弛むことなく搬送されることを特徴とする請求項2記載のタイヤ用ゴム部材の製造方法である。
【0012】
また請求項4記載の発明は、長尺なテープ状のゴムストリップを、円筒状の成形フォーマー上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより前記ゴムストリップの巻回体からなるタイヤ用ゴム部材を形成するタイヤ用ゴム部材の製造装置であって、前記ゴムストリップを押出し成形しながら順次供給するゴムストリップ供給手段と、搬送方向前端側の送り出しローラを含む案内ローラにより周回可能に案内される搬送ベルトを有し、該搬送ベルト上で、前記ゴムストリップ供給手段からのゴムストリップを受け取りかつ前記送り出しローラ側から成形フォーマーに送り出すコンベヤを含むアプリケータと、前記成形フォーマーとを具え、前記アプリケータは、前記コンベヤが成形フォーマーと接近して前記ゴムストリップを成形フォーマーに貼り付ける下降位置から、前記コンベヤが成形フォーマーから上方に離間して待機する上昇位置までの間を昇降自在に保持されるとともに、前記成形フォーマーは、回転しながら軸心方向に横移動することにより、コンベヤからのゴムストリップが螺旋状に巻回されることを特徴とするタイヤ用ゴム部材の製造装置である。
【0013】
また請求項5記載の発明は、前記ゴムストリップ供給手段とアプリケータとの間に、ゴムストリップをU字に巻装する回転自在なフリーローラーが配されるとともに、該フリーローラーは、前記アプリケータの昇降移動と同期して昇降移動することにより、該アプリケータとフリーローラーとの間の距離を一定に保つことを特徴とする請求項4記載のタイヤ用ゴム部材の製造装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム部材の製造方法は、ゴムストリップ供給手段によって押出し成形されながら順次供給されるゴムストリップを、搬送ベルトを有するコンベヤを用いて受け取り、かつ成形フォーマーに送り出すとともに、前記成形フォーマーを、回転しながら軸心方向に横移動させることにより、ゴムストリップを成形フォーマー上で螺旋状に巻回しながら貼り付けてタイヤ用ゴム部材を形成する巻き付け工程を具える。
【0015】
換言すると、成形フォーマーが軸芯方向に横移動されるため、ゴムストリップ供給手段から押出されたゴムストリップは、成形フォーマに巻き付けられるまでゴムストリップの横移動がない。これにより捩れや引張りなどの影響を受けることが小さくなりシュリンク量が安定し、同一ロット内にてストリップ巻付け体に寸法バラツキや切断などが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示すタイヤ用ゴム部材の製造装置の側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】本発明で成形するタイヤの左半分断面図である。
【図4】本発明の実施形態を示すタイヤ用ゴム部材の製造方法の概略図である。
【図5】ゴムストリップの斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すタイヤ用ゴム部材の製造装置の概略図である。
【図7】従来例を示すタイヤ用ゴム部材の製造装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明される。
図1及び2において、タイヤ用ゴム部材の製造装置1は、未加硫のゴムからなる長尺なテープ状のゴムストリップPを、円筒状の成形フォーマー4上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより前記ゴムストリップPの巻回体からなるタイヤ用ゴム部材P1を形成する製造装置である。本実施形態では、このタイヤ用ゴム部材の製造装置1は、タイヤTを製造する生産ラインの一部を構成する。
【0018】
前記タイヤTは、図3の如く、カーカスA1やブレーカA2などのコード層の他に、主にインナーライナゴムGa、サイドウォールゴムGb、チェーファゴムGc、ブレーカクッションGd及びトレッドゴムGeなどの複数種のゴム部材Gによって構成されている。そして、前記ゴム製造装置1は、前記インナーライナゴムGa、サイドウォールゴムGb、チェーファゴムGc、およびブレーカクッションGdを、異なるゴム配合のゴムストリッブPa〜Pdの巻回により順次成形フォーマー4上に形成し、シェーピング前の円筒状生タイヤを形成するために用いられる。
【0019】
また、本発明のタイヤ用ゴム部材の製造方法は、図4に概念的に示されるように、
(1)ゴムストリップ供給手段2によって押出し成形されながら順次供給されるゴムストリップPは、搬送方向最前端側の送り出しローラ6aを含む案内ローラ6により周回可能に案内される搬送ベルト5を有するコンベヤ7を含むアプリケータ3に供給された後、前記送り出しローラ6a側から成形フォーマー4に送り出されるとともに、前記成形フォーマー4が、回転しながら軸心方向に横移動されることにより、前記コンベヤ7からのゴムストリップPは、該成形フォーマー4上で螺旋状に巻回されながら貼り付けられタイヤ用ゴム部材P1を形成する巻き付け工程K1と、
(2)前記アプリケータ3は、前記コンベヤ7が成形フォーマー4と接近し前記ゴムストリップPを成形フォーマー4に貼り付ける下降位置S1から、前記コンベヤ7が成形フォーマー4から上方に離間して待機する上昇位置S2まで上昇移動された後、前記成形フォーマー4上に形成されたタイヤ用ゴム部材P1を取り外すタイヤ用ゴム部材取外し工程K2とを具える。
【0020】
また、本例では、前記ゴムストリップ供給手段2とアプリケータ3との間には、ゴムストリップPをU字に巻装する回転自在なフリーローラー16が配される。このフリーローラー16は、前記タイヤ用ゴム部材取外し工程に伴う前記アプリケータ3の昇降移動と同期して昇降移動する。これにより、該アプリケータ3とフリーローラー16との間の距離が一定に保たれる。
【0021】
また、前記コンベヤ7によるゴムストリップの搬送速度V2は、ゴムストリップ供給手段からのゴムストリップの供給速度V1の70〜100%の範囲であって、かつ、ゴムストリップPは、前記フリーローラー16とコンベヤ7との間で弛むことなく搬送される。
【0022】
図1に示されるように、前記タイヤ用ゴム部材の製造装置1(以下製造装置1という場合がある)は、前記ゴムストリップPを押出し成形しながら順次供給するゴムストリップ供給手段2と、搬送方向最前端側の送り出しローラ6aを含む案内ローラ6により周回可能に案内される搬送ベルト5を有し、該搬送ベルト5上で、前記ゴムストリップ供給手段2からのゴムストリップPを受け取りかつ前記送り出しローラ6a側から成形フォーマー4に送り出すコンベヤ7を含むアプリケータ3と、前記ゴムストリップ供給手段2とコンベヤ7との間にゴムストリップPをU字に巻装する回転自在なフリーローラー16と、前記成形フォーマー4とを少なくとも具える。
【0023】
前記ゴムストリップ供給手段2は、スクリュー10Aを有するゴム押出機10と、このゴム押出機10の吐出側に配される上下のカレンダーローラ11U、11Lを有するローラヘッド11と、該ローラヘッド11の下流側に配されるガイドローラ12とを具える。
【0024】
ゴム押出し機10は、本例では、前端にギヤポンプ10Cを設けた周知構造の定容積押出し機であって、ゴム投入口10Bから投入され、かつスクリュー軸によって混練されたゴムを前記ギヤポンプ10Cにより定量的に押出しうる。なお、このゴム押出し機10は、タイヤ用ゴム部材P1の形成サイクルに合わせて間欠的に作動し必要時のみゴムストリップPを形成する。
【0025】
前記ローラヘッド11は、スクリュー回転により混練りされかつゴム押出機10の吐出口10Dから予成形されて押出される予成形ゴムを、カレンダーローラ11U、11L間でさらに成形し、より薄い所望サイズのゴムストリップPに押出成形する。なおローラヘッド11としては、ゴムストリップPの断面形状に合う型付けローラを用いることが好ましい。
【0026】
前記ガイドローラ12は、ローラヘッド11により押出成形されたゴムストリップPをカレンダーローラ11Lから剥離して、前記アプリケータ3へ引き渡す周知の剥離ローラであって、カレンダーローラ11U、11Lと略等しい周速度で駆動される。また、本実施例では、同一形状のガイドローラ12が、直列に2つ12a、12b設けられ、剥離したゴムストリップPの引き渡しを安定化している。
【0027】
図5に示されるように、このゴムストリップPとしては、その厚さT1が例えば0.5〜4.0mm、幅W1が例えば12〜35mm程度のものが好適に使用されるが、形成するタイヤ用ゴム部材P1の形状サイズなどに応じて種々変更できる。
【0028】
また、前記アプリケータ3は、図4に概念的に示されるように、搬送方向最前端側の送り出しローラ6aを含む案内ローラ6により周回可能に案内される搬送ベルト5を有し、該搬送ベルト5上で、前記ゴムストリップ供給手段2からのゴムストリップPを受け取るとともに送り出しローラ6a側に搬送し、成形フォーマー4に送り出すコンベヤ7を少なくとも含む。なお、搬送ベルト5の上部には、ゴムストリップPの幅よりも幅の小さい押えベルトJが設けられ、この押えベルトJと搬送ベルト5との間で前記ゴムストリップPを挟持しながら搬送している。なお、前記搬送ベルト5と押えベルトJとは、ゴムストリップPとの剥離性に優れる非粘着性を有し、成形フォーマー4に送り出す際にゴムストリップPが搬送ベルト5から剥離されずに、搬送ベルト5とともに巻き戻ってしまうのを防止している。また、これにより、粘着力の小さいゴムストリップPでも容易に成形フォーマー4に搬送し得るという利点も有している。なお、非粘着処理として、例えば搬送ベルト5の表面にナイロン、ポリエステル、テフロン(デュポン社の商標)などの樹脂をコーティングする。及び/又は、ベルト表面を例えば梨地状等の凹凸模様を設けるものが挙げられる。
【0029】
本実施形態のアプリケータ3では、前記コンベヤ7の上流側に前記ガイドローラ12から送り出されたゴムストリップPを前記コンベヤ7に誘導する誘導ローラ15が配される場合が示されている。この誘導ローラ15は、コンベヤ7に近接して配されるとともに、その上縁がコンベヤ7の上面と略同高さに設定されている。
【0030】
図1に示されるように、本発明のコンベヤ7を含むアプリケータ3は、該コンベヤ7の送り出しローラ6aが成形フォーマー4と接近し前記ゴムストリップPを成形フォーマー4に貼り付ける下降位置S1から、前記コンベヤ7の送り出しローラ6aが成形フォーマー4から上方に離間して待機する上昇位置S2までの間を例えばシリンダーなどを用いた適宜の昇降手段Kによって昇降移動Fが可能に保持される。即ち、アプリケータ3は、昇降移動Fにより、タイヤ用ゴム部材P1の取外しを可能としながらも、コンベヤ7を成形フォーマー4に例えば20mm以下に近接させて、ゴムストリップPを貼り付けることが可能となり、貼り付け精度を高めうる。他方、コンベヤ7を含むアプリケータ3は、ゴムストリップPの幅方向へ移動しない。換言すれば、前記ゴムストリップ供給手段2及びアプリケータ3によるゴムストリップPの搬送移動は、形成フォーマー4に向かいゴムストリップPの長さ方向にのみ移動可能であり、幅方向には移動されない。このため、ゴムストリップPは、その搬送状態において捩じれの影響や幅方向の応力を受けることが小さいため、ゴムストリップPの寸法変化や形状変化が少なくなり、タイヤ用ゴム部材P1の形成精度を向上し得る。
【0031】
又前記製造装置1では、前記ガイドローラ12とコンベヤ7との間、本例ではガイドローラ12と誘導ローラ15との間に、ゴムストリップPの内部応力を減じて巻回体形成後のシュリンクを抑える領域Yを形成している。本例では、この領域Yとして、前記ガイドローラ12と誘導ローラ15との間に回転自在なフリーローラー16を配し、ゴムストリップをU字に巻装した場合が示される。
【0032】
本例の場合、前記コンベヤ7によるゴムストリップPの搬送速度V2は、前記ゴムストリップ供給手段2からのゴムストリップPの供給速度V1以下であり、かつ前記フリーローラー16と誘導ローラ15との間でゴムストリップPが弛むことなく搬送される。なお、前記領域Yでは、搬送ベルト5に拘束されないため、ゴムストリップPにはシュリンクしようとする収縮力が発生する。従って、V2≦V1としながらも、ゴムストリップPを弛むことなく搬送することができる。なおV2<V1とした場合には、その速度差相当分、ゴムストリップPにシュリンクを発生させることができ、巻回体形成後のシュリンク自体を抑えうる。特に、ゴムストリップPに、天然ゴムなどシュリンクが大きい配合ゴムを使用する場合には、ゴムストリップPが弛まない範囲で、前記搬送速度V2を供給速度V1の70〜100%に減じ、この領域Yにてシュリンクをできるだけ大きく発生させることが好ましい。又ゴムストリップPを弛ませないことにより、シュリンクを長さ方向に一定に発生させることが可能となり、シュリンク量のバラツキに起因したゴムストリップPの寸法バラツキを抑制できる。なお前記領域Yが小さすぎると、前述の効果を充分に発揮することができず、逆に大きすぎるとゴムストリップPの自重による悪影響が生じる。従って、前記フリーローラー16と誘導ローラ15との間の距離は、40〜80mmの範囲が好ましい。
【0033】
又本実施形態では、前記コンベヤー7を昇降自在としたため、前記タイヤ用ゴム部材取外し工程に伴うコンベヤー7を含むアプリケータ3の上昇時には、コンベヤー7とフリーローラー16との間でゴムストリップPに伸びが発生し、ゴムストリップPに寸法変化や形状変化を招く恐れがある。そこで本例では、前記フリーローラー16を、コンベヤ7の昇降移動と同期して昇降移動可能に支持している。これにより、コンベヤー7とフリーローラー16との間の距離を一定に保つことができ、コンベヤー7の昇降移動に起因するゴムストリップPの寸法変化等を防止することができる。
【0034】
前記フリーローラー16は、ネジ軸方式やピストンシリンダー方式等の周知の手段により昇降移動させることができる。
【0035】
また、前記成形フォーマー4は、回転しながら軸心方向に横移動することにより、送り出しローラ6aからのゴムストリップPが螺旋状に巻回され、タイヤ用ゴム部材が形成される。
【0036】
ここで、前記成形フォーマー4は、円筒状をなし、図1,2に示されるように、その軸心方向に移動可能な走行台19に、取り替え自在に枢着される。また、成形フォーマー4は、前記走行台19に固定のモータM1により、所定の回転速度で回転駆動される。
【0037】
前記走行台19は、走行手段22によって駆動され、前記成形フォーマー4が一回転する間に、前記螺旋ピッチに一致する距離を前記軸心方向に移動する。本例では、走行手段22として、前記図1、2に示す如く、前記軸心方向にのびかつ回転自在に両端支持されるネジ軸24、及びこのネジ軸24とは平行に敷設される例えば一対のレール23を含むものを例示しており、前記ネジ軸24にはモータM2が連結される。又前記走行台19は、前記レール23に案内される直線軸受け25、及び前記ネジ軸24に螺合する雌ねじ部を具える。
【0038】
これにより、モータM1、M2の駆動により、前記成形フォーマー4が回転しながら横移動することにより、成形フォーマー4の外周面に、テンション力を小としながらも、ゴムストリップPの動きを拘束し、その軸芯方向への位置ズレを防止しつつ、コンベヤ7からのゴムストリップPを螺旋状に精度良く巻回することができる。これにより、タイヤ用ゴム部材P1の寸法バラツキを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、タイヤ用ゴム部材製造装置1は、図4に略示する如く、一つの成形フォーマー4に対して、前記ゴムストリッブPを夫々押出し成形する1つのゴムストリップ供給手段2と、ゴムストリッブPを搬送する1つのアプリケータ3とを具えているが、一つの成形フォーマー4に対して、複数のゴムストリップ供給手段2と複数のアプリケータ3とが設けられても良い。これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態のタイヤ用ゴム部材製造装置1には、タイヤ用ゴム部材P1の形成ごとにゴムストリップPを切断する周知のゴム切断装置(図示せず)が設けられているのは言うまでもない。
【0041】
また、図6には、前記ガイドローラ12とコンベヤ7との間の領域Yに、前記ゴムストリップPが拘束されずにU字状に弛んで自由に垂下するフリーフェスツーン部18を形成している態様が示される。この態様においても、成形フォーマー4が軸芯方向へ横移動することにより、ゴムストリップPの貼付が行われる。このフリーフェスツーン部18では、ゴムストリップPが、拘束されずにフリーとなるため、自由にシュリンクできる。従って、コンベヤ7による搬送に先駆け、前記ゴムストリップPに、該ゴムストリップPが要求するシュリンクを与えることができる。そのため搬送した後(本例では生ゴム製品を形成した後)におけるゴム収縮を大幅に抑制することができる。
【0042】
なお前記フリーフェスツーン部18におけるゴムストリップPの弛み量が少なすぎると、ゴム収縮が不充分となり、過大となるとゴムストリップPの自重による悪影響が生じる。このような観点より、前記ガイドローラ12とコンベヤ7との内端間の水平距離L1は、200〜600mmが好ましく、より好ましくは250〜350mmが望ましく、また、前記コンベヤ7の上端とゴムストリップPのフリーフェスツーン部18の下端位置Rの下限位置R2との垂直距離L2は、100〜700mmが好ましく、より好ましくは300〜500mmが望ましい。なお、前記フリーフェスツーン部18の下端位置Rを、上限位置R1と下限位置R2と間に規制する検出手段(図示せず)を設けることにより、弛み量を制御することが望ましい。
【0043】
しかしながら、前記フリーフェスツーン部18を設ける場合には、配合や配合ロットが変わるとシュリンクの程度が変わるために、成形フォーマー4上でのゴムストリップPのシュリンクは非常に小さいが成形後のタイヤ用ゴム部材の質量誤差が非常に大きくなってしまうという欠点があり(配合によっては約30%の質量誤差)、この点でフリーローラー16を設けることが望ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を確認するために、図に示す構造をなす製造装置によってゴムストリップを形成するとともに、このゴムストリップを巻き回して形成されたタイヤ用ゴム部材(タイヤサイズ215/45R17)を試作した。
なお、主な共通仕様は次の通りである
【0046】
ゴムストリップの幅×厚さ:23×1.0mm
成形フォーマーの直径:577mm
成形フォーマーの幅:320mm
成形フォーマーの周速度:1500mm/s
使用したゴムストリップのゴム配合は表2に示される。この表の数値単位は、質量部で表される。
なお、ゴムストリップ単体のシュリンク率は、ゴムストリップの切断直後と、60分経過後のゴムストリップの長さとを計測して算出した。具体的には、ゴム押出し機から吐出されたゴムストリップをガイドローラの円周を基準に所定の長さで切断し、切断したゴムストリップの一方を壁に固定し、他方を垂下して計測した。
テスト方法は次の通りである。
テストの結果を表1に、また、タイヤ用ゴム部材の配合を表2に示す。なお、ゴム配合Aは、粘着力の小さいゴムであり、ゴム配合Bは、粘着力の大きいゴムを表す。また、比較例2の図6のゴム部材製造装置の構造は、フリーフェスツーンを用いて、アプリケータが成形フォーマの軸方向に移動して、ゴムストリップを貼り付ける従来の構造を表す。
【0047】
<搬送精度>
上記装置により搬送されるゴムストリップの搬送状態を確認する。成形フォーマーまで搬送できた結果には○を、粘着不良によりゴムストリップが搬送ベルトから脱落し成形フォーマーまで搬送できない結果には×を付した。
【0048】
<タイヤ用ゴム部材の質量誤差>
上記装置により巻き取られたタイヤ用ゴム部材を、10本製造し質量を計測した。最大の質量と最小の質量との差を最大の質量で除した数値を示す。数値が小さいほど良好である。
【0049】
<タイヤ用ゴム部材の巻付け精度>
上記タイヤ用ゴム部材を、目視により確認した。巻付け状態の良いものには○を、シュリンク率(%)がテストごとに大きく異なったため、位置ズレが発生したものには△1を、Y領域でのたるみによる位置ズレが発生していたものには△2を、成形フォーマー上でのシュリンクによりクラックが発生していたものには△3を付した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
テスト結果によると、本発明により、タイヤ用ゴム部材の質量誤差が小さく、またタイヤ用ゴム部材の巻付け精度が向上しており、さらにゴムストリップの粘着力によらずタイヤ用ゴム部材を製造できる点で、有意な発明であることが証明された。
【符号の説明】
【0053】
2 ゴムストリップ供給手段
3 アプリケータ
4 形成フォーマー
5 搬送ベルト
6 案内ローラ
6a 送り出しローラ
7 コンベヤ
K1 巻き付け工程
K2 タイヤ用ゴム部材取外し工程
P ゴムストリップ
P1 タイヤ用ゴム部材
S1 下降位置
S2 上昇位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なテープ状のゴムストリップを、円筒状の成形フォーマー上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより前記ゴムストリップの巻回体からなるタイヤ用ゴム部材を形成するタイヤ用ゴム部材の製造方法であって、
ゴムストリップ供給手段によって押出し成形されながら順次供給されるゴムストリップを、搬送方向最前端側の送り出しローラを含む案内ローラにより周回可能に案内される搬送ベルトを有するコンベヤを含むアプリケータを用いて受け取り、かつ前記送り出しローラ側から成形フォーマーに送り出すとともに、前記成形フォーマーを、回転しながら軸心方向に横移動させることにより、該成形フォーマー上で前記コンベヤからのゴムストリップを螺旋状に巻回しながら貼り付けてタイヤ用ゴム部材を形成する巻き付け工程と、
前記アプリケータを、前記コンベヤが成形フォーマーと接近して前記ゴムストリップを成形フォーマーに貼り付ける下降位置から、前記コンベヤが成形フォーマーから上方に離間して待機する上昇位置まで上昇移動させ、前記成形フォーマー上に形成されたタイヤ用ゴム部材を取り外すタイヤ用ゴム部材取外し工程とを具えることを特徴とするタイヤ用ゴム部材の製造方法。
【請求項2】
前記ゴムストリップ供給手段とアプリケータとの間に、ゴムストリップをU字に巻装する回転自在なフリーローラーが配されるとともに、該フリーローラーは、前記タイヤ用ゴム部材取外し工程工程に伴う前記アプリケータの昇降移動と同期して昇降移動することにより、該アプリケータとフリーローラーとの間の距離を一定に保つことを特徴とする請求項1記載のタイヤ用ゴム部材の製造方法。
【請求項3】
前記コンベヤによるゴムストリップの搬送速度V2は、前記ゴムストリップ供給手段からのゴムストリップ供給速度V1の70〜100%の範囲であり、かつ、前記ゴムストリップは、前記フリーローラーとコンベヤとの間で弛むことなく搬送されることを特徴とする請求項2記載のタイヤ用ゴム部材の製造方法。
【請求項4】
長尺なテープ状のゴムストリップを、円筒状の成形フォーマー上で螺旋状に巻回して貼り付けることにより前記ゴムストリップの巻回体からなるタイヤ用ゴム部材を形成するタイヤ用ゴム部材の製造装置であって、
前記ゴムストリップを押出し成形しながら順次供給するゴムストリップ供給手段と、
搬送方向前端側の送り出しローラを含む案内ローラにより周回可能に案内される搬送ベルトを有し、該搬送ベルト上で、前記ゴムストリップ供給手段からのゴムストリップを受け取りかつ前記送り出しローラ側から成形フォーマーに送り出すコンベヤを含むアプリケータと、
前記成形フォーマーとを具え、
前記アプリケータは、前記コンベヤが成形フォーマーと接近して前記ゴムストリップを成形フォーマーに貼り付ける下降位置から、前記コンベヤが成形フォーマーから上方に離間して待機する上昇位置までの間を昇降自在に保持されるとともに、
前記成形フォーマーは、回転しながら軸心方向に横移動することにより、コンベヤからのゴムストリップが螺旋状に巻回されることを特徴とするタイヤ用ゴム部材の製造装置。
【請求項5】
前記ゴムストリップ供給手段とアプリケータとの間に、ゴムストリップをU字に巻装する回転自在なフリーローラーが配されるとともに、該フリーローラーは、前記アプリケータの昇降移動と同期して昇降移動することにより、該アプリケータとフリーローラーとの間の距離を一定に保つことを特徴とする請求項4記載のタイヤ用ゴム部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183698(P2011−183698A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52143(P2010−52143)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】