説明

タッチキー

【課題】電磁誘導で、加熱中の鍋をスイッチに接近しておいた場合、あるいは加熱中の鍋を触りながらスイッチ操作した場合等の誤動作をなくすこと。
【解決手段】電極部2の出力電圧を検知する検知部5と、検知部5の出力電圧を検知し補正する補正部6と、補正部6の出力電圧を常時受け付け、その電圧差を演算し、この電圧差が所定値以上ある時にはタッチキーに触れたと判定する判定部6とを有し、補正部6にて電磁誘導で加熱中の鍋10の影響により乗る交流電圧を補正して、判定部6で判定することにより、誤動作を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電磁調理器のフラットパネル部に設けたタッチキーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のタッチキーは、例えば図6に示すものが提案されている。図6はタッチキーのブロック図で、パネル部31はガラス等の表面の平らな電気絶縁物である。電極部32、33はパネル部31の対向する位置に設け、電極部32、33とパネル部31でコンデンサを形成している。発振部34は高周波電圧を発生し、この高周波電圧を電極部32に印加する。対向する電極部33に指39で触れたとき、高周波電圧を電極部32、パネル部31、電極部33、指39(人のインピーダンス)を介して大地(アース)にバイパスし、電極部32に現れる電圧が指でタッチしないときの電圧より低下する。検知部35は、入力された高周波電圧を直流電圧に変換し、電極部33にタッチしないときには高い直流電圧を、電極部33にタッチしたときには低下した直流電圧を判定部36に出力する。判定部36は入力された電圧の差を演算し、電圧差が所定値以上あるとき、電極部33にタッチした、即ち、タッチキーに触れたと判定するものである。
【0003】
図7に検知部35の出力電圧を示す。時刻T0までは電極部33にタッチせず、時刻T0で電極部3にタッチしたときの検知部15の出力電圧を示す。タッチしないときの電圧V3とタッチしたときの電圧V4の差を判定部36で求め、その差ΔVが所定値以上あるとき、電極部33にタッチしたと判定するものである。
【0004】
このようにパネル面にタッチキーを設けることにより、調理物を見ながら操作できるので、非常に使いやすいものになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−224459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこのような構成のものでは、電磁誘導で加熱中の鍋をパネル部に設けた所定の位置からはずれ、タッチキーの電極近くに置いた場合、あるいは、一方の手で加熱中の鍋を触りながら、他方の手でタッチキーにタッチした場合、検知部の出力に大きな交流電圧が乗り誤動作をさせることがあるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電磁誘導で加熱中の鍋がパネル部に設けた所定の位置からはずれ、タッチキーの電極近くに置いた場合、あるいは、加熱中の鍋を触りながらタッチキーにタッチした場合の誤動作を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するために、本発明のタッチキーは電気絶縁物よりなるパネル部と、前記パネル部に設けた電極部と、所定の周波数の電圧を出力して前記電極部に印加する発振部と、前記電極部の出力電圧を検知する検知部と、前記検知部の出力電圧を検知し補正する補正部と、前記補正部の出力電圧を常時受け付け、前記補正部の出力電圧の電圧差を演算し、前記補正部の出力電圧の電圧差が所定値以上ある時にはタッチキーに触れたと判定する判定部を有することにより、検知部の出力電圧の交流電圧を検知し、検知電圧を補正するので、交流電圧の影響を無くして電磁誘導で加熱中の鍋がパネル部に設けた所定の位置からはずれ、タッチキーの電極近くに置いた場合、あるいは、加熱中の鍋を触りながらタッチキーにタッチした場合の誤動作を防止することができるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタッチキーは交流電圧の影響を無くして安定に動作させて、電磁誘導で加熱中の鍋がパネル部に設けた所定の位置からはずれ、タッチキーの電極近くに置いた場合、あるいは、加熱中の鍋を触りながらタッチキーにタッチした場合の誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、電気絶縁物よりなるパネル部と、前記パネル部に設けた電極部と、所定の周波数の電圧を出力して前記電極部に印加する発振部と、前記電極部の出力電圧を検知する検知部と、前記検知部の出力電圧を検知し補正する補正部と、前記補正部の出力電圧を常時受け付け、前記補正部の出力電圧の電圧差を演算し、前記補正部の出力電圧の電圧差が所定値以上ある時にはタッチキーに触れたと判定する判定部を有する構成にしたことにより、交流電圧の影響を無くして安定に動作させるので、電磁誘導で加熱中の鍋がタッチキーに近づいても、あるいは鍋に触れながらタッチキーに触れても含まれる交流電圧は補正により影響を無くして、その差で判定し、誤動作がない。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の補正部は、検知部の出力電圧の交流電圧の最大値と最小値を検知し、前記検知部の出力電圧の交流電圧の最大値と最小値の1/2を判定部に入力するように構成したことにより、交流電圧の影響を無くして安定に動作させるので、電磁誘導で加熱中の鍋がタッチキーに近づいても、鍋に触れながらタッチキーに触れても含まれる交流電圧の中間値の補正で影響を無くして、その差で判定し、誤動作がない。
【0011】
第3の発明は、特に、第1の発明の補正部は、交流電圧の最大値または最小値を検知して判定部に入力するように構成したことにより、交流電圧の影響を無くして安定に動作させるので、電磁誘導で加熱中の鍋がタッチキーに近づいても、鍋に触れながらタッチキーに触れても含まれる交流電圧の最大値(または最小値)の補正で影響をなくして、その差で判定し、誤動作がない。
【0012】
第4の発明は、特に、第1の発明の補正部は、交流電圧を検知している間は、検知部の検知電圧を判定部に入力するのを停止し、交流電圧を検知していないときには検知部の出力電圧を前記判定部に入力するよう構成し、前記判定部は入力された検知電圧を記憶し、前記記憶した検知電圧と後で入力された検知電圧との差を演算するよう構成したことにより、交流電圧を含まない検知電圧で判定する、したがって交流電圧の影響を無くして安定に動作させるので、電磁誘導で加熱中の鍋がタッチキーに近づいても、あるいは、鍋に触れながらタッチキーに触れても交流電圧を含むので、その間は判定しないので判定中は影響を受けないので誤動作がない。
【0013】
第5の発明は、特に、第1の発明の補正部は、検知した交流電圧の大きさが所定値以上あるとき、表示器またはブザー等で構成する報知部に出力し、前記報知部を動作させて報知するように構成したことにより、電磁誘導で加熱中の鍋がタッチキーに近づくにつれ、交流電圧の大きさは大きくなるが、この電圧が誤動作レベルに近くなったところで表示器あるいはブザーで報知することにより、鍋ずれを使用者に知らせて、注意または鍋ずれの修正を喚起できる。
【0014】
第6の発明は、特に、第1の発明の補正部は、交流電圧を検知した時には、検知した交流電圧を除去するフィルタを有する構成にしたことにより、交流電圧の影響を無くし安定に動作させるので、電磁誘導で加熱中の鍋がタッチキーに近づいても、あるいは鍋に触れながらタッチキーに触れても含まれる交流電圧は、フィルタにより除去される補正で影響を無くして、その差で判定し、誤動作がない。
【0015】
第7の発明は、特に第1の発明の判定部は、補正部の出力が直流電圧から交流電圧に変化したとき、タッチキーに触れたと判定するように構成したことにより、タッチしないときの直流電圧から、タッチしたとき鍋の誘起電圧が人体を通じてタッチキーに印加されるため交流電圧が現れ、この交流電圧を検知してタッチしたと判定する、即ち、鍋に触れながらタッチキーに触れる場合に現れる交流電圧で判定して誤動作がない。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について図1、図2を用いて説明する。図1は本発明のタッチキーのブロック図、図2は電磁誘導で加熱中の鍋10に発生している電圧波形である。従来例と同じものは説明を省略する。
【0018】
加熱コイル11は高周波の電流を流し高周波の磁束を発生させて、プレート1上に置かれた鍋10を電磁誘導で加熱する。加熱用コイル11は、加熱制御部12で制御され、設定温度に応じて加熱コイル11に高周波電流を流したり遮断したりして鍋10の温度を一定に制御する。また、加熱制御部12には、商用交流電源14を電源部13で両波整流された電圧が印加され、これを電源にして前述の加熱コイル11に高周波電流を供給する。加熱コイル11に流れる高周波電流により、鍋10に渦電流が誘導され、この渦電流により鍋10が加熱され鍋10の中の調理物を電磁誘導で加熱するものである。鍋10に発生している電圧を図2に示す。図2でe1は鍋10を加熱する周波数の高周波電圧で約20kHz前後である。この高周波電圧e1のエンベロープは商用交流電圧を両波整流した120Hzまたは100Hzである。鍋10が加熱コイル11の真上にあれば、検知部5の出力電圧は、鍋10とタッチキーの電極部3との距離があるため、鍋10に誘起した電圧e1に影響されず、発振部4から入力した電圧を検知部5で検知し、整流した直流電圧が得られる。鍋10が加熱コイル11の真上から離れ、タッチキーの電極3に接近すると、あるいは人が一方の手で加熱中の鍋10に触りながら他方の手でタッチキーの電極3にタッチすると、検知部5の出力電圧は鍋10に誘起した電圧のエンベロープ分e2が現れる。この電圧e2が小さいと問題はないが、大きくなると判定部7でタッチキーにタッチしてもタッチしたとみなされないので誤動作となる。そこで、このとき検知部5の出力電圧を補正部6に入力し、補正部6はこのエンベロープ電圧である交流電圧を検出し、交流電圧の影響を無くして判定部7に出力する。したがって、判定部7では交流電圧の影響を無くした一定レベルの直流電圧を検知し、この直流電圧にレベル差がある場合、この差を演算し、差電圧が所定値以上あるときタッチしたと判定するものである。
【0019】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態を図3を用いて説明する。加熱中の鍋10がタッチキーの電極3に接近した位置にあるとき、補正部6は検知部5の交流出力電圧の最大値Vp1と最小値Vp2を検出し、(Vp1+Vp2)/2をもとめ、この電圧を判定部7へ出力する。図3は検知部5の出力電圧を示す。加熱中の鍋10がタッチキーの電極3に接近した位置にあり、時刻T0まではタッチせず、時刻T0以降はタッチした場合を示す。判定部7ではタッチしないときの電圧(Vp1+Vp2)/2とタッチしたときの電圧(Vp3+Vp4)/2の差を求め、この差の電圧が所定値以上あるときタッチしたと判定するものである。
【0020】
なお、この差電圧は正でも負でもよい。これは、通常は検知部の出力電圧はタッチすれば低下するが、誘導加熱中の鍋10を触りながらタッチキーに触れれば、上昇し、この場合タッチしないときの電圧からタッチしたときの電圧を引けば負になり、この場合も含むからである。
【0021】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態を図3を用いて説明する。検知部5の出力の交流電圧の最大値Vp1、または最小値Vp2を補正部6が検知し判定部7へ出力する。タッチすることにより交流電圧の大きさが変われば、この最大値Vp3、または最小値Vp4を判定部7へ出力する。判定部7はVp1−Vp3またはVp2−Vp4を演算し、この差の電圧が所定値以上ある時にはタッチしたと判定するものである。
【0022】
なお、交流電圧の最大値、最小値に限らず、位相を固定しその位相の電圧を検知し、その電圧を判定部7へ出力してもよい。
【0023】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態を図4を用いて説明する。検知部5の出力に交流電圧が現れている期間t1の間、補正部6は判定部7に出力するのを停止する。再び交流電圧がなくなったとき補正部6は判定部7に出力する。判定部7は常時入力された電圧の差を演算しているが、この場合、前回入力された電圧V1を記憶しておき、時間t1をおいて入力された電圧V2の差を演算し、その差が所定値以上あるときタッチしたと判定するものである。これは、例えば時間t2の間片方の手は加熱中の鍋に触れ、もう一方の手でタッチキーにタッチした場合等である。
【0024】
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態を図1を用いて説明する。本実施の形態では、鍋10が加熱コイル11の真上よりずれて、タッチキーの電極部3の近くに置くにつれて検知部5の出力の交流電圧が大きくなる。補正部6はこの交流電圧の大きさを検知して、タッチキーが誤動作する前に表示器あるいはブザー等で構成した報知部8を動作させて、鍋10が所定の位置からずれていることを知らせ、タッチキーが誤動作することを防止するものである。
【0025】
なお、交流電圧が大きくなったことを検知した補正部6は、判定部7の動作を停止させてタッチキーの動作を停止させてもよい。
【0026】
(実施の形態6)
本発明の第6の実施の形態を図1を用いて説明する。本実施の形態では、補正部6は、交流分を除去し、直流成分のみにするフィルタで構成する。前述のように補正部6に入力される交流分は、商用交流電源を両波整流した100Hzまたは120Hzであり、この周波数の電圧を通過させずに信号グランドにバイパスし、直流成分のみ判定部7へ出力するフィルタ回路で構成するようにしたものである。したがって、交流成分は除去されるので、影響をうけなくなる。
【0027】
(実施の形態7)
本発明の第7の実施の形態を図5を用いて説明する。本実施の形態では、検知部5の出力電圧Vが直流電圧から交流電圧に変化したとき(T0)にタッチしたと判定し、交流電圧が発生している期間t2の間タッチしていると判定するものである。これは鍋10が所定の位置にあり加熱中のとき、タッチキーの検知部5の出力電圧はタッチキーの電極部3にタッチしないときは直流であるが、鍋10を触りながら電極部3にタッチしたときには、交流電圧が発生することを利用したものである。
【0028】
なお、このやりかたは、使用環境によっては人が強電界にさらされてタッチキーを操作する場合(使用者を介して強電界による交流成分がタッチキーに伝導される場合)のタッチの判定にも適用できる。
【0029】
以上述べたように、本タッチキーを電磁調理器に用いることにより、誤動作が無く安全で使いやすい電磁調理器を提供することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかるタッチキーは、誘導電流で加熱中の鍋がタッチキーの電極に接近しておかれても、あるいは誘導電流で加熱中の鍋に触りながらタッチキーに触れても、誤動作のない操作が可能となるので、電磁調理器への適用だけでなく、誘導加熱を応用する機器等のタッチスイッチを使用する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1〜7におけるタッチキーのブロック図
【図2】加熱中の鍋に発生した誘起電圧波形図
【図3】本発明の実施の形態2、3を説明する検知部出力電圧波形図
【図4】本発明の実施の形態4を説明する検知部出力電圧波形図
【図5】本発明の実施の形態7を説明する検知部出力電圧波形図
【図6】従来例のタッチキーのブロック図
【図7】従来例の検知部の出力電圧波形図
【符号の説明】
【0032】
1 パネル部
2、3 電極部
4 発振部
5 検知部
6 補正部
7 判定部
8 報知部
10 鍋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁物よりなるパネル部と、前記パネル部に設けた電極部と、所定の周波数の電圧を出力して前記電極部に印加する発振部と、前記電極部の出力電圧を検知する検知部と、前記検知部の出力電圧を検知し補正する補正部と、前記補正部の出力電圧を常時受け付け、前記補正部の出力電圧の電圧差を演算し、前記補正部の出力電圧の電圧差が所定値以上ある時にはタッチキーに触れたと判定する判定部を有するタッチキー。
【請求項2】
補正部は、検知部の出力電圧の交流電圧の最大値と最小値を検知し、前記交流電圧の最大値と最小値の1/2を判定部に入力するように構成した請求項1に記載のタッチキー。
【請求項3】
補正部は、交流電圧の最大値または最小値を検知して判定部に入力するように構成した請求項1に記載のタッチキー。
【請求項4】
補正部は、交流電圧を検知している間は、検知部の検知電圧を判定部に入力するのを停止し、交流電圧を検知していないときには、検知部の出力電圧を前記判定部に入力するよう構成し、前記判定部は入力された検知電圧を記憶し、前記記憶した検知電圧と後に入力された検知電圧との差を演算するように構成した請求項1に記載のタッチキー。
【請求項5】
補正部は、検知した交流電圧の大きさが所定値以上あるとき、表示器またはブザー等で構成する報知部に出力し、前記報知部を動作させて報知するように構成した請求項1に記載のタッチキー。
【請求項6】
補正部は、交流電圧を検知した時には、検知した交流電圧を除去するフィルタを有する構成にした請求項1に記載のタッチキー。
【請求項7】
判定部は、補正部の出力が直流電圧から交流電圧に変化したとき、タッチキーに触れたと判定するように構成した請求項1に記載のタッチキー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−121563(P2006−121563A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309385(P2004−309385)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】