説明

タッチパネル用光導波路

【課題】大形化しても、品質の低下がなく、かつ、検知不可能領域が減少ないし生じないタッチパネル用光導波路を提供する。
【解決手段】タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置されるタッチパネル用光導波路であって、上記画面の一端縁に沿って、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとが交互に接合され、かつ、上記画面を挟んで、上記光出射用の光導波路Aと上記光入射用の光導波路Bとが対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルにおいて、指等の触れ位置を検知する検知手段として用いられるタッチパネル用光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、指や専用のペン等で液晶ディスプレイ等の画面に直接触れることにより、機器を操作等する入力装置である。そのタッチパネルの構成は、操作内容等を表示するディスプレイと、このディスプレイの画面上での上記指等の触れ位置(座標)を検知する検知手段とを備えている。そして、その検知手段で検知した触れ位置を示す情報が信号として送られ、その触れ位置に表示された操作等が行われるようになっている。このようなタッチパネルを用いた機器としては、金融機関のATM,駅の券売機,携帯ゲーム機等があげられる。
【0003】
上記タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段として、光導波路を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、そのタッチパネルは、その平面図を図7に示すように、平面視四角形のディスプレイの画面の周縁部に沿って、2個のL字状の光導波路A0 ,B0 が設置されている。そのうち、上記画面を挟んで対向する一方が、光出射用の光導波路A0 であり、他方が、光入射用の光導波路B0 である。光出射用の上記光導波路A0 の端部には、発光素子5が接続され、光入射用の上記光導波路B0 の端部には、受光素子6が接続されている。なお、図7において、鎖線で示す符号30Aは光出射用のコアであり、符号30Bは光入射用のコアであり、その鎖線の太さがコア30A,30Bの太さを示している。また、この図7では、コア30A,30Bの数を略して図示している。
【0004】
そして、上記発光素子5から発光された光は、光出射用の上記光導波路A0 のコア30Aにより、多数の光に分岐され、その光導波路A0 のコア30Aの先端部から、上記多数の光S0 が、ディスプレイの画面と平行に、かつ他側部に向かって出射され、それらの出射光S0 が、光入射用の上記光導波路B0 のコア30Bの先端部に入射するようになっている。これら光導波路A0 ,B0 により、ディスプレイの画面上において、出射光S0 が格子状に走っている状態になる。この状態で、指でディスプレイの画面に触れると、その指が出射光S0 の一部を遮断するため、その遮断された部分を、光入射用の上記光導波路B0 に接続された上記受光素子6で感知することにより、上記指が触れた部分の位置(座標)を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−203431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記タッチパネルに対し、ディスプレイの大画面化の要求がある。それに対応して、上記タッチパネル用光導波路も、大形化する(光導波路A0 ,B0 を長くする)必要がある。
【0007】
しかしながら、上記光導波路A0 ,B0 の作製には、通常、フォトリソグラフィ工程を要し、そのフォトリソグラフィ工程で使用する露光装置によって露光範囲(均一な露光が可能な範囲)が限られるため、一度に作製される光導波路A0 ,B0 の長さも限られる(通常、最大30cm程度)。
【0008】
そこで、上記露光範囲を超える長さの光導波路A0 ,B0 を作製するためには、露光範囲が広い(長い)露光装置を用いるか、または、上記通常の長さの光導波路を同じ種類同士(光出射用の光導波路A0 同士または光入射用の光導波路B0 同士)、複数接合することが考えられる。
【0009】
しかしながら、露光範囲が広い(長い)露光装置を用いる場合、装置が大形化するため、製造現場でのスペースの点で問題がある。しかも、装置が大形化すると、全体を均一な露光強度にすることが困難となるため、品質が低下するおそれがある。一方、通常の長さの光導波路A0 ,B0 を同じ種類同士、複数接合する場合、その接合部分の拡大平面図を図8に示すように、光導波路A0 ,B0 の製造上、光導波路A0 ,B0 の端部ではコア30A,30Bが形成されない部分Mがあり、その端部の端面同士で接合するため、ディスプレイの画面上において、光が走らない領域(図8の斜線部分)Nが広く生じる。その領域Nでは、光S0 が走っていないため、指等の触れ位置を検知することができない。なお、図8に示すように、光出射用の光導波路A0 からの出射光S0 は、通常、横方向(画面に平行な面に沿う方向)に広がる。図8では、理解を容易にするため、その広がりを誇張して図示しているとともに、光出射用の光導波路A0 と光入射用の光導波路B0 との間の距離を短く図示している。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、大形化しても、品質の低下がなく、かつ、検知不可能領域が減少ないし生じないタッチパネル用光導波路の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明のタッチパネル用光導波路は、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置されるタッチパネル用光導波路であって、上記画面の一端縁に沿って、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とが交互に接合され、かつ、上記画面を挟んで、上記光出射用の光導波路と上記光入射用の光導波路とが対向しているという構成をとる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタッチパネル用光導波路は、タッチパネルのディスプレイの画面の一端縁に沿って、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とが交互に接合され、かつ、上記画面を挟んで、上記光出射用の光導波路と上記光入射用の光導波路とが対向している。このように、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とを特徴的に配置することにより、光出射用の光導波路から出射する光の横方向(画面に平行な面に沿う方向)の広がりを考慮すると、画面上において、光が走らない領域が減少ないし生じないようにすることができる(図4参照)。その結果、検知不可能領域が減少ないし生じないようにすることができる。すなわち、上記のように接合する2本の光導波路の端部には、光導波路の製造上、コアが形成されないものの、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路との配置を、上記のような特徴的な配置とすることにより、検知不可能領域を減少ないし生じさせないようにしている。しかも、上記のように接合される光導波路として、一般的な露光装置が有する露光範囲内で無理なく作製された通常の長さのものを用いることができる。すなわち、上記光導波路は、均一な露光強度を利用して作製されたものであるため、品質の低下がない。
【0013】
特に、上記対向している光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とにおいて、光入射用の光導波路が、光出射用の光導波路よりも長く設定されている場合には、光入射用の光導波路における受光領域を広くすることができるため、光出射用の光導波路から出射する光の横方向(画面に平行な面に沿う方向)の広がりを考慮すると、光出射用の光導波路の端部から出射する光でも、光入射用の光導波路で受光することができる。そのため、タッチパネルにおいて、指等の触れ位置をより確実に検知することができる。
【0014】
また、上記対向している光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とにおいて、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とが、同じ長さに設定されている場合には、本発明のタッチパネル用光導波路の大きさの設定が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のタッチパネル用光導波路の第1の実施の形態を模式的に示す平面図である。
【図2】上記タッチパネル用光導波路の横断面を模式的に示す断面図である。
【図3】上記タッチパネル用光導波路に光学素子を接続した状態を模式的に示す平面図である。
【図4】上記タッチパネル用光導波路の対向辺の間における光の状態を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明のタッチパネル用光導波路の第2の実施の形態を模式的に示す平面図である。
【図6】本発明のタッチパネル用光導波路の第3の実施の形態を模式的に示す平面図である。
【図7】従来のタッチパネル用光導波路を模式的に示す平面図である。
【図8】従来のタッチパネルの対向辺の間における光の状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0017】
図1は、本発明のタッチパネル用光導波路の第1の実施の形態を示している。この実施の形態のタッチパネル用光導波路は、その平面図を図1に示すように、平面視四角形の枠状に形成されている。そして、その四角形の枠状を構成する各辺では、それぞれが短冊状に形成された、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとが交互に接合されており、上記枠状の対向辺では、上記光出射用の光導波路Aと上記光入射用の光導波路Bとが対向している。また、この実施の形態では、上記枠状の角部において、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとが接合している。さらに、この実施の形態では、光入射用の光導波路Bが、光出射用の光導波路Aよりも長く設定されている。なお、図1では、両光導波路A,Bの区別を容易にするため、光入射用の光導波路Bに斜線を入れている。
【0018】
より詳しく説明すると、上記各光導波路A,Bは、図1に示すように、短冊状に形成されたアンダークラッド層2(図2参照)と、このアンダークラッド層2の表面に所定パターンに形成された複数のコア3A,3Bと、これらコア3A,3Bを被覆した状態で上記アンダークラッド層2の表面に形成されたオーバークラッド層4とを備えている。上記コア3A,3Bは、上記枠状の外周縁部に対応する所定部分から、その枠状の内周縁部に対応する部分に、等間隔に並列状態で延びたパターンに形成されている。また、上記光導波路A,Bの横断面図を図2に示すように、この実施の形態では、上記枠状の内周縁部に位置する、光出射用および光入射用のコア3A,3Bの端面を被覆するようにオーバークラッド層4の端部を延設し、その延設された端部をレンズ部4A,4Bに形成している。このレンズ部4A,4Bのレンズ面は、縦断面円弧状曲面になっている。なお、これら構造は同一であるため、図2では、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとを同一図面に記載している。
【0019】
なお、図1では、コア3A,3Bを鎖線で示しており、鎖線の太さがコア3A,3Bの太さを示している。また、この図1では、コア3A,3Bの数を略して図示している。さらに、図2において、符号1は、上記光導波路A,Bを支持する基板である。
【0020】
上記四角形の枠状のタッチパネル用光導波路をタッチパネルに用いる際には、図3に示すように、上記枠状の外周縁部に対応する、上記光出射用の光導波路Aの端部の所定部分〔上記複数のコア3A(図1参照)が延びている根元部分〕に、発光素子5を接続し、上記光入射用の光導波路Bの端部の所定部分〔上記複数のコア3B(図1参照)が延びている根元部分〕に、受光素子6を接続する。そして、それをタッチパネルの四角形のディスプレイの画面を囲むようにして、その画面周縁部の四角形に沿って設置する。
【0021】
上記タッチパネル用光導波路の対向辺の間における光の状態は、その平面図を図4に示すように、光出射用の光導波路Aのコア3Aの先端面から出射した光Sは、横方向(画面に平行な面に沿う方向)に広がりながら、対向する光入射用の光導波路Bのコア3Bの先端面に達する。ここで、上記枠状を構成する各辺では、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとが接合されているため、画面上において、光Sが走らない領域(図4の斜線部分)Nが非常に狭くないし0(零)になる。その結果、指等の触れ位置を確実に検知できるようになる。特に、この実施の形態では、光入射用の光導波路Bが、光出射用の光導波路Aよりも長く設定されているため、光出射用の光導波路Aの端部から出射する光Sでも、光入射用の光導波路Bで受光することができ、検知の確実性が向上する。なお、図4では、理解を容易にするため、光Sの広がりを誇張して図示しているとともに、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとの間の距離を短く図示している。
【0022】
図5は、本発明のタッチパネル用光導波路の第2の実施の形態を示している。この実施の形態のタッチパネル用光導波路は、その平面図を図5に示すように、四角形の枠状の角部において、光出射用の光導波路A同士、または光入射用の光導波路B同士が接合している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0023】
なお、この第2の実施の形態では、上記角部における光導波路A,B同士の接合を一体化し、L字状の光導波路A,Bとしてもよい。
【0024】
図6は、本発明のタッチパネル用光導波路の第3の実施の形態を示している。この実施の形態のタッチパネル用光導波路は、より大形のものであり、その平面図を図6に示すように、四角形の枠状を構成する各辺において、光出射用の光導波路Aと光入射用の光導波路Bとが、それぞれ複数本ずつ(図6では2本ずつ)用いられ、交互に接合している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0025】
なお、上記各実施の形態では、光入射用の光導波路Bを、光出射用の光導波路Aよりも長く設定したが、両光導波路A,Bを同じ長さに設定してもよい。
【0026】
上記各実施の形態のタッチパネル用光導波路の製造は、一般的な露光装置が有する露光範囲内で無理なく作製された通常の長さの光導波路A,Bを、上記各実施の形態の配置となるよう、枠状の基板上に接着して接合することより行われる。
【0027】
このように、通常の長さの光導波路A,Bを接合してなるタッチパネル用光導波路では、例えば、その一部の光導波路A,Bに欠陥が発生した場合、その欠陥を有する光導波路A,Bだけを交換すればよく、全体を廃棄する必要がないため、光導波路A,Bの形成材料のむだを減らすことができる。これに対し、一度に長い光導波路を作製すると、それに欠陥が発生した場合、その長い光導波路全体を廃棄することになるため、光導波路の形成材料のむだが多くなる。
【0028】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0029】
〔実施例1〕
大きさ15インチ(381.0mm)の長方形の画面を有するディスプレイに対応するタッチパネル用光導波路を作製した。その長辺側は、対向する両辺とも、光出射用の光導波路(長さ151mm)と光入射用の光導波路(長さ154.0mm)とを接合することにより形成した。短辺側は、対向する両辺とも、光出射用の光導波路(長さ113.0mm)と光入射用の光導波路(長さ116.0mm)とを接合することにより形成した。
【0030】
〔実施例2〕
大きさ15インチ(381.0mm)の長方形の画面を有するディスプレイに対応するタッチパネル用光導波路を作製した。その長辺側は、対向する両辺とも、同じ長さ(152.5mm)の光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とを接合することにより形成した。短辺側は、対向する両辺とも、同じ長さ(114.5mm)の光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とを接合することにより形成した。
【0031】
〔比較例〕
大きさ15インチ(381.0mm)の長方形の画面を有するディスプレイに対応するタッチパネル用光導波路を作製した。その長辺側の一方は、同じ長さ(152.5mm)の光出射用の光導波路同士を接合することにより形成し、それに対向する他方は、同じ長さ(152.5mm)の光入射用の光導波路同士を接合することにより形成した。短辺側の一方は、同じ長さ(114.5mm)の光出射用の光導波路同士を接合することにより形成し、それに対向する他方は、同じ長さ(114.5mm)の光入射用の光導波路同士を接合することにより形成した。
【0032】
〔検知評価〕
上記実施例1,2および比較例のタッチパネル用光導波路において、各光出射用の光導波路の端部に、波長850nmの光を出射する発光素子(オプトウェル社製、VCSEL)を接続し、各光入射用の光導波路の端部に、受光素子(TAOS社製、CMOSリニアセンサーアレイ)を接続した。そして、各タッチパネル用光導波路の枠内において、光を格子状に走らせ、その状態で、直径3mmの円柱体を画面上で移動させた。
【0033】
その結果、上記実施例1,2では、画面のどの位置でも上記円柱体を検知した。しかし、比較例では、画面の中央部で上記円柱体を検知できず、そこから3mm移動させた位置では検知できた。
【0034】
上記結果から、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とが交互に接合され、かつ、画面を挟んで、上記光出射用の光導波路と上記光入射用の光導波路とが対向しているタッチパネル用光導波路(実施例1,2)は、検知性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のタッチパネル用光導波路は、タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段(位置センサ)等に用いられる光導波路に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
A 光出射用の光導波路
B 光入射用の光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置されるタッチパネル用光導波路であって、上記画面の一端縁に沿って、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とが交互に接合され、かつ、上記画面を挟んで、上記光出射用の光導波路と上記光入射用の光導波路とが対向していることを特徴とするタッチパネル用光導波路。
【請求項2】
上記対向している光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とにおいて、光入射用の光導波路が、光出射用の光導波路よりも長く設定されている請求項1記載のタッチパネル用光導波路。
【請求項3】
上記対向している光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とにおいて、光出射用の光導波路と光入射用の光導波路とが、同じ長さに設定されている請求項1記載のタッチパネル用光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−68715(P2012−68715A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210783(P2010−210783)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】