説明

タンパク質翻訳後修飾を測定するための方法及び装置

本願発明は、反応を解析する方法に関する。前記方法は、少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物を含む溶液を提供する工程を含む。ドナー化合物は、化学的要素を含む化合物部分をアクセプター化合物に付与することが可能である。溶液は、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応に影響を及ぼす少なくとも一つの制御化合物を含む。その後溶液をインキュベートし、アクセプター化合物の一部をドナー化合物と反応させ、アクセプター生成物を形成する。未反応ドナー化合物を、アクセプター生成物から分離する。その後、X線蛍光を使用して、アクセプター生成物またはドナー化合物を計測する。さらなる解析方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、"Method and Apparatus for Measuring Protein Post- Translational Modification,"と題し、2007年9月28日に提出され、本願に参照して引用される、米国仮特許出願60/995997号の優先権を主張するものである。
【0002】
本願発明は、タンパク質機能の解析に関する。
【背景技術】
【0003】
翻訳後修飾は、タンパク質の一次構造が翻訳により完成した後に起こる、タンパク質に対する化学的変化である。翻訳後修飾は、リン酸化、脱リン酸化、タンパク質分解、タンパク質ライゲーション(ligation)、グリコシル化、硫化、メチル化、およびユビキチン化を含むが、それに限定されない。
【0004】
翻訳後修飾は、タンパク質の振る舞いに影響する。例えば、インスリンはプロインスリンの翻訳後修飾により形成され、プロインスリン自身は、プレプロインスリンの翻訳後修飾により形成される。タンパク質に対するリンの翻訳後付加または除去は、多くの生化学的経路およびシグナル伝達経路を制御する役割を果たしている。
【0005】
翻訳後修飾の解析は、しばしば労力のかかる入念なサンプル調製、ならびに放射性物質のような高価な、または有害な化学薬剤を必要とする。例えば、タンパク質キナーゼアッセイは、しばしばリン酸ドナーとして放射能標識されたATPのペプチドまたはタンパク質基質に対する使用を含む。リン酸化反応の後、基質は未反応放射性ATPから分離される。基質に取り込まれた放射性活性はいずれも、シンチレーションカウントによるなどして測定される。このアッセイには欠点がある。前記アッセイは、放射性廃棄物を生じる。放射性リンは短い半減期を有しているため、新鮮な薬剤がしばしば必要とされる。前記アッセイは、少なくともマイクロモル濃度のATPを必要とし、それはミリモルの生物学的濃度のATPよりも1000倍高い。前記アッセイにおける基質の濃度は、しばしばin vivoで予想される基質濃度よりもはるかに高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願60/995997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いまだに、翻訳後修飾を測定するためのより簡単な方法が必要とされている。本発明は、前記必要性を解決するために設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様は、反応を解析する方法を含む。前記方法は、少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物の溶液を提供する工程を含む。前記ドナー化合物は、前記アクセプター化合物に、化合物部分を提供することが可能である。前記溶液はさらに、ドナー化合物と前記アクセプター化合物との反応に有効な、少なくとも一つの制御化合物を含む。その後、アクセプター化合物がドナー化合物と反応し、アクセプター生成物を形成するように、前記溶液をインキュベートする。未反応ドナー化合物を、前記アクセプター生成物から分離する。その後、前記アクセプター生成物または前記ナー化合物を、X線蛍光を使用して測定する。
【0009】
本願発明の別の態様は、タンパク質機能の解析するための方法を含む。前記方法は、少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物の溶液を提供する工程を含む。前記ドナー化合物は、前記アクセプター化合物に、化合物部分を提供することが可能である。前記ドナー化合物は、エステル、無水物、イミド、ハロゲン化アシル、およびアミドから選択される官能基を含む。その後、アクセプター化合物がドナー化合物と反応し、アクセプター生成物を形成するように、前記溶液をインキュベートする。未反応ドナー化合物を、前記アクセプター生成物から分離する。その後、前記アクセプター生成物または前記ドナー化合物を、X線蛍光を使用して測定する。
【0010】
本願発明のさらに別の態様は、タンパク質機能の解析するための方法を含む。前記方法は、少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物の溶液を提供する工程を含む。その後、アクセプター化合物がドナー化合物と反応し、アクセプター生成物を形成するように、前記溶液をインキュベートする。未反応ドナー化合物を、前記アクセプター生成物から分離する。その後、前記アクセプター生成物または前記ドナー化合物を、X線蛍光を使用して測定する。追加の解析方法もまた使用し、前記アクセプター生成物または前記ドナー化合物のいずれかを測定する。
【0011】
さらなる本願の目的、有利な点および新規な特徴は、以下の記載において部分的に説明され、部分的に、以下の説明に基づいて当業者に明白となる、または本願発明の実践により学習されてよいであろう。本願の目的、有利な点は、添付した特許請求の範囲において特に示される、手段及び組み合わせにより理解される、および達成されるものであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の方法における工程を示すフローチャートを表す。
【図2】本願発明の別の方法における工程を示すフローチャートを表す。
【図3】実施例2に記載される、本願発明の方法を使用することにより取得されたデータを表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明の実施態様は、図1のフローチャートで示される、タンパク質における化合物の効果、およびタンパク質機能を測定する方法である。本願発明は、溶液を提供する工程(図1、ボックス1)、前記溶液をインキュベートする工程、および前記溶液を計測する工程を含む。前記溶液は、溶媒、アクセプター化合物、ドナー化合物、および制御化合物を含む。前記溶液を、ドナー化合物の一部がアクセプター化合物の一部と反応し、ドナー生成物とアクセプター生成物を形成するのに十分な時間インキュベートする(図1、ボックス2)。ドナー化合物要素は、単独で、または官能基の化合物部分の一部として、ドナーである可能性がある。未反応ドナー化合物をすべて、前記アクセプター生成物から分離する(図1、ボックス3)。その後、前記未反応ドナー化合物または前記アクセプター生成物を、X線蛍光を使用して測定する(図1、ボックス4)。
【0014】
本願発明の第二の実施態様は、タンパク質の活性を測定する方法である。前記第二の実施態様は、少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物を含む溶液を提供する工程を含む(図1、ボックス1)。前記ドナー化合物は、前記アクセプター化合物に、化合物要素を提供し、アクセプター生成物を形成することが可能である。前記提供される化合物要素は、単独で、または官能基の化合物部分の一部として提供される可能性がある。前記第二の実施態様において、前記ドナーは、エステル、無水物、アミドおよびそれらの組み合わせから選択される官能基を含む。その後、アクセプター化合物の少なくとも一部がドナー化合物と反応し、アクセプター生成物を形成するように、前記溶液をインキュベートする(図1、ボックス2)。その後、前記ドナー化合物と前記アクセプター生成物とを分離する(図1、ボックス3)。その後、前記ドナー化合物または前記アクセプター生成物を、X線蛍光を使用して測定する(図1、ボックス4)。本願発明の第二の実施態様の溶液は、好ましくは少なくとも一つの制御化合物もまた含む。
【0015】
本願発明の第三の実施態様は、図2に示されるように、タンパク質の活性を測定する方法である。前記第三の実施態様は、少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物を含む溶液を提供する工程を含む(図2、ボックス1)。前記ドナー化合物は、前記アクセプター化合物に、化合物要素を提供し、アクセプター生成物を形成することが可能である。前記提供される化合物要素は、単独で、または官能基の化合物部分の一部として提供される可能性がある。アクセプター化合物の一部がドナー化合物と反応し、アクセプター生成物を形成するように、前記溶液をインキュベートする(図1、ボックス2)。その後、未反応ドナー化合物を、前記アクセプター生成物から分離する(図2、ボックス3)。その後、前記ドナー化合物または前記アクセプター生成物を、X線蛍光を使用して測定する(図2、ボックス4)。X線蛍光を使用して測定される化合物はまた、第二の測定技術を使用して定量化される。
【0016】
前記溶液は、溶媒、アクセプター化合物、およびドナー化合物を含む。前記溶媒は、好ましくは、リン、硫黄、および塩素のリストから選択される少なくとも一つの要素を含まない。前記溶液は、より好ましくは水であり、最も好ましくは、緩衝化した水である。
【0017】
前記溶液を、反応が発生するためにインキュベートする。本願発明において、インキュベートは、いずれかの温度で、反応を進行させることを指す。
【0018】
多くの化合物は、特定の範囲にpHを維持するバッファー(例えば、pHバッファー)、または化合物の還元状態を維持するバッファー(例えば、還元バッファー)、またはイオン強度を維持するバッファー(例えば、等張バッファー)を必要とする。多くのバッファーは、化合物の測定に干渉するかもしれない要素を含む。前記バッファーは、好ましくは、4より大きい原子番号を有する、少なくとも一つの化合物要素が無いことが好ましく、ここで化合物要素は、ドナー化合物またはアクセプター分子に存在するものである。前記バッファーは、より好ましくは、8より大きい原子番号を有する、少なくとも一つの化合物要素が無いことが好ましく、ここで化合物要素は、ドナー化合物またはアクセプター生成物に存在するものである。前記バッファーは、好ましくは、以下の少なくとも一つの化合物または官能基がないことが好ましい:ジメチルスルホキシド、チオール、スルフェートアニオン、スルホネートアニオン、クロリドアニオン、ブロミドアニオン、フルオリドアニオン、ヨージドアニオン、ペルクロレートアニオン、ホスフェートアニオン、ホスホネートアニオン。前記バッファーは、好ましくは、以下の少なくとも一つの化合物または官能基を含む:アミン、イミン、硝酸塩アニオン、亜硝酸塩アニオン、アンモニウムカチオン、酢酸アニオン、カルボン酸アニオン、およびイミニウムカチオン;これらの化合物は、X線蛍光干渉を最小にする、適正な緩衝特性を提供する。
【0019】
前記溶液は、ジチオスレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)のような化合物を使用して、還元的にバッファー化(buffered)されていてよい。しかしながら、前記還元バッファー中において、基質は、いずれのリンまたは硫黄からも分離しているのが非常に好ましい。好ましい還元バッファーはリンまたは硫黄を含まない、あるいはThermo Fisher Scientific Inc. PO Box 117, Rockford, IL 61105 USAより購入可能な、固定TCEPジスルフィド還元ゲル(Immobilized TCEP Disulfide Reducing Gel)のような固形支持物である。
【0020】
前記ドナー化合物は、8より大きい原子番号を有する要素を含む。前記ドナー化合物は、アクセプター化合物と反応して、それ自身、またはより大きい化学基の一部として、アクセプター化合物に、8より大きい原子番号を有するこの化学要素を転移させ、アクセプター生成物を形成する。付与される(donated)要素は、好ましくは硫黄、リン、セレン、塩素、臭素、ヨウ素、少なくとも1個のこれらの化学要素を含む官能基、およびそれらの組み合わせのリストより選択される。ドナー化合物が反応して、8より大きい原子番号を有する化学要素を転移させた後、前記ドナー化合物を、ドナー生成物と呼ぶ。前記ドナー化合物は、好ましくは無水物、エステル、アミド、イミド、ハロゲン化アシル、およびそれらの組み合わせから選択される化学官能基を少なくとも一つ含む。官能基は、無水物またはリン酸、ホスホン酸、それらの硫黄アナログのような、炭素に基づかないもの、ならびに無水物とみなされる類似のもの;リン酸エステル、ホスホン酸エステルのようなエステル、ならびにエステルとみなされるそれらの硫黄アナログ;リン酸アミド、ホスホン酸アミドのようなアミド、ならびにアミドとみなされるそれらの硫黄アナログ;リン酸イミド、ホスホン酸イミドのようなイミド、ならびにイミドとみなされるそれらの硫黄アナログ;リン酸ハロゲン化物、ホスホン酸ハロゲン化物のようなアシルハロゲン化物、それらの硫黄アナログ、ならびにアシルハロゲン化物とみなされる類似のものを含む。ドナー化合物の例は、アデノシン三リン酸、イノシン三リン酸、グアノシン-5’-三リン酸、および3’-ホスホアデノシン-5’-三リン酸である。ドナー化合物は、好ましくは約100ミリモル(millimolar)より低い濃度を有する。
【0021】
前記アクセプター化合物は、前記ドナー化合物と反応して、それ自身、またはより大きい化学基の一部として、8より大きい原子番号を有するこの化学要素を前記ドナー化合物から受け取る。前記アクセプター化合物は、好ましくは、ドナー化合物により付与される要素と同一ではない、8より大きい原子番号を有する少なくとも一つの要素もまた含む;この場合、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応効率は、これら2つの要素より算出されてよい。例えば、アクセプター化合物が硫黄原子を含み、かつ付与される官能基がリン原子を含む場合、硫黄X線蛍光シグナルに対するリンX線蛍光シグナルの比率により、反応の完全性を、単一の測定技術で測定することができる。前記アクセプター化合物は、好ましくは、少なくとも一つの官能基R-NH2, RN(X)H, R-O-H, R-O-, R-S-H, R-S-を含み、前記式中、Rは炭素又は水素であり、Xはいずれかの化学的要素であり、R-O-はアルコキシドアニオンまたはアリールオキシドアニオンを指し、R-S"はアルキルまたはアリールチオレートアニオンを指す。アクセプター化合物の例は、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、アミノ酸を含むポリマー、アミノ酸を含むオリゴマー、ヌクレオチド、ヌクレオチドを含むポリマー、ヌクレオチドオリゴマー、および水である。アクセプター化合物は、好ましくは約100ミリモル(millimolar)より低い濃度を有する。
【0022】
ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応により、好ましくは少なくとも一つの共有結合が形成する、または破壊される。
【0023】
前記溶液は、好ましくは1個以上の制御化合物(controller chemical)を含む。前記制御化合物は、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応速度を加速してよい。前記制御化合物は、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応速度を減速してよい。前記制御化合物は、触媒の転換数(turnover number)を増大又は減少させてよい。制御化合物の例は、アデノシン二リン酸;フタレン-1-スルホニル-lH- ヘキサヒドロ-1,4-ジアゼピン;1-(5-イソキノリンスルホニル)-1H-ヘキサヒドロ-1,4- ジアゼピン;1-(5-イソキノリンスルホニル)-2-メチルピペラジン;1-(5-イソキノリンスルホニル)-ピペラジン;1,2-ジメトキシ-N- メチル(1,3)ベンゾジオキソロ(5,6-c) フェナントリジニウム クロリド;1-[N,O-ビス-(5- イソキノリンスルホニル)-N-メチル-L-チロシル]-4-フェニル-ピペラジン;2-(4- モルホリニル)-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-4-オン;2,3-ジヒドロ-N,N- ジメチル-2-オキソ-3-[(4,5,6,7-テトラヒドロ-lH-インドール-2-イル)メチレン]-1H-インドール- 5 -スルホンアミド;2,5-ジヒドロキシメチルケイ皮酸;2-シアノ-N-(2,5-ジブロモフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ブテンアミド;3-[[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン;4-(2,5- ジヒドロキシ-ベンジルアミノ)安息香酸アダマンタン-1-イル エステル;4-(3-クロロ- 4-フルオロアニリノ)-7-メトキシ- 6-(3-モルホリノ プロポキシ) キナゾリン;4,5,6,7-テトラブロモ-2-アザベンゾイミダゾール;4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6,7- ジメトキシキナゾリン;4-アミノ-5-(4-クロロフェニル)-7-(t- ブチル)ピラゾロ[3,4,d]ピリミジン;4-アミノ-5-(4-メチルフェニル)-7-(t- ブチル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン;4-アミノ-5-ヨード-7-(beta-D-リボフラノシル) ピロロ[2,3-d]-ピリミジン;4'-アミノ-6-ヒドロキシフラボン;安息香酸 4-アミノ-N-(2,5- ジヒドロキシベンジル)アダマンチル;安息香酸 4-アミノ-N-(2,5- ジヒドロキシベンジル)メチル;5,6-ジクロロ-1-b-D-リボフラノシル ベンゾイミダゾール;5,7-ジメトキシ-3-(4-ピリジニル)キノリン;6-アミノ-4- メチル-8-(β-D-リボフラノシル)4H,8H-ピロロ[4,3,2-de]ピリミド[4,5-c] ピリダジン;ビスインドリルマレイミドIX;N-(2'-グアニジノエチル)-5- イソキノリンスルホンアミド;N-(6-アミノヘキシル)-5-クロロ-1-ナフタレンスルホンアミド;N-[2-(メチルアミノ)エチル]-5-イソキノリンスルホンアミド;N-[2-(p-ブロモシンナミルアミノ)エチル]-5- イソキノリンスルホンアミド;N-ベンジル-3,4-ジヒドロキシ-ベンジリデンシアノアセトアミド;ピクロポドフィリン;クェルセチン;rac-2-メチル-1-オクタデシル-グリセロ-(3)-ホスホコリン;ラパマイシン;ロットレリン;スタウロスポリン;trans-3,3',4,5'-テトラヒドロキシスチルベン;4-[(1E)-2-(3,5- ジヒドロキシフェニル)エテニル]-1,2-ベンゼンジオール;trans-4-[(1R)-1-アミノエチル]-N-4-ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド;ウォルトマニン;金属;酵素インヒビター;タンパク質インヒビター;触媒;酵素;タンパク質;アミノ酸;ペプチド;ペプチドを含むポリマー;炭水化物;脂質;ヌクレオチド;ヌクレオチドを含むポリマー;反応性酸素種;および反応性窒素種である。前記溶液は、好ましくは少なくとも二つの制御化合物を含む。前記溶液は、好ましくは、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応速度を増大させる少なくとも一つの制御化合物、ならびにドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応速度を減少させる少なくとも一つの制御化合物を含む。好ましくは前記溶液は、少なくとも一つの酵素を含み、より好ましくは前記溶液は、この酵素の活性を上昇させる金属を含み、最も好ましくは前記溶液は、またこの酵素の活性を阻害する少なくとも一つの化合物を含む。
【0024】
ドナー化合物、アクセプター化合物、制御化合物、またはそれらの組み合わせは、表面に化学的に接着している、または他の方法で固定されていてよい。
【0025】
ドナー化合物、アクセプター化合物、または制御化合物は、細胞培養物、組織サンプル、組織培養物、生検サンプル、血液サンプルなどのような生物学的検体に由来してよい。
【0026】
ドナー化合物の一部がアクセプター化合物と反応するために十分な時間の間、前記溶液をインキュベートした後、ドナー化合物を、アクセプター化合物およびアクセプター生成物と分離する。溶液全体を、この分離にかけてよい。あるいは、前記溶液の一部をこの分離にかけてよい。前記溶液の一部を分離にかける場合、反応の動的解析を、種々の時間で発生する、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応量を比較することにより実行してよい。動的解析を実行する他の方法は、ドナー化合物、アクセプター化合物、およびいずれかの制御化合物の濃度を変えることを含む。これらの濃度は、一緒に、または独立に変えられてよい。
【0027】
前記分離を、ゲル濾過クロマトグラフィー、あるいはRoche Applied Science, PO Box 50414, Indianapolis, IN, 46250より購入可能なSephadex G-25を使用する、クイックスピンタンパク質カラム(Quick Spin Protein Colum)のようなサイズ排除クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィーを使用して便利には実行してよい。この分離は、96-ウェル、384-ウェル、または1536-ウェルプレートフォーマットのようなウェルプレートフォーマットを使用する多重化に適応する。Pierce Biotechnology Inc., PO Box 117, Rockford, Illinois, 61105より購入可能なZeba96-ウェルのような分離システムが特に便利である。Thermo Fisher Scientific, product No. 11210923, 450 Fortune Blvd, Milford, MA, 01757より購入可能なIEC CL40のような遠心分離機;またはMillipore, 290 Concord Road, Billerica, MA 01821より購入可能な、標準真空ポンプ(例えば、Millipore, Catalog No. WP61 115 60)に取り付けられた、Milliporeより購入可能なDirect Stackを有するマルチスクリーン真空連結菅(MultiScreen Vacuum manifold)のような真空装置のような真空連結菅を使用して、分離を実行してよい。分離の別の方法は、7000gで3時間、Centricon YM-3を使用して遠心するような、超遠心分離である。別の方法は、抽出、選択的沈殿、および免疫沈澱を含む。鍵となる分離の特徴は、アクセプター生成物と、未反応ドナー化合物を分離することである。ウェルプレートを使用することができるため、遠心分離器を使用する分離は特に簡便である。
【0028】
分離を容易にするために、ドナー化合物とアクセプター生成物は、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、分子量が異なる。この分子量の相違により、超遠心およびゲル濾過クロマトグラフィーによる簡便な分離が可能となるであろう。あるいは、ドナー化合物とアクセプター生成物は、好ましくは同じpH値で、異なるイオン電荷を有する。イオン状態のこの相違により、アニオン交換クロマトグラフィーを使用する簡便な分離が可能となる。あるいは、ドナー化合物とアクセプター生成物は、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも100異なる、水-オクタン分配係数(water-octanol partitioning coefficient)を有する。水-オクタン分配係数のこの相違により、抽出または多くのクロマトグラフィー法による簡便な分離が可能となる。前記分離は、好ましくは、アクセプター化合物およびアクセプター生成物からドナー化合物を分離する。
【0029】
ドナー化合物とアクセプター生成物を分離した後、ドナー化合物とアクセプター生成物のいずれかまたは両方をX線蛍光を使用して計測する。計測値を、X線蛍光分光計を使用して取得するのが好都合である。XRF分光計は、X線ビームでサンプルを照射し、サンプルからX線蛍光を検出し、X線蛍光を使用してサンプル中に存在する要素を計測し、これらの要素の量を測定することが可能な装置である。X線蛍光計測値を、マイクロフォーカスX線チューブ、リチウム泳動シリコン固相検出器、処理電子機器(processing electronics)、およびEDAX(91 McKee Drive Mahwah, NJ 07430、Ametek部門)より購入可能なオペレーティングソフトウェアを供給するベンダーを備えたEDAX Eagle XPLエネルギー分散X線蛍光分光計(EDAX Eagle XPL energy dispersive X-ray fluorescence spectrometer)を使用して取得してよい。X線蛍光計測値を、Rigaku Americas, 9009 New Trails Drive, The Woodlands, TX 77381より購入可能なZSX Primusを使用して取得してよい。X線蛍光装置は、好ましくは、以下のうち少なくとも一つを含む:モノキャピラリー集光光学(monocapillary focusing optic)、ポリキャピラリー集光光学(polycapillary focusing optic)、コリメータ、マイクロフォーカスX線チューブ、シンクロトロンX線源、線形加速X線源、ロジウムX線源、モリブデンX線チューブ、クロムX線チューブ、銀X線チューブ、パラジウムX線チューブ、単色X線源、多色X線源、偏向X線源、共焦点X線蛍光光度計焦点調節(confocal X-ray fluorescence spectrometer focusing arrangement)、PINダイオード検出器、半導体X線検出器、ゲルマニウムまたはドープゲルマニウムX線検出器、シリコンまたはドープシリコンX線検出器、波長分散X線蛍光光度計(wavelength dispersive X-ray fluorescence spectrometer)、エネルギー分散X線蛍光光度計、総反射X線蛍光光度計(total reflectance X-ray fluorescence spectrometer)など。好ましくは、X線励起源は、多色X線励起スペクトルを有するX線を放出し、より好ましくは、X線励起源は、少なくとも2つの最大値を有するスペクトルを有するX線を放出する。多色X線を有する励起は、解析されるサンプル中の1つより多い化学的要素を励起する、または解析される化学的検体における1つより多いスペクトルの特徴を励起する、効率を増大させる。
【0030】
計測されるドナー化合物またはアクセプター生成物のサンプルは、好ましくは、少なくとも一部の溶媒が除去される。好ましくは、少なくとも80%の溶媒が除去される;より好ましくは、実質的に全ての溶媒が除去される。蒸発は、溶媒を除去するために好都合な方法である。好ましくは、約22°Cより高い、上昇した温度、または約760 torrより低い減圧した気圧を使用して、溶媒を蒸発させる。Savant Speed Vac Plus SC 250DDAまたはThermo Savant SPD 1010 SpeedVac (登録商標)のような、真空遠心を使用して、溶媒を蒸発させるのが好都合である。
【0031】
ドナー化合物またはアクセプター生成物のサンプルは、好ましくは、X線励起ビームに匹敵するサイズの領域に濃縮される。計測される、約50%の量より多いサンプルを含む領域は、X線励起ビーム中の約50%より多いX線を含む領域の100倍以内である領域を有するはずである。好ましくは、約50%より多いサンプルを含む領域は、約0.005平方センチメートルより小さい領域を有する。サンプルを照射するようなX線励起ビームの領域が、サンプルの領域より有意に大きければ、X線光子が消費される。サンプルを照射するようなX線励起ビームの領域が、サンプルの領域より有意に小さければ、計測時間が不必要に長くなる、あるいはサンプルの一部分が測定されないで消費されるであろう。
【0032】
サンプルを含む溶媒を蒸発させる場合、アクセプター生成物またはドナー化合物の乾燥サンプルまたは部分乾燥サンプルを、好ましくは沈殿基質上に沈殿させる。沈殿基質は、好ましくは、硫黄、リン、又は塩素のうち少なくとも一つを実質的に含まない。沈殿基質に適する材料の例は、Porvair pic, Brampton House, 50 Bergen Way, King's Lynn, Norfolk PE30 2JG, U.K.より全て購入可能であるPorvair No.229302、Porvair No.229112、Porvair No. 229058、Porvair No. 229304、およびPorvair No.229301、ならびにアルミニウムホイル(例: Bio-Rad Laboratories, 1000 Alfred Nobel Drive, Hercules, CA 94547由来のMicroseal 'F' Foil)を含む。沈殿基質に使用してよい他の材料は、超薄ポリエステル表面保護テープ(Super-Thin Polyester Surface-Protection Tape)、化学耐性Surlyn表面保護テープ(Chemical-Resistant Surlyn Surface-Protection Tape)、磨耗耐性ポリウレタン表面保護テープ(Abrasion-Resistant Polyurethane Surface-Protection Tape)、シリコン接着性(Silicone Adhesive)またはアクリル酸接着性(Acrylic Adhesive)を有する熱耐性テープ(Heat-Resistant Kapton Tape )、紫外線耐性ポリエチレン表面保護テープ(UV-Resistant Polyethylene Surface-Protection Tape)、清浄放出ポリエチレン表面保護テープ(Clean-Release Polyethylene Surface-Protection Tape)、低静電性ポリイミドテープ(Low-Static Polyimide Tape)を含み、その全てはMcMaster-Carr, 6100 Fulton Industrial Blvd., Atlanta, GA 30336-2852より購入可能である。沈殿基質に使用してよい他の材料は、Lebow Company, 5960 Mandarin Ave., Goleta, CA 93117 U.S.A.より購入可能なポリプロピレンを含む。沈殿基質に好都合に使用される他の基質は、Moxtek, 452 West 1260 North, Orem, Utah 84057由来のAPI, AP3, ProLINE Series 10, ProLINE Series 20, DuraBeryllium基質を含む。沈殿基質に使用してよい他の材料は、SPEX CertiPrep Ltd, 2 Dalston Gardens, Stanmore, Middlesex HA7 IBQ, ENGLANDより購入可能なUltralene(登録商標)、mylar、ポリカーボネート、プロレン(prolene)およびカプトン(kapton)を含む。沈殿基質として使用してよい他の材料は、Chemplex Industries, Inc., 2820 SW 42nd Avenue, Palm City, FL 34990-5573 USAより購入可能なHostaphan(登録商標)、ポリエステル、およびEtnom(登録商標)を含む。好都合に使用される他の材料は、Excel Scientific, 18350 George Blvd, Victorville, CA, 92394より購入可能なゾーンフリーフィルムパート(Zone Free Film Part) ZAF-PE-50である。他の有用な基質は、ガラス及びシリコンである。このリストは完全なものではなく、他の材料を沈殿基質として使用してよい。沈殿基質はまた、1.9 KeVと3 KeVの間のエネルギーを有するX線蛍光放射ピークを有する要素が実質的に無いことが好ましく、それは、これらのピークは生化学的および生物学的適用に最も関心のあるシグナルに干渉する傾向があるためである。1.9 KeVと3 KeVの間のエネルギーを有するX線蛍光放射ピークを有する要素は、オスミウム、イットリウム、イリジウム、リン、ジルコニウム、プラチナ、金、ニオブ、水銀、タリウム、モリブデン、硫黄、鉛、ビスマス、テクネチウム、ルテニウム、塩素、ロジウム、パラジウム、アルゴン、銀、およびトリウムである。シリコンを含むX線検出器を使用するX線蛍光分光計を使用する場合、沈殿基質は、1.9 KeVと3 KeVの間のエネルギーを有するX線蛍光回避ピーク(X-Ray Fluorescence escape peak)(すなわちX線蛍光放射ピークマイナス1.74 KeV)を有する要素が実質的に無いことが好ましく、それは、これらの回避ピークは生化学的および生物学的適用に最も関心のあるシグナルに干渉する傾向があるためである。1.9 KeVと3 KeVの間のエネルギーを有するX線蛍光回避ピークは、カルシウム、テルル、ヨウ素、スカンジウム、キセノン、セシウム、バリウム、チタン、およびランタンである。「実質的に無い」とは、本明細書では4重量%より低いものとして定義される。沈殿基質は、サンプルの厚さを計測するために使用してよい付加的な化学的要素を有してよい。波長分散X線蛍光を使用する場合、沈殿基質の要素純度は重要ではない;この場合、フィルムは、サンプルを定量化するために使用される要素または要素群が実質的に無いべきである。沈殿基質を処理してタンパク質接着を増大してよい;処理の非包括的なリストは、沈殿基質を、酸素または窒素プラズマで、あるいはポリリジンで処理することを含む。
【0033】
X線蛍光を使用して計測する化合物を、1つ以上の第二の解析技術を使用して計測してよい。第二の解析技術の例は、X線蛍光を使用して計測してよい標準または内部標準の付加;放射性解析または付加放射性解析、紫外線または可視光分光計、赤外線分光計、表面プラズモン共鳴、核磁気共鳴分析法、テラヘルツ分光計、マイクロ波分光計、表面プラズモン共鳴分析法、マススペクトロメトリーのような、X線蛍光と異なる分光技術を含む。第二の解析技術の例は、Bio- Rad Laboratories, Inc., 2000 Alfred Nobel Dr., Hercules, CA 94547 USAより購入可能なQuick Start Bradford Protein Assayであり、製造者の指示書によって実行する。これらの技術のいずれかを、付加的な標準物、染料、トレーサーなどと一緒に、または別に使用してよい。
【実施例】
【0034】
実施例1
NAD+キナーゼが、アクセプター化合物として、および制御化合物として働く。アデノシン三リン酸が、ドナー化合物として働く。塩化マグネシウムおよび酢酸が、制御化合物として働く。リン酸化NADキナーゼが、アクセプター生成物として働く。アデノシン二リン酸が、ドナー生成物として働く。水中のNADキナーゼ[880マイクロモル(micromolar)]の溶液100マイクロリットルを、水中のアデノシン三リン酸 [5マイクロモル]、塩化マグネシウム[10マイクロモル]、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン[100マイクロモル、pH 7.5]の溶液200マイクロリットルと君合わせることにより溶液を調製する(図1、ボックス1)。反応させて10秒間インキュベートし、その後、水中の5%酢酸の溶液200マイクロリットルを添加した(図1、ボックス2)。Millipore Corporate Headquarters, 290 Concord Road, Billerica, MA 01821, USAから購入可能な、Microcon 3000分子量カットオフウルトラフィルター(molecular weight cut off (MWCO) ultrafilter)を使用して、アデノシン三リン酸およびアデノシン二リン酸から、アクセプター生成物を分離した。50ワットクロムアノードX線チューブ(50 watt chromium anode x-ray tube)およびシリコンドリフト検出器(silicon drift detector)を備えたX線蛍光分光計を使用して、NADPを計測した。硫黄X線蛍光シグナルに対するリンX線蛍光シグナルの比率は、NADに対して0.030501であり、リン酸化NADに対して0.264657であった。
【0035】
実施例2
一連のペプチドは、式:ポリスチレンビーズリンカー-システイン1-xxx1-xxx2-xxx3-xxx4-システイン2[前記式中、xxx1、xxx2、xxx3、およびxxx4は、独立に、ドナー化合物として働くアミノ酸{アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン}より選択される]を有する。「ポリスチレンビーズリンカー」は、Rapp Polymere GmbH, Ernst-Simon-Str. 9, D 72072 Tubingen, Germanyより購入可能なもののような、AM樹脂(AM resin)を指す。水は、アクセプター化合物として働く。トリプシンおよびK2PtCl4は、制御化合物として働く。式:ポリスチレンビーズリンカー-システイン1-xxx1-xxx2-xxx3-xxx4-CO2Hはドナー生成物として働く[前記式中、xxx1、xxx2、xxx3、およびxxx4は、独立に、ドナー化合物として働くアミノ酸{アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびアミノ酸なし}より選択される]。式:ポリスチレンビーズ:H2N-xxx1-xxx2-xxx3-xxx4-システインを有するペプチドはドナー生成物として働いた[前記式中、xxx1、xxx2、xxx3、およびxxx4は、独立に、アクセプター生成物として働くアミノ酸{アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびアミノ酸なし}より選択される]。樹脂結合ペプチド[懸濁物中]およびK2PtCl4[50 mM]の溶液250マイクロリットルを調製した;この溶液を4時間インキュベートし、その後500マイクロリットルのブタトリプシン[45マイクロモル]および炭酸アンモニウム[40マイクロモル]を添加した(図1、ボックス1)。前記溶液を16時間インキュベートし(図1、ボックス2)、その後樹脂ビーズを濾過し、水で2回洗浄し、未反応ドナー化合物をすべて、前記アクセプター生成物から分離した(図1、ボックス3)。ドナー生成物を、60ワットロジウムアノードX線チューブおよびシリコンドリフト検出器を備えたX線蛍光分光計を使用して測定した(図1、ボックス4)。ロジウムX線蛍光シグナルに対する硫黄X線蛍光シグナルの比率をプロットし、図3にそのプロットしたデータを示す。ドナー化合物の対照サンプルを、等式:(Rh) = 0.0706(S) + 106.03[前記式中、(Rh)はロジウムX線蛍光シグナル、(S)は硫黄X線蛍光シグナルである]と記述される。このデータを、図3で「対照」と標識する。上記反応条件下におかれたドナー化合物の多くは、より高い硫黄X線蛍光シグナルに対するロジウムX線蛍光シグナルの比率を有し、異なる効率でトリプシンがcysteinβ2を除去したことを示した。このデータを、図3で「プロテアーゼに被爆」と標識する。上記反応条件下におかれたドナー化合物のうち、硫黄X線蛍光シグナルがゼロであるものはなく、すべてのビーズから完全にはトリプシンがcysteinβ1を除去していないことを示した。
【0036】
本願発明の前記記載は、例示と記述のために提示され、完全である、あるいは開示された正確な様式に本願発明を制限することを意図するものではなく、そして明らかに多くの改変および変更が、上記の教唆より可能である。
【0037】
実施態様は、本願発明の本質を最もよく説明するために選択され、記述されたものであり、それによる実際の適用により、他の当業者は、意図される特定の使用に適するように、種々の実施態様において、および種々の改変を伴って本願発明を利用することができる。
【0038】
本願発明の範囲を、添付した特許請求の範囲により規定することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物、ならびに、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応に影響を及ぼすことが可能である少なくとも一つの制御化合物を含む溶液を提供する工程であって、ドナー化合物は、アクセプター化合物に化学的要素を含む化合物部分を付与することが可能である工程;
b.溶液をインキュベートし、アクセプター化合物の一部をドナー化合物と反応させ、アクセプター生成物を形成する工程;
c.未反応ドナー化合物の少なくとも一部を、アクセプター生成物から分離する工程;ならびに
d.X線蛍光を使用して、アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される化合物の少なくとも一つを計測する工程
を含む、反応を解析する方法。
【請求項2】
制御化合物が、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、触媒、炭水化物、金属、脂質、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、反応性酸素種、および反応性窒素種のリストより選択される少なくとも一つの種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドナー化合物が、8より大きい原子番号を有する化学的要素を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶液が、少なくとも一つの付加的な制御化合物をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アクセプター分子が、水;ならびにペプチド、アミノ酸、アルコール、アルコキシド、アリールオキシド、芳香族アルコール、アミン、チオール、チオレート、ヌクレオチドのリストから選択される少なくとも一つの官能基を含む化合物;ならびにそれらの組み合わせのリストから選択される化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ドナー化合物が、無水物、エステル、アミド、イミド、ハロゲン化アシル、およびそれらの組み合わせのリストから選択される官能基を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される少なくとも一つの化合物を、X線蛍光を使用して計測する前に、溶媒の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アクセプター化合物が、8より大きい原子番号を有しており、ドナー化合物からアクセプター化合物に付与されない少なくとも一つの化学的要素を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶液が、約100ミリモルより小さい濃度で存在するドナー化合物とアクセプター化合物のリストより選択される少なくとも一つの化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
a.少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物を含む溶液を提供する工程であって、ドナー化合物は、化学的要素を含む化合物部分をアクセプター化合物に付与することが可能であり、ドナー化合物は、エステル、無水物、イミド、ハロゲン化アシル、アミド、およびそれらの組み合わせから選択される官能基を含む、工程;
b.溶液をインキュベートし、アクセプター化合物の一部をドナー化合物と反応させ、アクセプター生成物を形成する工程;
c.未反応ドナー化合物の少なくとも一部を、アクセプター生成物から分離する工程;ならびに
d.アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される少なくとも一つの化合物を、X線蛍光を使用して計測する工程
を含む、タンパク質機能を解析する方法。
【請求項11】
溶液が、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応に影響を及ぼすことが可能である少なくとも一つの制御化合物をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応の間に共有結合を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶液が、少なくとも一つの付加的な制御化合物をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ドナー化合物が、8より大きい原子番号を有している化学的要素を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される少なくとも一つの化合物をX線蛍光を使用して計測する前に、溶媒の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a.少なくとも一つのアクセプター化合物と、少なくとも一つのドナー化合物を含む溶液を提供する工程であって、ドナー化合物は、化学的要素を含む化合物部分をアクセプター化合物に提供することが可能である工程;
b.溶液をインキュベートし、アクセプター化合物の一部をドナー化合物と反応させ、アクセプター生成物を形成する工程;
c.未反応ドナー化合物の少なくとも一部を、生成化合物から分離する工程;
d.アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される少なくとも一つの化合物を、X線蛍光を使用して計測する工程;ならびに
e.少なくとも一つの付加的な解析方法を使用して、アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される少なくとも一つの化合物を計測する工程
を含む、タンパク質機能を解析する方法。
【請求項17】
溶液が、ドナー化合物とアクセプター化合物との間の反応に影響を及ぼすことが可能である少なくとも一つの制御化合物をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶液が、少なくとも一つの付加的な制御化合物をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ドナー化合物が、8より大きい原子番号を有している化学的要素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アクセプター生成物およびドナー化合物のリストから選択される少なくとも一つの化合物をX線蛍光を使用して計測する前に、溶媒の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−539944(P2010−539944A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527207(P2010−527207)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/077971
【国際公開番号】WO2009/042932
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510041348)カルデラ・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】