説明

ターゲット、スパッタリング方法、プラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマ表示装置の製造方法

【課題】コストを低減すると共に、歩留まりを向上させる。
【解決手段】非滑面領域18b近傍で電離したアルゴンイオンは、ターゲット9表面の非滑面領域18bに衝突し、ターゲット9からスパッタ粒子を放出させて非滑面領域18bを削る。非滑面領域18bから放出され、ガラス基板13に向かずに中央部の滑面領域18aに向かい、滑面領域18aに衝突したスパッタ粒子は、滑面領域18aが、その表面粗さが、少なくともアンカー効果が無視できる所定値以下の値とされているために、滑面領域18aに再付着せずに、このまま落下する。したがって、滑面領域18aに堆積して突起部を形成して、ある程度の大きさに成長した後に落下したり、異常放電の原因となることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターゲット、スパッタリング方法、プラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマ表示装置の製造方法に係り、スパッタリング現象を利用して成膜を行う際の加速粒子が衝突する標的としてのターゲット、該ターゲットを用い、特に磁界によってターゲット近傍のプラズマ密度を上げてスパッタを行うプレーナマグネトロン方式のスパッタリング方法、該スパッタリング方法を用いて、例えば透明電極層を形成するプラズマディスプレイパネルの製造方法、及びプラズマ表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP(Plasma Display Panel)ともいう)を主要部として含むプラズマ表示装置は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶表示装置等に比べて、ちらつきがなく、表示コントラスト比が大きく、薄型大画面化が可能であり、応答速度が速い等の利点を有し、近年、大型平面テレビジョン受像機や、情報処理機器のディスプレイとして利用されている。
このプラズマ表示装置は、放電により発生した紫外線を蛍光体に照射することによって可視光を取り出して表示を行うディスプレイであり、動作方式により、電極が誘電体で被覆されて間接的に交流放電の状態で動作させるAC型のものと、電極が放電空間に露出されて直流放電の状態で動作させるDC型のものとに略大別され、特にAC型のものは、高輝度が得られ、比較的簡単な構造で上述したような大画面化が容易に実現できるので、広く用いられている。
また、AC型のプラズマディスプレイパネルとしては、電極構造の違いから面放電方式のものと、対向電極方式のものとが提案されている。
このようなAC型のプラズマ表示装置の主要部を構成するプラズマディスプレイパネルは、ガラス等の透明材料からなる前面基板と背面基板とが対向するように配置されて、両基板間にプラズマを発生させる放電ガス空間が形成されて概略構成されている。
【0003】
また、AC型のプラズマ表示装置のなかで、プラズマディスプレイパネルにおいて、図9に示すように、放電セル(以下、セルともいう)を形成する上述したような一対の基板のうちの一方の基板である前面基板102の内面に、水平方向に沿って平行に走査電極103と維持電極(共通電極)104とからなる行電極を配置すると共に、他方の基板である背面基板105の内面に、上記行電極と直交するように垂直方向に沿ってデータ電極(アドレス電極)106からなる列電極を配置した3電極面放電型の構成のプラズマディスプレイパネル107は、前面基板102において行われる面放電時に発生する高エネルギのイオンによる影響を抑えることができるので、長寿命化が図れるため、最も広く採用されている。
【0004】
この3電極面放電方式AC型のプラズマディスプレイパネル107は、背面基板105のデータ電極106と前面基板102の走査電極103との間で表示(発光)すべき放電セルを選択する書込放電を行い、次に、前面基板102の走査電極103と維持電極104との間で選択したセルの面放電による維持放電(表示放電)を行うように構成されている。走査電極103と維持電極104とは電極対115を構成している。
ここで、走査電極103は、酸化錫やITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明電極103aと抵抗値を小さくするためのAl,Cu、Ag等からなるバス電極103bとからなっている。また、維持電極104は、透明電極104aとバス電極104bとからなっている。
【0005】
また、前面基板102及び背面基板105の透明絶縁基板108,109としては、例えば、厚さ2〜5mmの低歪点ガラスや原料が安価なソーダライムガラス等が用いられる。
また、前面基板102の内面側には、走査電極103及び維持電極104を覆う低融点ガラスからなる透明誘電体層110が形成されている。
また、動作中に発生する放電から透明誘電体層110を保護するために、二次電子放出係数が大きく、耐スパッタ性に優れたMgO(酸化マグネシウム)等からなる保護膜111が形成される。
【0006】
また、背面基板105のデータ電極106は、白色誘電体層112によって覆われている。また、白色誘電体層112上には、隣接する放電セル間の電荷の移動を制限し、誤灯を防止するために、高さ100[μm]〜150[μm]、幅30[μm]〜150[μm]の隔壁113が形成されている。
隔壁113によって画成される放電セルの底部や側部には、赤色、緑色、及び青色の各蛍光体層114r,114g,114bが配置され、前面基板102の内面の上記各蛍光体層にそれぞれ対向する位置に赤色、緑色、及び青色の各カラーフィルタ層を配置するように構成して多色発光が可能とされている。
【0007】
この3電極面放電方式AC型のプラズマディスプレイパネル107の製造方法について説明する。
まず、図9に示すように、前面基板102を製造するために、前面ガラス基板108の内面に、スパッタリングによってITO等を成膜した後、フォトリソグラフィによってパターニングして、水平方向に沿って平行に透明電極103a,104aを形成する。
次に、抵抗値を小さくするためのバス電極103b,104bを水平方向に沿って透明電極103a,104aの下面側に形成する。すなわち、電極材料として銀を選択する場合は、銀粉体とガラスフリットと有機バインダとからなる銀ペーストを、スクリーン印刷等によってパターニングし、この後、銀ペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、バス電極パターンを前面ガラス基板108に固着させてバス電極106b,107bを形成する。
【0008】
こうして、透明電極103a,104a及びバス電極103b,104bとから走査電極103及び維持電極104が形成される。
次に、走査電極103及び維持電極104を被覆する透明誘電体層110を形成する。すなわち、ガラスフリットと有機バインダとからなるガラスペーストを、スクリーン印刷やテーブルコータ等によって形成し、この後、ガラスペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、透明誘電体層パターンを前面ガラス基板108に固着させて透明誘電体層110を形成する。
次に、透明誘電体層110の内面にMgO等を真空蒸着やスパッタリングによって成膜して、透明誘電体層110を放電から保護するための保護膜111を形成する。こうして、前面基板102が完成する。
【0009】
一方、図9に示すように、背面基板105を製造するために、背面ガラス基板109の上面に垂直方向に沿って平行にアドレス電極106を形成する。すなわち、電極材料として銀を選択する場合は、銀粉体とガラスフリットと有機バインダとからなる銀ペーストを、スクリーン印刷等によってパターニングし、この後、銀ペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、アドレス電極パターンを背面ガラス基板109に固着させてアドレス電極106を形成する。
次に、アドレス電極106を被覆する白色誘電体層112を形成する。すなわち、ガラスフリットと有機バインダとからなるガラスペーストを、スクリーン印刷やテーブルコータ等によって形成し、この後、ガラスペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、白色誘電体層パターンを背面ガラス基板109に固着させて白色誘電体層112を形成する。
【0010】
次に、白色誘電体層112上に、放電セルを画成するために、ストライプ状に隔壁113を形成する。すなわち、ガラスフリットと有機バインダとからなるガラスペーストを、白色誘電体層112上にリバースコート法やスリットコート法等によって、一様に塗布した後、レジストをパターニングし、サンドブラスト法等によってレジストの開口箇所を切削し、この後、ガラスペーストを焼成処理して、有機バインダの焼失とガラスフリットの軟化を行い、隔壁パターンを白色誘電体層112に固着させて隔壁113を形成する。
【0011】
次に、隔壁113,113間に蛍光体層114r,114g,114bを形成する。
次に、背面ガラス基板110の外周部に、シールフリットを塗布し、これを焼成して、背面基板105を完成させる。
次に、前面基板102と背面基板105とを100μm程度のギャップを隔てて互いに対向した状態で、電極対の延長方向(行方向)とアドレス電極106の延長方向(列方向)とが互いに直交するように、かつ、両基板102,105間に放電ガス空間が形成されるように、貼り合わせて配置し、その周縁部を、例えば、フリットガラスからなる封止材によって気密封着する。
【0012】
すなわち、背面基板105の周縁部にフリットガラスを塗布した後、前面基板102と背面基板105とを貼り合わせた状態で焼成処理を施し、フリットガラスを溶かして、前面基板102と背面基板105とを接合してパネル状とする。ここで、隔壁113によって放電セルが画成されている。
次に、パネル状の前面基板102及び背面基板105を加熱炉内に導入するとともに、通気管を介して、前面基板102と背面基板105との間に形成された放電空間と接続して、放電空間内の排気を行いながら、真空加熱を行い、放電ガス空間に、例えばキセノンを含む混合希ガスからなる放電ガスを所定の圧力で導入して充填した後、通気管を過熱によってチップオンし、開口端部を閉塞する。このようにして、放電ガス空間内に放電ガスが充填される。
次に、放電セル内で放電を発生させて、一定時間継続させることで、放電を安定化させる。
このようにして、放電ガス空間内に放電ガスが充填されて、プラズマディスプレイパネル107が完成する。
【0013】
上述した透明電極103a,104aを形成する工程及び透明誘電体層111を形成する工程では、プレーナ(平板)マグネトロン方式のスパッタリング装置を用いて、ITOやMgOの成膜を行う。
このスパッタリング装置は、真空チャンバ内に、陰極としての平板状のターゲットと、陽極としての基板とを互いに対向させて配置し、真空チャンバ内に導入されたアルゴンガスが、グロー放電によって電離して、アルゴンイオンと電子とに分離し、分離したアルゴンイオンがターゲット表面に衝突し、ターゲット表面から粒子がたたき出されて、基板上に堆積する現象を利用して成膜する装置であり、ターゲットの背面側(基板に対面する側と反対側の面)に永久磁石を固定配置して、ターゲット表面に電界に直交するように磁界を発生させ、ターゲット表面の直交電磁界によって、グロー放電によって発生した電子をアルゴンに繰り返し衝突させてアルゴンの電離を促進させ、プラズマ密度を上げて成膜速度を速めるように工夫がなされた装置である。
【0014】
しかしながら、永久磁石の配置状態等に対応した磁界の分布には偏りがあり、ターゲット表面に、磁界が比較的強い領域と、磁界が比較的弱い領域とが形成される。
図10に示すように、ターゲット201表面の永久磁石202による磁界が比較的強い領域は、アルゴンイオンの密度が比較的高く、スパッタリングの進行が比較的速く多量のスパッタ粒子が放出されるスパッタ領域203となる一方、磁界が比較的弱い領域では、アルゴンイオン205の密度が比較的低く、スパッタリングの進行が比較的遅い非スパッタ領域204となる。
【0015】
しかしながら、例えば、ターゲット201表面の中央部に磁界が比較的弱い領域が形成され、この領域の周囲に磁界が比較的強い領域が形成されているような場合には、スパッタリングの進行と共に、図11に示すように、永久磁石202による磁界が比較的強い領域が凹状のスパッタ領域203、磁界が比較的弱い領域が凸状の非スパッタ領域204となり、この非スパッタ領域204には、スパッタ粒子が再付着して堆積し突起部206を形成して、堆積物がターゲット201表面から剥がれて落下し、異物としてガラス基板上に付着して、パターン欠陥の原因となるという問題がある。
【0016】
また、非スパッタ領域204では、スパッタ粒子が再付着して堆積して突起部206を形成し、この突起部206が異常放電源となって、ターゲット割れを引き起こすという問題がある。
再付着したスパッタ粒子が堆積してターゲット表面から剥がれて落下することを防止するために、図12に示すように、ターゲット301の中央部の非スパッタ領域302の表面粗さを周縁部のスパッタ領域303に比べて粗くして、アンカー効果によって再付着したスパッタ粒子の落下を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−302762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
解決しようとする問題点は、上記従来技術では、異常放電の問題は解決されておらず、非スパッタ領域で、スパッタ粒子が再付着して堆積して突起部を形成し、異常放電源となって、ターゲット割れを引き起こし、製造途中でターゲットの交換が必要となり、コストが嵩むという点でる。
また、第2の問題点は、上記従来技術では、スパッタ粒子の再付着が防止されるわけではないために、堆積物がターゲット表面から剥がれて落下することを確実に防止することはできず、異物としてガラス基板上に付着すると、パターン欠損の原因となり、歩留まりを悪化させるという点である。
【0018】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、異常放電によってターゲット割れを引き起こすことなく、無用なターゲット交換をなくし、コストを低減することができるターゲット、スパッタリング方法、プラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマ表示装置の製造方法を提供することを第1の目的としている。
また、スパッタ粒子が再付着して形成された堆積物が落下し、異物としてガラス基板上に付着して、パターン欠損を引き起こすことなく、歩留まりを向上させることができるターゲット、スパッタリング方法、プラズマディスプレイパネルの製造方法及びプラズマ表示装置の製造方法を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、真空容器内に配置された陰極と陽極との間に、電圧を印加してプラズマを生成してスパッタリングを行う際に、上記陰極として用いられ、その放出されたスパッタ粒子が上記陽極として配置された基板上に堆積されるターゲットに係り、上記基板に対向する側の表面の少なくとも一部は研磨処理されて滑面領域とされ、上記滑面領域は、当該ターゲットが上記真空容器内に配置されて、プラズマが生成された際に、当該ターゲットの上記表面のうち、近傍のプラズマ密度が比較的低い領域を含むことを特徴としている。
【0020】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のターゲットに係り、上記陰極と上記陽極との間に、電圧を印加してプラズマを生成し、少なくとも上記プラズマの一部を上記陰極の近傍に閉じ込めるための磁界を生成してスパッタリングを行う際に、上記陰極として用いられ、上記滑面領域は、当該ターゲットが上記真空容器内に配置されて、プラズマが生成された際に、当該ターゲットの上記表面のうち、近傍の磁界の強さが比較的弱い領域を含むことを特徴としている。
【0021】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のターゲットに係り、上記滑面領域は、その表面粗さが、1.0μm以下とされていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項4記載の発明は、真空容器内に、陰極として配置されたターゲットと、陽極として配置された基板との間に、電圧を印加してプラズマを生成して、上記ターゲットをスパッタし、放出されたスパッタ粒子を上記基板上に堆積させるスパッタリング方法に係り、上記ターゲットの上記基板に対向する側の表面の少なくとも一部は研磨処理されて滑面領域とされ、上記滑面領域は、上記ターゲットを上記真空容器内に配置し、プラズマを生成した際に、上記ターゲットの上記表面のうち、近傍のプラズマ密度が比較的低い領域を含むことを特徴としている。
【0023】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載のスパッタリング方法に係り、上記陰極として配置された上記ターゲットと、上記陽極として配置された上記基板との間に、電圧を印加してプラズマを生成し、かつ、磁界生成手段によって、少なくとも上記プラズマの一部を上記ターゲットの近傍に閉じ込めるための磁界を生成して、上記ターゲットをスパッタし、放出されたスパッタ粒子を上記基板上に堆積させ、上記滑面領域は、上記ターゲットを上記真空容器内に配置し、プラズマを生成した際に、上記ターゲットの上記表面のうち、近傍の磁界の強さが比較的弱い領域を含むことを特徴としている。
【0024】
また、請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載のスパッタリング方法に係り、上記滑面領域は、その表面粗さが、1.0μm以下とされていることを特徴としている。
【0025】
また、請求項7記載の発明は、請求項4、5又は6記載のスパッタリング方法に係り、平板状の上記ターゲットと上記基板とが、上記真空容器内に互いに対向するように配置され、上記ターゲットの表面に垂直な方向に電界を生成し、上記磁界生成手段は、上記電界に直交する方向に静磁界を生成することを特徴としている。
【0026】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載のスパッタリング方法に係り、上記磁界生成手段は、上記ターゲットの上記基板に対向する側と反対側に配置された単一の永久磁石又は複数の永久磁石の組合せからなることを特徴としている。
【0027】
また、請求項9記載の発明は、請求項4乃至8のいずれか1に記載のスパッタリング方法に係り、不活性ガスを含むガスを電離させて上記プラズマを生成することを特徴としている。
【0028】
また、請求項10記載の発明は、プラズマディスプレイパネルを構成し、共に導電体層及び誘電体層を含む第1の基板と第2の基板とを、封着材層を介し間隙を隔てて互いに対向させた状態で配置し、上記第1の基板及び上記第2の基板を封着するプラズマディスプレイパネルの製造方法に係り、請求項4乃至9のいずれか1に記載のスパッタリング方法を用いて、上記第1の基板及び/又は上記第2の基板の上記導電体層及び上記誘電体層のうち少なくとも一部を形成することを特徴としている。
【0029】
また、請求項11記載の発明は、プラズマディスプレイパネルを製造する第1の工程と、上記プラズマディスプレイパネルを駆動する回路とともに上記プラズマディスプレイパネルを一つのモジュールとして製造する第2の工程と、画像信号のフォーマット変換を行い、上記モジュールに送信するインタフェースを上記モジュールに電気的に接続する第3の工程とを含むプラズマ表示装置の製造方法に係り、上記第1の工程では、請求項10記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法が実施されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
この発明のターゲット及び該ターゲットを用いたスパッタリング方法の構成によれば、ターゲットの表面のうち近傍のプラズマ密度が比較的低い領域を含む領域に研磨処理を施して滑面領域とすることによって、異常放電によってターゲット割れを引き起こすようなことを防止し、無用なターゲット交換をなくし、コストを低減することができる。
また、スパッタ粒子が再付着して形成された堆積物が落下し、異物としてガラス基板上に付着して、パターン欠損を引き起こすようなことを防止し、歩留まりを向上させることができる。
【0031】
また、この発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法の構成によれば、製造のためのコストを抑制しつつ、基板上に成膜された例えば透明電極層等の特性を向上させ、パネルの歩留りを向上させ、信頼性を向上させることができる。
また、この発明のプラズマ表示装置の製造方法の構成によれば、プラズマ表示装置をモジュール化することによって、部品交換の必要が生じた場合に、モジュール毎交換することによって、補修の簡素化及び迅速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ターゲットの表面のうち近傍のプラズマ密度が比較的低い領域を含む領域に研磨処理を施して滑面領域とすることによって、異常放電によってターゲット割れを引き起こすようなことを防止し、無用なターゲット交換をなくし、コストを低減するという第1の目的を実現した。
また、スパッタ粒子が再付着して形成された堆積物が落下し、異物としてガラス基板上に付着して、パターン欠損を引き起こすようなことを防止し、歩留まりを向上させるという第2の目的を実現した。
【実施例1】
【0033】
図1は、この発明の第1実施例であるターゲットが真空容器内に配置されたスパッタリング装置の概略構成を示す図、図2は、同ターゲットの断面図、図3は、同ターゲットの下面図、図4は、図2のA部を拡大して模式的に示す拡大断面図、また、図5は、同ターゲットを用いたスパッタリング方法を説明するための説明図である。
【0034】
この例のスパッタリング装置1は、プレーナマグネトロン方式の装置であり、図1に示すように、例えばアルゴン等の不活性ガスを導入するためのガス導入弁3、排気弁4及びリリース弁5が設けられた真空チャンバ6と、不活性ガスを供給するためのガスボンベを含むガス導入装置7と、真空ポンプを含む真空排気装置8と、真空チャンバ6内に互いに対向配置された、平板状のターゲット9をターゲット裏板11を介して支持するターゲットステージ12及び成膜を行う例えばガラス基板13を支持する基板ステージ14と、陰極としての平板状のターゲット9と陽極としての平板状の基板ステージ14との間に所定の直流電圧を印加するための直流電源15と、ターゲットステージ12の背面(プラズマに接触しない側の面)側に配置され、永久磁石を有してなる磁界生成部16とを備えてなっている。
【0035】
ここで、磁界生成部16を構成する永久磁石は、駆動手段(不図示)によって、平板状のターゲット9に対して二次元的に(例えば水平面内を)変位し、ターゲット9表面における磁場分布を変動させて、ターゲット9表面の磁界分布の偏りが緩和される。すなわち、直交電磁界によってプラズマが集中する領域をターゲット9に対して移動させて、ターゲット9の効率的な利用が図られる。
この場合でも、ターゲット9表面の磁界分布は、例えば、中央部に磁界が比較的弱い領域が形成され、この領域の周囲に磁界が比較的強い領域が形成される。
【0036】
この例のターゲット9は、図2乃至図4に示すように、その表面の中央部に形成され表面が比較的滑らかな略楕円形状の滑面領域18aと、滑面領域18aを囲む周縁部に形成され表面が比較的粗い非滑面領域18bとを有している。
この例では、滑面領域18aの表面粗さは、少なくともアンカー効果を無視できる程度の所定値以下の値とされ、例えば、0.51[μm]以上1.00[μm]未満に設定されている。
ここで、ターゲット9の滑面領域18aに、磁界が比較的弱い領域が対応し、非滑面領域18aに、磁界が比較的強い領域が対応するように、磁界生成部16を構成する永久磁石が配置される。
【0037】
すなわち、滑面領域18aは、永久磁石による磁界が比較的弱いために、アルゴンイオンの密度が比較的低く、スパッタ粒子の放出よりも、放出されたスパッタ粒子の再付着が起こりやすい(支配的な)非スパッタ領域となり、非滑面領域18bは、永久磁石による磁界が比較的強く、アルゴンイオンの密度が比較的高く、スパッタ粒子の再付着よりも、スパッタ粒子の放出が起こりやすく、表面削れの進行が支配的なスパッタ領域となる。
このターゲット9は、ガラス基板13上に例えば電極層を形成(成膜)するために用いられ、ITO(Indium Tin Oxide)焼結体等からなっている。
ターゲット9をは、共に平均粒径が所定値以下の酸化インジウム粉体及び酸化錫粉体からなる混合粉体を、例えばプレス成型によって平板状に成形し、所定の温度で焼結処理を行い、さらに、砥石を用いて、かつ、段階的に砥石の番手を細かくして、研磨処理を行って、所定の表面粗さの滑面領域18aを形成して、製造される。
【0038】
次に、図1及び図5を参照して、この例のスパッタリング装置1を用いたスパッタリング方法(ガラス基板13上への成膜方法)について説明する。
真空チャンバ6内には、図1に示すように、予め滑面処理されて表面に滑面領域18aが形成されたターゲット9が、ターゲット裏板11を介してターゲットステージ12によって支持され、ガラス基板13が、基板ステージ14によって支持されて、互いに対向するように配置される。
この例では、磁界生成部16を構成する永久磁石は、ターゲット9の滑面領域18aに、磁界が比較的弱い領域が対応し、非滑面領域18bに、磁界が比較的強い領域するように、配置される。ターゲット9表面には、永久磁石によって磁界が生成される。
【0039】
真空チャンバ6内がグロー放電がなされる所定の真空度とされ、直流電源15によって陰極としてのターゲット9と陽極としての平板状の基板ステージ13との間に所定の直流電圧が印加されると、真空チャンバ6内に導入されたアルゴンガスが、グロー放電によって電離して、アルゴンイオンと電子とに分離し、アルゴンイオンがターゲット9表面に衝突し、ターゲット9表面を削るスパッタリングが開始され、ガラス基板13上にスパッタ粒子が堆積する。
【0040】
ここで、ターゲット9の背面側に配置された永久磁石によって、電界に直交するように磁界が発生しており、このターゲット9表面の直交電磁界によって、グロー放電によって発生した電子をアルゴンに繰り返し衝突させてアルゴンの電離を促進させ、プラズマ密度が高められる。
ターゲット9表面の中央部の滑面領域18aは、永久磁石による磁界が比較的弱いために、アルゴンイオンの密度が比較的低く、スパッタ粒子の放出よりも、放出されたスパッタ粒子の再付着が起こりやすい。また、ターゲット9表面の周縁部の非滑面領域18bは、永久磁石による磁界が比較的強く、アルゴンイオンの密度が比較的高く、スパッタ粒子の再付着よりも、スパッタ粒子の放出が起こりやすい。
【0041】
図5に示すように、非滑面領域18b近傍で電離したアルゴンイオン19は、ターゲット9表面の非滑面領域18bに衝突し、ターゲット9からスパッタ粒子21を放出させて非滑面領域18bを削る。
非滑面領域18bから放出され、ガラス基板13に向かずに中央部の滑面領域18aに向かい、滑面領域18aに衝突したスパッタ粒子21は、滑面領域18aは、その表面粗さが、少なくともアンカー効果が無視できる所定値以下の値とされているために、滑面領域18aに再付着せずに、このまま落下する。
したがって、滑面領域18aに堆積して突起部を形成して、ある程度の大きさに成長した後に落下したり、異常放電の原因となることもない。
【0042】
このように、この例の構成によれば、ターゲット9の表面の滑面領域18aは、研磨処理が施され、その表面粗さは、少なくともアンカー効果が無視できる所定値以下の値とされ、滑面領域18aに再付着しようとするスパッタ粒子21は、スパッタ粒子21のターゲット9の表面に対する接触面積が低減されていてアンカー効果が弱められているので、滑面領域18aに、磁界が比較的弱い領域が対応し、非滑面領域18aに、磁界が比較的強い領域が対応するように、磁界生成部16を構成する永久磁石が配置されることによって、非滑面領域18bから放出され、中央部の滑面領域18aに向かい、滑面領域18aに再付着しようとするスパッタ粒子21の滑面領域18aへの再付着を防止し、スパッタ粒子21の堆積による突起部の形成を抑制し、異常放電によってターゲット割れを引き起こすようなことを防止し、製造途中での新品のターゲットへの予定外の交換の必要によって生じる段取りロスやターゲットの材料費を低減し、製造に要するコストを低減することができる。
また、スパッタ粒子が再付着して形成された堆積物が落下し、異物としてガラス基板上に付着して、パターン欠陥を引き起こすようなことを防止し、歩留まりを向上させることができる。
【実施例2】
【0043】
図6は、この発明の第2実施例に係るプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す斜視図、また、図7は、同プラズマディスプレイパネルの製造方法を説明するための処理手順図である。
この例のプラズマディスプレイパネルの製造方法では、透明電極層(及び保護膜)の形成)のために、実施例1で述べたスパッタリング装置1を用いる。
【0044】
まず、図6に示すように、前面基板31を製造するために、前面ガラス基板32の内面に水平方向Hに沿って平行に透明電極33a,34aを形成する(ステップSA11(図7))。
ここで、透明電極33a,34aは、ITOや酸化錫や等からなっている。すなわち、ターゲット9の材料として、ITOや酸化錫を用い、スパッタリング装置1によって、スパッタリングを実施して成膜した後、フォトリソグラフィによってパターニングして、透明電極33a,34aを形成する。
【0045】
次に、抵抗値を小さくするためのバス電極(トレース電極)33b,34bを水平方向Hに沿って透明電極33a,34aの下面側に形成する(ステップSA12)。ここで、バス電極33b,34bは、Al,Cu、Ag等からなっている。こうして、透明電極33a,34a及びバス電極33b,34bとから走査電極33及び維持電極(共通電極)34が形成される。
次に、走査電極33及び維持電極34を被覆する透明誘電体層35を形成する(ステップSA13)。ここで、透明誘電体層35は、例えばPbO(酸化鉛)等の低融点ガラスからなっている。
【0046】
次に、ブラックマスク(不図示)を形成する(ステップSA14)。
次に、透明誘電体層35を放電から保護するための保護膜36を形成する(ステップSA15)。ここで、保護膜36は、MgO(酸化マグネシウム)等からなっている。すなわち、真空蒸着によって例えばMgO膜を形成するか、又はターゲット9として、MgO等を用い、スパッタリング装置1によって、スパッタリングを実施して、透明誘電体層35の内面にMgO等を成膜して保護膜36を形成する。こうして、前面基板31が完成する。
【0047】
一方、図6に示すように、背面基板38を製造するために、背面ガラス基板39の上面に垂直方向Vに沿って平行にアドレス電極(データ電極)41を形成する(ステップSB11(図7))。ここで、アドレス電極41は、Al(アルミニウム),Cu(銅)、Ag(銀)等からなっている。
次に、アドレス電極41を被覆する白色誘電体層42を形成する(ステップSB12)。次に、白色誘電体層42上に、放電セルを画成するために、ストライプ状に隔壁43を形成する(ステップSB13)。隔壁43は、例えば、光硬化ペーストを硬化させて所定の凹凸パターンを形成した後、焼成処理を施して作成される。
【0048】
次に、隔壁43,43間に蛍光体層44を形成する(ステップSB14)。蛍光体層44は、放電ガスの放電によって発生する紫外線を可視光に変換する赤色蛍光体層、緑色蛍光体層、及び青色蛍光体層に塗り分けられてなっている。こうして、背面基板38が完成する。
次に、スクリーン印刷法等によって、背面基板38の背面ガラス基板39の表示面の周縁部に、ガラスフリットを含むガラスペーストを塗布する(ステップSB15)。
【0049】
次に、背面基板38を所定の温度で熱処理して、蛍光体層44の焼成と同時にガラスぺーストの予備焼成を行って、シールフリット層を形成する。
次に、前面基板31と背面基板38とを100μm程度のギャップを隔てて互いに対向した状態で固定して、両基板31,38間に放電ガス空間45が形成されるように組み立てる(ステップSC16)。
【0050】
次に、封着工程を実施する。すなわち、両基板31,38の周縁部を、シールフリット層によって気密封着する(ステップSC17(図9))。
次に、ベーキング処理を行いながら放電空間45を真空に排気し、放電空間45内に放電ガスの導入を開始する(ステップSC18)。放電ガスとしては、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、キセノンガス(Xe)等の不活性ガスが、単独で又は混合されて用いられる。
放電ガスの充填が終了した後、通気管が過熱によってチップオフされ、開口端部が閉塞される。この後、エージングを行う(ステップSC19)。
このようにして、放電空間45内に放電ガスが充填されて、図6に示すようなプラズマディスプレイパネル46が完成する。
【0051】
このように、この例の構成によれば、実施例1で述べたスパッタリング装置1を用いて、透明電極層の形成及び保護膜の形成を行うので、製造のためのコストを抑制しつつ、例えば、透明電極層や保護膜の特性を向上させ、パネルの歩留りを向上させ、信頼性を向上させることができる。
【実施例3】
【0052】
図8は、この発明の第3実施例であるプラズマ表示装置の製造方法によって製造されたプラズマ表示装置の構成を示すブロック図である。
この例のプラズマ表示装置61は、図8に示すように、モジュール構造を有するものとして設計されており、具合的には、アナログインタフェース(以下、IFという)62とPDPモジュール63とから構成されている。
【0053】
アナログIF62は、同図に示すように、クロマ・デコーダを有するY/C分離回路64と、A/D変換回路65と、PLL回路を有する同期信号制御回路66と、画像フォーマット変換回路67と、逆γ(ガンマ)変換回路68と、システムコントロール回路69と、PLE制御回路71とから構成されている。
概略的には、アナログIF62は、受信したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換した後、このデジタル映像信号をPDPモジュール63に供給する。例えば、テレビチューナから発信されたアナログ映像信号は、Y/C分離回路64において、RGBの各色の輝度信号に分解された後、A/D変換回路65において、デジタル映像信号に変換される。
【0054】
この後、PDPモジュール63の画素構成と映像信号の画素構成とが異なる場合には、画像フォーマット変換回路67において、必要な画像フォーマットの変換が行われる。PDPの入力信号に対する表示輝度の特性は線形的に比例するが、通常の映像信号は、CRTの特性に合わせて、予め補正されている(γ変換されている)。
このため、A/D変換回路65において、映像信号のA/D変換を行った後、逆γ変換回路68において、映像信号に対して逆γ変換を施し、線形特性に復元されたデジタル映像信号を生成する。このデジタル映像信号は、RGB映像信号としてPDPモジュール63に出力される。
【0055】
アナログ映像信号には、A/D変換用のサンプリングクロック及びデータクロック信号が含まれていないため、同期信号制御回路66に内蔵されているPLL回路がアナログ映像信号と同時に供給される水平同期信号を基準として、サンプリングクロック及びデータクロック信号を生成し、PDPモジュール63に出力する。
アナログIF62のPLE制御回路71は輝度制御を行う。具体的には、平均輝度レベルが所定値以下である場合には、表示輝度を上昇させ、平均輝度レベルが所定値を超える場合には、表示輝度を低下させる。
【0056】
システムコントロール回路69は、各種制御信号をPDPモジュール63に出力する。PDPモジュール63は、さらに、デジタル信号処理・制御回路72と、パネル部73と、D/Dコンバータを内蔵するモジュール内電源回路74とから構成されている。
デジタル信号処理・制御回路72は、入力IF信号処理回路75と、フレームメモリ76と、メモリ制御回路77と、ドライバ制御回路78とから構成されている。
例えば、入力IF信号処理回路75に入力された映像信号の平均輝度レベルは、入力IF信号処理回路75内の入力信号平均輝度レベル演算回路(不図示)によって計算され、例えば、5ビットデータとして出力される。また、PLE制御回路71は、平均輝度レベルに応じてPLE制御データを設定し、入力IF信号処理回路75内の輝度レベル制御回路(不図示)に入力する。
【0057】
パネル部73は、PDP46と、走査電極を駆動する走査ドライバ79と、データ電極を駆動するデータドライバ81と、PDP46及び走査ドライバ79にパルス電圧を供給する高圧パルス回路82と、高圧パルス回路82からの余剰電力を回収する電力回収回路83とから構成されている。
PDP46は、例えば1365個×768個に配列された画素を有するものとして構成されている。PDP46では、走査ドライバ79が走査電極を制御し、データドライバ81がデータ電極を制御することにより、これらの画素のうちの所定の画素の点灯又は非点灯が制御され、所望の表示が行われる。
なお、ロジック用電源がデジタル信号処理・制御回路72及びパネル部73にロジック用電源を供給している。さらに、モジュール内電源回路74は、表示電源から直流電力を供給され、この直流電力の電圧を所定の電圧に変換した後、パネル部73に供給している。
【0058】
次に、図8を参照して、この例のプラズマ表示装置61の製造方法について概略的に説明する。
まず、PDP46と、走査ドライバ79と、データドライバ81と、高圧パルス回路82と、電力回収回路83とを一基板上に配置し、パネル部73を形成する。さらに、パネル部73とは別個にデジタル信号処理・制御回路72を形成する。
このようにして形成されたパネル部73及びデジタル信号処理・制御回路72を一つのモジュールとして組み立て、PDPモジュール63を形成する。さらに、PDPモジュール63とは別個にアナログIF62を形成する。
このように、PDPモジュール63とは別個にアナログIF62を形成した後、双方を電気的に接続することによって、プラズマ表示装置61が完成する。
【0059】
このように、プラズマ表示装置61をモジュール化することによって、プラズマ表示装置61を構成する他の構成部品とは別個に独立にプラズマ表示装置61を製造することが可能となり、例えば、プラズマ表示装置61が故障した場合には、PDPモジュール63毎交換することによって、補修の簡素化及び迅速化を図ることができる。
【0060】
この例の構成によれば、プラズマ表示装置をモジュール化することによって、例えば、故障時にPDPモジュール毎交換して、補修の簡素化及び迅速化を図ることができる。
【0061】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、上述した実施例では、非スパッタ領域が略楕円形状の場合について述べたが、もちろん、非スパッタ領域の形状は、磁界分布に応じて変化し、非スパッタ領域は、中央部とは限らず周縁部に配置されていても良い。
さらに、非スパッタ領域は、ターゲット表面に分散配置されていても良い。すなわち、磁界分布によって、非スパッタ領域がターゲット表面の複数箇所に形成される場合には、非スパッタ領域としての全ての滑面領域の表面粗さを、少なくともアンカー効果が無視できる程度の所定値以下の値とする。
また、滑面領域18aの表面粗さは、0.50[μm]以下としても良い。
【0062】
また、永久磁石を、ターゲットの利用効率を高めるために駆動させる場合にも、静止させる場合にも適用できる。
また、磁界を形成するために例えば柱状の一対の永久磁石を用いてもよいし、複数対でも良いし、単一の永久磁石を配置しても良い。永久磁石の組合せに限らず、例えば、略櫛状(例えば略E字状)としても良し、二重の同心円状に配置しても良い。また、永久磁石による静磁界に代えて、又はこれに加えて、定常電流による磁界を用いるようにしても良い。
また、滑面領域は、非スパッタ領域に対応する領域に限らず、スパッタ領域に及んでも良いし、ターゲットの表面全面を滑面領域としても良い。
なお、研磨処理された非スパッタ領域は、高密度プラズマを生成するために磁界を用いる場合の磁界の強さが比較的弱い領域に限らず、一般に、ターゲット表面のうち近傍のプラズマ密度が低くなるような領域とするようにしても良い。
【0063】
また、基板上に化合物の成膜を行う場合に、共スパッタリング法によっても良いし、モザイク状のターゲットを用いても良いし、混晶ターゲットを用いても良い。また、例えば、ガラス基板上にMgOを成膜する場合に、雰囲気中に酸素ガスを混合して、Mgをスパッタするようにしても良い。
また、保護膜として、酸化マグネシウム膜を形成する場合のほか、酸化バリウム等、他のアルカリ土類金属の酸化物を用いる場合に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
プラズマディスプレイパネルの電極層のほか、例えば液晶ディスプレイパネル等他のフラットディスプレイパネルの電極層等を形成する場合に適用できる。また、フラットディスプレイパネルの電極層等のほか、一般に基板上に電極層や配線層等を形成する場合に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の第1実施例であるターゲットが真空容器内に配置されたスパッタリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】同ターゲットの断面図である。
【図3】同ターゲットの下面図である。
【図4】図2のA部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図5】同ターゲットを用いたスパッタリング方法を説明するための説明図である。
【図6】この発明の第2実施例に係るプラズマディスプレイパネルの概略構成を示す斜視図である。
【図7】同プラズマディスプレイパネルの製造方法を説明するための処理手順図である。
【図8】この発明の第3実施例であるプラズマ表示装置の製造方法によって製造されたプラズマ表示装置の構成を示すブロック図である。
【図9】従来技術を説明するための説明図である。
【図10】従来技術を説明するための説明図である。
【図11】従来技術を説明するための説明図である。
【図12】従来技術を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 スパッタリング装置
6 真空チャンバ(真空容器)
9 ターゲット
12 ターゲットステージ
13 ガラス基板(基板)
14 基板ステージ
15 直流電源
16 磁界生成部(磁界生成手段)
18a 滑面領域
18b 非滑面領域
31 前面基板
33 走査電極
33a 透明電極
33b バス電極
34 維持電極
34a 透明電極
34b バス電極
35 透明誘電体層
36 保護膜
38 背面基板
41 アドレス電極
46 プラズマディスプレイパネル
61 プラズマ表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に配置された陰極と陽極との間に、電圧を印加してプラズマを生成してスパッタリングを行う際に、前記陰極として用いられ、その放出されたスパッタ粒子が前記陽極として配置された基板上に堆積されるターゲットであって、
前記基板に対向する側の表面の少なくとも一部は研磨処理されて滑面領域とされ、前記滑面領域は、当該ターゲットが前記真空容器内に配置されて、プラズマが生成された際に、当該ターゲットの前記表面のうち、近傍のプラズマ密度が比較的低い領域を含むことを特徴とするターゲット。
【請求項2】
前記陰極と前記陽極との間に、電圧を印加してプラズマを生成し、少なくとも前記プラズマの一部を前記陰極の近傍に閉じ込めるための磁界を生成してスパッタリングを行う際に、前記陰極として用いられ、
前記滑面領域は、当該ターゲットが前記真空容器内に配置されて、プラズマが生成された際に、当該ターゲットの前記表面のうち、近傍の磁界の強さが比較的弱い領域を含むことを特徴とする請求項1記載のターゲット。
【請求項3】
前記滑面領域は、その表面粗さが、1.0μm以下とされていることを特徴とする請求項1又は2記載のターゲット。
【請求項4】
真空容器内に、陰極として配置されたターゲットと、陽極として配置された基板との間に、電圧を印加してプラズマを生成して、前記ターゲットをスパッタし、放出されたスパッタ粒子を前記基板上に堆積させるスパッタリング方法であって、
前記ターゲットの前記基板に対向する側の表面の少なくとも一部は研磨処理されて滑面領域とされ、前記滑面領域は、前記ターゲットを前記真空容器内に配置し、プラズマを生成した際に、前記ターゲットの前記表面のうち、近傍のプラズマ密度が比較的低い領域を含むことを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項5】
前記陰極として配置された前記ターゲットと、前記陽極として配置された前記基板との間に、電圧を印加してプラズマを生成し、かつ、磁界生成手段によって、少なくとも前記プラズマの一部を前記ターゲットの近傍に閉じ込めるための磁界を生成して、前記ターゲットをスパッタし、放出されたスパッタ粒子を前記基板上に堆積させ、
前記滑面領域は、前記ターゲットを前記真空容器内に配置し、プラズマを生成した際に、前記ターゲットの前記表面のうち、近傍の磁界の強さが比較的弱い領域を含むことを特徴とする請求項4記載のスパッタリング方法。
【請求項6】
前記滑面領域は、その表面粗さが、1.0μm以下とされていることを特徴とする請求項4又は5記載のスパッタリング方法。
【請求項7】
平板状の前記ターゲットと前記基板とが、前記真空容器内に互いに対向するように配置され、前記ターゲットの表面に垂直な方向に電界を生成し、前記磁界生成手段は、前記電界に直交する方向に静磁界を生成することを特徴とする請求項4、5又は6記載のスパッタリング方法。
【請求項8】
前記磁界生成手段は、前記ターゲットの前記基板に対向する側と反対側に配置された単一の永久磁石又は複数の永久磁石の組合せからなることを特徴とする請求項7記載のスパッタリング方法。
【請求項9】
不活性ガスを含むガスを電離させて前記プラズマを生成することを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1に記載のスパッタリング方法。
【請求項10】
プラズマディスプレイパネルを構成し、共に導電体層及び誘電体層を含む第1の基板と第2の基板とを、封着材層を介し間隙を隔てて互いに対向させた状態で配置し、前記第1の基板及び前記第2の基板を封着するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
請求項4乃至9のいずれか1に記載のスパッタリング方法を用いて、前記第1の基板及び/又は前記第2の基板の前記導電体層及び前記誘電体層のうち少なくとも一部を形成することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項11】
プラズマディスプレイパネルを製造する第1の工程と、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する回路とともに前記プラズマディスプレイパネルを一つのモジュールとして製造する第2の工程と、画像信号のフォーマット変換を行い、前記モジュールに送信するインタフェースを前記モジュールに電気的に接続する第3の工程とを含むプラズマ表示装置の製造方法であって、
前記第1の工程では、請求項10記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法が実施されることを特徴とするプラズマ表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−63374(P2006−63374A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246021(P2004−246021)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】