説明

タービンロータ、タービン軸およびホイール

【課題】タービンロータの小型化と耐久性とを両立しうる新規な接合構造を提供する。
【解決手段】タービン軸2とタービンホイール3との接合部30を、リング溝10内に配置する。従来例のように接合部をリング溝よりも軸端側に配置した構造に比べタービン軸2の端部の寸法を短縮でき、且つ従来例のようにリング溝に隣接する壁部の剛性に依存しないので、タービンロータ1の耐久性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過給機(ターボチャージャ)に使用されるタービンロータ、タービン軸およびホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機のタービンロータは、タービン軸の一端にタービンホイールを固定してなる。この固定部分は、従来、図3に示されるように、シールリング109を配置するためのリング溝110よりも軸端側に、タービン軸102とタービンホイール103との接合部130を有するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−148340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターボチャージャを小型化するためには、タービン軸とホイールとの接合部130をできるだけリング溝110に近接させることが望ましい。しかしながら、接合部130とリング溝110とを近接させるほど、両者の境界をなす壁部140が薄くなるため、この壁部140がその基部140aにおいて折損することによりタービン軸102とタービンホイール103とが分離する態様での破損のおそれが大きくなる。すなわち従来の構造では、タービンロータの小型化とその耐久性とは、トレードオフの関係にある。
【0005】
そこで本発明の目的は、タービンロータの小型化と耐久性とを両立しうる新規な接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、タービン軸とホイールとを接合してなり、外周面に周溝を有するタービンロータであって、前記タービン軸と前記ホイールとの接合部が、前記周溝の底部に配置されていることを特徴とするタービンロータである。
【0007】
第1の本発明では、タービン軸とホイールとの接合部が周溝内に配置されているので、上記従来例のように接合部を周溝(リング溝)よりも軸端側に配置した構造に比べタービン軸の端部の寸法を短縮でき、且つ上記従来例のように壁部の剛性に依存しないのでタービンロータの耐久性を高めることができる。
【0008】
本発明の目的は、軸側接合面が周溝の底面の一部をなす軸側部分底面に隣接しているタービン軸、およびホイール側接合面が周溝の底面の一部をなすホイール側部分底面に隣接しているホイールによって達成することができる。
【0009】
本発明における周溝は、他の用途を有するもの、例えばシールリングを配置するためのリング溝とするのが特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、以下に図面に従って説明する。図1において、本発明の実施形態のタービンロータ1は、自動車内燃機関用の過給機において用いられるものであり、タービン軸2およびタービンホイール3から構成されたロータ組立体4を含んで構成されている。タービン軸2には、コンプレッサホイール5、スペーサ6、および、不図示のスラストベアリングを保持するためのスラストカラー7が、ボルト8によって螺着されている。ロータ組立体4は、シールリング9を配置するためのリング溝10を有する。
【0011】
タービンロータ1は、その中間部11において不図示のベアリングを介して不図示のケースに保持され、また、中間部11を収容するケース内部空間は、タービン軸2にはめ込まれたシールリング9、およびスペーサ6にはめ込まれたシールリング12がケースに密接することによって外部から密閉される。
【0012】
図2に示されるように、タービン軸2の端部には大径部20が回転対称に形成されている。大径部20の円柱状の軸端部21の基部には、タービンホイール3と接合するための軸側接合面2aが形成されている。この軸側接合面2aは、シールリング9(図1参照)を配置するためのリング溝10の底面22の一部をなす軸側部分底面22aに隣接している。大径部20にはまた、中間部11を収容するケース内部空間からシールリング9に向かうオイルの移動を抑制するためのスリンガー部23が形成されている。
【0013】
タービンホイール3にはボス部31が形成されており、ボス部31の内部には、軸端部21を収容するための挿入孔32が形成されている。挿入孔32の口縁部には、タービン軸2と接合するためのホイール側接合面3aが形成されている。ホイール側接合面3aは、シールリング9(図1参照)を配置するためのリング溝10の底面22の一部をなすホイール側部分底面22bに隣接している。
【0014】
以上のとおり構成されたタービンロータ1の組立は、以下のようにして行う。まず、タービン軸2の軸端部21を、タービンホイール3の挿入孔32に挿入する。軸端部21と挿入孔32との挿入は、圧入または焼きばめであってもよい。そして、タービン軸2の軸側接合面2aと、タービンホイール3のホイール側接合面3aとを当接させ、その状態で電子ビームガンまたはレーザー溶接機により、接合面2a,3aからなる接合部30を照射することにより、タービン軸2とタービンホイール3とを溶接する。この溶接により、軸側部分底面22aとホイール側部分底面22bとが結合されて、単一の底面22を有するリング溝10が形成される。リング溝10へのシールリング9の設置は、溶接後の状態のまま行ってもよいし、溶接後の底面22を切削加工によって平滑に仕上げてから行ってもよい。
【0015】
以上のとおり、本実施形態では、タービン軸2とタービンホイール3との接合部30を、リング溝10内に配置したので、上記従来例のように接合部130をリング溝110よりも軸端側に配置した構造に比べタービン軸2の端部の寸法を短縮でき、且つ上記従来例のようにリング溝110に隣接する壁部140の剛性に依存しないので、タービンロータ1の耐久性を高めることができる。
【0016】
なお、上記実施形態では、タービン軸2の一方の端部に単一のリング溝10が形成されるタービンロータ1を例として説明したが、本発明はタービン軸の一方の端部に複数のリング溝が形成されている場合にも適用することができる。この場合には、接合部はこれら複数のリング溝のうちどのリング溝に配置してもよい。ただし、複数のリング溝のうち最も軸端側のリング溝に接合部を配置すれば、タービンホイールの材料を節約でき好適である。
【0017】
また、上記実施形態ではシールリングを配置するためのリング溝10の底面22に接合部30を配置したが、本発明における接合部は、他の周溝、とくにタービン軸2とタービンホイール3との接合以外の他の用途を有するもの、例えばスリンガー部23の底面に設けてもよい。
【0018】
また、上記実施形態ではタービン軸2とタービンホイール3との接合に本発明を適用した例について説明したが、本発明はタービン軸とコンプレッサホイール5との接合に適用してもよい。また、上記実施形態ではタービン軸2とタービンホイール3との接合を溶接によって行ったが、本発明における接合部の接合は摩擦圧接など他の方法によってもよく、かかる態様も本発明の範疇に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るタービンロータを示す側面図である。
【図2】実施形態に係るタービンロータの要部を示す側面図である。
【図3】本発明による改良前のタービンロータの要部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 タービンロータ
2 タービン軸
2a 軸側接合面
3 タービンホイール
3a ホイール側接合面
4 ロータ組立体
9,12 シールリング
10 リング溝
11 中間部
12 シールリング
20 大径部
21 軸端部
22b ホイール側部分底面
22a 軸側部分底面
22 底面
30 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン軸とホイールとを接合してなり、外周面に周溝を有するタービンロータであって、
前記タービン軸と前記ホイールとの接合部が、前記周溝の底部に配置されていることを特徴とするタービンロータ。
【請求項2】
ホイールと接合するための軸側接合面を有するタービン軸であって、
前記軸側接合面は、前記タービン軸の外周面に形成されるべき周溝の底面の一部をなす軸側部分底面に隣接していることを特徴とするタービン軸。
【請求項3】
タービン軸と接合するためのホイール側接合面を有するホイールであって、
前記ホイール側接合面は、前記ホイールの外周面に形成されるべき周溝の底面の一部をなすホイール側部分底面に隣接していることを特徴とするホイール。
【請求項4】
請求項1に記載のタービンロータ、請求項2に記載のタービン軸、または請求項3に記載のホイールであって、
前記周溝は、シールリングを配置するためのリング溝であることを特徴とするタービンロータ、タービン軸またはホイール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−205253(P2007−205253A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25077(P2006−25077)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】